(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、ドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0028】
ドラム式洗濯機1は、外観を構成する筐体10を備える。筐体10の前面10aは、中央部から上部にかけて傾斜し、傾斜した面に洗濯物の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0029】
筐体10内には、外槽20が、複数のダンパー21により弾性的に支持される。外槽20内には、ドラム22が回転自在に配される。外槽20およびドラム22は、水平方向に対し、後面側が低くなるよう傾斜する。これにより、ドラム22は、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。外槽20およびドラム22の傾斜角度は、10〜20度程度とされ得る。外槽20の前面の開口部20aおよびドラム22の前面の開口部22aは、投入口11に対向し、投入口11ともにドア12により閉鎖される。ドラム22の内周面には、多数の脱水孔22bが形成される。さらに、ドラム22の内周面には、3つのバッフル23が周方向にほぼ等しい間隔で設けられる。
【0030】
ドラム22の後部には、撹拌体24が回転自在に配される。撹拌体24は、ほぼ円盤形状を有する。撹拌体24の表面には、中央部から放射状に延びる複数の羽根24aが形成される。撹拌体24は、ドラム22と同軸に回転する。撹拌体24は、本発明の回転体に相当し、羽根24aは、本発明の突状部に相当する。
【0031】
外槽20の後方には、ドラム22および撹拌体24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配される。駆動ユニット30は、本発明の駆動部に相当する。駆動ユニット30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム22および撹拌体24を同一方向に異なる回転速度で回転させる。具体的には、駆動ユニット30は、ドラム22を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させ、撹拌体24を、ドラム22の回転速度よりも速い回転速度で回転させる。一方、駆動ユニット30は、脱水工程時には、ドラム22および撹拌体24を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転させる。駆動ユニット30の詳細な構成は、追って説明される。
【0032】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0033】
筐体10内の前方上部には、洗剤ボックス50が配される。洗剤ボックス50には、洗剤が収容される洗剤容器50aが前方から引き出し自在に収容される。洗剤ボックス50は、筐体10内の後方上部に配された給水バルブ51に、給水ホース52によって接続される。また、洗剤ボックス50は、外槽20の上部に、注水管53により接続される。給水バルブ51が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース52、洗剤ボックス50および注水管53を通じて外槽20内に供給される。この際、洗剤容器50aに収容された洗剤が、水に押し流れて外槽20内に供給される。
【0034】
次に、駆動ユニット30の構成について詳細に説明する。
【0035】
図2および
図3は、駆動ユニット30の構成を示す断面図である。
図4および
図5は、クラッチ体610の周辺を拡大した要部の断面図である。
図2および
図4は、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられた状態を示し、
図3および
図5は、駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられた状態を示す。
図6は、駆動モータ100のロータ110の正面図である。
図7(a)および(b)は、それぞれ、クラッチ受け板530の正面図および背面図であり、
図7(c)は、軸受側緩衝部材540の正面図である。
図8(a)ないし(c)は、それぞれ、クラッチ体610の正面図、側面縦断面図および背面図である。
図8(d)は、キャリア軸441の断面図である。なお、
図4および
図5では、クラッチレバー630の図示が省略されている。
【0036】
駆動ユニット30は、駆動モータ100と、翼軸200と、ドラム軸300と、遊星歯車機構400と、軸受ユニット500と、クラッチ機構部600とを含む。駆動モータ100は、撹拌体24およびドラム22を駆動するためのトルクを発生する。翼軸200は、駆動モータ100のトルクにより回転し、当該回転を撹拌体24に伝達する。遊星歯車機構400は、翼軸200の回転、即ち駆動モータ100のロータ110の回転を減速してドラム軸300に伝達する。ドラム軸300は、遊星歯車機構400により減速された回転速度で翼軸200と同軸に回転し、当該回転をドラム22に伝達する。軸受ユニット500は、翼軸200およびドラム軸300を回転自在に支持する。クラッチ機構部600は、撹拌体24、即ち翼軸200を、駆動モータ100の回転速度と等しい回転速度で回転させ、ドラム22、即ちドラム軸300を、遊星歯車機構400により減速された回転速度で回転させることが可能な二軸駆動形態と、撹拌体24およびドラム22、即ち、翼軸200、ドラム軸300および遊星歯車機構400を、駆動モータ100と等しい回転速度で一体的に回転させることが可能な一軸駆動形態との間で、駆動ユニット30の駆動形態を切り替える。翼軸200は、本発明の第1回転軸に相当し、ドラム軸300は、本発明の第2回転軸に相当する。二軸駆動形態は、本発明の第1の形態に相当し、一軸駆動形態は、本発明の第2の形態に相当する。
【0037】
駆動モータ100は、アウターロータ型のDCブラシレスモータであり、ロータ110とステータ120とを含む。ロータ110は、樹脂にガラス等の強化材料を混入してなる強化樹脂により有底の円筒状に形成され、その内周面には、全周に亘って永久磁石111が配列される。
図4、
図5および
図6に示すように、ロータ110の中央部には、クラッチ受け部130がロータ110と一体に形成されている。クラッチ受け部130は、駆動モータ100、即ちロータ110とともに回転する。
【0038】
クラッチ受け部130は、ボス部131と、被噛合部132と、当たり面133とを含む。ボス部131は、断面がほぼ台形状を有し、その中央部に翼軸200が通されるボス孔131aが形成される。ボス孔131aは、ロータ110の後面の中央部に形成された凹部112に繋がる。被噛合部132は、ボス部131の外周に形成され、ほぼ円環状を有する。被噛合部132には、その表面132aよりも奥方へ凹む噛合凹部132bが、周方向に沿ってほぼ等間隔に複数形成される。このように、被噛合部132では、表面132aと噛合凹部132bとにより、周方向に沿って凹凸形状が形成される。当たり面133は、ボス部131と被噛合部132の間に設けられ、被噛合部132の表面132aよりも一段突出する平坦な面に形成される。クラッチ受け部130は、本発明の回転部に相当し、被噛合部132は、本発明の第2被噛合部に相当する。
【0039】
ステータ120は、外周部に巻線121を有する。後述するモータ駆動部からステータ120の巻線121に駆動電流が供給されると、ロータ110が回転する。
【0040】
ドラム軸300は、中空形状を有し、翼軸200と遊星歯車機構400とを内包する。ドラム軸300は、中央部が外側に膨出し、この膨出した部位が、遊星歯車機構400の収容部となる。
【0041】
遊星歯車機構400は、太陽歯車410と、太陽歯車410を囲む環状の内歯車420と、太陽歯車410と内歯車420との間に介在する複数組の遊星歯車430と、これら遊星歯車430を回転自在に保持する遊星キャリア440とを含む。
【0042】
太陽歯車410は、翼軸200に固定され、駆動モータ100の回転に伴い回転する。内歯車420は、ドラム軸300に固定される。一組の遊星歯車430は、互いに噛み合い、相反する方向に回転する第1歯車と第2歯車とを含む。遊星キャリア440は、後方へ延びるキャリア軸441を含む。キャリア軸441は、ドラム軸300と同軸であり、翼軸200が挿入されるために内部が中空に形成される。
【0043】
翼軸200の後端部は、キャリア軸441から後方に突出し、ロータ110のボス孔131aに取付ボルト210によって固定される。取付ボルト210の頭部は、ロータ110の凹部112に収容され、ロータ110よりも後方に突出しない。
【0044】
軸受ユニット500には、中央部に円筒状の軸受部510が設けられる。軸受部510の内部には、前部および後部に転がり軸受511、512が設けられ、前端部に、メカニカルシール513が設けられる。ドラム軸300は、外周面が転がり軸受511、512により受けられ、軸受部510内において円滑に回転する。また、メカニカルシール513により、軸受部510とドラム軸300との間への水の侵入が防止される。
【0045】
軸受ユニット500には、軸受部510の周囲に固定フランジ部520が形成される。固定フランジ部520の下端部に取付ボス521が形成される。
【0046】
軸受部510の後端部には、クラッチ受け板530が取り付けられる。
図4、
図5、
図7(a)および(b)に示すように、クラッチ受け板530は、ロータ110と同様な強化樹脂により形成され、受け本体部531と、フランジ部532と、押さえ部533とを含む。受け本体部531は、扁平な円筒状に形成され、内側面にスプライン534を有する。スプライン534の各歯534aは、受け本体部531の周方向にほぼ等間隔に形成され、受け本体部531の内側に向って突出する。フランジ部532は、受け本体部531の外周面に形成され、円環状を有する。フランジ部532には、複数個所にネジ550が通される挿通孔535が形成される。押さえ部533は、受け本体部531から転がり軸受512側に突出し、円環状を有する。クラッチ受け板530は、本発明の固定部に相当し、スプライン534は、本発明の第1被噛合部に相当する。
【0047】
クラッチ受け板530は、ネジ550によって軸受部510の後端部に固定される。ネジ550は、挿通孔535に通されて軸受部510の後端部に形成されたネジ孔514に止められる。
【0048】
クラッチ受け板530には、受け本体部531の内周側に軸受側緩衝部材540が配置される。
図4、
図5および
図7(c)に示すように、軸受側緩衝部材540は、扁平な円筒状を有し、ゴム等の弾性材料により形成される。軸受側緩衝部材540は、円環状の鍔部541を有する。鍔部541は、軸受部510の転がり軸受512とクラッチ受け板530の押さえ部533との間に挟み込まれ、押さえ部533によって転がり軸受512側に押さえ付けられる。これにより、軸受側緩衝部材540がクラッチ受け板530側に固定される。鍔部541は外周縁に環状のリブ541aを有し、このリブ541aが押さえ部533の外周面に接することで、鍔部541が転がり軸受512と押さえ部533との間から外れにくくなっている。さらに、転がり軸受512の後方であって、軸受側緩衝部材540の内側には、スプリング受け部560が設けられる。
【0049】
軸受ユニット500は、固定フランジ部520において、ネジ止等の固定方法により、外槽20の後面に固定される。駆動ユニット30が外槽20に装着された状態において、翼軸200およびドラム軸300が外槽20の内部に臨む。ドラム22がドラム軸300に固定され、撹拌体24が翼軸200に固定される。
【0050】
クラッチ機構部600は、クラッチ体610と、クラッチスプリング620と、クラッチレバー630と、レバー支持部640と、クラッチ駆動装置650と、中継棒660と、取付プレート670とを含む。クラッチスプリング620、クラッチレバー630、レバー支持部640、クラッチ駆動装置650、中継棒660は、クラッチ体610を移動させるための移動機構部DMを構成する。
【0051】
図4、
図5および
図8(a)ないし(c)に示すように、クラッチ体610は、ロータ110と同様な強化樹脂により形成され、ほぼ円盤形状を有する。クラッチ体610の前端部には、外周面に、環状のスプライン611が形成される。スプライン611の各歯611aは、クラッチ体610の周方向にほぼ等間隔に形成され、クラッチ体610の外側に向って突出する。スプライン611は、本発明の第1噛合部に相当する。さらに、クラッチ体610の外周面には、スプライン611の後方に、フランジ部612が形成される。
【0052】
クラッチ体610の後端部には、噛合部613が形成される。噛合部613は円環状のベース面613aを有し、ベース面613a上に後方に突出する噛合突部613bが周方向に沿ってほぼ等間隔に複数形成される。噛合突部613bは、被噛合部132の噛合凹部132bとほぼ同じ形状を有する。このように、噛合部613では、ベース面613aと噛合突部613bとにより、周方向に沿って凹凸形状が形成される。さらに、クラッチ体610の後端部には、噛合部613の内側に、ロータ側緩衝部材680が配置される。ロータ側緩衝部材680は、ゴム等の弾性材料により形成され、円環状を有する。ロータ側緩衝部材680には、裏側の複数個所に爪部681が形成される。ロータ側緩衝部材680は、爪部681がクラッチ体610の後端部に形成された孔部614に挿入され、爪部681の先端部が孔部614の裏側に係止されることにより、クラッチ体610に固定される。噛合部613は、本発明の第2噛合部に相当する。
【0053】
クラッチ体610には、クラッチ体610がクラッチ受け部130のボス部131に当たらないようにするため、ロータ側緩衝部材680の内側に円錐台状の凹部615が形成される。また、クラッチ体610の中央には、クラッチ体610の前端部から凹部615へと延びる軸孔616が形成される。軸孔616には、スプライン616aが形成される。一方、
図8(d)に示すように、キャリア軸441には、スプライン616aに対応するスプライン441aが形成され、軸孔616にキャリア軸441が挿入されると、スプライン616aとスプライン441aとが噛合する。これにより、クラッチ体610が、キャリア軸441に対して、前後方向への移動できるが、周方向へは回動できない状態となる。
【0054】
クラッチ体610には、軸孔616の外側に円環状の収容溝617が形成され、この収容溝617に、クラッチスプリング620が収容される。クラッチスプリング620は、一端がスプリング受け部560に受けられ、他端が収容溝617の底面に受けられる。
【0055】
クラッチレバー630は、レバー支持部640に設けられた支軸641に回動自在に支持される。クラッチレバー630の上端部には、クラッチ体610のフランジ部612の後面に接触し、フランジ部612を前方へ押す押圧部631が形成される。また、クラッチレバー630の下端部には、取付軸632が形成される。
【0056】
クラッチ駆動装置650は、クラッチレバー630の下方に配置される。クラッチ駆動装置650は、トルクモータ651と、トルクモータ651のトルクにより水平軸周りに回転する円盤状のカム652とを含む。カム652の上面には、外周部にカム軸653が設けられる。カム652の回転中心とクラッチレバー630の取付軸632の中心とが前後方向において一致する。トルクモータ651は、本発明の動力源に相当する。
【0057】
中継棒660は、上下方向に延び、クラッチレバー630とカム652とを連結する。中継棒660は、上端部がクラッチレバー630の取付軸632に取り付けられ、下端部が、カム652のカム軸653に取り付けられる。中継棒660には、中間位置にスプリング661が一体形成される。スプリング661は、引張スプリングである。
【0058】
レバー支持部640およびクラッチ駆動装置650は、ネジ止等の固定方法により、取付プレート670に固定される。取付プレート670は、軸受ユニット500の取付ボス521にネジにより固定される。
【0059】
駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、
図2に示すように、トルクモータ651の動作により、カム軸653が最も下方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転するに従い、クラッチレバー630の下端部が、中継棒660によって下方に引かれる。クラッチレバー630が支軸641を中心に前方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610を前方へ押す。クラッチスプリング620の弾性力に逆らって、クラッチ体610が前方へ移動し、クラッチ体610のスプライン611とクラッチ受け板530のスプライン534とが周方向に噛み合う。
【0060】
クラッチ体610は、カム軸653が中間の所定位置まで移動すると、スプライン611がスプライン534と噛み合う位置に到達する。このときは、中継棒660のスプリング661が自然長の状態にある。クラッチ体610は、この噛合位置より前には移動しないため、カム軸653が所定位置から最も下方の位置に移動すると、
図2の通り、スプリング661が下方に伸びる。こうなると、クラッチレバー630が、スプリング661によって、前方へ回動するように引かれるので、噛合位置にあるクラッチ体610には、押圧部631から押圧力が加えられる。これにより、スプライン611をスプライン534にしっかりと噛み合わせておくことができる。
【0061】
スプライン611とスプライン534とが噛み合うと、クラッチ体610が、軸受ユニット500に対して回動できない状態となるので、遊星歯車機構400のキャリア軸441、即ち遊星キャリア440が、回転できないよう固定された状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転し、翼軸200に連結されている撹拌体24もロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。翼軸200の回転に伴い、遊星歯車機構400では、太陽歯車410が回転する。上述の通り、遊星キャリア440は固定された状態にあるので、遊星歯車430の第1歯車および第2歯車が、それぞれ、太陽歯車410と同方向および逆方向に回転し、内歯車420が太陽歯車410と同方向に回転する。これにより、内歯車420に固定されたドラム軸300が翼軸200と同方向に、翼軸200よりも遅い回転速度で回転し、ドラム軸300に固定されたドラム22が、撹拌体24よりも遅い回転速度で撹拌体24と同方向に回転する。言い換えれば、撹拌体24がドラム22よりも速い回転速度でドラム22と同方向に回転する。
【0062】
一方、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、
図3に示すように、トルクモータ651の動作により、カム軸653が最も上方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転し、カム軸653が上方へ移動すると、まず、スプリング661が縮んでいく。スプリング661が自然長に戻ると、その後は、カム軸653が移動するに従い、中継棒660が上方へ移動し、クラッチレバー630の下端部が、中継棒660に押されて、上方へ移動する。クラッチレバー630が支軸641を中心に後方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610のフランジ部612から離れる。クラッチ体610が、クラッチスプリング620の弾性力によって後方へ移動し、クラッチ体610の噛合部613とクラッチ受け部130の被噛合部132とが周方向に噛み合う。
【0063】
噛合部613と被噛合部132とが噛み合うと、クラッチ体610は、ロータ110とともに回転可能な状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200およびクラッチ体610がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。このとき、遊星歯車機構400では、太陽歯車410と遊星キャリア440とがロータ110と等しい回転速度で回転する。これにより、内歯車420が、太陽歯車410および遊星キャリア440と等しい回転速度で回転し、内歯車420に固定されたドラム軸300がロータ110と等しい回転速度で回転する。即ち、駆動ユニット30では、翼軸200、遊星歯車機構400およびドラム軸300が一体となって回転する。これにより、ドラム22と撹拌体24が一体的に回転する。
【0064】
図9(a)は、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる際のクラッチ体610のスプライン611とクラッチ受け板530のスプライン534とが噛み合う様子を示す遷移図であり、
図9(b)は、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる際のクラッチ体610の噛合部613とクラッチ受け部130の被噛合部132とが噛み合う様子を示す遷移図である。
【0065】
二軸駆動形態への切り替えのためにクラッチ体610が軸受ユニット500のクラッチ受け板530側に移動された際に、
図9(a)の左図に示すように、互いのスプライン611、534の歯611a、534a同士が噛み合わずに突き合わされた状態となる場合が生じ得る。この状態では、上述の通り、クラッチ体610がクラッチレバー630によってクラッチ受け板530側に押圧され続けている。また、この状態では、ロータ110の回転に伴って、ドラム22に連結されているために掛かる負荷の大きな内歯車420でなく、掛かる負荷の小さな遊星キャリア440が回転し、キャリア軸441を介してクラッチ体610が回転する。クラッチ体610の回転により、クラッチ受け板530のスプライン534の歯534aが邪魔にならない位置までクラッチ体610のスプライン611の歯611aの位置がずれると、
図9(a)の右図に示すように、クラッチ体610は勢い良くクラッチ受け板530側へと移動し、互いの歯611a、534a同士が噛み合う。この際、クラッチ受け板530側に配置された軸受側緩衝部材540が、相手側であるクラッチ体610の前端部に最初に当たるので、クラッチ体610のクラッチ受け板530側への衝突力が軸受側緩衝部材540によって吸収され和らげられる。これにより、クラッチ体610側とクラッチ受け板530側との間に発生する衝突音が低減される。
【0066】
同様に、一軸駆動形態への切り替えのためにクラッチ体610がロータ110のクラッチ受け部130側に移動された際にも、
図9(b)の左図に示すように、噛合部613の噛合突部613bと被噛合部132の噛合凹部132bとが噛み合わず、噛合突部613bが被噛合部132の表面132aに突き合わされた状態となる場合が生じ得る。この状態では、上述の通り、クラッチ体610がクラッチスプリング620によってクラッチ受け部130側に押圧され続けている。この状態で、ロータ110の回転に伴い、噛合部613の噛合突部613bに一致する位置まで被噛合部132の噛合凹部132bの位置がずれると、
図9(b)の右図に示すように、クラッチ体610は勢い良くクラッチ受け部130側へと移動し、噛合突部613bと噛合凹部132bとが噛み合う。この際、クラッチ体610側に配置されたロータ側緩衝部材680が、相手側であるクラッチ受け部130の当たり面133に最初に当たるので、クラッチ体610のクラッチ受け部130側への衝突力がロータ側緩衝部材680によって吸収され和らげられる。これにより、クラッチ体610側とクラッチ受け部130側との間に発生する衝突音が低減される。
【0067】
なお、ロータ110、クラッチ受け板530およびクラッチ体610は、ともに強化樹脂により形成される。このため、通常の樹脂より硬く、軸受側緩衝部材540およびロータ側緩衝部材680が設けられない場合には、クラッチ体610側とクラッチ受け板530側との間およびクラッチ体610側とクラッチ受け部130側との間の衝突音が特に大きくなりやすい。
【0068】
図10は、ドラム式洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0069】
ドラム式洗濯機1は、上述した構成に加え、制御部701、記憶部702、操作部703、水位センサ704、モータ駆動部705、給水駆動部706、排水駆動部707、クラッチ駆動部708およびドアロック装置709を備える。
【0070】
操作部703は、電源ボタン703a、スタートボタン703b、コース選択ボタン703cを含む。電源ボタン703aは、ドラム式洗濯機1の電源を投入および遮断するためのボタンである。スタートボタン703bは、運転をスタートさせるためのボタンである。コース選択ボタン703cは、洗濯運転に係る複数の運転コースの中から任意の運転コースを選択するためのボタンである。操作部703は、ユーザに操作されたボタンに応じた入力信号を制御部701に出力する。
【0071】
水位センサ704は、外槽20内の水位を検知し、検知した水位に応じた水位検知信号を制御部701に出力する。
【0072】
モータ駆動部705は、制御部701からの制御信号に従って、駆動モータ100に駆動電流を供給する。モータ駆動部705は、駆動モータ100の回転速度を検出する速度センサ、インバータ回路等を有し、制御部701により設定された回転速度で駆動モータ100が回転するよう、駆動電流を調整する。たとえば、モータ駆動制御として、PWM制御が用いられる。この場合、制御部701が、検出された回転速度に基づいて決定したディーティー比のパルス電圧を駆動モータ100へ印加することにより、当該パルス電圧に対応する駆動電流が駆動モータ100に供給される。
【0073】
給水駆動部706は、制御部701からの制御信号に従って、給水バルブ51に駆動電流を供給する。排水駆動部707は、制御部701からの制御信号に従って、排水バルブ40に駆動電流を供給する。
【0074】
クラッチ駆動装置650は、第1検知センサ654および第2検知センサ655を含む。第1検知センサ654は、駆動ユニット30の駆動形態が二軸駆動形態に切り替えられたことを検知して、検出信号を制御部701に出力する。第2検知センサ655は、駆動ユニット30の駆動形態が一軸駆動形態に切り替えられたことを検知して、検出信号を制御部701に出力する。クラッチ駆動部708は、第1検知センサ654および第2検知センサ655からの検出信号に基づいて制御部701から出力された制御信号に従い、トルクモータ651に駆動電流を供給する。
【0075】
ドアロック装置709は、制御部701からの制御信号に従ってドア12のロックおよびロック解除を行う。
【0076】
記憶部702は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部702には、各種洗濯運転コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部702には、これらプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグが記憶される。
【0077】
制御部701は、操作部703、水位センサ704等からの各信号に基づいて、記憶部702に記憶されたプログラムに従い、モータ駆動部705、給水駆動部706、排水駆動部707、クラッチ駆動部708、ドアロック装置709等を制御する。
【0078】
ドラム式洗濯機1は、コース選択ボタン703cによるユーザの選択操作に基づき、各種運転コースの洗濯運転を行う。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。なお、運転コースによっては、中間脱水工程とすすぎ工程とが2回以上行われる場合がある。
【0079】
洗い工程およびすすぎ工程では、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられる。ドラム22内の洗濯物が水に浸かるよう、投入口11の下縁に至らない所定の水位まで外槽20内に水が溜められ、この状態で、駆動モータ100が、交互に、正転および逆転する。これにより、ドラム22と撹拌体24とが、撹拌体24の回転速度がドラム22の回転速度より速い状態で、交互に正転および逆転する。このとき、ドラム22は、洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転する。
【0080】
ドラム22内の洗濯物が、バッフル23で掻き上げられては落とされることにより、ドラム22の内周面に叩き付けられる。加えて、ドラム22の後部では、回転する撹拌体24の羽根24aに洗濯物が接触し、羽根24aに洗濯物が擦られたり、羽根24aによって洗濯物が撹拌されたりする。これにより、洗濯物が洗われる、あるいは、すすがれる。
【0081】
このように、洗いおよびすすぎ時には、ドラム22の回転による機械力のみならず撹拌体24による機械力が洗濯物に付与されるので、洗浄性能の向上が期待できる。 中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられる。駆動モータ100、即ち、ドラム22および撹拌体24は、ドラム22内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム22の内周面に押し付けられ、脱水される。
【0082】
このように、脱水時には、ドラム22と撹拌体24とが一体的に回転するので、ドラム22に張り付いた洗濯物が撹拌体24により撹拌されるようなことがなく、洗濯物を良好に脱水できる。
【0083】
本実施の形態のドラム式洗濯機1では、洗いやすすぎが終了したとき、制御部701は、駆動モータ100を停止させてドラム22を停止させた後に、駆動ユニット30の駆動形態を、二軸駆動形態から一軸駆動形態へ切り替える。また、中間脱水が終了したとき、制御部701は、駆動モータ100を停止させてドラム22を停止させた後に、駆動ユニット30の駆動形態を、一軸駆動形態から二軸駆動形態へ切り替える。
【0084】
図11(a)は、ドラム22内の洗濯物が、正面側から見て左側に片寄っている場合を示す模式図であり、
図11(b)は、ドラム22内の洗濯物が、正面側から見て右側に片寄っている場合を示す模式図である。
【0085】
ドラム22が停止した状態にある場合、
図11(a)のように、ドラム22内の洗濯物が左側に片寄っていると、片寄った洗濯物によってドラム22を左回りに回転させようとする力が働く。一方、
図11(b)のように、ドラム22内の洗濯物が右側に片寄っていると、片寄った洗濯物によってドラム22を右回りに回転させようとする力が働く。
【0086】
このように、ドラム22内の洗濯物が左右何れかに片寄った場合、駆動形態が二軸駆動形態にあれば、クラッチ体610のスプライン611の歯611aとクラッチ受け板530のスプライン534の歯534aは片側に強く押し付けられた状態で噛み合うことになり、双方の歯611a、534aの押し付けられた面同士の間で摩擦抵抗が大きくなる。こうなると、二軸駆動形態から一軸駆動形態への切り替えのためにクラッチレバー630によるクラッチ体610の押圧が解除され、クラッチ体610がクラッチスプリング620によってロータ110側に押圧されても、スプライン611とスプライン534の歯611a、534a同士の噛み合いが外れにくくなる。よって、二軸駆動形態から一軸駆動形態への切り替えが円滑に行えない虞がある。
【0087】
同様に、ドラム22内の洗濯物が左右何れかに片寄った場合、駆動形態が一軸駆動形態にあれば、クラッチ体610の噛合部613の噛合突部613bとクラッチ受け部130の被噛合部132の噛合凹部132bは片側に強く押し付けられた状態で噛み合うことになり、噛合突部613bと噛合凹部132bの押し付けられた面同士の間で摩擦抵抗が大きくなる。こうなると、一軸駆動形態から二軸駆動形態への切り替えのためにクラッチレバー630によってクラッチ体610が軸受ユニット500側に押圧されても、噛合突部613bと噛合凹部132bとの噛み合いが外れにくくなる。よって、一軸駆動形態から二軸駆動形態への切り替えが円滑に行えない虞がある。
【0088】
そこで、本実施の形態では、駆動ユニット30の駆動形態の切り替えを円滑に行うためのクラッチ駆動装置650と駆動モータ100の駆動制御が制御部701によって実行される。
【0089】
図12は、駆動ユニット30の駆動形態を切り替えるときのクラッチ駆動装置650のトルクモータ651と駆動モータ100への通電動作のタイミングチャートである。
【0090】
一軸駆動形態から二軸駆動形態へ切り替えるときと二軸駆動形態から一軸駆動形態へ切り替えるときの双方において、制御部701は、
図12に示すように、駆動モータ100を右回転するようにONしてロータ110を右回り方向に振った後、駆動モータ100をOFFする。その後、制御部701は、OFF期間を挟まずに直ちに駆動モータ100を左回転するようにONしてロータ110を左回り方向に振った後、駆動モータ100をOFFする。その後さらに、制御部701は、OFF期間を挟まずに直ちに駆動モータ100を右回転するようにONしてロータ110を右回り方向に振った後、駆動モータ100をOFFする。さらにその後、制御部701は、OFF期間を挟まずに直ちに駆動モータ100を左回転するようにONしてロータ110を左回り方向に振った後、駆動モータ100をOFFする。最後に、制御部701は、OFF期間を挟まずに直ちに駆動モータ100を右回転するようにONし、その後は、駆動形態の切り替え後に行われる洗い、すすぎ、脱水等のために駆動モータ100を継続してONさせ、ロータ110を連続回転させる。
【0091】
制御部701は、このように駆動モータ100をON−OFF動作させている間に、トルクモータ651を動作させる。即ち、制御部701は、
図12に示すように、最初に駆動モータ100を右回転するようにONした後、駆動モータ100をOFFするまでに、トルクモータ651をONする。その後、制御部701は、一軸駆動形態から二軸駆動形態への切り替え時には第1検知センサ654の検知に基づいてトルクモータ651をOFFし、二軸駆動形態から一軸駆動形態への切り替え時には第1検知センサ654の検知に基づいてトルクモータ651をOFFするが、何れの場合も、トルクモータ651のOFFは、最後に駆動モータ100が右回転するようにONされた後となる。
【0092】
このようなタイミングで駆動モータ100とトルクモータ651とが動作されることにより、トルクモータ651の動作の間、即ち、移動機構部DMによるクラッチ体610の移動動作の間に、右回り方向に振られているロータ110を停止させ、その後直ちにロータ110を左回り方向に振る反転動作1と、左回り方向に振られているロータ110を停止させ、その後直ちにロータ110を右回り方向に振る反転動作2とが、それぞれ2回ずつ繰り返される。
【0093】
図11(a)のように、ドラム22の停止時にドラム22内で洗濯物が左側に片寄っている場合、駆動モータ100のロータ110が右回り方向に振られると、ドラム22は、片寄った洗濯物により作用する力の方向とは反対の右回り方向に振られる。その後、駆動モータ100を停止させると、そのときドラム22には右回り方向に移動し続けようとする慣性力が働くため、この慣性力に打ち消されて、片寄った洗濯物により作用する力が小さくなる。こうなると、二軸駆動形態から一軸駆動形態へ切り替える場合にあっては、クラッチ体610のスプライン611の歯611aとクラッチ受け板530のスプライン534の歯534aが片側に押し付けられる力が弱まるので、スプライン611の歯611aがスプライン534の歯534aから外れやすくなる。また、一軸駆動形態から二軸駆動形態へ切り替える場合にあっては、クラッチ体610の噛合部613の噛合突部613bとクラッチ受け部130の被噛合部132の噛合凹部132bが片側に押し付けられる力が弱まるので、噛合部613の噛合突部613bが被噛合部132の噛合凹部132bから外れやすくなる。
【0094】
また、駆動モータ100のロータ110は、停止した後に直ちに左回り方向に振られ、これに伴ってスプライン611や被噛合部132が、歯611aと歯534aや噛合突部613bと噛合凹部132bを片側に押し付ける力が弱まる方向へ回転しようとするため、スプライン611とスプライン534との噛み合いや噛合部613と被噛合部132の噛み合いがより一層外れやすくなる。
【0095】
このように、ドラム22の停止時にドラム22内で洗濯物が左側に片寄っていても、トルクモータ651の動作期間中に2回の反転動作1が行われることにより、スプライン611とスプライン534との噛み合が外れやすくなるとともに、噛合部613と被噛合部132との噛み合いが外れやすくなる。同様に、
図11(b)のように、ドラム22の停止時にドラム22内で洗濯物が右側に片寄っていても、トルクモータ651の動作期間中に2回の反転動作2が行われることにより、2回の反転動作1と同じ現象が生じるため、スプライン611とスプライン534との噛み合が外れやすくなるとともに、噛合部613と被噛合部132との噛み合いが外れやすくなる。これにより、二軸駆動形態から一軸駆動形態への円滑な切り替えが行えるようになるとともに、二軸駆動形態から一軸駆動形態への円滑な切り替えが行えるようになる。
【0096】
<実施の形態の効果>
以上、説明した通り、本実施の形態によれば、二軸駆動形態への切り替えのためにクラッチ体610がクラッチ受け板530側に移動された際に、互いのスプライン611、534の歯611a、534a同士が噛み合わずに突き合わされ、その後、駆動モータ100の回転により互いの歯611a、534aの位置がずれてクラッチ体610が勢い良くクラッチ受け板530側へと移動し、互いの歯611a、534a同士が噛み合うような状況となっても、その際には、クラッチ受け板530側に配された軸受側緩衝部材540がクラッチ体610の前端部に最初に当たるので、クラッチ体610のクラッチ受け板530側への衝突力が軸受側緩衝部材540によって和らげられる。これにより、クラッチ体610側とクラッチ受け板530側との間に生じる衝突音を低減させることができる。
【0097】
また、本実施の形態によれば、軸受側緩衝部材540は、その鍔部541が軸受部510とクラッチ受け板530に挟み込まれることによりクラッチ受け板530側に固定される。よって、軸受側緩衝部材540を、ネジ等を用いることなく、容易にクラッチ受け板530側に固定できる。
【0098】
さらに、本実施の形態によれば、一軸駆動形態への切り替えのためにクラッチ体610がクラッチ受け部130側に移動された際に、噛合突部613bと噛合凹部132bとが噛み合わずに噛合突部613bが被噛合部132の表面132aに突き合わされ、その後、駆動モータ100の回転により噛合突部613bと噛合凹部132bとの位置が一致し、クラッチ体610が勢い良くクラッチ受け部130側へと移動して噛合突部613bと噛合凹部132bとが噛み合うような状況となっても、その際には、クラッチ体610側に配されたロータ側緩衝部材680がクラッチ受け部130の当たり面133に最初に当たるので、クラッチ体610のクラッチ受け部130側への衝突力がロータ側緩衝部材680によって和らげられる。これにより、クラッチ体610側とクラッチ受け部130側との間に発生する衝突音を低減させることができる。
【0099】
さらに、本実施の形態によれば、ロータ側緩衝部材680は、その爪部681がクラッチ体610に形成された孔部614に係止されることにより、クラッチ体610側に固定される。よって、ロータ側緩衝部材680を、ネジ等を用いることなく、容易にクラッチ体610側に固定できる。
【0100】
さらに、本実施の形態によれば、一軸駆動形態から二軸駆動形態への切り替えおよび二軸駆動形態から一軸駆動形態への切り替えが行われる際に駆動モータ100のロータ110が右回り方向および左回り方向に振られることにより、移動機構部DMによってクラッチ体610が移動される間において、右回り方向に振られているロータ110を停止させる動作と左回り方向に振られているロータ110を停止させる動作とが実行される。これにより、ドラム22の停止時にドラム22内で洗濯物が左右の何れかに片寄っていても、一軸駆動形態から二軸駆動形態へ切り替える場合にあっては、クラッチ体610の噛合部613とクラッチ受け部130の被噛合部132との噛み合いが外れやすくなり、二軸駆動形態から一軸駆動形態へ切り替える場合にあっては、クラッチ体610のスプライン611とクラッチ受け板530のスプライン534との噛み合いが外れやすくなる。よって、本実施の形態によれば、一軸駆動形態と二軸駆動形態との間の駆動形態の切り替えを円滑に行うことができる。
【0101】
また、噛み合いが外れにくい状態でトルクモータ651が動作した場合にはトルクモータ651に掛かる負荷が増大する虞がある。本実施の形態によれば、トルクモータ651に掛かる負荷が増大することを防止できる。
【0102】
さらには、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、噛合部613と被噛合部132との噛み合いが外れないとクラッチレバー630が動かないため、中継棒660のスプリング661だけが伸びた状態となってトルクモータ651の動作が完了することとなる。その後、洗い等のために駆動モータ100が回転すると、噛合突部613bと噛合凹部132bとが片側に押し付けられる力が弱まるので、噛み合いが外れやすくなる。こうなると、スプリング661が一気に縮んでクラッチレバー630が勢い良く動き、クラッチ体610がクラッチレバー630に勢い良く押されてクラッチ受け板530に激しく衝突し、大きな衝突音が発生する虞がある。また、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、スプライン611とスプライン534との噛み合いが外れないと、クラッチスプリング620が縮んだまま、トルクモータ651の動作によりクラッチレバー630だけが動くこととなる。その後、トルクモータ651の動作が完了し、洗い等のために駆動モータ100が回転して噛み合いが外れやすくなると、クラッチスプリング620が一気に伸び、クラッチ体610がクラッチスプリング620に勢い良く押されクラッチ受け部130に激しく衝突し、大きな衝突音が発生する虞がある。本実施の形態によれば、スプライン611とスプライン534との噛み合いや噛合部613と被噛合部132との噛み合いが円滑に外れるため、クラッチ体610とクラッチ受け板530との間やクラッチ体610とクラッチ受け部130との間に大きな衝突音が発生することを防止できる。
【0103】
さらに、本実施の形態によれば、駆動モータ100のロータ110が一方の方向に振られた状態から停止された後は、停止期間を挟まずにロータ110が直ちに反対の方向に振られるので、スプライン611とスプライン534の歯611aと歯534aや噛合部613の噛合突部613bと被噛合部132の噛合凹部132bを片側に押し付ける力を一層弱めることができ、スプライン611とスプライン534との噛み合いや噛合部613と被噛合部132の噛み合いがより一層外れやすくなる。
【0104】
さらに、本実施の形態によれば、最初に駆動モータ100のロータ110を右回り方向に振り始めた後にトルクモータ651の動作、即ち、移動機構部DMによるクラッチ体610の移動動作が開始されるので、クラッチ体610の移動動作が開始された後速やかに右回り方向に振られたロータ110を停止させる動作を行ってスプライン611とスプライン534との噛み合いや噛合部613と被噛合部132との噛み合いを外れやすくさせることができる。
【0105】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0106】
たとえば、上記実施の形態では、クラッチ体610側とクラッチ受け板530側との間の衝突音を低減させるために、クラッチ受け板530側に軸受側緩衝部材540が配置される。しかしながら、図
13および図
14に示すように、軸受側緩衝部材540に替えて、クラッチ体610側に軸受側緩衝部材690が配置されてもよい。
【0107】
図13は、変更例に係る、クラッチ体610の周辺を拡大した要部の断面図である。
図14(a)および(b)は、それぞれ、変更例に係る、軸受側緩衝部材690の正面図および側面断面図である。
【0108】
軸受側緩衝部材690は、ゴム等の弾性部材で円環状に形成される。軸受側緩衝部材690には、中央に環状の溝部691が形成される。軸受側緩衝部材690は、この溝部691をクラッチ体610のフランジ部612に嵌め込むことによってクラッチ体610に固定される。
【0109】
図13に示すように、クラッチ体610のスプライン611がクラッチ受け板530のスプライン534に噛み合う際、軸受側緩衝部材690が最初にクラッチ受け板530に当たる。これにより、クラッチ体610側とクラッチ受け板530側との間の衝突音が低減される。
【0110】
また、上記実施の形態では、クラッチ体610側とクラッチ受け部130側との間の衝突音を低減させるために、クラッチ体610側にロータ側緩衝部材680が配置される。しかしながら、
図15に示すように、ロータ側緩衝部材680に替えて、クラッチ受け部130側にロータ側緩衝部材140が配置されてもよい。
【0111】
図15は、変更例に係る、駆動モータ100のロータ110の正面図である。ロータ側緩衝部材140は、ゴム等の弾性部材により円環状に形成され、クラッチ受け部130の当たり面133に接着等の固定方法によって固定される。クラッチ体610の噛合部613がクラッチ受け部130の被噛合部132に噛み合う際、ロータ側緩衝部材140が最初にクラッチ体610に当たる。これにより、クラッチ体610側とクラッチ受け部130側との間の衝突音が低減される。
【0112】
さらに、上記実施の形態では、
図12のように、制御部701が、最初に駆動モータ100を右回転するようにONした後、駆動モータ100をOFFするまでに、トルクモータ651をONする。即ち、最初に駆動モータ100のロータ110を右回り方向に振り始めた後に移動機構部DMによるクラッチ体610の移動動作が開始される。しかしながら、
図16のタイミングチャートに示すように、制御部701が、最初に駆動モータ100を右回転するようにONするとほぼ同時にトルクモータ651をONさせてもよい。即ち、最初に駆動モータ100のロータ110を右回り方向に振り始めるとほぼ同時に移動機構部DMによるクラッチ体610の移動動作が開始されてもよい。
【0113】
さらに、上記実施の形態では、駆動モータ100のロータ110が一方の方向に振られた状態から停止された後は、停止期間を挟まずにロータ110が直ちに反対の方向に振られる。しかしながら、駆動モータ100のロータ110が一方の方向に振られた状態から停止された後に停止期間を挟んでロータ110が反対の方向に振られてもよい。
【0114】
さらに、上記実施の形態では、駆動モータ100のロータ110が最初に右回り方向へ振られるが、ロータ110が最初に左回り方向へ振られてもよい。
【0115】
さらに、上記実施の形態では、ドラム軸300が内歯車420に固定されるとともに、キャリア軸441、即ち遊星キャリア440にクラッチ体610が連結される。これにより、二軸駆動形態において、クラッチ体610により遊星キャリア440が固定された状態で、翼軸200が回転すると、太陽歯車410の回転に伴って遊星歯車430が自転し、太陽歯車410よりも遅い回転速度で内歯車420が回転する。しかしながら、
図17に示すように、ドラム軸300が、遊星キャリア440に固定される構成が採られても良い。この場合、内歯車420に、先端部がドラム軸300から後方に突出する軸部421が取り付けられる。そして、クラッチ体610が、軸部421に連結される。即ち、クラッチ体610が、軸部421を介して内歯車420に連結される。さらに、遊星歯車430が、第1歯車のみを有するよう変更される。二軸駆動形態において、クラッチ体610により内歯車420が固定された状態で、翼軸200が回転すると、太陽歯車410の回転に伴って遊星歯車430が自転および公転し、太陽歯車410よりも遅い回転速度で遊星キャリア440が回転する。これにより、遊星キャリア440に固定されたドラム軸300が回転する。
【0116】
さらに、上記実施の形態では、駆動モータ100のロータ110が、翼軸200により撹拌体24に直接結合されており、撹拌体24は、駆動モータ100の回転速度と等しい回転速度で回転する。しかしながら、撹拌体24と駆動モータ100との間に、ドラム22と同様、歯車を用いた減速機構が介在されても良い。この場合、撹拌体24に用いられる減速機構の減速比は、遊星歯車機構400の減速比より小さくすることにより、撹拌体24をドラム22より速く回転させることができる。
【0117】
さらに、上記実施の形態では、ドラム22が、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、ドラム22が、水平軸を中心に回転するような構成とされても良い。
【0118】
さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機1は、乾燥機能を備えていないが、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。
【0119】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。