特許第6750168号(P6750168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6750168エッチング廃液処理システムおよびエッチング廃液処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750168
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】エッチング廃液処理システムおよびエッチング廃液処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20200824BHJP
   B01D 53/40 20060101ALI20200824BHJP
   C02F 1/60 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   C02F1/58 MZAB
   B01D53/40 200
   C02F1/60
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-57721(P2017-57721)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-158312(P2018-158312A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年3月22日
【審判番号】不服2019-2657(P2019-2657/J1)
【審判請求日】2019年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(72)【発明者】
【氏名】石川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 康司
(72)【発明者】
【氏名】中世古 隆生
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 優
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 村岡 一磨
【審判官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−42086(JP,A)
【文献】 特開平5−253577(JP,A)
【文献】 特開平5−301092(JP,A)
【文献】 特開2009−285579(JP,A)
【文献】 特開2003−266083(JP,A)
【文献】 特開2016−163857(JP,A)
【文献】 特開2003−126894(JP,A)
【文献】 特開2010−279939(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/082875(WO,A1)
【文献】 特開2000−288374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58-1/64
B01D 53/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素酸を用いたエッチング処理で発生するエッチング廃液を処理するように構成されたエッチング廃液処理システムであって、
前記エッチング廃液に対して酸化カルシウムを添加して反応させることによって、前記エッチング廃液の水分を蒸発させて酸性度を緩和しつつ送液可能な程度に増粘するように構成された第1の反応槽と、
第1の反応槽から送られた増粘エッチング廃液に対して、酸化カルシウムをさらに添加して反応させることによって、増粘エッチング廃液の水分を蒸発させて全量を排水処理が別途必要のない中性汚泥にするように構成された第2の反応槽と、
少なくとも前記第1の反応槽から発生する気体を無害化するように構成された無害化手段と、
を備え、
前記第1の反応槽が、槽内の液体を撹拌するように構成された攪拌機を備え、かつ、
前記第2の反応槽が、混練スクリュとして機能する攪拌機を有し、かつ、
前記第1の反応槽において前記エッチング廃液を排水処理が別途必要のない中性汚泥にするために必要な量の25〜50%の酸化カルシウムが添加される
エッチング廃液処理システム。
【請求項2】
フッ化水素酸を用いたエッチング処理で発生するエッチング廃液を処理するためのエッチング廃液処理方法であって、
第1の反応槽に送られた前記エッチング廃液に対して酸化カルシウムを添加して反応させることによって、前記エッチング廃液の水分を蒸発させて酸性度を緩和しつつ送液可能な程度に増粘させる第1の固化ステップと、
第1の固化ステップによって得られるとともに第2の反応槽に送られた増粘エッチング廃液に対して、酸化カルシウムをさらに添加して反応させることによって、増粘エッチング廃液の水分を蒸発させて全量を前記第2の反応槽内において排水処理が別途必要のない中性汚泥にする第2の固化ステップと、
を少なくとも含み、
前記第1の固化ステップにおいて、槽内の液体を撹拌するように構成された攪拌機によって前記エッチング廃液を増粘し、かつ、
前記第2の固化ステップにおいて、混練スクリュとして機能する攪拌機によって前記増粘エッチング廃液を混練し、かつ、
前記第1の固化ステップにおいて、前記エッチング廃液を排水処理が別途必要のない中性汚泥にするために必要な量の25〜50%の酸化カルシウムが添加される
エッチング廃液処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化水素酸を用いたエッチング処理で発生するエッチング廃液を処理するためのエッチング廃液処理システムおよびエッチング廃液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、需要が増加しているスマートフォンやタブレット端末等においてガラス基板が広く用いられている。そして、これらのスマートフォンやタブレット端末等の軽量化の要請により、ガラス基板の薄型化処理がこれまで以上に実施されるようになってきている。
【0003】
ところが、ガラス基板の薄型化処理は、環境負荷が大きいため、これに適切に対応する必要が生じる。例えば、ガラス基板の薄型化処理の一手段であるエッチング処理では、大量のフッ化水素酸が必要になるとともに、エッチング処理後にはフッ素やホウ素を含むエッチング廃液が大量に発生するという問題があった。
【0004】
そこで、従来、ガラスに対するエッチング処理後に発生するエッチング廃液を有効利用するための様々な取り組みが為されてきた。例えば、従来技術の中には、エッチング廃液を減圧条件下で加熱して蒸発させ、この蒸発された蒸気を冷却して凝縮させることによって、エッチング廃液からフッ化水素酸や塩酸を分離回収する技術が存在する(例えば、特許文献1参照。)。そして、この従来技術によれば、フッ化水素酸濃度が6%を超える高濃度のフッ化水素酸を含むガラスエッチング廃液であっても高効率でフッ化水素酸を分離・回収を行うことが可能になる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6062003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術のようにエッチング廃液から可能な限りフッ化水素酸等の有価物を回収してリサイクルすることは非常に有意義であるが、エッチング廃液を無害化する処理ステップを簡素化する観点も環境保護にとって重要である。エッチング廃液は、通常、複数の処理ステップを経て無害化されて適正に処理されるものであるが、この処理ステップを簡素化することによって必要な設備を簡素化したり、発生する廃棄物の全体量を減容化したりすることによっても環境負荷を低減することができる。
【0007】
また、リサイクル関連の技術は、エッチング廃液に含まれるフッ化水素酸の濃度等の条件によっては適正にリサイクルを行えなかったり、リサイクルに多大なコストが必要となる等の採算上の問題によって持続可能な状態で継続実施されることが少なかったりする問題が指摘されることがあった。
【0008】
本発明の目的は、ガラス基板のエッチング処理で発生するエッチング廃液の状態に関わらず、エッチング廃液の処理を簡易かつコストを抑えつつ実施することが可能な廃棄物処理システムおよび廃棄物処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエッチング廃液処理システムは、例えば、ガラス基板や半導体ウェハやその他の半導体基板等を処理するためのフッ化水素酸を用いたエッチング処理で発生するエッチング廃液を処理するように構成される。このエッチング廃液処理システムは、エッチング廃液に対してアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含むアルカリ性固化剤を添加して反応させることによって、エッチング廃液を中性汚泥化するように構成された反応槽と、反応槽から発生する気体を無害化するように構成された無害化手段と、を備える。そして、この構成においては、従来のようにフッ素をカルシウム系化合物で除去し、ホウフッ化物をアルミニウム系化合物で分解し、さらにカルシウム系化合物でフッ素およびホウ素を除去するといった多段階の処理を行うことなく、エッチング廃液を適正に処理することが可能になる。
【0010】
好ましくは、このエッチング廃液処理システムが、第1の反応槽、第2の反応槽、および無害化手段を備えることである。第1の反応槽は、エッチング廃液に対してアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含むアルカリ性固化剤を添加して反応させることによって、エッチング廃液の酸性度を緩和しつつ送液可能な程度に増粘するように構成される。アルカリ土類金属は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)の4種の金属元素を意味することもあるが、この発明では、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)も含んだ6種の金属元素を意味するものとする。アルカリ性固化剤に好適に用いられる化合物の例としては、CaO、Ca(OH)2 、CaCO、MgO、Mg(OH)2 、およびMgCO3が挙げられるが、これらには限定されない。
【0011】
第2の反応槽は、第1の反応槽から送られた増粘エッチング廃液に対して、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含むアルカリ性固化剤をさらに添加して反応させることによって、増粘エッチング廃液を中性汚泥化するように構成される。第2の反応槽において用いられるアルカリ性固化剤は、原則として、第1の反応槽で用いるものと同一であるが、適宜、異なるものを用いるようにすることも可能である。
【0012】
無害化手段は、少なくとも第1の反応槽から発生する気体を無害化するように構成される。無害化手段の代表例としては、酸性のガスを無害化するように構成された酸性スクラバが挙げられるが、これに限定されるものではない。通常、第2の反応槽では、発生する気体のほぼすべてが水蒸気になるが、有害な気体が発生するリスクがある場合には、第2の反応槽から発生する気体を無害化する無害化手段を別途設けるか、第1の反応槽および第2の反応槽の両方に対応可能な無害化手段を設けるようにすると良い。
【0013】
上記の構成を備えたエッチング廃液処理システムにおいては、水分との反応性が高く、水分蒸発および中和を同時に発生させ易いアルカリ性固化剤が用いられることによって、エッチング廃液の中性固化および減容化が実現する。特に、第1の反応槽および第2の反応槽の2段構えを採用した場合には、第1の反応槽においてエッチング廃液の酸性度が緩和されるため、第2の反応槽やその周囲に要求される耐酸性を低減することが可能となり、必要となる設備の簡素化が図られる。その一方で、酸性の有害な気体が発生し易い第1の反応槽においては、無害化手段によって発生気体を無害化しているため、環境汚染の発生を防止することも可能となる。
【0014】
この発明に係るエッチング廃液処理方法は、フッ化水素酸を用いたエッチング処理で発生するエッチング廃液を処理するためのものである。このエッチング廃液処理方法は、エッチング廃液に対して、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含むアルカリ性固化剤を添加して反応させることによって、エッチング廃液を中性汚泥化する固化ステップを少なくとも含む。
【0015】
好ましくは、本発明に係るエッチング廃液処理方法が、第1の固化ステップと、第2の固化ステップとを少なくとも含んでいることである。第1の固化ステップは、エッチング廃液に対してアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含むアルカリ性固化剤を添加して反応させることによって、エッチング廃液の酸性度を緩和しつつ送液可能な程度に増粘させる。第2の固化ステップは、第1の固化ステップによって得られた増粘エッチング廃液に対して、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含むアルカリ性固化剤をさらに添加して反応させることによって、増粘エッチング廃液を中性汚泥化する。
【0016】
このようなエッチング廃液処理方法においては、エッチング廃液の中和および固化をする際に、エッチング廃液の酸性度を緩和しつつ送液可能な程度に増粘させるステップ(前処理)、および増粘させたエッチング廃液の中性汚泥化をするステップ(本処理)の2段階に分けて処理が行われる。このように、固化処理を分けて行うことにより、一度に発熱する量を抑えることができ、安全性が高まる。また、前処理において、酸性度が緩和されるため、前処理後の設備にはやや耐酸性度が低いものを採用することが可能になるため、設備費用の削減を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ガラス基板のエッチング処理で発生するエッチング廃液の状態に関わらず、エッチング廃液の処理を簡易かつコストを抑えつつ実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る廃液処理システムに係る概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る廃液処理システムに係る概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る廃液処理システム10の概略を示している。廃液処理システム10は、ガラス基板に対してエッチング処理を行うエッチング装置100に接続されている。エッチング装置100では、フッ化水素酸を含むエッチング液を用いてガラス基板をエッチング処理しており、エッチング装置100から排出されるエッチング廃液が廃液処理システム10において適正に処理される。なお、以下の実施形態では、ガラス基板に対してエッチング処理を行うエッチング装置100の廃液を処理する例を説明するが、半導体ウェハやその他の半導体基板に対してエッチング処理を行うエッチング装置の廃液を処理する際にも本発明を利用することが可能である。
【0020】
廃液処理システム10は、廃液収容槽12、送液ポンプ14、反応槽15、汚泥収容槽200、酸スクラバ30、および固化剤収容部(サイロ)40を少なくとも備えており、必要に応じてpH計や温度計等が適宜設けられている。廃液収容槽12は、エッチング装置100から排出されるエッチング廃液を収容するように構成される。この実施形態では、廃液収容槽12において、ガラス基板のエッチング処理後に発生するケイフッ化水素酸を含むエッチング廃液を適正に収容できるように構成されている。廃液収容槽12は、攪拌機122を備えており、収容されている廃液を必要に応じて撹拌することが可能である。
【0021】
送液ポンプ14は、廃液収容槽12に収容されたエッチング廃液を反応槽15に送り出すように構成される。反応槽15は、廃液処理槽12からのエッチング廃液を受け入れるように構成されており、受け入れたエッチング廃液を中性汚泥化するように構成される。ここでは、アルカリ性固化剤としてのCaO(酸化カルシウム)が固化剤収容部40から反応槽15に添加される。反応槽15にて行われる主な反応は次のとおりである。
(式) H2SiF6 + 3CaO → 3CaF2 + SiO2 + H2
【0022】
反応槽15は、混練スクリュとして機能する耐酸性および耐熱性を備えた攪拌機152を備えている。また、反応槽15においてエッチング廃液の温度が90℃近くまで上昇し多くの気体を発生させるため、反応槽15の近傍には、チラーまたはクーリングタワー等の冷却装置(図示省略)および酸スクラバ30が配置されている。ここでは、酸スクラバ30が反応槽15の上方を覆うように配置されており、反応槽15における化学反応で発生する気体は、酸スクラバ30によって無害化された後に大気中に排出される。酸スクラバ30において捕捉された酸性の薬液は、必要に応じて廃液収容槽12に帰還させるようにしても良い。
【0023】
反応槽15における上記式の反応が進むと、pHが徐々に大きくなって酸性度が緩和されるとともに、SiO2 ゲルの生成によりエッチング廃液の粘性が高まる。さらに、増粘されたエッチング廃液とアルカリ性固化剤としてのCaO(酸化カルシウム)とを混練することによって、エッチング廃液が中性汚泥化する。
【0024】
この実施形態では、水分との反応性が高いCaOを添加することによって、中和熱を利用してエッチング廃液の水分を蒸発させることが可能になる。全量を含水率の低い中性汚泥にすることによって、廃棄物の減量化を図ることが可能になる。出願人の分析によると、エッチング廃液中の水分の30%程度が蒸発していることが把握されている。この実施形態においては、以下の蒸発反応と中和反応が同時に発生しているものと考えられる。
蒸発反応:CaO + H2O → Ca(OH)2
中和反応:H2SiF6 + 3Ca(OH)2 → 3CaF2 + SiO2 + 4H2
【0025】
また、この実施形態によれば、反応熱を利用してエッチング廃液の水分を蒸発させるため、エッチング廃液の状態に関わらず、中性汚泥の減量化を行うことが可能になり、費用の抑制が可能になる。しかも、廃液処理の過程で排出する排水を処理する設備を別途設ける必要がなくなるため、廃液処理のための設備の簡素化を図ることが可能になる。
【0026】
続いて、図2を用いて、本発明の第2の実施形態に係る廃液処理システム11を説明する。廃液処理システム11は、ガラス基板に対してエッチング処理を行うエッチング装置100に接続されている。エッチング装置100では、フッ化水素酸を含むエッチング液を用いてガラス基板をエッチング処理しており、エッチング装置100から排出されるエッチング廃液が廃液処理システム11において適正に処理される。
【0027】
廃液処理システム11は、廃液収容槽12、送液ポンプ14,18、第1の反応槽16、第2の反応槽20、汚泥収容槽200、酸スクラバ30、中性スクラバ32、および固化剤収容部40を備えている。廃液収容槽12は、エッチング装置100から排出される排液を収容するように構成される。この実施形態では、廃液収容槽12では、ガラス基板のエッチング処理後に発生するケイフッ化水素酸を含むエッチング廃液を適正に収容できるように構成されている。廃液収容槽12は、攪拌機122を備えており、収容されている廃液を必要に応じて撹拌することが可能である。
【0028】
送液ポンプ14は、廃液収容槽12に収容されたエッチング廃液を第1の反応槽16に送り出すように構成される。第1の反応槽16は、廃液処理槽12からのエッチング廃液を受け入れるように構成されており、受け入れたエッチング廃液の酸性度を緩和する前処理を行うように構成される。ここでは、アルカリ性固化剤としてのCaO(酸化カルシウム)が固化剤収容部40から第1の反応槽16に添加される。第1の反応槽16にて行われる主な反応は次のとおりである。
(式) H2SiF6 + 3CaO → 3CaF2 + SiO2 + H2
【0029】
第1の反応槽16は、攪拌機162を備えており、槽内の液体が撹拌されるように構成されている。また、第1の反応槽16においてエッチング廃液の温度が90℃近くまで上昇し多くの気体を発生させるため、第1の反応槽16の近傍には、チラーまたはクーリングタワー等の冷却装置(図示省略)および酸スクラバ30が配置されている。ここでは、酸スクラバ30が第1の反応槽16の上方を覆うように配置されており、第1の反応槽16における化学反応で発生する気体は、酸スクラバ30によって無害化された後に大気中に排出される。酸スクラバ30において捕捉された酸性の薬液は、必要に応じて廃液収容槽12に帰還させるようにしても良い。
【0030】
第1の反応槽16における上記式の反応が進むと、pHが徐々に大きくなって酸性度が緩和されるとともに、SiO2 ゲルの生成によりエッチング廃液の粘性が高まる。エッチング廃液の粘性が高まりすぎると送液ポンプ18によってエッチング廃液を第2の反応槽20に送り出せなくなるため、送液ポンプで送ることが可能な程度に粘度を抑えるために、CaO(酸化カルシウム)の添加量を調整することが重要である。
【0031】
この実施形態では、例えば、100グラムのエッチング廃液に対して40グラムのCaO(酸化カルシウム)を添加して中性化処理および固化処理を行う場合、40グラムの50%に相当する20グラムのCaO(酸化カルシウム)を添加しても、送液ポンプ18における送液に問題ないことを確認している。第1の反応槽16において、中性化処理および固化処理に必要な量の50%を超えるCaO(酸化カルシウム)を添加した場合、反応後に反応液の温度が常温まで低下する過程で固化したり、反応の途中で固化が始まり適正な撹拌ができなくなったりするリスクがあることが確認されている。一方で、中性化処理および固化処理に必要な量の50%未満のCaO(酸化カルシウム)を添加しても酸性度を十分に緩和できないことも確認されている。
【0032】
第1の反応槽16において、中性化処理および固化処理に必要な量の25〜50%のCaO(酸化カルシウム)を添加して、酸性度が緩和され、かつ、適度に増粘されたエッチング廃液は、送液ポンプ18によって第2の反応槽20に送られる。第2の反応槽20は、混練スクリュとして機能する攪拌機202を備えており、増粘されたエッチング廃液とアルカリ性固化剤としてのCaO(酸化カルシウム)とを混練することによって、エッチング廃液の中性汚泥化を行うように構成されている。また、第2の反応槽20の近傍にも、チラーまたはクーリングタワー等の冷却装置(図示省略)が配置されている。
【0033】
第2の反応槽20においても混練中に反応熱によってエッチング廃液の温度が90℃程度まで上昇する。ただし、第2の反応槽20にて発生する気体の大部分は水蒸気であるため、第2の反応槽20の近傍には酸スクラバではなく、中性スクラバ32が配置されている。中性スクラバ32では、大気に放出すべきでない粉塵等を捕捉しつつ、水蒸気を大気に排出している。
【0034】
この実施形態では、水分との反応性が高いCaOを添加することによって、中和熱を利用してエッチング廃液の水分を蒸発させることが可能になる。全量を含水率の低い中性汚泥にすることによって、廃棄物の減量化を図ることが可能になる。出願人の分析によると、エッチング廃液中の水分の30%程度が蒸発していることが把握されている。この実施形態においては、以下の蒸発反応と中和反応が同時に発生しているものと考えられる。
蒸発反応:CaO + H2O → Ca(OH)2
中和反応:H2SiF6 + 3Ca(OH)2 → 3CaF2 + SiO2 + 4H2
【0035】
また、この実施形態によれば、反応熱を利用してエッチング廃液の水分を蒸発させるため、エッチング廃液の状態に関わらず、中性汚泥の減量化を行うことが可能になり、費用の抑制が可能になる。しかも、廃液処理の過程で排出する排水を処理する設備を別途設ける必要がなくなるため、廃液処理のための設備の簡素化を図ることが可能になる。
【0036】
比較的少量で固化剤として機能し、かつ安価なことから、酸化カルシウム(CaO)を使用する例を説明したが、固化および中和の機能を同時に発揮する固化剤であれば、特定の固化剤に限定されない。例えば、固化剤として酸化マグネシウム(MgO)等の他のアルカリ土類金属酸化物や、その他アルカリ土類金属水酸化物やアルカリ土類金属炭酸塩を固化剤として用いることが可能である。固化剤は、粒度の小さいものが接触性、撹拌混合性の点から好ましい。また、粒径の大きさによって反応性が変わるため、反応に好適な粒径になるように適宜調整することが好ましい。
【0037】
さらには、2種類以上のアルカリ土類金属酸化物等を混ぜることによって固化剤を生産することも可能である。一般的には、酸化カルシウム(CaO)の配合量が多いと固化時の発熱が大きく、固化物が固形状となりやすい。酸化マグネシウム(MgO)の配合量が多いと固化時発熱が少なく、固化物は小さな粒状物となりやすい。酸化カルシウムと酸化マグネシウムを適当な比率で配合することによって、安全で固化効果が高い固化剤をカスタマイズすることが可能になる。
【0038】
MgO等の他のアルカリ土類金属酸化物を用いる場合には、Si濃度が高い方が固化し易いとか、フッ素濃度が高い方が固化し易い等、固化し易い条件が異なっているため、固化すべき廃液の状態を考慮して、適宜固化剤を選択するようにすると良い。必要に応じて、架橋型高吸水性ポリマー等を適量添加するようにしても良い。
【0039】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
10,11−廃液処理システム
12−廃液収容槽
14,18−送液ポンプ
15−反応槽
16−第1の反応槽
20−第2の反応槽
22−汚泥収容槽
30−酸スクラバ
32−中性スクラバ
40−固化剤収容部(サイロ)
100−エッチング装置
122,162,152,202−攪拌機
図1
図2