【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0044】
実施例1
厚さ2mmのニッケルプレートを用意し、円柱状の凸部(外径35μm、高さ30μm)を形成し、転写体原盤とした。凸部の配置は、7mm角の200μm内側に280箇所ペリフェラル配置であり、また、凸部の密度は5.7個/mm
2であった。
【0045】
得られた転写体原盤に、フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、アクリレート樹脂(M208、東亞合成(株))29質量部、光重合開始剤(IRGCUR184、BASFジャパン(株))2質量部を含有する光重合性樹脂組成物を、乾燥厚みが30μmとなるように塗布し、80℃で5分間乾燥後、高圧水銀ランプにて1000mJ光照射することにより転写体を作成した。
【0046】
転写体原盤から引き剥がした転写体の表面にバンプ用導電フィラーとして平均粒子径30μmの半田粒子(微粉半田粉、三井金属鉱業(株))を散布した後、エアブローすることにより凹部に半田粒子を充填した。
【0047】
転写体の半田粒子充填面に対し、PETフィルム上に成膜された厚さ20μmの絶縁性接着樹脂フィルムを載せ、温度50℃、圧力0.5MPaで押圧することにより、絶縁性接着樹脂フィルムに半田粒子を埋め込みながら転写させた。導電粒子の配列パターンは、1:1配列(一つの電極パッドに一つの導電粒子が配置されている態様)であった。これにより、全厚が30μmのバンプ形成用フィルムを得た。なお、このバンプ形成用フィルムにおいては導電粒子の一方の端部とフィルム界面とが略一致していた。
【0048】
なお、実施例1で使用した絶縁性接着樹脂フィルムは、フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))40質量部、及びカチオン系硬化剤(SI−60L、三新化学工業(株))2質量部を含む混合溶液を調製し、それをフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させて得たフィルムである。
【0049】
実施例2
凸部の外径を25μm、高さを20μmに変更した転写体原盤を使用する以外、実施例1と同様の操作を繰り返すことにより転写体を用意し、この転写体に対し、平均粒子径20μmの半田粒子(微粉半田粉、三井金属鉱業(株))を散布した後、エアブローすることにより凹部に半田粒子を充填した。
【0050】
半田粒子が充填された転写体の両面に対し、実施例1と同様に絶縁性接着樹脂フィルムを適用することにより、全厚が30μmのバンプ形成用フィルムを得た。なお、このバンプ形成用フィルムにおいても実施例1と同様に導電粒子の一方の端部とフィルム界面とが略一致していた。
【0051】
実施例3
転写体原盤の凸部の密度を平均して28.5個/mm
2とし、更に導電粒子の配列パターンを、
図7に示すように1:5配列とする以外、実施例2と同様の操作を繰り返すことによりバンプ形成用フィルムを得た。本実施例では、1:5配列として、フィルムを平面視した場合に、転写すべき電極パッドPとそれに近接して導電粒子2を計5個配置した。
【0052】
比較例1
凸部をランダムに配した転写体原盤(凸部の密度は60個/mm
2)を使用すること以外、実施例1と同様の操作を繰り返すことによりバンプ形成用フィルムを得た。
【0053】
実施例4〜6及び比較例2
転写体の半田粒子充填面に適用する絶縁性接着樹脂フィルムとして、PETフィルム上に成膜された厚さ30μmの絶縁性接着樹脂フィルムを載せ、温度50℃、圧力0.5MPaで押圧することにより、絶縁性接着樹脂フィルムに半田粒子を埋め込みながら転写させたこと以外、実施例1〜3及び比較例1と同様の操作を繰り返すことにより、それぞれ全厚が30μmのバンプ形成用フィルムを得た。なお、これらのバンプ形成用フィルムにおいても実施例1と同様に導電粒子の一方の端部とフィルム界面とが略一致していた。
【0054】
なお、実施例4〜6及び比較例2で使用した絶縁性接着樹脂フィルムは、フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))30質量部、アクリルモノマー(ライトアクリレート3EGA、共栄社化学(株))60質量部、及び光ラジカル重合開始剤(IRGACURE 184、BASFジャパン(株))3質量部を含む混合溶液を調製し、それをフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させて得たフィルムである。
【0055】
実施例7〜9及び比較例3
転写体の半田粒子充填面に適用する絶縁性接着樹脂フィルムとして、PETフィルム上に成膜された厚さ30μmの絶縁性接着樹脂フィルムを載せ、温度50℃、圧力0.5MPaで押圧することにより、絶縁性接着樹脂フィルムに半田粒子を埋め込みながら転写させたこと以外、実施例1〜3及び比較例1と同様の操作を繰り返すことにより、それぞれ全厚が30μmのバンプ形成用フィルムを得た。なお、これらのバンプ形成用フィルムにおいても実施例1と同様に導電粒子の一方の端部とフィルム界面とが略一致していた。
【0056】
なお、実施例7〜9及び比較例3で使用した絶縁性接着樹脂フィルムは、フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))30質量部、アクリルモノマー(ライトアクリレート3EGA、共栄社化学(株))60質量部、離型剤(BYK3500、ビックケミー・ジャパン(株))3質量部及び光ラジカル重合開始剤(IRGACURE 184、BASFジャパン(株))3質量部を含む混合溶液を調製し、それをフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させて得たフィルムである。
【0057】
(評価)
実施例1〜9及び比較例1〜3のバンプ形成用フィルムを使用して以下に説明するように接続構造体を作成し、バンプ形成時の導通抵抗値(初期導通抵抗値)と、温度85℃、湿度85%の環境下で電圧50V印可時の導通抵抗値(高温高湿バイアス試験後抵抗値)とを測定し評価した。導抵抗値は、デジタルマルチメータ(34401A、アジレント・テクノロジー(株))を用いて4端子法で1mAの通電条件下で測定した。
【0058】
初期導通抵抗値については、5Ω以下を良好(G)とし、それを超える場合を不良(NG)とした。また、高温高湿バイアス試験後導通抵抗値については、20Ω以下を良好(G)とし、それを超える場合を不良(NG)とした。得られた結果を表1に示す。
【0059】
(実施例1〜3、比較例1のバンプ形成用フィルムを用いた接続構造体の作成)
ペリフェラル配置のアルミ電極パッド(直径30μm、85μmピッチ、280ピン)を有するバンプレスICチップ(サイズ:7mm縦×7mm横×200μm厚)の当該電極パッドにバンプ形成用フィルムを配置し、温度50℃、圧力0.5MPaで押圧することにより貼り付け固定した。実施例1〜2の場合には一つの電極パッドに一つのバンプ用導電フィラー(半田粒子)が対応するようにした。このバンプ形成用フィルムが貼り付けられたICチップを、IC実装用ガラスエポキシ基板(材質:FR4)に、温度180℃、圧力40MPa、加熱加圧時間10秒という条件で接続した。これにより接続構造体を得た。
【0060】
(実施例4〜6、比較例2のバンプ形成用フィルムを用いた接続構造体の作成)
バンプ形成用フィルムを、実施例1と同様にICチップに貼り付けた後、波長365nmの紫外線を照射(照射強度100mW、照射量2000mW/cm
2)し、光ラジカル重合させることにより固定した。実施例3〜4の場合には一つの電極パッドに一つのバンプ用導電フィラー(半田粒子)が対応するようにした。このバンプ形成用フィルムが貼り付けられたICチップを、カチオン重合性絶縁性接着樹脂フィルム(フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))40質量部、及びカチオン系硬化剤(SI−60L、三新化学工業(株))2質量部からなるフィルム)を介して、IC実装用ガラスエポキシ基板(材質:FR4)に、温度180℃、圧力40MPa、加熱加圧時間20秒という条件で接続した。これにより接続構造体を得た。
【0061】
(実施例7〜9、比較例3のバンプ形成用フィルムを用いた接続構造体の作成)
バンプ形成用フィルムを、実施例1と同様にICチップに貼り付けた後、波長365nmの紫外線を照射(照射強度100mW、照射量2000mW/cm
2)し、光ラジカル重合させることにより固定した。実施例5〜6の場合には一つの電極パッドに一つのバンプ用導電フィラー(半田粒子)が対応するようにした。このバンプ形成用フィルムをICチップから引きはがしたところ、ICチップの電極パッドにバンプ形成用導電フィラーが接合されていた。次に、この状態のICチップを、IC実装用ガラスエポキシ基板(材質:FR4)に、温度180℃、圧力40MPa、加熱加圧時間20秒という条件で接続した。これにより接続構造体を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
表1からわかるように、実施例1〜9のバンプ形成用フィルムは、バンプレスICチップの電極パッドに、バンプとして機能する導電フィラーを配置することができ、「初期導通抵抗」及び「高温高湿バイアス試験後導通抵抗」の評価が良好であった。また、ショートの発生もなかった。特に、実施例3、6及び9のバンプ形成フィルムの場合には、バンプレスICチップの一つの電極パッド及びその近傍に存在する導電フィラーの個数が5個となっている。このため、接続構造体の製造時に、バンプ形成フィルムとバンプレスICチップの電極パッドとの間の位置合わせ精度を向上させることができる。それに対し、比較例1〜3のバンプ形成用フィルムは、「初期導通抵抗」及び「高温高湿バイアス試験後導通抵抗」の評価がいずれも不良であった。ショートも発生した。
【0064】
実施例10
実施例1から、転写体原盤の凸部を外径12μm、高さ10μmに変更し、導電粒子の配列を
図8に示すように1:4配列に変更し、更にバンプ用導電フィラーを平均粒子径10μmの金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))に変更し、絶縁性接着樹脂フィルムの厚みを8μmにすること以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより、全厚が10μmのバンプ形成用フィルムを得た。なお、転写体原盤における凸部の密度は22.9個/mm
2であった。また、凸部の最近接距離は4.9μmであった。
【0065】
実施例11
実施例1から、転写体原盤の凸部を外径12μm、高さ10μmに変更し、導電粒子の配列を
図9に示すように1:16配列に変更し、更にバンプ用導電フィラーを平均粒子径10μmの金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))に変更すること以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより、全厚が10μmのバンプ形成用フィルムを得た。このようにバンプの外周部にもバンプ用導電フィラーを存在させることで、フィルムの貼り合せ工程のズレの許容範囲を広くすることができる。なお、転写体原盤における凸部の密度は91.4個/mm
2であった。また、凸部の最近接距離は4.9μmであった。
【0066】
実施例12
実施例1から、転写体原盤の凸部を外径12μm、高さ10μmに変更し、導電粒子の配列を
図10に示すように1:3配列に変更し、更にバンプ用導電フィラーを平均粒子径10μmの金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))に変更すること以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより、全厚が10μmのバンプ形成用フィルムを得た。なお、転写体原盤における凸部の密度は17.1個/mm
2であった。また、凸部の最近接距離は4.9μmであった。
【0067】
実施例13
実施例1から、転写体原盤の凸部を外径12μm、高さ10μmに変更し、導電粒子の配列を
図11に示すように1:9配列に変更し、更にバンプ用導電フィラーを平均粒子径10μmの金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))に変更すること以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより、全厚が10μmのバンプ形成用フィルムを得た。このようにバンプの外周部にもバンプ用導電フィラーを存在させることで、フィルムの貼り合せ工程のズレの許容範囲を広くすることができる。なお、転写体原盤における凸部の密度は51.4個/mm
2であった。また、凸部の最近接距離は4.9μmであった。
【0068】
実施例14
実施例1から、転写体原盤の凸部を外径12μm、高さ10μmに変更し、導電粒子の配列を
図12に示すように1:6配列に変更し、更にバンプ用導電フィラーを平均粒子径10μmの金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))に変更すること以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより、全厚が30μmのバンプ形成用フィルムを得た。なお、転写体原盤における凸部の密度は34.3個/mm
2であった。また、凸部の最近接距離は4.9μmであった。
【0069】
実施例15
実施例1から、転写体原盤の凸部を外径12μm、高さ10μmに変更し、導電粒子の配列を
図13に示すように1:20配列に変更し、更にバンプ用導電フィラーを平均粒子径10μmの金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))に変更すること以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより、全厚が10μmのバンプ形成用フィルムを得た。このようにバンプの外周部にもバンプ用導電フィラーを存在させることで、フィルムの貼り合せ工程のズレの許容範囲を広くすることができる。なお、転写体原盤における凸部の密度は114.3個/mm
2であった。また、凸部の最近接距離は4.9μmであった。
【0070】
実施例16
実施例1から、転写体原盤の凸部を外径24μm、高さ20μmに変更し、導電粒子の配列を
図14に示すように1:2配列に変更し、更にバンプ用導電フィラーを平均粒子径20μmの金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))に変更し、絶縁性接着樹脂フィルムの厚みを16μmにすること以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより、全厚が20μmのバンプ形成用フィルムを得た。なお、転写体原盤における凸部の密度は11.4個/mm
2であった。また、凸部の最近接距離は9.9μmであった。
【0071】
実施例17
実施例1から、転写体原盤の凸部を外径24μm、高さ20μmに変更し、導電粒子の配列を
図15に示すように1:8配列に変更し、更にバンプ用導電フィラーを平均粒子径20μmの金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))に変更すること以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより、全厚が20μmのバンプ形成用フィルムを得た。このようにバンプの外周部にもバンプ用導電フィラーを存在させることで、フィルムの貼り合せ工程のズレの許容範囲を広くすることができる。なお、転写体原盤における凸部の密度は45.71個/mm
2であった。また、凸部の最近接距離は9.9μmであった。
【0072】
(実施例10〜17のバンプ形成用フィルムを用いた接続構造体の作成)
実施例10〜15のバンプ形成用フィルムを用いる以外、実施例1の場合と同様に接続構造体を作成した。また、実施例16及び17のバンプ形成用フィルムの場合には、評価対象となるペリフェラル配置のアルミ電極パッドを、縦30μm×横85μm、85μmピッチ(パッド間スペース55μm)、280ピンのものに変更する以外は実施例1の場合と同様に接続構造体を作成した。
【0073】
実施例10〜17で作成した接続構造体の初期導通抵抗の評価を、実施例1の場合と同様に行ったところ、すべて5Ω以下であり、実用上問題ないことが確認できた。また、85℃/85%環境試験500時間後の導通信頼性試験を行ったところ、高温高湿バイアス試験後導通抵抗値は全て20Ω以下の結果を示し、実用性に問題ないことを確認した。また、全てにおいてショートは発生しなかった。
【0074】
また、実施例10〜15の樹脂フィルムについては、それぞれ厚みを20μmに変更し、及び実施例16および17の樹脂フィルムについては、それぞれ厚みを25μmに変更し、且つ導電粒子をフィルムの一方の面に押し込み埋没させた以外は、それぞれ実施例10〜17と同様の操作を繰り返すことにより、バンプ形成用フィルムと接続構造体とを作成した。これらについてそれぞれ実施例10〜17と同様に評価したところ、実施例10〜17の場合と同様に良好な結果が得られた。