特許第6750246号(P6750246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750246
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2484 20160101AFI20200824BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20200824BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20200824BHJP
【FI】
   H01M8/2484
   H01M8/04 Z
   !H01M8/12 101
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-33368(P2016-33368)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-152205(P2017-152205A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】勝 洋明
(72)【発明者】
【氏名】山森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 聡
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−054175(JP,A)
【文献】 特開2007−059377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/2484
H01M 8/04
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に収納され、酸化剤ガスと燃料とで発電を行う燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池スタックと、
前記ケーシング内に収納され、前記燃料電池スタックにおける前記燃料電池セルの積層方向に沿った側面に配置され、かつ、前記積層方向に沿って延ばして設けられ、前記酸化剤ガスが、前記各燃料電池セルの一端側から他端側に沿って内部を流れた後に、導出部から前記各燃料電池セルの他端側に供給される酸化剤ガス導入部材と、
前記ケーシング側に設けられ、前記酸化剤ガス導入部材の前記導出部に対向する対向部と、
前記酸化剤ガス導入部材の前記導出部と前記対向部とのうちの少なくともいずれか一方に設けられ、前記導出部から導出された酸化剤ガスの流量を、前記積層方向において中央部が端部と比較して増大させる酸化剤ガス流量調整部と、を備え
前記酸化剤ガス流量調整部は、前記酸化剤ガス導入部材の前記導出部に設けられ、前記導出部は、複数の導出口から構成され、前記複数の導出口は、その開口方向が前記中央部から前記端部へ行くにしたがって前記中央部に傾くように設けられている燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記酸化剤ガス流量調整部は、前記酸化剤ガス導入部材の前記導出部に設けられ、前記導出部は、複数の導出口から構成され、前記複数の導出口は、前記積層方向において前記中央部が前記端部と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大するように構成されている請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記酸化剤ガス流量調整部は、前記対向部に設けられ、前記対向部は、前記積層方向において前記中央部から前記端部に行くに従って浅くなる傾斜面が設けられて、前記導出部から導出された酸化剤ガスを反射させる請求項1又は2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
前記酸化剤ガス流量調整部が、前記対向部に設けられ、前記対向部は、前記燃料電池セルに燃料を供給するとともに前記燃料電池セルが積層された燃料マニホールドの表面部である請求項1乃至のいずれか一項に記載の燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤ガスと燃料とで発電を行う燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池スタックを収納してなる燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この様な燃料電池モジュールにおいては、起動や発電に伴い燃料電池スタックに生じた熱を、燃料電池スタックを構成する燃料電池セルの積層方向の端部に配置される燃料電池セルは放熱しやすいが、燃料電池スタックを構成する燃料電池セルの積層方向の中央部に配置される燃料電池セルは放熱しにくい。そのため、燃料電池スタック全体として、中央部側の温度が高く、端部側の温度が低いという不均一な温度分布を生じて、燃料電池スタックの発電効率が低下する。この不具合を解消するために、温度の高い燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路を燃料電池スタックの両端部と対向する位置に設けるようにして、燃料電池セルの積層方向における両端部の温度が低下することを抑制できる(または両端部の温度を上昇させることができる)とともに、燃料電池セルの積層方向における中央部側の温度を低下させることができ、燃料電池スタック全体としての温度分布を均一に近づけていた。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−80153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この様な構成においては、燃焼排ガス流路を構成する部材を、燃料電池セルの積層方向の両端それぞれに燃料電池セルの長手方向に沿って設けねばならないため、部品点数が増える欠点を有する。
【0005】
そこで、本発明は、部品点数を増やすことなく、燃料電池セルの積層方向の中央部に位置した燃料電池セルの温度を低下させることができる燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池モジュールは、ケーシングと、前記ケーシング内に収納され、酸化剤ガスと燃料とで発電を行う燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池スタックと、前記ケーシング内に収納され、前記燃料電池スタックにおける前記燃料電池セルの積層方向に沿った側面に配置され、かつ、前記積層方向に沿って延ばして設けられ、前記酸化剤ガスが、前記各燃料電池セルの一端側から他端側に沿って内部を流れた後に、導出部から前記各燃料電池セルの他端側に供給される酸化剤ガス導入部材と、前記ケーシング側に設けられ、前記酸化剤ガス導入部材の前記導出部に対向する対向部と、前記酸化剤ガス導入部材の前記導出部と前記対向部とのうちの少なくともいずれか一方に設けられ、前記導出部から導出された酸化剤ガスの流量を、前記積層方向において中央部が端部と比較して増大させる酸化剤ガス流量調整部と、を備え、前記酸化剤ガス流量調整部は、前記酸化剤ガス導入部材の前記導出部に設けられ、前記導出部は、複数の導出口から構成され、前記複数の導出口は、その開口方向が前記中央部から前記端部へ行くにしたがって前記中央部に傾くように設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る燃料電池モジュールによれば、酸化剤ガス流量調整部が、酸化剤ガス導入部材の導出部と対向部とのうちの少なくともいずれか一方に設けられ、導出部から導出された酸化剤ガスの流量が、積層方向において中央部が端部と比較して増大される。これにより、燃料電池セルの積層方向の中央部に位置した燃料電池セルは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がるため、その結果、部品点数を増やすことなく、燃料電池セルの積層方向の中央部に位置した燃料電池セルの温度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る燃料電池モジュールを用いた燃料電池システムの概要図である。
図2図1に示した燃料電池モジュールの断面を示す概略図である。
図3】本発明に係る燃料電池モジュールにおける酸化剤ガス流量調整部の第一実施形態を示し、図2のA−A線部分断面図である。
図4】本発明に係る燃料電池モジュールにおける酸化剤ガス流量調整部の第二実施形態を示し、図2に示した燃料電池モジュールにおける酸化剤ガス導入部材の底面図である。
図5】本発明に係る燃料電池モジュールにおける酸化剤ガス流量調整部の第三実施形態を示し、図2のA−A線部分断面図である。
図6】本発明に係る燃料電池モジュールにおける酸化剤ガス流量調整部の第四実施形態を示し、図2のA−A線部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
以下、本発明に係る燃料電池モジュールを用いた燃料電池システムについて説明する。図1に示すように、燃料電池システムは、発電ユニット10及び貯湯槽21を備えている。発電ユニット10は、筐体10aを有し、筐体10aの内部には燃料電池モジュール11、熱交換器12、インバータ装置13、貯水器14、制御装置15、貯湯槽21を備えている。
【0010】
燃料電池モジュール11は、後述するように燃料電池34を少なくとも含んで構成されるものである。燃料電池モジュール11は、改質用原料、改質水および酸化剤ガスとして空気であるカソードエアが供給されている。改質用原料としては天然ガス、LPガスなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料がある。本実施形態においては天然ガスにて説明する。具体的には、燃料電池モジュール11は、一端が供給源Gs例えば都市ガス(天然ガス)のガス供給管に接続されて改質用原料が供給される改質用原料供給管11aの他端が接続されている。改質用原料供給管11aは、原料ポンプ11a1が設けられている。さらに、燃料電池モジュール11は、一端が貯水器14に接続されて改質水が供給される改質水供給管11bの他端が接続されている。改質水供給管11bは、改質水ポンプ11b2が設けられている。さらに、燃料電池モジュール11は、一端がカソードエアブロワ11c1に接続されてカソードエアが供給されるカソードエア供給管11cの他端が接続されている。
【0011】
熱交換器12は、燃料電池モジュール11から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とが熱交換する熱交換器である。具体的には、貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(図1にて矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、貯湯槽21の下端から上端に向かって順番に貯湯水循環ポンプ22a、ラジエータ22bおよび熱交換器12が配設されている。熱交換器12は、燃料電池モジュール11からの排気管11dが接続されている。熱交換器12は、貯水器14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
【0012】
熱交換器12において、燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、排気管11dを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。熱交換器12から排気された凝縮後の燃焼排ガスは、排気ダクト70に導出され、そして、後述するように、筐体10aに設けられた筐体排気口10eから筐体10aの外部へ排気される。また、凝縮された凝縮水は、熱交換器12から凝縮水供給管12aを通って貯水器14に供給される。なお、貯水器14は、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化するようになっている。
【0013】
燃料電池システムは、熱交換器12にて生じた凝縮水が供給された貯水器14から溢れ出た水は、オーバーフローライン14aを介して水受け部材14bにて受け止められ、排水管14cから、筐体10aの外部に排水される。
【0014】
排気ダクト70は、熱交換器12の下流側で分岐して水受け部材14bに連通するドレン管路12bが設けられている。
【0015】
上述した熱交換器12、貯湯槽21および貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して湯を蓄える。
【0016】
インバータ装置13は、燃料電池34から出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して、交流の系統電源16aおよび外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。また、インバータ装置13は、系統電源16aからの交流電圧が電源ライン16bを介して入力され所定の直流電圧に変換して補機(各ポンプ、ブロワなど)や制御装置15に出力する。なお、制御装置15は、補機を駆動して燃料電池システムの運転を制御する。
【0017】
燃料電池モジュール11は、ケーシング31、蒸発部32、改質部33および燃料電池34を備えている。ケーシング31は、断熱性材料で箱状に形成されている。蒸発部32は、後述する燃焼ガスにより加熱されて、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに、供給された改質用原料を予熱するものである。蒸発部32は、このように生成された水蒸気と予熱された改質用原料を混合して改質部33に供給するものである。
【0018】
蒸発部32には、一端(下端)が貯水器14に接続された改質水供給管11bの他端が接続されている。また、蒸発部32には、一端が供給源Gsに接続された改質用原料供給管11aが接続されている。
【0019】
改質部33は、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部32から供給された混合ガス(改質用原料、水蒸気)から燃料である改質ガス(アノードガス)を生成して改質ガス送出管38から導出するものである。
【0020】
燃料電池34は、燃料極、空気極(酸化剤極)、および両極の間に介装された電解質からなる複数の燃料電池セル34aが積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池34は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池34の燃料極には、燃料として水素、一酸化炭素、メタンガスなど、水素含有ガスが供給される。動作温度は400〜1000℃程度である。なお、400℃以下でも定格以下の発電量の発電は、可能である。また、600℃で発電開始を許可している。水素だけではなく天然ガスや石炭ガスなども直接燃料として用いることが可能である。この場合、改質部33は省略することができる。
【0021】
燃料電池セル34aの燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路34bが形成されている。燃料電池セル34aの空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する酸化剤ガス流路34cが形成されている。
【0022】
燃料電池34は、燃料マニホールド35上に設けられている。燃料マニホールド35には、燃料である改質部33からの改質ガスが改質ガス送出管38を介して供給される。燃料流路34bは、その下端(一端)が燃料マニホールド35の燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。カソードエアブロワ11c1によって送出されたカソードエアは、カソードエア供給管11cを介して供給され、酸化剤ガス流路34cの下端から導入され上端から導出されるようになっている。
【0023】
カソードエアブロワ11c1は、電気モータ11c2により駆動されるもので、電気モータ11c2の駆動デューティは、制御装置15にて演算される。カソードエア供給管11cのカソードエアブロワ11c1の下流側に設けられた流量センサ11c3は、カソードエアブロワ11c1が吐出するカソードエア流量を検出する。流量センサ11c3は、その検出結果を制御装置15に送信するようになっている。
【0024】
燃焼部36は、燃料電池34と蒸発部32および改質部33との間に設けられている。燃焼部36は、燃料電池34からのアノードオフガス(燃料オフガス)が燃料電池34からのカソードオフエア(酸化剤オフガス)により燃焼されて、燃焼ガス(火炎37)にて蒸発部32及び改質部33を加熱する。
【0025】
燃焼部36には、アノードオフガスを着火させるための一対の着火ヒータ36a1,36a2が設けられている。燃焼部36で生じた燃焼排ガスは、燃料電池モジュール11から排気管11d通って熱交換器12に至る。
【0026】
筐体10aには、排気ダクト70にて導出された熱交換器12からの燃焼排ガスを外部に排気するための筐体排気口10e、外気を吸い込むための吸気口10c、筐体10a内の空気を外部に排出するための換気用排気口10dが形成されている。吸気口10cには、逆止弁54が設けられている。逆止弁54は、外部から筐体10a内への空気の流れは許容するが、逆方向の流れを規制するものである。
【0027】
換気用排気口10dには、換気ファン55が設けられている。換気ファン55は筐体10a内の空気(換気排気)を外部に送出するものである。
【0028】
図2は、本発明の燃料電池モジュール11の断面を示す概略図である。燃料電池モジュール11は、ケーシング31の内部に、柱状の複数の燃料電池セル34aを積層して、その積層方向に延びた燃料電池スタック41が収納されている。積層された複数の燃料電池セル34aは、燃料電池セル34aに燃料を供給する燃料マニホールド35に固定される。即ち、燃料マニホールド35は、燃料電池セル34aに燃料を供給するとともに燃料電池セル34aが積層されている。図2に示す燃料電池モジュール11においては、燃料電池スタック41は二個として平行に設けた例を示すが、これに限定されるものではない。燃料電池セル34aの積層方向は、図2では、紙面貫通方向、図3乃至図6では紙面左右方向となる。
【0029】
図2に示す様に、ケーシング31の内部には、前述の蒸発部32及び改質部33が燃料電池スタック41の上方に配置され、改質部33で生成された燃料は、前述の改質ガス送出管38により、燃料マニホールド35に供給される。
【0030】
燃料電池モジュール11を構成するケーシング31は、図2に示す如く、内壁31aと外壁31bを有する二重構造で、外壁31bによりケーシング31の外枠が形成されるとともに、内壁31aにより燃料電池スタック41を収納する発電室42が形成されている。燃料電池モジュール11においては、内壁31aと外壁31bとの間を、燃料電池セル34aに導入する酸化剤ガス(カソードエア)が流通する前述の酸化剤ガス流路34cとしている。酸化剤ガス流路34cにて、酸化剤ガスは、ケーシング31内の上部へ案内される。
【0031】
図2に示す如く、ケーシング31内には、酸化剤ガス流路34cと連通した酸化剤ガス導入部材43が収納されている。酸化剤ガス導入部材43は、燃料電池スタック41における燃料電池セル34aの積層方向に沿った側面側に配置され、かつ、燃料電池セル34aの積層方向に沿って延ばして設けられる。即ち、酸化剤ガス導入部材43は、燃料電池スタック41の燃料電池セル34aの積層方向における幅に対応する幅を有して、燃料電池セル34aの積層方向に沿った側面側に配置される。酸化剤ガス導入部材43は、酸化剤ガスが、各燃料電池セル34aの一端側(図2の上端側)から他端側(図2の下端側)に沿って内部を流れた後に、酸化剤ガスを各燃料電池セル34aの他端側(図2の下端側)に供給する導出部44を備える。酸化剤ガス導入部材43は、図2に示す如く、燃料電池セル34aの積層方向に沿った側面側に設けられた側壁43a,43b及び下端に設けられた底蓋43cを備える。又、導出部44も、燃料電池スタック41の燃料電池セル34aの積層方向における幅に対応する幅に亘って、酸化剤ガス導入部材43に設けられる。
【0032】
ケーシング31側に設けられた前述の燃料マニホールド35は、ケーシング31側に、酸化剤ガス導入部材43の導出部44と対向する対向部35a(詳細には、燃料マニホールド35の表面部35a)を備える。
【0033】
燃料電池セル34aの積層方向に沿った内壁31aの内側には、燃焼排ガス用内壁31cが設けられおり、内壁31aと燃焼排ガス用内壁31cとの間が、発電室42内の燃焼排ガスが上方から下方に向けて流れる燃焼排ガス流路34dとされている。なお、燃焼排ガス流路34dは、ケーシング31の底部に設けられた前述の排気管11dと通じている。
【0034】
燃料電池スタック41において、燃料電池スタック41を構成する複数の燃料電池セル34aのうち、燃料電池セル34aの積層方向の端部側に配置される燃料電池セル34aは放熱しやすく、燃料電池スタック41を構成する燃料電池セル34aの積層方向の中央部側に配置される燃料電池セル34aは放熱しにくい。それゆえ、燃料電池スタック41全体として中央部側の温度が高く、端部側の温度が低いという不均一な温度分布を生じる場合がある。
【0035】
燃料電池スタック41の温度が不均一な温度分布となる場合においては、燃料電池スタック41の発電効率が低下するおそれがある。
【0036】
そこで、本発明は、導出部44から導出された酸化剤ガスの流量が、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大させる酸化剤ガス流量調整部を設けて、燃料電池スタック41の積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aの温度を低下させる。
【0037】
次に、酸化剤ガス流量調整部80aを、図3に基づいて、説明する。酸化剤ガス流量調整部80aは、図3に示す如く、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられる。酸化剤ガス流量調整部80aの導出部44は、図3に示す如く、酸化剤ガス導入部材43の側壁43a、43bに燃料電池セル34aの積層方向に沿って燃料電池セル34aの積層方向における幅に対応する幅に亘って、複数の導出口44aが設けられる。その複数の導出口44aは、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部(図3の左端及び右端)と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大する様に形成されている。
【0038】
酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられた複数の導出口44aは、図3に示す如く、燃料電池セル34aの積層方向において中央部から端部に亘って各燃料電池セル34aと対面し、各燃料電池セル34aに酸化剤ガスが供給される。複数の導出口44aは、前述の如く、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大しているので、複数の導出口44aから導出された酸化剤ガスの流量が、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大する。これにより、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がる.なお、複数の導出口44aにおける各導出口44aの単位面積当たりの開口面積は、燃料電池スタック41の燃料電池セル34aの積層方向における温度分布の測定結果に基づいて、適宜設定することができる。
【0039】
図3に基づいて、複数の導出口44aは、導出口44a自体の開口面積を燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大する例を説明した。しかしながら、これに代えて、例えば、複数の導出口44a自体の開口面積を同一とし、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して、隣り合う導出口44aの間隔を狭めて導出口44aを設けることにて、複数の導出口44aは燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大する様に変更すことも可能である。
【0040】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る酸化剤ガス流量調整部80bを、図4に基づいて、説明する。酸化剤ガス流量調整部80bは、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられる。酸化剤ガス流量調整部80bの導出部44は、図4に示す如く、酸化剤ガス導入部材43の底蓋43cに、燃料電池セル34aの積層方向に沿って燃料電池セル34aの積層方向における幅に対応する幅に亘って、複数の導出口44bが設けられる。その複数の導出口44bは、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部(図3の左端及び右端)と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大する様に形成されている。以上の説明の如く、第一実施形態における酸化剤ガス流量調整部80aでは、複数の導出口44aを酸化剤ガス導入部材43の側壁43a,43bに設けたのに対し、本発明の第二実施形態に係る酸化剤ガス流量調整部80bは、複数の導出口44bを、酸化剤ガス導入部材43の底蓋43cに設けたことのみが相違する。
【0041】
酸化剤ガス流量調整部80bにおいて、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられた複数の導出口44bは、酸化剤ガス導入部材43の底蓋43cに設けられたことに伴い、対向部である燃料マニホールド35の表面部35aに対向する。従って、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられた複数の導出口44bから導出された酸化剤ガスは、直接又は燃料マニホールド35の表面部35aで反射して各燃料電池セル34aに供給される。複数の導出口44bは、前述の如く、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大しているので、複数の導出口44bから導出された酸化剤ガスの流量が、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大する。これにより、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がる。なお、複数の導出口44bにおける各導出口44bの単位面積当たりの開口面積は、燃料電池スタック41の燃料電池セル34aの積層方向における温度分布の測定結果に基づいて、適宜設定することができる。
【0042】
図4に基づいて、複数の導出口44bは、導出口44b自体の開口面積を燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大する例を説明した。しかしながら、これに代えて、例えば、複数の導出口44b自体の開口面積を同一とし、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して、隣り合う導出口44bの間隔を狭めて導出口44bを設けることにて、複数の導出口44bは燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大する様に変更すことも可能である。
【0043】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態に係る酸化剤ガス流量調整部80cを、図5に基づいて、説明する。酸化剤ガス流量調整部80cは、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられる。酸化剤ガス流量調整部80cの導出部44は、複数の導出口44cから構成される。複数の導出口44cは、その開口方向が、燃料電池セル34aの積層方向の中央部から端部へ行くにしたがって中央部に傾くように設けられている。具体的には、例えば、図5に示す如く、酸化剤ガス流量調整部80cは、酸化剤ガス導入部材43の底蓋43cに設けられ、その底蓋43cは、燃料電池セル34aの積層方向において端部から中央部に向けて傾斜した底蓋43c1に形成されている。傾斜した底蓋43c1は、図5に示す如く、例えば、燃料電池セル34aの積層方向において端部から中央部に向けて盛り上がる円弧状に形成されている。傾斜した底蓋43c1に、複数の導出口44cを設ける。複数の導出口44cは、傾斜した底蓋43c1により、その開口方向が、燃料電池セル34aの積層方向中央部から端部に行くにしたがって中央部に傾くように設けられる。
【0044】
複数の導出口44cは、燃料電池スタック41の燃料電池セル34aの積層方向における幅に対応する幅に亘って設けられる。なお、複数の導出口44cは、前述に第一実施形態の複数の導出口44a及び第一実施形態の複数の導出口44bの如く、特に開口面積に差を設ける必要がなく、均一な開口面積とすることができる。
【0045】
酸化剤ガス流量調整部80cは、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられ、導出部44は、複数の導出口44cから構成され、複数の導出口44cは、その開口方向が燃料電池セル34aの積層方向の中央部から端部へ行くにしたがって中央部に傾くように設けられ、複数の導出口44cが燃料マニホールド35の表面部35aと対向する。従って、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられた複数の導出口44cから導出された酸化剤ガスは、直接又は燃料マニホールド35の表面部35aで反射して、各燃料電池セル34aに供給される。複数の導出口44cは、前述の如く、その開口方向が燃料電池セル34aの積層方向の中央部から端部へ行くにしたがって中央部に傾くように設けられているため、その結果、複数の導出口44cから導出された酸化剤ガスの流量が、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大する。これにより、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がる。
【0046】
図5に基づいて、酸化剤ガス流量調整部80cの導出部44を複数の導出口44cから構成し、複数の導出口44cは、その開口方向が燃料電池セル34aの積層方向において中央部から端部へ行くにしたがって中央部に傾くように設ける構成を、酸化剤ガス導入部材43の底蓋43cを傾斜させて、その傾斜した底蓋43c1に複数の導出口44cを設けた例を説明した。しかしながら、これに代えて、例えば、底蓋43cを傾斜させることなく、底蓋43cに設けた複数の導出口44c自体の開口方向が燃料電池セル34aの積層方向の中央部から端部へ行くにしたがって中央部に傾くように設ける変更も可能である。
なお、複数の導出口44cの開口方向が燃料電池セル34aの積層方向において中央部から端部へ行くにしたがって中央部に傾く傾斜は、燃料電池スタック41の燃料電池セル34aの積層方向における温度分布の測定結果に基づいて、適宜設定することができる。
【0047】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態に係る酸化剤ガス流量調整部80dを、図6に基づいて、説明する。酸化剤ガス流量調整部80dは、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に対向する対向部である燃料マニホールド35の表面部35aに設けられる。酸化剤ガス流量調整部80dにおいて、燃料マニホールド35の表面部35aは、燃料電池セル34aの積層方向において中央部から端部に行くにしたがって浅くなる傾斜面35a1が設けられる。傾斜面35a1は、酸化剤ガス導入部材43の導出部44から導出された酸化剤ガスを反射させる。傾斜面35a1は、例えば、図6に示す如く、燃料電池セル34aの積層方向において端部から中央部に向けて垂れ下がる円弧状に形成されている。導出部44は、酸化剤ガス導入部材43の底蓋43cに設けられるのが好ましい。
【0048】
酸化剤ガス流量調整部80dは、酸化剤ガス導入部材43の導出部44と対向する対向部である燃料マニホールド35の表面部35aが、前述の如く、燃料電池セル34aの積層方向において中央部から端部に行くにしたがって浅くなる傾斜面35a1が設けられることにより、酸化剤ガス導入部材43の導出部44から導出された酸化剤ガスは、直接又は燃料マニホールド35の傾斜面35a1で反射して、燃料電池セル34aの積層方向において中央部へ向うように案内される。その結果、導出部44から導出された酸化剤ガスの流量が、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大する。これにより、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がる。なお、対向部である燃料マニホールド35の傾斜した表面部35aの傾斜は、燃料電池スタック41の燃料電池セル34aの積層方向における温度分布の測定結果に基づいて、適宜設定することができる。
【0049】
なお、図2においては、酸化剤ガス導入部材43が、ケーシング31の内部に横並びに並置された2つの燃料電池スタック41間に位置するように配置されて例を示したが、燃料電池スタック41の個数により、例えば酸化剤ガス導入部材43を燃料電池スタック41の両側面側から挟み込むように配置してもよい。具体的には、燃料電池スタック41をケーシング31内に1つだけ収納する場合には、酸化剤ガス導入部材43を2つ設け、燃料電池スタック41を両側面側から挟み込むように配置することができる。又、燃料電池スタック41をケーシング31内に1つだけ収納する場合には、酸化剤ガス導入部材43を、燃料電池スタック41の片側側面のみに設けることも可能である。
【0050】
上述のように本発明の第一実施形態乃至第四実施形態の燃料電池モジュールによれば、ケーシング31と、ケーシング31内に収納され、酸化剤ガスと燃料とで発電を行う燃料電池セル34aを複数積層してなる燃料電池スタック41と、ケーシング31内に収納され、燃料電池スタック41における燃料電池セル34aの積層方向に沿った側面に配置され、かつ、燃料電池セル34aの積層方向に沿って延ばして設けられ、酸化剤ガスが、各燃料電池セル34aの一端側から他端側に沿って内部を流れた後に、導出部44から各燃料電池セル34aの他端側に供給される酸化剤ガス導入部材43と、ケーシング31側に設けられ、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に対向する対向部35aと、酸化剤ガス導入部材43の導出部44と対向部35aとのうちの少なくともいずれか一方に設けられ、導出部44から導出された酸化剤ガスの流量を、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大させる酸化剤ガス流量調整部80a,80b,80c,80dと、を備える。これにより、酸化剤ガス流量調整部80a,80b,80c,80dにて、酸化剤ガス導入部材43の導出部44から各燃料電池セル34aに供給される酸化剤ガスの流量は、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大する。これにより、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がるため、その結果、部品点数を増やすことなく、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aの温度を低下させることができる。
【0051】
上述のように本発明の第一実施形態及び第二実施形態の燃料電池モジュールによれば、酸化剤ガス流量調整部80a,80bは、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられ、導出部44は、複数の導出口44a,44bから構成され、複数の導出口44a,44bは、燃料電池セル34a積層方向において中央部が端部と比較して、単位面積当たりの開口面積が増大するように構成されている。これにより、酸化剤ガス導入部材43の導出部44から各燃料電池セル34aに供給される酸化剤ガスの流量は、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大する。従って、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がるため、その結果、部品点数を増やすことなく、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aの温度を低下させることができる。
【0052】
上述のように本発明の第三実施形態の燃料電池モジュールによれば、酸化剤ガス流量調整部80cは、酸化剤ガス導入部材43の導出部44に設けられ、導出部44は、複数の導出口44cから構成され、複数の導出口44cは、その開口方向が燃料電池セル34a積層方向において中央部から端部へ行くにしたがって中央部に傾くように設けられている。これにより、酸化剤ガス導入部材43の導出部44から各燃料電池セル34aに供給される酸化剤ガスの流量が、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大する。従って、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がるため、その結果、部品点数を増やすことなく、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aの温度を低下させることができる。
【0053】
上述のように本発明の第四実施形態の燃料電池モジュールによれば、酸化剤ガス流量調整部80dは、対向部35aに設けられ、対向部35aは、燃料電池セル34aの積層方向において中央部から端部に行くにしたがって浅くなる傾斜面35a1が設けられて、導出部44から導出された酸化剤ガスを反射させる。これにより、酸化剤ガス導入部材43の導出部44から各燃料電池セル34aに供給される酸化剤ガスの流量は、燃料電池セル34aの積層方向において中央部が端部と比較して増大する。従って、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aは、酸化剤ガスとの熱交換量が増大して温度が下がるため、その結果、部品点数を増やすことなく、燃料電池セル34aの積層方向の中央部に位置した燃料電池セル34aの温度を低下させることができる。
【0054】
上述のように本発明の第四実施形態の燃料電池モジュールによれば、酸化剤ガス流量調整部80dが、対向部35aに設けられ、対向部35aは、燃料電池セル34aに燃料を供給するとともに燃料電池セル34aが積層された燃料マニホールド35の表面部35aである。これにより、燃料マニホールド35にて、酸化剤ガスの流量調整が行うことが可能となる。
【0055】
なお、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。
【符号の説明】
【0056】
31…ケーシング、34a…燃料電池セル、41…燃料電池スタック、43…酸化剤ガス導入部材、35…燃料マニホールド、35a…燃料マニホールド表面部(対向部)、35a1…傾斜面、44…導出部、44a,44b,44c…導出口、80a,80b,80c,80d…酸化剤ガス流量調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6