(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解析部は、前記凝集塊の特徴量を取得する際、前記材料モデルを仮想的な立方格子に分割し、前記凝集塊の特徴量を取得する請求項6に記載の不均質材料のシミュレーション装置。
さらに、前記条件設定部で、前記材料モデル作成時の前記モデルパラメーターに設計変数に含め、不均質材料の前記力学特性を目的関数とし、前記演算部は、前記設計変数と、前記目的関数を用いて最適化計算を行う請求項6〜8のいずれか1項に記載の不均質材のシミュレーション装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の不均質材料のシミュレーション方法、不均質材料のシミュレーション装置およびプログラムを詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の不均質材料のシミュレーション方法に用いられるシミュレーション装置を示す模式図である。
【0016】
図1に示すシミュレーション装置10(以下、単に処理装置10という)は、本発明の不均質材料のシミュレーション方法を実施する装置の一例である。処理装置10は、コンピュータ等のハードウェアを用いて構成される。本発明の不均質材料のシミュレーション方法には、
図1に示す処理装置10が用いられるが、不均質材料のシミュレーション方法をコンピュータ等のハードウェアおよびソフトウェアを用いて実行することができれば処理装置10に限定されるものではない。
不均質材料は、第1の材料相と第2の材料相を有する少なくとも2相の材料である。不均質材料は、例えば、ゴムを母相(第1の材料相)とし、カーボンブラックまたはシリカ等のフィラー(第2の材料相)を含んだゴム材料である。
【0017】
処理装置10は、処理部12と、入力部14と、表示部16とを有する。処理部12は、条件設定部20、モデル作成部22、解析部24、演算部26、メモリ28(記憶部)、表示制御部30および制御部32を有する。この他に図示はしないがROM等を有する。
処理部12は、制御部32により制御される。また、処理部12において条件設定部20、モデル作成部22、解析部24、演算部26および表示制御部30はメモリ28に接続されており、条件設定部20、モデル作成部22、解析部24、および演算部26のデータがメモリ28に記憶される。
【0018】
入力部14は、マウスおよびキーボード等の各種情報をオペレータの指示により入力するための各種の入力デバイスである。表示部16は、例えば、後述の材料モデル、凝集塊の特徴量、力学特性の計算結果、データ構造情報、最適化計算結果、凝集塊の特徴量と力学特性との因果関係を可視化した可視化結果、および不均質材料のシミュレーション方法で得られた結果等を表示するものであり、公知の各種のディスプレイが用いられる。また、表示部16には各種情報を出力媒体に表示するためのプリンタ等のデバイスも含まれる。
【0019】
処理装置10は、ROM等の記憶媒体に記憶されたプログラム(コンピュータソフトウェア)を、制御部32を用いて実行することにより、条件設定部20、モデル作成部22、解析部24および演算部26の各部を機能的に形成する。処理装置10は、上述のように、プログラムが実行されることで各部位が機能するコンピュータによって構成されてもよいし、各部位が専用回路で構成された専用装置であってもよい。
【0020】
条件設定部20は、本実施形態の不均質材料のシミュレーション方法において必要な、不均質材料のコンピュータで解析可能な材料モデルを作成するための不均質材料のモデルパラメーター、凝集塊の判別条件、材料モデルの力学特性の境界条件等の計算条件、データ構造情報の設定条件、最適化計算の計算条件、最適化計算の近似モデル、可視化計算の計算条件等の各種の条件および情報が入力され、設定するものである。各種の条件および情報は入力部14を介して入力される。条件設定部20で設定する各種の条件および情報はメモリ28に記憶される。
【0021】
不均質材料のモデルパラメーターは、例えば、母相に所定の材料相が分散した、2相構造の不均質材料の材料モデルを作成するために必要なパラメーターであり、モデルパラメーターは、作成した不均質材料の材料モデルをコンピュータで演算可能な複数の単位要素で構成したシミュレーションモデルにするために必要なパラメーターである。
不均質材料モデルパラメーターは、モデル化領域の大きさ、どの材料相を母相のモデルとするかに関する情報、どの材料相を母相のモデルに分散した粒子モデルとするかに関する情報、母相となるモデルの種類の数、粒子モデルの種類の数、境界層モデルの有無等の情報、第2の材料相のモデルを定める属性値の情報、粒子モデルの発生位置を制御するための、粒子モデルとの間の相対位置を定める制御パラメーターの情報、ならびに第1の材料相および第2の材料相等の各材料の材料パラメーターの少なくとも1つ以上を含む。例えば、第1の材料相を母相モデルとしてモデル化し、第2の材料相を粒子モデルでモデル化する。第2の材料相の粒子モデルを定める属性値は、第2の材料相を構成する粒子モデルの形状(球体モデルか、または楕円体モデルの情報)、作成する粒子モデルの大きさ(半径、または長径および短径)、およびモデル化領域における体積分率等の情報を含む。モデルパラメーターは、シミュレーションモデルのモデルの情報(有限要素法によるモデルの各情報またはメッシュフリー法によるモデルの各情報)および単位要素の大きさの情報を含む。
材料パラメーターは、材料の粘弾性特性を表す値、例えば、各材料の複素弾性率、またはヤング率およびせん断剛性等の弾性定数と正接損失tanδ等の粘性定数を含む。このような材料パラメーターの材料モデルへの付与は、材料の種類(材料パラメータ)を特定するための材料属性値と材料パラメーターとの対応表を予め定めておき、材料モデルにこの属性値を付与することを含む。
【0022】
また、条件設定部20には最適化計算の計算条件として、モデルパラメーターに設計変数が設定され、目的関数として不均質材料の力学特性が設定される。設計変数は、材料モデルを作成する際のモデルパラメーターである。設計変数は、例えば、フィラーに関する種々のパラメーターであり、フィラーの空間配置を制御するパラメーター等である。
各種のパラメーターとしては、不均質材料の材料モデルのモデルパラメーターについては、例えば、相構成、各相の大きさおよび配置密度、ならびに各相の構成等である。また、モデルパラメーターは、例えば、材料モデル作成における相構造の設定値、および凝集塊を含む不均質材料の画像情報が挙げられる。不均質材料の画像情報とは、例えば、CT(コンピュータートモグラフィ)法を用いて不均質材料の断面画像を取得し、断面画像を構成する各画素の位置情報と濃度情報の組み合わせた情報である。これ以外に、X線を用いて得られた不均質材料の画像の各画素の位置情報と濃度情報の組み合わせた情報を不均質材料の画像情報として用いることができる。なお。凝集塊の判別条件については、後に詳細に説明する。
【0023】
モデル作成部22は、条件設定部20に設定された上述のモデルパラメーターに基づき、不均質材料のコンピュータで解析可能な材料モデル、および上述の各種のパラメーターに基づき最適化計算の近似モデルを作成するものである。
【0024】
なお、モデル作成部22で作成される材料モデルおよび最適化計算の近似モデルは、条件設定部20で設定された各種類のパラメーターを用いて作成されるが、材料モデルおよび最適化計算の近似モデルの作成には公知の作成方法を用いることができる。材料モデルについては、例えば、特許第5854067号公報に記載の方法を用いて作成することができる。
材料モデルを構成する要素は、例えば、2次元平面では四辺形要素、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等のコンピュータで解析可能な要素とする。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標を用いて、2次元モデルでは2次元座標を用いて逐一特定される。
【0025】
解析部24は、材料モデルにおける凝集塊を判別し、凝集塊の特徴量を求めて、凝集塊の特徴量を取得するものである。解析部24では、凝集塊の判別を、例えば、上述の凝集塊の判別条件で実行する。解析部24で得られた凝集塊の判別の結果、凝集塊の特徴量は、メモリ28に記憶される。
【0026】
ここで、
図2(a)は材料モデルの一例を示す模式図であり、(b)は凝集塊の第1の例を示す模式図であり、(c)は凝集塊の第2の例を示す模式図であり、(d)は凝集塊の第3の例を示す模式図である。
図3(a)は凝集塊の特徴量の一例を説明するための模式図であり、(b)は凝集塊の特徴量の他の例を説明するための模式図である。
図2(a)に示す材料モデル40は、ゴム等の母相に、フィラーが含まれるボリマー相が分散した不均質材料を示している。
材料モデル40では、母相モデル42にポリマーモデル44が分散している。母相モデル42は、例えば、ゴムで構成されるものである。ポリマーモデル44は、カーボンブラックおよびシリカ等のフィラーを表すフィラーモデル46を含み、ポリマーモデル44とフィラーモデル46の間に境界層を表す境界層モデル48がある。
【0027】
材料モデル40のように、少なくとも2相の複数の相構造で作成されている場合、少なくともフィラー等の粒子を含む材料相において凝集塊を定義することができる。例えば、ポリマー相のような島構造を凝集塊として定義できる。なお、凝集塊とは、上述のポリマー相のような島構造、およびフィラー等の粒子が複数重なったものを含むが、フィラー等の粒子が複数重なったものだけではなく、フィラー等の粒子がひとつでも凝集塊という。凝集塊は、例えば、フィラー等の粒子の重心位置とフィラー等の粒子半径から求めることができる。
上述のことから、凝集塊は、例えば、
図2(b)に示すようにポリマーモデル44でも、
図2(c)に示すように境界層モデル48でも、
図2(d)に示すようにフィラーモデル46でもよい。凝集塊として上述のいずれかのモデルが選択されるが、各モデルで凝集塊の数が異なる。
図2(b)に示すポリマーモデル44では凝集塊の数は2であり、
図2(c)に示す境界層モデル48では凝集塊の数は11であり、
図2(d)に示すフィラーモデル46では凝集塊の数は16である。
【0028】
凝集塊の特徴量は、例えば、凝集塊の数、凝集塊の体積、凝集塊の表面積、凝集塊が含まれる最小球の直径または半径、凝集塊が含まれる楕円体のサイズ、およびフィラー等の粒子数である。これ以外に、凝集塊の特徴量として、上述の凝集塊の数、凝集塊の体積、凝集塊の表面積、凝集塊が含まれる最小球の直径もしくは半径、凝集塊が含まれる楕円体のサイズおよびフィラー等の粒子数の最大値、平均値または分散を用いることができる。
凝集塊が含まれる最小球の直径とは、
図3(a)に示すように凝集塊50を外接して囲む円52の半径rの2倍の長さのことである。凝集塊が含まれる楕円体のサイズとは、
図3(b)に示すように凝集塊50を外接して囲む楕円体54の長軸aまたは短軸bの長さのことである。
【0029】
演算部26は、材料モデルの力学特性を計算するものである。演算部26で得られた材料モデルの力学特性の計算結果は、メモリ28に記憶される。
演算部26での材料モデルの力学特性の計算方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が適宜利用可能である。例えば、材料モデルを所定のメッシュに分割し、母相モデルおよびポリマーモデルに応じた物性値を適用して、FEM(有限要素法)を用いて、力学特性が計算される。上述の力学特性は、例えば、剛性、最大応力、最大ひずみ、またはひずみ分布等である。これ以外に力学特性としては、例えば、不均質材料の剛性の最大値、不均質材料の剛性の平均値、不均質材料の剛性の分散、および不均質材料のエネルギ損失等がある。
【0030】
また、演算部26は、モデルパラメーターと凝集塊の特徴量と力学特性の計算結果をデータ構造情報としてメモリ28に保存させる。データ構造情報とは、モデル作成時のモデルパラメーター、材料モデルの凝集塊の特徴量、および材料モデルの力学特性が対になったものである。
【0031】
演算部26は、上述の条件設定部20で設定された設計変数と力学特性(目的関数)を用いて最適化計算を行うものでもある。演算部26は、例えば、公知の有限要素ソルバーによるサブルーチンを実行することで機能するものである。
演算部26は、非線形応答関係を用いて、複数種の設計変数の値と力学特性(目的関数)で構成される力学特性値空間での力学特性の値を計算する。この場合、演算部26は、複数種の設計変数の値と力学特性(目的関数)とを用い、力学特性の値を目的関数として、近似モデルを作成する。演算部26は、作成した近似モデルを用いて多目的最適化計算を実施するものである。
上述の近似モデル(メタモデル)は、入出力の関係を近似する数学的モデルのことであり、パラメーターを調整することにより、様々な入出力関係を近似できるものである。上述の近似モデルには、例えば、多項式モデル、クリギング、ニューラルネットワークおよび動径基底関数等を用いることができる。
【0032】
これ以外にも、演算部26は、近似モデルを用いることなく、有限要素法を用いて、設計変数と力学特性の組合せで、力学特性の値を算出するものでもある。多目的最適化計算手法としては、例えば進化計算手法の一つである遺伝的アルゴリズム(GA)を用いる。遺伝的アルゴリズムとしては、例えば、解集合を目的関数に沿って複数の領域に分割し、この分割した解集合毎に多目的GAを行うDRMOGA(Divided Range Multi-Objective GA)、NCGA(Neighborhood Cultivation GA),DCMOGA(Distributed Cooperation model of MOGA and SOGA)、NSGA(Non-dominated Sorting GA)、NSGA2(Non-dominated Sorting GA-II)、SPEAII(Strength Pareto Evolutionary Algorithm-II)法等の公知の方法を用いることができる。
【0033】
また、近似モデルを用いた多目的最適化計算結果から、パレート解を探索し、パレート解を抽出してもよい。この場合、得られたパレート解はメモリ28に記憶される。
ここで、パレート解は、トレードオフの関係にある複数の特性値(目的関数)において、他の任意の解よりも優位にあるとはいえないが、より優れた解が他に存在しない解をいう。一般にパレート解は集合として複数個存在する。パレートランキング法を用いてパレート解を探索する。これ以外に、例えば、ベクトル評価遺伝的アルゴリズム(Vector Evaluated Generic Algorithms:VEGA)、パレートランキング法、またはトーナメント法を用いた選択が行われる。遺伝的アルゴリズム(GA)以外も、同じ進化計算手法として、例えば、焼きなまし法(SA)または粒子群最適化(PSO)を用いてもよい。
【0034】
演算部26は、上述の解析部24で取得された凝集塊の特徴量と、力学特性との因果関係を可視化するものでもある。可視化には、例えば、凝集塊の特徴量と力学特性の散布図、および凝集塊の特徴量と力学特性の自己組織化マップ等が用いられる。なお、自己組織化マップの作成は、例えば、特許第4339808号公報に記載された方法を用いて作成することができる。このため、自己組織化マップの作成について、その詳細な説明は省略する。
【0035】
表示制御部30は、材料モデル、凝集塊の特徴量、力学特性の計算結果、データ構造情報、最適化計算結果、凝集塊の特徴量と力学特性との因果関係を可視化した可視化結果、および不均質材料のシミュレーション方法で得られた結果等を表示させるものである。表示制御部30は、例えば、材料モデル、凝集塊の特徴量、力学特性の計算結果、データ構造情報、最適化計算結果、凝集塊の特徴量と力学特性との因果関係を可視化した可視化結果をメモリ28から読み出し、表示部16に表示させる。
【0036】
次に、本実施形態の不均質材料のシミュレーション方法について説明する。
図4は本発明の実施形態の不均質材料のシミュレーション方法の第1の例を示すフローチャートである。
図5(a)は材料モデルの一例を示す模式的斜視図であり、(b)は材料モデルの凝集塊を示す模式的斜視図であり、(c)は材料モデルの凝集塊の分布を示すグラフである。
本実施形態では、ゴム等の母相にフィラー等の粒子の凝集塊が分散した2相構造の不均質材料を例にして説明する。材料モデル40は、
図5(a)に示すように母相モデル42に、複数の凝集塊モデル43が分散されたものである。
【0037】
まず、条件設定部20に、材料モデルのモデルパラメーターを設定する(ステップS10)。
次に、設定されたモデルパラメーターを基に、モデル作成部22で、不均質材料のコンピュータで解析可能な材料モデル40(
図5(a)参照)を作成する(ステップS12)。
次に、解析部24で、材料モデル40における凝集塊モデル43(
図5(a)参照)を判別し、凝集塊モデル43の特徴量を取得する(ステップS14)。凝集塊の特徴量は、メモリ28に記憶される。
【0038】
凝集塊モデル43の特徴量を取得する場合、まず、材料モデル40において、母相モデル42と凝集塊モデル43を区別し、凝集塊モデル43を母相モデル42から分離する。この場合、例えば、凝集塊モデル43を母相モデル42と色を変えることで、分離したことを示す。次に、凝集塊モデル43に対してグループ分けする。グループ分けについては、例えば、凝集塊の大きさと重心位置の関係を予め設定しておき、凝集塊モデル43をグループ分けする。このとき各凝集塊モデル43の体積も求める。
図5(a)の材料モデル40には、10個の凝集塊モデル43があり、最大の凝集塊の体積は全体積比で3.87%であった。例えば、各凝集塊モデル43の色を変えることで区別することができる。これにより、視覚的に各凝集塊モデル43を認識できる。
なお、データ上は、例えば、凝集塊モデル43に番号を割りあてることで凝集塊を区別することができる。これにより、
図5(c)に示す各凝集塊の体積比を得ることができ、凝集塊の特徴量を求めることができる。
【0039】
図5(c)では、凝集塊の体積比は、最小の凝集塊の体積を1として規格化している。凝集塊の体積は、例えば、材料モデル40を、後述するように、予め大きさが設定された仮想的な立方格子で分割し、立方格子の数を数えることで求めることができる。
その後、条件設定部20に設定された計算条件で、演算部26にて材料モデル40に対して、例えば、FEMを用いて、力学特性として、例えば、最大応力を計算する(ステップS16)。計算された最大応力の値は、力学特性の値としてメモリ28に記憶される。
次に、演算部26が、メモリ28から、モデル作成時のモデルパラメーター、材料モデルの凝集塊の特徴量、および材料モデルの力学特性を読み出し、モデル作成時のモデルパラメーター、材料モデルの凝集塊の特徴量、および材料モデルの力学特性を対にし、データ構造情報を作成する。上述のデータ構造情報をメモリ28に保存する(ステップS18)。具体的には、データ構造情報は、例えば、下記表1に示す構造である。
【0041】
このようにして、材料モデルの凝集塊と材料モデルの力学特性を関連付けることができる。これにより、材料モデル作成時のモデルパラメーターだけではなく、材料モデルから得られた凝集塊の特徴量と材料モデルの力学特性を付き合せることにより、不均質材料のモロフォロジーと不均質材料の粘弾性特性との関係について有用な情報を発見することができ、低燃費タイヤの新材料開発に役立てることができる。また、材料モデル作成時のモデルパラメーターと、不均質材料の凝集塊の特徴量を付き合せることにより、不均質材料の材料モデル作成方法を評価することもできる。
【0042】
凝集塊モデル43の特徴量を取得する際(ステップS14)、例えば、
図5(a)に示す材料モデル40を、仮想的な立方格子に分割する。この場合、立方格子に凝集塊モデル、または凝集塊モデルの一部が含まれる。立方格子の大きさを予め設定しておくことで、立方格子の数を数えることで、凝集塊の特徴量のうち、凝集塊の体積および凝集塊の表面積を容易に求めることができる。
【0043】
立方格子において、同一凝集塊であるか否かの判定方法については様々な方法がある。例えば、
図6(a)〜(c)に示すように立方格子60で分割された場合、各立方格子60は母相モデル42または凝集塊モデル43となる。
図6(a)では凝集塊モデル43の立方格子60が面で接触している。このように凝集塊モデル43の立方格子60が面接触している場合には1つの凝集塊と判別する。また、
図6(b)に示すように凝集塊モデル43の立方格子60が辺で接触しており、凝集塊モデル43の立方格子60が辺接触の場合には1つの凝集塊と判別する。
図6(c)に示すように凝集塊モデル43の立方格子60が点で接触しており、凝集塊モデル43の立方格子60が点接触の場合には1つの凝集塊と判別する。立方格子60に分割することで、凝集塊モデル43の立方格子60の配置状態に基づき、1つの凝集塊であるか否かを容易に判別することができる。
この場合、条件設定部20に立方格子60のサイズと、上述の
図6(a)〜(c)に示す判別条件を設定することで、解析部24で、材料モデル40を立方格子60に分割し、判別条件に基づき、凝集塊を判別することができる。
【0044】
また、凝集塊の判別に周期境界を考慮してもよい。これにより、周期境界を考慮したシミュレーションを行うことができる。具体的には、
図7に示すように、母相モデル42と凝集塊モデル43を有する材料モデル40について、隣接する材料モデル40を仮想的に加える。これにより、凝集塊モデル43が隣接する仮想的な材料モデル40とともに構成される。周期境界同士で隣接している凝集塊をひとつの凝集塊とする。
凝集塊モデル43の体積は材料モデル40端同士隣接する凝集塊モデル43の体積を足し合わせるだけで求めることができる。凝集塊モデル43の表面積は隣接する凝集塊モデル43の表面積同士を足し合わせた後、隣接面積の2倍を差し引くことにより求めることができる。
【0045】
なお、周期境界を考慮すると、
図7に示す材料モデル40では凝集塊の数が2であり、最大凝集塊のサイズが材料モデルの全体積比で1.67%であり、最大凝集塊の表面積は材料モデルの全表面積比で12.79%である。これに対して、
図7に示す材料モデル40で周期境界を考慮しない場合、凝集塊の数が10であり、最大凝集塊のサイズが材料モデルの全体積比で3.34%であり、最大凝集塊の表面積は材料モデルの全表面積比で8.53%である。
【0046】
次に、不均質材料のシミュレーション方法の第2の例について説明する。
図8は、本発明の実施形態の不均質材料のシミュレーション方法の第2の例を示すフローチャートである。なお、
図8に示す不均質材料のシミュレーション方法の第2の例において、
図2に示す不均質材料のシミュレーション方法の第1の例と同一工程について、その詳細な説明は省略する。
【0047】
図8に示す不均質材料のシミュレーション方法の第2の例では、最適化計算(ステップS20)、最適化計算の適否(ステップS22)、および可視化(ステップS24)を行う点が異なり、それ以外の工程は、上述の不均質材料のシミュレーション方法の第1の例と同じである。
最適化計算(ステップS20)を行う場合、条件設定部20に、最適化計算の計算条件として、モデルパラメーターに設計変数を設定し、目的関数として不均質材料の力学特性を設定しておく。
最適化計算(ステップS20)では、不均質材料の力学特性を目的関数(出力値)とし、設計変数(入力値)と目的関数(出力値)に対して近似モデルを用いた多目的最適化計算を実施する。最適化計算は、上述の方法でなされる。
最適化計算(ステップS20)に、実際の材料モデルの情報を利用することにより、最適化後の知見抽出が容易になる。また、材料モデルの最適化を行う際に近似式を作成する場合、考慮する設計変数が増大し、最適化計算に用いる近似式の精度を高くすることができる。
近似モデルを作成することにより、最適化計算(ステップS20)の計算時間を短縮することができる。また、材料モデルから得られたモルフォロジー特性を、最適化計算の入力値(設計変数)として利用することもできる。
【0048】
最適化計算(ステップS20)の結果、予め定められた判定条件を満たす場合(ステップS22)、可視化を行う(ステップS24)。可視化については、設計変数、凝集塊の特徴量および力学特性に関して行い、可視化の方法は、散布図でも自己組織化マップでもよく、例えば、
図9(a)〜(h)に示す自己組織化マップを用いた可視化の結果を得ることができる。
【0049】
ここで、
図9(a)および(b)は設計変数の自己組織化マップであり、(c)および(d)は凝集塊の特徴量の自己組織化マップであり、(e)〜(h)は力学特性の自己組織化マップである。
可視化することにより、凝集塊の特徴量、すなわち、モルフォロジー情報と、力学特性との因果関係が明確に認識することができ、材料開発において目標とする力学特性を発現し得るモルフォロジー(凝集塊の分布形態)を特定できる。また、自己組織化マップを用いることで、設計変数(入力値)が複数あり、力学特性(出力値)が複数ある場合において、入力値(設計変数)と力学特性(出力値)との因果関係を示すことができる。
例えば、
図9(a)は設計変数としてフィラーの空間配置を制御する第1のパラメーターを示し、
図9(b)は設計変数としてフィラーの空間配置を制御する第2のパラメーターを示している。
図9(c)は凝集塊の特徴量として凝集塊の数を示し、
図9(d)は凝集塊の特徴量として凝集塊のサイズを示している。
図9(e)は不均質材料の力学特性として剛性の最大値を示し、
図9(f)は力学特性として不均質材料の剛性の平均値を示し、
図9(g)は力学特性として剛性の分散を示し、
図9(h)は力学特性としてエネルギ損失を示している。
【0050】
一方、最適化計算(ステップS20)の結果、予め定められた判定条件を満たさない場合(ステップS22)、モデルパラメーターの設定(ステップS10)に戻り、モデルパラメーターを再度設定する。その後、材料モデルの作成(ステップS12)、凝集塊の特徴量の取得(ステップS14)、力学特性の計算(ステップS16)、データ構造の保存(ステップS18)を繰り返し、再度最適化計算を行う(ステップS20)。最適化計算の結果が予め定められた判定条件を満たす迄(ステップS22)、上述の工程を繰り返し行う。
なお、可視化する工程(ステップS24)はなくてもよい。最適化計算(ステップS20)の後、判定(ステップS22)を経ることなく可視化してもよい。
【0051】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の不均質材料のシミュレーション方法、不均質材料のシミュレーション装置およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。