特許第6750285号(P6750285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6750285-ガスバリア性積層体 図000003
  • 特許6750285-ガスバリア性積層体 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750285
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20200824BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20200824BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20200824BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20200824BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B32B27/00 101
   C09D5/00 D
   C09D133/00
   C09D7/65
   C09D175/04
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-76477(P2016-76477)
(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公開番号】特開2017-185703(P2017-185703A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍬形 友輔
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−164591(JP,A)
【文献】 米国特許第05645923(US,A)
【文献】 国際公開第2004/048081(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0214530(US,A1)
【文献】 特開2008−018681(JP,A)
【文献】 特開2015−058631(JP,A)
【文献】 特開2015−208885(JP,A)
【文献】 特開2016−203465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09D 5/00
C09D 7/65
C09D 133/00
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも片面に積層された蒸着層と、前記蒸着層上に積層されたオーバーコート層と、を備え、
前記オーバーコート層は、下記一般式(a)で表される物質及びその加水分解物からなる群から選ばれた少なくとも1種と、水酸基を有する水溶性高分子とを含有してなり、
前記オーバーコート層中にビニル基乃至メタクリロキシ基が残存していることを特徴とするガスバリア性積層体。
X−(CH)n−Si(OR)……(a)
[但し、Xはビニル基乃至メタクリロキシ基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基であり、nは6以上の整数である。]
【請求項2】
前記ガスバリア性積層体は、3%引張試験後の酸素透過度が初期の10倍以内であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層体。
【請求項3】
前記ガスバリア性積層体は、40℃90%RH500時間保存試験後の酸素透過度が初期の10倍以内であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層体。
【請求項4】
前記樹脂基材と前記蒸着層との間にアンカーコート層を備えてなるガスバリア積層体であり、
前記アンカーコート層は、水酸基を2個以上有するアクリルポリオールと、
分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物と、を含有し、
前記アクリルポリオールの水酸基価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、
前記アクリルポリオールの水酸基に対する前記イソシアネート化合物のNCO基の当量比(NCO/OH)が0.3以上2.5以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性積層体とは、酸素や水蒸気などのガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えている積層体である。このため、ガスバリア性積層体で遮蔽された部位に保持された部材は、外部のガスに起因する劣化/変質などを抑制することができる。近年、このようなガスバリア性積層体は、様々な分野で活用されている。
【0003】
このようなガスバリア性積層体は、例えば、食品などの包装に用いられる包装材料として活用されている。食品などの包装用途では、内容物の変質を防止することが求められている。具体的には、タンパク質や油脂等の酸化や変質を抑制し、更に風味や鮮度を保持できることが求められる。このため、好適にガスバリア性積層体が用いられる。
【0004】
また、このようなガスバリア性積層体は、例えば、医薬品などの包装に用いられる包装材料として活用されている。医薬品などの包装用途では、内容物の変質を防止することが求められている。具体的には、無菌状態を保持し、内容物の有効成分の変質を抑制し、その効能を保持できることが求められている。このため、好適にガスバリア性積層体が用いられる。
【0005】
また、このようなガスバリア性積層体は、例えば、半導体ウェハなどの電子部品や精密部品の包装に用いられる包装材料として活用されている。精密部品は、外部のガスに暴露されると、外部のガスが異物として働き不良品となる恐れがあることから、外部のガスを遮蔽することが求められている。このため、好適にガスバリア性積層体が用いられる。
【0006】
また、このようなガスバリア性積層体は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの部材として活用されている。フラットパネルディスプレイの用途では、画素素子など内部部材の劣化を防止することが求められている。このため、好適にガスバリア性積層体が用いられる。
【0007】
また、このようなガスバリア性積層体は、例えば、太陽電池におけるバックシートやフロントシートとして活用されている。太陽電池用途では、紫外線や湿気などから内部機構の劣化を防止することが求められる。このため、好適にガスバリア性積層体が用いられる。
【0008】
ここで、このようなガスバリア性積層体を包装部材として用いる場合、透明性も兼ね備えることが好ましい。包装材料が透明性を有することで、包装の外から内容物の形状や内容物の色などが目視で確認することができ、それにより、内容物の取り違い防止や、損傷の有無、内容物の変質の有無を開封前に把握することができる。
【0009】
以上、ガスバリア性積層体は、種々の広範な用途に対応できるように、ガスバリア性だけでなく、透明性、耐湿性、耐候性、耐久性などの特性を高度なレベルで兼ね備えていることが求められる。
【0010】
従来、ガスバリア性積層体として、フィルム基材上にガスバリア性物質を蒸着したガスバリア性積層体が知られている。ガスバリア性物質の蒸着膜は、ガスバリア性を有するほか、極めて薄いことから透明性も良好である。
【0011】
このようなガスバリア性積層体としては、例えば、シリカ系蒸着フィルムやアルミナ反応蒸着フィルムが挙げられる。シリカ系蒸着フィルムは、フィルム基材に、一酸化ケイ素やSi/SiO混合材料を蒸着した積層体である。また、アルミナ反応蒸着フィルムは、金属アルミニウムを蒸発させ酸素と反応させてフィルム基材に蒸着した積層体である。
【0012】
ここで、シリカ系蒸着フィルムやアルミナ反応蒸着フィルムのガスバリア性が温度や水分の影響を受けやすいことから、耐熱性、耐水性、耐湿性を向上させたガスバリア性積層体が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0013】
特許文献1および特許文献2に開示された積層体は、基材上に設けた蒸着膜の上に、さらに、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子と、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン又はその加水分解物とを含有するコーティング液を塗工し、加熱乾燥させてガスバリア性被膜を設けている。このような構成によって、ガスバリア性、耐熱性、耐水性、耐湿性等を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−164591号公報
【特許文献2】国際公開第2004/048081号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、用途の拡大に伴い、ガスバリア積層体はさらなる過酷な環境下での使用が求められている。このため、さらなる耐湿性、耐熱性、耐水性、耐候性、耐屈曲性、耐伸張性などの耐久性の向上が求められている。ここで、過酷な環境下としては、例えば、引っ張られることによる塑性変形、高温や高湿にさらされることによる負荷などが挙げられる。
【0016】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、過酷な環境下においても優れたガスバリア性を発揮するガスバリア性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ガスバリア性積層体において、蒸着層上に積層するオーバーコート層に適した化合物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
本発明は以下の態様を有する。
【0019】
[1]樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも片面に積層された蒸着層と、前記蒸着層上に積層されたオーバーコート層と、を備え、前記オーバーコート層は、下記一般式(a)で表される物質及びその加水分解物からなる群から選ばれた少なくとも1種と、水酸基を有する水溶性高分子とを含有してなり、前記オーバーコート層中にビニル基乃至メタクリロキシ基が残存していることを特徴とするガスバリア性積層体。
X−(CH−Si(OR)……(a)
[但し、Xはビニル基乃至メタクリロキシ基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基であり、nは6以上の整数である。]
【0020】
[2]上記ガスバリア性積層体は、3%引張試験後の酸素透過度が初期の10倍以内であることを特徴とする上記[1]に記載のガスバリア性積層体。
【0021】
[3]上記ガスバリア性積層体は、40℃90%RH500時間保存試験後の酸素透過度が初期の10倍以内であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のガスバリア性積層体。
【0022】
[4]前記樹脂基材と前記蒸着層との間にアンカーコート層を備えてなるガスバリア積層体であり、前記アンカーコート層は、水酸基を2個以上有するアクリルポリオールと、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物と、を含有し、前記アクリルポリオールの水酸基価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、前記アクリルポリオールの水酸基に対する前記イソシアネート化合物のNCO基の当量比(NCO/OH)が0.3以上2.5以下であることを特徴とする上記[1]から[3]のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【発明の効果】
【0023】
本発明のガスバリア性積層体は、蒸着層上に、特定の有機ケイ素化合物又はその加水分解物と水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布剤より形成したオーバーコート層を有する。これにより、過酷な環境下であっても、オーバーコート層および蒸着層の劣化が抑制され、優れたガスバリア性を発揮する。よって、加工により変形が加えられる用途や、ボイル殺菌、レトルト殺菌、のような過酷な処理および屋外配置のような過酷環境下におかれる用途であっても、長期に渡って優れたガスバリア性を発揮するガスバリア性積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ガスバリア性積層体のある態様を示す概略断面図である。
図2】ガスバリア性積層体のある態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るガスバリア性積層体の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。ただし、本発明の具体的な構成は下記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、それらは本発明に含まれる。
【0026】
(ガスバリア性積層体)
図1に、本発明のガスバリア性積層体のある態様の概略断面図を示す。ガスバリア性積層体10は、樹脂基材11の片面に、蒸着層12、オーバーコート層13が順次積層された構成の積層体である。以下、樹脂基材11を基準として、蒸着層12やオーバーコート層13が積層される向きを上(層)として説明する。
【0027】
<樹脂基材>
樹脂基材は、ガスバリア性積層体の基体となる層である。
【0028】
樹脂基材は、一般的に使用されている種々のシート状の基材(フィルム状のものを含む)のなかから適宜選択し、用いてよい。例えば、(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、(2)ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、(3)ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルム、などが挙げられる。
【0029】
また、樹脂基材には、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の公知の添加剤が含有されていてもよい。
【0030】
また、樹脂基材の厚みは、特に制限がなく、仕様などに応じて適宜決定してよい。実用上、樹脂基材の厚みは、6μm以上200μm以下程度、好ましくは12μm以上125μm以下程度、より好ましくは12μm以上50μm以下程度が望ましい。ただし、本実施形態のガスバリア性積層体において、樹脂基材の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0031】
また、樹脂基材表面に表面処理を施してもよい。表面処理を行うことにより、他の層(蒸着層、アンカーコート層、など)を積層するにあたり、他の層との密着性を高めることができる。ここで、表面処理として、例えば、(1)コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理的処理、(2)酸やアルカリによる薬液処理などの化学的処理などを用いてもよい。
【0032】
<蒸着層>
蒸着層は、ガスバリア性を付与するため、蒸着材料を蒸着させることにより、樹脂基材に形成される層である。
【0033】
蒸着層に用いる蒸着材料は、公知のガスバリア性蒸着膜を構成する無機材料から適宜選択して用いてよい。例えば、Si、Al、Zn、Sn、Fe、Mn等の金属、これらの金属の1種以上を含む無機化合物などが挙げられる。該無機化合物としては、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これらの中でも、金属及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。具体的には、例えば、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素等のケイ素酸化物(SiO)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、などが挙げられる。
【0034】
蒸着層の形成方法は、公知の蒸着方法から適宜選択し用いてよい。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法等の化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、ALD:Atomic Layer Deposition法などを用いてよい。特に、EB:Electron Beam加熱方式の真空蒸着法は高い成膜速度を得ることができ、本実施形態のガスバリア性積層体の蒸着層の形成方法として好ましい。
【0035】
また、蒸着を行うにあたり、反応蒸着法を用いてもよい。反応蒸着法は、蒸着材料を蒸着させる際に、蒸発した粒子と雰囲気中に導入したガスなどと反応させて蒸着させる方法である。導入するガスとしては、例えば、酸素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。酸素ガスなどとの反応蒸着を行うことにより、蒸着材料中の金属成分が酸化され、蒸着層の透明性を向上させることができる。また、反応蒸着法を用いる場合、ガスを導入する際は、成膜室の圧力を2×10−1Pa以下にすることが望ましい。成膜室の圧力が2×10−1Paよりも大きくなってしまうと、蒸着層がきれいに積層されず、水蒸気バリア性が低下してしまうおそれがある。
【0036】
また、蒸着層の膜厚は、5nm以上300nm以下が好ましく、10nm以上150nm以下がより好ましい。5nm以上であると充分なバリア性が発現し、300nm以下であると、後工程などでクラックの発生やそれによるバリア性の低下が生じにくい。ただし、本実施形態のガスバリア性積層体において、蒸着層の膜厚は上記範囲に限定されるものではない。
【0037】
<オーバーコート層>
オーバーコート層は、蒸着層上に形成される層である。オーバーコート層を蒸着層上に積層することで、蒸着層が単層で構成されたガスバリア性積層体では発現できない優れたガスバリア性を得ることができる。また、オーバーコート層は、緻密で脆い蒸着層を保護する機能も有しており、擦れや屈曲によるクラックの発生を抑制できる。
【0038】
オーバーコート層は、塗布液を調整し、蒸着層上に塗布液を塗布し、塗布液を加熱乾燥することにより形成する。
【0039】
本実施形態のガスバリア性積層体において、オーバーコート層形成用の塗布液は、下記一般式(a)で表される物質及びその加水分解物からなる群から選ばれた少なくとも1種と、水酸基を有する水溶性高分子とを含有する。
X−(CH)n−Si(OR)……(a)
[但し、Xはビニル基乃至メタクリル基であり、Rはアルキル基であり、nは6以上の整数である。]
【0040】
Si−OR結合を有する有機ケイ素化合物は、加水分解反応により、ケイ素原子に結合したOR基が水酸基となり、水酸基の脱水縮合によりシロキサン結合を形成する。有機ケイ素化合物として、式(a)で表されるものを用いることで、緻密で強固なネットワーク重合被膜を形成することができる。また、分子内にビニル基乃至メタクリル基を有することで、靭性、柔軟性を併せ持つ有機無機複合膜が形成される。また、上記有機ケイ素化合物とビニル基乃至メタクリル基との間に、炭素が6個以上存在することで、両端の分子が動きやすくなり、高い柔軟性を持つ膜が形成される。このため、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐屈曲性、耐伸張性などに優れたオーバーコート層を得ることができる。
【0041】
また、水酸基を有する水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、でんぷん、セルロース類が好ましい。特にポリビニルアルコール(以下PVA)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が優れる。PVAはモノマー単位中に最も多く水酸基を含む高分子であるため加水分解後の有機ケイ素化合物の水酸基と非常に強固な水素結合をもつ。ここで言うPVAとは、一般にポリ酢酸ビニルをケン化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分ケン化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化PVAまでを含む。PVAの分子量は重合度が300〜数千まで多種あるが、どの分子量のものを用いても効果に問題はない。しかし一般的にケン化度が高く、また重合度が高い高分子量のPVAは耐水性が高いため好ましい。
【0042】
式(a)中、Rのアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。式(a)で表される物質としては、例えば7−オクテニルトリメトキシシランや、8−メタクリロキシオクチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0043】
式(a)で表される有機ケイ素化合物の加水分解物としては、式中のORのうち、少なくとも1つがOHとなったものが挙げられる。該加水分解物は公知の方法により調製できる。たとえば、有機ケイ素化合物をメタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールに溶解し、その溶液に、塩酸等の酸の水溶液を添加し、加水分解反応させることにより調製できる。
【0044】
式(a)で表される物質及びその加水分解物は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。塗布液における式(a)で表される物質及びその加水分解物の配合量は、ガスバリア性、耐久性、後加工適性等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、総固形分に対し、1質量%以上100質量%以下程度が好ましく、3質量%以上90質量%以下程度がより好ましい。1質量%以上であると、ガスバリア性、湿熱耐久性が良好である。90質量%以下であると、より耐久性が良好である。
【0045】
また、上記ガスバリア性積層体は、3%引張試験後の酸素透過度が初期の10倍以内であることが好ましく、5倍以内であることがより好ましい。10倍を超えると、バリア性の安定性が低下する。
【0046】
また、上記ガスバリア性積層体は、40℃90%RH500時間保存試験後の酸素透過度が初期の10倍以内であることが好ましい。
【0047】
40℃90%RH500時間処理をした後の酸素透過度が初期の10倍以内であることが好ましく、5倍以内であることがより好ましい。10倍を超えると、バリア性の安定性が低下する。
【0048】
オーバーコート層を形成する塗布液は、式(a)で表される物質及びその加水分解物と、水酸基を有する水溶性高分子と、溶媒とを混合することにより調製する。溶媒としては、配合成分を溶解し得るものであればよく、例えば水、アルコール、トルエン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの溶媒は1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
塗布液の塗布方法は、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ローコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など、熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。乾燥時の加熱温度は、60℃以上200℃以下程度の範囲内が好ましく、100℃以上150℃以下程度の範囲内がより好ましい。60℃以上であると、所望のバリア性が発現され良好である。150℃以下であると、短時間であれば、基材の変形や蒸着膜のクラックが発生することなく好適である。
【0050】
オーバーコート層の膜厚は、0.1μm以上2μm以下程度が好ましく、0.2μm以上1.0μm以下程度がより好ましい。0.1μm以上であると安定してバリア性が発現され、1μm以下であると、印刷や他のフィルムの積層や曲げ加工などの後加工適性に優れる。ただし、本実施形態のガスバリア性積層体において、オーバーコート層の膜厚は上記範囲に限定されるものではない。
【0051】
また、本実施形態のガスバリア性積層体は、板状でもよく、フィルム状でもよい。例えばロールでの巻き取り加工等によりフィルム状に成形されたものでもよい。
【0052】
(アンカーコート層)
また、本実施形態のガスバリア性積層体は、上記樹脂基材と上記蒸着層との間に、さらに、アンカーコート層を備えてもよい。アンカーコート層を設けることにより、樹脂基材と蒸着層との密着性を高め、各層の間での剥離発生を抑制することができる。
【0053】
図2に、アンカーコート層を積層した本発明のガスバリア性積層体のある態様の概略断面図を示す。ガスバリア性積層体20は、樹脂基材11の片面に、アンカーコート層24、蒸着層12、オーバーコート層13が順次積層された構成の積層体である。
【0054】
アンカーコート層は、アンカーコート剤を調整し、樹脂基材上にアンカーコート剤を塗布し、塗布された該アンカーコート剤を加熱乾燥することにより形成する。
【0055】
アンカーコート剤は、水酸基を2個以上有するアクリルポリオールと、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するイソシアネート化合物とを含有することが好ましい。
【0056】
アクリルポリオールとしては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物などが挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、水酸基を有さない(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが好ましい。水酸基を有さない(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、環構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー等が挙げられる。アルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸などが挙げられる。環構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えばベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その他のモノマーとして、(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外のモノマーを用いてもよい。該モノマーとしては、例えばスチレンモノマー、シクロヘキシルマレイミドモノマー、フェニルマレイミドモノマーなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外のモノマーは水酸基を有していてもよい。
【0057】
また、アクリルポリオールの水酸基価が50[mgKOH/g]以上250[mgKOH/g]以下であることが好ましい。水酸基価[mgKOH/g]とは、アクリルポリオール中の水酸基量の指標であり、アクリルポリオール1g中の水酸基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。水酸基価が[50mgKOH/g]未満であると、イソシアネート化合物との反応量が少なく、アンカーコート層による樹脂基材と蒸着層との密着性の向上効果が充分に発現しないおそれがある。一方、水酸基価が[250mgKOH/g]よりも大きいと、イソシアネート化合物との反応量が多くなり過ぎて、アンカーコート層の膜収縮が大きくなるおそれがある。膜収縮が大きいと、その上に蒸着層がきれいに積層されず、充分なガスバリア性を示さないおそれがある。
【0058】
アクリルポリオールの重量平均分子量は特に規定しないが、3000以上200000以下が好ましく、5000以上100000以下がより好ましく、5000以上40000以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ポリスチレンを基準として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された重量平均分子量とする。また、アクリルポリオールは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
イソシアネート化合物としては、分子内にNCO基を少なくとも2個以上有するものであればよい。例えば、モノマー系イソシアネートとして、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂肪族系イソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族系イソシアネートなどを用いてもよい。また、これらのモノマー系イソシアネートの重合体又は誘導体も用いてもよい。該重合体又は誘導体としては、例えば、3量体のヌレート型、1,1,1−トリメチロールプロパンなどと反応させたアダクト型、ビウレットと反応させたビウレット型などが挙げられる。イソシアネート化合物としては、上記のモノマー系イソシアネート、その重合体、誘導体等のなかから任意に選択してよく、1種を単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
また、アンカーコート剤において、アクリルポリオールの水酸基に対するイソシアネート化合物のNCO基の当量比(NCO/OH)が0.3以上2.5以下であることが好ましく、0.5以上2.0以下であることがより好ましい。NCO/OHが0.3以上であると基材との密着性が向上し、2.0以下であると湿熱耐性試験後の密着性が向上する。アンカーコート剤におけるアクリルポリオールとイソシアネート化合物の配合量は、当量比に基づき配合されるのが好ましく、概ねアクリルポリオールの100質量部に対し、イソシアネート化合物が10質量部以上90質量部以下程度であることが好ましく、20質量部以上80質量部以下程度であることがより好ましい。
【0061】
また、アンカーコート剤は、樹脂基材と蒸着層との密着性をより高めるために、さらに、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するもの、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するものなどが挙げられる。また、シランカップリング剤としては1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0062】
アンカーコート剤は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物と任意成分(シランカップリング剤等)と溶媒と混合することにより調製できる。溶媒としては、アクリルポリオールとイソシアネート化合物を溶解し得るものであればよく、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、アセトンなどが挙げられる。これらの溶媒は1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
アンカーコート剤の塗布方法は、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など、熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。乾燥時の加熱温度は、特に限定されないが、60℃以上140℃以下程度の範囲内が好ましく、残留溶剤がなく、かつ、巻き取り加工しても塗工面が裏面にくっついてしまういわゆるブロッキング現象が生じないような条件を適宜選択できる。必要に応じて40℃以上60℃以下程度の範囲内でエージング処理を行っても良い。
【0064】
アンカーコート層の膜厚は、0.02μm以上1.0μm以下が好ましく、0.04μm以上0.5μm以下がより好ましい。0.02μm以上であると、樹脂基材と蒸着層との密着性が充分に良好となる。0.5μmよりも厚いと内部応力の影響が大きくなり、蒸着層12がきれいに積層されず、ガスバリア性の発現が不充分となるおそれがある。
【実施例】
【0065】
以下、本発明のガスバリア性積層体の実施例について詳細に説明する。ただし、本発明のガスバリア性積層体は、実施例で示した様態に限定されるものではない。なお、オーバーコート層形成用の塗布液およびアンカーコート剤における有機ケイ素化合物またはその加水分解物の含有量を示す「固形分」は、加水分解した有機ケイ素化合物が重合し、成膜される塗膜重量に換算した量とする。
【0066】
(実施例1)
まず、樹脂基材上に蒸着層を形成した。樹脂基材には、片面がコロナ処理された厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レフィルム加工、P60)を用いた。また、真空蒸着機を使用して、上記樹脂基材のコロナ処理面に、直接、元素比O/Siが1.5になるように金属ケイ素粉末及び二酸化ケイ素粉末を混合した蒸着材料を蒸着し、樹脂基材上に蒸着層を形成した。このとき、形成された蒸着層(SiO蒸着膜)は厚さ50nmであった。
【0067】
次に、オーバーコート層形成用の塗布液を調製した。塗布液は、7−オクテニルトリメトキシシランの加水分解溶液と、ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液とを、乾燥後の固形分重量比が50:50となるように混合して固形分5質量%の溶液としたものとした。
【0068】
次に、蒸着層上に塗布液を塗布し、加熱乾燥し、オーバーコート層を形成した。塗布液の塗工には、バーコートを用いた。また、加熱乾燥の条件は、120℃、2分間とした。このとき、形成されたオーバーコート層の乾燥膜厚は、膜厚0.5μmであった。
【0069】
以上より、樹脂基材/蒸着層/オーバーコート層がこの順で積層された実施例1のガスバリア性積層体を製造した。実施例1のガスバリア性積層体において、各層の膜厚は、樹脂基材:12μm/蒸着層:50nm/オーバーコート層:0.5μm、であった。
【0070】
[検査測定]
実施例1のガスバリア性積層体について、酸素透過度(OTR)の測定を行った。ここで、OTRの測定は、(1)オーバーコート層を積層する前と、(2)製造直後(初期)と、(3)引張試験(100μm/secで3%引張試験)後と、(4)保存試験(40℃90%RHで500時間の保存試験)後との4回行った。なお、酸素透過度の測定では、モダンコントロール社製の酸素透過度計(MOCON OX‐TRAN 2/21)を用いて、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度〔cc/m・day・atm〕を測定した。酸素透過度の倍率は、(2)初期の酸素透過度の値を1倍としたとき、(3)引張試験後ないし、(4)保存試験後の酸素透過度の値の倍率と定義した。測定結果を表1に示す。
【0071】
(実施例2)
まず、アンカーコート剤を調製した。アンカーコート剤は、水酸基価が178mgKOH/gになるように、モノマーとして、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とメチルメタクリレート(MMA)を共重合させてアクリルポリオール(重量平均分子量約1万)を調整し、該アクリルポリオールを主剤とし、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を、主剤のOH基量に対して0.5当量となるように配合した固形分5質量%のメチルエチルケトン溶液とした。
【0072】
次に、樹脂基材上にアンカーコート剤を塗布し、アンカーコート層を形成した。樹脂基材には、片面がコロナ処理された厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レフィルム加工、P60)を用いた。また、グラビアコート機を用いて、アンカーコート剤を上記樹脂基材のコロナ処理面に塗工し、50℃の恒温室に48時間保管(エージング処理)し、アンカーコート層を形成した。このとき、アンカーコート層の乾燥膜厚は、0.1μmであった。
【0073】
次に、アンカーコート層上に蒸着層を形成した。真空蒸着機を使用して、元素比O/Siが1.5になるように金属ケイ素粉末及び二酸化ケイ素粉末を混合した蒸着材料を蒸着し、樹脂基材上に蒸着層を形成した。このとき、形成された蒸着層(SiOx蒸着膜)は厚さ50nmであった。
【0074】
次に、オーバーコート層形成用の塗布液を調整した。塗布液は、実施例1と同じものとした。
【0075】
次に、蒸着層上に塗布液を塗布し、加熱乾燥し、オーバーコート層を形成した。塗布液の塗工には、バーコートを用いた。また、加熱乾燥の条件は、120℃、2分間とした。このとき、形成されたオーバーコート層の乾燥膜厚は、膜厚0.5μmであった。
【0076】
以上より、樹脂基材/アンカーコート層/蒸着層/オーバーコート層がこの順で積層された本実施例のガスバリア性積層体を製造した。本実施例のガスバリア性積層体において、各層の膜厚は、樹脂基材:12μm/アンカーコート層:0.15μm/蒸着層:50nm/オーバーコート層:0.5μm、であった。
【0077】
[検査測定]
実施例2で得られたガスバリア性積層体について、実施例1と同様にして、酸素透過度(OTR)の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0078】
(実施例3)
蒸着層に、アルミニウムを蒸着源とし、電子線加熱方式により加熱蒸着させ、酸素ガスを導入し、膜厚15nmの酸化アルミニウム蒸着層を形成した以外は、実施例2と同様に本実施例のガスバリア性積層体を製造した。
【0079】
[検査測定]
実施例3で得られたガスバリア性積層体について、実施例1と同様にして、酸素透過度(OTR)の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0080】
(実施例4)
オーバーコート層形成用塗布液は、8−メタクリロキシオクチルトリメトキシシランの加水分解溶液と、テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解溶液と、ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液とを、乾燥後の固形分重量比が35:35:30となるように混合して固形分5質量%の溶液としたものとした以外は、実施例3と同様に本実施例のガスバリア性積層体を製造した。
【0081】
[検査測定]
実施例4で得られたガスバリア性積層体について、実施例1と同様にして、酸素透過度(OTR)の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0082】
(比較例1)
オーバーコート層形成用塗布液は、テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解溶液と、ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液とを、乾燥後の固形分重量比が50:50となるように混合して固形分5質量%の溶液としたものとした以外は、実施例3と同様に本実施例のガスバリア性積層体を製造した。
【0083】
[検査測定]
比較例1で得られたガスバリア性積層体について、実施例1と同様にして、酸素透過度(OTR)の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0084】
(比較例2)
オーバーコート層形成用塗布液は、ビニルメトキシシランの加水分解溶液と、ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液とを、乾燥後の固形分重量比が50:50となるように混合して固形分5質量%の溶液としたものとした以外は、実施例2と同様に本実施例のガスバリア性積層体を製造した。
【0085】
[検査測定]
比較例2で得られたガスバリア性積層体について、実施例1と同様にして、酸素透過度(OTR)の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0086】
(比較例3)
オーバーコート層形成用塗布液は、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解溶液と、テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解溶液と、ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液とを、乾燥後の固形分重量比が35:35:30となるように(有機物成分の含有量は25質量%)混合して固形分5質量%の溶液としたものとした以外は、実施例4と同様に本実施例のガスバリア性積層体を製造した。
【0087】
[検査測定]
比較例3で得られたガスバリア性積層体について、実施例1と同様にして、酸素透過度(OTR)の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0088】
実施例1〜4および比較例1〜3で得た積層体の層構成(使用材料)と酸素透過度(OTR)の測定結果を表1にまとめて示す。なお、表1中の「AC層」は「アンカーコート層」を示し、表1中の「OC層」は「オーバーコート層」を示す。また、表1中の「AOH/NCO」は「実施例2で調製したアンカーコート剤」を示す。また、表1中の「a−1」は「7−オクテニルトリメトキシシランの加水分解物」を示し、「a−2」は「8−メタクリロキシオクチルトリメトキシシランの加水分解物」を示し、「b−1」は「TEOSの加水分解物」を示し、「c−1」は「ビニルメトキシシランの加水分解物」を示し、「d−1」は「3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物」を示し、「PVA」は「ポリビニルアルコール」を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
<評価>
実施例1〜4のガスバリア性積層体のガスバリア性は、OTRの初期値が低く、優れたガスバリア性を有していた。また、引張試験後や、保存試験後も、OTRの値が初期値からそれほど増加していなかった。一方、比較例1のガスバリア性積層体のガスバリア性は、引張試験後や保存試験後に、OTRが初期の10倍以上であった。また、比較例2と3のガスバリア性積層体のガスバリア性は、引張試験後、OTRが初期の10倍以上であった。
【0091】
以上より、本発明のガスバリア性積層体は、引張試験(100μm/secで3%引張試験)後や、保存試験(40℃90%RHで500時間の保存試験)後であってもガスバリア性を維持すること(具体的には、OTRが3.0〔cc/m・day・atm〕以下程度)ができ、過酷環境下であってもガスバリア性を維持することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリア性、透明性、耐久性、を高度なレベルで兼ね備えていることから、ガスバリア性積層体を必要とする分野に広範に利用できる。例えば、(1)医薬品や食料などの包装用フィルム、(2)半導体ウェハなどの電子部品や精密部品の包装用フィルム、(3)液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ部材、(4)太陽電池におけるバックシート用途およびフロントシート用途、などの分野に好適に利用が期待されるが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0093】
10 ガスバリア性積層体
11 樹脂基材
12 蒸着層
13 オーバーコート層
20 ガスバリア性積層体
24 アンカーコート層
図1
図2