特許第6750288号(P6750288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750288
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】リレー装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/24 20060101AFI20200824BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200824BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20200824BHJP
   H02H 9/08 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   H02H3/24 D
   H02J7/00 S
   H02H7/18
   H02H9/08
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-81873(P2016-81873)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-192251(P2017-192251A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 広世
(72)【発明者】
【氏名】安則 裕通
【審査官】 大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−503703(JP,A)
【文献】 特開2014−131374(JP,A)
【文献】 特開平09−295774(JP,A)
【文献】 特開平11−299013(JP,A)
【文献】 特開2010−104106(JP,A)
【文献】 特開2012−048839(JP,A)
【文献】 特開2011−130636(JP,A)
【文献】 特開2012−130108(JP,A)
【文献】 特開2011−229216(JP,A)
【文献】 特開2014−036556(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/115034(WO,A1)
【文献】 特開平05−161258(JP,A)
【文献】 特開2004−338577(JP,A)
【文献】 特開昭60−070928(JP,A)
【文献】 特開2015−076959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/24
H02H 7/18
H02H 9/08
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1負荷及び第1蓄電部に電気的に接続された第1配線と第2負荷及び第2蓄電部に電気的に接続された第2配線との間で電流が流れる経路となる導電路と、
前記第1配線と前記第2配線との間で前記導電路に接続され、前記導電路を通電させるオン状態と、前記導電路を所定の非通電状態にするオフ状態とに切り替わるスイッチ部と、
前記第1配線と前記第2配線との間で前記スイッチ部と直列に接続され、インダクタンス成分を有するインダクタンス部と、
前記インダクタンス部よりも前記第1蓄電部側の経路において前記導電路の電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記インダクタンス部よりも前記第2蓄電部側の経路において前記導電路の電圧を検出する第2電圧検出部と、
前記第1電圧検出部又は前記第2電圧検出部の少なくともいずれかの検出値が所定の異常値に低下した場合に前記スイッチ部をオフ状態に切り替える制御部と、
前記導電路において前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のいずれか一方側から他方側に向かう第1方向に電流が流れる状態で前記スイッチ部がオフ状態に切り替えられたときに前記インダクタンス部で発生する逆起電力を抑制し、前記導電路において前記第1方向とは反対の第2方向に電流が流れる状態で前記スイッチ部がオフ状態に切り替えられたときに前記インダクタンス部で発生する逆起電力を抑制する保護回路部と、
を含み、
前記スイッチ部は、前記第1配線と前記第2配線との間に設けられる第1スイッチ及び第2スイッチを備え、
前記第1スイッチと前記第2スイッチと前記インダクタンス部とが直列に接続され、
前記インダクタンス部は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間に設けられ、
前記第1電圧検出部は、前記インダクタンス部と前記スイッチ部とが直列に接続された直列構成部よりも前記第1蓄電部側の経路において前記導電路の電圧を検出し、
前記第2電圧検出部は、前記直列構成部よりも前記第2蓄電部側の経路において前記導電路の電圧を検出する構成であり、
前記保護回路部は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間において前記インダクタンス部と並列に接続された第1回路部及び第2回路部を備え、
前記第2回路部は、前記第1蓄電部側から前記第2蓄電部側に向かうように前記第1方向に電流が流れている状態で前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがいずれもオフ状態に切り替えられた場合に電流を還流させて前記インダクタンス部で生じる逆起電力を抑制し、
前記第1回路部は、前記第2蓄電部側から前記第1蓄電部側に向かうように前記第2方向に電流が流れている状態で前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがいずれもオフ状態に切り替えられた場合に電流を還流させて前記インダクタンス部で生じる逆起電力を抑制するリレー装置。
【請求項2】
前記スイッチ部は、オン状態とオフ状態とに切り替わる第1素子部と前記第1素子部に並列に接続された第1ダイオード部とを備える第1半導体スイッチと、オン状態とオフ状態とに切り替わる第2素子部と前記第2素子部に並列に接続されるとともに前記第1ダイオード部とは逆向きで配置される第2ダイオード部とを備える第2半導体スイッチとを有する請求項1に記載のリレー装置。
【請求項3】
前記直列構成部が、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部との間に並列に複数接続されている請求項1又は請求項2に記載のリレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電部の周辺装置として構成されるリレー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載用の電源装置の一例が開示されている。特許文献1で開示される電源装置は、鉛蓄電池とリチウム蓄電池とを備えており、鉛蓄電池とリチウム蓄電池の間の電力経路として給電線が設けられている。そして、この給電線の通電及び遮断を切り替える2つのMOSFETが設けられている。この電源装置は、例えば非回生時(アイドル運転時、加速走行時、定常走行時等)にリチウム蓄電池のSOC(State of charge)に応じてMOSFETのオンオフを切り替えることで、SOCが最適範囲となるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2012−130108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、例えば鉛蓄電池とリチウム蓄電池に接続された給電線に地絡が発生すると、この給電線には瞬時に大電流が流れることになる。このため、鉛蓄電池及びリチウム蓄電池の出力電圧は地絡発生時から瞬時に低下し、2つのMOSFETをオフ状態に切り替えて大電流を止めるまでの間は出力電圧が大幅に低下した状態となってしまう。このように大電流に起因して蓄電池の出力が大幅に低下してしまうと、負荷の動作停止などの不具合を招く虞がある。
【0005】
本発明は上述した事情に基づいてなされたものであり、蓄電部間の通電経路のオンオフを切り替えることができ、地絡等の異常が発生した場合に蓄電部の出力低下を抑えつつ保護動作を行うことができるリレー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリレー装置は、
第1蓄電部と第2蓄電部との間で流れる電流の経路となる導電路と、
前記導電路に接続され、前記導電路を通電させるオン状態と、前記導電路を所定の非通電状態にするオフ状態とに切り替わるスイッチ部と、
前記スイッチ部と直列に接続され、インダクタンス成分を有するインダクタンス部と、
前記インダクタンス部よりも前記第1蓄電部側の経路において前記導電路の電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記インダクタンス部よりも前記第2蓄電部側の経路において前記導電路の電圧を検出する第2電圧検出部と、
前記第1電圧検出部又は前記第2電圧検出部の少なくともいずれかの検出値が所定の異常値を示す場合に前記スイッチ部をオフ状態に切り替える制御部と、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1蓄電部と第2蓄電部との間で流れる電流の経路(導電路)又はこの導電路に電気的に接続された部位に地絡等が発生し、導電路に電圧異常が生じた場合に、スイッチ部をオフ状態に切り替えて保護を図ることができる。また、インダクタンス部がスイッチ部と直列に接続されているため、いずれかの蓄電部からインダクタンス部及びスイッチ部を経て地絡位置に向かおうとする電流が流れる場合に、この電流の増加速度を抑えることができる。よって、スイッチ部による導電路のオフ動作(保護動作)までの間の当該蓄電部の電圧低下を抑えることができ、蓄電部の出力低下に起因する不具合を生じにくくすることができる。
【0008】
しかも、インダクタンス部よりも第1蓄電部側の経路、及びインダクタンス部よりも第2蓄電部側の経路のそれぞれに電圧検出部(第1電圧検出部、第2電圧検出部)が設けられており、導電路又は導電路に電気的に接続された部位に地絡等が発生した場合、いずれかの電圧検出部の検出値が、地絡等の発生に起因して即座に異常値に変化する。例えば、第1蓄電部側において導電路又は導電路に電気的に接続された部位で地絡等が発生した場合、第1蓄電部側の導電路の電圧は瞬時に低下するため、第1電圧検出部の検出値は瞬時に異常値に変化する。同様に、第2蓄電部側において、導電路又は導電路に接続された部位で地絡等が発生した場合、第2蓄電部側の導電路の電圧は瞬時に低下するため、第2電圧検出部の検出値は瞬時に異常値に変化する。よって、制御部は、地絡発生時に迅速に異常状態(電圧検出値が異常値に変化した状態)を把握することができ、より早期にスイッチ部をオフ状態に切り替えることができる。
【0009】
このように、地絡等の発生時には、インダクタンス部によって電流の急上昇を抑えつつ、制御部によって迅速にスイッチ部をオフ動作させることができるため、地絡発生時点からスイッチ部がオフ状態に切り替わるまでに導電路を介して流れ込む電流をより小さく抑えることができ、地絡等の発生側とは反対側に設けられた蓄電部の電圧の低下をより小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係るリレー装置を備えた車載用の電源システムを概略的に例示する回路図である。
図2】実施例1に係るリレー装置の一部をなす分離リレーの回路図である。
図3】(A)は、実施例1のリレー装置においてサブバッテリ(第2蓄電部)側に地絡が発生した場合の地絡発生前後のサブバッテリの電圧、メインバッテリ(第1蓄電部)の電圧、分離リレーの電流の変化を例示するタイミングチャートであり、(B)は比較例のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、スイッチ部は、オン状態とオフ状態とに切り替わる第1素子部と第1素子部に並列に接続された第1ダイオード部とを備える第1半導体スイッチと、オン状態とオフ状態とに切り替わる第2素子部と第2素子部に並列に接続されるとともに第1ダイオード部とは逆向きで配置される第2ダイオード部とを備える第2半導体スイッチとを有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、導電路において双方向の通電を遮断することができる。そして、導電路又はこの導電路に電気的に接続された部位のうち、第2蓄電部側の位置で地絡等が発生した場合には、第1蓄電部から地絡位置に流れようとする放電電流の増加速度がインダクタンス部によって緩和されるため、第1蓄電部の急激な電圧低下が抑えられる。この場合、スイッチ部による導電路のオフ動作(保護動作)までの間の第1蓄電部の電圧低下を抑えることができ、第1蓄電部の出力低下に起因する不具合を生じにくくすることができる。また、導電路又はこの導電路に電気的に接続された部位のうち、第1蓄電部側の位置で地絡等が発生した場合、第2蓄電部から地絡位置に流れようとする放電電流の増加速度がインダクタンス部によって緩和されるため、第2蓄電部の急激な電圧低下が抑えられる。この場合、スイッチ部による導電路のオフ動作(保護動作)までの間の第2蓄電部の電圧低下を抑えることができ、第2蓄電部の出力低下に起因する不具合を生じにくくすることができる。
【0013】
本発明は、導電路において第1蓄電部及び第2蓄電部のいずれか一方側から他方側に向かう第1方向に電流が流れる状態でスイッチ部がオフ状態に切り替えられたときにインダクタンス部で発生する逆起電力を抑制し、導電路において第1方向とは反対の第2方向に電流が流れる状態でスイッチ部がオフ状態に切り替えられたときにインダクタンス部で発生する逆起電力を抑制する保護回路部を含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、地絡等の発生時に蓄電部から流れる放電電流の増加速度をインダクタンス部によって緩和する構成を実現しつつ、スイッチ部のオフ動作の際にインダクタンス部に起因して生じる逆起電力を保護回路部によって抑制することができる。よって、この逆起電力に起因する不具合(スイッチ部の破壊等)を防ぐことができる。特に、導電路を流れる電流が第1方向及び第2方向のいずれの向きでも電流を遮断することができ、いずれの方向の電流を遮断したときでも逆起電力を抑制することができるため、逆起電力に起因する不具合(スイッチ部の破壊等)をより確実に防ぐことができる。
【0015】
本発明は、スイッチ部とインダクタンス部とが直列に接続された直列構成部が、第1蓄電部と第2蓄電部との間に並列に複数接続されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1蓄電部と第2蓄電部の間により大きな電流を流すことができる構成を、スイッチ部やインダクタンス部の各サイズを抑えた形で実現することができる。
【0017】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す車載電源システム100は、複数の電源(第1蓄電部91及び第2蓄電部92)を備えた車載用の電源システムとして構成されている。リレー装置1は、車載電源システム100の一部をなしており、第1蓄電部91(メインバッテリ)と第2蓄電部92(サブバッテリ)との間を通電状態と非通電状態とに切り替える機能を有する。
【0018】
以下では、車載電源システム100の例として、第1の負荷であるメイン負荷81と、第2の負荷であるサブ負荷82とを備え、メイン負荷81とサブ負荷82とが同等の機能を有する構成を代表例として説明する。但し、あくまで代表例であり、リレー装置1の適用対象はこの構成のみに限定されない。
【0019】
メイン負荷81は、例えば電動式パワーステアリングシステムであり、第1蓄電部91からの電力供給を受けてモータ等の電気部品が動作する構成をなす。サブ負荷82は、メイン負荷81と同等の構成及び機能を有する電動式パワーステアリングシステムである。車載電源システム100は、メイン負荷81に異常が生じた場合に、メイン負荷81に代えてサブ負荷82を動作させることで、メイン負荷81の異常時でもメイン負荷81の機能を維持し得るシステムとして構成されている。
【0020】
第1蓄電部91は、メイン負荷81に電力を供給し得る電源部であり、例えば鉛バッテリなどの公知の電源によって構成されている。第2蓄電部92は、サブ負荷82に電力を供給し得る電源部であり、例えばリチウムイオン電池や電気二重層キャパシタなどの公知の電源によって構成されている。
【0021】
第1蓄電部91及びメイン負荷81は、リレー装置1の外部に設けられた配線71に接続されており、この配線71には、図示しない発電機が接続されている。第2蓄電部92及びサブ負荷82は、リレー装置1の外部に設けられた配線72に接続されている。配線71は、後述する導電路11における共通導電路13に接続されており、配線72は、後述する導電路11における共通導電路14に接続されている。第1蓄電部91は、発電機での発電によって生じた電力によって充電される。分離リレー5がオン状態(通電可能状態)のときには、発電機の発電によって生じた電力又は第1蓄電部91からの電力によって第2蓄電部92が充電される。
【0022】
リレー装置1は、導電路11と、複数の分離リレー5(各分離リレー5A,5B,5C)と、電流検出部50と、第1電圧検出部61と、第2電圧検出部62と、制御部3とを備える。
【0023】
導電路11は、第1蓄電部91と第2蓄電部92との間で流れる電流の経路となる部分である。導電路11は、第1蓄電部91側の共通導電路13と、第2蓄電部92側の共通導電路14と、共通導電路13,14の間に接続される複数の並列導電路12(個別導電路)とを備える。導電路11は電力線であり、第1蓄電部91や図示しない発電機からの電流を第2蓄電部92に流すための通電経路となっている。また、場合によっては、第2蓄電部92からの放電電流を配線71側に流す経路にもなり得る。共通導電路13は、第1蓄電部91側の配線71に接続されており、配線71を介して第1蓄電部91に電気的に接続されている。共通導電路14は、第2蓄電部92側の配線72に接続されており、配線72を介して第2蓄電部92に電気的に接続されている。並列導電路12は、共通導電路13,14の間において並列に接続された通電経路であり、導電路11を流れる電流が分流する部分である。
【0024】
3つの分離リレー5は、共通導電路13と共通導電路14との間に並列に接続されており、各分離リレー5は、上述した並列導電路12と関連する複数の電子部品とによって構成されている。3つの分離リレー5はいずれも、オン状態のときに共通導電路13と共通導電路14との間を導通させ、オフ状態のときに共通導電路13と共通導電路14との間の通電を遮断する機能を有する。図1では、3つの分離リレー5のうち、第1の分離リレーを符号5Aで示し、第2の分離リレーを符号5Bで示し、第3の分離リレーを符号5Cで示している。これら3つの分離リレー5は同一の回路構成であり、図2には、3つの分離リレー5の共通の回路構成を示している。また、図1では、並列に設けられた並列導電路12のうち、第1の分離リレー5Aの一部をなす並列導電路12を符号12Aで示し、第2の分離リレー5Bの一部をなす並列導電路12を符号12Bで示し、第3の分離リレー5Cの一部をなす並列導電路12を符号12Cで示す。
【0025】
図2のように、分離リレー5は、スイッチ部20とコイル30(インダクタンス部)とが直列に接続された直列構成部42と、スイッチ部20のオフ切替時に保護作用を生じさせる保護回路部40とを有する。直列構成部42は、2つのNチャネル型MOSFET21,22と、これら2つのMOSFET21,22の間に配置されるコイル30(インダクタンス部)とを備えており、2つのMOSFET21,22とコイル30とが直列に接続された構成をなす部分である。図1のように、リレー装置1は、スイッチ部20(2つのMOSFET21,22)とコイル30とが直列に接続されてなる直列構成部42が、第1蓄電部91と第2蓄電部92との間に並列に複数接続され、分流経路を構成している。
【0026】
図1で示すリレー装置1では、複数の分離リレー5にそれぞれ設けられた2つのMOSFET21,22によって各スイッチ部20が構成されている。具体的には、全てのスイッチ部20がオフ状態のとき、即ち、複数の分離リレー5にそれぞれ設けられた2つのMOSFET21,22の各組が全てオフ状態であるときに導電路11の通電が遮断される。このように、2つのMOSFET21,22の各組が全てオフ動作している状態が、導電路11を所定の非通電状態にするオフ状態に相当し、この状態では、配線71と配線72との間の導通が遮断される。また、少なくともいずれかのMOSFET21,22の組がオン動作している状態、即ち、少なくともいずれかの分離リレー5がオン動作している状態が、導電路11を通電させるオン状態に相当し、この状態では、配線71と配線72との間が導通する。
【0027】
図2のように、MOSFET21は、オン状態とオフ状態とに切り替わる第1素子部21Aと、第1素子部21Aに並列に接続されたボディダイオード21B(寄生ダイオード)とを備える。具体的には、MOSFET21において、ボディダイオード21B以外の部分が第1素子部21Aに相当する。第1素子部21Aのオン状態とはチャネルを介してMOSFET21のドレインソース間に電流が流れ得る状態であり、第1素子部21Aのオフ状態とはチャネルを介して電流が流れない状態である。ボディダイオード21Bは、第1ダイオード部の一例に相当する。MOSFET22は、オン状態とオフ状態とに切り替わる第2素子部22Aと、第2素子部22Aに並列に接続されたボディダイオード22B(寄生ダイオード)とを備える。具体的には、MOSFET22において、ボディダイオード22B以外の部分が第2素子部22Aに相当する。第2素子部22Aのオン状態とはチャネルを介してMOSFET22のドレインソース間に電流が流れ得る状態であり、第2素子部22Aのオフ状態とはチャネルを介して電流が流れない状態である。ボディダイオード22Bは、第2ダイオード部の一例に相当する。
【0028】
コイル30は、インダクタンス成分を有するインダクタンス部の一例に相当する。コイル30(インダクタンス部)は、MOSFET21とMOSFET22との間においてこれらMOSFET21,22と直列に接続されている。コイル30の作用、機能については後述する。
【0029】
図2で示す保護回路部40は、スイッチ部20をオフ状態に切り替える際にコイル30(インダクタンス部)で発生する逆起電力を抑制する回路として構成されている。保護回路部40は、抵抗部R1,R2と、ダイオードD1,D2と、コンデンサC1,C2とを備え、スナバ回路として構成されている。具体的には、ダイオードD1及び抵抗部R1を直列に接続した第1回路部40Aと、ダイオードD2及び抵抗部R2を直列に接続した第2回路部40Bとが、コイル30と並列に接続されている。コイル30の一端部とグランドとの間にはコンデンサC1が接続されており、コイル30の他端部とグランドとの間にコンデンサC2が接続されている。第1回路部40Aは、ダイオードD1のアノードがコイルの一端に接続され、第2回路部40Bは、ダイオードD2のアノードがコイルの他端に接続されている。
【0030】
図2で示す分離リレー5において、MOSFET21,22がいずれもオン状態で維持され、並列導電路12において第1蓄電部91側から第2蓄電部92側に向かう方向(第1方向)に電流が流れている状態でMOSFET21,22がいずれもオフ状態に切り替えられると、コイル30(インダクタンス部)には逆起電力が発生する。このとき、第2回路部40Bでコイル30の電流を還流させて逆起電力を抑制することができる。逆に、並列導電路12において第2蓄電部92側から第1蓄電部91側に向かう方向(第2方向)に電流が流れている状態でMOSFET21,22がいずれもオフ状態に切り替えられると、コイル30(インダクタンス部)には逆起電力が発生する。このとき、第1回路部40Aでコイル30の電流を還流させて逆起電力を抑制することができる。
【0031】
図1で示す電流検出部50は、公知の電流検出回路(電流モニタ)として構成されている。この電流検出部50は、共通導電路14を流れる電流の値を検出値として出力し、電流検出部50で検出された電流値は、制御部3に入力されるようになっている。
【0032】
第1電圧検出部61は、公知の電圧検出回路(電圧モニタ)として構成され、全てのMOSFET21よりも第1蓄電部91側の経路において導電路11の電圧を検出するように構成されている。具体的には、第1電圧検出部61は、共通導電路13の電圧値を検出値として出力し、第1電圧検出部61で検出された電圧値は、図示しない信号線によって制御部3に入力されるようになっている。
【0033】
第2電圧検出部62は、公知の電圧検出回路(電圧モニタ)として構成され、全てのMOSFET22よりも第2蓄電部92側の経路において導電路11の電圧を検出するように構成されている。具体的には、第2電圧検出部62は、共通導電路14の電圧値を検出値として出力し、第2電圧検出部62で検出された電圧値は、信号線によって制御部3に入力されるようになっている。
【0034】
制御部3は、例えば、CPU、ROM、RAM、A/D変換器などを備えたマイクロコンピュータを有してなる。制御部3には、電流検出部50の検出値(共通導電路14を流れる電流値)、第1電圧検出部61の検出値(共通導電路13の電圧値)、第2電圧検出部62の検出値(共通導電路14の電圧値)がそれぞれ入力される。制御部3に入力された各検出値は、制御部3内のA/D変換器にてデジタル値に変換される。制御部3は、各分離リレー5のスイッチ部20(MOSFET21,22)のオンオフを制御する機能を有し、例えば、第1電圧検出部61又は第2電圧検出部62の少なくともいずれかの検出値が所定の異常値を示す場合に各分離リレー5のスイッチ部20を全てオフ状態に切り替えることで導電路11の通電を遮断するように機能する。
【0035】
ここで、通常時におけるリレー装置1の基本動作を説明する。
リレー装置1では、制御部3によって各スイッチ部20(具体的には、各分離リレー5にそれぞれ設けられたMOSFET21,22の組)のオンオフが制御される。制御部3は、所定のオン条件が成立している場合、全ての分離リレー5に設けられたMOSFET21,22の組を全てオン状態に制御する。このようにオン状態に制御されているときには第1蓄電部91と第2蓄電部92との間が導通する。制御部3が複数のスイッチ部20をオン状態に制御するタイミングは特に限定されない。例えば、制御部3は、第2蓄電部92の出力電圧を継続的に監視し、第2蓄電部92の出力電圧が所定の電圧閾値未満に低下した場合に全ての分離リレー5に設けられた全てのスイッチ部20(MOSFET21,22)をオン状態に制御するように構成されていてもよい。つまり、第2蓄電部92の出力電圧が低下した場合に導電路11を導通状態に切り替え、発電機又は第1蓄電部91の電力によって第2蓄電部92を充電するように制御を行ってもよい。勿論、スイッチ部20をオン状態に制御する時期はこれ以外の時期であってもよい。
【0036】
また、制御部3は、所定のオフ条件が成立している場合、全ての分離リレー5に設けられたMOSFET21,22の組を全てオフ状態に制御する。制御部3が全てのスイッチ部20をオフ状態に制御する条件は1つに限定されない。例えば、制御部3は、第2蓄電部92の出力電圧が所定電圧閾値以上である場合(即ち、第2蓄電部92が十分に充電されている場合)に全ての分離リレー5に設けられた全てのスイッチ部20(MOSFET21,22)をオフ状態に制御するように構成されていてもよい。勿論、スイッチ部20をオフ状態に制御する時期はこれ以外の時期であってもよい。
【0037】
次に、異常時におけるリレー装置1の動作を説明する。
制御部3は、所定の異常状態が発生した場合、全ての分離リレー5に設けられた全てのスイッチ部20(MOSFET21,22)を強制的にオフ状態に制御する。具体的には、制御部3は、第1電圧検出部61及び第2電圧検出部62から入力される各検出値(各電圧値)を継続的に監視しており、第1電圧検出部61及び第2電圧検出部62の少なくともいずれかから入力される検出値が所定の異常閾値Vth以下となった場合に全ての分離リレー5に設けられたMOSFET21,22の組を全てオフ状態に切り替える制御を行う。なお、異常閾値Vthの値は第1蓄電部91及び第2蓄電部92の満充電時の出力電圧よりも低い値であれば特に限定されないが、例えば上述の所定電圧閾値よりも大幅に低い値に設定することができる。
【0038】
例えば、各分離リレー5に設けられたMOSFET21,22の組が全てオン状態であるとき、第2電圧検出部62で検出される共通導電路14の電圧値は第2蓄電部92(サブバッテリ)の出力電圧を示す。この状態で、第2蓄電部92(サブバッテリ)に接続された配線72において地絡が発生すると、配線72及び共通導電路14の電圧値が0V(グランド電位)近くに変化し、第2電圧検出部62で検出される電圧値は瞬時に0V近くに低下する。つまり、地絡発生直後に第2電圧検出部62で検出される電圧値が瞬時に異常閾値Vth未満となるため、制御部3は、地絡発生直後に瞬時に異常と判定する。そして、制御部3は、全ての分離リレー5に設けられたMOSFET21,22の組を全てオフ状態に切り替える制御を即座に行い、導電路11の通電を遮断する。
【0039】
更に、リレー装置1は、複数の分離リレー5の各並列導電路12(電力線)にコイル30が設けられており、このコイル30のインダクタンス成分によって地絡発生時の瞬間的な電流増大を抑えているため、上述したような地絡が発生したときに瞬間的に大きな電流が発生しない構成となっている。このような構成であるため、地絡が発生してから導電路11の通電が遮断されるまでの間(制御部3の制御によって全ての分離リレー5に設けられたMOSFET21,22が全てオフ状態に切り替えられるまでの間)、導電路11を流れる電流量が大幅に抑えられる。
【0040】
図3(A)では、第2蓄電部92(サブバッテリ)に接続された配線72に地絡が発生した場合における第2蓄電部92(サブバッテリ)の電圧V2と、第1蓄電部91(メインバッテリ)の電圧V1と、配線71から導電路11を通って配線72へ流れる電流I(複数の分離リレー5を流れる電流)との関係を示している。図3(A)は、地絡発生時間T1よりも前の時期に全てのスイッチ部20がオン状態とされた場合において、時間T1で第2蓄電部92(サブバッテリ)側の配線72に地絡が発生した場合について示している。この場合、地絡発生時間T1の直後に配線72及び共通導電路14の電圧(即ち、第2蓄電部92(サブバッテリ)の電圧V2)が瞬時に異常閾値Vth未満に低下するため、制御部3は全てのスイッチ部20をオフ状態に切り替える制御を即座に行い、この切替制御が完了する時間T2で全てのスイッチ部20がオフ状態に切り替わる。つまり、本構成では、地絡発生時間T1の直後に瞬時に異常と判定し、制御部3が全てのスイッチ部20をオフ状態に切り替える制御を即座に行うため、地絡発生時間T1と切り替え完了時間T2の間を短くすることができる。例えば、図1の回路では、比較例となる制御方法として、電流検出部50によって検出される電流値(共通導電路14を流れる電流の電流値)が所定の過電流閾値Ith(図3(A)参照)に達した場合に全てのスイッチ部20をオフ動作させる制御も考えられる。しかし、この比較例の制御方法では、図3(A)で示す地絡発生時間T1の後、分離リレー5の電流Iが過電流閾値Ithに達するまでの時間経過が避けられず、この時間経過の後に全てのスイッチ部20に対するオフ指示がなされ、スイッチ部20の切り替えが行われることになる。つまり、分離リレー5の電流Iが過電流閾値Ithに達するまでの時間経過の分だけスイッチ部20の遮断完了までの時間が遅れてしまうことになる。これに対し、上述した本構成の制御方法では、地絡発生時間T1の直後の時期(上記比較例において分離リレー5の電流Iが過電流閾値Ithに達するよりも早い時期)に生じる第2蓄電部92(サブバッテリ)の電圧低下を検出して即座にスイッチ部20をオフ状態に切り替える制御を行い得るため、分離リレー5の電流Iのみに基づいてスイッチ部20の遮断動作を行う上記比較例の制御方法と比較して、より迅速にスイッチ部20の遮断動作を行うことができる。
【0041】
図3(A)の例では、地絡発生時間T1から全てのスイッチ部20が完全にオフ状態に切り替わる時間T2までの間、第1蓄電部91(メインバッテリ)側から配線72の地絡発生部位に向けて電流が流れ込むため、この期間、複数の分離リレー5を流れる電流I(導電路11を流れる電流)は上昇する。しかし、各並列導電路12に設けられた各コイル30により各並列導電路12を流れる電流の瞬間的な急上昇が抑えられるため、複数の分離リレー5を流れる電流I(導電路11を流れる電流)は徐々に上昇することになる。そして、第1蓄電部91(メインバッテリ)の電圧は地絡発生時間T1から全てのスイッチ部20のオフ動作が完了する時間T2までの間、急低下せずに徐々に低下することになる。つまり、地絡発生直後に第1蓄電部91(メインバッテリ)の電圧が急低下することを抑制し、全てのスイッチ部20がオフ状態に切り替えられる前に第1蓄電部91(メインバッテリ)の電圧が大幅に低くなってしまう事態を回避することができる。しかも、上述したように時間T1と時間T2の間隔を短くすることができるため、地絡発生直後における第1蓄電部91(メインバッテリ)の電圧の低下をより一層抑えることができ、第1蓄電部91(メインバッテリ)の電圧が大幅に低下することに起因する問題(ECUリセット等)を解消することができる。
【0042】
なお、図3(B)には、図1で示すリレー装置1からコイル30、保護回路部40、第1電圧検出部61、第2電圧検出部62を省略し、各MOSFET21,22の間を単に直結した構成において、図3(A)と同様の地絡が発生した場合の、第1蓄電部91(メインバッテリ)の電圧V1と、配線71から導電路11を通って配線72へ流れる電流Iとの関係を示している。なお、図3(B)の構成は、導電路11の電流が過電流閾値Ithを超える過電流状態の発生に応じて制御部3がスイッチ部20をオフ動作するものとする。
【0043】
図3(B)で示すように、コイル30が存在しない構成では、配線72に地絡が発生した場合、地絡発生時から瞬間的に電流量が急上昇し、第1蓄電部91(メインバッテリ)の電圧V1は瞬間的に急低下する。この構成では、制御部3が過電流を検出してから、全てのスイッチ部20のオフ状態への切り替えが完了する前に第1蓄電部91の電圧が大幅に低下してしまうため、ECUリセットやアクチュエータのパワー低下等の不具合を招く虞がある。このような不具合は、高度運転機能車(例えば自動運転車)などでは特に避けられるべきである。これに対し、本構成のリレー装置1では、図3(A)のような関係となるため、このような問題を解消することができる。
【0044】
このような作用は、第1蓄電部91(メインバッテリ)側で地絡が発生した場合でも同様である。例えば、各分離リレー5に設けられたMOSFET21,22の組が全てオン状態であるときに、第1蓄電部91(メインバッテリ)に接続された配線71において地絡が発生すると、配線71及び共通導電路13の電圧値が0V(グランド電位)近くに変化し、第1電圧検出部61で検出される電圧値は瞬時に0V近くに低下する。つまり、地絡発生直後に第1電圧検出部61で検出される電圧値が瞬時に異常閾値Vth未満となるため、制御部3は、地絡発生直後に瞬時に異常と判定する。そして、制御部3は、全ての分離リレー5に設けられたMOSFET21,22の組を全てオフ状態に切り替える制御を即座に行い、導電路11の通電を遮断する。
【0045】
このように第1蓄電部91(メインバッテリ)側で地絡が発生した場合、地絡発生から全てのスイッチ部20が完全にオフ状態に切り替わるまでの間、第2蓄電部92(サブバッテリ)側から配線71の地絡発生部位に向けて電流が流れ込むため、この期間、複数の分離リレー5を流れる電流I(導電路11を流れる電流)は上昇する。しかし、各並列導電路12に設けられた各コイル30により各並列導電路12を流れる電流の瞬間的な急上昇が抑えられるため、複数の分離リレー5を流れる電流I(導電路11を流れる電流)は徐々に上昇することになる。そして、第2蓄電部92(サブバッテリ)の電圧は地絡発生時から全てのスイッチ部20のオフ動作が完了するまでの間、急低下せずに徐々に低下することになる。よって、地絡発生直後に第2蓄電部92(サブバッテリ)の電圧が急低下することを抑制し、全てのスイッチ部20がオフ状態に切り替えられる前に第2蓄電部92(サブバッテリ)の電圧が大幅に低くなってしまう事態を回避することができる。しかも、地絡発生から全てのスイッチ部20の切り替え完了までの間隔を短くすることができるため、地絡発生直後における第2蓄電部92の電圧の低下をより一層抑えることができる。
【0046】
以上のように、本構成のリレー装置1は、第1蓄電部91と第2蓄電部92との間で流れる電流の経路(導電路11)又はこの導電路11に電気的に接続された部位に地絡等が発生し、導電路11に電圧異常が生じた場合に、スイッチ部20をオフ状態に切り替えて保護を図ることができる。また、コイル30(インダクタンス部)がスイッチ部20と直列に接続されているため、いずれかの蓄電部からコイル30及びスイッチ部20を経て地絡位置に向かおうとする電流が流れる場合に、この電流の増加速度を抑えることができる。よって、スイッチ部20による導電路11のオフ動作(保護動作)までの間の当該蓄電部の電圧低下を抑えることができ、蓄電部の出力低下に起因する不具合を生じにくくすることができる。
【0047】
しかも、コイル30(インダクタンス部)よりも第1蓄電部91側の経路、及びコイル30よりも第2蓄電部92側の経路のそれぞれに電圧検出部(第1電圧検出部61、第2電圧検出部62)が設けられており、導電路11又は導電路11に電気的に接続された部位に地絡等が発生した場合、いずれかの電圧検出部の検出値が、地絡等の発生に起因して即座に異常値に変化する。例えば、第1蓄電部91側において導電路11又は導電路11に電気的に接続された部位で地絡等が発生した場合、第1蓄電部91側の導電路11の電圧は瞬時に低下するため、第1電圧検出部61の検出値は瞬時に異常値に変化する。同様に、第2蓄電部92側において、導電路11又は導電路11に接続された部位で地絡等が発生した場合、第2蓄電部92側の導電路11の電圧は瞬時に低下するため、第2電圧検出部62の検出値は瞬時に異常値に変化する。よって、制御部3は、地絡発生時に迅速に異常状態(電圧検出値が異常値に変化した状態)を把握することができ、より早期にスイッチ部20をオフ状態に切り替えることができる。
【0048】
このように、地絡等の発生時には、コイル30(インダクタンス部)によって電流の急上昇を抑えつつ、制御部3によって迅速にスイッチ部20をオフ動作させることができるため、地絡発生時点からスイッチ部20がオフ状態に切り替わるまでに導電路11を介して流れ込む電流をより小さく抑えることができ、地絡等の発生側とは反対側に設けられた蓄電部の電圧の低下をより小さく抑えることができる。
【0049】
また、導電路11を構成する各並列導電路12に設けられたスイッチ部20は、MOSFET21とMOSFET22とを有する。MOSFET21は、オン状態とオフ状態とに切り替わる第1素子部21Aと第1素子部21Aに並列に接続されたボディダイオード21B(第1ダイオード部)とを備える。MOSFET22は、オン状態とオフ状態とに切り替わる第2素子部22Aと第2素子部22Aに並列に接続されるとともにボディダイオード21B(第1ダイオード部)とは逆向きで配置されるボディダイオード22B(第2ダイオード部)とを備える。この構成によれば、導電路11において双方向の通電を遮断することができる。そして、導電路11において第2蓄電部92側の位置で地絡等が発生した場合には、第1蓄電部91から地絡位置に流れようとする放電電流の増加速度がコイル30(インダクタンス部)によって緩和されるため、第1蓄電部91の急激な電圧低下が抑えられる。この場合、スイッチ部20による導電路11のオフ動作(保護動作)までの間の第1蓄電部91の電圧低下を抑えることができ、第1蓄電部91の出力低下に起因する不具合(例えばECUリセット等)を生じにくくすることができる。また、導電路11において第1蓄電部91側の位置で地絡等が発生した場合、第2蓄電部92から地絡位置に流れようとする放電電流の増加速度がコイル30(インダクタンス部)によって緩和されるため、第2蓄電部92の急激な電圧低下が抑えられる。この場合、スイッチ部20による導電路11のオフ動作(保護動作)までの間の第2蓄電部92の電圧低下を抑えることができ、第2蓄電部92の出力低下に起因する不具合を生じにくくすることができる。
【0050】
リレー装置1は、スイッチ部20をオフ状態に切り替える際にコイル30(インダクタンス部)で発生する逆起電力を抑制する保護回路部40を有する。保護回路部40は、具体的には、導電路11において第1蓄電部91及び第2蓄電部92のいずれか一方側から他方側に向かう第1方向に電流が流れる状態でスイッチ部20がオフ状態に切り替えられたときにコイル30(インダクタンス部)で発生する逆起電力を抑制する機能を有する。更に、保護回路部40は、導電路11において第1方向とは反対の第2方向に電流が流れる状態でスイッチ部20がオフ状態に切り替えられたときにコイル30(インダクタンス部)で発生する逆起電力を抑制する機能をも有する。
【0051】
この構成によれば、地絡等の発生時に蓄電部から流れる放電電流の増加速度をコイル30(インダクタンス部)によって緩和する構成を実現しつつ、スイッチ部20のオフ動作の際にコイル30(インダクタンス部)に起因して生じる逆起電力を保護回路部40によって抑制することができる。よって、この逆起電力に起因する不具合(スイッチ部20の破壊等)を防ぐことができる。特に、導電路11を流れる電流が第1方向及び第2方向のいずれの向きでも電流を遮断することができ、いずれの方向の電流を遮断したときでも逆起電力を抑制することができるため、逆起電力に起因する不具合(スイッチ部20の破壊等)をより確実に防ぐことができる。
【0052】
リレー装置1は、スイッチ部20とコイル30(インダクタンス部)とが直列に接続された直列構成部42が、第1蓄電部91と第2蓄電部92との間に並列に複数接続されている。この構成によれば、第1蓄電部91と第2蓄電部92の間により大きな電流を流すことができる構成を、スイッチ部20やコイル30(インダクタンス部)の各サイズを抑えた形で実現することができる。
【0053】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、メイン負荷81及びサブ負荷82として冗長性が求められるアクチュエータ(例えば電動パワーステアリングシステム)を例示したが、これ以外の例であってもよい。例えば、メイン負荷81が、レーダ、超音波センサ、カメラ等のセンシング装置として構成され、サブ負荷82がこれと同等の機能を有するバックアップ用のセンシング装置として構成されていてもよい。また、第1蓄電部91側に接続される負荷と、第2蓄電部92側に接続される負荷とが異なる機能を有していてもよい。
(2)実施例1では、分離リレー5の数が3である例を示したが、分離リレー5の数は、1であってもよく、3以外の複数であってもよい。
(3)実施例1では、分離リレー5に配置されるスイッチ部20が2つのMOSFET21,22によって構成された例を示したが、スイッチ部20は、MOSFET以外の半導体スイッチで構成されていてもよい。また、分離リレー5は、2つの半導体スイッチ素子をコイル30と直列に配置する構成に限定されず、1つの半導体スイッチ素子がコイル30と直列に接続されていてもよく、3以上の半導体スイッチ素子がコイル30と直列に接続されていてもよい。また、スイッチ部20は、機械式のリレーであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…リレー装置
3…制御部
11…導電路
20…スイッチ部
21…MOSFET(第1半導体スイッチ)
21A…第1素子部
21B…ボディダイオード(第1ダイオード部)
22…MOSFET(第2半導体スイッチ)
22A…第2素子部
22B…ボディダイオード(第2ダイオード部)
30…コイル(インダクタンス部)
40…保護回路部
42…直列構成部
61…第1電圧検出部
62…第2電圧検出部
91…第1蓄電部
92…第2蓄電部
図1
図2
図3