特許第6750295号(P6750295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750295
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】光加熱方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/34 20060101AFI20200824BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20200824BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   C21D1/34 R
   F27D19/00 A
   F27D11/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-94489(P2016-94489)
(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公開番号】特開2017-203181(P2017-203181A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 貴文
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝繁
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/145229(WO,A1)
【文献】 特開2002−332520(JP,A)
【文献】 特表2014−522911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00− 1/84
C21D 9/00− 9/44
B21D 22/00−26/14
F27D 7/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一鋼板と、この第一鋼板上の一部分に積層されて配置された第二鋼板とよりなる複合鋼板材料を、温度900℃以上の目標温度域に加熱するための光加熱方法において、
複合鋼板材料の一面を加熱する、複数の加熱ランプよりなる一面側加熱機構と、前記複合鋼板材料の他面を加熱する、複数の加熱ランプよりなる他面側加熱機構と、これらの一面側加熱機構および他面側加熱機構を制御する制御部とを有する光加熱装置を用い、
前記制御部によって、前記一面側加熱機構および他面側加熱機構を構成する全加熱ランプのうち、前記複合鋼板材料における第一鋼板と第二鋼板とが積層された積層部分に対向して配置される加熱ランプの出力を、当該積層部分の温度が目標温度域に到達するよう制御すると共に、
前記一面側加熱機構および他面側加熱機構を構成する全加熱ランプのうち、前記複合鋼板材料の単層部分に対向して配置される加熱ランプの出力を、当該単層部分の温度が前記積層部分よりも先行して目標温度域に到達するよう制御し、目標温度域に到達した後、当該加熱ランプの出力を低下させるよう制御し、
前記積層部分の温度が目標温度域に到達した時点において、前記単層部分の温度が目標温度域にあることを特徴とする光加熱方法。
【請求項2】
前記複合鋼板材料は、前記単層部分の温度および前記積層部分の温度が共に目標温度域に到達した後、一定時間、当該目標温度域の温度に保持されることを特徴とする請求項1に記載の光加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板を加熱処理する光加熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板を高強度に加工する手段としてホットプレス(ダイクエンチ)がある。これは、鋼板を高温に加熱し、高温域でプレス加工する技術であり、特に鋼板を変態温度以上(約900℃以上)でプレス加工し、金型で急速に冷却することによってプレス圧がかかった状態で変態を生じさせることにより、高強度のプレス加工品を製造する技術である。
鋼板を高温に加熱する手段としては、赤外線の照射による光加熱手段が期待されている。例えば、特許文献1には、鋼板の一面に赤外線を照射する直管型の加熱ランプが多数設けられ、鋼板の輪郭形状に応じて各々の加熱ランプの出力強度を調整することによって、所望の領域を高温に加熱する手段が開示されている。
【0003】
また、プレス加工品の生産性や品質を向上させるために、厚みの異なる部分を有する鋼板(以下、「差厚鋼板」ともいう。)をプレス加工する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このように差厚鋼板に対してプレス加工を行うことができると、溶接工程が不要となって生産時間を大きく短縮することができる。
【0004】
しかしながら、差厚鋼板を加熱処理する場合は、当然ながら、その厚みによって部分ごとに到達する加熱温度が異なり、鋼板全体を均質に所望の温度に加熱することが難しい、という問題がある。
また、差厚鋼板が例えば複数の鋼板が積層されてなるものである場合は、当該複数の鋼板間には空気層が介在されるため、熱伝導が極めて低くなるため、差厚鋼板の上面および下面から加熱する必要が生じる。しかしながら、このような差厚鋼板に対して加熱処理において各々の加熱ランプの出力強度を調整するのみによっては、1枚の鋼板のみの部分と複数の鋼板が積層された部分との境界を含む段差領域の温度分布を均質にすることができないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−149133号公報
【特許文献2】特開2005−138112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、差厚鋼板を加熱処理する場合においても、その全体を均質に所望の温度に加熱することができる光加熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光加熱方法は、第一鋼板と、この第一鋼板上の一部分に積層されて配置された第二鋼板とよりなる複合鋼板材料を、温度900℃以上の目標温度域に加熱するための光加熱方法において、
複合鋼板材料の一面を加熱する、複数の加熱ランプよりなる一面側加熱機構と、前記複合鋼板材料の他面を加熱する、複数の加熱ランプよりなる他面側加熱機構と、これらの一面側加熱機構および他面側加熱機構を制御する制御部とを有する光加熱装置を用い、
前記制御部によって、前記一面側加熱機構および他面側加熱機構を構成する全加熱ランプのうち、前記複合鋼板材料における第一鋼板と第二鋼板とが積層された積層部分に対向して配置される加熱ランプの出力を、当該積層部分の温度が目標温度域に到達するよう制御すると共に、
前記一面側加熱機構および他面側加熱機構を構成する全加熱ランプのうち、前記複合鋼板材料の単層部分に対向して配置される加熱ランプの出力を、当該単層部分の温度が前記積層部分よりも先行して目標温度域に到達するよう制御し、目標温度域に到達した後、当該加熱ランプの出力を低下させるよう制御し、
前記積層部分の温度が目標温度域に到達した時点において、前記単層部分の温度が目標温度域にあることを特徴とする。
【0009】
本発明の光加熱方法においては、前記複合鋼板材料は、前記単層部分の温度および前記積層部分の温度が共に目標温度域に到達した後、一定時間、当該目標温度域の温度に保持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光加熱方法においては、複合鋼板材料の単層部分を加熱する加熱ランプの出力を当該単層部分の温度が積層部分よりも先行して目標温度域に到達するよう制御する。従って、単層部分の昇温速度が大きくなると共に、当該単層部分からの伝熱によって積層部分の昇温速度も大きくなって積層部分が目標温度域に到達するまでの時間を短縮することができる。一方、単層部分の温度が目標温度域に到達した後、当該単層部分を加熱する加熱ランプの出力を低下させるよう制御する。従って、単層部分の昇温速度は一旦目標温度域に到達した後は小さくなるので、当該単層部分が過熱されることが抑止される。その結果、複合鋼板材料についての目標温度域に到達するまでの昇温時間の分布を狭くすることができ、かつ、積層部分が目標温度域に到達した時点における単層部分と積層部分との温度差を小さくすることができるので、全体を均質に所望の温度に加熱することができる。
なお、本発明において、「均質に所望の温度に加熱することができる」とは、加熱対象物における所望の範囲について、所定の時間内に目標温度域まで昇温し、当該目標温度域内の加熱処理温度で加熱処理を行うことができることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の光加熱方法に用いる光加熱装置の一例を複合鋼板材料と共に示す部分拡大断面図である。
図2】実施例1および比較例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明の光加熱方法は、第一鋼板と、この第一鋼板上の一部分に積層されて配置された第二鋼板とよりなる差厚鋼板である複合鋼板材料を、加熱ランプからの赤外線を照射することにより、温度900℃以上の目標温度域において加熱処理するための光加熱方法である。
【0014】
〔複合鋼板材料〕
複合鋼板材料Wは、図1に示されるように、第一鋼板W1と、この第一鋼板W1上の一部分に積層されて配置された第二鋼板W2とよりなる差厚鋼板であり、第一鋼板W1のみからなる単層部分Waと、第一鋼板W1および第二鋼板W2の積層部分Wbとを有する。
加熱処理前の複合鋼板材料Wは、積層部分Wbにおける第一鋼板W1と第二鋼板W2とが溶接部Zによってスポット溶接されており、第一鋼板W1と第二鋼板W2との間における溶接部Z以外の領域には空気層が介在されている。
複合鋼板材料Wの詳細な輪郭形状については特に限定されず、輪郭が長方形や正方形のものであっても輪郭が特殊な形状のものであってもよい。
【0015】
〔光加熱装置〕
図1は、本発明の光加熱方法に用いる光加熱装置の一例を複合鋼板材料と共に示す部分拡大断面図である。
この光加熱装置は、処理室(図示せず)を有し、この処理室内において支持部15上に支持される複合鋼板材料Wの一面(図1において上面)および他面(図1において下面)とそれぞれ対向するよう設けられた一面側加熱機構12および他面側加熱機構13とを備えるものとされる。
この光加熱装置において、複合鋼板材料Wは、処理室内において、例えばその下面が局所的に接するよう支持部15上に支持されることにより、複合鋼板材料Wが載置されるべき載置領域(以下、「ワーク載置領域」ともいう。)に載置される。
この光加熱装置は、一面側加熱機構12および他面側加熱機構13からそれぞれワーク載置領域に向かって赤外線を照射することにより、ワーク載置領域に載置された複合鋼板材料Wを両面から加熱して加熱処理するものである。
そして、この光加熱装置は、これらの一面側加熱機構12および他面側加熱機構13を制御する制御部(図示せず)を有する。
【0016】
〔加熱機構〕
一面側加熱機構12および他面側加熱機構13は、各々、複合鋼板材料Wが伸びる面方向に沿って縦横に並設された複数の点光源型の加熱ランプ(点状ランプ)11よりなるものとすることができる。
加熱ランプ11の各々は、隣接する加熱ランプ11の距離が全て等間隔となるよう設置されていることが好ましい。
加熱ランプ11としては、例えばシングルエンド型のフィラメントランプやダブルエンド型のフィラメントランプなどを用いることができる。
【0017】
〔制御部〕
制御部は、一面側加熱機構12および他面側加熱機構13を構成する全加熱ランプ11のうち、複合鋼板材料Wの単層部分Waに対向して配置される加熱ランプ11よりなるランプ群11Aの出力と、積層部分Wbに対向して配置される加熱ランプ11よりなるランプ群11Bの出力とを、独立して制御するゾーン加熱制御を行うものである。
【0018】
〔支持部〕
この光加熱装置においては、一面側加熱機構12と他面側加熱機構13との間に複合鋼板材料Wが載置される支持部15が存在する。支持部15を構成する部材は、赤外線を透過する材料により形成されていることが好ましい。
また、支持部15は、複合鋼板材料Wの除熱を抑制する観点から、複合鋼板材料Wの支持部15との接触面積を小さく抑制することができる構成とされることが好ましい。
【0019】
そして、本発明の光加熱方法においては、光加熱装置のワーク載置領域に載置された複合鋼板材料Wに対して、複合鋼板材料Wの上面および下面に、それぞれ一面側加熱機構12および他面側加熱機構13から赤外線が照射される加熱処理が行われる。
加熱処理は、所定の時間内に複合鋼板材料Wの全体を目標温度域に到達させる昇温工程と、複合鋼板材料Wの全体が目標温度域に到達した後、一定時間、当該目標温度域の温度に保持される温度保持工程とからなる。
【0020】
昇温工程における赤外線の照射は、制御部によって、積層部分Wbに係るランプ群11Bを構成する加熱ランプ11の出力が、当該積層部分Wbの温度が所定の時間内に目標温度域に到達するよう制御された状態で行われる。また、単層部分Waに係るランプ群11Aを構成する加熱ランプ11の出力は、当該単層部分Waの温度が積層部分Wbよりも先行して目標温度域に到達するよう制御し、かつ、目標温度域に到達した後、その出力を低下させるよう制御された状態で行われる。本発明において、加熱ランプ11の出力を低下させるとは、投入するエネルギーを小さくすること、または、消灯することをいう。
【0021】
このように昇温工程における赤外線の照射が行われることによって、まず、単層部分Waの温度は、加熱ランプ11の出力が過剰投入されたランプ群11Aによって加熱されて積層部分Wbに先行して目標温度域に到達する。次いで、ランプ群11Aを構成する加熱ランプ11の出力が低下されて昇温速度が小さくなる。一方、積層部分Wbの温度は、加熱ランプ11の出力が適正に投入されたランプ群11Bによって加熱されると共に単層部分Waから伝熱され、単層部分Waに後続して、かつ、所定の時間内に目標温度域に到達する。この積層部分Wbの温度が目標温度域に到達した時点において、単層部分Waの温度は目標温度域にあることが好ましい。これにより、単層部分Waが過熱状態となることが抑止される。なお、鋼板が過熱状態になると表面の酸化に起因して割れが生じることがある。
【0022】
温度保持工程においては、全加熱ランプ11の出力を一定にすることや、別の加熱装置によって処理室内の雰囲気を加熱すること、IHによる加熱などによって、複合鋼板材料Wの全体が目標温度域に保持される。
【0023】
加熱処理における昇温に係る所定の時間は、例えば40秒間以下とされ、温度保持工程における加熱時間は、例えば10秒間とされる。
また、目標温度域は、900℃以上の範囲であり、例えば900℃〜1100℃とされる。
【0024】
昇温工程における積層部分Wbに係るランプ群11Bを構成する加熱ランプ11の点灯エネルギーは、所定の時間内に積層部分Wbの温度が目標温度域に到達するエネルギーであればよく、例えば、一貫して定格エネルギーとされる。
単層部分Waに係るランプ群11Aを構成する加熱ランプ11の点灯エネルギーは、単層部分Waの温度が目標温度域に到達するまでは定格エネルギー、目標温度域に到達した後は定格エネルギーの50%以下とされることが好ましく、例えば消灯とされる。
【0025】
以上のような光加熱方法においては、複合鋼板材料Wの単層部分Waを加熱する加熱ランプ11の出力を当該単層部分Waの温度が積層部分Wbよりも先行して目標温度域に到達するよう制御する。従って、単層部分Waの昇温速度が大きくなると共に、当該単層部分Waからの伝熱によって積層部分Wbの昇温速度も大きくなって積層部分Wbが目標温度域に到達するまでの時間を短縮することができる。一方、単層部分Waの温度が目標温度域に到達した後、当該単層部分Waを加熱する加熱ランプ11の出力を低下させるよう制御する。従って、単層部分Waの昇温速度は一旦目標温度域に到達した後は小さくなるので、当該単層部分Waが過熱されることが抑止される。その結果、複合鋼板材料W内の目標温度域に到達するまでの昇温時間の分布を狭くすることができ、かつ、積層部分Wbが目標温度域に到達した時点における単層部分Waと積層部分Wbとの温度差を小さくすることができるので、全体を均質に所望の温度に加熱することができる。
【0026】
本発明の光加熱方法は、特に、加熱ランプ11の点灯エネルギーが当該加熱ランプ11の負荷や寿命から考えて上限に近い場合に特に有効である。
また、短時間で複合鋼板材料Wの全体を目標温度域に昇温する必要がある場合にも特に有効である。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、昇温工程における赤外線の照射は、単層部分Wa全体と積層部分Wb全体とをゾーンに分けて制御することに限定されず、単層部分Waと積層部分Wbとの境界を含む領域(段差領域)における単層部分と積層部分とにおいて行ってもよい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
<実施例1>
縦50mm×横90mm×厚み2mmの第一鋼板と、縦50mm×横30mm×厚み2mmの第二鋼板とを横の端を揃えて積層させてスポット溶接で接合した複合鋼板材料(積層部分のサイズ:縦50mm×横30mm×厚み4mm、単層部分のサイズ:縦50mm×横60mm×厚み2mm)を用意した。
この複合鋼板材料を、シングルエンド型のフィラメントランプ(定格電力800W、外径15mm)がランプ間配列ピッチ30mmで複合鋼板材料が伸びる面方向に沿って縦横に並設された加熱機構が、複合鋼板材料の一面側および他面側にそれぞれ設けられた光加熱装置を用いて、下記のように昇温工程における赤外線の照射を行いながら加熱した。
昇温工程における赤外線の照射は、単層部分に係る加熱ランプ、および、積層部分に係る加熱ランプを、全て、ランプ点灯開始から定格エネルギーの90%のエネルギーで点灯し、単層部分の温度が1000℃を超えた時点で単層部分に係る加熱ランプを消灯することにより制御した。
複合鋼板材料には、積層部分および単層部分の段差部に温度モニターを設置し、当該積層部分および単層部分の温度を測定しながら加熱した。
この複合鋼板材料のランプ点灯開始からの時間に対する単層部分および積層部分の温度をそれぞれ図2のグラフに実線Aおよび実線Bとして示す。
【0030】
図2の結果から明らかなように、昇温工程における赤外線の照射の制御を行った本発明に係る実施例1においては、積層部分の温度がランプ点灯開始から37秒間後に1000℃に到達した。一方、単層部分の温度は1000℃を超えた後、加熱ランプを消灯してから昇温速度が緩み、積層部分の温度が1000℃に到達した時点、すなわちランプ点灯開始から37秒間後において約1180℃となった(両部分の温度差:約180℃)。
【0031】
<比較例1>
実施例1において、昇温工程における赤外線の照射の制御を行わず、ランプ点灯開始から、単層部分に係る加熱ランプのうち、段差から30mmの距離の領域に係る加熱ランプは点灯せず、残りの加熱ランプは定格エネルギーの15%のエネルギーで点灯し、積層部分に係る加熱ランプは定格エネルギーで点灯したこと以外は同様にして、加熱した。
この比較例1に係る複合鋼板材料のランプ点灯開始からの時間に対する単層部分および積層部分の温度をそれぞれ図2のグラフに破線Cおよび破線Dとして示す。
【0032】
図2の結果から明らかなように、本発明に係る昇温工程における赤外線の照射の制御を行わなかった比較例1においては、ランプ点灯開始から37秒間後には単層部分の温度および積層部分の温度はいずれも1000℃に到達しなかった。さらに、単層部分および積層部分の温度差は、破線Cおよび破線Dで示されるように赤外線の照射時間の経過するに従って拡がるため、積層部分の温度(破線D)が1000℃に到達する時点においてその温度差は非常に大きなものとなり、これにより複合鋼板材料の均質な加熱が妨げられてしまう。
【符号の説明】
【0033】
11 加熱ランプ
11A,11B ランプ群
12 一面側加熱機構
13 他面側加熱機構
15 支持部
W 複合鋼板材料
W1 第一鋼板
W2 第二鋼板
Wa 単層部分
Wb 積層部分
Z 溶接部
図1
図2