(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと変速機構との間に2つのクラッチを含むクラッチ装置が設けられ、前記エンジンから前記変速機構の出力軸に接続された車両駆動系への駆動力伝達経路を、それぞれのクラッチを介する経路間で切替可能なデュアルクラッチ式変速機の制御装置であって、
車両の制動要求がある否かを検出する制動要求検出手段と、
前記制動要求が検出された場合に、前記エンジンと前記出力軸との間の駆動力伝達を行っているクラッチである利用側クラッチとは別のクラッチである待機側クラッチを半クラッチ状態として、前記待機側クラッチを介して前記エンジンと前記出力軸との間の駆動力伝達を可能な状態にするクラッチ制御手段と、
前記待機側クラッチの温度が所定の第1温度を超えているか否かを判定すると共に、前記待機側クラッチの温度が前記第1温度よりも高い第2温度を超えているか否かを判定する温度判定手段とを備え、
前記クラッチ制御手段は、前記待機側クラッチの温度が前記第1温度を超えていると判定された場合において、
前記待機側クラッチの温度が、前記第2温度を超えている場合には、前記待機側クラッチを断状態に制御し、
前記待機側クラッチの温度が前記第1温度を超え、前記第2温度以下である場合には、前記待機側クラッチの温度の変化傾向に基づいて、前記待機側クラッチの温度上昇が0となる伝達トルクである目標トルクを推定し、前記待機側クラッチの締結力を前記目標トルクとなるように制御する
デュアルクラッチ式変速機の制御装置。
前記温度判定手段により、前記待機側クラッチの温度が所定の第1温度を超えていると判定された場合に、前記待機側クラッチの温度が第1温度を超えていることを示す警告を出力する警告処理手段を更に有する
請求項1又は請求項2に記載のデュアルクラッチ式変速機の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るデュアルクラッチ式変速機の制御装置の一例である制動制御装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るデュアルクラッチ装置を備えるデュアルクラッチ式変速機を示す模式的な構成図である。
【0017】
デュアルクラッチ式変速機1は、駆動源であるエンジン10の出力軸11に接続されている。
【0018】
デュアルクラッチ式変速機1は、第1及び第2クラッチ21,22を有するデュアルクラッチ装置20と、変速機構30と、制御装置の一例としての制動制御装置80と、作動油調整部84と、第1温度センサ90と、第2温度センサ91と、エンジン回転数センサ92と、車速センサ93(出力回転数センサともいう)と、ブレーキペダルセンサ94と、アクセル開度センサ95と、シフトポジションセンサ96とを備えている。
を備えている。
【0019】
第1クラッチ21は、例えば、湿式多板クラッチであって、エンジン10の出力軸11と一体回転するクラッチハブ23と、変速機構30の第1入力軸31と一体回転する第1クラッチドラム24と、複数枚の第1クラッチプレート25と、第1クラッチプレート25を圧接する第1ピストン26と、第1油圧室26Aとを備えている。
【0020】
第1クラッチ21は、第1油圧室26Aに供給される作動油圧によって第1ピストン26が出力側(
図1の右方向)にストローク移動すると、第1クラッチプレート25が圧接されて、トルクを伝達する接続状態となる。一方、第1油圧室26Aの作動油圧が解放されると、第1ピストン26が図示しないスプリングの付勢力によって入力側(
図1の左方向)にストローク移動されて、第1クラッチ21は動力伝達を遮断する切断状態(断状態)となる。なお、以下の説明では、クラッチハブ23と第1クラッチドラム24とが異なる回転数で回転しつつ、第1クラッチプレート25を介してトルクが伝達される状態を第1クラッチ21の半クラッチ状態と称する。
【0021】
第2クラッチ22は、例えば、湿式多板クラッチであって、クラッチハブ23と、変速機構30の第2入力軸32と一体回転する第2クラッチドラム27と、複数枚の第2クラッチプレート28と、第2クラッチプレート28を圧接する第2ピストン29と、第2油圧室29Aとを備えている。
【0022】
第2クラッチ22は、第2油圧室29Aに供給される作動油圧によって第2ピストン29が出力側(
図1の右方向)にストローク移動すると、第2クラッチプレート28が圧接されて、トルクを伝達する接続状態となる。一方、作動油圧が解放されると、第2ピストン29が図示しないスプリングの付勢力によって入力側(
図1の左方向)にストローク移動されて、第2クラッチ22はトルク伝達を遮断する切断状態となる。なお、以下の説明では、クラッチハブ23と第2クラッチドラム27とが異なる回転数で回転しつつ、第2クラッチプレート28を介してトルクが伝達される状態を第2クラッチ22の半クラッチ状態と称する。
【0023】
変速機構30は、入力側に配置された副変速部40と、出力側に配置された主変速部50とを備えて構成されている。また、変速機構30は、副変速部40に設けられた第1入力軸31及び第2入力軸32と、主変速部50に設けられた出力軸33と、これらの軸31〜33と平行に配置された副軸34とを備えている。第1入力軸31は、第2入力軸32を軸方向に貫通する中空軸内に相対回転自在に挿入されている。出力軸33の出力端には、何れも図示しない車両駆動輪に差動装置等を介して連結されたプロペラシャフトが接続されている。
【0024】
副変速部40には、第1スプリッタギヤ対41と、第2スプリッタギヤ対42とが設けられている。第1スプリッタギヤ対41は、第1入力軸31に固定された第1入力主ギヤ43と、副軸34に固定されて第1入力主ギヤ43と常時歯噛する第1入力副ギヤ44とを備えている。第2スプリッタギヤ対42は、第2入力軸32に固定された第2入力主ギヤ45と、副軸34に固定されて第2入力主ギヤ45と常時歯噛する第2入力副ギヤ46とを備えている。
【0025】
主変速部50には、複数の出力ギヤ対51と、複数のシンクロ機構55とが設けられている。出力ギヤ対51は、副軸34に固定された出力副ギヤ52と、出力軸33に相対回転自在に設けられると共に出力副ギヤ52と常時歯噛する出力主ギヤ53とを備えている。シンクロ機構55は、公知の構造であって、何れも図示しないドグクラッチ等を備えて構成されている。シンクロ機構55の作動は、後述する制動制御装置80によって制御されており、シフトポジションセンサ98で検出される現在のシフトポジション、アクセル開度センサ97により検出されるアクセル開度、車速センサ95により検出される速度等に応じて、出力軸33と出力主ギヤ53とを選択的に係合状態(ギヤイン)又は非係合状態(ニュートラル状態)に切り替えるようになっている。なお、出力ギヤ対51やシンクロ機構55の個数、配列パターン等は図示例に限定されものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0026】
第1温度センサ90は、第1クラッチ21の温度を検出する。第2温度センサ91は、第2クラッチ22の温度を検出する。エンジン回転数センサ92は、エンジン10の回転数(エンジン回転数)を検出し、制動制御装置80に出力する。車速センサ93は、出力軸33の回転数(出力軸回転数)を検出し、制動制御装置80に出力する。出力軸回転数からは、車速を特定することができる。ブレーキペダルセンサ94は、ブレーキペダルが踏み込まれているか否か、すなわち、ブレーキペダルがオンかオフかを検出する。アクセル開度センサ95は、アクセル開度を検出し、制動制御装置80に出力する。シフトポジションセンサ96は、操作レバーにより指定(選択)された位置(シフトポジション)を検出し、制動制御装置80に出力する。
【0027】
制動制御装置80は、エンジン10、デュアルクラッチ装置20、変速機構30等の各種制御を行うもので、公知のCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。これら各種制御を行うために、制動制御装置80には、各種センサ類(90〜96)のセンサ値が入力される。
【0028】
また、制動制御装置80は、制動要求検出手段及びクラッチ制御手段の一例としてのクラッチ制御部81と、温度判定手段の一例としての温度判定部82と、警告処理手段の一例としての警告処理部83とを一部の機能要素として有する。これらの機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアである制動制御装置80に含まれるものとして説明するが、これらの何れか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0029】
ここで、以下の説明において、エンジン10から変速機構30の出力軸33への駆動力の伝達に使用している側のクラッチを利用側クラッチと称し、これとは別のクラッチ、すなわち、エンジン10から変速機構30の出力軸33への駆動力の伝達に使用されていなかった側のクラッチを待機側クラッチと称する。なお、或る時点において、第1クラッチ21と第2クラッチ22とのいずれが利用側クラッチであり、いずれが待機側クラッチであるかについては、制動制御装置80が情報として保持しており、把握することができる。
【0030】
クラッチ制御部81は、制動要求があるか否か、制動要求が継続しているか否か判定する。ここで、制動要求としては、例えば、アクセル開度センサ95により検出されるアクセル開度が0である場合としてもよく、また、ブレーキペダルセンサ94により検出されるブレーキペダルの状態がオンである場合としてもよく、待機側クラッチを半クラッチ状態にする制動制御の実行を要求する状態を示すものであればよい。
【0031】
また、クラッチ制御部81は、制動要求があると判定した場合には、エンジン10から変速機構30の出力軸33への駆動力の伝達に使用していない待機側クラッチの伝達トルク(単にトルクともいう)が、半クラッチ状態を実現することのできる初期トルクC
1となるように、作動油調整部84により待機側クラッチの油圧室へ供給する作動油の圧力を調整させる。これにより、待機側クラッチが半クラッチ状態となり、待機側クラッチによる摩擦熱等が車両の運動エネルギ−を消費して、制動力として作用する。
【0032】
また、クラッチ制御部81は、制動要求が継続していないと判定した場合には、待機側クラッチのトルクが0(すなわち、待機側クラッチが断状態)となるように、作動油調整部84により待機側クラッチの油圧室へ供給する作動油の圧力を調整させる。また、クラッチ制御部81は、制動要求が継続していると判定した場合には、温度判定部82にその旨を通知する。
【0033】
また、クラッチ制御部81は、待機側クラッチの温度が後述する第2温度T
2を超えてない旨の通知を受けた場合には、待機側クラッチの温度が以降において第2温度T
2を超えないようにするために適切な待機側クラッチのトルクC
2(目標トルク:C
2<C
1)を推定し、待機側クラッチのトルクが、トルクC
2となるように、作動油調整部84により待機側クラッチの油圧室へ供給する作動油の圧力を調整させる。
【0034】
ここで、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えないようにするために適切な待機側クラッチのトルクC
2を推定する方法としては、クラッチ21,22のトルクと、クラッチ温度の変化との対応関係を予め把握しておき、第1温度センサ90又は第2温度センサ91からの待機側クラッチの温度の変化傾向(温度上昇率等)に基づいて、クラッチの温度上昇が0となるようなトルクを推定するようにすればよい。
【0035】
また、クラッチ制御部81は、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えている旨の通知を受けた場合には、待機側クラッチのトルクが、0(すなわち、待機側クラッチが断状態)となるように、作動油調整部84により待機側クラッチの油圧室へ供給する作動油の圧力を調整させる。これにより、待機側クラッチの温度が上昇することを適切に防止することができ、クラッチの機能損失や耐久性の低下を適切に抑止することができる。
【0036】
温度判定部82は、制動要求が継続している旨の通知を受けた場合には、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えるか否かを判定し、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えない場合には、その旨を警告処理部83に通知する一方、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超える場合には、その旨を警告処理部83に通知する。ここで、第1温度T
1は、待機側クラッチの温度上昇を注意する必要がある温度である。
【0037】
また、温度判定部82は、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えるか否かを判定し、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超える場合には、警告処理部83及びクラッチ制御部81にその旨を通知する一方、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えない場合には、警告処理部83及びクラッチ制御部81にその旨を通知する。ここで、第2温度T
2は、第1温度T
1よりも高く、待機側クラッチの限界の温度よりも低い温度であり、早急に待機側クラッチの温度を低下させなければ、待機側クラッチが限界の温度に達してしまい、過度の機能損失や耐久性の低下をもたらす可能性が高いといった状況に対応する温度である。
【0038】
警告処理部83は、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えていない旨の通知を受けた場合には、待機側クラッチによる制動に関する警告(後述する第1警告、第2警告、第3警告)が出力されている場合には、これら警告を消去し、第2警告や、第3警告が出力されていた場合には、それらの警告に関するログ情報を制動制御装置80の図示しないメモリに記録する。
【0039】
また、警告処理部83は、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えている旨の通知を受けた場合には、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えていることを示す警告(第1警告)を、例えば、運転席に設けられたメータ類を表示する図示しないメータ部に出力する。また、警告処理部83は、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えてない旨の通知を受けた場合には、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超え、第2温度T
2以下であり、待機側クラッチによる制動力を調整することを示す警告(第2警告)をメータ部に出力する。また、警告処理部83は、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えている旨の通知を受けた場合には、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えており、待機側クラッチによる制動を停止させることを示す警告(第3警告)をメータ部に出力する。
【0040】
作動油調整部84は、例えば、リニアソレノイドバルブを有し、クラッチ制御部81から供給される制御信号(制御用電流)に従って、図示しない油圧供給源からの作動油を調整することにより、第1油圧室26Aに供給する作動油の量及び圧力及び第2油圧室29Aに供給する作動油の量及び圧力を調整する。
【0041】
次に、制動制御装置80による制動制御処理について説明する。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態に係る制動制御処理のフローチャートである。
【0043】
制動制御処理は、車両が走行している場合に実行される。
【0044】
クラッチ制御部81は、制動要求があるか否かを判定する(ステップS11)。この結果、制動要求があると判定していない場合(ステップS11:NO)には、クラッチ制御部81は、再びステップS11を実行する。
【0045】
一方、制動要求があると判定した場合(ステップS11:YES)には、クラッチ制御部81は、エンジン10から変速機構30の出力軸33への駆動力の伝達に使用していない待機側クラッチのトルクが、初期トルクC
1となるように、作動油調整部84により待機側クラッチの油圧室へ供給する作動油の圧力を調整させる(ステップS12)。これにより、待機側クラッチが半クラッチ状態となり、待機側クラッチによる摩擦熱等が車両の運動エネルギ―を消費して、制動力として作用する。
【0046】
次いで、クラッチ制御部81は、制動要求が継続しているか否かを判定する(ステップS13)。この結果、制動要求が継続していないと判定した場合(ステップS13:NO)には、待機側クラッチを用いた制動をする必要がないので、クラッチ制御部81は、待機側クラッチのトルクが0(すなわち、待機側クラッチが断状態)となるように、作動油調整部84により待機側クラッチの油圧室へ供給する作動油の圧力を調整させ(ステップS14)、処理をステップS11に進める。
【0047】
一方、制動要求が継続していると判定した場合(ステップS13:YES)には、温度判定部82が、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えるか否かを判定する(ステップS15)。この結果、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えない場合(ステップS15:NO)には、待機側クラッチにおいて、過度な機能損失や耐久性の低下が発生する可能性が低いので、警告処理部83は、待機側クラッチによる制動に関する警告(第1警告、第2警告、又は第3警告)が出力されている場合には、これら警告をメータ部から消去し(ステップS16)、第2警告や、第3警告が出力されていた場合には、これらの警告に関するログ情報を制動制御装置80の図示しないメモリに記録し(ステップS17)、処理をステップS13に進める。
【0048】
一方、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超える場合(ステップS15:YES)には、待機側クラッチの温度が待機側クラッチの過度な機能損失等を招く可能性が高いので、警告処理部83は、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えていることを示す第1警告をメータ部に出力する(ステップS18)。
【0049】
次いで、温度判定部82が、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えるか否かを判定する(ステップS19)。この結果、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超える場合(ステップS19:YES)には、早急に待機側クラッチの温度を低下させる必要があるので、警告処理部83は、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えており、待機側クラッチによる制動を停止させることを示す第3警告をメータ部に出力し(ステップS20)、クラッチ制御部81は、待機側クラッチのトルクが0(すなわち、待機側クラッチが断状態)となるように、作動油調整部84により待機側クラッチの油圧室へ供給する作動油の圧力を調整させ(ステップS21)、処理をステップS13に進める。この結果、待機側クラッチの温度が上昇することを適切に防止することができ、クラッチの機能損失や耐久性の低下を適切に抑止することができる。
【0050】
一方、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えない場合(ステップS19:NO)には、警告処理部83は、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超え、第2温度T
2以下であり、待機側クラッチによる制動力を調整することを示す第2警告をメータ部に出力し(ステップS22)、クラッチ制御部81は、待機側クラッチの温度が第2温度T
2を超えないようにするために適切な待機側クラッチのトルクC
2を推定し、待機側クラッチのトルクが、トルクC
2となるように、作動油調整部84により待機側クラッチの油圧室へ供給する作動油の圧力を調整させ(ステップS23)、処理をステップS13に進める。この結果、待機側クラッチの温度が第2温度T
2以上となってしまう状況を低減でき、クラッチの機能損失や耐久性の低下を適切に抑止することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る制動制御装置80によると、制動要求が検出された場合に、エンジン10と変速機構30の出力軸33との間の駆動力伝達を行っている利用側クラッチとは別のクラッチである待機側クラッチを半クラッチ状態として、待機側クラッチを介してエンジン10と変速機構30の出力軸33との間の駆動力伝達を可能な状態にし、待機側クラッチの温度が第1温度T
1を超えていると判定された場合に、待機側クラッチの伝達トルクを低減するように制御するようにしているので、待機側クラッチによる制動力を利用しつつ、待機側クラッチの機能損失や耐久性の低下を適切に抑止することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る制動制御装置80によると、待機側クラッチの温度が、第1温度T
1よりも高く、第2温度T
1以下である場合に、待機側クラッチを断状態とならない範囲で伝達トルクを制御するようにしているので、待機側クラッチによる制動力を利用しつつ、待機側クラッチの温度上昇を抑制して、待機側クラッチの機能損失や耐久性の低下を適切に抑止することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、待機側クラッチの温度の状況を判定するための第1温度T
1と、第2温度T
2とを、待機側クラッチが第1クラッチ21の場合と第2クラッチ22の場合とのいずれの場合でもそれぞれ共通の値としていたが、本発明はこれに限られず、待機側クラッチが第1クラッチ21の場合と、待機側クラッチが第2クラッチ22の場合とで、第1温度T
1の値と、第2温度T
2の値のそれぞれについて変えるようにしてもよい。また、待機側クラッチのトルクC
1、C
2についても、待機側クラッチが第1クラッチ21の場合と第2クラッチ22の場合とで、それぞれのトルクの大きさを変えるようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、制動要求があった場合に、待機側クラッチを半クラッチ状態にする制動制御を実行することにより制動力を向上させるようにしていたが、本発明はこれに限られず、運転者等による設定に応じて、待機側クラッチを半クラッチ状態にする制動制御を実行するか否かを決定するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、制動要求があった場合に、待機側クラッチを半クラッチ状態にする制動制御を実行することにより制動力を向上させるようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、待機側クラッチを介した駆動力伝達経路の状態が、利用側クラッチを介した駆動力伝達経路の変速段よりも低速段である場合にのみ、待機側クラッチを半クラッチ状態にする制動制御を実行するようにしてもよい。このようにすると、待機側クラッチを用いた制動時に発生する変速機構30における内部負荷を抑制することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、副変速部40を有するデュアルクラッチ式変速機1としていたが、本発明はこれに限られず、2つの入力軸と、1つの出力軸とを有し、一方のクラッチと出力軸33との間を駆動力伝達可能な状態にできる同時に、他方のクラッチと出力軸33との間を駆動力伝達可能な状態にできる構成であれば、副変速部40を有さないデュアルクラッチ式変速機であっても本発明を適用することができる。