(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
持ち手となるハンドル基材部と前記ハンドル基材部の先端側に連設した細長い軸状の芯基材部とを有し、合成樹脂を含む樹脂材料からなる基材部と、前記芯基材部の少なくとも一部を被覆する被覆部を有する清掃用軟質部を含み、エラストマからなる軟質部と、を備える歯間清掃具であって、
前記芯基材部が、前記清掃用軟質部で被覆された第1軸部と、一端が前記第1軸部にほぼ同軸状に連設されかつ他端が前記ハンドル基材部の先端側に連設された第2軸部と、からなり、前記第1軸部は基端側末端径がd1(mm)であり、
前記第1軸部の基端側末端を固定端及び先端側末端を自由端として該歯間清掃具を水平方向に保持した状態で、前記第1軸部と前記第2軸部との境界位置を起点として前記第1軸部の先端側へL(mm)の位置に荷重(P)を鉛直方向下方に負荷する測定において、前記第1軸部が弾性変形を維持する荷重領域での最大荷重値を荷重(P)として負荷した時の撓み量をYmax(mm)、荷重(P)を負荷する位置での前記第1軸部の径をd2(mm)とした場合、下記式(1)から求められる前記芯基材部の弾性率Eが3000MPa以上であることを特徴とする歯間清掃具。
E=[64P/(Ymax・π)]・(m+n) …(1)
〔式(1)中、m=−[3・(D)3・(d1+D・L)]−1である。
n=[D2・L2−d1・L・D+(d1)2]/[3・(d1)3・(D)3]である。前記各式中D=(d2−d1)/Lである。〕
前記芯基材部はその表面の所定位置に2個以上の芯基材部凹部を有し、前記被覆部は第1側部と第2側部とを有し、前記第1、第2側部はそれぞれ前記清掃部の軸方向に所定の間隔を開けて配置されかつ前記被覆部を貫通して前記芯基材部凹部に繋がる2個以上の第1、第2被覆部凹部を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯間清掃具。
前記樹脂材料が、前記合成樹脂と、繊維状充填材及び板状充填材よりなる群から選ばれる少なくとも1種の充填材と、を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯間清掃具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
清掃部の歯間への挿入時には、軸方向に対して大きな圧縮の力が作用する。また、臼歯特に大臼歯や前歯裏側等の歯間清掃時には、先端部から途中部にかけて60°〜90°湾曲させた状態で清掃部を歯間に挿入し、出し入れする必要があることから、清掃部に大きな曲げ荷重が作用する。このため、基材部を構成する合成樹脂が比較的高い機械特性を有するものであっても、清掃部の折れ、復元性のない変形等が起こり易くなる。
【0007】
清掃部を歯間に挿入する際には、清掃部特にその先端部を撓ませる必要がある。しかし、大臼歯や下顎前歯裏側等の歯間のように清掃部を大きく湾曲させる必要がある場合には、急激な撓みが生じることにより、清掃部の先端部の位置を指先で制御することが困難になり、清掃部の歯間挿入性が低下する。また、清掃部が撓まない場合には、歯間挿入時や歯間清掃時に清掃部に対して過度の負荷が生じることで、主に清掃部の破断が生じ易くなる。
【0008】
ポリエーテルサルフォン等のスーパーエンジニアリングプラスチックからなる芯基材部は、撓み易くなって清掃部の折れを防止できる。しかし、スーパーエンジニアリングプラスチックの成形には非常に高い射出温度が必須となることから、基材部を射出成形した後の冷却時間が長くなり、歯間清掃具の生産性が低下する。また、材料コストが高く、射出成形機等の生産設備に過度の熱負担が掛かり、老朽化が進み易いこと等から、トータルの製造コストが高くなる。
【0009】
本発明の目的は、樹脂材料及びエラストマからなる歯間清掃具であって、清掃部の歯間への挿入性に優れ、歯間清掃時の清掃部の折れが防止された歯間清掃具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、芯基材部の弾性率を所定の範囲とすることにより、清掃部が適度な撓み性と適度な剛性とを併せ持つものとなって、芯基材部とエラストマからなる清掃用軟質部とが一体的な構造変化を起こし易くなるため、清掃部の良好な歯間挿入性を保ちながら、歯間清掃時の清掃部の耐折れ性を顕著に向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(11)の歯間清掃具を提供する。
【0012】
(1)持ち手となるハンドル基材部とハンドル基材部の先端側に連設した細長い軸状の芯基材部とを有し、合成樹脂を含む樹脂材料からなる基材部と、芯基材部の少なくとも一部を被覆する被覆部を有する清掃用軟質部を含み、エラストマからなる軟質部と、を備える歯間清掃具であって、芯基材部が、清掃用軟質部で被覆された第1軸部と、一端が第1軸部にほぼ同軸状に連設されかつ他端がハンドル基材部の先端側に連設された第2軸部と、からなり、第1軸部は基端側末端径がd
1(mm)であり、第1軸部の基端側末端を固定端及び先端側末端を自由端として該歯間清掃具を水平方向に保持した状態で、第1軸部と第2軸部との境界位置を起点として第1軸部の先端側へL(mm)の位置に荷重(P)を鉛直方向下方に負荷する測定において、第1軸部が弾性変形を維持する荷重領域での最大荷重値を荷重(P)として負荷した時の撓み量をY
max(mm)、荷重(P)を負荷する位置での第1軸部の径をd
2(mm)とした場合、下記式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eが3000MPa以上であることを特徴とする歯間清掃具。
E=[64P/(Y
max・π)]・(m+n) …(1)
〔式(1)中、m=−[3・(D)
3・(d
1+D・L)]
−1である。
n=[D
2・L
2−d
1・L・D+(d
1)
2]/[3・(d
1)
3・(D)
3]である。前記各式中D=(d
2−d
1)/Lである。〕
【0013】
本発明の歯間清掃具に備わる芯基材部は、清掃用軟質部により被覆され、清掃用軟質部と共に清掃部を構成する先端側軸部である第1軸部と、一端が第1軸部にかつ他端がハンドル基材部に繋がり、清掃用軟質部により被覆されないで露出する基端側軸部である第2軸部とからなる。第1、第2軸部はほぼ同軸状に繋がる。第1軸部の基端側末端径d
1(mm)とは、第1、第2軸部の境界における第1軸部の直径である。
【0014】
上記(1)の歯間清掃具は、該歯間清掃具を水平方向に保持した状態で、芯基材部の第1軸部の基端側末端を固定端及び先端側末端を自由端とし、第1軸部と第2軸部との境界位置を起点として第1軸部の先端(又は末端)側へL(mm)の位置(この位置での第1軸部の径はd
2(mm)である。)に荷重P(N)を鉛直方向下方に負荷して荷重変位曲線を求める測定において、第1軸部が弾性変形を維持する荷重領域での最大荷重値を荷重(P)として負荷した時の撓み量をY
max(mm)とした場合、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eが3000MPa以上であることを特徴とする。ここで、歯間清掃具を水平方向に保持するとは、芯基材部の軸線と水平方向とがほぼ一致するように歯間清掃具を保持することを意味する。
【0015】
本発明のように式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eを上記所定の範囲とする場合には、軟質被覆部を構成するエラストマは、最大撓み量Y
maxに対してほとんど影響を及ぼすことがないため、第1軸部と第2軸部との境界位置を起点とし、先端側へ長さL(mm)の清掃部上の位置に荷重P(N)を負荷した際の、該清掃部の荷重変位曲線において該清掃部が弾性変形を維持し得る直線状領域の終端における撓み量Z
maxを式(1)におけるY
maxの代わりに適用してもほぼ対応した値となることが、本発明者らの研究により判明している。
【0016】
上記(1)の歯間清掃具によれば、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eを3000MPa以上とすることにより、芯基材部の第1軸部と清掃用軟質部とで構成される清掃部全体としての剛性が高まるのではなく、清掃部全体として適度な撓み性と適度な剛性とを併せ持つようになり、剛性は清掃部の歯間挿入性の向上に寄与し、撓み性と剛性とが協働して歯間清掃時の清掃部の折れの防止に寄与することから、歯間挿入性がより一層向上すると共に、歯間清掃時、特に大臼歯や下顎前歯裏側等のように清掃部を大きく湾曲させる必要がある歯間の清掃時でも、清掃部の折れを顕著に防止することができる。
【0017】
(2)清掃用軟質部が、被覆部の長手方向に間隔を空けて外方に突出状に、被覆部に一体化された複数の突起部をさらに含む、上記(1)の歯間清掃具。
上記(2)の歯間清掃具は、清掃用軟質部が被覆部と共に、被覆部の長手方向に間隔を空けて外方に突出状に、被覆部に一体化された複数の突起部を含む形態である。このような形態でも、芯基材部の弾性率Eを3000MPa以上とすることにより、上記(1)の歯間清掃具と同様の効果が得られる。
【0018】
(3)長さLが好ましくは3mm〜12mm(より好ましくは5mm〜10mm)である、上記(1)又は(2)の歯間清掃具。
上記(3)の歯間清掃具によれば、長さLを3mm〜12mm(より好ましくは5mm〜10mm、さらに好ましくは10mm)の範囲とすることにより、芯基材部の弾性率Eをより正確に測定及び算出することが可能になり、弾性率Eを求めれば、当該歯間清掃具における耐折れ性等の性能をほぼ正確に知ることができる。
【0019】
(4)芯基材部の弾性率Eが3000MPa以上7200MPa以下の範囲である、上記(1)〜(3)のいずれかの歯間清掃具。
上記(4)の歯間清掃具によれば、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eを3000〜7200MPaの範囲とすることにより、清掃部が撓み性と剛性とを高水準で併せ持ち、歯間挿入性及び歯間清掃時の清掃部の耐折れ性を高め得るだけでなく、歯間清掃時に清掃部の不規則な変形等が起こり難くなるので、急激な変形によって口腔内へ不意に接触することによる痛みを感じたり、口腔内を傷付けたりすることを防止することができ、安心して使用することができる。
【0020】
なお、芯基材部の弾性率Eが3000MPa未満であると、清掃部全体としての剛性が低下し過ぎ、清掃部の歯間挿入性が低下したり、歯間挿入時や歯間清掃時に清掃部の急激な変形が起こったりするおそれがある。また、芯基材部の弾性率Eが7200MPaを超えると、芯基材部の第1軸部の撓み性が不十分になっている場合があり、歯間清掃時の清掃部の折れを十分に防止できないおそれがある。
【0021】
(5)芯基材部はその表面の所定位置に2個以上の芯基材部凹部を有し、被覆部は第1側部と第2側部とを有し、第1、第2側部はそれぞれ芯基材部の軸方向に所定の間隔を空けて配置されかつ被覆部を貫通して芯基材部凹部に繋がる2個以上の第1、第2被覆部凹部を有する、上記(1)〜(4)のいずれかの歯間清掃具。
【0022】
本発明の歯間清掃具は、例えば、第1金型に樹脂材料を射出して基材部を成形する工程と、第2金型に基材部を挿入し、エラストマを射出して芯基材部の表面を被覆し、清掃用軟質部を形成する工程と、を含む2色成形法により作製される。そして、エラストマを被覆する際に、芯基材部の移動等による成形不良の発生を防止するために、芯基材部の軸方向の複数箇所に一対の保持ピンを例えば上下方向から当接して固定する。このような2色成形法では、成形後の清掃用軟質部(被覆部)に保持ピンに由来する複数の貫通孔がその軸方向に間隔を空けて形成されると共に、該貫通孔に繋がって露出する芯基材部表面に微小な深さを有する芯基材部凹部が形成される。本明細書では、清掃用軟質部(被覆部)の貫通孔(第1又は第2被覆部凹部)とそれに繋がる芯基材部凹部とからなる凹部を「清掃部凹部」と称することがある。
【0023】
また、被覆部の第1、第2側部とは、清掃用軟質部を成形する第2金型における、一方の金型で成形される清掃用軟質部外周面の片側半部、及び他方の金型で成形される清掃用軟質部外周面の残りの片側半部をそれぞれ意味する。
【0024】
上記(5)の歯間清掃具は、清掃用軟質部における被覆部がその第1、第2側部にそれぞれ第1、第2被覆部凹部を有する実施形態である。該歯間清掃具は、前述のように、芯基材部の複数箇所を一対の保持ピンで固定して芯基材部の表面に清掃用軟質部(被覆部)を被覆成形する軟質部成形工程を含む歯間清掃具の製造方法により得られる。第1、第2被覆部凹部は、歯間清掃時等に大きな応力の集中を引き起こし、清掃部の折れを発生させるおそれがあるが、芯基材部の弾性率Eを上記所定の範囲とすることにより、第1、第2被覆部凹部及びその周辺での応力の集中を緩和し、清掃部の良好な歯間挿入性を保ちながら、歯間清掃時の清掃部の折れを防止することができる。
【0025】
(6)2個以上の第1被覆部凹部と、2個以上の第2被覆部凹部とが、芯基材部を挟んでそれぞれ対面状に配置された、上記(5)の歯間清掃具。
上記(6)の歯間清掃具は、清掃用軟質部の被覆部に、芯基材部を介して対向する位置にそれぞれ第1、第2被覆部凹部を有する実施形態である。このような実施形態でも、芯基材部の弾性率Eを上記所定の範囲とすることにより、第1、第2被覆部凹部及びその周辺での応力の集中を緩和し、清掃部の良好な歯間挿入性を保ちながら、歯間清掃時の清掃部の折れを防止することができる。
【0026】
(7)第1、第2被覆部凹部の少なくとも1個が、清掃部の軸方向に長い凹部(楕円形、長円形、長方形、卵形、小判型/俵型(短辺部が曲線状の長方形、丸角長方形)、涙型形状、平行四辺形など清掃部軸の螺旋方向に長い形状、等)である、上記(5)又は(6)の歯間清掃具。
上記(7)の歯間清掃具は、第1、第2被覆部凹部の少なくとも1個を芯基材部の軸方向に長い凹部とした実施形態である。芯基材部の軸方向に長い被覆部凹部は、歯間清掃時にその周辺に大きな応力が集中するのを緩和する作用を示し、さらに芯基材部が3000MPa以上(好ましくは3000〜7200MPa)の、式(1)から求められる弾性率Eを持つことから、保持ピンを用いて清掃用軟質部を形成する工程を含む歯間清掃具の製造方法において、清掃部の歯間挿入性及び歯間清掃時の耐折れ性の顕著に向上した歯間清掃具を得ることができる。なお、芯基材部の軸方向に長い被覆部凹部を形成するためには、例えば、保持ピンの断面形状を適宜選択すればよい。
【0027】
(8)第1軸部は、d
1>d
2であり、かつ基端側から先端側に向けて徐々に縮径するテーパ形状を有する、上記(1)〜(7)のいずれかの歯間清掃具。
上記(8)の歯間清掃具によれば、歯間清掃時の清掃部の良好な耐折れ性を保持しながら、歯間挿入性や歯間清掃時の取扱い性を一層向上させることができる。
【0028】
(9)樹脂材料が、合成樹脂と、繊維状充填材及び板状充填材よりなる群から選ばれる少なくとも1種の充填材と、を含む上記(1)〜(8)のいずれかの歯間清掃具。
繊維状充填材を用いた上記(9)の歯間清掃具によれば、芯基材部の軸方向の剛性が一層高まって歯間挿入性を一層向上させることができると共に、芯基材部の剛直化に起因する清掃部の折れが、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eを3000MPa以上(好ましくは3000〜7200MPa)とすることにより緩和されるので、比較的良好な耐折れ性を保持することができる。また、板状充填材を用いた上記(9)の歯間清掃具によれば、芯基材部の軸方向の剛性が一層高まって歯間挿入性を一層向上させることができると共に、板状充填材により芯基材部全体に付与される撓み性、及び3000MPa以上(好ましくは3000〜7200MPa)の、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eの相乗作用により、歯間清掃時の大きな曲げ荷重に耐え得る程度の撓み性を清掃部に付与できるので、清掃部の歯間挿入性及び歯間清掃時の耐折れ性に優れた歯間清掃具を得ることができる。
【0029】
(10)充填材が、板状充填材又は板状充填材と繊維状充填材との混合物である上記(9)の歯間清掃具。
上記(10)の歯間清掃具によれば、歯間清掃時の耐折れ性の一層の向上を図ることができる。
【0030】
(11)合成樹脂が、融点150℃以上の熱可塑性樹脂である、上記(1)〜(10)のいずれかの歯間清掃具。
上記(11)の歯間清掃具によれば、基材部の成形時間、特に成形後の冷却時間を短縮して生産効率を高めることで、歯間清掃具の生産性を向上でき、ひいては歯間清掃具の製造コストを低減することができる。なお、前記効果を一層高める観点から、融点が150℃以上の熱可塑性樹脂の中でも、少なくとも一部が結晶性である熱可塑性樹脂がより好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、歯間挿入性が良好で、歯間清掃時の清掃部の折れが効果的に防止された歯間清掃具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の歯間清掃具は、樹脂材料からなる基材部と、エラストマからなる軟質部と、を備える。基材部は、持ち手となるハンドル基材部と、ハンドル基材部の先端側に連設した細長い軸状の芯基材部と、を備える。軟質部は、芯基材部の少なくとも一部を被覆する被覆部を有する清掃用軟質部を備え、清掃用軟質部は被覆部と共に、被覆部の長手方向に間隔を空けて外方に突出状に、被覆部に一体的に形成した複数の突起部を有していてもよい。本発明の歯間清掃具は、機能的には、ハンドル基材部がハンドル部を構成し、芯基材部と清掃用軟質部とが清掃部を構成する。
【0034】
本発明の歯間清掃具において、芯基材部は、ハンドル基材部先端側に繋がる第2軸部と、第2軸部の先端側にほぼ同軸状に繋がる第1軸部とからなる。第1軸部の基端側(第2軸部に繋がる側)末端径はd
1(mm)である。
【0035】
本発明の歯間清掃具は、芯基材部の弾性率Eが3000MPa以上、好ましくは3000MPa以上、7200MPa以下、より好ましくは3000MPa以上、6500MPa以下、さらに好ましくは3500MPa以上、6000MPa以下、特に好ましくは4000MPa以上、6000MPa以下であることを特徴とする。芯基材部の弾性率Eを
3000MPa以上とすることにより、第1軸部と清掃用軟質部とで構成される清掃部の良好な歯間挿入性や取扱い性を維持しながら、歯間清掃時の清掃部の折れを顕著に防止することができる。
【0036】
芯基材部の弾性率Eは、式(1)から求めることができる。式(1)の導出方法は後述する。
E=[64P/(Y
max・π)]・(m+n) …(1)
〔式(1)中、
m=−[3・(D)
3・(d
1+D・L)]
−1 …(a)
n=[D
2・L
2−d
1・L・D+(d
1)
2]/[3・(d
1)
3・(D)
3] …(b)
である。式(a)及び式(b)中、D=(d
2−d
1)/Lである。〕
【0037】
以下、式(a)及び式(b)中の「L」、「d
1」及び「d
2」、並びに式(1)中の「Y
max」について順を追って説明する。
【0038】
芯基材部の弾性率Eを得るためには、まず、測定により芯基材部の荷重変位曲線を求め、この荷重変位曲線からY
maxを求めることが必要である。該測定は、歯間清掃具を水平方向に保持した上で、芯基材部を構成する第1、第2軸部において、第1軸部の基端側末端を固定端及び先端側末端を自由端とし、第1、第2軸部の境界位置を起点として第1軸部の先端側にL(mm)の位置で鉛直方向下方に荷重(P)を負荷し、荷重(P)を経時的に徐々に増加させることにより行なわれ、測定結果として荷重変位曲線が得られる。この測定は、圧縮試験又は片持ちの曲げ試験に相当するものであり、精密万能試験機((株)島津製作所製)を測定装置(圧縮試験機)として用いて実施した。
【0039】
上記圧縮試験機において、サンプルを載置するためのサンプル台に凹凸がなく平坦な表面を有する樹脂板(上記測定ではエポキシ樹脂板)を置き、樹脂板の上に歯間清掃具の基材部を載置する。その上から、平坦な面を下にしてサンプル固定用のステンレス製治具を載せ、芯基材部が圧縮変形せずかつ基材部が動かないような最小限の力が掛るように該治具にてサンプルを固定する(例えば、ねじ止めにてサンプルに変形がないように固定する)。ここでは、第2軸部の長さを20mmに設定した。そして、樹脂板とステンレス治具との隙間から突出する第1軸部の所定位置(第1、第2軸部の境界位置を起点としてL(mm)の位置)に対し、曲げ用の治具を第1軸部の上から当接させ、所定の速度(例えば30mm/分)で下降させることにより荷重の負荷を強めながら、第1軸部の変位を記録することにより、荷重変位曲線が得られる。
【0040】
ここで、第1、第2軸部の境界位置は、第1軸部の基端側末端にも相当し、その直径はd
1(mm)である。また、第1、第2軸部の境界位置から第1軸部先端側へL(mm)の位置における第1軸部の直径がd
2(mm)である。径d
1及び径d
2としてはノギスによる測定値が用いられる。L(mm)は、第1、第2軸部の境界位置を起点とする第1軸部への荷重負荷位置である。
【0041】
荷重負荷位置を示す長さL(mm)は特に限定されず、第1軸部の長さの範囲内から適宜選択可能であるが、得られる弾性率Eの正確性、再現性や、弾性率Eと耐折れ性等の特性との関係等を考慮すると、好ましくは3〜12mm、より好ましくは4〜11mm、さらに好ましくは5〜10mm、特に好ましくは10mmである。このような数値範囲の位置で荷重P(N)を負荷し、弾性率Eを求め、弾性率Eが上記所定範囲内にあるとき、歯間挿入性を保持しながら、耐折れ性の高い歯間清掃具となる。
【0042】
なお、第1軸部において、その基端部末端(径d
1の位置)から、荷重負荷位置(径d
2の位置)までの長さである第1軸部の実質長さ(mm)は、歯間清掃具の製品設計に応じて例えば10mmよりも長い場合も、10mm以下の場合もある。10mmより長い場合は、L=10mmの位置に荷重P(N)を負荷することができ、また、10mm以下の場合は、上記Lの範囲内から荷重負荷が可能な適切なLの値を選択し、荷重P(N)を負荷することができる。
【0043】
次に、Y
maxを求める方法を
図10に基づいて説明する。
図10は、第1軸部の荷重変位曲線を示すグラフである。精密万能試験機による荷重変位曲線では、荷重の増加にともなって、測定開始当初に荷重と変位との関係がランダムになる不規則領域が恒常的に現れ、この不規則領域に続いて弾性変形領域が現れ、さらに塑性変形領域を経て破断(荷重の急激な低下)に至る。
図10では、不規則領域の図示を省略し、弾性変形領域以降を示す。
図10に示す荷重変位曲線において、弾性変形領域は直線状領域であり、塑性変形領域は直線状領域の終端から続く曲線状領域である。本発明では、直線状領域の終端における荷重(P)を、第1軸部が弾性変形を維持する荷重領域での最大荷重(値)とし、該終端における変位(mm)をY
maxとする。なお、第1軸部の材質、径d
1、d
2等を変更した場合、荷重値や変位量には変化があるものの、直線状領域とそれに続く曲線状領域を含む荷重変位曲線が得られる点では共通しているので、Y
maxを容易に求めることができる。
【0044】
上述のようにして得られるL、d
1、d
2及びY
maxを式(1)に代入することにより、第1軸部の弾性率を求めることができる。本発明では、このようにして求められた第1軸部の弾性率を、芯基材部の弾性率とする。なお、上記式(1)において、歯間清掃具の設計に関与する変数はL、d
1及びd
2の3種のみであることから、樹脂材料やエラストマの選定に基づいて、前記3種の変数を適宜選択すれば、歯間挿入性及び耐折れ性に優れた歯間清掃具を好適に得ることができる。
【0045】
次に、式(1)の導出方法について説明する。式(1)は、下記式(2)で表わされる撓み曲線の微分方程式から導かれる。該微分方程式は、はり部材(ここでは清掃部)が荷重を受けて変形した後の弾性曲線を示すものである。
d
2y/dx
2=−M(x)・[E・I(x)]
−1 …(2)
〔式(2)中、Eは弾性率、I(x)は弾性2次モーメント、E・I(x)は曲げ剛性、M(x)はモーメントをそれぞれ示す。〕
【0046】
基端側末端径d
1(mm)、荷重負荷位置での第1軸部の径d
2(mm)、及び長さL(mm)を有する第1軸部(好ましくは清掃部の歯間挿入性等の観点からd
1>d
2)を、基端側末端に固定して水平方向に保持し、先端側末端を自由端としたモデルを考える。該清掃部に対して、荷重負荷部からt(mm)の位置(すなわち基端側末端からx(mm)の位置、t+x=L)に鉛直方向に荷重P(MPa)を負荷した時の、該第1軸部の撓み量(変位量)をy(mm)とする。撓み量yは、荷重P負荷後の第1軸部の荷重負荷部の、荷重P負荷前の水平状態の第1軸部の軸に対する距離とする。この時、弾性2次モーメントI(x)は式(3)で表わされ、モーメントM(x)は式(4)で表わされる。
I(x)=(π/64)・[d
1+(d
2−d
1)・x/L]
4 …(3)
M(x)=−Pt=−P(L−x) …(4)
【0047】
式(2)〜(4)から、
d
2y/dx
2=
[64P(L−x)]・{Eπ・[d
1+(d
2−d
1)・x/L]
4}
−1=
(64P/Eπ)・{(L−x)/[d
1+(d
2−d
1)・x/L]
4}
ここで、D=(d
2−d
1)/Lとすると、式(5)が得られる。
d
2y/dx
2=(64P/Eπ)・[(L−x)/(d
1+D・x)]
4…(5)
【0048】
次に、式(5)中の式;[(L−x)/(d
1+D・x)]
4を展開する。
[(L−x)/(d
1+D・x)]
4=
α/(d
1+D・x)
4+β/(d
1+D・x)
3+γ/(d
1+D・x)
2+δ/(d
1+D・x)=
[α+β・(d
1+D・x)+γ・(d
1+D・x)
2+δ・(d
1+D・x)
3]/(d
1+D・x)
4
【0049】
ここで、α+β・d
1+γ・(d
1)
2+δ(d
1)
3=L、xに対する変数の和:β・D+2γ・d
1・D+3δ・(d
1)
2・D=−1、x
2に対する変数の和:γ・D
2+3δ・d
1・(D)
2=0、x
3に対する変数の和:δ・(D)
3=0である。また、(D)
2≠0、(D)
3≠0からγ=δ=0であることから、α=L+(d
1/D)、β=−D
−1である。これを式(5)に代入すると、d
2y/dx
2=(64P/Eπ)・{[(D・L+d
1)/D(d
1+D・x)
4]−[D(d
1+D・x)
3]
−1}となる。したがって、式(6)が導かれる。
(Eπ/64P)・(d
2y/dx
2)=[(D・L+d
1)/D・(d
1+D・x)
4]−[D・(d
1+D・x)
3]
−1 …(6)
【0050】
次に、式(6)を積分することによって式(7)が導かれ、さらに式(7)を再度積分することによって、式(8)が導かれる。
(Eπ/64P)・(dy/dx)=
(D・L+d
1)/[−3(D)
2・(d
1+D・x)
3]−[−2(D)
2・(d
1+D・x)
2]
−1+C1 …(7)
(Eπ/64P)・y=
(D・L+d
1)/[6(D)
3・(d
1+D・x)
2]−[2(D)
3・(d
1+D・x)]
−1+C1・x+C2 …(8)
〔式(7)及び(8)中、C1及びC2はそれぞれ積分定数を示す。〕
【0051】
式(7)及び式(8)において、x=0のとき、y=0、たわみ角θ(=dy/dx)=0であることから、積分定数C1及びC2が求められる。まず、式(7)にx=θ=0を代入すると、以下の関係式が導かれる。
0=[(D・L+d
1)/−3(D)
2(d
1)
3]−[−2(D)
2・(d
1)
2]
−1+C1
この関係式から求めた積分定数C1は、下記式(9)で表わされる。
C1=(2D・L−d
1)/[6(d
1)
3・(D)
2] …(9)
また、式(8)にx=y=0を代入すると、以下の関係式が導かれる。
0=(D・L+d
1)/[6(D)
3・(d
1)
2]−[2(D)
3・d
1]
−1+C2
この関係式から求めた積分定数C2は、下記式(10)で表わされる。
C2=(2d
1−D・L)/[6(d
1)
2・(D)
3]
【0052】
式(8)に式(9)及び(10)を代入することにより、下記式(11)が得られる。
y=(64P/Eπ)・{(D・L+d
1)/[6(D)
3(d
1+D・L)
2]}−[2(D)
3・(d
1+D・x)]
−1+{[(2D・L−d
1)・x]/[6d
1・(D)
2]}+{(2d
1+D・L)/[6(d
1)
2(D)
3]} …(11)
【0053】
式(11)において、荷重Pが負荷された時の、撓み量yが最大となる状態を評価するため、yをY
max、及びxをLと置き換えることによって式(12)が導かれ、式(12)から式(1)が得られる。
Y
max=(64P/Eπ)・{(D・L+d
1)/[6(D)
3(d
1+D・L)
2]}−[2(D)
3・(d
1+D・L)]
−1+{(2D・L
2−d
1・L)/[6(d
1)
3・(D)
2]}+{(2d
1−D・L)/[6(d
1)
2(D)
3]}
=(64P/Eπ)・{[−3(D)
3・(d
1+D・L)]
−1+[(D)
2・(L)
2−d
1・L・D+(d
1)
2]/[3(d
1)
3・(D)
3]} …(12)
【0054】
芯基材部の弾性率Eを上記所定範囲に設定するためには、例えば、芯基材部の材質及び寸法(径、長さ)、基材部を構成する樹脂材料における合成樹脂の種類、充填材の種類や樹脂材料中での含有量等を適宜選択することが必要になる。
【0055】
上記した式(1)に基づく本発明の特徴は、芯基材部を有する基材部と、芯基材部の先端側(第1軸部)を被覆する清掃用軟質部とで構成された清掃部を備える歯間清掃具であれば、特に限定なく適用できる。すなわち、本発明の特徴を適用する清掃部は、清掃部凹部を有するものに限定されない。
【0056】
以下、本発明の歯間清掃具の基材部を構成する樹脂材料、及び軟質部を構成するエラストマについて説明する。基材部を構成する樹脂材料は、合成樹脂を含み、好ましくは合成樹脂と繊維状充填材及び板状充填材よりなる群から選ばれる少なくとも1種の充填材とを含み、より好ましくは合成樹脂と板状充填材又は板状充填材と繊維状充填材とを含み、更に好ましくは合成樹脂と板状充填材とを含む。
【0057】
合成樹脂としては、歯間清掃具の分野で常用される合成樹脂を特に限定なく使用でき、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、飽和ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、プロピオン酸セルロース、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0058】
上記した熱可塑性樹脂の中でも、清掃部の折れを防止する観点から、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド等の融点150℃以上の熱可塑性樹脂が好ましく、清掃部の折れ防止や成形加工性の観点から、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート等の、融点が150℃以上でありかつ少なくとも一部が結晶性である熱可塑性樹脂がより好ましく、ポリプロピレンがさらに好ましい。ポリプロピレンは、成形温度が低く、サイクルタイムを短縮して生産性を向上できるとともに、成形設備に対する熱負荷が少ないことから特に好ましい。合成樹脂として融点150℃以上の熱可塑性樹脂を用いると、基材部の成形時間、特に成形後の冷却時間を短縮して生産効率を高めることができ、その結果、歯間清掃具の生産性を向上でき、ひいては歯間清掃具の生産コストを低減できる。熱可塑性樹脂の種類の選択は、清掃部に上記した所定の弾性率を付与するための手段の一つとなる。熱可塑性樹脂は1種を単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
【0059】
繊維状充填材は、繊維状又は柱状又はウィスカーの形状、及びミリメートルオーダー乃至ミクロンオーダーの寸法を有する無機化合物であり、そのアスペクト比は好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。繊維状充填材としては特に限定されないが、人体に対する安全性や入手容易性の観点から、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウム繊維等を好ましく使用でき、更に価格の観点等を加味すると、ガラス繊維及びワラストナイトがより好ましく、ガラス繊維が更に好ましい。繊維状充填材は、基材部特に芯基材部の剛性、特に芯基材部の軸方向の剛性を高める観点からは、板状充填材よりも好ましい。繊維状充填材は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
板状充填材は、板状の形状、及びミクロンオーダーの寸法を有する無機化合物である。板状の形状は鱗片状や薄片状の形状を包含する。板状充填材としては特に限定されず、公知のものを使用できるが、芯基材部(特に後述する先端側軸部)への適度な剛性(特に芯基材部の軸方向の剛性)や撓み性の付与、人体に対する安全性、入手容易性等の観点から、例えばガラスフレーク、マイカ、クレー、タルク等が好ましく、クレー、タルクがより好ましく、タルクがさらに好ましい。板状充填材は、芯基材部の撓み性を高める観点からは、繊維状充填材よりも好ましい。板状充填材は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0061】
また、本発明では、繊維状充填材と板状充填材とを併用することもできる。この併用において、繊維状充填材及び板状充填材の使用割合を適宜選択することによって、繊維状充填材及び板状充填材の樹脂成形体中での配向方向が異なること等から、芯基材部の撓み性を芯基材部の折れが起こり難い程度に維持しながら、芯基材部の剛性を向上させ得るので、芯基材部凹部の形成による該凹部周辺での芯基材部の剛性の低下を補填することができる。該併用の具体例としては、例えば、ガラス繊維とタルクとの併用等が挙げられる。ガラス繊維とタルクとの併用において、例えば、タルクをガラス繊維よりも多く使用することによって、芯基材部の撓み性の保持及び機械特性の向上を両立させることができる。
【0062】
基材部を構成する樹脂材料において、充填材の含有量は特に限定されないが、例えば、基材部特に芯基材部に適度な剛性と適度な撓み性を付与し、芯基材部の弾性率Eを上記所定範囲に調整する観点から、樹脂材料全量の5〜50重量%の範囲から選択することが好ましく、より好ましくは10〜45重量%である。なお、合成樹脂としてポリプロピレンを用いた場合には、板状充填材の含有量は、樹脂組成物全量の20〜45重量%がさらに好ましく、30〜40重量%が特に好ましい。また、合成樹脂としてポリブチレンテレフタレートを用いた場合には、板状充填材の含有量は、樹脂組成物全量の15〜45重量%がさらに好ましく、18〜30重量%が特に好ましい。充填材、特に板状充填材の含有量の選択は、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eを3000MPa以上、好ましくは3000MPa以上、7200MPa以下、より好ましくは3000MPa以上、6500MPa以下、さらに好ましくは3500MPa以上、6000MPa以下7、特に好ましくは4000MPa以上、6000MPa以下に調整するための手段の一つとなる。
【0063】
基材部を構成する樹脂材料と、後述する軟質部を構成するエラストマとが相溶性を有することが好ましい。この場合には、芯基材部の第1軸部と清掃用軟質部とのより一体的な構造変化が起こり易くなると共に、清掃用軟質部の芯基材部の第1軸部からの剥離を効果的に防止できるので、清掃部の耐折れ性、及び歯間清掃具の耐久性をさらに高めることができる。
【0064】
軟質部を構成するエラストマとしては、スチレン系、オレフィン系、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマや、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、合成ゴムなどの熱硬化性エラストマなどを採用できる。特に、基材部を構成する合成樹脂材料との相溶性を有する材料が好ましく、例えば基材部をポリプロピレンで構成する場合には、軟質部をポリオレフィン系エラストマ又はスチレン系エラストマで構成することが好ましい。
【0065】
好ましい他のエラストマとして、例えば、ショアA値が5〜70、好ましくは10〜50、より好ましくは20〜50、さらに好ましくは30〜40であるエラストマが挙げられる。このようなショアA値を有するエラストマの具体例として、例えば、オレフィン系エラストマに比して、低硬度グレードにおいても流動特性が高く、かつ合成樹脂との接着特性も良好な、スチレン系エラストマが挙げられる。なお、軟質部を構成するエラストマを上記の通りの設計とすることによって、軟質部が芯基材部の所定の撓み量Y
maxに対して殆ど影響を及ぼすことがなく、Y
maxと清掃部の所定の撓み量Z
maxとがほぼ対応することが、本発明者らの研究により判明している。
【0066】
以上のように、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eを3000MPa以上とするためには、第1軸部の基端側末端径d
1及び荷重負荷位置での径d
2並びに、第1軸部における荷重を負荷する位置を第1、第2軸部の境界から長さL(mm)の位置(すなわち第1軸部の基端側末端から先端側に向けてL(mm)の位置)に設定するとともに、最大撓み量Y
maxに影響を与える、基材部を構成する樹脂材料における合成樹脂の種類や充填材の種類、含有量等を適宜選択することが必要である。なお、第1軸部の長さ、基端側末端径d
1及び荷重負荷位置での径d
2もY
maxに影響を及ぼす場合がある。
【0067】
特に、長さLを好ましくは3mm以上12mm以下、より好ましくは4mm以上11mm以下、さらに好ましくは5mm以上10mm以下、特に好ましくは10mmとすることにより、弾性率Eのぶれ幅が少なくなり、ほぼ正確な弾性率Eを再現性良く求めることができる。そして、求められた弾性率Eから、歯間清掃具の特性をほぼ正確に知ることができる。
【0068】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、歯間清掃具連結体1Aの構成を模式的に示す正面図である。
図2は、歯間清掃具連結体1Aの要部の構成を示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図3は、歯間清掃具連結体1Aの連結部13付近を拡大して模式的に示す正面図である。
図4は、
図3に示すIV−IV切断面線における断面図である。
図5は、歯間清掃具1に備わる清掃部2を拡大して示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図6は、
図5(a)に示すVI−VI切断面線における断面図である。
【0069】
本実施形態の歯間清掃具1は、
図1〜
図2に示すように、その機能で区別すると、歯間清掃用の清掃部2と、持ち手としてのハンドル部3とを備え、その構成素材で区別すると、合成樹脂を含む樹脂材料からなる基材部10と、エラストマからなる軟質部20とを備える。
【0070】
歯間清掃具1は、例えば、複数個の歯間清掃具1を連結部13により切り離し可能に並列状に連結してなる歯間清掃具連結体1Aの形態に成形され、利用者は、歯間清掃具連結体1Aの一端から順番に歯間清掃具1を連結部13において切り離して順次使用することになる。なお、
図1は、歯間清掃具連結体1Aの要部の構成を示すのみであり、歯間清掃具連結体1Aにおいて並列状に連結する歯間清掃具1の個数は特に限定されず、任意の個数とすることができる。
【0071】
以下、歯間清掃具1を、基材部10及び軟質部20という区分けに基づいて説明する。
【0072】
基材部10は、前述の樹脂材料からなり、
図1〜
図4に示すように、持ち手となるハンドル部3を構成する扁平な細長い板状のハンドル基材部11と、ハンドル基材部11の先端部に連設された細長い軸状の芯基材部12と、幅方向に隣り合うハンドル基材部11を切り離し可能に連結する連結部13と、を備える。
【0073】
ハンドル基材部11は、本実施形態では扁平な板状に形成したが、指で保持して歯間を清掃し易い形状であれば、扁平な板状以外の任意の形状、例えば円形、オーバル形状(楕円形、長円形、角丸長方形、卵形、小判形、俵形(短辺部が曲線状の長方形、丸角長方形)等)、涙滴形や多角形などの横断面形状の棒状に形成したり、円形、オーバル形状、多角形等の平面形状の板状等に形成したりすることができる。持ち易さを向上させるために、ハンドル基材部11に湾曲部や凹部、凸部、切り欠き部等を設けることもできる。また、本実施形態のハンドル基材部11は、その先端部が芯基材部12側へ行くにしたがって幅狭に構成され、芯基材部12に滑らかに連設されている。
【0074】
ハンドル基材部11の寸法は、指で保持して歯間を清掃し易い寸法であれば任意の寸法に設定でき、
図1〜
図2に示す形状のハンドル基材部11では、例えば長さL1は10mm〜25mm、幅W1は4mm〜10mm、把持部分の厚さt1は1.0mm〜2.0mmに設定できる。このように、ハンドル基材部11を薄肉に構成すると、基材部10の成形時に、ハンドル基材部11の収縮による寸法バラツキを少なくできるとともに、ヒケを防止して、軟質部20を成形するための第2金型への基材部10の装填不良を防止できる。
【0075】
芯基材部12は、略直線状の細長い軸状に形成され、ハンドル基材部11の先端側に連設された第2軸部(露出部)12aと、第2軸部12aの先端側に連設された第1軸部12b(以下「芯本体12b」ということがある)と、を有する。第1軸部12bは清掃用軟質部21により被覆されている。本実施形態の芯基材部12は先端側へ行くにしたがって縮径する緩やかなテーパ形状に形成されているが、これに限定されず、第2軸部12aをその全長にわたってほぼ同径の軸状に形成し、かつ第1軸部12bのみを先端側へ行くにしたがって縮径する緩やかなテーパ形状に形成してもよく、また、第2軸部12a、及び第1軸部12bをその全長にわたってほぼ同径に構成してもよい。
【0076】
芯基材部12における、第2軸部12aの長さL2は、歯間清掃具1の操作性等を考慮して、例えば10mm〜40mm、好ましくは10mm〜30mm、より好ましくは10mm〜25mm、最も好ましくは10mm〜20mmに設定される。ここで、第2軸部12aは、ハンドル基材部11の幅狭に構成される先端部側面の湾曲部の終点から清掃用軟質部21(又は第1軸部12b)の基端部末端までをいう。清掃部2の歯間への挿入性、応力集中緩和の観点から第2軸部12aの断面形状は円形が好ましいが、オーバル形状、涙滴形状、多角形などであっても構わない。
【0077】
一方、清掃用軟質部21で被覆される第1軸部12bの長さL3は、歯間に対する清掃性や、弾性率Eを求める際に第1、第2軸部12b、12aの境界を起点として第1軸部12bの末端側へ長さL(mm)の位置に荷重が負荷され、長さLが好ましくは3mm〜12mmの範囲から選択されること等を考慮しつつ、上記式(1)から求められる弾性率Eが3000MPa以上、好ましくは3000〜7200MPa、より好ましくは3000〜6500MPa、さらに好ましくは3500〜6000MPa、特に好ましくは4000〜6000MPaとなるように適宜選択してもよいが、その目安としては、例えば12mm〜22mmの範囲である。また、第1軸部12bの先端側部分の直径は例えば0.4mm〜0.6mmの範囲から選択され、第1軸部12bの基端側部分の直径は例えば0.8mm〜2.0mmの範囲から選択される。第1軸部12bも、第2軸部12aと同様の断面形状とすることができる。
【0078】
また、第1軸部12bの、清掃用軟質部21により被覆された先端部分の曲面終端部における直径D、及び基端側末端径d
1も上記式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eが上記した所定範囲内となる値を適宜選択すればよいが、それぞれの選択の目安としては、例えば0.5〜1.2mm、及び0.3〜0.8mmの範囲である。第1軸部12bの径Dを前記範囲とすることにより、最先端部から少なくとも5mm以上の領域を確実に歯間に挿入することができる。
【0079】
なお、第1軸部12bの、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eを上記所定範囲内に設定するとともに、第1軸部12bの基端側末端径d
1>荷重負荷位置での径d
2とし、かつその比(d
1/d
2)を適宜調整することにより、清掃部2の歯間挿入性、及び歯間清掃時の耐折れ性を一層向上させることができる。径比(d
1/d
2)は、好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.8〜2.5、更に好ましくは2.0〜2.4である。
【0080】
また、芯基材部12の中心線に対するテーパ形状のなす角度θ1は、清掃部2の歯間への挿入性等を考慮して、例えば0.2°〜1.5°に設定される。本実施形態では、角度θが芯基材部12の全長にわたってほぼ同じになるように設定しているが、これに限定されず、芯基材部12の先端側へ行くにしたがって連続的又は段階的に小さくなるように設定することもできる。
【0081】
なお、本実施の形態では、ハンドル基材部11の長手方向に延びる中心線と芯基材部12の軸線とを略同一軸線状に配置したI型の歯間清掃具1に本発明を適用したが、ハンドル基材部11の中心線と芯基材部12の軸線とを任意の位置関係に配置した歯間清掃具に対しても本発明を適用でき、例えばハンドル基材部11の中心線と芯基材部12の軸線とを間隔をあけて平行配置した歯間清掃具に本発明を適用することもできるし、芯基材部12の中心線をハンドル基材部11の中心線に対して、例えば、90°〜120°の角度を付けて設けた、所謂L型の歯間清掃具1や清掃部に連結するハンドル部等が約140°〜160°の滑らかな曲線形状を有するカーブ型の歯間清掃具に対しても本発明を適用できる。
【0082】
図2〜
図4に示すように、連結部13は、隣接するハンドル基材部11間においてハンドル基材部11に一体的に形成され、ハンドル基材部11の基端部側と先端部側とに長手方向に間隔をあけて1対ずつ設けられている。連結部13はハンドル基材部11の軸方向に細長く、正面視台形状(
図3では等脚台形状)に形成されている。連結部13の個数は、任意に設定可能で、1個だけ設けることも可能であるが、そのように構成すると、歯間清掃具1の成形時に、隣り合う基材部10の連結強度を十分に確保できず、基材部10の成形後、型開きするときに連結部13が破断して、基材部10がバラバラになり、軟質部20の成形ができなくなり、また、連結部13が折れ曲がって、軟質部20を成形するための第2成形空間の適正位置に基材部10を装填できず、成形不良が発生することがあるので、ハンドル基材部11の長さ方向に間隔をあけて2個以上設けることが好ましい。
【0083】
連結部13の横断面は台形状又は三角形状(
図4では等脚台形状又は二等辺三角形状)に形成され、
図4に仮想線で示すように、境界部13aを中心に隣接する歯間清掃具1を相互に重ね合わせる方向へ折り曲げて、境界部13aに曲げ力を集中させるとともに、ハンドル基材部11の側縁の円弧状の側面11aが連結部13の外面に接触することで、テコの原理により境界部13aに対して引き離す方向への大きな力を作用させて、境界部13aにおいて連結部13の大きな変形を伴わずに歯間清掃具1を綺麗に切り離すことができるように構成されている。ただし、連結部13の形状は、連結部13を中心に隣接する歯間清掃具1を相互に重ね合わせる方向へ折り曲げることで、容易に且つ綺麗に切り離すことができるように構成されていれば任意の形状に形成することができる。
【0084】
軟質部20は、
図1〜
図4に示すように、エラストマを用いて基材部10の芯基材部12に一体成形したもので、芯基材部12の第1軸部12bに外装した清掃用軟質部21を備える。ただし、軟質部20として、第1軸部12bの基端部(すなわち第1軸部12bと第2軸部12aとの境界近傍の第1軸部12b)に、第2軸部12aが歯間に進入するのを規制する環状の進入規規制部を設けたり、また、ハンドル基材部11に滑り止め部を設けたりすることも可能である。進入規制部や滑り止め部は、清掃用軟質部21とは独立に形成することも可能であるが、歯間清掃具1の成形に用いられる金型の構造が複雑になるので、清掃用軟質部21の基端部に連なるように成形したり、清掃用軟質部21と同時成形したりすることが好ましい。
【0085】
清掃用軟質部21は、芯基材部12の第1軸部12bに被覆される被覆部21aと、被覆部21aに長さ方向及び/又は幅方向に所定の間隔をあけて外方へ突出状に形成した複数の突起部21bとを有している。
【0086】
被覆部21aの厚みは、厚過ぎると、被覆部21aに覆われている第1軸部12bの直径を小さくする必要が生じるため、清掃部2の剛性ひいてはその歯間挿入性が低下するだけでなく、成形時にカルマン渦が発生し易くなり、カルマン渦の影響を大きく受ける恐れがある。また、被覆部21aの厚みが薄過ぎると、被覆部21aを第1軸部12bの基端側まで形成し難くなり、被覆部21aの第1軸部12bからの剥離が生じるおそれがある
。このため、被覆部21aの厚みは、例えば0.1mm〜0.2mmの範囲から選択される。
【0087】
突起部21bは、被覆部21aの表面から外方に向けて突出するように設けられる。複数の突起部21bは、被覆部21aの表面において任意のパターンに配列することが可能であるが、例えば、複数の突起部21bが所定のピッチで被覆部21aの長さ方向に並んだ列を、被覆部21aの周方向に複数設けた配列パターン、複数の突起部21bが所定のピッチで被覆部21aの周方向に並んだ列を、被覆部21aの長さ方向に複数設けた配列パターン、さらに複数の突起部21bが不規則に配置された配列パターン等が挙げられる。
【0088】
突起部21bの基端部の断面積や長さ、個数や配設ピッチは、任意に設定可能であるが、成形性及び清掃性等を考慮して、突起部21bの基端部の断面積は、0.03mm
2〜1.5mm
2程度に設定することが好ましく、0.03mm
2〜1.0mm
2がさらに好ましく、0.04mm
2〜0.8mm
2が最も好ましい。清掃用突起部21bの長さは0.1mm〜2.5mm程度に設定することが好ましく、0.3mm〜2.0mmに設定することがより好ましく、0.5mm〜1.7mmに設定することがさらに好ましい。突起部21bの個数は20個〜100個に設定することが好ましく、突起部21bの配設ピッチは0.5mm〜1.5mmに設定することが好ましい。また、本実施形態の突起部21bは、円錐状の形状を有しているが、これに限定されず、例えば、軸方向に扁平な平板状の先細形状のものを採用することもできる。更に、突起部21bの断面形状としては、円形以外に、オーバル形状、涙滴形状、多角形などの00000000000任意の形状を採用できる。
【0089】
被覆部21aは、
図5及び
図6に示すように、複数の被覆部凹部14bを有する。被覆部凹部14bは、被覆部21aの突起部21bが形成されていない領域において、被覆部21aを厚み方向に貫通し、芯基材部12の表面に形成された芯基材部凹部14aに繋がる。すなわち、軟質部20は、被覆部21aを貫通する被覆部凹部14bと、被覆部凹部14bに繋がる芯基材部凹部14aと、で一体的に構成される清掃部凹部14を有する。清掃部凹部14は、芯基材部12に軟質部20を被覆成形する際に、芯基材部12の位置ずれ等を防止するために、芯基材部12に位置決めピンを当接させた状態でエラストマを射出することにより形成される。
【0090】
本実施形態では、被覆部凹部14bは、
図5及び
図6に示すように、被覆部21aの第1、第2側部に第1、第2被覆部凹部14bとしてそれぞれ3個ずつ設けられ、芯基材部12の軸方向において同じ位置にある第1、第2側部の第1、第2被覆部凹部14bは、芯基材部12を挟んで対面状に配置されている。したがって、本実施形態では、芯基材部12を介して対向する位置に配置された一対の第1、第2被覆部凹部14bが、芯基材部12の軸方向に間隔をあけて3か所に設けられている。このように対向配置された一対の第1、第2被覆部用凹部14bの個数は特に限定されず、1個でも複数個でも良いが、好ましくは2個以上、より好ましくは3〜4個以上である。
【0091】
一対の第1、第2被覆部凹部14b、ひいては清掃部凹部14の個数を3〜4個以上とすることにより、歯間挿入時や歯間清掃時に清掃部2に作用する曲げ応力を分散させることができるとともに、保持ピンによる芯基材部12のホールド性を確保しつつ、芯基材部凹部14aの深さを浅くすることにより、歯間清掃時において、局部的に大きな曲げ応力が作用することによる芯基材部12の折れを効果的に防止できる。
【0092】
芯基材部12の軸方向に対する被覆部凹部14の配設間隔は、全て同じ間隔に設定してもよいが、一部又は全部を相互に異なる間隔に設定してもよい。例えば、芯基材部12と清掃用軟質部21とで構成される清掃部2の先端側へ行くにしたがって配設間隔が狭く又は広くなるように構成することができるが、配設間隔は、略一様又は清掃部2の先端側へ行くにしたがって狭くなるように設定することが好ましい。
【0093】
1組の第1、第2被覆部凹部14b(又は1組の清掃部凹部14)は、前述のように、対面状に配置することが好ましいが、周方向に一部重なる範囲内、即ち芯基材部12の軸方向に対する被覆部凹部14bの長さの範囲内で、芯基材部12の軸方向にずらした位置に設けることもできる。また、
図6に示すように、第1側部の第1被覆部凹部14bと第2側部の第2被覆部凹部14bとは同一軸線状に配置することが好ましいが、第1被覆部凹部14bの中心線と第2被覆部凹部bの中心線とが、清掃部2の半径方向に一定距離ずらして平行配置することもできる。
【0094】
また、清掃部凹部14をオーバル形状や涙滴形状や長方形などのように細長形状に形成する場合には、例えば
図7に示す清掃部2Aのように、長方形の清掃部凹部14Aを周方向に隣接する突起部21b間に、長手方向が清掃部2A(又は芯基材部12)の軸方向となるように形成することが好ましい。すなわち、清掃部凹部14Aは、清掃部2A(又は芯基材部12)の軸方向に長い凹部となっている。このように構成すると、清掃部凹部14Aの幅を狭くして、保持ピンの幅を小さくしつつ、芯基材部12に対する保持ピンのホールド性を十分に確保しつつ、芯基材部凹部14Aaを設けた位置において発生する応力を緩和できるので好ましい。
【0095】
清掃部凹部14の底部に位置する芯基材部凹部14aの底面は、
図6に示すように、芯基材部凹部14aの深さ方向と直交する方向の平坦面で構成することも好ましいが、
図8に示す清掃部凹部14Bの芯基材部凹部14Baのように、芯基材部12の外面に沿う円弧面で構成したり、
図9に示す清掃部凹部14Cの芯基材部凹部14Caのように、中央部が盛り上がった2等辺三角形状の2つの傾斜面で構成したりすることができる。
【0096】
歯間清掃具1は、従来の樹脂製歯間清掃具と同様に、例えば、2つの金型を用いる2色成形法により製造される。すなわち、基材部10の立体形状に対応する成形空間を有する第1金型を用い、第1金型の成形空間に樹脂材料の溶融混練物を射出し冷却して基材部10を得、次に歯間清掃具1の立体形状に対応する成形空間を有する第2金型を用い、得られた基材部10を所定位置に装填した第2金型の成形空間にエラストマの溶融物を射出し又は熱硬化性エラストマを注入して加熱し、その後冷却して、基材部10に軟質部20を一体成形することにより、歯間清掃具1を得ることができる。
【0097】
また、複数個の第1成形空間を設けた第1金型、及び第1成形空間と同数の第2成形空間を設けた第2金型を用い、複数個の第1成形空間に樹脂組成物を供給し、複数個の基材部がランナ部で連結された一次成形品を製作し、該一次成形品を第2金型の第2成形空間に装填し、複数個の第2成形空間にエラストマを供給することで、複数個の歯間清掃具を同時成形した歯間清掃具連結体を得ることもできる。
なお、歯間清掃具1のこのような2色成形法は公知であり、例えば、国際公開2013/176297号公報等に記載されている。
【0098】
次に、歯間清掃具の評価試験を下記の各試験例に基づいて説明する。
【0099】
(基材部及び歯間清掃具の作製)
まず、ポリプロピレンとタルクとを含み、タルクの含有量を変化させて、弾性率の異なる樹脂材料13種(実施例1〜7及び比較例1〜6)を作製した。得られた各樹脂材料を用い、全長48mm、ハンドル基材部の寸法が15mm(最大幅)×6.5mm、芯基材部の第2軸部の寸法が長さ18mm、径1.2mmである、
図1に示す基材部を作製した。なお、第1軸部は基端側から先端側に向けて徐々に縮径するテーパ形状とした。また、得られた実施例1〜7及び比較例1〜6の基材部の芯基材部に、ポリスチレンエラストマを被覆成形して清掃部を形成し、実施例1〜7及び比較例1〜6の歯間清掃具を作製した。
【0100】
上述の精密万能試験機を用いた圧縮試験にしたがい、第1軸部の基端側末端径d
1、及び荷重負荷位置での径d
2をノギスにより測定し、Lを5mm又は10mmに設定した後、第1、第2軸部の境界位置から第1軸部の先端側にL(mm)の位置に荷重(P)を負荷し、各芯基材部及び各清掃部のそれぞれの荷重変位曲線を求めた。得られた荷重変位曲線から芯基材部のY
maxを求め、式(1)に基づいて弾性率(E)を求めた。さらに、同様にして清掃部のZ
max(表1、2には不図示)を求め、式(1)に基づいて弾性率(E)を求めた。結果を表1及び表2に示す。
【0101】
(清掃部の耐折れ性試験)
圧縮試験機(精密万能試験機、(株)島津製作所製)を用いて、上記で得られた実施例1〜7及び比較例1〜6の歯間清掃具の清掃部を、挿入角度50°又は60°、挿入速度200mm/分で顎模型((株)ニッシン製)の第1、第2大臼歯の歯間に挿入した。この挿入試験を3回ずつ実施し、各歯間清掃具の清掃部の状態を目視観察し、下記基準で評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0102】
[評価基準]
可;3回の挿入試験の中で、清掃部の折れ(破断)は認められなかったものの、清掃部の変形が1度でも認められた。
不可;3回の挿入試験の中で、清掃部の折れ(破断)が1度でも認められた。
【0105】
表1及び表2から、芯基材部に関し、式(1)から求められる弾性率Eと、弾性率の理論値とがほぼ一致した。また、式(1)から求められる芯基材部の弾性率Eを所定の範囲となるように調整することにより、耐折れ性に優れた清掃部を有する歯間清掃具が得られることが明らかである。
【0106】
次に、ポリプロピレンにガラス繊維を配合し、ガラス繊維の含有量を変化させて、弾性率(理論値)の異なる7種類の樹脂材料を作製した。これらの樹脂材料を用い、実施例1と同様にして、実施例8〜14の基材部を作製した。各基材部の3個ずつについて、荷重負荷位置L10mmに設定し、第1軸部の基端側末端径d
1(mm)及び荷重負荷位置での径d
2(mm)をノギスにより測定し、上述の精密万能試験機を用いた圧縮試験に供して得られた荷重変位曲線からY
maxを求め、弾性率Eを算出した。結果を表3に示す。なお、直線領域は、実験結果に基づき各荷重変位曲線においての最大荷重値(ここでは撓み量Y
maxが得られる時の荷重値ではなく、荷重変位曲線における最も大きな荷重値)に対して20〜40%の荷重範囲と定めて抽出した。
【0108】
表3から、ガラス繊維を用いて樹脂材料の弾性率を変更しても、所望の弾性率(E)を有する基材部が得られることが判る。実施例1の基材部について、さらに3サンプルの平均弾性率を求めたところ、5882MPaとなり、荷重変形曲線に基づくY
maxの求め方及び式(1)に基づく弾性率Eの算出に良好な再現性があることが判った。なお、算出される弾性率Eの正確性をより一層高める上では、3検体(好ましくは11検体)以上のサンプルについて、個々に荷重変位曲線及び弾性率Eを求め、その平均値とすることが好ましい。また、第1軸部で十分な試験範囲(例えば第1軸部の長さ等の点で)が得られない場合、第2軸部で計測をすることもできる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を適宜変更し得ることは勿論である。