特許第6750345号(P6750345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750345
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04303 20160101AFI20200824BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20200824BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20200824BHJP
【FI】
   H01M8/04303
   H01M8/00 A
   H01M8/04537
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-130488(P2016-130488)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-6125(P2018-6125A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 怜馬
(72)【発明者】
【氏名】岡 祐介
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−323954(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/142169(WO,A1)
【文献】 特開2004−165028(JP,A)
【文献】 特開2012−185996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04303
H01M 8/00
H01M 8/04537
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転状態と停止状態とを切り替え可能であり、運転状態で燃料と酸化剤との電気化学反応により電力を発生する燃料電池と、
前記燃料電池に第1制御リレーを介して接続され、前記第1制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力を充電する蓄電器と、
前記燃料電池と前記第1制御リレー及び第2制御リレーを介して接続されるとともに、前記蓄電器に前記第2制御リレーを介して接続され、前記第1及び第2制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力と前記蓄電池に充電された電力のうち少なくとも一方の電力が供給される負荷と、
前記燃料電池に第3制御リレーを介して接続され、前記第3制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力を消費する抵抗と、
前記第1第2及び第3制御リレーの開閉状態を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、少なくとも、
前記燃料電池が前記運転状態から前記停止状態に切り替えられた場合に、前記第1制御リレーを閉状態かつ前記第2及び第3制御リレーを開状態に制御して、前記燃料電池が停止後に発生する余剰電力を前記蓄電器に充電させる第1モードと
前記蓄電器に充電された電力の電圧が第1の閾値まで上昇した場合に、前記第1及び第2制御リレーを閉状態かつ前記第3制御リレーを開状態に制御して、前記余剰電力及び前記充電された電力を前記負荷へ供給させる第2モードと
前記第2モードを実行した結果として前記蓄電器に充電された電力の電圧が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値まで低下した場合、前記第1及び第2制御リレーを開状態かつ前記第3制御リレーを閉状態に制御して、前記余剰電力を前記抵抗で消費させる第3モードと、
を実行する、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記第2モードでは、前記余剰電力及び前記充電された電力が前記負荷に供給されるのに加えて、前記充電された電力が前記燃料電池の制御入力端に供給される、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
運転状態と停止状態とを切り替え可能であり、運転状態で燃料と酸化剤との電気化学反応により電力を発生する燃料電池と、
前記燃料電池に第1制御リレーを介して接続され、前記第1制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力を充電する蓄電器と、
前記燃料電池と前記第1制御リレー及び第2制御リレーを介して接続されるとともに、前記蓄電器に前記第2制御リレーを介して接続され、前記第1及び第2制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力と前記蓄電池に充電された電力のうち少なくとも一方の電力が供給される負荷と、
前記燃料電池に第3制御リレーを介して接続され、前記第3制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力を消費する抵抗と、
を備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池が前記運転状態から前記停止状態に切り替えられた場合に、前記第1制御リレーを閉状態かつ前記第2及び第3制御リレーを開状態に制御して、前記燃料電池が停止後に発生する余剰電力を前記蓄電器に充電させる第1ステップと
前記蓄電器に充電された電力の電圧が第1の閾値まで上昇した場合に、前記第1及び第2制御リレーを閉状態かつ前記第3制御リレーを開状態に制御して、前記余剰電力及び前記充電された電力を前記負荷へ供給させる第2ステップと
前記第2ステップを実行した結果として前記蓄電器に充電された電力の電圧が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値まで低下した場合、前記第1及び第2制御リレーを開状態かつ前記第3制御リレーを閉状態に制御して、前記余剰電力を前記抵抗で消費させる第3ステップと、
を含む、
制御方法。
【請求項4】
前記第2ステップでは、前記余剰電力及び前記充電された電力が前記負荷に供給されるのに加えて、前記充電された電力が前記燃料電池の制御入力端に供給される、
請求項3に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素ガスなどの燃料ガスと酸素を有する酸化剤ガスとを、電気化学的に反応させ、発電を行うものである。このような燃料電池を用いた発電は、発電効率が高く、有害物質の排出が極めて少ないという利点を持つため、燃料電池を車両の駆動源として利用する燃料電池車両が近年注目されている。
【0003】
燃料電池システムにおける燃料電池の停止時には、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給が停止されても、燃料電池の本体内部及び燃料電池の周辺の配管内に残留する燃料ガス及び酸化剤ガスにより引き続き発電が行われる場合があり、その場合、燃料電池の停止後に引き続き行われる発電によって余剰電力が発生する。
【0004】
従来の燃料電池システムでは、燃料電池の停止時に燃料電池を負荷から切り離すとともに消費抵抗につなぎ替え、消費抵抗により、余剰電力を熱に変換して大気に放出していた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−296340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の燃料電池システムでは、燃料電池の停止時における余剰電力を熱に変換して大気に放出するため、エネルギー効率が低下してしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、燃料電池の停止時における余剰電力の有効活用により、エネルギー効率の高い燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池システムは、運転状態と停止状態とを切り替え可能であり、運転状態で燃料と酸化剤との電気化学反応により電力を発生する燃料電池と、前記燃料電池に第1制御リレーを介して接続され、前記第1制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力を充電する蓄電器と、前記燃料電池と前記第1制御リレー及び第2制御リレーを介して接続されるとともに、前記蓄電器に前記第2制御リレーを介して接続され、前記第1及び第2制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力と前記蓄電池に充電された電力のうち少なくとも一方の電力が供給される負荷と、前記第1及び第2制御リレーの開閉状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池が前記運転状態から前記停止状態に切り替えられた場合に、前記第1制御リレーを閉じるように制御して、前記燃料電池が停止後に発生する余剰電力を前記蓄電器に充電させ、前記蓄電器に充電された電力の電圧が第1の閾値まで上昇した場合に、前記第1及び第2制御リレーを閉じるように制御して、前記余剰電力及び前記充電された電力を前記負荷へ供給させる。
【0009】
また、本発明に係る制御方法は、運転状態と停止状態とを切り替え可能であり、運転状態で燃料と酸化剤との電気化学反応により電力を発生する燃料電池と、前記燃料電池に第1制御リレーを介して接続され、前記第1制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力を充電する蓄電器と、前記燃料電池と前記第1制御リレー及び第2制御リレーを介して接続されるとともに、前記蓄電器に前記第2制御リレーを介して接続され、前記第1及び第2制御リレーの開閉状態に応じて、前記燃料電池が発生する電力と前記蓄電池に充電された電力のうち少なくとも一方の電力が供給される負荷と、を備える燃料電池システムの制御方法であって、前記燃料電池が前記運転状態から前記停止状態に切り替えられた場合に、前記第1制御リレーを閉じて、前記燃料電池が停止後に発生する余剰電力を前記蓄電器に充電させ、前記蓄電器に充電された電力の電圧が第1の閾値まで上昇した場合に、前記第1及び第2制御リレーを閉じて、前記余剰電力及び前記充電された電力を前記負荷へ供給させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料電池の停止時の余剰電力の有効活用により、エネルギー効率の高い燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図
図2】本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの停止方法の一例を示すフローチャート
図3図2のフローチャートにしたがって燃料電池システムの停止を行った場合の電圧の変化の一例を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る燃料電池システム100について、図1に示すブロック図を用いて説明する。燃料電池システム100は、例えばトラック等の車両に搭載され、車両の駆動源である電動機に電力を供給する。
【0013】
図1に示すように、燃料電池システム100は、燃料電池1と、蓄電器2と、消費抵抗3と、第1制御リレー4と、第2制御リレー5と、第3制御リレー6と、第1給電線7と、第2給電線8と、第3給電線9と、制御装置10と、負荷11と、制御電源12と、を備える。
【0014】
燃料電池1は、例えば燃料ガスとしての水素が供給される不図示の水素極と、酸化剤ガスとしての空気が供給される不図示の空気極とを含み、水素極に供給された水素と、空気極に供給された空気との電気化学反応により発電を行う。
【0015】
燃料電池1は、高圧側の出力端子1a(正極)及び1b(負極)と、低圧側の入力端子1c(正極)及び1d(負極)を含む。
【0016】
燃料電池1の高圧側の出力端子1a、1bは、車両の駆動源である電動機等の負荷11の端子11a(正極)及び11b(負極)と接続されており、燃料電池1は、負荷11に対して高圧の電力を出力する。燃料電池1の運転時における高圧側の出力電圧Voutは、例えば100〜120Vである。
【0017】
燃料電池1の低圧側の入力端子1c、1dは、車両の低圧電源である制御電源12の端子12a(正極)及び12b(負極)と接続されており、燃料電池1には、制御電源12から低圧の電力が供給される。燃料電池1の制御は、制御電源12から供給された低圧の電力により行われる。制御電源12から供給される低圧側の定格電圧Vinは、例えば24Vである。制御電源12は、燃料電池1の他、室内灯、ハザードランプ等、低圧で動作する電装品にも接続され、電装品の電源としても機能する。
【0018】
燃料電池1は、運転時には発電を行い、発電した電力を負荷11へ出力する。また、燃料電池1は、停止時には、燃料電池1の停止後に引き続き行われる発電によって発生する余剰電力を、蓄電器2及び消費抵抗3へ出力する。
【0019】
蓄電器2は、例えば電気二重層キャパシタ等、広い電圧帯に使用可能な蓄電器として形成されており、必要に応じて燃料電池1から供給される電力により充電を行い、また、必要に応じて制御電源12を含む低圧側に電力を供給する。
【0020】
蓄電器2は、端子2a(正極)及び2b(負極)を含む。蓄電器2の端子2aは、燃料電池1の出力端子1a、消費抵抗3の端子3a、負荷11の端子11a、及び制御電源12の端子12aと接続される。また、蓄電器2の端子2bは、燃料電池1の出力端子1b、消費抵抗3の端子3b、負荷11の端子11b、及び制御電源12の端子12bと接続される。
【0021】
第1給電線7は、燃料電池1の出力端子1aと負荷11の端子11aを接続する給電線から分岐した給電線であり、第2給電線8と合流して蓄電器2の端子2aに接続されている。第1給電線7上には、第1制御リレー4が設けられており、第1制御リレー4が閉じることで、燃料電池1と蓄電器2とが電気的に接続される。
【0022】
第2給電線8は、燃料電池1の入力端子1cと制御電源12の端子12aを接続する給電線から分岐した給電線であり、第1給電線7と合流して蓄電器2の端子2aに接続されている。第2給電線8上には、第2制御リレー5が設けられており、第2制御リレー5が閉じることで、制御電源12と蓄電器2とが電気的に接続される。
【0023】
消費抵抗3は、例えば抵抗発熱体として形成されており、燃料電池1の停止後に発生する余剰電力を消費するために設けられる。
【0024】
消費抵抗3は、端子3a(正極)及び3b(負極)を含む。消費抵抗3の端子3aは、第1給電線7における燃料電池1と第1制御リレー4との間から分岐した第3給電線9に接続される。消費抵抗3の端子3bは、燃料電池1の出力端子1b、蓄電器2の端子2b、負荷11の端子11b、及び制御電源12の端子12bと接続される。
【0025】
第3給電線9上には、第1給電線7からの分岐点と消費抵抗3の端子3aとの間に、第3制御リレー6が設けられており、第3制御リレー6が閉じることで、燃料電池1と消費抵抗3とが電気的に接続される。
【0026】
制御装置10は、燃料電池1、第1制御リレー4、第2制御リレー5、及び第3制御リレー6と電気的に接続されており、第1制御リレー4、第2制御リレー5、及び第3制御リレー6の開閉を制御する。
【0027】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システム100における燃料電池1の停止時の処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。図2に示す制御フローは、車両の電源が投入されている間、例えば10ms毎の制御周期で繰り返される。
【0028】
まず、ステップS1で、制御装置10は、燃料電池1が停止モードか否かを判断する。停止モードであればステップS2へ進み、停止モードでなければステップS8へ進む。
【0029】
ステップS1で燃料電池1が停止モードでない、すなわち運転モードであると判断された場合に進むステップS8では、制御装置10は、第1制御リレー、第2制御リレー、第3制御リレーの全てを開く。こうすることで、燃料電池1の運転中、燃料電池1で発生した電力は負荷11に対してのみ供給される。
【0030】
ステップS2では、制御装置10は、燃料電池1の出力電圧Voutが蓄電器2の電圧Vc以上か否かを判断する。VoutがVc以上であればステップS3へ進み、VoutがVcより低ければステップS8へ進む。
【0031】
燃料電池システム100が正常であれば、燃料電池1の停止直後にVoutがVcより低くなることはないので、ステップS2でVoutがVcより低いと判断された場合には、制御装置10は、燃料電池システム100が異常であると判断して、第1制御リレー、第2制御リレー、第3制御リレーの全てを開く。
【0032】
こうすることで、蓄電器2が燃料電池1及び消費抵抗3から切り離され、蓄電器2に充電されていた電力が燃料電池1に逆流すること、及び蓄電器2に充電されていた電力が消費抵抗3において熱に変換されて消費されることが防止される。
【0033】
ステップS3では、制御装置10は、第1制御リレー4を閉じ、第2制御リレー5及び第3制御リレー6を開く。こうすることで、燃料電池1の余剰電力は、第1給電線7を介して蓄電器2に供給され、蓄電器2が充電される。
【0034】
ステップS3に続くステップS4では、制御装置10は、Vcが所定の閾値V2まで上昇したか否かを判断する。VcがV2まで上昇していればステップS5へ進み、VcがV2まで上昇していなければフローを抜ける。ここで、V2は、低圧側の電圧の上限値であり、例えば30Vに設定される。
【0035】
なお、V2は、低圧側の電圧の上限値には限定されない。V2は、低圧側への電力供給が可能な電圧であればよく、30Vよりも低い電圧とすることも可能である。
【0036】
ステップS5では、制御装置10は、第1制御リレー4及び第2制御リレー5を閉じ、第3制御リレー6を開く。こうすることで、燃料電池1の余剰電力及び蓄電器2に充電された電力は、低圧側の定格電圧との電位差により、第2給電線8を介して低圧側に供給される。
【0037】
ステップS5に続くステップS6では、制御装置10は、Vcが所定の閾値Vinまで低下したか否かを判断する。VcがVinまで低下していればステップS7へ進み、VcがVinまで低下していなければフローを抜ける。ここで、Vinは、上述のとおり低圧側の定格電圧であり、例えば24Vである。VcがVinまで低下すると、低圧側に電流が流れなくなるので、低圧側に流れる電流値がゼロになったときに、VcがVinまで低下したと判断することができる。
【0038】
ステップS7では、制御装置10は、第1制御リレー4及び第2制御リレー5を開き、第3制御リレー6を閉じる。こうすることで、燃料電池1の残留電圧は、第1給電線7及び第3給電線9を介して消費抵抗3に放電され、消費抵抗3において熱に変換されて消費される。
【0039】
図3は、図2のフロー図にしたがって制御を行った場合の燃料電池1と蓄電器2の電圧変化の様子を示したものである。図3において、縦軸は電圧を、横軸は時間を示す。また、実線は燃料電池1の電圧を、一点鎖線は蓄電器2の電圧を示す。
【0040】
V1は、燃料電池1の運転モードにおいて負荷11に供給される電力の電圧を示す。V1は、例えば100V〜120Vに設定される。V2は、上述のとおり、低圧側の電圧の上限値であり、例えば30Vに設定される。Vinは、上述のとおり、低圧側の定格電圧であり、例えば24Vである。
【0041】
なお、図3は、燃料電池1が停止モードに切り替えられた時点で、蓄電器2の充電量がゼロである場合を示している。
【0042】
時刻t1までは、燃料電池1は運転モードで動作しており、第1制御リレー、第2制御リレー、第3制御リレーは全て開かれ、燃料電池1が発生した電力は全て負荷11へ供給されている。このとき、燃料電池1の出力電圧VoutはV1である。
【0043】
時刻t1で燃料電池1が運転モードから停止モードに切り替えられると、燃料電池1と負荷11を接続する給電線上に設けられた不図示の制御リレーが開かれ、負荷11への電力供給が行われなくなる。
【0044】
また、時刻t1では、蓄電器2の充電量はゼロであるため、第1制御リレーのみが閉じられる。
【0045】
時刻t1で燃料電池1が停止モードに切り替えられ、水素ガス及び空気の供給が停止されても、燃料電池1では、燃料電池1の本体内部及び燃料電池1の周辺の配管内に残留する水素ガス及び空気による発電が引き続き行われ、余剰電力が発生する。
【0046】
第1制御リレーが閉じられることにより、燃料電池1の停止後に発生した余剰電力は、蓄電器2に供給され、蓄電器2が充電される。以下、第1制御リレー4が閉じられ、第2制御リレー5及び第3制御リレー6が開かれた状態を「モード1」という。
【0047】
時刻t1から時刻t2までは、モード1の状態を維持して蓄電器2への充電が行われ、燃料電池1の出力電圧Voutが低下し、蓄電器2の電圧Vcが上昇する。
【0048】
時刻t2で、蓄電器2電圧Vcが所定の閾値V2まで上昇すると、第2制御リレー5が閉じられる。なお、この時、第1制御リレー4は閉じられたままである。
【0049】
第2制御リレー5が閉じられることにより、蓄電器2に充電された電力が第2給電線8を介して低圧側に供給されるとともに、燃料電池1の電力も第2給電線8を介して低圧側に供給される。以下、第1制御リレー4及び第2制御リレー5が閉じられ、第3制御リレー6が開かれた状態を「モード2」という。
【0050】
時刻t2から時刻t3までは、モード2の状態を維持して燃料電池1及び蓄電器2から低圧側への電力供給が行われ、蓄電器2の電圧Vc(=燃料電池1の出力電圧Vout)が低下する。
【0051】
時刻t3で、蓄電器2の電圧Vc(=燃料電池1の出力電圧Vout)が所定の閾値Vinまで低下し、低圧側に電流が流れなくなると、第1制御リレー4及び第2制御リレー5が開かれると共に第3制御リレー6が閉じられる。
【0052】
これにより、蓄電器2が燃料電池1から電気的に切り離されると共に、消費抵抗3が第1給電線7及び第3給電線9を介して燃料電池1と接続され、燃料電池1の残留電圧が消費抵抗3で消費される。以下、第1制御リレー4及び第2制御リレー5が開かれ、第3制御リレー6が閉じられた状態を「モード3」という。
【0053】
時刻t3から時刻t4まで、モード3の状態を維持することで、蓄電器2の充電量をVinに保ったまま、燃料電池1の残留電圧が消費抵抗3で消費され、時刻t4で、燃料電池1の残留電圧がゼロになる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態によれば、燃料電池システムを、運転状態と停止状態とを切り替え可能であり、運転状態で燃料と酸化剤との電気化学反応により電力を発生する燃料電池1と、燃料電池1に第1制御リレー4を介して接続され、第1制御リレー4の開閉状態に応じて、燃料電池1が発生する電力を充電する蓄電器2と、燃料電池1と第1制御リレー4及び第2制御リレー5を介して接続されるとともに、蓄電器2に第2制御リレー5を介して接続され、第1制御リレー4及び第2制御リレー5の開閉状態に応じて、燃料電池1が発生する電力と蓄電池2に充電された電力のうち少なくとも一方の電力が供給される制御電源12と、第1制御リレー4及び第2制御リレー5の開閉状態を制御する制御装置10と、を備え、制御装置10は、燃料電池1が運転状態から停止状態に切り替えられた場合に、第1制御リレー4を閉じるように制御して、燃料電池1が停止後に発生する余剰電力を蓄電器2に充電させ、蓄電器2に充電された電力の電圧が第1の閾値V2まで上昇した場合に、第1制御リレー4及び第2制御リレー5を閉じるように制御して、余剰電力及び充電された電力を制御電源12へ供給させるものとしたため、従来、消費抵抗で熱に変換して消費していた余剰電力を、低圧側に供給することができ、エネルギー効率の高い燃料電池システムを提供することができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態では、燃料電池1の停止時に蓄電器2の電圧がゼロの場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、燃料電池1の停止により蓄電器2の充電が行われ、蓄電器2の電圧がVinの状態で再び燃料電池1の運転及び停止が行われる場合、次回の蓄電器2への充電は蓄電器2の電圧がVinである状態から開始される。
【0056】
また、上述した実施の形態では、低圧側の定格電圧が24V、低圧側の電圧の上限値が30Vである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、乗用車であれば、低圧側の定格電圧を12Vとし、低圧側の電圧の上限値を15Vとすることも可能である。
【0057】
また、上述した実施の形態では、燃料電池システムを、燃料電池を車両の駆動源として利用する燃料電池車両に適用した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、燃料電池を用いる様々な機器に適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池を車両の駆動源として利用する燃料電池車両に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 燃料電池
1a 出力端子(正極)
1b 出力端子(負極)
1c 入力端子(正極)
1d 入力端子(負極)
2 蓄電器
2a 端子(正極)
2b 端子(負極)
3 消費抵抗
3a 端子(正極)
3b 端子(負極)
4 第1制御リレー
5 第2制御リレー
6 第3制御リレー
7 第1給電線
8 第2給電線
9 第3給電線
10 制御装置
11 負荷
11a 端子(正極)
11b 端子(負極)
12 制御電源
12a 端子(正極)
12b 端子(負極)
100 燃料電池システム
図1
図2
図3