(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像処理部は、前記造影画像における血管部分の画素値を反転させる処理、または、前記造影画像における血管部分の色を前記デバイスに対して識別可能な色に変更する処理を行って、前記マップ画像を生成するように構成されている、請求項1に記載の放射線画像処理装置。
前記画像処理部は、連続して生成された複数の前記造影画像を用いて、前記造影画像における血管部分以外の背景部分の一部または全部を除去して、前記マップ画像を作成するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような画像の時間積分による強調処理では、透視画像にほとんど写らない血管内壁の視認性を十分に向上できるとは限らない。造影剤を用いれば、血管部分の視認性が顕著に向上する一方で、血管の内部に存在するデバイス(ステント)は造影剤に埋もれて視認性が低下してしまう。たとえば、ステントの留置状態を把握して、追加の血管拡張や追加のステント留置の必要性を判断するには、ステントと血管内壁との両方を確認する必要性が高い。そこで、透視画像において、被検体内に導入されたデバイスと血管部分との両方を、より明確に、かつ同時に確認できるようにすることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被検体内に導入されたデバイスと血管部分との両方を、透視画像中で明確かつ同時に確認することが可能な放射線画像処理装置および放射線画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における放射線画像処理装置は、被検体を透過した放射線の検出信号に基づく透視画像を生成する画像生成部と、画像生成部により生成された透視画像を記憶する記憶部と、画像生成部により生成された透視画像に画像処理を行う画像処理部とを備え、画像処理部は、連続的に生成される複数の透視画像を、被検体内に導入されたデバイスの位置が一致するように位置合わせ
するとともに、重畳することによりデバイスを強調したデバイス強調画像により、
デバイスの位置を画像中で固定させた複数のデバイス固定画像を連続的に作成し、記憶部に記憶された被検体の血管の造影画像から、デバイスに対して識別可能に血管部分を表示するマップ画像を作成し、マップ画像に複数のデバイス固定画像を順次重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像を連続的に作成するように構成されている
。
【0008】
この発明の第
1の局面による放射線画像処理装置では、上記のように、連続的に生成される複数の透視画像において、被検体内に導入されたデバイスの位置が一致するように位置合わせしたデバイス固定画像を作成し、記憶部に記憶された被検体の血管の造影画像から、デバイスに対して識別可能に血管部分を表示するマップ画像を作成し、マップ画像にデバイス固定画像を重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像を作成するように画像処理部を構成する。これにより、マップ画像では、造影画像を用いて血管部分を明確に視認可能にすることができ、かつ、デバイスが識別可能なように血管部分を表示することができる。そして、デバイスマップ重畳画像では、デバイス固定画像のデバイスを、マップ画像の血管部分に重ねることによって、通常の造影画像では造影剤に埋もれてしまうデバイスと、造影画像から得られた明確な血管部分とを同時に表示することができる。その結果、被検体内に導入されたデバイスと血管部分との両方を、透視画像中で明確かつ同時に確認することができる。
また、第1の局面による放射線画像処理装置では、さらに、デバイス固定画像におけるデバイスの視認性を向上させることができる。その結果、デバイスマップ重畳画像において、デバイスと血管部分との両方をさらに明確に確認できるようになる。
【0009】
上記第
1の局面による放射線画像処理装置において、好ましくは、画像処理部は、造影画像における血管部分の画素値を反転させる処理、または、造影画像における血管部分の色をデバイスに対して識別可能な色に変更する処理を行って、マップ画像を生成するように構成されている。ここで、造影中にデバイスが埋もれるのは、造影剤の放射線吸収によって血管部分がデバイスと同等以上に黒く(画素値が低く)なるためである。そのため、造影画像における血管部分の画素値を反転させるか、デバイスを視認可能な別の色で血管部分を表示することにより、デバイスの識別性を向上させることが可能なマップ画像を容易に生成することができる。その結果、デバイスマップ重畳画像において、デバイスと血管部分との両方をより明確に確認できるようになる。
【0010】
この場合、好ましくは、画像処理部は、造影画像における血管部分の輪郭抽出により、血管部分の輪郭を識別可能に表示するマップ画像を生成するように構成されている。このように構成すれば、デバイスマップ重畳画像において、血管部分の輪郭(すなわち、血管壁)だけを識別可能に表示し、血管部分の内部にはデバイス固定画像そのものを表示することができる。これにより、識別可能な表示色により血管部分が塗りつぶされる場合と異なり、透視画像に慣れたユーザにとっても違和感なく、デバイスと血管部分との両方を明確に確認可能なデバイスマップ重畳画像を生成することができる。
【0011】
上記第
1の局面による放射線画像処理装置において、好ましくは、画像処理部は、連続して生成された複数の造影画像を用いて、造影画像における血管部分以外の背景部分の一部または全部を除去して、マップ画像を作成するように構成されている。このように構成すれば、マップ画像から血管部分以外の背景部分を除去することができるので、デバイスマップ重畳画像において背景部分の多重化を抑制して、画像全体としての視認性を向上させることができる。
【0012】
この場合、好ましくは、画像処理部は、造影画像と造影画像の直近フレームの過去造影画像との差分画像を作成し、差分画像に対して画素値の閾値を用いて画像成分を除去する閾値処理を行うことにより、背景部分の除去を行うように構成されている。このように構成すれば、心血管インターベンション治療時の造影画像の場合に、連続するフレームで血管位置は変動するのに対して骨や動きの少ない臓器は位置が変わらないことを利用して、容易に、血管部分を残しつつ背景部分を除去することができる。
【0013】
上記第
1の局面による放射線画像処理装置において、好ましくは、画像処理部は、心電図波形または透視画像から、透視画像の心拍位相情報を取得し、心拍位相情報に基づいて、記憶部に記憶された複数の造影画像のうちからデバイス固定画像と略一致する心拍位相において取得された造影画像を選択し、選択した造影画像からマップ画像を作成するように構成されている。このように構成すれば、心血管インターベンション治療時の造影画像の場合に、血管部分の移動は主として心臓の拍動に起因する周期的運動となるので、心拍位相の一致に基づいて、デバイス固定画像と精度よく一致するマップ画像を選択することができる。
【0014】
上記第
1の局面による放射線画像処理装置において、好ましくは、画像処理部は、造影中に生成される造影画像において、デバイス近傍における部分マップ画像を作成し、造影終了後に生成されるデバイス固定画像と、部分マップ画像とを、デバイス位置に基づいて重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像を作成するように構成されている。このように構成すれば、デバイス位置に基づくことにより、造影中と造影終了後とに取得される一連の透視画像(造影画像)を用いて、造影終了後に直ちにデバイスマップ重畳画像を作成することができる。
【0016】
上記第
1の局面による放射線画像処理装置において、好ましくは、デバイスは、血管治療用のステントを含み、透視画像および造影画像は、被検体の心拍に伴って周期的に動く部位の放射線画像である。心血管インターベンション治療など、血管を含む体組織が心拍に伴って周期的に動く場合には、ステントおよび血管部分の各々について十分に視認性を向上させることが難しいため、デバイス固定画像によって位置変動を抑制しつつマップ画像によって血管部分とデバイスとを識別可能にすることが可能な本発明は、特に有効である。
【0017】
この発明の第
2の局面における放射線画像処理方法は、プロセッサが、連続的に生成された複数の透視画像に写るデバイスの位置が一致するように位置合わせ
するとともに、複数の透視画像を重畳することによりデバイスを強調したデバイス強調画像により、
デバイスの位置を画像中で固定させた複数のデバイス固定画像を連続的に作成するステップと、プロセッサが、血管の造影画像から、デバイスに対して識別可能に血管部分を表示するマップ画像を作成するステップと、プロセッサが、マップ画像に複数のデバイス固定画像を順次重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像を連続的に作成するステップとを備える
。
【0018】
この発明の第
2の局面による放射線画像処理方法では、連続的に生成される複数の透視画像において、被検体内に導入されたデバイスの位置が一致するように位置合わせしたデバイス固定画像を作成するステップと、造影画像から、デバイスに対して識別可能に血管部分を表示するマップ画像を作成するステップと、マップ画像にデバイス固定画像を重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像を作成するステップとを備える。これにより、マップ画像では、造影画像を用いて血管部分を明確に視認可能にすることができ、かつ、デバイスが識別可能なように血管部分を表示することができる。そして、デバイスマップ重畳画像では、デバイス固定画像のデバイスを、マップ画像の血管部分に重ねることによって、通常の造影画像では造影剤に埋もれてしまうデバイスと、造影画像から得られた明確な血管部分とを同時に表示することができる。その結果、被検体内に導入されたデバイスと血管部分との両方を、透視画像中で明確かつ同時に確認することができる。
また、第
2の局面による放射線画像処理方法では、さらに、デバイス固定画像におけるデバイスの視認性を向上させることができる。その結果、デバイスマップ重畳画像において、デバイスと血管部分との両方をさらに明確に確認できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、被検体内に導入されたデバイスと血管部分との両方を、透視画像中で明確かつ同時に確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
(放射線画像処理装置の構成)
図1〜
図6を参照して、本発明の第1実施形態による画像処理装置10の構成について説明する。画像処理装置10は、特許請求の範囲の「放射線画像処理装置」の一例である。
【0023】
第1実施形態による画像処理装置10は、放射線画像を撮影する放射線撮影装置100と組み合わせて、透視画像の撮影中にリアルタイムで画像処理を行うように構成されている。放射線撮影装置100は、人体などの被検体Tの外側から放射線を照射することによって、被検体T内を画像化した放射線画像(透視画像)を撮影する装置である。放射線撮影装置100は、放射線の一例であるX線を用いてX線画像を撮影するX線撮影装置である。
【0024】
放射線撮影装置100は、被検体Tに放射線(X線)を照射する照射部1と、被検体Tを透過した放射線を検出する放射線検出部2とを備えている。照射部1と放射線検出部2とは、それぞれ、被検体Tが載置される天板3を挟んで対向するように配置されている。照射部1および放射線検出部2は、移動機構4に移動可能に支持されている。天板3は、天板駆動部5により水平方向に移動可能である。被検体Tの関心領域を撮影できるように、移動機構4および天板駆動部5を介して照射部1、放射線検出部2および天板3が移動される。関心領域は、被検体Tのうちで、検査や治療のために撮影の対象となる領域である。放射線撮影装置100は、移動機構4および天板駆動部5を制御する制御部6を備えている。
【0025】
照射部1は、放射線源1aを含んでいる。放射線源1aは、図示しない高電圧発生部に接続されており、高電圧が印加されることによりX線を発生させるX線管である。放射線源1aは、X線出射方向を放射線検出部2の検出面に向けて配置されている。照射部1は、制御部6に接続されている。制御部6は、管電圧、管電流およびX線照射の時間間隔などの予め設定された撮影条件に従って照射部1を制御し、放射線源1aからX線を発生させる。
【0026】
放射線検出部2は、照射部1から照射され、被検体Tを透過したX線を検出し、検出したX線強度に応じた検出信号を出力する。放射線検出部2は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)により構成されている。放射線検出部2は、所定の解像度のX線検出信号を画像処理装置10に出力する。画像処理装置10は、放射線検出部2からX線検出信号を取得して、透視画像40(
図3参照)を生成する。
【0027】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。制御部6は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、放射線撮影装置100の各部を制御する制御部として機能する。制御部6は、照射部1および画像処理装置10の制御や、移動機構4および天板駆動部5の駆動制御を行う。
【0028】
放射線撮影装置100は、表示部7、操作部8および記憶部9を備える。表示部7は、たとえば液晶ディスプレイなどのモニタである。操作部8は、たとえばキーボードおよびマウス、タッチパネルまたは他のコントローラーなどを含んで構成される。記憶部9は、たとえばハードディスクドライブなどの記憶装置により構成される。制御部6は、画像処理装置10により生成された画像を表示部7に表示させる制御を行うように構成されている。また、制御部6は、操作部8を介した入力操作を受け付けるように構成されている。記憶部9は、画像データ、撮影条件および各種の設定値を記憶するように構成されている。表示部7および操作部8の各々は、画像処理装置10に設けられていてもよい。
【0029】
画像処理装置10は、たとえば、CPUあるいはGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ11と、ROMおよびRAMなどの記憶部12とを含んで構成されるコンピュータである。すなわち、画像処理装置10は、記憶部12に記憶された画像処理プログラムをプロセッサ11に実行させることにより構成される。画像処理装置10は、制御部6と同一のハードウェア(CPU)に画像処理プログラムを実行させることにより、制御部6と一体的に構成されてもよい。
【0030】
記憶部12は、コンピュータを画像処理装置10として機能させるためのプログラム15(画像処理プログラム)を記憶している。また、第1実施形態では、記憶部12は、後述する画像生成部13により生成された透視画像40および後述する造影画像50を含む画像データ16を記憶するように構成されている。
【0031】
画像処理装置10は、画像処理プログラム15を実行することによる機能として、画像生成部13と、画像処理部14とを含む。画像生成部13と画像処理部14とが専用のプロセッサにより個別に構成されていてもよい。
【0032】
画像生成部13は、被検体Tを透過した放射線の検出信号に基づく透視画像40を生成するように構成されている。画像生成部13は、放射線検出部2の検出信号に基づき、透視画像40を動画像の形式で生成する。すなわち、照射部1から被検体Tに対してX線が所定時間間隔で断続的に照射され、被検体Tを透過したX線が放射線検出部2により順次検出される。画像生成部13は、放射線検出部2から順次出力される検出信号を画像化することにより、透視画像40を所定のフレームレートで生成する。フレームレートは、たとえば15FPS〜30FPS程度である。透視画像40は、たとえばグレースケールで所定の階調数(10〜12ビットなど)の画素値を有する画像である。そのため、低画素値の画素では黒く(暗く)表示され、高画素値の画素では白く(明るく)表示される。
【0033】
画像処理部14は、画像生成部13により生成された透視画像40に画像処理を行うように構成されている。画像処理の詳細については、後述する。
【0034】
第1実施形態では、画像処理装置10(放射線撮影装置100)は、被検体T内に導入されるデバイス30(
図2参照)の透視画像40および被検体Tの血管の造影画像50を生成するように構成されている。第1実施形態では、透視画像40および造影画像50は、被検体の心拍に伴って周期的に動く部位の放射線画像である。
【0035】
第1実施形態では、
図2(A)に示すように、被検体T内に導入されるデバイス30は、血管治療用のステント31を含む。ステント31は、たとえば、冠動脈(心血管)インターベンション治療に用いられる。冠動脈インターベンション治療は、内部にガイドワイヤ32を備えたカテーテル33を被検体Tの血管内に挿入し、血管を介してカテーテル33を心臓の冠動脈へ到達させて治療を行うものである。ステント31は、細い金属などで形成された網目構造を有する筒状形状を有する。ステント31は、血管の狭窄部分に配置され、内側からバルーンを利用して拡張されることにより血管内に留置され、狭窄した血管を拡げて内側から支える。網目構造のステント31は透視画像40に写りにくいため、放射線透過性の低い(または不透過の)マーカー34が、目印としてステント31あるいはバルーンなどに設けられる。マーカー34は、1つあるいは2つ設けられることが多い。
【0036】
冠動脈インターベンション治療では、医師が、画像処理装置10(放射線撮影装置100)によりリアルタイムで生成される動画像である透視画像40を参照しながら、カテーテル33を心臓の冠動脈へ送り込む。治療に際しては、狭窄部位の特定、ステント31および血管拡張用バルーンの狭窄部位への位置決め、ステント31を留置した後の確認が必要とされる。血管の中の血液と、周囲の体組織とで、X線透過性の差が小さいことから、血管部分は透視画像40において視認性が低い。そこで、治療開始前や、治療中には、造影剤を用いた造影画像50(
図3参照)の撮影が行われる。造影剤は、マーカー34と同様、放射線透過性が低いため、透視画像40において暗部(黒色部)として写る。カテーテルを介して血管内に造影剤を注入することにより、造影画像50では、通常の透視画像40ではほとんど写らない血管部分60(
図3参照)を明確に写すことができる。
【0037】
ステント31を留置した後の確認には、
図2(B)および
図2(C)に示すように、ステント31(血管の狭窄部位)が十分に拡張したか否か、ステント31が血管壁VWに密着しているか否か、の確認などが含まれる。たとえば
図2(B)では、ステント31および狭窄部分が十分に拡張し、血管壁VWにステント31が密着している。
図2(C)では、ステント31の端部付近で十分に拡張ができておらず、血管壁VWとステント31との密着も不十分である。確認結果は、バルーンによる追加拡張や、追加のステント留置を行うか否かの判断の基礎となる。
【0038】
このため、ステント31の留置後の確認には、ステント31と、血管部分60との両方が確認(視認)できることが重要となる。しかし、
図3に示すように、通常の透視画像40では、画像中に黒色の点として写るマーカー34に基づいて、ステント31の位置を把握することが可能である一方、血管部分60(破線部参照)はほとんど視認できない。造影画像50では、造影剤を注入された血管部分60が、黒色領域として鮮明に写る一方で、血管内のマーカー34(ステント31)は造影剤に埋もれてほとんど視認できない。
【0039】
そこで、第1実施形態では、
図3に示すように、画像処理部14は、デバイス30(ステント31およびマーカー34)が視認可能に写る透視画像40と、血管部分60が写る造影画像50とを用いて画像合成(重畳)を行うことにより、デバイス30(ステント31およびマーカー34)と血管部分60との両方を視認可能なデバイスマップ重畳画像70を作成するように構成されている。
【0040】
(透視画像の画像処理)
第1実施形態では、画像処理部14は、連続的に生成される複数の透視画像40から、デバイス固定画像41をリアルタイムで作成する処理、造影画像50を用いて血管部分60のマップ画像51を作成する処理、デバイス固定画像41とマップ画像51とを用いてデバイスマップ重畳画像70を作成する処理を行うように構成されている。以下各々の処理について具体的に説明する。なお、以下の説明では便宜的に、造影中の透視画像を造影画像50とし、非造影中の透視画像を透視画像40として、区別する。
【0041】
〈デバイス固定画像〉
デバイス固定画像41は、連続的に生成される複数の透視画像40において、被検体T内に導入されたデバイス30の位置が一致するように位置合わせした透視画像である。リアルタイムで動画像として生成される透視画像40では、心拍や被検体Tの呼吸などによって、血管部分60および血管部分60内のデバイス30が常に周期的に運動する。デバイス固定画像41は、透視画像40に写るデバイス30の位置を画像中(表示画面中)で固定して表示させるものである。
【0042】
具体的には、
図4に示すように、画像処理部14は、画像生成部13によりリアルタイムで生成される透視画像40(非造影画像)の各々から、デバイス30のマーカー34を検出する。マーカー34の検出は、公知の画像認識技術により可能である。画像処理部14は、透視画像40中におけるマーカー34の位置座標を取得する。
【0043】
画像処理部14は、動画像として生成される複数の透視画像40のうちから、所定のタイミングで、デバイス固定画像41の基準となる基準画像42を選択する。つまり、画像処理部14は、透視画像40のうちのいずれか1フレームの画像を基準画像42として選択する。
【0044】
画像処理部14は、基準画像42以降の各フレームの透視画像40について、各々のマーカー34(デバイス30)の位置が基準画像42に写るマーカー34(デバイス30)の位置と一致するように位置合わせを行う。すなわち、各フレームの透視画像40について、水平移動および回転移動の一方または両方を行う。これにより、マーカー34(デバイス30)の位置が互いに一致するデバイス固定画像41がフレーム毎に作成される。この結果、基準画像42以降のフレームでは、マーカー34(デバイス30)の位置が固定された状態の透視画像(デバイス固定画像41)が連続的に出力される。
【0045】
〈マップ画像〉
図3に示すように、マップ画像51は、被検体Tの血管の造影画像50から作成され、デバイス30に対して識別可能に血管部分60を表示する画像である。第1実施形態では、デバイスマップ重畳画像70の作成前に、血管内に造影剤を注入して撮影された造影画像50が予め取得され、記憶部12に記憶される。画像処理部14は、記憶部12に記憶された被検体Tの血管の造影画像50からマップ画像51を作成する。
【0046】
造影画像50は、心拍や被検体Tの呼吸などによって周期的に運動する造影画像50の少なくとも1周期分にわたって、記憶部12に記憶されることが好ましい。画像処理部14は、記憶部12に記憶された所定時間分の複数の造影画像50のうちから、デバイス固定画像41に重畳させる造影画像50を選択する。すなわち、画像処理部14は、血管部分60がデバイス固定画像41の血管部分60(破線部参照)に一致または近似する造影画像50を選択する。なお、デバイス固定画像41と造影画像50とは、血管部分60の全体が一致または近似する必要はない。デバイス固定画像41は、デバイス30(マーカー34)の位置が固定され、デバイス30(マーカー34)以外の部位が動く動画像となることから、造影画像50は、デバイス30の位置(マーカー34の位置)の近傍領域における血管部分60がデバイス固定画像41と一致していればよい。
【0047】
造影画像50の選択は、画像処理部14が自動で行ってもよいし、ユーザ(インターベンション治療を行う医師)による選択操作を受け付けることにより手動で行ってもよい。選択操作は、たとえば複数の造影画像50を表示部7に一覧可能に表示させ、いずれかの造影画像50に対しての操作部8を介した選択操作を受け付けることにより実施される。画像処理部14が自動で造影画像50の選択を行う例は、後述の第3実施形態において説明する。
【0048】
画像処理部14は、選択された造影画像50から、デバイス30に対して識別可能に血管部分60を表示するマップ画像51を作成する。デバイス30に対して識別可能に血管部分60を表示するとは、デバイス30(ステント31)の画像部分(画素)と、血管部分60の画像部分(画素)とが、ユーザにとって識別できる程度に明暗(画素値)あるいは色彩上のコントラストを有することである。
【0049】
第1実施形態では、画像処理部14は、造影画像50における血管部分60の画素値を反転させる処理、または、造影画像50における血管部分60の色をデバイス30に対して識別可能な色に変更する処理を行って、マップ画像51を生成するように構成されている。
図3に示すように、造影画像50における血管部分60は造影剤によって画素値が低く(黒く)現れる。また、透視画像40(デバイス固定画像41)におけるデバイス30も、周囲の体組織に比べれば画素値が低く(黒く)現れる傾向にある。造影画像50における血管部分60の画素値を反転させることにより、血管部分60の画素値が高い(白い)反転画像が得られる。これにより、反転画像からなるマップ画像51にデバイス固定画像41を重畳させると、画素反転された白地の血管部分60にデバイス30およびマーカー34が黒く写り、識別が可能となる。
【0050】
血管部分60は、画素値の反転に限らず、白黒(グレースケール)とは異なる他の色に置き換えてもよい。反転画像における白色(反転画素値)に代えて、たとえば黄色や緑色などの、黒色(灰色)のデバイス30と区別可能な所定色に変更することでも、同様にデバイス30と血管部分60とを識別可能に表示することが可能である。
【0051】
〈背景部分の除去〉
マップ画像51の作成にあたっては、選択された造影画像50をそのまま用いることができるが、連続して生成された複数の造影画像50を用いて背景部分61を除去した画像を用いることもできる。第1実施形態において、好ましくは、画像処理部14は、連続して生成された複数の造影画像50を用いて、造影画像50における血管部分60以外の背景部分61の一部または全部を除去して、マップ画像51を作成するように構成されている。
【0052】
具体的には、
図5に示すように、画像処理部14は、現在の造影画像50と、現在の造影画像50の直近フレームの過去造影画像52との差分画像53を作成する。
図5では、たとえば3フレームの(直近の3つの)過去造影画像52を用いる例を示している。まず、画像処理部14は、複数の過去造影画像52の合成画像52aを作成する。たとえば、画像処理部14は、複数の過去造影画像52の各画素値同士を平均した合成画像52a(平均画像)を作成する。心拍動に伴って変動する血管部分60などは、合成画像52aにおいてぶれて(ぼやけて)写り、平均により画素値が均一化され、灰色に近くなる。骨や時間的に変動しない臓器などの背景部分61は平均しても変化しないため、合成画像52aにおいても過去造影画像52と同様に写る。
【0053】
なお、画像処理部14は、複数の過去造影画像52を時間的に異なる割合で加算した合成画像52aを作成してもよい。たとえば、画像処理部14は、複数の過去造影画像52を時間フィルタであるリカーシブフィルタにより合成する。この場合、現在の造影画像50に近いフレームの過去造影画像52ほど、合成画像52aにおいて大きな割合を占めるように合成される。
【0054】
画像処理部14は、現在の造影画像50と合成画像52aとの差分処理(サブトラクション)を行うことにより、差分画像53を作成する。画像処理部14は、現在の造影画像50(画像Aとする)と合成画像52a(画像Bとする)と、画素値の中間値からなる中間値画像54(画像Cとする)とにより、A−B+Cの演算処理(対応画素同士の画素値の加減算処理)を行い、差分画像53を作成する。差分画像53では、現在の造影画像50において写る血管部分60は黒い(画素値が低い)ままとなる。合成画像52aにおけるぶれた血管部分60は、差分画像53では、より白く(画素値が高く)なり、動かない背景部分61は、灰色(中間値近傍)となる。つまり、差分画像53では、現在の造影画像50における血管部分60と、背景部分61や合成画像52aにおける平均化された血管部分60と、の間でのコントラスト(画素値の差)が明確化される。
【0055】
そして、画像処理部14は、差分画像53に対して画素値の閾値を用いて画像成分を除去する閾値処理を行うことにより、背景部分61の除去を行う。差分画像53においては、現在の造影画像50における血管部分60と、他の背景部分61などとの画素値の差が大きくなっているため、血管部分60と、背景部分61などとの間に閾値を設定することにより、容易に背景部分61が除去される。この結果、画像処理部14は、血管部分60が写り、血管部分60以外の背景部分61が除去された背景除去画像55を取得する。画像処理部14は、この背景除去画像55を用いてマップ画像51を作成することができる。
【0056】
〈デバイスマップ重畳画像〉
図3に示すように、画像処理部14は、マップ画像51にデバイス固定画像41を重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像70を作成するように構成されている。画像処理部14は、リアルタイムで生成される透視画像40からデバイス固定画像41を作成して、順次マップ画像51に重畳させていく。
【0057】
上記の通り、デバイス固定画像41はデバイス30(マーカー34)の位置で位置合わせされているため、デバイス30(マーカー34)およびデバイス30の周辺の血管部分60は位置が固定されて表示される。選択された造影画像50は、デバイス30の周辺における血管部分60の位置がデバイス固定画像41(基準画像42)に一致または近似するため、マップ画像51とデバイス固定画像41とを重畳することにより、デバイス固定画像41の視認性が低い血管部分60にマップ画像51の血管部分60が重なる。この結果、デバイスマップ重畳画像70では、マップ画像51の血管部分60中に、デバイス固定画像41のデバイス30が配置された透視画像となり、血管部分60およびデバイス30の識別性が共に向上する。
【0058】
〈デバイス強調処理〉
第1実施形態では、さらに、デバイス固定画像41におけるデバイス30を強調して表示する強調処理を行ってもよい。
【0059】
すなわち、第1実施形態では、好ましくは、画像処理部14は、連続する複数フレームの透視画像40を用いてデバイス30を強調したデバイス強調画像43により、デバイス固定画像41を作成するように構成されている。具体的には、
図6に示すように、画像処理部14は、最新フレームF1の透視画像40を含む直前の複数フレームの透視画像40から、デバイス30(マーカー34)を位置合わせして重ね合わせる(画像を積算処理する)ことにより、デバイス強調画像43を生成する。重ね合わせる画像枚数は任意であるが、
図6では、最新フレームF1を含めて5枚(F1〜F5の5フレーム分)の例を示している。
【0060】
デバイス強調画像43をデバイス固定画像41として用いてデバイスマップ重畳画像70を作成することにより、デバイス30の視認性がさらに向上する。
【0061】
〈デバイス拡大処理〉
図3に示すように、第1実施形態では、さらに、デバイスマップ重畳画像70におけるデバイス30を拡大して表示する拡大表示処理を行ってもよい。
【0062】
すなわち、第1実施形態では、画像処理部14は、デバイスマップ重畳画像70中のデバイス30の像を拡大して切り出し(トリミング)することにより、デバイス30の拡大画像44を表示することが可能に構成されている。画像処理装置10は、たとえば、最新フレームの透視画像40とステント31の拡大画像44とを並べて表示した表示用画像71を生成し、制御部6(表示部7)に出力する。なお、デバイス強調画像43を、拡大画像44のみに適用してもよい。
図3の表示用画像71では、デバイスマップ重畳画像70と、拡大画像44と、拡大画像44に強調処理を適用するのに用いた複数のトリミング画像45(
図3、
図6参照)とを並べて表示する形態の例を示している。
【0063】
デバイスマップ重畳画像70では、デバイス固定画像41において位置合わせされたデバイス30(マーカー34)の周辺領域以外では、背景が移動することになる。一方、拡大画像44では、位置合わせされたデバイス30(マーカー34)の周辺領域のみが拡大されるため、移動する背景部分が取り除かれて静止画に近くなる。このため、特に画像を注視する場合に視認性が向上する。
【0064】
(画像処理装置の処理動作)
次に、
図7を参照して、画像処理装置10の処理動作を説明する。
【0065】
図7のステップS1において、画像処理装置10は、造影画像50を取得し、記憶部12に記憶する。すなわち、血管内に造影剤を注入した造影中の状態で、画像処理装置10は、照射部1から照射され、被検体Tを透過したX線を検出した放射線検出部2からの検出信号を取得する。画像生成部13が、取得した検出信号に基づいて、造影画像50を生成する。造影画像50は、心拍動の1周期以上の期間にわたって複数生成され、それぞれ記憶部12に記憶される。
【0066】
ステップS2において、画像処理装置10は、透視画像40の取得を開始する。すなわち、非造影中の状態で、照射部1から照射され、被検体Tを透過したX線を検出した放射線検出部2からの検出信号を取得する。画像生成部13が、取得した検出信号に基づいて、透視画像40を生成する。造影画像50は、動画像としてフレーム単位で連続的に生成され、順次、画像処理部14に出力される。
【0067】
ステップS3において、画像処理部14は、生成された透視画像40から、画像認識によりマーカー34を検出する。画像処理部14は、透視画像40におけるマーカー34の位置(すなわち、デバイス30の位置)を取得する。
【0068】
ステップS4において、画像処理部14は、デバイス固定画像41を作成する。すなわち、画像処理部14は、フレーム毎の透視画像40から基準画像42を選択し、基準画像42のフレーム以降の各透視画像40について、基準画像42のマーカー位置に位置合わせすることにより、デバイス固定画像41を作成する。デバイス強調画像43を作成する場合には、画像処理部14は、
図6に示したように連続する複数フレームの透視画像40を積算(加算)してデバイス強調画像43を作成する。
【0069】
ステップS5において、画像処理部14は、マップ画像51の作成に用いる造影画像50を選択する。画像処理部14は、血管部分60がデバイス固定画像41の血管部分60に一致または近似する造影画像50を選択する。上記の通り、マップ画像51は、ユーザ(医師)の選択を受け付けることにより手動で選択するか、画像処理部14が自動で選択する。
【0070】
ステップS6において、画像処理部14は、選択した造影画像50を用いてマップ画像51を作成する。背景部分61の除去を行う場合、画像処理部14は、選択した造影画像50の直近の複数フレームの過去造影画像52を用いて差分画像53を作成し、閾値処理を行うことによりマップ画像51から背景部分61を除去する(背景除去画像55を作成する)。
【0071】
ステップS7において、画像処理部14は、マップ画像51にデバイス固定画像41を重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像70を作成する。
【0072】
ステップS8において、画像処理装置10(画像処理部14)は、表示部7(制御部6)に画像出力を行う。この際、デバイスマップ重畳画像70が出力されてもよいし、
図3に示した表示用画像71が出力されてもよい。表示用画像71を出力する場合、画像処理部14は、デバイス強調画像43のデバイス周辺をトリミングした拡大画像44を作成するとともに、拡大画像44に強調処理を適用するのに用いた複数のトリミング画像45とを並べて表示させる。
【0073】
以降、画像処理部14は、デバイス固定画像41をフレーム毎に作成すると、順次マップ画像51にデバイス固定画像41を重畳させていくことにより、画像を更新する。また、画像処理部14は、最新フレームの透視画像40が得られる度に、その最新フレームの透視画像40を用いたデバイス強調画像43を作成し、拡大画像44を更新する。
【0074】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
第1実施形態では、上記のように、連続的に生成される複数の透視画像40において、被検体T内に導入されたデバイス30の位置が一致するように位置合わせしたデバイス固定画像41を作成し、記憶部12に記憶された被検体Tの血管の造影画像50から、デバイス30に対して識別可能に血管部分60を表示するマップ画像51を作成し、マップ画像51にデバイス固定画像41を重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像70を作成するように画像処理部14を構成する。これにより、マップ画像51では、造影画像50を用いて血管部分60を明確に視認可能にすることができ、かつ、デバイス30が識別可能なように血管部分60を表示することができる。そして、デバイスマップ重畳画像70では、デバイス固定画像41のデバイス30を、マップ画像51の血管部分60に重ねることによって、通常の造影画像50では造影剤に埋もれてしまうデバイス30と、造影画像50から得られた明確な血管部分60とを同時に表示することができる。その結果、被検体T内に導入されたデバイス30と血管部分60との両方を、透視画像40中で明確かつ同時に確認することができる。
【0076】
また、第1実施形態では、上記のように、画像処理部14を、造影画像50における血管部分60の画素値を反転させる処理、または、造影画像50における血管部分60の色をデバイス30に対して識別可能な色に変更する処理を行って、マップ画像51を生成するように構成する。これにより、デバイス30の識別性を向上させることが可能なマップ画像51を容易に生成することができる。また、その結果、デバイスマップ重畳画像70において、デバイス30と血管部分60との両方をより明確に確認できるようになる。
【0077】
また、第1実施形態では、上記のように、画像処理部14を、連続して生成された複数の造影画像50を用いて、造影画像50における血管部分60以外の背景部分61の一部または全部を除去して、マップ画像51を作成するように構成する。これにより、マップ画像51から血管部分60以外の背景部分61を除去することができるので、デバイスマップ重畳画像70において背景部分61の多重化を抑制して、画像全体としての視認性を向上させることができる。
【0078】
また、第1実施形態では、上記のように、造影画像50と造影画像50の直近フレームの過去造影画像52との差分画像53を作成し、差分画像53に対して画素値の閾値を用いて画像成分を除去する閾値処理を行うことにより、背景部分61の除去を行うように画像処理部14を構成する。これにより、連続するフレームで血管位置は変動するのに対して骨や動きの少ない臓器は位置が変わらないことを利用して、容易に、血管部分60を残しつつ背景部分61を除去することができる。
【0079】
また、第1実施形態では、上記のように、連続する複数フレームの透視画像40を用いてデバイス30を強調したデバイス強調画像43により、デバイス固定画像41を作成するように画像処理部14を構成する。これにより、デバイス固定画像41におけるデバイス30の視認性を向上させることができる。その結果、デバイスマップ重畳画像70において、デバイス30と血管部分60との両方をさらに明確に確認できるようになる。特に、心血管インターベンション治療においては、留置したステント31(デバイス30)を強調させた上で、血管部分60を識別可能に表示することができるので、ステント31の血管壁VW(
図2参照)への密着度が容易かつ正確に確認でき、バルーンによる追加拡張の必要性の判断などを適切に行うことが可能となる。
【0080】
また、第1実施形態では、上記のように、デバイス30が血管治療用のステント31を含み、透視画像40および造影画像50が、被検体Tの心拍に伴って周期的に動く部位のX線画像である。心血管インターベンション治療など、血管を含む体組織が心拍に伴って周期的に動く場合には、ステント31および血管部分60の各々について十分に視認性を向上させることが難しい。本実施形態の画像処理装置10は、デバイス固定画像41によって位置変動を抑制しつつマップ画像51によって血管部分60とデバイス30とを識別可能にすることが可能であるため、このような場合に特に有効である。
【0081】
[第2実施形態]
次に、
図8を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態に加えて、造影画像における血管部分の輪郭抽出を行う例について説明する。なお、第2実施形態における装置構成は上記第1実施形態と同様であるので、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0082】
第2実施形態では、画像処理部14による画像処理のうち、マップ画像51の作成に関する処理(
図7のステップS6における画像処理部14の処理)が上記第1実施形態と異なる。第2実施形態では、
図8に示すように、画像処理部14は、造影画像50における血管部分60の輪郭抽出により、血管部分60の輪郭を識別可能に表示するマップ画像(輪郭マップ画像51A)を生成するように構成されている。輪郭マップ画像51Aは、特許請求の範囲の「マップ画像」の一例である。
【0083】
輪郭抽出は、たとえばラプラシアンフィルタや、画素勾配から輪郭(エッジ)を検出する方法などの公知のエッジ抽出技術を用いることができる。造影画像50は、造影された血管部分60と血管部分60以外の部分とのコントラストが明確であるので、容易に精度よく輪郭抽出を行うことができる。また、造影画像50に対して、
図5に示した背景除去処理を行って得られた背景除去画像55を用いて輪郭抽出を行ってもよい。この場合、余計な背景部分61が除去されるので、さらに精度よく、血管部分60の輪郭のみを抽出することが可能となる。
【0084】
図8に示すように、画像処理部14は、造影画像50(背景除去画像55)から、血管部分60の輪郭を識別可能に表示した輪郭マップ画像51Aを作成する。輪郭マップ画像51Aでは、血管部分60の輪郭線62について、血管部分60の画素値を反転させる処理、または、造影画像50における血管部分60の色をデバイス30に対して識別可能な色に変更する処理が行われる。これにより、輪郭マップ画像51Aをマップ画像51として用いてデバイスマップ重畳画像70を作成すると、デバイス30が存在する血管部分60の血管壁が輪郭線62によって表示されることになる。
【0085】
輪郭マップ画像51Aでは、血管部分60の内、輪郭線62のみが表示され、輪郭線62の内側(血管部分60の内部領域)は非着色(透明領域)とすることができる。この場合、デバイスマップ重畳画像70を作成すると、血管部分60の内部領域ではデバイス固定画像41の画像がそのまま表示されるので、ユーザ(医師)は、造影画像50から作成された画像ではなく、デバイス30が存在する領域の実際の画像を確認できる。
【0086】
第2実施形態のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0087】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、造影画像50から輪郭マップ画像51Aを作成し、輪郭マップ画像51Aにデバイス固定画像41を重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像70を作成することによって、被検体T内に導入されたデバイス30と血管部分60との両方を、透視画像40中で明確かつ同時に確認することができる。
【0088】
また、第2実施形態では、上記のように、造影画像50における血管部分60の輪郭抽出により、血管部分60の輪郭を識別可能に表示する輪郭マップ画像51Aを生成するように画像処理部14を構成する。これにより、デバイスマップ重畳画像70において、血管部分60の輪郭(すなわち、血管壁)だけを識別可能に表示し、血管部分60の内部にはデバイス固定画像41そのものを表示することができる。これにより、識別可能な表示色により血管部分60が塗りつぶされる場合と異なり、透視画像40に慣れたユーザにとっても違和感なく、デバイス30と血管部分60との両方を明確に確認可能なデバイスマップ重畳画像70を生成することができる。
【0089】
[第3実施形態]
次に、
図9を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態におけるマップ画像に用いる造影画像の選択を、画像処理部が自動で行う構成例について説明する。なお、第3実施形態における装置構成は上記第1実施形態と同様であるので、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0090】
画像処理部14がマップ画像51の作成に用いる造影画像50を自動で選択する方法は、たとえば画像認識によりデバイス固定画像41と各造影画像50との類似度を算出する方法なども可能である。第3実施形態では、造影画像50の選択方法の一例として、画像処理部14が、心拍位相に基づいて、マップ画像51の作成に用いる造影画像50を自動で選択する例を示す。すなわち、第3実施形態では、画像処理部14による
図7のステップS5の処理が上記第1実施形態と異なっている。
【0091】
第3実施形態では、画像処理部14は、透視画像40(造影画像50)の心拍位相情報に基づいて、造影画像50を選択することができる。心拍位相とは、心拍周期における1周期内のタイミング(時間位置)を意味する。心拍位相情報は、透視画像40(造影画像50)の生成タイミングにおける心拍位相を反映する情報である。透視画像40および造影画像50における血管部分60の動きは、被検体Tの心拍動の周期性に従うため、略一致(完全一致を含む)する心拍位相の画像同士は、血管部分60の位置が類似(または一致)した画像になる。
【0092】
画像処理部14は、心電図波形111または透視画像40から、透視画像40の心拍位相情報を取得し、心拍位相情報に基づいて、記憶部12に記憶された複数の造影画像50のうちからデバイス固定画像41と略一致する心拍位相において取得された造影画像50を選択し、選択した造影画像50からマップ画像51を作成するように構成されている。
【0093】
図9に示すように、心電図波形111を用いる場合、画像処理部14は、透視画像40(造影画像50)の撮影と並行して、心電図波形111を取得し、記憶部12に記憶しておく。これにより、画像処理部14は、個々の透視画像40(造影画像50)の生成タイミングにおける心拍位相(心拍位相情報)を心電図波形111から取得することが可能である。
【0094】
造影画像50(および心電図波形111)の記録後、画像処理部14は、基準画像42を決定し、以降のフレームについてデバイス固定画像41を作成する。画像処理部14は、デバイス固定画像41に用いた基準画像42の生成タイミングにおける心拍位相を取得し、記憶部12に記憶された各造影画像50のうちから、基準画像42の心拍位相と略一致する心拍位相において生成された造影画像50を選択する。
【0095】
また、心拍位相情報は、個々の透視画像40(造影画像50)から取得することができる。透視画像40(造影画像50)から取得した心拍位相情報に基づいて、デバイス固定画像41と略一致する心拍位相の造影画像50を選択する方法には、本出願人による特願2015−232474号に詳細に開示された内容を採用することができる。本明細書では、この特願2015−232474号の記載を参照により引用する。
【0096】
要約すると、画像処理部14は、デバイス固定画像41(造影画像50)において共通して写る特徴点を画像認識により複数(3点以上)抽出する。各特徴点は、心拍位相に応じて周期的に移動する点である。そして、画像処理部14は、各特徴点位置の重心位置を求め、重心位置に対する各特徴点の位置ベクトルを求める。画像処理部14は、デバイス固定画像41における各特徴点の位置ベクトル群と最も一致する位置ベクトル群を有する造影画像50を、略一致する心拍位相において生成された造影画像50として選択する。この場合、各特徴点の位置ベクトル群が心拍位相情報である。このように、心拍位相情報は、心拍位相そのものである必要はなく、複数の画像同士が略一致または近似する心拍位相において撮像された画像であると判断可能な情報であればよい。
【0097】
このような構成により、画像処理部14は、血管部分60がデバイス固定画像41の血管部分60(破線部参照)に一致または近似する造影画像50を自動的に選択する。第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。第2実施形態に第3実施形態の構成を適用してもよい。
【0098】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、選択した造影画像50からマップ画像51を作成し、マップ画像51にデバイス固定画像41を重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像70を作成することによって、被検体T内に導入されたデバイス30と血管部分60との両方を、透視画像40中で明確かつ同時に確認することができる。
【0099】
また、第3実施形態では、上記のように、心電図波形111または透視画像40から、透視画像40の心拍位相情報を取得し、心拍位相情報に基づいて、記憶部に記憶された複数の造影画像50のうちからデバイス固定画像41と略一致する心拍位相において取得された造影画像50を選択し、選択した造影画像50からマップ画像51を作成するように画像処理部14を構成する。これにより、心血管インターベンション治療時の造影画像50の場合に、血管部分60の移動は主として心臓の拍動に起因する周期的運動となるので、心拍位相の一致に基づいて、デバイス固定画像41と精度よく一致するマップ画像51を選択することができる。
【0100】
[第4実施形態]
次に、
図10を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、上記第1実施形態に加えて、造影画像においてもデバイス(マーカー)の検出を行い、造影終了後からデバイス(マーカー)近傍における局所的なデバイスマップ重畳画像を生成する例について説明する。なお、第4実施形態における装置構成は上記第1実施形態と同様であるので、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0101】
この第4実施形態は、
図3または
図8に示したような造影画像50と比較して、造影剤の希釈度を高め、造影中にもデバイス30のマーカー34が検出できるようにする利用形態で適用される。希釈された造影剤では、血管部分60のX線透過量が増大するため、マーカー34が検出可能な程度の画素値に押さえることが可能である。なお、
図10に示す第4実施形態では、造影剤は、マーカー34が検出可能であっても、ステント31などのデバイス30までは視認できない希釈率で用いられる。ここでは、希釈された造影剤を用いた造影画像50を、希釈造影画像150という。
【0102】
図10に示すように、画像処理部14は、造影中に生成される希釈造影画像150において、デバイス30近傍における部分マップ画像51Bを作成する。具体的には、画像処理部14は、希釈造影画像150からマーカー34を検出し、マーカー34に位置に基づいてデバイス30近傍の領域を切り取る(トリミングする)。画像処理部14は、切り取った画像部分について、血管部分60の画素値を反転させる処理、または、血管部分60の色をデバイス30に対して識別可能な色に変更する処理を行って、部分マップ画像51Bを生成する。なお、予め造影剤の注入時間を記憶部12に設定しておくか、画像認識により希釈造影剤の注入(血管部分60の画素値変化)を検出することにより、画像処理部14は、希釈造影画像150を自動で特定することができる。
【0103】
画像処理部14は、造影終了後に生成されるデバイス固定画像41と、部分マップ画像51Bとを、デバイス位置に基づいて重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像70を作成するように構成されている。デバイス固定画像41の作成については上記第1実施形態と同様である。第4実施形態の場合、部分マップ画像51Bについてもマーカー34が検出されているので、部分マップ画像51Bに対して平行移動および回転移動の一方または両方を行うことにより、部分マップ画像51Bのマーカー34(デバイス30)の位置がデバイス固定画像41(基準画像42)に写るマーカー34(デバイス30)の位置と一致するように位置合わせを行うことが可能である。画像処理部14は、デバイス固定画像41と、部分マップ画像51Bとのマーカー34の位置を位置合わせして重畳する。
【0104】
第4実施形態の場合、部分マップ画像51Bをデバイス30の近傍領域の画像部分とすることができるため、心拍位相などに基づいてデバイス固定画像41に一致または近似する希釈造影画像150を選択しなくてもよい。デバイス30の近傍領域の画像部分に限定すれば、デバイス固定画像41に一致または近似する希釈造影画像150でなくても高い一致度が得られるためである。
【0105】
第4実施形態のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0106】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、上記第1実施形態と同様に、希釈造影画像150からマップ画像51(部分マップ画像51B)を作成し、部分マップ画像51Bにデバイス固定画像41を重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像70を作成することによって、被検体T内に導入されたデバイス30と血管部分60との両方を、透視画像40中で明確かつ同時に確認することができる。
【0107】
また、第4実施形態では、上記のように、造影中に生成される希釈造影画像150において、デバイス30近傍における部分マップ画像51Bを作成し、造影終了後に生成されるデバイス固定画像41と、部分マップ画像51Bとを、デバイス位置に基づいて重畳させることにより、デバイスマップ重畳画像70を作成するように画像処理部14を構成する。この結果、デバイス位置に基づくことにより、造影中と造影終了後とに取得される一連の透視画像40(希釈造影画像150)を用いて、造影終了後に直ちにデバイスマップ重畳画像70を作成することができる。
【0108】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0109】
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、冠動脈(心血管)インターベンション治療に用いる画像処理装置10の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、冠動脈(心血管)インターベンション治療以外の用途に用いる放射線画像処理装置に適用されてもよい。血管部分とデバイスとの両方を同時に確認することが可能な本発明は、特に血管内IVR(インターベンショナルラジオロジー)治療に用いられる放射線画像処理装置に好適である。また、デバイス固定画像をマップ画像と重畳させることが可能な本発明は、心臓周辺の画像中で血管部分が動く部位の透視画像を扱う場合に好適である。
【0110】
また、上記第1〜第4実施形態では、デバイス30としてステント31を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、デバイスは、血管内に導入される治療器具であればステント以外のどのようなものでもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、放射線画像処理の一例として、X線を用いたX線画像の画像処理を行う画像処理装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、X線以外の放射線を用いた放射線画像の画像処理装置に適用してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、画像処理部の処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部の処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。