【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度から平成28年度、国立研究開発法人海洋研究開発機構 戦略的イノベーション創造プログラム 次世代海洋資源調査技術「AUV複数運用手法等の技術開発/AUV複数運用手法等の研究開発における洋上中継器(没水型複数管理用)に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機首下げモーメント形成部は、前記機首の下部側に、前記機首における機体中心線よりも下側の前面投影面積を機体中心線よりも上側の前面投影面積に比して大とする膨出部を備える構成とした
請求項1記載の半没型移動体。
【背景技術】
【0002】
海底や湖底や水中における種々の調査を行うための手段の1つとしては、自律航走を行う水中航走体(UUV:Unmanned Undersea Vehicle)を用いる手法がある。
【0003】
また、水中航走体を運用するときには、水面を航走する水上航走体(USV:Unmanned Surface Vehicle)を一緒に運用して、母船や地上に設けられる管制部と、水中航走体との間の通信を水上航走体で中継することが提案されている。
【0004】
この場合、水上航走体は、機体(船体)の水面上に位置する部分に管制部との無線通信用のアンテナを備え、機体の底部などの水面下に没する部分に、水中航走体との音響通信に用いる音響通信装置を備えた構成とされる。
【0005】
更に、水上航走体は、水中航走体の慣性航法装置に蓄積される誤差の修正を行うために用いることも提案されている。この場合、水中航走体は、水面上に位置する部分にGPSなどの全地球航法衛星システム(GNSS)用のアンテナを備え、且つ水面下に没する部分に音響測位装置を備えた構成とされる。
【0006】
ところで、水面に配置されている水上航走体は、波浪の影響を受けて動揺しやすい。そのため、水中航走体との音響通信や、水中航走体の音響測位に指向性を有する音波(超音波)を用いる場合は、水上航走体の動揺に起因して、音響通信の品質が低下したり、音響通信により送受信可能な情報量が低下したり、音響測位の精度が低下したりする。
【0007】
そこで、波浪の影響をできるだけ避けながら水面付近を航走可能な移動体としては、水面下数メートルの水中を航走する航走体に、水面上に突出するストラットを備える構成の半没型移動体が考えられている。
【0008】
この種の半没型移動体では、航走体に測深儀を備え、ストラットの上端側にアンテナを備える構成とすることができる(たとえば、特許文献1参照)。
【0009】
また、この種の半没型移動体としては、機体の前部の左右両側位置に水平方向に突出する可動翼を備える形式のものも従来提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、半没型移動体の第1実施形態を示す概略側面図である。
図2は、本実施形態の半没型移動体における航走体の機首を拡大して示すもので、
図2(a)は切断側面図、
図2(b)は
図2(a)のA−A方向矢視図である。
図3は、本実施形態における航走体の機体形状との比較例として、一般的に流線形状と称される機体形状を示す図である。
【0024】
本実施形態の半没型移動体は、
図1に符号1で示すもので、水面Wよりも下方を航走する航走体2と、航走体2の上側に、水面Wよりも上方に突出するよう設けられたストラット3とを備えた構成とされている。
【0025】
本実施形態では、ストラット3の上端側には、水面Wよりも上方に配置される基台4が設けられ、この基台4に、無線通信用やGNSS用などの各種のアンテナ5が設置されている。
【0026】
なお、本実施形態の半没型移動体1は、半没型移動体1を運用するときに航走体2を航走させる航走深度Dが予め設定されている。また、本実施形態の半没型移動体1は、半没型移動体1を運用するときにアンテナ5とその基台4を配置すべき水面Wからの高さHが予め設定されている。
【0027】
そのため、ストラット3は、前記航走深度Dと高さHとの和に対応する寸法で上下方向に延びる形状とされている。ストラット3の下端側は、航走体2の上側に取り付けられている。なお、ストラット3は、流体抵抗や造波抵抗を抑えるために、水平断面形状を流線形状としたり、回転可能なフェアリングを備える構成としたりするなど、半没型移動体のストラットとして従来提案されている構成を適宜採用してもよいことは勿論である。
【0028】
航走体2は、
図1に示すように、円筒状の胴体7と、胴体7の前側の機首(ノーズ部)8と、胴体7の後側の尾部9とからなる機体6を備えている。以下、胴体7に対し機首8が存在する側(
図1では左側)を前といい、胴体7に対し尾部9が存在する側(
図1では右側)を後という。
【0029】
機首8の下部には、機首下げモーメント形成部が設けられている。
【0030】
機首下げモーメント形成部は、航走体2が水中で前進航走するときに生じる機体6の前方からの水の相対的な流れ(以下、単に水の流れという)との相互作用により、機首8に下向きの力を作用させる形状を備えており、この機首8に作用させる下向きの力により、本実施形態の半没型移動体1に機首下げ方向の回転モーメントを与えるものである。
【0031】
本実施形態では、機首下げモーメント形成部は、
図1、
図2(a)(b)に示すように、前方からの水の流れの中で、機首8の下側にて境界層剥離を発生させる剥離流形成部10とされている。
【0032】
ここで、
図3を用いて、水中を航走する機体に一般的に採用される流体抵抗を低減させるための基本的な機体形状について概説する。以下、この
図3に側面図を示す機体Xaの形状を、基本機体形状(流線形モデル)Xという。
【0033】
水中を航走する際に機体Xaに生じる流体抵抗を低減するという観点から考えると、基本的な機体Xaの形状は、円筒状の胴体Xbの前側に、先細り形状の機首Xcを備え、胴体Xbの後ろ側には、緩やかな傾斜で次第に細くなる尾部Xdを備えることが好ましい。更に、機首Xcの先細り形状は、たとえば、機体中心線Oに沿う平面内での機首Xcの表面に対する接線が、胴体Xb側から機首Xcの前端側へ行くにしたがって、機体中心線Oに対する傾きが次第に大となるようにすることが好ましい。これにより、
図3に示した機体Xaの形状は、機体Xaの前方からの水の流れの中で、機体Xaの表面に沿って形成される境界層は剥離せず、よって、渦や乱流が生じないか、または、渦や乱流の発生が抑制される形状、いわゆる流線形状となる。なお、
図3に示した基本機体形状Xでは、機首Xcは、機体中心線Oに沿う平面を対称面として、機体中心線Oの上側と下側は対称形状となる。
【0034】
本実施形態における剥離流形成部10は、
図1にドットのハッチングを付して示すように、機首8に、機体中心線Oに沿う平面よりも下方に位置する下面側を、一点鎖線で示す基本機体形状Xにおける機首Xcよりも下方に突出するように膨らませた形状の膨出部10aを備えている。
【0035】
更に、剥離流形成部10は、膨出部10aの後縁に、上向きに、または、機体中心線Oの方向に屈曲する屈曲部10bを備えた構成とされている。この屈曲部10bの曲率および屈曲角度は、本実施形態の半没型移動体1に設定される運用速度で航走体2を航走させるときに生じる機体6の前方からの水の流れの中で、屈曲部10bに剥離流が形成されて境界層剥離が生じる曲率および屈曲角度に設定されている。なお、この境界層剥離が生じる屈曲部10bの曲率や屈曲角度は、数値計算、あるいは、模型などを用いた試験により求めるようにすればよい。
【0036】
膨出部10aの前側および左右両側は、
図2(a)(b)に示すように、機首8における膨出部10aの上方に位置する部分の機体表面に対して滑らかに繋がれている。これにより、剥離流形成部10は、屈曲部10bを除く個所では、機体6の表面に沿う水の流れを乱さない形状とされている。
【0037】
本実施形態の半没型移動体1は、以上の構成としてある剥離流形成部10を航走体2の機首8に備えているので、半没型移動体1に設定された運用速度で航走体2が水中を前進航走すると、
図1、
図2(a)に示すように、機体6の前方からの水の流れの中で剥離流形成部10の屈曲部10bで境界層剥離が生じる。よって、剥離流形成部10の後方では、水の流れの主流fが機体表面から剥離する。
【0038】
このように、剥離流形成部10で境界層剥離が生じると、剥離流形成部10の後側では、圧力低下が生じる。このため、水の流れの中で剥離流形成部10の膨出部10aに前面側から作用する圧力と、剥離流形成部10の後で低下した圧力との圧力差によって、機首8における機体中心線Oに沿う平面よりも下側には、圧力抵抗(粘性圧力抵抗)が生じるようになる。
【0039】
更に、本実施形態では、剥離流形成部10の膨出部10aを備えることに伴い、機首8における機体中心線Oに沿う平面よりも下側の前面投影面積が、基本機体形状Xに比して増加している。このため、機首8では、機体中心線Oに沿う平面よりも下側の流体抵抗が、基本機体形状Xに比して増加している。
【0040】
この圧力抵抗と流体抵抗は、いずれも、航走体2の機体中心線Oに沿う平面よりも下側に作用するため、航走体2が前記所定の運用速度で水中を前進航走する状態では、機首8に対して下向きの力が作用するようになり、本実施形態の半没型移動体1に対し、重心Gを通る左右軸を中心とする機首下げ方向の回転モーメントが発生する。
【0041】
そこで、本実施形態の半没型移動体1では、前記所定の航走深度Dおよび運用速度で航走体2を航走させるときに、ストラット3に生じる抵抗(流体抵抗、造波抵抗など)に起因して発生する機首上げ方向の回転モーメントと、剥離流形成部10で境界層剥離が生じることに起因して発生する機首下げ方向の回転モーメントとができるだけ相殺されるように、ストラット3の形状およびサイズと、航走体2の機首8に備える剥離流形成部10の形状およびサイズとが、関連付けて設定されている。
【0042】
更に、本実施形態では、
図1、
図2(a)(b)に示すように、航走体2の機首8における剥離流形成部10の後側には、一点鎖線で示す基本機体形状Xにおける機首Xcの外形よりも機体中心線O側に窪む凹部が設けられ、この凹部が機器設置領域11とされている。この機器設置領域11には、音響測位装置12や音響通信機13が設けられている。
【0043】
この際、音響測位装置12および音響通信機13は、それぞれの突出部12a,13aが、剥離流形成部10の後方で機体表面から剥離する水の流れの主流fの内側に配置されている。これにより、剥離流形成部10の後方で機体表面から剥離した水の流れの主流fが、音響測位装置12および音響通信機13の突出部12a,13aにできるだけ当たらないようにして、突出部12a,13aによる流体抵抗の発生を抑制できるようにしてある。
【0044】
航走体2の尾部9の後端側には、上下両側の方向舵14a,14bと、左右両側の昇降舵15と、推進用のメインスラスタ16が設けられている。
【0045】
なお、尾部9の下側に設けられる方向舵14bは、機体6の最下端部よりも下方へ突出する量ができるだけ小さいか、あるいは、機体6の最下端部よりも下方へ突出しない形状とすることが好ましい。これは、本実施形態の半没型移動体1を地上や船上で台に載置して保管したり、搬送したりするときに、台の高さを低く抑えることができるためである。
【0046】
航走体2は、機体6の内部に浮力調整装置17を備えた構成とされている。これにより、本実施形態の半没型移動体1は、浮力調整装置17を用いて浮力を調整することにより、
図1に二点鎖線で示すように航走体2が水面Wに浮上した状態と、
図1に示すように航走体2が設定された航走深度Dに配置された状態との間で、浮上と沈降とを行うことができる。
【0047】
なお、
図1では、浮力調整装置17が航走体2の前部と後部の2個所に設けられた構成例を示したが、前記所定の浮上と沈降とを行うことができれば、浮力調整装置17の数は1あるいは3以上であってもよく、また、浮力調整装置17の配置は図示した以外の配置であってもよいことは勿論である。
【0048】
図1に示すように、航走体2は、機首8にサイドスラスタ18を備えた構成としてもよい。
【0049】
また、本実施形態の半没型移動体1は、前進時に抵抗を受けるストラット3を補強するために、ストラット3の上端側と、機体6におけるストラット3の設置個所よりも前方となる個所とを、ワイヤのような連結部材19で連結した構成としてもよい。
【0050】
更に、本実施形態の半没型移動体1は、航走体2の上側に図示しない吊部を備えて、クレーンなどの搬送装置で吊って搬送することができるようにしてある。
【0051】
本実施形態の半没型移動体1は、使用する現場まで船舶で曳航することが想定される場合は、
図1に示すように、航走体2の前端側に、図示しない曳航索を連結するための連結環20を備えた構成とすればよい。
【0052】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、航走体2における機首8の上部側に、膨らみ21を備えた構成例を示した。この膨らみ21は、音響測位装置12や音響通信機13に関連する機器や、その他、機首8の内部への設置が求められる機器を収納する空間を機首8の内部に確保するために設けられたものである。よって、機首8の内部に設置することが求められる機器の大きさや配置などに応じて、膨らみ21の大きさは、図示した寸法と異なっていてもよい。また、本実施形態の半没型移動体1は、機首8の上部側に膨らみを備えない構成としてもよい。この場合、機首8の上部側は、基本機体形状Xにおける機首Xc(
図3参照)の上部側と同様の形状とすればよい。
【0053】
以上の構成としてある本実施形態の半没型移動体1を使用する場合は、先ず、半没型移動体1を運用対象領域に配置する。この場合、本実施形態の半没型移動体1は、図示しない母船に搭載するか、あるいは、曳航索を介し曳航して運用対象領域まで移動させることが好ましい。しかし、本実施形態の半没型移動体1を運用対象領域まで移動させることができれば、任意の移動手法を採用してよいことは勿論である。
【0054】
次に、本実施形態の半没型移動体1は、運用対象領域にて、浮力調整装置17により浮力の調整を行って、航走体2を設定された航走深度Dに配置する。この際、本実施形態の半没型移動体1は、母船から搬送装置で吊って水面に投入された段階、あるいは、曳航されて運用対象領域に到着した段階では、
図1に二点鎖線で示したように航走体2が水面Wに配置されるように浮力を調整しておき、その状態で吊り索や曳航索を離脱させ、その後、浮力調整装置17で浮力を減じるように調整して、航走深度Dまで沈降させるようにすればよい。
【0055】
前記所定の航走深度Dに航走体2が配置されると、本実施形態の半没型移動体1は、メインスラスタ16を運転して、設定された運用速度での前進航走を開始する。
【0056】
本実施形態の半没型移動体1は、前記のように所定の運用速度での前進航走を行うと、ストラット3が流体抵抗や造波抵抗などの抵抗を受け、この抵抗に起因して、ストラット3から航走体2へ、重心Gを通る左右軸を中心として機首上げ方向の回転モーメントを発生させようとする力が作用する。
【0057】
この際、本実施形態の半没型移動体1では、航走体2の機首に設けられている剥離流形成部10で生じる圧力抵抗と流体抵抗が、重心Gを通る左右軸を中心として機首下げ方向の回転モーメントを発生させようとする力として航走体2に作用する。
【0058】
したがって、本実施形態の半没型移動体1では、ストラット3が受ける抵抗に起因して発生する機首上げ方向の回転モーメントを発生させようとする力を、剥離流形成部10で発生する機首下げ方向の回転モーメントを発生させようとする力により相殺、あるいは、低減させることができる。これにより、本実施形態の半没型移動体1は、ストラット3が受ける抵抗に起因する機首上げ方向の回転モーメントの発生を抑制することができる。
【0059】
したがって、本実施形態の半没型移動体1は、前進航走時に、機首上げ方向の回転モーメントの抑制を目的とする昇降舵15による当て舵を不要にすることができる。また、本実施形態の半没型移動体1は、航走体2の機首8を剥離流形成部10を備える形状とするのみであるため、非特許文献1に示されたような可動翼を航走体2の前部に備える必要はない。
【0060】
[第2実施形態]
図4は半没型移動体の第2実施形態を示すもので、
図4(a)は概略側面図、
図4(b)は、
図4(a)におけるB−B断面位置における前面投影形状を示す図、
図4(c)は、
図4(a)におけるC−C断面位置における前面投影形状を示す図、
図4(d)は、
図4(a)におけるD−D断面位置における前面投影形状を示す図である。
【0061】
なお、
図4(a)(b)(c)(d)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
本実施形態の半没型移動体は、
図4に符号1aで示すもので、
図1に示した第1実施形態の半没型移動体1と同様の構成において、機首下げモーメント形成部として、剥離流形成部10を備える構成に代えて、機首8の下部側に、下方に膨らむ膨出部22を備えた構成としたものである。
【0063】
この膨出部22は、
図4(b)(c)(d)に示すように、機首8の前面投影形状について、斜線のハッチングを付して示す機体中心線Oよりも下側の面積を、ハッチングのない機体中心線Oよりも上側の面積よりも大となるようにして設けられている。
【0064】
なお、本実施形態では、航走体2における機首8の上部側に、第1実施形態と同様の膨らみ21を備えているが、この場合であっても、機首8の下部側に備える膨出部22は、機首8の上部側の膨らみ21よりも膨出する寸法を大として、機首8の前面投影形状について、機体中心線Oよりも下側の面積が、機体中心線Oよりも上側の面積よりも大となるようにすればよい。
【0065】
なお、膨らみ21の大きさは、図示した寸法と異なっていてもよく、また、機首8の上部側に膨らみを備えない構成としてもよいことは、第1実施形態と同様である。
【0066】
以上の構成としてある本実施形態の半没型移動体1aを使用する場合は、第1実施形態と同様に、運用対象領域にて、航走体2を設定された航走深度Dに配置した後、設定された運用速度での前進航走を開始させる。
【0067】
本実施形態の半没型移動体1aは、前記のように所定の運用速度での前進航走を行うと、ストラット3が流体抵抗や造波抵抗などの抵抗を受け、この抵抗に起因して、ストラット3から航走体2へ、重心Gを通る左右軸を中心として機首上げ方向の回転モーメントを発生させようとする力が作用する。
【0068】
この際、航走体2は、機首8における機体中心線Oよりも下側の前面投影面積が、機体中心線Oよりも上側の前面投影面積よりも大となっているので、機首8の下部側の膨出部22に沿って流れる水の速度が、機首8の上部側の膨らみ21に沿って流れる水の速度よりも速くなる。
【0069】
これにより、機首8の下方の圧力が、機首8の上方の圧力よりも低くなり、この機首8の上下の圧力差に応じて、機首8には、下向きの力が作用するようになる。この機首8に下向きに作用する力は、本実施形態の半没型移動体1aでは、重心Gを通る左右軸を中心として機首下げ方向の回転モーメントを発生させようとする力となる。
【0070】
したがって、本実施形態の半没型移動体1aでは、ストラット3が受ける抵抗に起因して発生する機首上げ方向の回転モーメントを発生させようとする力を、膨出部22で発生する機首下げ方向の回転モーメントを発生させようとする力により相殺、あるいは、低減させることができる。
【0071】
これにより、本実施形態の半没型移動体1aは、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
なお、本発明は前記各実施形態にのみ限定されるものではなく、航走体2とストラット3の寸法や寸法比、各構成部材の寸法や寸法比は、図示するための便宜上のものであり、実際の寸法を反映したものではない。
【0073】
航走体2について、機体6の胴体7は、完全な円筒状でなくてもよい。また、機体6の前後長や、胴体7の径などの機体6の各部の寸法や寸法比、および、機首8や剥離流形成部10、膨出部22などの各部曲面の形状、曲率、および、尾部9の傾斜角度、剥離流形成部10や膨出部22の機体後方に向かう角度等の各部の角度は、図示するための便宜上のものであり、実際の各部の寸法や寸法比、各部曲面の形状や曲率、各部の角度を反映したものではない。
【0074】
第1実施形態の半没型移動体1は、剥離流形成部10の後側に機器設置領域11を備えた構成としたが、剥離流形成部10の後側に機器設置領域は備えない構成としてもよい。この場合は、剥離流形成部10における屈曲部10bよりも後ろ側の面は、基本機体形状Xにおける胴体Xbに滑らかにつながる面とすればよい。
【0075】
第1実施形態にて、機器設置領域11に設置される機器として音響測位装置12と音響通信機13とを示したが、必要に応じて音響測位装置12と音響通信機13のいずれか一方のみを備えた構成としてもよいし、これら以外の別の機器を備えた構成としてもよい。
【0076】
第2実施形態における膨出部22は、機体6の外壁により形成してもよいし、また、図示しない音響測位装置や音響通信装置を覆うカバーによって形成する構成としてもよい。
【0077】
方向舵14a,14b、昇降舵15、メインスラスタ16は、図示した以外の形状、配置としてもよい。また、推進と上下左右方向への操舵を行うことができれば、操舵装置と推進装置は、図示した以外の構成としてもよい。
【0078】
サイドスラスタ18は備えない構成としてもよい。
【0079】
機首下げモーメント形成部は、機首8の下部側に設けられていて、航走体2が水中で前進航走するときに生じる水の流れとの相互作用により、機首8に下向きの力を作用させることができる形状を備えていればよい。
【0080】
本発明を発展させた例としては、航走体2の機首8における機体中心線Oよりも下方となる個所に、前方からの水の流れに対する流体抵抗を、機体中心線Oよりも上方となる個所に比して増加させる部分を、機体外面の粗面化や凹凸などにより形成した構成とすることが考えられる。この構成では、機首8における機体中心線Oよりも下側の流体抵抗が、機体中心線Oの上側よりも大となることで、航走体2に対して機首下げ方向の回転モーメントを発生させることが可能になる。
【0081】
本発明の半没型移動体1,1aは、ストラット3の上端側に、アンテナ5のほかに水面上に配置することが望まれる機器を取り付けた構成としてもよいし、アンテナ5に代えて他の物を取り付けた構成としてもよい。
【0082】
本発明の半没型移動体1,1aは、水面付近を航走させる必要があり、また、水面Wの上方に配置すべき機器を備えるものであれば、水中航走体と一緒に運用する以外の目的で使用されるものに適用してもよい。
【0083】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。