特許第6750451号(P6750451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6750451ブラシレスモータのステータ、ブラシレスモータ、及びこのブラシレスモータを用いたパワースライドドア装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750451
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ブラシレスモータのステータ、ブラシレスモータ、及びこのブラシレスモータを用いたパワースライドドア装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20200824BHJP
【FI】
   H02K3/50 A
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-206204(P2016-206204)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-68063(P2018-68063A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三輪 修靖
(72)【発明者】
【氏名】深谷 清浩
(72)【発明者】
【氏名】角谷 武光
(72)【発明者】
【氏名】安井 彰広
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−171708(JP,A)
【文献】 特開平7−177694(JP,A)
【文献】 特開平10−136632(JP,A)
【文献】 国際公開第1998/019384(WO,A1)
【文献】 特開2011−010398(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150503(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02448091(EP,A1)
【文献】 特開2014−158321(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0006321(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102014201488(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアに導線が巻回されることにより形成されるコイルと、
前記コイルの端部と電気的に接続する接続端子と、
電気絶縁性を有し、前記ステータコアにおける軸方向一方側の端部に取り付けられ、前記接続端子を固定する端子固定台と、
を備え、
前記接続端子は、前記端子固定台に固定される固定部と、前記固定部から前記ステータコアよりも径方向外側に延びる外方突出部と、軸方向において前記外方突出部と重なり、かつ、前記ステータコアよりも前記径方向外側に位置する接合部と、を有し、
前記接合部は、前記径方向外側に向けて開口する
ブラシレスモータのステータ。
【請求項2】
前記接続端子は、平板状の板材からなり、前記外方突出部から板厚方向に屈曲するとともに径方向内側に折り返す第1屈曲部と、前記第1屈曲部から前記径方向内側に延びる折返部と、前記折返部から前記板厚方向に屈曲するとともに前記径方向外側に折り返す第2屈曲部と、をさらに有し、
前記接合部は、前記第2屈曲部から前記径方向外側に延びる部分を有し、前記折返部との間で前記コイルの端部が接合される
請求項1に記載のブラシレスモータのステータ。
【請求項3】
前記折返部は、前記軸方向において前記外方突出部と接触している
請求項2に記載のブラシレスモータのステータ。
【請求項4】
前記接合部は、前記外方突出部よりも軸方向他方側に位置している
請求項1〜3のいずれか一項に記載のブラシレスモータのステータ。
【請求項5】
前記端子固定台は、前記ステータコアと前記コイルとを電気的に絶縁するインシュレータであり、
前記径方向から見て前記インシュレータ又は前記ステータコアと前記接合部とが重なるように前記接合部が位置している
請求項1〜4のいずれか一項に記載のブラシレスモータのステータ。
【請求項6】
前記端子固定台は、前記ステータコアと前記コイルとを電気的に絶縁し、前記接続端子とインサート成型されたインシュレータであり、
前記固定部は、前記インシュレータに埋設され、前記径方向外側に延びる部分を有する
請求項1〜5のいずれか一項に記載のブラシレスモータのステータ。
【請求項7】
前記ステータの前記軸方向一方側には回路基板が配置され、
前記接続端子は、前記回路基板と電気的に接続する基板接続部を備え、
前記基板接続部は、前記固定部から前記軸方向に延びるとともに、前記端子固定台から前記軸方向に突出し、
前記基板接続部には切欠き部が形成されている
請求項1〜6のいずれか一項に記載のブラシレスモータのステータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のブラシレスモータのステータと、
前記ステータの前記軸方向一方側に配置された回路基板と、を備えるブラシレスモータ。
【請求項9】
請求項8のブラシレスモータを車両のスライドドアを開閉作動させる駆動源として備え、
前記ブラシレスモータの前記軸方向は、前記車両の車幅方向に沿って配置されている
パワースライドドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータのステータ、ブラシレスモータ、及びこのブラシレスモータを用いたパワースライドドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からステータのインシュレータに駆動コイルの巻き始めの端部又は巻き終わりの端部と電気的に接続される接続端子が設けられたブラシレスモータが知られている。例えば特許文献1では、ステータの軸方向一方側に隙間を介して回路基板がステータと軸方向に対向するように配置され、接続端子がインシュレータと回路基板との軸方向の間に設けられたブラシレスモータ(電動機)が開示されている。接続端子は、回路基板と接続する基板接続部と、基板接続部よりも周方向一方側に延びるアーム部と、アーム部の先端部に設けられ、駆動コイルの端部とを接合する接合部とを有する。接合部は、ステータコアの径方向外縁よりも径方向内側に位置している。このため、接合部は、軸方向においてステータコアと回路基板との間に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−128118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のブラシレスモータでは、インシュレータと回路基板との軸方向の間に接合部が位置するためのスペースが必要となるため、軸方向において回路基板をステータに接近させることが難しい。このため、ブラシレスモータの軸方向の小型化において改善の余地がある。なお、このような問題は、インシュレータとは個別に形成された端子台に接続端子が固定される構成においても発生する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、ブラシレスモータを軸方向に小型化することができるブラシレスモータのステータ、ブラシレスモータ、及びこのブラシレスモータを用いたパワースライドドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するブラシレスモータのステータは、ステータコアと、前記ステータコアに導線が巻回されることにより形成されるコイルと、前記コイルの端部と電気的に接続する接続端子と、電気絶縁性を有し、前記ステータコアにおける軸方向一方側の端部に取り付けられ、前記接続端子を固定する端子固定台と、を備え、前記接続端子は、前記端子固定台に固定される固定部と、前記固定部から前記ステータコアよりも径方向外側に延びる外方突出部と、軸方向において前記外方突出部と重なり、かつ、前記ステータコアよりも前記径方向外側に位置する接合部と、を有し、前記接合部は、前記径方向外側に向けて開口する。
【0007】
上記構成によれば、接続端子の接合部がステータコアよりも径方向外側に位置することにより、ステータの軸方向一方側に回路基板が配置されたとしても、ステータコアと回路基板との軸方向の間に接合部が位置することが回避される。したがって、軸方向において回路基板をステータに接近させることができるため、ブラシレスモータを軸方向に小型化することができる。加えて、外方突出部と接合部とが軸方向から見て互いに重なるため、接続端子においてステータコアから径方向外側に突出した部分の周方向における省スペース化を図ることができる。加えて、接合部が径方向外側に向けて開口するため、すなわち接合部が径方向内側に開口しないため、コイルの端部が接合部に接合されるときにコイルが径方向内側に移動することが制限される。したがって、コイルの端部を接合部に引っ掛けることによりコイルの端部に張力が加えられるため、コイルの端部の緩みを容易に抑制することができる。したがって、コイルの端部を接合部に容易に接合することができる。なお、コイルの端部は、コイルを形成する導線におけるティースへの巻き始めの端部又は巻き終わりの端部である。
【0008】
上記ブラシレスモータのステータにおいて、前記接続端子は、平板状の板材からなり、前記外方突出部から板厚方向に屈曲するとともに径方向内側に折り返す第1屈曲部と、前記第1屈曲部から前記径方向内側に延びる折返部と、前記折返部から前記板厚方向に屈曲するとともに前記径方向外側に折り返す第2屈曲部と、をさらに有し、前記接合部は、前記第2屈曲部から前記径方向外側に延びる部分を有し、前記折返部との間で前記コイルの端部が接合されることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、接続端子の板厚方向に沿う面と直交する面で接合部が形成されることにより、コイルの端部と接合部との接触面積を大きく取ることができる。したがって、コイルの端部と接合部との電気的な接続の信頼性を高めることができる。加えて、接合部における径方向外側及び周方向の両端部が開口するため、周方向に延びたコイルの端部を接合部の径方向外側から挿入しやすくなる。したがって、接合部にコイルの端部をより容易に接合することができる。
【0010】
上記ブラシレスモータのステータにおいて、前記折返部は、前記軸方向において前記外方突出部と接触していることが好ましい。
上記構成によれば、接続端子においてステータコアから径方向外側に突出した部分を軸方向に小型化することができる。加えて、接続端子においてステータコアよりも径方向外側に突出した部分の強度を高めることができる。
【0011】
上記ブラシレスモータのステータにおいて、前記接合部は、前記外方突出部よりも軸方向他方側に位置していることが好ましい。
上記構成によれば、接合部がコイルの軸方向一方側の端部及び端子固定台の軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側に位置するため、ステータを軸方向に小型化することができる。
【0012】
上記ブラシレスモータのステータにおいて、前記端子固定台は、前記ステータコアと前記コイルとを電気的に絶縁するインシュレータであり、前記径方向から見て前記インシュレータ又は前記ステータコアと前記接合部とが重なるように前記接合部が位置していることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、接合部がコイルの軸方向一方側の端部及びインシュレータの軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側に位置するため、ステータを軸方向に小型化することができる。
【0014】
上記ブラシレスモータのステータにおいて、前記端子固定台は、前記ステータコアと前記コイルとを電気的に絶縁し、前記接続端子とインサート成型されたインシュレータであり、前記固定部は、前記インシュレータに埋設され、前記径方向外側に延びる部分を有することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、固定部が径方向外側に延びる部分を有することにより、固定部がインシュレータに軸方向に圧入される構造に比べ、固定部がインシュレータに埋設される軸方向の長さを短くしてもインシュレータに固定部を固定することができる。
【0016】
上記ブラシレスモータのステータにおいて、前記ステータの前記軸方向一方側には回路基板が配置され、前記接続端子は、前記回路基板と電気的に接続する基板接続部を備え、前記基板接続部は、前記固定部から前記軸方向に延びるとともに、前記端子固定台から前記軸方向に突出し、前記基板接続部には切欠き部が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、ステータに熱衝撃や振動が加えられたときに基板接続部が切欠き部を介して軸方向に変形することにより、基板接続部と回路基板との接続部分に力が加えられにくくなる。このため、基板接続部と回路基板との電気的な接続の信頼性を高めることができる。
【0018】
上記課題を解決するブラシレスモータは、上記ブラシレスモータのステータと、前記ステータの前記軸方向の一方側に配置された回路基板と、を備える。
上記構成によれば、ステータと回路基板との軸方向の隙間を小さくすることができるため、ブラシレスモータを軸方向に小型化することができる。
【0019】
上記課題を解決するパワースライドドア装置は、上記ブラシレスモータを車両のスライドドアを開閉作動させる駆動源として備え、前記ブラシレスモータの前記軸方向は、前記車両の車幅方向に沿って配置されている。
【0020】
上記構成によれば、ブラシレスモータを軸方向に小型化することができるため、ブラシレスモータの軸方向が車幅方向に沿うように配置することにより、車幅方向におけるスライドドアの厚さを薄くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
上記ブラシレスモータのステータ、ブラシレスモータ、及びこのブラシレスモータを用いたパワースライドドア装置によれば、ブラシレスモータを軸方向に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】パワースライドドア装置の概略構成図。
図2】電動アクチュエータを軸方向に沿う平面で切った断面図。
図3】ブラシレスモータのステータの平面図。
図4図3のステータの底面図。
図5】(a)図3のZ5−Z5線の断面図、(b)第1接続端子のヒュージング後のZ5−Z5線の断面図。
図6】(a)第1接続端子の折り曲げ前の斜視図、(b)第1接続端子の斜視図。
図7】ステータの第1インシュレータと第1接続端子とがインサート成型するときの金型の断面図。
図8】(a)図3のZ8−Z8線の断面図、(b)第2接続端子のヒュージング後のZ8−Z8線の断面図。
図9】(a)第2接続端子の折り曲げ前の斜視図、(b)第2接続端子の斜視図。
図10】ステータ及び回路基板の側面図。
図11】ステータの第1接続端子付近の斜視図。
図12】(a)変形例の第1接続端子及びステータの側面図、(b)変形例の第2接続端子及びステータの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図11を参照して、パワースライドドア装置の駆動源となるブラシレスモータの一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両に設けられたスライドドア1は、車両前後方向に移動することにより車両のボディ側面に設けられた開口部(図示略)を開閉できるように構成されている。具体的には、スライドドア1は、車両前方側に移動することにより、ボディの開口部を閉塞する閉状態となり、車両後方側に移動することにより、ボディの開口部を介して乗降可能な開状態となる。
【0024】
スライドドア1には、スライドドア1を開閉すべく操作されるハンドル装置2と、スライドドア1を拘束するための3つのロック機構3とが設けられている。ロック機構3は、スライドドア1を全閉位置で拘束するためのフロントロック3a及びリアロック3bと、スライドドア1を全開位置で拘束するための全開ロック3cとを備える。これら各ロック機構3a〜3cは、リモコン4から延びるワイヤ等の伝達部材を介して機械的にハンドル装置2と連結されている。
【0025】
ハンドル装置2に入力された操作力は、スライドドア1の外装面及び内装面に設けられた操作部(アウターハンドル及びインナーハンドル)2aの動作に基づいて、各ロック機構3a〜3cへと伝達される。そして、その操作力に基づいてスライドドア1の拘束が解除されることにより、全閉位置にあるスライドドア1の開方向への移動、又は全開位置にあるスライドドア1の閉方向への移動が許容される。
【0026】
また、車両には、ブラシレスモータ30を駆動源とする電動アクチュエータ20を有してスライドドア1を開閉動作させることが可能なパワースライドドア装置10が設けられている。
【0027】
ブラシレスモータ30は、制御装置11が供給する駆動電力に基づいて回転する。即ち、電動アクチュエータ20は、制御装置11が供給する駆動電力を通じて、その作動が制御されている。また電動アクチュエータ20は、ブラシレスモータ30の回転を減速して出力する減速機構21を備える。この構成によれば、減速機構21により減速されるブラシレスモータ30の回転がスライドドア1の駆動部(図示略)に伝達することにより、スライドドア1が開閉動作する。
【0028】
制御装置11には、スライドドア1の開閉位置を検出する作動位置センサ12が接続されている。また制御装置11には、ハンドル装置2や携帯機(リモコンキー)、或いは車室内等に設けられた開閉操作スイッチ13が操作されることにより、電動アクチュエータ20によるスライドドア1の作動を要求する作動要求信号が入力される。そして制御装置11は、作動要求信号及びスライドドア1の開閉位置に基づいて、スライドドア1を開閉動作又は停止すべく、電動アクチュエータ20の作動を制御する。
【0029】
次に、電動アクチュエータ20の構成について説明する。
図2に示すように、電動アクチュエータ20は、ブラシレスモータ30及び減速機構21を収容する扁平略箱状のハウジング22を備える。ハウジング22は、第1ハウジング部材23と第2ハウジング部材24とを組み付けることにより形成される。ハウジング22内には、ブラシレスモータ30を制御する回路基板25が収容されている。
【0030】
ブラシレスモータ30は、第1ハウジング部材23に固定されたステータ40と、ステータ40の内側において回転軸31と一体に回転するロータ50とを備えるインナーロータ型のモータである。なお、以降の説明において、「軸方向」は回転軸31が延びる方向に沿う方向を示し、「径方向」は軸方向に直交する方向を示し、「周方向」は回転軸31の中心軸の周り方向に沿う方向を示す。
【0031】
回転軸31は、ハウジング22に対して回転可能に支持されている。回転軸31は、車幅方向に沿って延びている。即ちブラシレスモータ30は、軸方向が車幅方向に沿うように車両のボディに設けられている。減速機構21は、回転軸31を入力部として、円板状をなす1又は複数のギヤを噛み合わせることにより構成されている。減速機構21には、第2ハウジング部材24に形成された貫通孔24aを介してハウジング22の外部に突出した出力軸26が設けられている。出力軸26は、スライドドア1(図1参照)の駆動部に直接的又は間接的に接続される。なお、ブラシレスモータ30は、その軸方向が車両の上下方向に沿って配置されるように車両のボディに設けられてもよい。
【0032】
ロータ50は、回転軸31に固定されたロータコア51を備える。ロータコア51は、円板状に形成された磁性鋼板を軸方向に積層されてなる。ロータコア51の外周面には、リング状の永久磁石52が接着剤により固定されている。永久磁石52には、周方向においてN極及びS極合わせて8極の磁極が形成されている。なお、永久磁石52の磁極数は任意の設定事項である。
【0033】
ステータ40は、磁性鋼板を軸方向に積層することにより構成されるステータコア41と、ロータ50を回転させるべく三相の駆動電力が供給される複数の駆動コイル42とを備える。本実施形態の複数の駆動コイル42は、スター結線されている。軸方向においてステータ40の一方側には、複数の駆動コイル42と軸方向に隙間を空けて回路基板25が配置されている。回路基板25は、軸方向においてステータ40と対向し、ステータ40を軸方向一方側から覆うように配置されている。回路基板25は、径方向に沿う平面に沿った主面を有する平板状に形成された基板本体に複数の電子部品が実装されて構成されている。回路基板25は、ステータ40及び第1ハウジング部材23の支持部23a(図11参照)により支持されている。なお、以降の説明において、軸方向においてステータ40に対して回路基板25が位置する側を「軸方向一方側」とし、軸方向においてステータ40に対して回路基板25が位置する側とは反対側を「軸方向他方側」とする。
【0034】
図3に示すように、ステータコア41は、ロータ50を囲う略円環状のコアバック43と、コアバック43から径方向内側に向けて放射状に延びる複数のティース44とを備える。複数のティース44の径方向内側の端部は、永久磁石52(図2参照)の外周面と対向している。なお、ティース44の本数は任意の設定事項である。
【0035】
複数のティース44は、ティース44に導線が集中巻きされることにより駆動コイル42が形成された第1ティース44Aと、ティース44に駆動コイル42が形成されない第2ティース44Bとを備える。第1ティース44A及び第2ティース44Bは、周方向に交互に配置されている。これにより、第1ティース44Aの内周面と対向する永久磁石52のN極及びS極の一方、第1ティース44A、コアバック43、第1ティース44Aと隣り合う第2ティース44B、及びこの第2ティース44Bの内周面と対向する永久磁石52のN極及びS極の他方を磁束が流れる磁気回路が形成される。
【0036】
第2ティース44Bにおける径方向外側の部分には、第2ティース44Bを軸方向に貫通する貫通孔45が形成されている。貫通孔45は、第1ハウジング部材23(図2参照)にステータ40を設置するときの第1ハウジング部材23に対するステータ40の位置決めとして用いることができる。また、ねじ(図示略)が貫通孔45に挿入されて第1ハウジング部材23にねじ込まれることにより、ステータ40を第1ハウジング部材23に固定することもできる。このようにステータコア41内にステータ40を第1ハウジング部材23に固定する構造が設けられるため、ステータコア41の径方向外側にステータ40を第1ハウジング部材23に固定する構造が設けられる場合に比べ、ブラシレスモータ30を径方向に小型化することができる。
【0037】
ステータコア41には、電気的絶縁性を有する樹脂製のインシュレータ60が装着されている。インシュレータ60は、ステータコア41と駆動コイル42との間に介在することにより、ステータコア41と駆動コイル42とを電気的に絶縁している。インシュレータ60は、コアバック43の軸方向の両端面及び径方向内側面、及び第1ティース44Aの軸方向の両端面及び周方向側面を覆っている。図2に示すように、インシュレータ60は、軸方向に分割された第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62を備える。第1インシュレータ61はステータコア41の軸方向一方側に直接的に取り付けられ、第2インシュレータ62はステータコア41の軸方向他方側に直接的に取り付けられている。なお、第1インシュレータ61は「端子固定台」の一例である。
【0038】
図3及び図4に示すように、各相の駆動コイル42のそれぞれは、周方向において180°離れた第1ティース44Aに形成された2個の駆動コイル42から構成されている。各相の駆動コイル42は、1本の導線からなる。図4に示すように、第2インシュレータ62には、各相の駆動コイル42の一方の駆動コイル42から他方の駆動コイル42に連続する導線が引き回されている。これにより、図3に示すように、各相の駆動コイル42は、駆動電力が供給されるために回路基板25と電気的に接続する第1端部42aと、中性点を形成する第2端部42bとを有する。第1端部42a及び第2端部42bは、ステータ40の中心Cに対して互いに反対側となるように集められている。なお、第1端部42aは各相の駆動コイル42の巻き始めの端部及び巻き終わりの端部の一方であり、第2端部42bは各相の駆動コイル42の巻き始めの端部及び巻き終わりの端部の他方である。
【0039】
第1インシュレータ61には、3相の駆動コイル42のそれぞれと回路基板25とを電気的に接続するための3つの第1接続端子70と、各相の駆動コイル42の中性点を構成するための1つの第2接続端子80とが設けられている。第1インシュレータ61、3つの第1接続端子70、及び第2接続端子80は、インサート成型されている。図3及び図4に示すとおり、3つの第1接続端子70と第2接続端子80とがステータ40の中心Cに対して互いに反対側となるように配置されている。このように、駆動コイル42の第1端部42aは、ステータ40の中心Cに対して3つの第1接続端子70側に位置し、駆動コイル42の第2端部42bは、ステータ40の中心Cに対して第2接続端子80側に位置している。
【0040】
3つの第1接続端子70は、1つの第1ティース44Aの周方向の両側に隣り合う第2ティース44Bの周方向の間によって規定される範囲内に配置されている。詳細には、周方向の中央の第1接続端子70は、周方向において1つの第1ティース44Aと同じ位置に配置され、周方向の両側の第1接続端子70は、1つの第1ティース44Aに隣り合う第2ティース44Bにおける周方向の第1ティース44A寄りに配置されている。
【0041】
第1インシュレータ61において周方向の中央の第1接続端子70が位置する部分と周方向に隣り合う部分の一方側には、径方向に延びる引き出し溝61a(図11参照)が形成されている。引き出し溝61aには、上記1つの第1ティース44Aに形成された駆動コイル42の第1端部42aが収容されている。第1端部42aは、引き出し溝61aを介して第1インシュレータ61よりも径方向外側に引き出されている。
【0042】
図6(a)に示すように、第1接続端子70は、金属板から直線状の板材として打ち抜かれた母材71を板厚方向に折り曲げることにより形成される。図5及び図6(b)に示すように、第1接続端子70は、固定部72、外方突出部73、第1屈曲部74、折返部75、第2屈曲部76、接合部77、及び基板接続部78を含んで構成されている。
【0043】
固定部72は、第1インシュレータ61に固定される部分である。固定部72は、第1部分72a及び第2部分72bを有するL字状に形成されている。第1部分72aは、第1インシュレータ61に第1接続端子70が固定された状態において径方向に延びる部分である。第2部分72bは、第1インシュレータ61に第1接続端子70が固定された状態において軸方向一方側(ステータ40に対して図2の回路基板25が配置される側)に延びる部分である。外方突出部73は、固定部72における第1部分72aの径方向外側の端部から径方向外側に向けて延びている。外方突出部73は、第1インシュレータ61に第1接続端子70が固定された状態において第1インシュレータ61から径方向外側に突出し、ステータコア41よりも径方向外側に突出している。第1屈曲部74は、外方突出部73の径方向外側の端部から軸方向他方側かつ径方向内側に向けて180°に亘って折り曲げられている。折返部75は、第1屈曲部74から径方向内側に向けて延びている。折返部75は、軸方向において外方突出部73と接触している。第2屈曲部76は、折返部75の径方向内側の端部から軸方向他方側かつ径方向外側に向けて略180°に亘って折り曲げられている。接合部77は、第2屈曲部76から径方向外側に向けて延びる部分を含み、折返部75との間で駆動コイル42の第1端部42aが接合される部分である。接合部77は、軸方向において外方突出部73と重なっている。接合部77は、径方向外側に向けて開口している。また接合部77は、周方向両側も開口している。
【0044】
基板接続部78は、固定部72における第2部分72bの軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて延びることにより、第1インシュレータ61から軸方向一方側に突出した部分である。基板接続部78は、回路基板25(図2参照)に挿入されて半田付けにより回路基板25と機械的及び電気的に接続される。基板接続部78は、基部78a、接続部78b、及び切欠き部78cを含んで構成されている。基部78aは、基板接続部78における固定部72側(軸方向他方側)の部分である。接続部78bは、基部78aの幅よりも狭い幅を有し、基部78aの軸方向一方側の端部から軸方向一方側に延びている。切欠き部78cは、基部78aの軸方向一方側の端部に形成されている。
【0045】
駆動コイル42の第1端部42aは、次のように接合部77に接合される。即ち、図5(a)に示すように、巻線機の巻線ノズル(図示略)によって、駆動コイル42の第1端部42aがステータコア41よりも径方向外側に引き出された後、径方向内側に移動することにより径方向外側から第1接続端子70の接合部77内に挿入される。第1端部42aは、接合部77内において径方向内側に押し付けられた状態が維持される。このため、第1端部42aの張力が低下することによる第1端部42aの緩みが発生することが抑制される。
【0046】
次に、ヒュージングにより接合部77における径方向外側に向けて開口する開口部が閉じられる。詳細には、図5(b)に示すように、ヒュージング装置Fの第1溶接電極F1が外方突出部73の軸方向一方側の面に接触し、第2溶接電極F2が接合部77の軸方向他方側の端面に接触かつ軸方向一方側に加圧された状態で第1溶接電極F1から第2溶接電極F2に向けて電流が流れる。このとき、接合部77が加熱され、かつ軸方向一方側に加圧されるため、接合部77が軟化するとともに接合部77の径方向外側に向けて開口する開口部が閉じられる。なお、接合部77及び駆動コイル42の第1端部42aの接合方法は、例えば接合部77及び第1端部42aを互いに溶かして接合する溶融溶接や、接合部77や第1端部42aよりも融点の低い合金(ろう)を溶かして接合部77及び第1端部42aを接合するろう付けのようにヒュージング以外の方法であってもよい。
【0047】
図7に示すように、第1接続端子70は、第1インシュレータ61とインサート成型されるとき、金型Mの見切り部分M1に収容されるように配置されている。図7では図示していないが、他の2個の第1接続端子70についても同様に、金型Mの見切り部分M1に収容されるように配置されている。
【0048】
図9(a)に示すように、第2接続端子80は、金属板から直線状の板材として打ち抜かれた母材81を板厚方向に折り曲げることにより形成される。図8及び図9(b)に示すように、第2接続端子80は、固定部82、外方突出部83、第1屈曲部84、折返部85、第2屈曲部86、及び接合部87を含んで構成されている。
【0049】
固定部82は、第1インシュレータ61に固定される部分であり、径方向に延びる平板状に形成されている。固定部82には、第1インシュレータ61とのインサート成型時において、金型Mの位置決め部材(図示略)が挿入するための貫通孔82aが設けられている。外方突出部83は、固定部82の径方向外側の端部から径方向外側に向けて延びている。外方突出部83は、第1インシュレータ61から径方向外側に突出し、ステータコア41よりも径方向外側に突出している。第1屈曲部84、折返部85、第2屈曲部86、及び接合部87は、第1接続端子70の第1屈曲部74、折返部75、第2屈曲部76、及び接合部77と同様の構成である。
【0050】
図8(a)に示すように、第2接続端子80の接合部87への駆動コイル42の第2端部42bの挿入方法は、第2端部42bが3本の導線であること以外は、第1接続端子70の接合部77への駆動コイル42の第1端部42aの挿入方法と同様である。また図8(b)に示すように、第2接続端子80のヒュージング方法は、第1接続端子70のヒュージング方法と同様である。なお、第2接続端子80がヒュージングされるとき、第2接続端子80の熱により第2接続端子80周囲の第1インシュレータ61が溶融することにより、貫通孔82aが第1インシュレータ61によって埋められる。
【0051】
図10に示すように、ステータ40の軸方向一方側には、各駆動コイル42と軸方向に僅かな隙間を介して回路基板25が配置されている。各接合部77及び接合部87は、ステータ40を径方向から見たときに、ステータコア41の軸方向一方側の端部と重なるように配置されている。即ち各接合部77及び接合部87は、ステータ40を径方向から見たときに、第1インシュレータ61におけるステータコア41を軸方向一方側からカバーする部分よりも軸方向他方側に配置されている。加えて、上述したように、各接合部77及び接合部87はステータコア41及び第1インシュレータ61よりも径方向外側に位置している。このように、各接合部77及び接合部87は、軸方向において第1インシュレータ61と回路基板25との間のスペースに配置されていないため、ステータ40と回路基板25との軸方向の間の距離を小さくすることができる。
【0052】
図11を参照して、本実施形態の作用について説明する。
パワースライドドア装置10(図1参照)は、車両のボディの両側部のスライドドア1に設けられる場合がある。この場合、電動アクチュエータ20(図2参照)は、鏡写しの構造となる。このため、電動アクチュエータ20のハウジング22(図2参照)は、車両のボディの各側部において鏡写しの形状となる。即ち両側部のスライドドア1におけるハウジング22の形状が互いに異なるため、両側部のスライドドア1におけるハウジング22を共通部品とすることができない。一方、ハウジング22に収容されるブラシレスモータ30のロータ50及びステータ40を共通部品とすることは、電動アクチュエータ20のコスト低減のために好ましい。
【0053】
ところで、図11に示すとおり、第1ハウジング部材23の支持部23aは、回路基板25の隅を支持している。支持部23aと回路基板25とは、ねじ(図示略)によって固定される。これにより、回路基板25の微振動が抑制されるため、各第1接続端子70の基板接続部78と回路基板25との半田部分に力が加えられることが抑制される。
【0054】
支持部23aは、電動アクチュエータ20のスペースの制約上、中央の第1接続端子70と、周方向一方側(紙面右手前側)の第1接続端子70との周方向の間に位置している。鏡写しの構造となる第1ハウジング部材23では、図示はしないが、支持部23aの位置が異なり、中央の第1接続端子70と、周方向他方側(紙面左奥側)の第1接続端子70との周方向の間に位置することになる。
【0055】
さらに、電動アクチュエータ20のスペースの制約上、3つの第1接続端子70が配置される周方向のスペースが限られている。このため、周方向において限られたスペースで、中央の第1接続端子70と、周方向一方側(紙面右手前側)の第1接続端子70との周方向の間のスペースと、中央の第1接続端子70と、周方向他方側(紙面左奥側)の第1接続端子70との周方向の間のスペースとを確保する必要がある。
【0056】
そこで、本実施形態では、各第1接続端子70は、その板厚方向に折り曲げられることにより接合部77が形成されている。これにより、外方突出部73と接合部77とが軸方向から見て互いに重なるため、外方突出部の周方向の位置と接合部の周方向の位置とが異なる構成に比べ、第1接続端子70においてステータコア41よりも径方向外側に突出した部分の周方向における省スペース化を図ることができる。これにより、隣り合う2つの第1接続端子70の周方向の間のスペースを大きく取ることができ、電動アクチュエータが鏡写しの構造により両スライドドアにおいて第1ハウジング部材23の支持部23aの位置が異なっても、共通のステータ40を用いることができる。したがって、パワースライドドア装置10(図1参照)のコストを低減することができる。
【0057】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1接続端子70の接合部77がステータコア41よりも径方向外側に位置しているため、ステータコア41と回路基板25との軸方向の間に接合部77が位置することが回避される。このため、回路基板25をステータ40に接近させることができるため、ブラシレスモータ30を軸方向に小型化することができる。
【0058】
加えて、接合部77が径方向外側に開口しているため、即ち接合部77が径方向内側に開口していないため、駆動コイル42の第1端部42aが接合部77の径方向内側の部分に引っ掛かることにより第1端部42aに張力が加えられる。これにより、第1端部42aの緩みを容易に抑制することができる。したがって、第1端部42aを接合部77に容易に接合することができる。なお、第2接続端子80の接合部87と第1接続端子70の接合部77とが同様の構成であるため、第2接続端子80の接合部87についても同様の効果が得られる。
【0059】
(2)第1接続端子70は、平板状の板材となる母材71を板厚方向に折り曲げることにより形成されている。このため、接合部77は、母材71の板厚方向に沿う面とは直交する面で形成されるため、駆動コイル42の第1端部42aとの接触面積を大きく取ることができる。したがって、第1端部42aと接合部77との電気的な接続の信頼性を高めることができる。
【0060】
また、接合部77は、径方向外側及び周方向両側に開口するため、図5(a)に示すように、駆動コイル42の第1端部42aを接合部77の径方向外側から挿入しやすくなる。したがって、接合部77に第1端部42aをより容易に接合することができる。
【0061】
また、母材71が直線状の平板となるため、金属板に対する母材71の取り数を多くすることができる。その結果、歩留まりを高めることができる。なお、第2接続端子80と第1接続端子70とが同様の構成であるため、第2接続端子80についても同様の効果が得られる。
【0062】
(3)第1接続端子70の折返部75が軸方向において外方突出部73と接触していることにより、第1接続端子70においてステータコア41よりも径方向外側に突出した部分を軸方向に小型化することができる。したがって、電動アクチュエータ20内におけるステータ40の配置スペースを小さくすることができる。加えて、第1接続端子70においてステータコア41よりも径方向外側に突出した部分の強度を高めることができる。したがって、接合部77及び駆動コイル42の第1端部42aのヒュージングのときに第1溶接電極F1(図5(b)参照)によって軸方向一方側に加圧されたとしても第1接続端子70においてステータコア41よりも径方向外側の部分が軸方向一方側に変形することを抑制することができる。なお、第2接続端子80と第1接続端子70とがステータコア41に対して同様の配置構成であるため、第2接続端子80についても同様の効果が得られる。
【0063】
(4)第1接続端子70の接合部77が外方突出部73よりも軸方向他方側に位置していることにより、接合部77が駆動コイル42の軸方向一方側の端部及び第1インシュレータ61の軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側に位置する。したがって、ステータ40を軸方向に小型化することができる。なお、第2接続端子80と第1接続端子70とが同様の構成であるため、第2接続端子80についても同様の効果が得られる。
【0064】
(5)第1接続端子70の接合部77は、径方向から見て、ステータコア41と重なるように位置しているため、駆動コイル42の軸方向一方側の端部及び第1インシュレータ61の軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側に位置する。したがって、ステータ40を軸方向に小型化することができる。なお、第2接続端子80の接合部87と第1接続端子70の接合部77とがステータコア41に対して同様の配置構成であるため、第2接続端子80の接合部87についても同様の効果が得られる。
【0065】
(6)第1インシュレータ61に埋設された固定部72の第1部分72aが径方向外側に延びることにより、第1接続端子が第1インシュレータに軸方向に圧入される場合に比べ、固定部72が第1インシュレータ61に埋設される軸方向の長さを短くしても第1インシュレータ61に固定部72を固定することができる。なお、第2接続端子80の固定部82は、第1接続端子70の固定部72と同様に第1インシュレータ61に埋設されるため、第2接続端子80の固定部82についても同様の効果が得られる。
【0066】
(7)基板接続部78には、切欠き部78cが設けられていることにより、例えばステータ40に熱衝撃や振動が加えられたとき、切欠き部78cを介して基部78aと接続部78bとが軸方向に変位する。これにより、接続部78bと回路基板25との接続部分(半田部分)に力が加えられにくくなる。したがって、基板接続部78と回路基板25との電気的な接続の信頼性を高めることができる。
【0067】
また、図7に示すように、第1インシュレータ61及び第1接続端子70をインサート成型するための金型Mの見切り部分M1内に基板接続部78が収容可能となるように切欠き部78cが形成されている。これにより、基板接続部78と回路基板25との電気的な接続の信頼性を高めるとともに、第1インシュレータ61及び第1接続端子70をインサート成型することができる。
【0068】
(8)ブラシレスモータ30の軸方向が車両の車幅方向に沿って配置されている。ここで、ブラシレスモータ30は、軸方向において小型化されているため、車幅方向におけるスライドドア1の厚さを薄くすることができる。
【0069】
(9)外方突出部73が第1インシュレータ61の径方向の側面から突出している。このため、外方突出部73が第1インシュレータ61の軸方向の端面から突出する構造に比べ、第1接続端子70の形状を簡素化できる。また、外方突出部73が第1インシュレータ61の軸方向他方側の端面から突出する構造に比べ、第1インシュレータ61がステータコア41よりも径方向外側に突出することを抑制することができる。したがって、第1インシュレータ61と第1ハウジング部材23の支持部23aとの干渉を回避することができる。
【0070】
(10)第1インシュレータ61において周方向の中央の第1接続端子70と周方向に隣り合う部分には、駆動コイル42の第1端部42aが径方向外側に引き出される引き出し溝61aが形成されている。これにより、周方向の中央の第1接続端子70に接続される第1端部42aが周方向において第1接続端子70と隣り合うように引き出される。このため、支持部23aが配置されるスペースの減少を抑制することができる。
【0071】
また、周方向の両端部の第1接続端子70は、周方向において中央の第1接続端子70とは反対側から駆動コイル42の第1端部42aが引き回される。これにより、両端部の第1接続端子70に接続される第1端部42aが中央の第1接続端子70と、中央の第1接続端子70と隣り合う第1接続端子70との間に位置しなくなるため、第1ハウジング部材23の支持部23aが配置されるスペースの減少を抑制することができる。
【0072】
(11)3つの第1接続端子70が同じ形状であることにより、第1接続端子70の製造コストを低減することができる。したがって、ブラシレスモータ30の製造コストを低減することができる。
【0073】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、複数の永久磁石がロータコア51の外周面に固定される所謂セグメントマグネットであってもよい。また、永久磁石52は、ロータコア51を使用せず、回転軸31と樹脂を用いて一体成形してもよい。
【0074】
・上記実施形態において、ロータコア51においてロータコア51の外周面よりも径方向内側の部分に形成された磁石収容部に収容される埋込磁石構造であってもよい。
・上記実施形態において、第1インシュレータ61とは個別に形成された部材と第1接続端子70及び第2接続端子80とが一体成型されてもよい。例えば図12(a)に示すように、第1接続端子70は端子固定台90と一体成型される。また図12(b)に示すように、第2接続端子80は端子固定台91と一体成型される。端子固定台90,91は、第1インシュレータ61にねじや接着剤などにより固定される。これにより、端子固定台90,91は、ステータコア41の軸方向一方側の端部に間接的に取り付けられる。
【0075】
・上記実施形態において、3つの第1接続端子のうち1つまたは2つの第1接続端子が第1接続端子70とは異なる構造であってもよい。
・上記実施形態において、第1接続端子70の接合部77及び第2接続端子80の接合部87の軸方向の位置は、第1インシュレータ61の軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側の範囲内において任意の設定事項である。例えば接合部77及び接合部87は、ステータ40を径方向から見てステータコア41よりも軸方向一方側に位置し、第1インシュレータ61と径方向に重なるように位置してもよい。要するに、第1接続端子70の接合部77及び第2接続端子80の接合部87が第1インシュレータ61(ステータコア41)と回路基板25との軸方向の間のスペースに位置しなければよい。
【0076】
・上記実施形態において、ステータコア41がカーリングコアや分割コアであってもよい。
・上記実施形態において、全てのティース44に導線が巻回されてもよい。この場合、第2ティース44Bに代えて第1ティース44Aが設けられる。
【0077】
・上記実施形態において、複数のティース44に跨り導線が巻回される分布巻きにより駆動コイル42が形成されてもよい。
・上記実施形態において、3相の駆動コイル42に代えて、2相又は4相以上の駆動コイル42であってもよい。
【0078】
・上記実施形態において、パワースライドドア装置の駆動源へのブラシレスモータ30の適用に代えて、例えば、車両後部に設けられたバックドアやラゲッジドア、あるいはトランク蓋、又はパワーウィンドウの駆動源にブラシレスモータ30を適用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…スライドドア、10…パワースライドドア装置、25…回路基板、30…ブラシレスモータ、40…ステータ、41…ステータコア、42…駆動コイル(コイル)、60…インシュレータ(端子固定台)、70…第1接続端子(接続端子)、71…母材、72…固定部、73…外方突出部、74…第1屈曲部、75…折返部、76…第2屈曲部、77…接合部、78…基板接続部、78c…切欠き部、80…第2接続端子(接続端子)、81…母材、82…固定部、83…外方突出部、84…第1屈曲部、85…折返部、86…第2屈曲部、87…接合部、90…端子固定台、91…端子固定台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12