(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クランクシャフトの延びる方向からの側方視において、前記オイルシール固定部材の外縁部は、前記カバー部材の外縁部よりも内側に位置している、請求項1に記載の内燃機関。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
まず、
図1〜
図6を参照して、本発明の第1実施形態によるエンジン100の構成について説明する。なお、以下では、エンジン100におけるクランクシャフト12の延びる方向をX軸方向とし、水平面内でクランクシャフト12に直交する方向をY軸方向とし、シリンダ2aの延びる垂直方向をZ軸方向として説明を行う。
【0025】
(エンジンの構成)
本発明の第1実施形態による自動車用のエンジン100(内燃機関の一例)は、
図1に示すように、シリンダヘッド1、シリンダブロック2およびクランクケース3を含むエンジン本体10(内燃機関本体の一例)を備えている。エンジン本体10を構成するシリンダヘッド1、シリンダブロック2およびクランクケース3は、共に、アルミニウム合金製である。また、エンジン100は、エンジン本体10のX2方向側の側面部2bに組み付けられるタイミングチェーンカバー20(以降、TCC20と称する、カバー部材の一例)と、シリンダヘッド1の上側(Z1方向側)に組み付けられるヘッドカバー5とを備えている。TCC20は、樹脂製であり、タイミングチェーン4(タイミング部材の一例)を覆うように構成されている。
【0026】
また、エンジン100は、
図2に示すように、オイル(いわゆるエンジンオイル)の外部への漏れを抑制するための円環状のオイルシール40と、オイルシール40を固定するためのアルミニウム合金製のオイルシールリテーナ50(以降、リテーナ50と称する、オイルシール固定部材の一例)と、をさらに備えている。このリテーナ50は、エンジン本体10のX2方向側の側面部2bに組み付けられるとともに、TCC20にX2方向側(エンジン本体10とは反対側)から覆われている。
【0027】
図1に示すように、シリンダヘッド1の内部には、動弁系タイミング部材を構成するカムシャフト15およびバルブ機構(詳細は図示せず)などが配置されている。シリンダヘッド1の下方(Z2方向側)に接続されるシリンダブロック2の内部には、ピストン11がZ軸方向に往復動するシリンダ2aが形成されている。また、シリンダヘッド1には、シリンダブロック2に形成された複数(4つ)のシリンダ2aのそれぞれに吸気を導入する吸気装置(図示せず)が接続されている。
【0028】
また、シリンダブロック2とシリンダブロック2の下方(Z2方向側)に接続されるクランクケース3とによって、エンジン本体10の内底部にクランク室3aが形成されている。クランク室3aには、ピストン11およびコンロッド(図示せず)を介して回転可能に接続されたクランクシャフト12が配置されている。なお、
図1においては、クランクシャフト12を概略棒形状に図示しているが、実際には、クランクシャフト12は、各シリンダ2aの直下において回転軸が偏心されたクランクピンとこのクランクピンを挟み込むバランスウェイトとがクランクジャーナルに接続されて構成されている。
【0029】
また、クランクシャフト12のX2方向側には、オイルシール40(
図2参照)が固定されている。また、クランクシャフト12のX2方向側の端部(前端)には、図示しないオルタネータなどの補機を駆動させるためのダンパプーリ13が固定されている。このダンパプーリ13は、クランクシャフト12のねじり振動を低減しつつ、クランクシャフト12の回転駆動力を補機に伝達する機能を有する。また、ダンパプーリ13は、TCC20の外側(X2方向側)に配置されている。つまり、ダンパプーリ13は、エンジン100の外部に配置されている。
【0030】
また、クランクシャフト12には、タイミングチェーン4が係合(噛合)するチェーンスプロケット14(タイミング部材係合部の一例)が嵌め込まれている。また、チェーンスプロケット14は、エンジン100(TCC20)の内側(X1方向側)に配置されている。また、TCC20の内部において、チェーンスプロケット14と、シリンダヘッド1の内部に組み込まれたカムシャフト15の駆動用のカムシャフトタイミングスプロケット16とがタイミングチェーン4によって繋がれている。これにより、クランクシャフト12からの回転駆動力が、タイミングチェーン4を介して、カムシャフト15に伝達される。
【0031】
また、クランク室3aの下部(Z2方向側)には、エンジンオイル(以降、単にオイルと呼ぶ)を溜めるオイル溜め部3bが設けられている。オイルは、図示しないオイルポンプによりオイル溜め部3bからエンジン本体10内の上部に汲み上げられてカムシャフト15を含む動弁系タイミング部材や、ピストン11の外周面などの摺動部に供給される。そして、その後、自重により落下(滴下)してオイル溜め部3bに戻される。
【0032】
また、
図3に示すように、シリンダブロック2の側面部2b(内燃機関本体の側面部の一例)には、クランクシャフト12が挿入される挿入孔2c(
図5参照)と、クランク室3a内のブローバイガスをTCC20とエンジン本体10との間に逃がすための逃がし孔2dとが形成されている。また、側面部2bには、リテーナ50およびTCC20を固定するための3個のねじ穴2e(
図5参照)と、ねじ穴2eの近傍に形成され、ノックピン61が嵌め込まれる位置決め穴2f(
図5参照)とが形成されている。位置決め穴2fは、円柱状のノックピン61に対応するようにX2方向側から見て円状である。
【0033】
また、側面部2bのY軸方向の両外端部には、フランジ部2gがそれぞれ形成されている。フランジ部2gには、TCC20をエンジン本体10に固定するための複数のねじ穴2hが形成されている。
【0034】
(リテーナの構成)
リテーナ50は、
図4〜
図6に示すように、エンジン本体10からX2方向側に離れた位置に配置された本体部51と、本体部51の外縁部に接続され、X1方向に延びる3個の固定部52とを含んでいる。また、エンジン本体10と本体部51との間には、空間Sが形成されている。
【0035】
本体部51は、X2方向側からの側方視において、円状に形成されている。本体部51の略中央には、オイルシール固定部53が設けられている。オイルシール固定部53は、本体部51のX2方向側の表面51aからX1方向側に窪むように凹状に形成されている。また、オイルシール固定部53は、X2方向側から円環状のオイルシール40が圧入されることによって、オイルシール40がリテーナ50に固定されるように構成されている。
【0036】
挿入孔51bは、オイルシール固定部53の中央部に形成されている。また、クランクシャフト12が挿入孔51bを貫通することによって、エンジン100の外部に配置されたダンパプーリ13とクランクシャフト12とが接続可能なようにエンジン100は構成されている。
【0037】
本体部51は、オイルシール固定部53を取り囲む周状溝部51cを含んでいる。周状溝部51cは、オイルシール固定部53から所定の距離離間した位置に周状に形成されている。また、周状溝部51cよりも外側の周状の表面51aは、シール部60が配置されるシール面51dとなるように構成されている。なお、シール部60は、液状のシール材(液状ガスケット)が固化したものであり、密着性に優れている。
【0038】
本体部51は、X2方向側からの側方視において、シリンダブロック2の逃がし孔2dの少なくとも一部を覆うように配置されている。また、本体部51は、X2方向側からの側方視において、クランクシャフト12に取り付けられたチェーンスプロケット14の全体を覆うように配置されている。
【0039】
3個の固定部52は、略同様の形状を有している。固定部52は、本体部51の外縁部から延びる接続部52aと、接続部52aからX1方向に延びる脚部52bと、エンジン本体10の側面部2bに当接する当接部54とを有している。接続部52aは、本体部51の表面51aよりも下方に窪むように形成されている。
【0040】
また、固定部52は、ボルト71が挿入されるボルト挿入孔55(固定部材締結部の一例)と、ノックピン61が嵌め込まれる位置決め穴56(位置決め部の一例)とを有している。ボルト挿入孔55は、脚部52bの全体をX軸方向に貫通するように延びて、シリンダブロック2のねじ穴2eと連通している。
【0041】
位置決め穴56は、ボルト挿入孔55よりも本体部51とは反対側に形成されているとともに、ボルト挿入孔55の近傍に形成されている。位置決め穴56は、X1方向側から見て円状の有底穴であり、シリンダブロック2の位置決め穴2fと連通している。この結果、位置決め穴2fに円柱状のノックピン61が嵌め込まれた状態で、ノックピン61を位置決め穴56に嵌め込むことによって、エンジン本体10に対してリテーナ50の位置決めを行うことが可能なように、エンジン100は構成されている。
【0042】
また、3個の固定部52は、X2方向側からの側方視において、略等角度間隔(角度α間隔)で配置されている。なお、固定部52は、本体部51のZ1方向側、Z2方向側でかつY1方向側、および、Z2方向側でかつY2方向側にそれぞれ形成されている。
【0043】
また、リテーナ50は、Z1方向側の固定部52とZ2方向側でかつY1方向側の固定部52との間、および、Z1方向側の固定部52とZ2方向側でかつY2方向側の固定部52との間において、固定部52とタイミングチェーン4とが干渉しないように構成されている。
【0044】
また、Z2方向側の2個の固定部52同士の間には、
図6に示すように、本体部51からX1方向側に延びる脚部57が形成されている。この脚部57のX1方向側の端部は、エンジン本体10の側面部2bに当接するように構成されている。これにより、エンジン100では、エンジン本体10の下部において、リテーナ50とエンジン本体10との間の空間Sにのみオイルが貯留され、リテーナ50が配置されていない位置におけるTCC20とエンジン本体10との間には、オイルが貯留しないように構成されている。この結果、リテーナ50が配置されていない位置における樹脂製のTCC20が、オイルなどにより変形するのを抑制することができるので、後述する本体部21の下端のフランジ部21cとクランクケース3のフランジ部3cとの間(
図6参照)におけるシール性が低下するのを抑制することが可能である。
【0045】
また、本体部51と、固定部52と、脚部57とにより、リテーナ50は、チェーンスプロケット14を取り囲むように形成されている。
【0046】
(TCCの構成)
TCC20は、
図2に示すように、X2方向に膨らむ本体部21と、本体部21のY軸方向の両端部に形成された一対のフランジ部22とを含んでいる。一対のフランジ部22は、それぞれ、シリンダブロック2の側面部2bに形成されたフランジ部2gに対応するように設けられている。
【0047】
フランジ部22には、TCC20をエンジン本体10に固定するための複数のボルト挿入孔22a(カバー部材締結部の一例)(
図5参照)が形成されている。ボルト挿入孔22aは、シリンダブロック2のねじ穴2h(
図3参照)に対応するように形成されている。また、
図5に示すように、ボルト挿入孔22aには、金属製の円筒状のカラー62aが挿入されている。この結果、エンジン100では、TCC20の外縁部(フランジ部22)において、ボルト70がTCC20の複数のボルト挿入孔22aの各々に挿入された状態で、シリンダブロック2のねじ穴2hに締結される。これにより、TCC20は、エンジン本体10に固定(締結)されている。
【0048】
TCC20は、
図2に示すように、X2方向側からの側方視において、エンジン本体10(
図1参照)のX2方向側の側面部に重なるように配置されている。また、TCC20は、
図2および
図5に示すように、リテーナ50の全体をX2方向側(エンジン本体10とは反対側)から覆うように、エンジン本体10の側面部(シリンダブロック2の側面部2b)に取り付けられている。つまり、X2方向側からの側方視において、リテーナ50の本体部51および固定部52の最外縁部である外縁部50aの全体は、TCC20の外縁部(フランジ部22、21cおよび21d)よりも内側(クランクシャフト12側)に位置している。
【0049】
本体部21の下部側(Z2方向側)でかつY軸方向の中央部近傍には、
図5に示すように、貫通孔23が設けられている。貫通孔23は、X2方向側からの側方視において、リテーナ50のオイルシール固定部53よりも大きな径を有する円状に形成されている。
【0050】
また、本体部21は、
図2および
図5に示すように、貫通孔23を取り囲む周状壁部24(規制部の一例)を含んでいる。周状壁部24は、本体部21からX2方向に延びるように突出している。また、周状壁部24のX2方向側の端部は、鉤状に形成されている。この周状壁部24は、TCC20を作成する際の樹脂成型時において、TCC20の他の構成部分とともに形成される。つまり、周状壁部24は、TCC20に一体的に設けられている。なお、周状壁部24は、外部からの異物がTCC20の内部のリテーナ50側に侵入するのを規制する機能を有している。なお、周状壁部24は、ダンパプーリ13のX1方向側に形成された凹部内に鉤状の端部が配置されるように構成されている。これにより、ダンパプーリ13と周状壁部24とにより、ラビリンス構造が形成されている。この結果、外部からの異物がTCC20の内部のリテーナ50側に侵入するのがより規制される。
【0051】
また、本体部21は、周状壁部24よりも外側に形成された、3個のボス部25(
図5参照)を含んでいる。3個のボス部25は、3個の固定部52の脚部52bに対応する位置にそれぞれ形成されている。ボス部25には、本体部21をX軸方向に貫通するボルト挿入孔25aが形成されている。ボルト挿入孔25aは、リテーナ50のボルト挿入孔55と連通している。また、ボルト挿入孔25aには、金属製の円筒状のカラー62bが挿入されている。
【0052】
この結果、エンジン100では、3箇所の締結位置P1(固定位置の一例)において、ボルト71がTCC20のボルト挿入孔25aと、リテーナ50のボルト挿入孔55とに挿入された状態で、シリンダブロック2のねじ穴2eに締結されることによって、リテーナ50は、TCC20とともにエンジン本体10に共締めされて固定(締結)されている。
【0053】
ここで、第1実施形態では、3箇所の締結位置P1は、TCC20の外縁部(フランジ部22)よりも内側に設けられている。また、3箇所の締結位置P1は、TCC20の外縁部(フランジ部22)よりもクランクシャフト12側に設けられている。なお、3箇所の締結位置P1の近傍に設けられたリテーナ50の位置決め穴56も、3箇所の締結位置P1と同様に、TCC20の外縁部(フランジ部22)よりも内側、かつ、クランクシャフト12側に設けられている。さらに、3箇所の締結位置P1は、X2方向側からの側方視において、チェーンスプロケット14の周囲に略等角度α(=約120度)間隔で配置されている。
【0054】
また、
図5に示すように、本体部21の周状壁部24が形成された位置のX2方向側の表面(シール面21a)には、シール部60を介して、リテーナ50のシール面51dが位置している。これにより、シール部60によって、TCC20とリテーナ50との隙間から、TCC20の内部に異物が侵入するのが抑制される。なお、シール面21aは、貫通孔23の近傍に形成されている。
【0055】
また、本体部21は、貫通孔23の内側(クランクシャフト12側)に向かって突出する周状突出部21bを有している。周状突出部21bは、リテーナ50の周状溝部51cの一部をX2方向側から覆うように形成されている。この結果、周状突出部21bおよび周状溝部51cにより、周状の溜まり部63(シール材規制部の一例)が形成されている。
【0056】
また、
図1および
図2に示すように、本体部21の下端には、クランクケース3のフランジ部3cに対応するフランジ部21cが形成されている。同様に、本体部21の上端は、フランジ部21dが形成されている。フランジ部21cおよび21dは、それぞれ、シール部材26(
図6参照)を介して、フランジ部3cおよび5aに当接している。
【0057】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0058】
第1実施形態では、上記のように、リテーナ50のエンジン本体10に対する固定位置(締結位置P1)を、エンジン本体10に締結されるTCC20の外縁部(フランジ部22)よりも内側に設ける。これにより、TCC20の外縁部までリテーナ50を延ばす必要がなくなるので、リテーナ50が大型化するのを抑制することができる。この結果、エンジン100を軽量化することができる。また、複数箇所(3箇所)においてリテーナ50をエンジン本体10に固定する際に、リテーナ50のエンジン本体10に対する締結位置P1を、エンジン本体10に締結されるTCC20の外縁部よりも内側に設ける。これにより、複数の締結位置P1同士が大きく離れるのを抑制することができる。この結果、一の締結位置P1からの他の締結位置P1のずれ角度に対する位置ずれ量が大きくなるのを抑制することができるので、締結位置P1同士の間に生じる位置ずれ量が大きくなるのを抑制することができる。これらの結果、リテーナ50が大型化するのを抑制しつつ、締結位置P1同士の間に生じる位置ずれ量が大きくなるのを抑制することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、クランクシャフト12の延びるX軸方向からの側方視において、リテーナ50の外縁部50aが、TCC20の外縁部(フランジ部22、21cおよび21d)よりも内側に位置する。これにより、リテーナ50をより小型化することができるので、エンジン100をより軽量化することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、TCC20を、TCC20のフランジ部22に形成されたフランジ部22のボルト挿入孔22aにおいてエンジン本体10に締結する。また、リテーナ50を、フランジ部22のボルト挿入孔22aよりもクランクシャフト12側に形成された固定部52のボルト挿入孔55においてエンジン本体10に締結することによって、エンジン本体10に固定する。これにより、フランジ部22のボルト挿入孔22aよりもクランクシャフト12側に形成された固定部52のボルト挿入孔55においてリテーナ50をエンジン本体10に締結することによって、クランクシャフト12の周辺においてリテーナ50をエンジン本体10に締結することができる。この結果、クランクシャフト12に装着されるオイルシールを固定するためのリテーナ50を、クランクシャフト12の近傍にのみ設けることができるので、リテーナ50をより一層小型化することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、リテーナ50を、固定部52のボルト挿入孔55においてTCC20とともにエンジン本体10に共締めすることによって、TCC20およびエンジン本体10に固定する。これにより、エンジン本体10に対してリテーナ50を固定しつつ、TCC20とリテーナ50とを互いに固定することができる。この結果、TCC20に対するリテーナ50の相対位置が移動してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、リテーナ50は、固定部52のボルト挿入孔55に形成され、エンジン本体10に対して位置決めを行う位置決め穴56を含む。これにより、ボルト挿入孔55近傍の位置決め穴56により、容易に、リテーナ50のエンジン本体10に対する位置決めを行うことができる。また、クランクシャフト12の周辺に設けられた3箇所のボルト挿入孔55近傍にそれぞれ位置決め穴56が位置するので、3箇所の位置決め穴56同士を近づけて配置することができる。これにより、ノック間距離を小さくすることができるので、一の締結位置P1からの他の締結位置P1のずれ角度に対する位置ずれ量が大きくなるのをより一層抑制することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、リテーナ50を、側方視においてチェーンスプロケット14を取り囲むように形成する。これにより、リテーナ50とエンジン本体10との間の空間Sにチェーンスプロケット14を配置することができるので、チェーンスプロケット14から飛散したオイルがTCC20に付着するのを抑制しつつ、空間Sを有効に利用することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、リテーナ50のエンジン本体10に対する固定位置(締結位置P1)を、X2方向側からの側方視において、チェーンスプロケット14の周囲に略等角度α(=約120度)間隔で配置する。これにより、リテーナ50をエンジン本体10に安定的に締結固定することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、締結位置P1を所定の角度α間隔で3箇所形成することによって、締結位置P1が2箇所である場合と比べて、リテーナ50をエンジン本体10にさらに安定的に締結固定することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、リテーナ50がアルミニウム合金(金属)製であり、TCC20が樹脂製である。これにより、金属に比べて熱により変形しやすい樹脂から構成されたTCC20に高温のブローバイガスが、直接吹き付けられるのを抑制することができるので、樹脂製のTCC20が変形するのを抑制することができる。
【0067】
また、第1実施形態では、樹脂製のTCC20は、異物がリテーナ50側に侵入するのを規制する周状壁部24を一体的に含む。これにより、異物がリテーナ50側に侵入するのを規制する周状壁部24を、TCC20の樹脂成型時に容易に設けることができる。また、周状壁部24が周状であることにより、異物がリテーナ50側に侵入するのをより確実に規制することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、液状のシール材のTCC20の外表面側(X2方向側)への流出を規制する溜まり部63をエンジン100に設ける。これにより、溜まり部63によって、液状のシール部60を固化させる際に、シール面21aとシール面51dとの間から漏れ出た固化前のシール部60がTCC20の外表面側(X2方向側)への流出するのを抑制することができる。
【0069】
また、第1実施形態では、エンジン本体10の側面部2bにクランク室3a内のブローバイガスを逃がすための逃がし孔2dを設ける。そして、本体部51を、X2方向側からの側方視において、シリンダブロック2の逃がし孔2dの少なくとも一部を覆うように配置する。これにより、TCC20よりもエンジン本体10側(X1方向側)に位置するリテーナ50により、エンジン本体10からTCC20に向かって移動するブローバイガスが、TCC20に直接吹き付けられるのを抑制することができる。この結果、ブローバイガスによりTCC20が変形等するのを抑制することができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、
図7〜
図9を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、第1実施形態と異なり、TCC120とリテーナ150とを各々別途エンジン本体110に固定する例について説明する。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略している。
【0071】
本発明の第2実施形態によるエンジン200(内燃機関の一例)は、
図7および
図8に示すように、アルミニウム合金製のシリンダブロック102を含むエンジン本体110(内燃機関本体の一例)(
図8参照)を備えている。また、エンジン200は、エンジン本体110のX2方向側の側面部2bに組み付けられるとともにタイミングチェーン4を覆う樹脂製のタイミングチェーンカバー120(以降、TCC120と称する、カバー部材の一例)を備えている。
【0072】
また、
図8に示すように、エンジン200は、オイルシール40を固定するためのアルミニウム合金製のリテーナ150(オイルシール固定部材の一例)をさらに備えている。このリテーナ150は、エンジン本体110のX2方向側の側面部2bに組み付けられるとともに、TCC120にX2方向側(エンジン本体110とは反対側)から覆われている。
【0073】
また、シリンダブロック102の側面部2bには、リテーナ150を固定するための3個のねじ穴102eと、ねじ穴102eの周囲に形成され、環状のリングピン161が嵌め込まれる位置決め凹部102fとが形成されている。位置決め凹部102fは、円環状のリングピン161に対応するようにX2方向側から見て円状である。
【0074】
(リテーナの構成)
リテーナ150は、
図8および
図9に示すように、本体部51の外縁部に接続され、X1方向に延びる3個の固定部152を含んでいる。3個の固定部152は、略同様の形状を有している。固定部152は、本体部51の外縁部からX1方向に延びる脚部152bと、エンジン本体110のシリンダブロック102に当接した状態でエンジン本体110に固定される当接部154とを有している。つまり、第2実施形態では、第1実施形態の接続部52aは形成されていない。
【0075】
また、固定部152は、ボルトが挿入されるボルト挿入孔155(固定部材締結部の一例)と、リングピン161が嵌め込まれる位置決め凹部156(位置決め部の一例)とを有している。ボルト挿入孔155は、脚部152bの全体をX軸方向に貫通するように延びており、シリンダブロック102のねじ穴102eと連通している。
【0076】
位置決め凹部156は、ボルト挿入孔155よりも本体部51とは反対側に形成されているとともに、ボルト挿入孔155の周囲に形成されている。位置決め凹部156は、X1方向側から見て円状であり、シリンダブロック102の位置決め凹部102fに対応する位置に形成されている。この結果、位置決め凹部102fに円環状のリングピン161が嵌め込まれた状態で、リングピン161を位置決め凹部156に嵌め込むことによって、エンジン本体110に対してリテーナ150の位置決めを行うことが可能なように構成されている。
【0077】
また、3個の固定部152は、X2方向側からの側方視において、略等角度間隔で配置されている。
【0078】
この結果、エンジン200では、3箇所の締結位置P2(固定位置の一例)において、ボルト71がリテーナ150のボルト挿入孔155に挿入された状態で、シリンダブロック102のねじ穴102eに締結されることによって、リテーナ150は、エンジン本体110に固定(締結)されている。
【0079】
ここで、第2実施形態では、3箇所の締結位置P2は、TCC120の外縁部(フランジ部22)よりも内側に設けられている。また、3箇所の締結位置P2は、TCC120の外縁部(フランジ部22)よりもクランクシャフト12側に設けられている。なお、3箇所の締結位置P2の周囲に設けられたリテーナ150の位置決め凹部156も、3箇所の締結位置P2と同様に、TCC120の外縁部(フランジ部22)よりも内側かつ、クランクシャフト12側に設けられている。さらに、3箇所の締結位置P2は、X2方向側からの側方視において、チェーンスプロケット14の周囲に略等角度間隔で配置されている。
【0080】
(TCCの構成)
TCC120は、
図7および
図8に示すように、X2方向に膨らむ本体部121を含んでいる。また、X2方向側からの側方視において、リテーナ150の本体部51および固定部152の最外縁部である外縁部150aの全体は、TCC120の外縁部(フランジ部22、21cおよび21d)よりも内側に位置している。
【0081】
なお、第2実施形態では、TCC120には、第1実施形態のボルト挿入孔25aを有するボス部25が形成されていない。この結果、リテーナ150は、TCC120とともにエンジン本体110に共締めされておらず、リテーナ150とTCC120とは、各々別途にエンジン本体110に固定されている。また、TCC120には、周状壁部24が形成されていない。なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0082】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0083】
第2実施形態では、上記のように、リテーナ150のエンジン本体110に対する固定位置(締結位置P2)を、エンジン本体110に締結されるTCC120の外縁部(フランジ部22)よりも内側に設ける。これにより、第1実施形態と同様に、リテーナ150が大型化するのを抑制しつつ、締結位置P2同士の間に生じる位置ずれ量が大きくなるのを抑制することができる。
【0084】
また、第2実施形態では、TCC120を、TCC120のフランジ部22に形成されたフランジ部22のボルト挿入孔22aにおいてエンジン本体110に締結する。また、リテーナ150を、フランジ部22のボルト挿入孔22aよりもクランクシャフト12側に形成された固定部152のボルト挿入孔155においてエンジン本体110に締結されることによって、エンジン本体110に固定する。これにより、第1実施形態と同様に、リテーナ150をクランクシャフト12の周辺にのみ設けることができるので、リテーナ150をより一層小型化することができる。また、リテーナ150とTCC120とを合わせてエンジン本体110に締結する(共締めする)場合と異なり、締結に対する変形度合の違いなどに起因してリテーナ150とTCC120との境界に段差が生じるのを抑制することができる。これにより、リテーナ150とTCC120との境界(シール面21aとシール面51dとの間)においてシール性が低下するのを抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0085】
[第3実施形態]
次に、
図10を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、リテーナ250にオイルポンプ280を取り付けた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
【0086】
本発明の第3実施形態のリテーナ250(オイルシール固定部材の一例)には、
図10に示すように、オイルをエンジン本体210(内燃機関本体の一例)に供給するためのオイルポンプ280(ポンプ部の一例)が取り付けられている。オイルポンプ280は、リテーナ250の本体部251のX1方向側に取り付けられている。これにより、オイルポンプ280は、空間S内において、チェーンスプロケット14よりもX2方向側に配置されている。また、オイルポンプ280のX2方向側の部分は、本体部251と一体的に形成されている。これにより、リテーナ250のX1方向側の部分を有効に活用することが可能である。
【0087】
オイルポンプ280は、クランクシャフト12に接続されており、クランクシャフト12の駆動力を用いて、オイルを吐出するように構成されている。
【0088】
また、リテーナ250の固定部252には、第1実施形態とは異なり、位置決め穴が設けられていない。これにより、位置決め穴が設けられていない分、固定部252の当接部254を小さくすることが可能である。なお、エンジン本体210のシリンダブロック202にも、位置決め穴は設けられていない。なお、第3実施形態のその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0089】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0090】
第3実施形態では、上記のように、リテーナ250にオイルポンプ280を取り付ける。これにより、TCC20のエンジン本体10側(X1方向側)であるエンジンの内部にオイルポンプ280を配置することができるので、エンジンの外部からの異物がオイルポンプ280に衝突するのを抑制することができる。この結果、オイルポンプ280が破損するのを抑制することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0091】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものでは、ないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明では、なく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0092】
また、上記第1〜第3実施形態では、略等角度間隔で形成された3箇所の締結位置P1(P2)において、リテーナ50(150、250)(オイルシール固定部材)をエンジン本体10(110、210)(内燃機関本体)に締結固定した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、締結位置は、3箇所に限られず、1箇所、2箇所または4箇所以上であってもよい。また、締結位置を複数箇所設ける場合には、等角度間隔で締結位置を設けなくてもよい。なお、安定的に締結を行うために、締結位置は3箇所以上であるのが好ましい。また、締結作業が増加するのを抑制するために、あまり多くの締結位置を設けない方がよい。
【0093】
また、上記第1〜第3実施形態では、リテーナ50(150、250)(オイルシール固定部材)をアルミニウム合金製からなるように構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アルミニウム合金以外の金属材料を用いてオイルシール固定部材を構成してもよい。また、所定の剛性が確保されるような樹脂材料を用いてオイルシール固定部材を構成してもよい。
【0094】
また、上記第1〜第3実施形態では、TCC20(カバー部材)を樹脂製からなるように構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、樹脂材料以外の、たとえばアルミニウム合金などの金属材料を用いてカバー部材を構成してもよい。
【0095】
また、上記第3実施形態では、TCC220とリテーナ250とがエンジン本体210に共締めされた構成(第1実施形態の構成)に、オイルポンプ280(ポンプ部)をさらに設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2実施形態のように、TCC120とリテーナ150とがエンジン本体110に別途固定されている構成に、ポンプ部をさらに設けてもよい。
【0096】
また、上記第1〜第3実施形態では、シール部60として、液状のシール材が固化したものを用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シール部として、ゴム製のガスケットなどを用いてもよい。この場合、シール材規制部を設ける必要がなくなるので、オイルシール固定部材の構造およびカバー部材の構造を簡素化することが可能である。さらに、液状のシール材が固化するのを待つ必要がないため、タクトタイムを短縮することが可能である。また、液状のシール材をシール部として用いる場合であっても、シール材規制部を設けなくてもよい。
【0097】
また、上記第1および第3実施形態では、外部からの異物がTCC20の内部のリテーナ50(250)(オイルシール固定部材)側に侵入するのを規制する構成として、TCC20(カバー部材)に周状壁部24(規制部)を設けるとともに、ダンパプーリ13と周状壁部24とにより、ラビリンス構造を形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、外部からの異物がカバー部材の内部のオイルシール固定部材側に侵入する構成として、たとえば、ラビリンス構造を有する規制部をカバー部材に設けてもよい。つまり、規制部のみによりラビリンス構造を構成してもよい。また、規制部をカバー部材と一体的に設けなくてもよい。つまり、カバー部材とは別個に設けられた規制部を、カバー部材にねじ止めなどにより固定するように内燃機関を構成してもよい。
【0098】
また、上記第1〜第3実施形態において、さらに、TCC20(120)のフランジ部21cおよび21dを、それぞれ、フランジ部3cおよび5aに当接させた状態で、ボルトなどの締結部材を用いてフランジ部3cおよび5aに固定してもよい。