(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のフィルタが複数の直列腕共振子を有し、前記第1のフィルタの有する直列腕共振子の中で前記最も共振周波数が高くない直列腕共振子が、最も共振周波数が低い直列腕共振子である、請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。
前記第1のフィルタにおいて、前記共通接続点に最も近い位置に、前記最も共振周波数が高くない直列腕共振子として、前記第1のフィルタの有する直列腕共振子の中で前記IDT電極の電極指ピッチが最も小さくない直列腕共振子が配置されている、請求項1または2に記載の弾性波フィルタ装置。
前記IDT電極の電極指ピッチが最も小さくない直列腕共振子が、前記第1のフィルタの有する直列腕共振子の中で前記IDT電極の電極指ピッチが最も大きい直列腕共振子である、請求項3に記載の弾性波フィルタ装置。
前記第1のフィルタが複数の並列腕共振子を有し、前記第1のフィルタの有する並列腕共振子の中で前記最も共振周波数が低くない並列腕共振子が、最も共振周波数が高い並列腕共振子である、請求項6に記載の弾性波フィルタ装置。
前記第1のフィルタにおいて、前記共通接続点に最も近い位置に、前記最も共振周波数が低くない並列腕共振子として、前記第1のフィルタの有する並列腕共振子の中で前記IDT電極の電極指ピッチが最も大きくない並列腕共振子が配置されている、請求項6または7に記載の弾性波フィルタ装置。
前記IDT電極の電極指ピッチが最も大きくない並列腕共振子が、前記第1のフィルタの有する並列腕共振子の中で前記IDT電極の電極指ピッチが最も小さい並列腕共振子である、請求項8に記載の弾性波フィルタ装置。
前記第1のフィルタが、弾性波共振子からなる複数の直列腕共振子と、弾性波共振子からなる複数の並列腕共振子とを有する、ラダー型フィルタである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ装置。
前記第1のフィルタが、前記第1のフィルタの回路構成において、前記共通接続点に最も近い位置に配置されている、縦結合共振子型弾性波フィルタを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような、複数の帯域通過型フィルタの一端同士を共通接続した場合、1つの帯域通過型フィルタにおいて生じるモードが、他の帯域通過型フィルタのフィルタ特性に影響を与えるという問題があった。
【0006】
特許文献1では、送信フィルタは、LiNbO
3を伝搬するレイリー波の基本波を利用している。この場合、基本波だけでなく、例えばセザワ波のような高次モードも励振される。この高次モードが、受信フィルタの通過帯域内に位置すると、受信フィルタの通過帯域内の挿入損失が大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、基本波だけでなく高次モードも励振される第1のフィルタが、第2のフィルタと共通接続されている場合に、第2のフィルタにおける通過帯域内の挿入損失を小さくすることができる、弾性波フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明に係る弾性波フィルタ装置は、第1の通過帯域f1を有する第1のフィルタと、前記第1の通過帯域f1よりも高周波数側に位置している第2の通過帯域f2を有する第2のフィルタとを備え、前記第1のフィルタの一端と、前記第2のフィルタの一端とが共通接続点で共通接続されており、前記第1のフィルタは、前記共通接続点側に、IDT電極を有する直列腕共振子、並列腕共振子または縦結合共振子型弾性波フィルタを有し、前記第1のフィルタは、基本波と、高次モードとが発生するフィルタであり、前記第1のフィルタの前記第1の通過帯域f1よりも高周波数側に表れる高次モードの共振周波数をf1hとした場合、f1h<f2であり、前記共通接続点側に、1)最も共振周波数が高くない直列腕共振子、2)並列腕共振子または3)縦結合共振子型弾性波フィルタが配置されている。
【0009】
第1の発明に係る弾性波フィルタ装置のある特定の局面では、前記最も共振周波数が高くない直列腕共振子が、最も共振周波数が低い直列腕共振子である。
【0010】
第1の発明に係る弾性波フィルタ装置の他の特定の局面では、前記共通接続点側に、前記第1のフィルタにおいて、前記最も共振周波数が高くない直列腕共振子として、前記IDT電極の電極指ピッチが最も小さくない直列腕共振子が配置されている。この場合には、IDT電極の形成に際し、電極指ピッチを調整するだけで、最も共振周波数が高くない直列腕共振子を容易に形成することができる。
【0011】
第1の発明に係る弾性波フィルタ装置の別の特定の局面では、前記IDT電極の電極指ピッチが最も小さくない直列腕共振子が、前記IDT電極の電極指ピッチが最も大きい直列腕共振子である。
【0012】
第1の発明に係る弾性波フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記第1のフィルタが、LiNbO
3を伝搬するレイリー波を利用した弾性波フィルタである。
【0013】
第1の発明に係る弾性波フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、位相調整回路がさらに備えられている。
【0014】
本願の第2の発明に係る弾性波フィルタ装置は、第1の通過帯域f1を有する第1のフィルタと、前記第1の通過帯域f1よりも高周波数側に位置している第2の通過帯域f2を有する第2のフィルタとを備え、前記第1のフィルタの一端と、前記第2のフィルタの一端とが共通接続点で共通接続されており、前記第1のフィルタは、前記共通接続点側に、直列腕共振子、IDT電極を有する並列腕共振子または縦結合共振子型弾性波フィルタを有し、前記第1のフィルタは、基本波と、高次モードとが発生するフィルタであり、前記第1のフィルタの前記第1の通過帯域f1よりも高周波数側に表れる高次モードの共振周波数をf1hとした場合、f1h>f2であり、前記共通接続点側に、4)最も共振周波数が低くない並列腕共振子、5)直列腕共振子または6)縦結合共振子型弾性波フィルタが配置されている。
【0015】
第2の発明に係る弾性波フィルタ装置のある特定の局面では、前記最も共振周波数が低くない並列腕共振子が、最も共振周波数が高い並列腕共振子である。
【0016】
第2の発明に係る弾性波フィルタ装置の他の特定の局面では、前記共通接続点側に、前記第1のフィルタにおいて、前記最も共振周波数が低くない並列腕共振子として、前記IDT電極の電極指ピッチが最も大きくない並列腕共振子が配置されている。この場合には、IDT電極の形成に際し、電極指ピッチを調整するだけで、最も共振周波数が高い並列腕共振子を容易に形成することができる。
【0017】
第2の発明に係る弾性波フィルタ装置の別の特定の局面では、前記IDT電極の電極指ピッチが最も大きくない並列腕共振子が、前記IDT電極の電極指ピッチが最も小さい並列腕共振子である。
【0018】
第2の発明に係る弾性波フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記第1のフィルタが、LiNbO
3を伝搬するレイリー波を利用した弾性波フィルタである。
【0019】
第2の発明に係る弾性波フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、位相調整回路がさらに備えられている。
【0020】
本発明(第1,第2の発明を総称して、以下本発明とする。)に係る弾性波フィルタ装置では、前記第1のフィルタが、弾性波共振子からなる複数の直列腕共振子と、弾性波共振子からなる複数の並列腕共振子とを有する、ラダー型フィルタであってもよい。
【0021】
また、本発明に係る弾性波フィルタ装置では、前記第1のフィルタが、縦結合共振子型弾性波フィルタを有するものであってもよい。この場合、前記第1のフィルタが、前記縦結合共振子型弾性波フィルタの前記共通接続点側に、または前記共通接続点とは反対側に配置されている、直列腕共振子及び並列腕共振子の内の少なくとも一方を有していてもよい。
【0022】
本発明に係る弾性波フィルタ装置の他の特定の局面では、前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタのうち少なくとも一方が、前記共通接続点との接続状態を切り替える切替部を介して、前記共通接続点に接続されている。
【0023】
本発明に係る弾性波フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタが、それぞれ前記切替部を介して前記共通接続点に接続されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る弾性波フィルタ装置によれば、第2のフィルタの通過帯域内の挿入損失を小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0027】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置のブロック図である。弾性波フィルタ装置1は、第1のフィルタ11と、第2のフィルタ12とを有する。第1のフィルタ11は、LiNbO
3を伝搬するレイリー波を利用した弾性波フィルタからなる。第1のフィルタ11は、第1の通過帯域f1を有する帯域通過型フィルタである。
【0029】
第2のフィルタ12は、特に限定されないが、本実施形態では、弾性波フィルタからなる。第2のフィルタ12は、第2の通過帯域f2を有する帯域通過型フィルタである。第1の通過帯域f1よりも、第2の通過帯域f2が高周波数側に位置している。
【0030】
第1のフィルタ11の一端と、第2のフィルタ12の一端とが、共通接続点3において共通接続されている。共通接続点3は、アンテナ端子4に接続されている。アンテナ端子4は、携帯電話等のアンテナに接続される。弾性波フィルタ装置1は、携帯電話等に用いられる。なお、
図1では、第1のフィルタ11と第2のフィルタ12とを示したが、さらに1以上の帯域通過型フィルタが共通接続点3に接続されていてもよい。
【0031】
共通接続点3とグラウンド電位との間にインピーダンス整合用のインダクタL1が接続されている。
【0032】
図2は、第1のフィルタ11の物理的構造を略図的に示す正面断面図である。第1のフィルタ11は、LiNbO
3基板5を有する。LiNbO
3基板5上にIDT電極6が設けられている。IDT電極6は、複数本の電極指6aを有する。IDT電極6の弾性波伝搬方向両側に反射器7,8が設けられている。それによって、1つの弾性波共振子が構成されている。IDT電極6、反射器7,8を覆うように、誘電体層9が積層されている。誘電体層9は、SiO
2などからなる。
【0033】
第1のフィルタ11は、複数の弾性波共振子と、縦結合共振子型弾性波フィルタとを有する。この第1のフィルタ11についての実施例1〜3を
図3〜
図5に示す。
図3に示す実施例1の第1のフィルタ13は、第1の端子14と第2の端子15とを有する。第1の端子14が共通接続点3に接続される端子である。
【0034】
第1の端子14と第2の端子15とを結ぶ直列腕に、縦結合共振子型弾性波フィルタ16が配置されている。第1のフィルタ13では、縦結合共振子型弾性波フィルタ16により、通過帯域が形成されている。そして、縦結合共振子型弾性波フィルタ16の共通接続点側に、直列腕共振子S1及び並列腕共振子P1が設けられている。また、縦結合共振子型弾性波フィルタ16と第2の端子15との間に、直列腕共振子S2,S3及び並列腕共振子P2が設けられている。直列腕共振子S1及び並列腕共振子P1、並びに直列腕共振子S2,S3及び並列腕共振子P2は、通過帯域を調整するために設けられている。
【0035】
この第1のフィルタ13は、LiNbO
3を伝搬するレイリー波を利用している。この場合、レイリー波だけでなく、セザワ波のような高次モードも励振される。第1のフィルタ13は、Band25の受信フィルタである。
【0036】
これに対して、前述した第2のフィルタ12はBand41の受信フィルタである。
【0037】
Band25の受信フィルタの第1の通過帯域f1は、1930MHz〜1995MHzの範囲である。他方、Band41の受信フィルタの第2の通過帯域f2は、2496MHz〜2690MHzの範囲である。従って、f2>f1である。そして、上記第1のフィルタ13において、高次モードとして生じるセザワ波の共振周波数を、f1hとする。
【0038】
第1の実施形態の弾性波フィルタ装置1では、f1h<f2とされている。
【0039】
第1のフィルタ13では、束ね端、すなわち前述した共通接続点3側に、直列腕共振子S1が配置されている。この直列腕共振子S1は、直列トラップを構成している直列腕共振子S1〜S3の内、共振周波数が最も高くない直列腕共振子である。
【0040】
なお、第1の実施形態では、第1のフィルタにおいて、1つの直列腕共振子S1のみが配置されていてもよい。その場合には、1つの直列腕共振子S1は、共振周波数が最も高くない直列腕共振子となる。すなわち、本発明においては、共振周波数が最も高くない直列腕共振子なる表現は、複数の直列腕共振子を有する構成に限定されるものではない。
【0041】
なお、共通接続点側に配置されるとは、第1のフィルタの回路構成において、共通接続点に最も近い位置に設けられていることを意味する。
【0042】
第1のフィルタ13において、第2のフィルタ12のフィルタ特性への影響が大きいのは、
図3において、共通接続点側に配置されている素子である。第1のフィルタ13では、この共通接続点側に配置されている素子は、直列腕共振子S1である。一般に、セザワ波のような高次モードの共振周波数は、セザワ波を例にとると、並列腕共振子におけるセザワ波の共振周波数<縦結合共振子型弾性波フィルタにおけるセザワ波の共振周波数<直列腕共振子におけるセザワ波の共振周波数の関係がある。
【0043】
第1のフィルタ13では、共通接続点側の直列腕共振子S1は、直列腕共振子S1〜S3の内、共振周波数が最も高くない。そのため、f1h<f2であるが、最も影響が大きい直列腕共振子S1における高次モードの共振周波数f1hが、第2のフィルタ12の第2の通過帯域f2よりも低周波数側に遠ざけられる。従って、第2のフィルタ12の第2の通過帯域f2における帯域内挿入損失を小さくすることができる。
【0044】
好ましくは、直列腕共振子S1は、直列腕共振子S1〜S3の内、最も共振周波数が低い直列腕共振子とすることが望ましい。その場合には、通過帯域内の挿入損失をより一層小さくすることができる。
【0045】
図4は、第1の実施形態の弾性波フィルタ装置に用いられる実施例2の第1のフィルタ17の回路図である。実施例2の第1のフィルタ17は、
図3における直列腕共振子S1が除かれた構造に相当する。その他の点については、第1のフィルタ17は、第1のフィルタ13と同様である。
【0046】
従って、実施例2の第1のフィルタ17では、共通接続点側に、並列腕共振子P1が配置されている。
【0047】
前述したように、高次モードの共振周波数には、同じ次数の高次モードである限り、並列腕共振子の高次モードの共振周波数<縦結合共振子型弾性波フィルタの高次モードの共振周波数<直列腕共振子の高次モードの共振周波数の関係がある。よって、実施例2の第1のフィルタ17では、共通接続点側に配置されている並列腕共振子P1の高次モードの共振周波数は低いため、最も影響を与える並列腕共振子P1の高次モードの共振周波数f1hが、第2のフィルタの第2の通過帯域f2よりも低周波数側に効果的に遠ざけられる。従って、実施例2の第1のフィルタ17においても、第2のフィルタ12の通過帯域内の挿入損失を小さくすることができる。
【0048】
図5は、第1の実施形態の弾性波フィルタ装置で用いられる実施例3の第1のフィルタの回路図である。
【0049】
実施例3の第1のフィルタ18は、実施例1の第1のフィルタ13の内、直列腕共振子S1及び並列腕共振子P1が除かれた構造に相当する。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0050】
実施例3の第1のフィルタ18では、共通接続点側に縦結合共振子型弾性波フィルタ16が配置されている。前述したように、同じ次数の高次モードである限り、並列腕共振子における高次モードの共振周波数<縦結合共振子型弾性波フィルタの高次モードの共振周波数<直列腕共振子における高次モードの共振周波数である。従って、実施例3の第1のフィルタ18を用いた場合においても、縦結合共振子型弾性波フィルタ16における高次モードの共振周波数が低いため、該高次モードの共振周波数f1hを、第2のフィルタの第2の通過帯域f2よりも低周波数側に遠ざけることができる。よって、第2のフィルタ12の通過帯域内における挿入損失を低減することができる。
【0051】
図6の実線は実施例1、破線は比較例、二点鎖線は実施例2、一点鎖線は実施例3の各第1のフィルタを用いた場合の第2のフィルタのフィルタ特性を示す図である。
【0052】
なお、比較例の第1のフィルタとしては、
図3に示した実施例1の第1のフィルタ13と同様の回路構成を有し、但し、直列腕共振子S1の共振周波数が、直列腕共振子S1〜S3の共振周波数の内、最も高くされている。この場合、直列腕共振子S1において励振された高次モードの共振周波数も高くなる。従って、f1hが、f2に近づく。
図6から明らかなように、破線で示す比較例のフィルタ特性では、第2のフィルタ12の通過帯域内において、挿入損失が大幅に悪化していることがわかる。これに対して、実施例1〜3の第1のフィルタを用いた場合には、第2のフィルタの通過帯域における挿入損失の劣化が生じ難く、挿入損失を小さくし得ることがわかる。
【0053】
図7は上記実施例1〜3及び比較例の第1のフィルタ単体の共通接続点側から視たリターンロス特性を示す図である。
図7から明らかなように、実施例1及び比較例では、直列腕共振子S1の存在によるリターンロスの大きいピークが表れている。この場合、破線で示す比較例では、より高周波数側にこのピークが位置している。
【0054】
従って、上記のように、第2のフィルタの通過帯域内の挿入損失を悪化させることがわかる。これに対して、実施例1では、上記リターンロスが悪化している部分が、第2のフィルタ12の第2の通過帯域f2の下限である2496MHzよりも低周波数側に離れている。また、実施例2の場合には、並列腕共振子P1によるリターンロスの悪化が2447MHz付近に表れており、実施例3では、縦結合共振子型弾性波フィルタ16によるリターンロスの悪化が2456MHz付近で表れている。いずれも、第2の通過帯域f2の下限である2496MHzよりも低周波数側に十分隔てられている。
【0055】
上記のように、f1<f2の場合に、f1h<f2である場合、第1のフィルタ11の共通接続点側に配置される素子が、1)最も共振周波数が高くない直列腕共振子、2)並列腕共振子または3)縦結合共振子型弾性波フィルタ16であれば、第2のフィルタ12における通過帯域内の挿入損失を小さくすることができる。
【0056】
なお、
図1に破線で示すように、位相調整回路10が設けられていてもよい。この位相調整回路10としては、LCマッチングフィルタや、マイクロストリップラインなどを用いることができる。
【0057】
次に、本発明の第2の実施形態に係る弾性波フィルタ装置を説明する。第2の実施形態の弾性波フィルタ装置は、
図1に示した第1の実施形態の弾性波フィルタ装置1と同様の回路構成を有する。従って、第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12が共通接続点3側で共通接続されている。そして、第2の実施形態の弾性波フィルタ装置においても、第1のフィルタ11は、Band25の受信フィルタであり、第1の通過帯域f1は1930MHz〜1995MHzの範囲である。また、第2のフィルタ12は、第1の実施形態と同様に、Band41の受信フィルタであり、第2の通過帯域f2は2496MHz〜2690MHzの範囲である。従って、f1<f2である。
【0058】
もっとも、第2の実施形態では、第1のフィルタ11における高次モードの共振周波数f1hは、f1h>f2に位置するように構成されている。すなわち、第1のフィルタ11における高次モードは、第2のフィルタ12の通過帯域よりも高域側に位置する。
【0059】
第2の実施形態では、第1のフィルタ11の高次モードの共振周波数を第2のフィルタ12の通過帯域よりも高域側に遠ざけることにより、第2のフィルタ12の通過帯域内の挿入損失の低減が図られる。上記高次モードの共振周波数f1hを第2の通過帯域f2から確実に遠ざけるために、第2の実施形態では、第1のフィルタ11の共通接続点3側に配置される素子が、4)最も共振周波数が低くない並列腕共振子、5)直列腕共振子または6)縦結合共振子型弾性波フィルタである。
【0060】
第2の実施形態の複数の実施例を
図8〜
図11に示す。
【0061】
図8は、第2の実施形態についての実施例4における第1のフィルタの回路図である。第1のフィルタ21は、第1の端子14と第2の端子15とを有する。第1の端子14と第2の端子15とを結ぶ直列腕において、縦結合共振子型弾性波フィルタ16が配置されている。縦結合共振子型弾性波フィルタ16により、通過帯域が形成されている。そして、通過帯域を調整するために、並列腕共振子P1、並びに直列腕共振子S2,S3,並列腕共振子P2が配置されている。これらの内、並列腕共振子P1が、縦結合共振子型弾性波フィルタ16の共通接続点側に配置されている。直列腕共振子S2,S3及び並列腕共振子P2は、縦結合共振子型弾性波フィルタ16と第2の端子15との間に配置されている。
【0062】
第1のフィルタ21では、並列腕共振子P1,P2の内、共通接続点側に配置されている並列腕共振子P1は、最も共振周波数が低くない並列腕共振子である。従って、並列腕共振子P1において励振される高次モードの共振周波数は相対的に高くされている。そのため、共通接続点側の素子である、並列腕共振子P1の高次モードの共振周波数が、第2のフィルタの第2の通過帯域f2の上限よりも高周波数側に遠ざけられている。従って、第2のフィルタ12における通過帯域の挿入損失を小さくすることができる。
【0063】
好ましくは、第2の実施形態において、並列腕共振子P1は、最も共振周波数が高い並列腕共振子を用いることが望ましい。その場合には、第2の通過帯域f2の上限よりも、共振周波数f1hをより高周波数側に遠ざけることができる。
【0064】
なお、
図8に示した実施例4の第1のフィルタでは、並列腕共振子P1,P2が備えられていたが、1つの並列腕共振子P1のみが備えられていてもよい。すなわち、本発明において、最も共振周波数が低くない並列腕共振子とは、複数の並列腕共振子を有する構造に限定されるものではない。
【0065】
図9は、第2の実施形態の実施例5における第1のフィルタ22の回路図である。第1のフィルタ22では、直列腕共振子S1が共通接続点側に設けられている。その他の構成は、実施例4の第1のフィルタ21と同様である。ここでは、共通接続点側に直列腕共振子S1が配置されている。前述したように、高次モードの共振周波数の関係は、並列腕共振子における高次モードの共振周波数<縦結合共振子型弾性波フィルタにおける高次モードの共振周波数<直列腕共振子における高次モードの共振周波数である。第1のフィルタ22では、高次モードの共振周波数が高い直列腕共振子S1が共通接続点側に接続されているため、高次モードの共振周波数f1hを、第2の通過帯域f2よりも高周波数側に確実に位置させることができる。そのため、第2のフィルタ12における通過帯域内の挿入損失も小さくすることができる。
【0066】
図10は、第2の実施形態の実施例6における第1のフィルタの回路図である。第1のフィルタ23は、第1のフィルタ22の並列腕共振子P1を除いた構造に相当する。この場合においても、共通接続点側に直列腕共振子S1が配置されているため、同様に、第2のフィルタ12の通過帯域内の挿入損失を小さくすることができる。
【0067】
図11は、第2の実施形態における実施例7の第1のフィルタ24の回路図である。第1のフィルタ24は、第1のフィルタ23の直列腕共振子S1を除いた回路構造を有する。従って、共通接続点側には、縦結合共振子型弾性波フィルタ16が配置されている。よって、この場合においても、縦結合共振子型弾性波フィルタ16における高次モードの共振周波数f1hが比較的高いため、第2の通過帯域f2よりも高周波数側に遠ざけられる。よって、第2のフィルタ12の通過帯域内の挿入損失を小さくすることができる。
【0068】
なお、第1,第2の実施形態では、共通接続点側に配置される直列腕共振子や並列腕共振子の共振周波数を選択していたが、この共振周波数の調整は、直列腕共振子及び並列腕共振子を構成している弾性波共振子の設計パラメータを工夫することにより容易に果たすことができる。縦結合共振子型弾性波フィルタ16においても同様である。もっとも、縦結合共振子型弾性波フィルタ16や、直列腕共振子及び/もしくは並列腕共振子により、第1のフィルタの第1の通過帯域f1を確実に形成する必要がある。その上で、上記のように、共通接続点側に配置される素子を第1,第2の実施形態のように選択することにより、第2のフィルタの通過帯域内における挿入損失を十分に小さくすることができる。
【0069】
また、上記直列腕共振子や並列腕共振子の共振周波数の調整は、材料及び設計パラメータを工夫することにより果たし得るが、好ましくは、IDT電極における電極指ピッチを調整することが望ましい。例えば、第1の実施形態では、最も共振周波数の高くない直列腕共振子S1として、直列腕共振子の内、最もIDT電極の電極指ピッチが小さくない直列腕共振子を用いればよい。直列腕共振子S1を、最も共振周波数が低い直列腕共振子とする場合には、直列腕共振子S1として、IDT電極の電極指ピッチが最も大きい直列腕共振子を用いることが好ましい。
【0070】
また、第2の実施形態では、共通接続点側に接続される並列腕共振子、すなわち最も共振周波数が低くない並列腕共振子P1として、並列腕共振子の内、最もIDT電極における電極指ピッチが大きくない並列腕共振子を用いることが望ましい。並列腕共振子P1を、最も共振周波数が高い並列腕共振子とする場合には、並列腕共振子P1として、IDT電極の電極指ピッチが最も小さい並列腕共振子を用いることが好ましい。
【0071】
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に位相調整回路を有していてもよい。
【0072】
上記のように、IDT電極の電極指ピッチで共振周波数を調整する場合、電極膜の膜厚調整に比べ、容易に共振周波数を調整することができる。
【0073】
なお、本発明において、第1のフィルタの回路構成は、共通接続点側に、直列腕共振子、並列腕共振子または縦結合共振子型弾性波フィルタを有する限り、特に限定されるものではない。
【0074】
従って、
図12に示すように、第1のフィルタは、弾性波共振子からなる複数の直列腕共振子S1〜S5と、弾性波共振子からなる複数の並列腕共振子P1〜P4とを有するラダー型フィルタであってもよい。
【0075】
また、第1のフィルタは、LiNbO
3を伝搬するレイリー波を利用したものに限らず、他の圧電体を用いたものであってもよく、また第1のフィルタは、レイリー波以外の基本波を用いたものであってもよく、基本波と高次モードとが発生する限り、特に限定されるものではない。
【0076】
また、実施例1〜7に示したように、第1のフィルタは、縦結合共振子型弾性波フィルタ16を有するものであってもよい。この場合、第1のフィルタは、縦結合共振子型弾性波フィルタ16のみを有していてもよい。また、実施例1〜7のように、縦結合共振子型弾性波フィルタ16の共通接続点側に、または共通接続点とは反対側に、直列腕共振子及び並列腕共振子の少なくとも一方を有する構成であってもよい。
【0077】
図13は、第3の実施形態に係る弾性波フィルタ装置のブロック図である。
【0078】
第3の実施形態は、位相調整回路30の配置が第1の実施形態と異なる。より具体的には、位相調整回路30は、共通接続点3と第2のフィルタ12との間に配置されている。その他の構成は、第1の実施形態の弾性波フィルタ装置1と同様である。
【0079】
位相調整回路30は、コンデンサC30及びインダクタL30とを有する。コンデンサC30は、共通接続点3と第2のフィルタ12との間に接続されている。インダクタL30は、コンデンサC30と第2のフィルタ12との間の接続点とグラウンド電位との間に接続されている。位相調整回路30により、アンテナ端子4側において、第1のフィルタ11と第2のフィルタ12との信号の位相がマッチングされている。なお、位相調整回路30の回路構成は上記に限定されない。
【0080】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の第1のフィルタ11が第2のフィルタ12と共通接続されている。よって、第2のフィルタ12における通過帯域内の挿入損失を小さくすることができる。
【0081】
図14は、第4の実施形態に係る弾性波フィルタ装置のブロック図である。
図15は、第4の実施形態に係る弾性波フィルタ装置のブロック図である。
図14と
図15とでは、後述する第2の切替部の状態が異なる。
【0082】
図14及び
図15に示すように、第4の実施形態は、第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12が、スイッチ43を介してアンテナ端子4に共通接続されている点において、第1の実施形態と異なる。その他の構成は、第1の実施形態の弾性波フィルタ装置1と同様である。
【0083】
スイッチ43は、第1の切替部43a及び第2の切替部43bを有する。第1の切替部43aは、第1のフィルタ11と共通接続点3との間に配置されている。第1の切替部43aは、第1のフィルタ11と共通接続点3との接続状態を切り替える切替部である。第2の切替部43bは、第2のフィルタ12と共通接続点3との間に配置されている。
図14及び
図15に示すように、第2の切替部43bは、第2のフィルタ12と共通接続点3との接続状態を切り替える切替部である。
【0084】
このように、本実施形態では、第1のフィルタ11が第1の切替部43aを介して共通接続点3に接続されており、かつ第2のフィルタ12が第2の切替部43bを介して共通接続点3に接続されている。なお、第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12のうち少なくとも一方が切替部を介して共通接続点3に接続されていればよい。スイッチ43は、第1の切替部43a及び第2の切替部43bのうち少なくとも一方を有していればよい。
【0085】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の第1のフィルタ11が第2のフィルタ12と共通接続される。よって、第2のフィルタ12における通過帯域内の挿入損失を小さくすることができる。
【0086】
ところで、上記第3の実施形態及び第4の実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1のフィルタ11における高次モードの共振周波数f1hは、f1h<f2に位置するように構成されている。第1のフィルタ11における高次モードの共振周波数f1hは、第2の実施形態と同様に、f1h>f2に位置するように構成されていてもよい。この場合においても、第1のフィルタ11を第2の実施形態と同様の構成とすることにより、第2のフィルタ12における通過帯域内の挿入損失を小さくすることができる。