(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1および特許文献2記載の技術は、物体の電磁波反射特性のシミュレーションに適用可能なFDTD法による解析を高速化する技術である。
【0009】
しかしながら、空間および時間を離散化し状態を逐次的に更新していく手法であるFDTD法に基づいており、ミリ波のように車載レーダーで用いられる周波数帯では計算時間が非常に長くなる、という問題がある。
【0010】
また、上記特許文献3および特許文献4記載の技術は、物体の電磁波反射特性のシミュレーションに適用可能なレイトレーシング法による解析を高速化する技術である。
【0011】
しかしながら、物体近傍のシミュレーション精度には原理的な制約があり、またFDTD法と比較して高速ではあるものの、実時間で動作するのは困難である。
【0012】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、物体の電磁波反射特性を計算する時間を短縮して実時間による動作を可能にすることができる学習装置、電磁波反射特性推定装置、電磁波反射特性推定プログラム、および学習プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の電磁波反射特性推定装置は、物体の三次元形状データに基づいて、電磁界解析により前記物体の電磁波反射特性を算出する算出部と、前記物体の三次元形状データに基づいて、前記物体の形状を含む物体特徴量を抽出する物体特徴量抽出部と、前記物体特徴量を入力として、機械学習により学習された演算パラメータを用いて前記物体の電磁波反射特性を推定する推定部と、前記算出部により算出された前記物体の電磁波反射特性を目標値として、前記物体の電磁波反射特性が前記目標値に近づくように、前記演算パラメータを学習する学習部と、を備える。
【0014】
なお、請求項2に記載したように、前記算出部は、前記物体が近傍に存在する場合
として、前記物体の形状のサイズが予め定めた閾値以上の場合の前記物体の電磁波反射特性を算出し、前記推定部は、前記物体が近傍に存在する場合の前記物体の電磁波反射特性を推定し、前記学習部は、前記算出部により算出された前記物体が近傍に存在する場合の電磁波反射特性を目標値として、前記物体の電磁波反射特性が前記目標値に近づくように、前記演算パラメータを学習するようにしてもよい。
【0015】
また、請求項3に記載したように、前記算出部は、前記物体が遠方に存在する場合
として、前記物体の形状のサイズが予め定めた閾値未満の場合の前記物体の電磁波反射特性を算出し、前記推定部は、前記物体が遠方に存在する場合の前記物体の電磁波反射特性を推定し、前記学習部は、前記算出部により算出された前記物体が遠方に存在する場合の電磁波反射特性を目標値として、前記物体の電磁波反射特性が前記目標値に近づくように、前記演算パラメータを学習するようにしてもよい。
【0016】
請求項4記載の発明の電磁波反射特性推定装置は、物体を撮影する撮影部と、前記撮影部により撮影された撮影画像に基づいて、前記物体の形状を含む物体特徴量を抽出する物体特徴量抽出部と、前記物体特徴量を入力として、請求項1〜3の何れか1項に記載の学習装置により学習された前記演算パラメータに基づいて前記物体の電磁波反射特性を推定する推定部と、を備える。
【0017】
なお、請求項5に記載したように、物体を撮影する撮影部と、前記撮影部により撮影された撮影画像に基づいて、前記物体の形状を含む物体特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記物体特徴量に基づいて、前記物体
の形状のサイズが予め定めた閾値以上であれば前記物体が近傍に存在すると判定し、前記物体の形状のサイズが予め定めた閾値未満であれば前記物体が遠方に存在すると判定する判定部と、前記物体特徴量を入力として、前記判定部により前記物体が近傍であると判定された場合には、請求項2記載の学習装置により学習された前記演算パラメータに基づいて前記物体の電磁波反射特性を推定し、前記判定部により前記物体が遠方であると判定された場合には、請求項3記載の学習装置により学習された前記演算パラメータに基づいて前記物体の電磁波反射特性を推定する推定部と、を備えた構成としてもよい。
【0018】
また、請求項6に記載したように、前記撮影部により撮影された撮影画像に基づいて、前記物体の周囲を含む周囲特徴量を抽出する周囲特徴量抽出部を備え、前記推定部は、前記物体特徴量および前記周囲特徴量を入力として、前記物体の電磁波反射特性を推定するようにしてもよい。
【0019】
請求項7記載の発明の電磁波反射特性推定装置は、物体を撮影する撮影部と、前記撮影部により撮影された撮影画像に基づいて、前記物体の形状を含む物体特徴量を抽出する物体特徴量抽出部と、前記物体特徴量を入力として、請求項1記載の学習装置により学習された前記演算パラメータに基づいて前記物体のレーダー断面積を推定する第1の推定部と、前記第1の推定部により推定された前記物体のレーダー断面積を入力として、請求項2記載の学習装置により学習された前記演算パラメータに基づいて前記物体の電磁波反射強度を推定する第2の推定部と、前記第2の推定部により推定された前記物体の電磁波反射強度を入力として、請求項3記載の学習装置により学習された前記演算パラメータに基づいて前記物体の電磁波反射強度を推定する第3の推定部と、を備える。
【0020】
なお、請求項8に記載したように、前記撮影部により撮影された撮影画像に基づいて、前記物体の周囲を含む周囲特徴量を抽出する周囲特徴量抽出部を備え、前記第2の推定部は、前記物体のレーダー断面積および前記周囲特徴量を入力として、前記物体の電磁波反射強度を推定し、前記第3の推定部は、前記第2の推定部により推定された前記物体の電磁波反射強度および前記周囲特徴量を入力として、前記物体の電磁波反射強度を推定するようにしてもよい。
【0021】
請求項9記載の発明の学習プログラムは、コンピュータを、請求項1〜3の何れか1項に記載の学習装置の各部として機能させるための学習プログラムである。
【0022】
請求項10記載の発明の電磁波反射特性推定プログラムは、コンピュータを、請求項4〜8の何れか1項に記載の電磁波反射特性推定装置の各部として機能させるための電磁波反射特性推定プログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、物体の電磁波反射特性を計算する時間を短縮して実時間による動作を可能にすることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る学習装置10の構成例を示す図である。学習装置10は、算出部12、物体特徴量抽出部14、推定部16、および学習部18を備える。
【0028】
算出部12は、物体の三次元形状データに基づいて、電磁界解析により物体の電磁波反射特性を算出する。本実施形態では、物体の一例として車両(自動車)の電磁波反射特性を算出する場合について説明するが、これに限られるものではない。また、電磁波反射特性としては、物体そのものが有する電磁波反射特性を表すレーダー断面積、物体から直接反射した電磁波の強度を表す電磁波反射強度等があるが、これらに限られるものではない。また、電磁界解析としては、公知の電磁界シミュレーションを用いることができ、例えば前述したFDTD法またはレイトレーシング法等を用いることができるが、これらに限られるものではない。
【0029】
物体特徴量抽出部14は、物体の三次元形状データに基づいて、物体の形状を含む物体特徴量を抽出する。本実施形態では、詳細は後述するが、物体の形状をボクセルで表したボクセルデータを物体特徴量として用いる場合について説明する。なお、物体特徴量としては、形状だけでなく、例えば素材の種類、誘電率、導電率等を含むようにしてもよい。
【0030】
推定部16は、物体特徴量を入力として、機械学習により学習された演算パラメータを用いて物体の電磁波反射特性を推定する。本実施形態では、機械学習として三次元畳み込みニューラルネットワークを用いる場合について説明するが、これに限られるものではない。例えば、SVM(Support Vector Machine)またはランダムフォレスト等の機械学習を用いてもよい。
【0031】
学習部18は、算出部12により算出された物体の電磁波反射特性を目標値として、物体の電磁波反射特性が目標値に近づくように、演算パラメータを学習する。
【0032】
図2は、学習装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0033】
学習装置10は、コンピュータとしての機能を有し、CPU(Central Processing Unit)30A、ROM(Read Only Memory)30B、RAM(Random Access Memory)30C、不揮発性メモリ30D、ハードディスク30E、および通信インターフェース(I/F:Interface)部30Fを有する。そして、CPU30A、ROM30B、RAM30C、不揮発性メモリ30D、ハードディスク30E、および通信インターフェース部30Fは、バス30Gを介して互いに接続されている。
【0034】
CPU30Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。その際、RAM30Cをワークエリアとしてプログラムを実行する。
【0035】
不揮発性メモリ30Dは、学習装置10の電源をオフにしてもデータ内容が保持されるメモリである。
【0036】
ハードディスク30Eには、例えば後述する学習プログラム、三次元形状データ、演算パラメータ等が記憶される。なお、学習プログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。
【0037】
通信インターフェース部30Fは、図示しない外部装置と通信を行う。
【0038】
次に、CPU30Aで実行される学習処理について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。CPU30Aは、ハードディスク30Eに記憶された学習プログラムを読み込んで実行する。なお、以下では、電磁波反射特性としてレーダー断面積を推定する三次元畳み込みニューラルネットワークで用いられる演算パラメータを学習する場合について説明する。
【0039】
ステップS100では、物体の一例として車両の三次元形状データをハードディスク30Eから読み込む。なお、複数台(例えば数十台)分の三次元形状データを読み込む。また、三次元形状データとしては、一例として公開データセットであるNTU3D Model Databaseに含まれる車両の三次元形状データを用いることができるが、これに限られるものではない。
【0040】
ステップS102では、車両の三次元形状データに基づいて、電磁界シミュレーションにより車両のレーダー断面積を算出する。具体的には、例えば
図4に示すように、車両32がXY平面上に設けられている場合は、XY平面内で車両32を予め定めた角度(例えば2度)ずつ回転させながら360度回転させ、パルス上の平面波を車両に照射した場合のレーダー断面積を電磁界シミュレーションにより算出する。また、ステップS102の処理は、複数台分の車両について実行する。これにより、各車両について、複数の角度から平面波を照射した場合のレーダー断面積が得られる。例えば車両を2度ずつ回転させた場合は、180個のレーダー断面積が得られる。
【0041】
ステップS104では、ステップS102で算出した複数台分の車両について算出したレーダー断面積をハードディスク30Eに記憶させる。
【0042】
ステップS106では、ステップS100で読み込んだ複数台分の車両の三次元形状データに基づいて、各車両の物体特徴量を抽出する。具体的には、三次元形状データをボクセルデータに変換することで車両の形状を物体特徴量として抽出する。ここで、ボクセルデータは、複数の立方体のボクセルの集合で車両の形状を表した二値化データである。なお、ボクセルの形状は立方体に限られるものではない。
【0043】
具体的には、例えば64(X方向のボクセル数)×64(Y方向のボクセル数)×32(Z方向のボクセル数)個のボクセルの各々について、車両の形状に合わせてボクセルを「1」または「0」に設定することにより車両の形状を二値化する。これを複数台分の車両について実行する。
図5には、一例として
図4に示す車両32をボクセル化した車両34を示した。
【0044】
ステップS108では、三次元畳み込みニューラルネットワークを用いて演算パラメータを学習する。具体的には、ステップS106の処理で得られたボクセルデータのうち、1台分の車両のボクセルデータをテストデータ、残りの車両のボクセルデータを学習データとして三次元畳み込みニューラルネットワークに入力し、車両のレーダー断面積を推定する。そして、推定された車両のレーダー断面積が、ステップS104で記憶された目標値に近づくように、演算パラメータを学習する。学習された演算パラメータは、ハードディスク30Eに記憶する。
【0045】
次に、電磁波反射特性推定装置について説明する。
図6には、本実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40の構成を示した。電磁波反射特性推定装置40は、例えば車両のダッシュボード等、前方を走行する車両を撮影可能な位置に設置される。
【0046】
図6に示すように、電磁波反射特性推定装置40は、撮影部42、物体特徴量抽出部44、および推定部46を備える。
【0047】
撮影部42は、前方を走行する車両を撮影する。例えばCCDまたはCMOSセンサ等の撮像素子を備えたデジタルカメラ等が採用される。
【0048】
物体特徴量抽出部44は、撮影部42により撮影された撮影画像に基づいて、車両の形状を含む物体特徴量を抽出する。具体的には、物体特徴量抽出部44は、撮影画像に基づいて、パターンマッチング等の公知の手法により車両の形状を抽出し、抽出した車両の形状をボクセルデータに変換する。ボクセルデータへの変換は、学習装置10の特徴量抽出部14と同様の処理である。
【0049】
推定部46は、物体特徴量抽出部44により抽出された物体特徴量を入力として、学習装置10により学習された演算パラメータに基づいて車両のレーダー断面積を推定する。すなわち、学習装置10により学習された演算パラメータが設定された三次元畳み込みニューラルネットワークを用いて、撮影画像から得られた車両の形状を表すボクセルデータを入力として、レーダー断面積を推定する。
【0050】
図7は、電磁波反射特性推定装置40のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0051】
電磁波反射特性推定装置40は、コンピュータとしての機能を有し、CPU(Central Processing Unit)50A、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、不揮発性メモリ50D、ハードディスク50E、および通信インターフェース(I/F:Interface)部50Fを有する。そして、CPU50A、ROM50B、RAM50C、不揮発性メモリ50D、ハードディスク50E、および通信インターフェース部50Fは、バス50Gを介して互いに接続されている。
【0052】
CPU50Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。その際、RAM50Cをワークエリアとしてプログラムを実行する。
【0053】
不揮発性メモリ50Dは、電磁波反射特性推定装置40の電源をオフにしてもデータ内容が保持されるメモリである。
【0054】
ハードディスク50Eには、例えば後述する電磁波反射特性推定プログラム、演算パラメータ等が記憶される。なお、電磁波反射特性推定プログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。
【0055】
通信インターフェース部50Fは、図示しない外部装置と通信を行う。
【0056】
次に、CPU50Aで実行される電磁波反射特性推定処理について、
図8に示すフローチャートを参照して説明する。CPU50Aは、ハードディスク50Eに記憶された電磁波反射特性推定プログラムを読み込んで実行する。
【0057】
ステップS200では、前方の車両を撮影する。
【0058】
ステップS202では、ステップS200で撮影された撮影画像に基づいて、車両の形状を含む物体特徴量を抽出する。すなわち、撮影画像に基づいて車両の形状を抽出し、抽出した車両の形状をボクセルデータに変換する。
【0059】
ステップS204では、ステップS202の処理で得られたボクセルデータを、学習装置10により学習された演算パラメータが設定された三次元畳み込みニューラルネットワークに入力し、車両のレーダー断面積を推定する。
【0060】
このように、本実施形態では、学習装置10によって予め学習された演算パラメータが設定された三次元畳み込みニューラルネットワークを用いて車両のレーダー断面積を推定するため、車両のレーダー断面積を計算する時間を短縮して実時間による動作を可能にすることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、電磁波反射特性としてレーダー断面積を推定する三次元畳み込みニューラルネットワークで用いられる演算パラメータを学習する場合について説明したが、電磁波反射特性として電磁波反射強度を推定する三次元畳み込みニューラルネットワークで用いられる演算パラメータを学習する場合にも適用可能である。この場合、上記の「レーダー断面積」を「電磁波反射強度」に置き換えればよい。
【0062】
また、本実施形態では、電磁界シミュレーションによりレーダー断面積の目標値を算出する場合について説明したが、様々な形状の車両のレーダー断面積を実測し、実測したレーダー断面積を目標値として用いても良い。また、電磁波反射強度も同様に、様々な形状の車両の電磁波反射強度を実測し、実測した電磁波反射強度を目標値として用いても良い。
【0064】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する、このため、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図9は、第2実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40Aの構成図である。
図9に示すように、電磁波反射特性推定装置40Aは、判定部48を備えた点、推定部46が近傍用の演算パラメータまたは遠方用の演算パラメータに基づいてレーダー断面積を推定する点が、第1実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40と異なる。
【0066】
判定部48は、物体特徴量抽出部44が抽出した物体特徴量に基づいて、物体が近傍および遠方の何れであるかを判定する。例えば、物体特徴量として抽出した車両の形状のサイズ(例えば面積)が予め定めた閾値以上であれば物体が近傍に存在すると判定し、予め定めた閾値未満であれば物体が遠方に存在すると判定する。ここで、近傍とは、例えば自車両から前方の車両までの距離が数十メートル未満の場合をいい、遠方とは、自車両から前方の車両までの距離が数十メートル以上の場合をいう。従って、閾値は、自車両から前方の車両までの距離が数十メートルの場合に相当する車両のサイズに設定される。
【0067】
推定部46は、物体特徴量抽出部44により抽出された物体特徴量を入力として、車両が近傍の場合は、学習装置10により学習された近傍用の演算パラメータに基づいて車両のレーダー断面積を推定し、車両が遠方の場合は、学習装置10により学習された遠方用の演算パラメータに基づいて車両のレーダー断面積を推定する。
【0068】
なお、近傍用の演算パラメータは、学習装置10が
図3のステップS102で電磁界シミュレーションにより車両のレーダー断面積を推定する際に、電磁界シミュレーションのパラメータとして近傍の電磁界をシミュレーションするように設定して算出されたレーダー断面積を目標値として学習することで得られる。また、遠方用の演算パラメータは、学習装置10が
図3のステップS102で電磁界シミュレーションにより車両のレーダー断面積を推定する際に、電磁界シミュレーションのパラメータとして遠方の電磁界をシミュレーションするように設定して算出されたレーダー断面積を目標値として学習することで得られる。
【0069】
次に、CPU50Aで実行される電磁波反射特性推定処理について、
図10に示すフローチャートを参照して説明する。
【0070】
ステップS200、S202は、
図8のステップS200、S202と同一の処理である。
【0071】
ステップS203では、ステップS202で抽出された物体特徴量に基づいて、車両が近傍に存在するか否かを判定する。すなわち、車両の形状のサイズが閾値以上であれば車両が近傍に存在すると判定し、予め定めた閾値未満であれば車両が遠方に存在すると判定する。
【0072】
そして、車両が近傍に存在する場合には、ステップS204Aに移行し、車両が遠方に存在する場合には、ステップS204Bに移行する。
【0073】
ステップS204Aでは、近傍用の演算パラメータを用いた三次元畳み込みニューラルネットワークにより車両のレーダー断面積を推定する。
【0074】
一方、ステップS204Bでは、遠方用の演算パラメータを用いた三次元畳み込みニューラルネットワークにより車両のレーダー断面積を推定する。
【0075】
このように、本実施形態では、車両が近傍に存在するか遠方に存在するかを判定し、それぞれの場合に対応した演算パラメータを用いた三次元畳み込みニューラルネットワークによりレーダー断面積を推定するので、精度良くレーダー断面積を推定することができる。
【0076】
なお、第1実施形態でも説明したように、学習装置10は、レーダー断面積に代えて、電磁波反射強度を推定する三次元畳み込みニューラルネットワークで用いられる近傍用の演算パラメータおよび遠方用の演算パラメータを学習することもできる。
【0078】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、上記各実施形態と異なる部分を中心に説明する、このため、上記各実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0079】
図11は、第3実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40Bの構成図である。
図11に示すように、電磁波反射特性推定装置40Bは、周囲特徴量抽出部52を備えた点、推定部46が周囲特徴量抽出部52が抽出した周囲特徴量も用いてレーダー断面積を推定する点が、第1実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40と異なる。
【0080】
周囲特徴量抽出部52は、撮影部42により撮影された撮影画像に基づいて、車両の周囲を含む周囲特徴量を抽出する。具体的には、物体特徴量抽出部44が車両の形状を抽出する場合と同様に、撮影画像に基づいて、パターンマッチング等の公知の手法により車両の周囲、例えば建物、道路等の形状等を抽出し、抽出した周囲の形状等をボクセルデータ等に変換する。
【0081】
推定部46は、物体特徴量だけでなく周囲特徴量も三次元畳み込みニューラルネットワークに入力して車両のレーダー断面積を推定する。
【0082】
次に、CPU50Aで実行される電磁波反射特性推定処理について、
図12に示すフローチャートを参照して説明する。
【0083】
ステップS200、S202は、
図8のステップS200、S202と同一の処理である。
【0084】
ステップS203Aでは、ステップS200で撮影された撮影画像に基づいて、車両の周囲を含む周囲特徴量を抽出する。すなわち、撮影画像に基づいて車両の周囲の形状を抽出し、抽出した車両の周囲の形状をボクセルデータに変換する。
【0085】
ステップS204では、ステップS202の処理で得られた車両の形状のボクセルデータおよびステップS203Aの処理で得られた車両の周囲の形状のボクセルデータを、学習装置10により学習された演算パラメータが設定された三次元畳み込みニューラルネットワークに入力し、車両のレーダー断面積を推定する。
【0086】
このように、本実施形態では、周囲特徴量も考慮してレーダー断面積が推定されるので、精度良くレーダー断面積を推定することができる。
【0088】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、上記各実施形態と異なる部分を中心に説明する、このため、上記各実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0089】
図13は、第4実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40Cの構成図である。
図13に示すように、電磁波反射特性推定装置40Cは、第1の推定部46A、第2の推定部46B、および第3の推定部46Cを備えた点が、第1実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40と異なる。
【0090】
第1の推定部46Aは、第1の推定部46と同様の機能を有する。すなわち、第1の推定部46Aは、物体特徴量抽出部44により抽出された物体特徴量を入力として、学習装置10により学習された演算パラメータ、具体的には、レーダー断面積を推定する三次元畳み込みニューラルネットワークについて学習された演算パラメータに基づいて物体のレーダー断面積を推定する。
【0091】
第2の推定部46Bは、第1の推定部46Bにより推定された車両のレーダー断面積を入力として、学習装置10により学習された演算パラメータ、具体的には、第2実施形態で説明したように、電磁波反射強度を推定する三次元畳み込みニューラルネットワークについて学習された近傍用の演算パラメータに基づいて車両の電磁波反射強度を推定する。
【0092】
第3の推定部46Cは、第2の推定部46Bにより推定された車両の電磁波反射強度を入力として、学習装置により学習された演算パラメータ、具体的には、第2実施形態で説明したように、電磁波反射強度を推定する三次元畳み込みニューラルネットワークについて学習された遠方用の演算パラメータに基づいて車両の電磁波反射強度を推定する。
【0093】
次に、CPU50Aで実行される電磁波反射特性推定処理について、
図14に示すフローチャートを参照して説明する。
【0094】
ステップS200、S202、S204は、
図8のステップS200、S202、S204と同一の処理である。
【0095】
ステップS206Aは、
図10のステップ204Aと同様の処理であるが、レーダー断面積ではなく電磁波反射強度を推定する点が異なる。すなわち、ステップS206では、近傍用の演算パラメータに基づいて車両の電磁波反射強度を推定する。
【0096】
ステップS206Bは、
図10のステップ204Bと同様の処理であるが、レーダー断面積ではなく電磁波反射強度を推定する点が異なる。すなわち、ステップS206Bでは、遠方用の演算パラメータに基づいて車両の電磁波反射強度を推定する。
【0097】
このように、本実施形態では、第1の推定部46A〜第3の推定部46Cを直列に接続した構成として車両の電磁波反射強度を推定するので、精度良く電磁波反射強度を推定することができる。
【0099】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態では、上記各実施形態と異なる部分を中心に説明する、このため、上記各実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0100】
図15は、第5実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40Dの構成図である。
図15に示すように、電磁波反射特性推定装置40Dは、第3実施形態で説明した周囲特徴量抽出部52を備えた点が、第4実施形態に係る電磁波反射特性推定装置40Dと異なる。
【0101】
第2の推定部46Bは、第1の推定部46Aが推定した車両のレーダー断面積および周囲特徴量抽出部52が抽出した周囲特徴量を入力として、車両の電磁波反射強度を推定する。
【0102】
第3の推定部46Cは、第2の推定部46Bが推定した車両の電磁波反射強度および周囲特徴量抽出部52が抽出した周囲特徴量を入力として、車両の電磁波反射強度を推定する。
【0103】
次に、CPU50Aで実行される電磁波反射特性推定処理について、
図16に示すフローチャートを参照して説明する。
【0104】
ステップS200、S202、S204は、
図14のステップS200、S202、S204と同一の処理である。また、ステップS203Aの処理は、
図12のステップS203Aと同一の処理である。
【0105】
ステップS206Aは、ステップS203Aで抽出した周囲特徴量も三次元畳み込みニューラルネットワークに入力する点が
図14のステップS206Aと異なるが、その他は同じである。
【0106】
ステップS206Bは、ステップS203Aで抽出した周囲特徴量も三次元畳み込みニューラルネットワークに入力する点が
図14のステップS206Bと異なるが、その他は同じである。
【0107】
このように、本実施形態では、周囲特徴量も考慮して車両の電磁波反射強度を推定するので、精度良く電磁波反射強度を推定することができる。
【0109】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0110】
まず、物体の3次元形状の公開データセットであるNTU 3D Model Databaseに含まれる車両27台について、FDTD法を改良した手法である有限積分法(finite integration technique:FIT)を用いた電磁界シミュレーションにより、車両正面から2度刻みでパルス状の平面波を入射させた場合のレーダー断面積を算出した。算出したレーダー断面積の結果を
図17に示す。
【0111】
次に、27台の内の1台をテストデータとし、残りの26台分のデータを学習データとして、3次元畳み込みニューラルネットワークに対して二値化した64×64×32ボクセルで表現した車両の形状を入力し、レーダー断面積の出力を学習させた。
【0112】
その結果、レーダー断面積の推定値と目標値の相関係数は27台で平均して0.63であった。また、車両1台に対して1つの入射角度でのレーダー断面積の計算時間は平均5.4msと非常に高速であった。従来法を用いた場合の計算時間は高性能のパーソナルコンピュータを用いた場合でも30s程度はかかるため、5000分の1以下に短縮できたことになり、実時間による動作が可能であることが判った。
【0113】
また、
図18に示すような新規の車両54に対してレーダー断面積(RCS推定値)を推定した結果と電磁波シミュレーションによりレーダー断面積(RCS目標値)を算出した結果を
図19に示した。この例では、RCS推定値とRCS目標値との相関係数は0.89であった。
【0114】
このように、新規の車両に対しても精度良くレーダー断面積を推定することができることが判った。