(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記x方向分割用溝および前記y方向分割用溝ならびに前記底面露出用溝をそれぞれ形成する工程は、ダイサーを用いて実施される、請求項1または2に記載の巻線用コアの製造方法。
前記底面露出用溝を形成する工程は、前記巻芯部底面が前記巻芯部の中心軸線に対して勾配を持つように前記底面露出用溝を形成する工程を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の巻線用コアの製造方法。
前記底面露出用溝を形成する工程は、前記巻芯部底面が前記巻芯部の中心軸線方向に配列された凹凸を持つように前記底面露出用溝を形成する工程を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の巻線用コアの製造方法。
前記マザー基板を分割する工程の前に、前記巻芯部天面を前記鍔部天面より低くするため、前記マザー基板の前記第2の主面側であって、前記底面露出用溝と整列する位置に、前記巻芯部天面となるべき面を露出させるための複数の天面露出用溝を形成する工程をさらに備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の巻線用コアの製造方法。
前記天面露出用溝を形成する工程は、前記巻芯部天面が前記巻芯部の中心軸線に対して勾配を持つように前記天面露出用溝を形成する工程を含む、請求項6または7に記載の巻線用コアの製造方法。
前記天面露出用溝を形成する工程は、前記巻芯部天面が前記巻芯部の中心軸線方向に配列された凹凸を持つように前記天面露出用溝を形成する工程を含む、請求項6または7に記載の巻線用コアの製造方法。
前記マザー基板を分割する工程の前に、前記第1および第2の巻芯部側面を、それぞれ、前記第1および第2の鍔部側面より低く位置させるための複数の貫通孔を前記マザー基板に設ける工程をさらに備える、請求項1ないし9のいずれかに記載の巻線用コアの製造方法。
前記導体膜を形成する工程は、前記端子電極の前記鍔部底面上での形状に合わせて前記導体膜を前記マザー基板の前記第1の主面上に形成する工程を含む、請求項11に記載の巻線用コアの製造方法。
前記導体膜を形成する工程は、前記導体膜を前記マザー基板の前記第1の主面上に形成する工程と、次いで、前記端子電極の前記鍔部底面上での形状に合わせて前記導体膜を部分的に除去する工程を含む、請求項11に記載の巻線用コアの製造方法。
前記導体膜を部分的に除去する工程は、前記導体膜を分断するように、ダイサーを用いて前記マザー基板の前記第1の主面側に分断用溝を形成する工程を含む、請求項13に記載の巻線用コアの製造方法。
前記マザー基板を分割する工程の前に、前記導体膜を下地層として、その上に電解めっきによってめっき層を形成する工程をさらに備える、請求項11ないし14のいずれかに記載の巻線用コアの製造方法。
前記x方向分割用溝を形成する工程は、前記マザー基板における隣り合う2つの前記巻線用コアとなるべき領域間を区画する前記x方向分割線に沿って、少なくとも2本の互いに平行な前記x方向分割用溝を形成する工程を含み、
前記y方向分割用溝を形成する工程は、前記マザー基板における隣り合う2つの前記巻線用コアとなるべき領域間を区画する前記y方向分割線に沿って、少なくとも2本の互いに平行な前記y方向分割用溝を形成する工程を含む、
請求項1ないし15のいずれかに記載の巻線用コアの製造方法。
前記マザー基板を構成する前記非導電性材料はセラミックであり、前記セラミックを焼成する工程をさらに備える、請求項1ないし16のいずれかに記載の巻線用コアの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載の技術は、いずれも、比較的小型の巻線型電子部品において用いられる巻線用コアの製造方法に関するものであり、たとえば特許文献2の段落0051に記載されているように、巻線型電子部品として、1.6mm×0.8mm×0.8mmサイズのインダクタを想定している。
【0007】
しかし、特許文献1または2に記載の技術を適用して、より小型の巻線型電子部品、たとえば、平面寸法が0.4mm×0.2mmまたは0.2mm×0.1mmというように、長手方向寸法が1mm未満の超小型の巻線型電子部品を得ようとすると、ダイサーなどによる個片化の工程などにおいて、強度不足により、巻線用コアに割れや欠けが発生すると考えられる。
【0008】
そこで、この発明の目的は、上述した問題を解決し得る、すなわち、得ようとする巻線用コアが小型化されても、割れや欠けが生じにくい、巻線用コアの製造方法を提供しようとすることである。
【0009】
この発明の他の目的は、上述の製造方法によって有利に製造さ
れる巻線用コ
アの出荷形態となり得る巻線用コア集合体を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、まず、巻線用コアの製造方法に向けられる。
【0011】
当該製造方法によって製造される巻線用コアは、巻線を配置すべきものであって、長手方向での中央部に位置する巻芯部と、巻芯部の長手方向における互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ連接して設けられた第1および第2の鍔部と、を備えている。
【0012】
上記巻芯部は、実装時において実装基板側に向けられる巻芯部底面と、巻芯部底面の反対側の巻芯部天面と、巻芯部底面と巻芯部天面とを連結する方向に延びかつ互いに逆の側方に向く第1および第2の巻芯部側面と、を有している。
【0013】
また、上記第1および第2の鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられかつ巻芯部底面よりも実装基板の近くに位置する鍔部底面と、鍔部底面の反対側の鍔部天面と、実装基板に対して直交する方向に延びるものであって、鍔部底面と鍔部天面とを連結しながら、互いに逆の側方に向く第1および第2の鍔部側面と、巻芯部側に向きかつ巻芯部の各端部を位置させる内側端面と、内側端面の反対側の外側に向く外側端面と、を有している。
【0014】
以上のような構成を有する巻線用コアを製造するため、この発明に係る製造方法は、次のような工程、すなわち、
・互いに直交する複数のx方向分割線および複数のy方向分割線にそれぞれ沿う分割によって複数の巻線用コアを得ることができる、非導電性材料からなるマザー基板を用意する工程と、
・マザー基板の第1の主面側に、x方向分割線に沿う複数のx方向分割用溝を形成する工程と、
・マザー基板の第1の主面側に、y方向分割線に沿う複数のy方向分割用溝を形成する工程と、
・マザー基板の第1の主面側に、上記巻芯部底面となるべき面を露出させるための複数の底面露出用溝をx方向分割用溝およびy方向分割用溝よりも浅く形成する工程と、
・個片化された複数の巻線用コアを得るため、マザー基板の第1の主面とは反対側の第2の主面を、x方向分割用溝およびy方向分割用溝に到達するまで平面加工することによって、マザー基板を分割する工程と、
を備えることを特徴としている。
【0015】
この発明に係る巻線用コアの製造方法では、マザー基板を分割する工程を最終的に実施する前に、巻線用コアにとって必要な形態をマザー基板の段階で与えておき、マザー基板の第2の主面を、x方向分割用溝およびy方向分割用溝に到達するまで平面加工することによって、マザー基板を分割するようにしているので、割れや欠けに遭遇する確率を低減することができる。
【0016】
得られた巻線用コアは、鍔部底面が巻芯部底面よりも実装基板の近くに位置する形態、言い換えると、巻芯部底面が鍔部底面より低く位置する形態を有している。
【0017】
上述の形態を有する巻線用コアによれば、特に巻芯部底面側において、巻線による電子部品の高さ寸法への影響を低減することができるばかりでなく、実装時のはんだが巻線に付着する可能性を低減することができる。
【0018】
上述のマザー基板を分割する工程は、マザー基板を第1の主面側から補強した状態で実施されることが好ましい。この構成によれば、分割時のマザー基板の取扱いがより容易になり、得ようとする巻線用コアの低背化にも寄与し得る。
【0019】
この発明に係る製造方法において、上述したx方向分割用溝およびy方向分割用溝ならびに底面露出用溝をそれぞれ形成する工程は、ダイサーを用いて実施されることが好ましい。ダイサーを用いると、ブレード先端をドレスしながら平面加工することができるので、x方向分割用溝、y方向分割用溝および底面露出用溝を正確な位置に正確な寸法をもって再現性良く形成することができる。また、ダイサーによれば、そのプログラムを変更するのみで、容易に設計変更に対応することができる。また、得られる巻線用コアの外形を規定するx方向分割用溝、y方向分割用溝および底面露出用溝といった3種類の溝を、ともに、同じ加工設備であるダイサーで形成するようにすれば、異なる複数プロセスを用いた場合に生じ得るプロセス間の加工精度の差異による形状のばらつきが発生せず、また、これら3種類の溝を段取り替えなしに能率的に形成することができる。
【0020】
この発明に係る製造方法において、底面露出用溝を形成するにあたって、巻芯部底面が巻芯部の中心軸線に対して勾配を持つように底面露出用溝を形成するようにしてもよい。この製造方法によって得られた巻線用コアによれば、巻芯部底面側に勾配を与えることができるので、これを用いてコイル部品を構成したとき、巻芯部に螺旋状に巻回された巻線の線間に形成される分布容量を低減することができる。
【0021】
この発明に係る製造方法において、底面露出用溝を形成するにあたって、巻芯部底面が巻芯部の中心軸線方向に配列された凹凸を持つように底面露出用溝を形成するようにしてもよい。この製造方法によって得られた巻線用コアによれば、巻芯部に巻回される巻線の巻回ピッチを凹凸によって決めることができるので、これを用いて構成されたコイル部品のインダクタンス等の特性のばらつきを低減することができる。また、凹凸が鋸歯状に形成され、1つの鋸歯が持つ勾配部分に複数ターンの巻線が並ぶように巻回されると、上述した実施形態の場合と同様、巻線の線間に形成される分布容量を低減することができる。
【0022】
マザー基板を分割する工程の前に、巻芯部天面を鍔部天面より低くするため、マザー基板の第2の主面側であって、底面露出用溝と整列する位置に、巻芯部天面となるべき面を露出させるための複数の天面露出用溝を形成する工程がさらに実施されてもよい。この製造方法によれば、鍔部底面が巻芯部底面よりも実装基板の近くに位置する形態が得られるだけでなく、巻芯部天面が鍔部天面より低く位置する形態、言い換えると、巻芯部天面が鍔部天面より巻芯部の中心軸線により近く位置する形態を有する巻線用コアを得ることができる。
【0023】
上述の形態を有する巻線用コアによれば、たとえば、巻線が鍔部天面より高くはみ出して巻線付き電子部品の外形が大きくなるといった、巻線による電子部品の高さ寸法への影響を低減することができるとともに、巻線が巻線用コアから突出しないので、電子部品の実装時において、実装機による電子部品のピックアップ性を向上させることができる。
【0024】
上述した天面露出用溝を形成する工程についても、ダイサーを用いて実施されることが好ましい。ダイサーを用いると、天面露出用溝を正確な位置に正確な寸法をもって再現性良く形成することができる。
【0025】
また、上述の天面露出用溝を形成する場合、巻芯部天面が巻芯部の中心軸線に対して勾配を持つように天面露出用溝を形成するようにしてもよい。この製造方法によって得られた巻線用コアによれば、巻芯部天面側に勾配を与えることができるので、これを用いてコイル部品を構成したとき、巻芯部に螺旋状に巻回された巻線の線間に形成される分布容量を低減することができる。
【0026】
上述の天面露出用溝を形成する場合、巻芯部天面が巻芯部の中心軸線方向に配列された凹凸を持つように天面露出用溝を形成するようにしてもよい。この製造方法によって得られた巻線用コアによれば、巻芯部に巻回される巻線の巻回ピッチを凹凸によって決めることができるので、これを用いて構成されたコイル部品のインダクタンス等の特性のばらつきを低減することができる。また、凹凸が鋸歯状に形成され、1つの鋸歯が持つ勾配部分に複数ターンの巻線が並ぶように巻回されると、上述した実施形態の場合と同様、巻線の線間に形成される分布容量を低減することができる。
【0027】
この発明において、マザー基板を分割する工程の前に、第1および第2の巻芯部側面を、それぞれ、第1および第2の鍔部側面より低く位置させるための複数の貫通孔をマザー基板に設ける工程がさらに実施されてもよい。この製造方法によれば、貫通孔をマザー基板に設けるだけで、得られた巻線用コアにおいて、巻芯部側面を鍔部側面より低く位置させること、言い換えると、巻芯部側面を鍔部側面より巻芯部の中心軸線により近く位置させることができる。
【0028】
上述の形態を有する巻線用コアによれば、たとえば、巻線が鍔部側面より外側にはみ出して巻線付き電子部品の外形が大きくなるといった、巻線による電子部品の幅寸法への影響を低減することができる。
【0029】
この発明によって製造される巻線用コアは、第1および第2の鍔部の各々の鍔部底面上に設けられた少なくとも1つの端子電極をさらに備えることが好ましい。このように、端子電極を設けるためには、マザー基板を分割する工程の前に、マザー基板の第1の主面上に端子電極となるべき導体膜を形成する工程をさらに実施すればよい。この構成によれば、マザー基板を分割した段階で、端子電極を備える巻線用コアを得ることができる。したがって、個片化後の個々の巻線用コアに端子電極を形成する場合に比べて、製造効率を大幅に向上させることができる。
【0030】
上述の実施形態において、導体膜を形成するため、端子電極の鍔部底面上での形状に合わせて導体膜をマザー基板の第1の主面上に形成しても、あるいは、導体膜をマザー基板の第1の主面上に形成し、次いで、端子電極の鍔部底面上での形状に合わせて導体膜を部分的に除去するようにしてもよい。
【0031】
後者のように、導体膜を部分的に除去するにあたっては、導体膜を分断するように、ダイサーを用いてマザー基板の第1の主面側に分断用溝を形成するようにすれば、前述したx方向分割用溝、y方向分割用溝および底面露出用溝の形成のための加工設備と共通する加工設備を用いることができるので、これらの溝を段取り替えなしに能率的に形成することができる。したがって、異なるプロセス間の加工精度の差異によるコア形状のばらつきが発生しないため、巻線用コアの寸法精度の向上を図ることができる。
【0032】
上述のように、端子電極となるべき導体膜を形成する場合、マザー基板を分割する工程の前に、導体膜を下地層として、その上に電解めっきによってめっき層を形成する工程がさらに実施されることが好ましい。このように、マザー基板を分割する前に電解めっきを実施すれば、マザー基板を分割した後の個片化された巻線用コアの状態で電解めっきを実施する場合に比べて、能率的な電解めっきが可能となる。
【0033】
この発明において、前述したx方向分割用溝を形成する工程は、マザー基板における隣り合う2つの巻線用コアとなるべき領域間を区画するx方向分割線に沿って、少なくとも2本の互いに平行なx方向分割用溝を形成する工程を含み、前述したy方向分割用溝を形成する工程は、マザー基板における隣り合う2つの巻線用コアとなるべき領域間を区画するy方向分割線に沿って、少なくとも2本の互いに平行なy方向分割用溝を形成する工程を含むことが好ましい。
【0034】
この製造方法によれば、マザー基板を平面加工して分割する工程において、マザー基板に及ぼされる加工圧力が分散され、その結果、製品としての巻線用コアが位置する領域における加工負荷が低減され、製品としての巻線用コアにおいて割れ等をより生じにくくすることができる。
【0035】
この発明において、マザー基板を構成する非導電性材料は、好ましくは、セラミックである。この場合、セラミックを焼成する工程がいずれかの段階で実施される。このように、マザー基板をセラミックから構成すると、たとえばフェライトのような磁性体からなる巻線用コアを得ることができる。
【0036】
この発明は、また
、上述した製造方法によって有利に製造されることができる
巻線用コアの出荷形態となり得る巻線用コア集合体にも向けられる。
【0037】
この発明に係る
巻線用コア集合体に備える巻線用コアは、巻線を配置すべきものであって、長手方向での中央部に位置する巻芯部と、巻芯部の長手方向における互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ連接して設けられた第1および第2の鍔部と、第1および第2の鍔部の各々に設けられた少なくとも1つの端子電極と、を備えている。
【0038】
上記巻芯部は、実装時において実装基板側に向けられる巻芯部底面と、巻芯部底面の反対側の巻芯部天面と、巻芯部底面と巻芯部天面とを連結する方向に延びかつ互いに逆の側方に向く第1および第2の巻芯部側面と、を有している。
【0039】
また、上記第1および第2の鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられかつ巻芯部底面よりも実装基板の近くに位置する鍔部底面と、鍔部底面の反対側の鍔部天面と、実装基板に対して直交する方向に延びるものであって、鍔部底面と鍔部天面とを連結しながら、互いに逆の側方に向く第1および第2の鍔部側面と、巻芯部側に向きかつ巻芯部の各端部を位置させる内側端面と、内側端面の反対側の外側に向く外側端面と、を有している。
ここで、第1の鍔部の鍔部天面と第2の鍔部の鍔部天面とは、同時に平面加工することによって形成されたものである。
【0040】
そして、端子電極は、少なくとも下地層を含み、当該下地層は、第1および第2の鍔部側面ならびに内側端面および外側端面のいずれにも回り込むことなく鍔部底面上に形成されていることを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、巻線用コアにおいて割れや欠けなどを発生しにくくすることができる。
【0042】
上述した巻線用コアにおいて、端子電極は、上記下地層上に形成されためっき層をさらに備えていてもよい。したがって、上述したように、第1および第2の鍔部側面ならびに内側端面および外側端面のいずれにも回り込むことなく設けられるのは端子電極の下地層のみであり、めっき層については、第1および第2の鍔部側面ならびに内側端面および外側端面の少なくともいずれかに回り込んでいてもよい。
【0043】
さらに、この発明
に係る巻線用コア集合体は、上述した複数の巻線用コアと、これら複数の巻線用コアを互いに直交するx方向およびy方向に整列させた状態で、複数の巻線用コアの端子電極側を粘着保持したキャリアシートと、を備え
る。この巻線用コア集合体は、前述した巻線用コアの製造方法において、マザー基板を分割するための平面加工工程の直後に得られる中間製品の形態に相当する。この巻線用コア集合体は、製品としての巻線用コアの出荷形態、あるいは製造工程途中の搬送形態となり得る。また、この発明に係る巻線用コア集合体によれば、割れや欠けなどが発生しにくい状態で巻線用コアを効率的に出荷または搬送することができる。
【発明の効果】
【0044】
この発明に係る巻線用コアの製造方法によれば、前述したように、マザー基板を分割する工程を最終的に実施する前に、巻線用コアにとって必要な形態をマザー基板の段階で与えておき、マザー基板の第2の主面を、x方向分割用溝およびy方向分割用溝に到達するまで平面加工することによって、マザー基板を分割するようにしているので、割れや欠けに遭遇する確率を低減することができる。したがって、長手方向寸法がたとえば1mm未満の超小型の巻線用コアであっても、高い歩留まりをもって、これを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[第1の実施形態]
まず、
図1および
図2を参照して、この発明の第1の実施形態による巻線用コア1を備える巻線付き電子部品2について説明する。
図1および
図2では、巻線付き電子部品2または巻線用コア1が、実装基板側Mに向けられる面を上方にして示されている。図示した巻線付き電子部品2は、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するものである。
【0047】
巻線付き電子部品2に備える巻線用コア1は、巻線3および4を配置した巻芯部5を備えている。巻線3および4は省略的に図示されている。巻芯部5は、巻線用コア1の長手方向での中央部に位置している。巻線用コア1には、巻芯部5の長手方向における互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ連接して、第1および第2の鍔部6および7が設けられる。上述の巻芯部5と第1および第2の鍔部6および7とは一体化されている。
【0048】
巻線用コア1は、非導電性材料、より具体的には、アルミナ、ガラス、樹脂のような非磁性体、フェライト、磁性粉含有樹脂のような磁性体から構成される。巻線用コア1が、後述する製造方法によって製造される場合には、好ましくは、アルミナ、ガラスまたはフェライトを含むセラミックから構成される。
【0049】
巻芯部5ならびに鍔部6および7は、巻芯部5の長手方向に直交する面に沿って切断した断面の形状が矩形または略矩形である。
【0050】
その結果として、巻芯部5は、実装時において実装基板側Mに向けられる巻芯部底面8と、巻芯部底面8の反対側の巻芯部天面9と、巻芯部底面8と巻芯部天面9とを連結する方向に延びかつ互いに逆の側方に向く第1および第2の巻芯部側面10および11と、を有する。
【0051】
また、第1および第2の鍔部6および7の各々は、実装時において実装基板側Mに向けられかつ巻芯部底面8よりも実装基板の近くに位置する鍔部底面12と、鍔部底面12の反対側の鍔部天面13と、実装基板に対して直交する方向に延びるものであって、鍔部底面12と鍔部天面13とを連結しながら、互いに逆の側方に向く第1および第2の鍔部側面14および15と、巻芯部5側に向きかつ巻芯部5の各端部を位置させる内側端面16と、内側端面16の反対側の外側に向く外側端面17と、を有する。
【0052】
なお、図示しないが、巻線用コア1の外形に現れる稜線部分および角部分には、たとえば噴射加工によるアール面取りが施されることが好ましい。
【0053】
第1の鍔部6には、第1および第2の端子電極18および19が設けられる。第2の鍔部7には、第3および第4の端子電極20および21が設けられる。
図1および
図2では図示されないが、端子電極18〜21は、下地層とその上に形成されるめっき層とからなることが好ましい。端子電極18〜21の下地層は、たとえば、銀、金、銅、ニッケル等の金属を導電成分として含んでいる。また、めっき層は、たとえば、ニッケルめっき膜および錫めっき膜から構成される。めっき層は銅めっき膜を含んでいてもよい。
【0054】
巻線3および4は、たとえば、ポリウレタンやポリイミドなどの樹脂で絶縁被覆された銅線からなる。巻線3および4は、巻芯部
5上で互いに同方向に螺旋状に巻回された状態とされる。第1の巻線3の第1端3aは第1の端子電極18に接続され、第1の巻線3の第1端3aとは逆の第2端3bは第3の端子電極20に接続される。第2の巻線4の第1端4aは第2の端子電極19に接続され、第2の巻線4の第1端4aとは逆の第2端4bは第4の端子電極21に接続される。端子電極18〜21と巻線3および4との接続には、たとえば熱圧着が適用される。
【0055】
前述したように、鍔部底面12は、巻芯部底面8よりも実装基板の近くに位置する、言い換えると、鍔部底面12は、巻芯部底面8より高く位置するので、巻線3および4は、実装基板側Mにおいて、鍔部6および7より外方へはみ出さないようにすることができる。したがって、実装基板側Mからの応力の印加に対して、巻線3および4を保護することができ、また、巻線3および4が電子部品2の高さ寸法に及ぼす影響を低減できる。また、実装時において、端子電極18〜21に付与されるはんだと巻線3および4との間に一定以上の距離を保つことができ、はんだが巻線3および4に付着したりして、巻線3および4に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0056】
また、鍔部天面13は、巻芯部天面9より高く位置している。したがって、巻線3および4は、巻芯部天面9側においても、鍔部6および7より外方へはみ出さないようにすることができる。したがって、実装基板に電子部品2を実装する際の実装機からの応力の印加に対して、巻線3および4を保護することができ、また、実装機に対する巻線3および4の干渉を低減することで、実装機による実装性も向上できる。さらに、巻線3および4により電子部品2の高さ寸法が受ける影響を低減できる。
【0057】
次に、
図3ないし
図9を参照して、
図2に示した巻線用コア1の製造方法について説明する。
【0058】
まず、
図3に示すように、非導電性材料、たとえば、アルミナ、ガラスまたはフェライトを含むセラミックからなるマザー基板22が用意される。マザー基板22からは、互いに直交する複数のx方向分割線25および複数のy方向分割線26(
図4参照)にそれぞれ沿う分割によって複数の巻線用コア1を得ることができる。マザー基板22の厚みは、以下の加工に耐え得る強度を確保するため、より厚い方が好ましく、たとえば、得ようとする巻線用コア1の厚み、すなわち、鍔部底面12と鍔部天面13との間の寸法の約1.2倍以上とされることが好ましい。ただし、別の補強部材を用いた補強によって強度を確保してもよく、その場合には、マザー基板22の厚みに制限はない。
【0059】
マザー基板22は、焼結済みのものであっても、未焼成のものであってもよい。マザー基板22が未焼成のものである場合には、以下に説明するいずれかの工程の前または後に、セラミックを焼成する工程が実施される。すなわち、焼成する工程は、後述の分割用溝を形成する工程の前であってもよいし、分割用溝を形成する工程の後のマザー基板を分割する工程の前であってもよいし、マザー基板を分割する工程の後であってもよい。
【0060】
次に、同じく
図3に示すように、マザー基板22の第1の主面221には、前述した端子電極18〜21となるべき導体膜23が形成される。導体膜23は、たとえば、銀、金、銅、ニッケル等の金属を導電成分として含んでいる。導体膜23は、たとえば、スパッタリング、導電性ペーストの印刷、無電解めっきなどによって形成されるが、特に、スパッタリングによって形成されることが好ましい。スパッタリングによれば、緻密で欠陥が少なく、マザー基板22との密着性に優れた導体膜23を形成することができる。また、スパッタリングによれば、印刷法に比べて、導体膜23をより薄く形成することができるので、後述するダイサーによる溝形成工程でダイサーの目詰まりを生じにくくすることができる。
【0061】
導体膜23は、ストライプ状をなしている。導体膜23のこの形状は、端子電極18〜21の鍔部底面12上での形状に合うように選ばれたもので、導体膜23が形成されないストライプ状の領域24は、後述する説明から明らかになるように、
図1および
図2に示した第1および第2の端子電極18および19間のギャップならびに第3および第4の端子電極20および21間のギャップを与えるためのものである。
【0062】
ストライプ状の導体膜23を形成するため、マザー基板22の第1の主面221上に、当初からストライプ状の形状をもって導体膜23を形成しても、導体膜23をマザー基板22の第1の主面221上に形成した後、ストライプ状となるように、導体膜23を部分的に除去するようにしてもよい。
【0063】
前者のように、当初からストライプ状の形状をもって導体膜23を形成する場合には、たとえば、マスクを介した上で、スパッタリング法や導電性ペーストを用いた印刷法を適用すればよい。他方、後者のように、ストライプ状となるように、導体膜23を部分的に除去する場合には、たとえば、エッチング法が適用される。さらに、導体膜23を部分的に除去するにあたっては、後述する
図20ないし
図22に示す実施形態のように、導体膜23を分断する溝を形成する方法も適用可能である。
【0064】
次に、
図4に示すように、マザー基板22の第1の主面221側に、x方向分割線25に沿って複数のx方向分割用溝27が形成され、他方、y方向分割線26に沿って複数のy方向分割用溝28が形成される。また、マザー基板22の第1の主面221側に、前述した巻芯部底面8となるべき面を露出させるための複数の底面露出用溝29が、y方向に延びながら、x方向分割用溝27およびy方向分割用溝28よりも浅く形成される。
【0065】
x方向分割用溝27は、
図6にも図示されている。y方向分割用溝28は、
図5にも図示されている。底面露出用溝29は、
図5および
図6にも図示されている。
【0066】
また、
図4において、1つの巻線用コア1となるべき部分を太線で囲んで示している。すなわち、
図4の左上に表示された太線が1つの巻線用コア1となるべき部分を示している。この段階で、巻線用コア1における、鍔部底面12が巻芯部底面8よりも実装基板の近くに位置する形態、言い換えると、巻芯部底面8が鍔部底面12より低く位置する形態が付与され、鍔部底面12上に、端子電極18〜21が形成された状態が得られている。
【0067】
上述したx方向分割用溝27およびy方向分割用溝28ならびに底面露出用溝29をそれぞれ形成する工程は、ダイサーを用いて実施されることが好ましい。ダイサーを用いると、ブレード先端をドレスしながら研削加工することができるので、x方向分割用溝27、y方向分割用溝28および底面露出用溝29を正確な位置に正確な寸法をもって再現性良く形成することができる。また、ダイサーによれば、そのプログラムを変更するのみで、容易に設計変更に対応することができる。さらに、x方向分割用溝27、y方向分割用溝28および底面露出用溝29といった3種類の溝を、ともに、同じ加工設備であるダイサーで形成するようにすれば、異なる複数プロセスを用いた場合に生じ得るプロセス間の加工精度の差異による形状のばらつきが発生せず、また、これら3種類の溝を段取り替えなしに能率的に形成することができる。
【0068】
次に、
図7に示すように、端子電極18〜21となるべき導体膜23を下地層として、その上に電解めっきによってめっき層30が形成される。めっき層30は、たとえば、ニッケルめっき膜および錫めっき膜から構成される。
【0069】
以上の
図3ないし
図7に示した工程は、
図5ないし
図7に示すように、マザー基板22の第2の主面222側をキャリアシート31によって粘着保持することによって、補強した状態で実施されることが好ましい。これによって、マザー基板22において、前述した工程における種々の加工に耐え得る強度が確保される。キャリアシート31としては、通常、可撓性を有する樹脂フィルムからなるものが用いられるが、マザー基板22に対して、より高い強度を与えるため、より剛性の高い材質からなるキャリアシート31が用いられてもよい。
【0070】
なお、補強方法として、上述したようなキャリアシート31の貼付け以外にも、樹脂や金属膜などのコーティングが採用されてもよい。また、補強は、第2の主面222の全面を補強する必要は無く、部分的な貼付けまたはコーティングによる補強であってもよい。
【0071】
また、形成すべき分割用溝27および28の深さは、製造しようとする巻線用コア1のサイズに依存するものであるが、このような分割用溝27および28の深さに対して、マザー基板22自体の厚みが十分大きい場合には、補強を不要とすることもできる。
【0072】
次に、
図8に示すように、上述したキャリアシート31がマザー基板22の第2の主面222側から剥がされ、代わりに、マザー基板22の第1の主面221側にキャリアシート32が配置される。また、マザー基板22が反転され、第2の主面222が上方に向くようにされる。キャリアシート32は、キャリアシート31の場合と同様、マザー基板22を粘着保持することによって補強するものである。キャリアシート32についても、通常、可撓性を有する樹脂フィルムからなるが、マザー基板22に対して、より高い強度を与えるため、より剛性の高い材質から構成されてもよい。
【0073】
次に、同じく
図8に示すように、マザー基板22の第2の主面222側であって、底面露出用溝29と整列する位置に、巻芯部天面9となるべき面を露出させるための複数の天面露出用溝33が形成される。
【0074】
上述した天面露出用溝33を形成する工程においても、ダイサーを用いることが好ましい。ダイサーを用いると、前述したx方向分割用溝27およびy方向分割用溝28ならびに底面露出用溝29をそれぞれ形成する工程においてダイサーを用いた場合と同様の利点が奏され、天面露出用溝33を正確な位置に正確な寸法をもって再現性良く形成することができる。
【0075】
次に、
図8に示すように、マザー基板22の第1の主面221側からキャリアシート32を粘着させることによってマザー基板22を補強した状態で、マザー基板22の第2の主面222が、x方向分割用溝27およびy方向分割用溝28に到達するまで、たとえば、
図8において1点鎖線34で示した位置まで平面加工される。この平面加工後の状態が
図9に示されている。なお、平面加工とは、研削、研磨、切削などを含む加工を指す。
【0076】
上記工程によって、巻芯部天面9が鍔部天面13より低く位置する形態、言い換えると、巻芯部天面9が鍔部天面13より巻芯部5の中心軸線により近い形態が実現される。
【0077】
また、上述した平面加工の結果、
図9に示すように、マザー基板22が分割され、それによって、個片化された複数の巻線用コア1が得られる。このように、平面加工で個片化する工程を採用すれば、個片化前のマザー基板22の厚み寸法と得ようとする巻線用コア
1の高さ寸法とを一致させる必要はない。キャリアシート32のような補強部材がマザー基板22に貼り付けられる場合であっても、マザー基板22の厚み寸法と巻線用コア2の高さ寸法とを一致させる必要はない。したがって、製造しようとする巻線用コア1が超薄型、超小型であっても、マザー基板22の強度を維持させたまま、製造のための各プロセスを実施することができる。
【0078】
上述の工程を終えた段階では、複数の巻線用コア1は、端子電極18〜21側がキャリアシート32によって保持されている。
図4から容易に類推できるように、複数の巻線用コア1は、互いに直交するx方向およびy方向に整列した状態となっている。
【0079】
個片化された巻線用コア1は、キャリアシート32から剥がすことによって、
図2に示すように、独立して取り扱うことができる状態となる。この巻線用コア1は、上述した製造方法に起因して、端子電極18〜21における導体膜23によって与えられる少なくとも下地層については、第1および第2の鍔部側面14および15ならびに内側端面16および外側端面17のいずれにも回り込むことなく鍔部底面12上に形成されている、という特徴を有している。端子電極18〜21におけるめっき層30については、第1および第2の鍔部側面14および15ならびに内側端面16および外側端面17の少なくともいずれかに回り込んでいてもよい。
【0080】
なお、
図9に示したように、キャリアシート32と、このキャリアシート32によって端子電極18〜21側が粘着保持された複数の巻線用コア1とを備える、巻線用コア集合体35は、巻線用コア1の1つの出荷形態となり得るとともに、製造工程中の搬送形態ともなり得る。
【0081】
以上説明した第1の実施形態によれば、前述したように、製造しようとする巻線用コア1が小型化されても、巻線用コア1の製造段階において、割れや欠けを生じにくくすることができる。さらに、以下のような効果も奏される。
【0082】
マザー基板22の分割は、同時に多数の巻線用コア1を得ることを可能にするので、高い量産性を実現することができる。また、得ようとする巻線用コア1が小型化されるほど、1つのマザー基板22から取り出される巻線用コア1の数が増えるため、巻線用コア1のコストダウンを期待できる。
【0083】
また、マザー基板22において形成されるx方向分割用溝27およびy方向分割用溝28の各々の間隔を変更するだけで、得られた巻線用コア1の寸法を変えることができる。このことは、まず、多様な設計変更に対して迅速に対応できることを意味する。さらに、1つのマザー基板22の中で、x方向分割用溝27の間隔を異ならせたり、y方向分割用溝28の間隔を異ならせたりすることもできる。したがって、1つのマザー基板22から寸法の異なる複数種類の巻線用コア1を取り出すこともでき、多品種少量生産の要望にも応えることができる。
【0084】
また、必要に応じて実施される、巻線用コア1に設けられる端子電極18〜21のための導体膜23の形成、導体膜23を下地としてのめっき層30の形成、巻線用コア1へのエッジ加工やバリ取りのような処理、巻線用コア1の表面への硬質膜の形成、などの加工または処理は、マザー基板22の状態で行なうことができる。したがって、能率的な加工または処理が可能である。
【0085】
なお、以上のような効果は、以下に説明する実施形態においても奏され得る。
【0086】
[第2の実施形態]
図10ないし
図15を参照して、この発明の第2の実施形態による巻線用コア1aおよびその製造方法について説明する。
図10ないし
図15、ならびに
図16以降の図面において、
図1ないし
図9に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0087】
図10には、巻線用コア1aが、実装基板側Mに向けられる面を上方にして示されている。この巻線用コア1aは、前述した巻線用コア1と同様、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するために用いられる。
【0088】
巻線用コア1aは、巻線用コア1と比較して、第1および第2の巻芯部側面10および11が、それぞれ、第1および第2の鍔部側面14および15より低く位置していること、言い換えると、第1および第2の鍔部側面14および15より巻芯部5の中心軸線により近く位置していることを特徴としている。
【0089】
このような巻線用コア1aを製造するため、以下のような工程が実施される。
【0090】
第1の実施形態における
図3に対応する図が
図11である。第2の実施形態では、
図11に示すように、マザー基板22に、たとえば矩形の複数の貫通孔37が設けられる。貫通孔37は、マザー基板22に対して、型抜き加工またはレーザ加工などが適用されることによって形成される。貫通孔37は、第1および第2の巻芯部側面10および11を、それぞれ、第1および第2の鍔部側面14および15より低く位置させるためのものである。これら貫通孔37の各々を規定する端縁は、第1および第2の巻芯部側面10および11ならびに鍔部6および7の内側端面16に沿う輪郭を与える。
【0091】
第1の実施形態における
図4に対応する図が
図12である。次に、
図12に示すように、マザー基板22の第1の主面221側に、x方向分割線25に沿って複数のx方向分割用溝27が形成され、他方、y方向分割線26に沿って複数のy方向分割用溝28が形成される。また、マザー基板22の第1の主面221側に、複数の底面露出用溝29が、y方向に延びながら、x方向分割用溝27およびy方向分割用溝28よりも浅く形成される。
【0092】
x方向分割用溝27は、
図14および
図15にも図示されている。y方向分割用溝28は、
図13にも図示されている。底面露出用溝29は、
図13および
図15にも図示されている。貫通孔37は、
図13および
図15にも図示されている。
【0093】
また、
図12において、左上の太線で囲んだ部分が1つの巻線用コア1aとなるべき部分である。この段階で、巻線用コア1aにおける、巻芯部底面8が鍔部底面12より低く位置する形態が付与され、鍔部底面12上に、端子電極18〜21の下地層が形成された状態が得られているとともに、巻芯部側面10および11が、それぞれ、鍔部側面14および15より低く位置する形態が付与されている。
【0094】
以後、第1の実施形態における
図7ないし
図9に示した各工程に対応する工程を実施すれば、
図10に示した巻線用コア1aが得られる。
【0095】
[第3の実施形態]
図16には、この発明の第3の実施形態による巻線用コア1bが実装基板側Mに向けられる面を上方にして示されている。この巻線用コア1bは、前述した巻線用コア1および1aと同様、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するために用いられる。
【0096】
巻線用コア1bは、第2の実施形態による巻線用コア1aと比較して、巻芯部天面9が鍔部天面13と同一面であることを特徴としている。このような巻線用コア1bを得るためには、第2の実施形態による巻線用コア1aを製造する方法において、第1の実施形態における
図8に示した天面露出用溝33を形成する工程を省略すればよい。
【0097】
[第4の実施形態]
図17には、この発明の第4の実施形態による巻線用コア1cが実装基板側Mに向けられる面を上方にして示されている。この巻線用コア1cは、前述した巻線用コア1、1aおよび1bと同様、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するために用いられる。
【0098】
巻線用コア1cは、第1の実施形態による巻線用コア1と比較して、巻芯部天面9が鍔部天面13と同一面であることを特徴としている。このような巻線用コア
1cを得るためには、第1の実施形態による巻線用コア1を製造する方法において、
図8に示した天面露出用溝33を形成する工程を省略すればよい。
【0099】
[第5の実施形態]
図18には、この発明の第5の実施形態による巻線用コア1dが実装基板側Mに向けられる面を上方にして示されている。この巻線用コア1dは、前述した巻線用コア1、1aおよび1bとは異なり、単一のコイルを構成するために用いられる。
【0100】
巻線用コア1dは、第1の鍔部6に1つの端子電極39が設けられ、第2の鍔部7に1つの端子電極40が設けられることを特徴としている。したがって、図示しないが、1本の巻線が巻芯部5に配置される。端子電極についての構成を除けば、巻線用コア1dは巻線用コア1と実質的に同様である。
【0101】
このような巻線用コア1dを製造するため、以下のような工程が実施される。
【0102】
第1の実施形態における
図3に対応する図が
図19である。
図19では、マザー基板22を図示するため、導体膜23の一部が破断除去されて図示されている。
図19に示すように、マザー基板22の第1の主面221には、導体膜23が、特別なパターニングが施されずに形成される。その後、第1の実施形態における
図4ないし
図6、
図7、
図8および
図9にそれぞれ示した工程に対応する工程が実施されることによって、巻線用コア1dが得られる。
【0103】
[第6の実施形態]
図20には、この発明の第6の実施形態による巻線用コア1eが実装基板側Mに向けられる面を上方にして示されている。この巻線用コア1eは、前述した巻線用コア1、1a、1bおよび1cと同様、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するために用いられる。
【0104】
図20に示した巻線用コア1eでは、第1の鍔部6に第1および第2の端子電極41および42が設けられる。第2の鍔部7に第3および第4の端子電極43および44が設けられる。
【0105】
図20に示した巻線用コア1eは、上述の
図18に示した巻線用コア1dと比較すれば、その特徴が明らかになる。すなわち、
図18における端子電極39となるべき導体膜を分断すれば、
図20における第1および第2の端子電極41および42となり、
図18における端子電極40となるべき導体膜を分断すれば、
図20における第3および第4の端子電極43および44となる。上述の導体膜の分断のため、分断用溝45が鍔部底面12に形成される。
【0106】
分断用溝45は、
図21および
図22に示すように、マザー基板22の状態で、その第1の主面221側にダイサーを用いて形成される。その他の工程については、
図18および
図19を参照して説明した第5の実施形態による巻線用コア1dの製造方法の場合と同様である。
【0107】
[第7の実施形態]
図23には、この発明の第7の実施形態による巻線用コア1fが縦断面図で示されている。第7の実施形態による巻線用コア1fは、巻芯部底面8および巻芯部天面9がともに巻芯部5の中心軸線に対して勾配を持っていることを特徴としている。
【0108】
図23に示した巻線用コア1fを得るためには、たとえば、第1の実施形態による巻線用コア1を製造するための方法において、底面露出用溝29および天面露出用溝33をそれぞれ形成する工程を以下のように変更すればよい。
【0109】
すなわち、底面露出用溝29を形成する工程において、たとえばダイサーとして、ブレード先端が斜めに延びるものに変更すれば、巻芯部底面8が巻芯部5の中心軸線に対して勾配を持つように底面露出用溝29を形成することができる。同様に、天面露出用溝33を形成する工程においても、たとえばダイサーとして、ブレード先端が斜めに延びるものに変更すれば、巻芯部天面9が巻芯部5の中心軸線に対して勾配を持つように天面露出用溝33を形成することができる。
【0110】
第7の実施形態による巻線用コア1fによれば、巻芯部底面8および巻芯部天面9の各側に勾配を与えることができるので、これを用いてコイル部品を構成したとき、
図24に巻芯部天面9側の一部を示すように、巻芯部5に螺旋状に巻回された巻線46の線間に形成される分布容量を低減することができる。
【0111】
なお、巻芯部5の中心軸線に対して勾配を持つのは、巻芯部底面8および巻芯部天面9のいずれか一方のみでもよい。
【0112】
[第8の実施形態]
図25には、この発明の第8の実施形態による巻線用コア1gが縦断面図で示されている。第8の実施形態による巻線用コア1gは、巻芯部底面8および巻芯部天面9がともに巻芯部5の中心軸線方向に配列された凹凸を持っていることを特徴としている。
【0113】
図25に示した巻線用コア1gを得るためには、たとえば、第1の実施形態による巻線用コア1を製造するための方法において、底面露出用溝29および天面露出用溝33をそれぞれ形成する工程を以下のように変更すればよい。
【0114】
すなわち、底面露出用溝29を形成する工程において、たとえばダイサーとして、ブレード先端が凹凸形状を有するものに変更すれば、巻芯部底面8が巻芯部5の中心軸線方向に配列された凹凸を持つように底面露出用溝29を形成することができる。同様に、天面露出用溝33を形成する工程においても、たとえばダイサーとして、ブレード先端が凹凸形状を有するものに変更すれば、巻芯部天面9が巻芯部5の中心軸線方向に配列された凹凸を持つように天面露出用溝33を形成することができる。
【0115】
第8の実施形態による巻線用コア1gによれば、凹凸が鋸歯状に形成されているので、
図26に示すように、1つの鋸歯47が持つ勾配部分48に複数ターンの巻線49が並ぶように巻回されると、上述した第7の実施形態の場合と同様、巻線49の線間に形成される分布容量を低減することができる。
【0116】
また、
図27に示すように、巻芯部5に巻回される巻線50の巻回ピッチを凹凸によって決めるようにすれば、この巻線用コア1gを用いて構成されたコイル部品のインダクタンス等の特性のばらつきを低減することができる。
【0117】
なお、巻芯部5の中心軸線方向に配列された凹凸を持つのは、巻芯部底面8および巻芯部天面9のいずれか一方のみでもよい。
【0118】
[第9の実施形態]
図28を参照して、この発明の第9の実施形態を説明する。
図28は、第1の実施形態の説明に用いた
図4に対応する図である。
【0119】
以下、第9の実施形態を第1の実施形態の変形例として説明する。第9の実施形態の、第1の実施形態とは異なるところは以下のとおりである。
【0120】
第9の実施形態では、
図28に示すように、x方向分割用溝を形成するにあたって、マザー基板22における隣り合う2つの巻線用コア1となるべき領域間を区画するx方向分割線25に沿って、2本の互いに平行なx方向分割用溝27aおよび27bを形成するようにされる。同様に、y方向分割用溝を形成するにあたっても、マザー基板22における隣り合う2つの巻線用コア1となるべき領域間を区画するy方向分割線26に沿って、2本の互いに平行なy方向分割用溝28aおよび28bを形成するようにされる。
【0121】
この製造方法によれば、
図8ないし
図9に示した、マザー基板22を平面加工して分割する工程において、マザー基板22に及ぼされる加工圧力が分散され、その結果、製品としての巻線用コア1が位置する領域における加工負荷が低減され、製品としての巻線用コア1において割れ等をより生じにくくすることができる。
【0122】
x方向分割用溝27aおよび27b間の間隔S1ならびにy方向分割用溝28aおよび28b間の間隔S2については、上述した効果の実現性を考慮して任意に選ぶことができる。
【0123】
図示の実施形態では、互いに平行なx方向分割用溝として、2本のx方向分割用溝27aおよび27bを形成し、また、互いに平行なy方向分割用溝として、2本のy方向分割用溝28aおよび28bを形成したが、各々3本以上のx方向分割用溝およびy方向分割用溝を、隣り合う2つの巻線用コア1となるべき領域間に形成してもよい。
【0124】
以上、第9の実施形態を第1の実施形態の変形例として説明したが、第9の実施形態は、第1の実施形態以外の実施形態の変形例としても実施することができる。
【0125】
[他の実施形態]
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の実施形態が可能である。
【0126】
たとえば、スキャンしながらの噴射加工などによる巻線用コアへのエッジ加工やバリ取り処理、巻線用コアの表面へのDLC(Diamond Like Carbon)などによる硬質膜の形成、といった加工または処理が、必要に応じて実施される。この場合、これらの加工または処理は、マザー基板の状態で能率的に行なうことができる。
【0127】
また、いくつかの異なる実施形態について説明したが、この発明を実施するにあたり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせも可能である。