特許第6750647号(P6750647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6750647無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750647
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/12 20090101AFI20200824BHJP
   H04W 40/38 20090101ALI20200824BHJP
   H04W 40/22 20090101ALI20200824BHJP
   H04W 84/22 20090101ALI20200824BHJP
【FI】
   H04W40/12
   H04W40/38
   H04W40/22
   H04W84/22
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-148748(P2018-148748)
(22)【出願日】2018年8月7日
(65)【公開番号】特開2020-25193(P2020-25193A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2018年8月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/未来を創る新たなネットワーク基盤技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】柳原 健太郎
【審査官】 石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−003683(JP,A)
【文献】 特開2014−158224(JP,A)
【文献】 特開2015−097346(JP,A)
【文献】 寺尾 祐人、他,MANETにおけるvoid zone情報の事前共有による効率的貪欲前進法の提案 ,電気学会研究会資料 ,日本,一般社団法人電気学会 ,2016年 1月28日,CMN−16,35−39頁,CMN−16−007
【文献】 路 順利、他,MANETにおける電池残量を考慮した貪欲前進法の改良と評価,電気学会研究会資料,日本,一般社団法人電気学会 ,2017年 6月22日,CMN−17,35−39頁,CMN−17−36
【文献】 小倉 裕史、他,大量運動者からの生体情報収集システムにおける高信頼なワイヤレスネットワーキングプロトコル,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会 ,2018年 5月17日,第118巻,54号,91−95頁,RCC2018-18,MICT2018-18(2018-05)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線局宛の通信信号も含め全ての受信可能な通信信号を受信する固定局に向けて、通信信号を無線マルチホップ通信する無線通信装置において、
局間の通信路の通信品質を評価した評価値をリンクコスト値として、周辺の上記他の無線局から上記固定局までの各経路の上記リンクコスト値の和であるパスコスト値と、自装置と周辺の局との間の上記リンクコスト値とを含む通信品質情報を保持する通信品質情報保持手段と、
上記通信品質情報を参照して、上記他の無線局の上記各パスコスト値と、自装置と周辺の局との間の上記リンクコスト値とに基づいて、上記固定局に向けた上記通信信号の次の転送先を選択するものであって、上記通信信号の次の宛先に上記固定局を選択する際に、上記固定局を指定するのではなく、自装置の周辺の上記他の無線局を上記通信信号の宛先に指定する送信先選択手段と、
上記通信信号を送信する送信手段と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
上記送信先選択手段が、周辺の上記他の無線局の上記各パスコスト値を参照して、上記パスコスト値が最小値となる経路の上記他の無線局を、上記通信信号の宛先に指定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
上記送信先選択手段が、周辺の上記他の無線局のうち、受信電力値が閾値以下となる上記他の無線局を選択し、選択された上記他の無線局の上記パスコスト値を参照して、上記パスコスト値が最小値となる経路の上記他の無線局を、上記通信信号の宛先に指定することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
自装置及び上記他の無線局を含む局を複数のグループにグループ化し、各グループに属する局に、グループ毎に、あらかじめ設定したグループ番号を付与しておき、
上記送信先選択手段は、周辺の上記他の無線局のうち、自装置と同一グループの上記グループ番号が付与された上記他の無線局を、優先的に指定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
他の無線局宛の通信信号も含め全ての受信可能な通信信号を受信する固定局と、
請求項1〜4のいずれかに記載の前記無線通信装置と前記他の無線局
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
他の無線局宛の通信信号も含め全ての受信可能な通信信号を受信する固定局に向けて、通信信号を無線マルチホップ通信する無線通信方法において、
通信品質情報保持手段が、局間の通信路の通信品質を評価した評価値をリンクコスト値として、周辺の上記他の無線局から上記固定局までの各経路の上記リンクコスト値の和であるパスコスト値と、自装置と周辺の局との間の上記リンクコスト値とを含む通信品質情報を保持し、
送信先選択手段が、上記通信品質情報を参照して、上記他の無線局の上記各パスコスト値と、自装置と周辺の局との間の上記リンクコスト値とに基づいて、上記固定局に向けた上記通信信号の次の転送先を選択するものであって、上記通信信号の次の宛先に上記固定局を選択する際に、上記固定局を指定するのではなく、自装置の周辺の上記他の無線局を上記通信信号の宛先に指定し、
送信手段が、上記通信信号を送信する
ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法に関し、例えば、基地局及び複数の移動局を有して構成されるマルチホップネットワークにおける移動局に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
マルチホップ構成を採用可能なネットワークにおいて、転送経路を選択する方法として、従来様々な方法が提案されている。例えば、固定配置されている基地局に向けて、各移動局がマルチホップでデータを送信するような場合、基地局を「根」とし、各移動局を「節」、「葉」とし、局間の通信リンクを「枝」とする木構造を作ることが必要となる。
【0003】
移動局から基地局宛にデータを送信する際のネットワークの品質は、どの枝を用いるかによって変わる。従って、各枝に対して通信品質を評価した評価値(以下、「リンクコスト」と呼ぶ。)を付与し、各移動局から基地局までのリンクコストの和(以下、「パスコスト」と呼ぶ。)を導出し、パスコストが小さい経路を用いることがよく行なわれている(特許文献1参照)。
【0004】
一般的に、通信品質が良いもの程、リンクコストの値は小さく設定される。また、基地局は自らのパスコストを「0」とし、基地局からの信号を直接受信できた移動局は基地局を「親」として、自らと基地局との間の通信品質をパスコストとするのが一般的な動作である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−43637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、移動局の移動が激しい場合、経路が形成してからデータ送信までの間に移動等が生じ得る。そのため、当該形成された経路が、移動を想定してない場合に比べて、最適な経路でない可能性が高くなる。
【0007】
そのため、従来は、移動局の移動変動を見込んで、十分に品質の高いリンクを使用してネットワークを構成することが一般的である。
【0008】
しかしながら、上述した方法では、結果として通信可能なリンクを使わないことになり、通信成功率が低下する問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、品質の高いリンクを使い、切れない経路を形成するという方向とは異なる手法を示し、このような移動の激しい環境においても通信成功率の高いネットワークを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、他の無線局宛の通信信号も含め全ての受信可能な通信信号を受信する固定局に向けて、通信信号を無線マルチホップ通信する無線通信装置において、(1)局間の通信路の通信品質を評価した評価値をリンクコスト値として、周辺の他の無線局から固定局までの各経路のリンクコスト値の和であるパスコスト値と、自装置と周辺の局との間の上記リンクコスト値とを含む通信品質情報を保持する通信品質情報保持手段と、(2)通信品質情報を参照して、他の無線局の各パスコスト値と、自装置と周辺の局との間のリンクコスト値とに基づいて、固定局に向けた通信信号の次の転送先を選択するものであって、通信信号の次の宛先に固定局を選択する際に、固定局を指定するのではなく、自装置の周辺の他の無線局を通信信号の宛先に指定する送信先選択手段と、(3)通信信号を送信する送信手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2の本発明は、他の無線局宛の通信信号も含め全ての受信可能な通信信号を受信する固定局と、第1の本発明の複数の移動局とを備える。
【0012】
第3の本発明は、他の無線局宛の通信信号も含め全ての受信可能な通信信号を受信する固定局に向けて、通信信号を無線マルチホップ通信する無線通信方法において、(1)通信品質情報保持手段が、局間の通信路の通信品質を評価した評価値をリンクコスト値として、周辺の他の無線局から固定局までの各経路のリンクコスト値の和であるパスコスト値と、自装置と周辺の局との間の上記リンクコスト値とを含む通信品質情報を保持し、(2)送信先選択手段が、通信品質情報を参照して、他の無線局の各パスコスト値と、自装置と周辺の局との間のリンクコスト値とに基づいて、固定局に向けた通信信号の次の転送先を選択するものであって、通信信号の次の宛先に固定局を選択する際に、固定局を指定するのではなく、自装置の周辺の他の無線局を通信信号の宛先に指定し、(3)送信手段が、通信信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動の激しい環境においても通信成功率の高いネットワークを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る無線通信システム(ネットワーク)の全体構成の一例を示す全体構成図である。
図2】実施形態に係る移動局の内部構成の一例を示す内部構成図である。
図3】実施形態に係る無線通信システムにおけるリンクコストの一例を説明する説明図である。
図4】実施形態に係る送信先選択処理を説明する説明図である。
図5】実施形態に係る送信先選択処理を説明する説明図である。
図6】実施形態に係る送信先選択処理を説明する説明図である。
図7】実施形態に係る送信先選択処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法の主たる実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(A−1)実施形態の構成
[システム全体構成]
図1は、この実施形態に係る無線通信システム(ネットワーク)の全体構成の一例を示す全体構成図である。
【0017】
図1において、この実施形態に係る無線通信システム1は、固定設置された基地局10と、複数(図1では8台)の移動局20(20−1〜20−8)とを有する。
【0018】
無線通信システム1は、基地局10を「根」とし、各移動局20を「節」、「葉」としたツリー構造の無線マルチホップネットワークを構成している。基地局10及び移動局20の数は限定されない。以下では、基地局10及び各移動局20を総じて、「局」又は「ノード」と呼ぶこともある。
【0019】
図1において、各局を結ぶ直線は、2つの局同士が通信可能であることを示している。無線マルチホップネットワークを構成している各局(各ノード)は、例えば、IEEE802.15.4を利用した通信に対応可能なものとすることができる。なお、無線通信方式は、各局間で無線マルチホップ通信が可能であれば、IEEE802.15.4に限定されない。
【0020】
基地局10及び各移動局20には、それぞれネットワーク上で固有のアドレス(例えば、MACアドレス、ショートアドレス、IPアドレス等)が割り当てられている。基地局10と各移動局20との間で通信は行なわれるが、移動局20同士で通信を行なわない。すなわち、各移動局20は、原則として、基地局10を最終的な宛先としたユニキャストのデータパケットの送信は行なうが、他の移動局20を最終的な宛先としたユニキャストのデータパケットの送信は行なわないものとする。仮に、移動局20同士の通信が必要な場合には、基地局10を中継して通信するようにしてもよい。
【0021】
この実施形態に係る無線通信システム1は、例えば、競技場や運動場等で競技する人間(人体)を移動体とし、移動局20としての無線通信装置が、人体に接した状態で固定されている場合を想定する。人体に接した状態で無線通信装置を固定させる方法は、特に限定されるものではなく、様々な方法を適用することができ、例えばバンド等の装着具やベスト型の装着被服などに無線通信装置を固定するなどの方法がある。
【0022】
これは、例えば、移動局20には1又は複数のセンサが搭載されており、各センサが固定された位置で人体の脈拍データ、心拍データ等を取得し、必要に応じて、各移動局20が基地局10に送信したりすることを想定しているためである。すなわち、運動・競技している人体の脈拍データや心拍データなどのセンシングデータを各移動局20が基地局10に向けて送信し、基地局10が各センシングデータを収集する場面を想定する。
【0023】
なお、センシングするデータ種類は特に限定されるものではない。移動体に無線通信装置を固定する位置は、特に限定されるものではなく、測定するデータや運動の種類等に応じて適宜決まる。各局が無線通信する場合、各局の位置関係によっては人体が障害物となり得るので、障害物の有無が、通信品質に影響を及ぼす。
【0024】
[基地局及び移動局]
基地局10は、固定配置された無線通信装置(無線機)であり、無線通信システム1全体を管理するものである。基地局10を固定局とも呼ぶ。基地局10は、マルチホップ通信により、各移動局20からデータを含む情報(パケット)を受信してデータを収集する。なお、基地局10が収集したデータについては、基地局10において保存するようにしてもよいし、若しくは、基地局10と無線接続又は有線接続する情報処理装置に提供されるようにしてもよいが、この実施形態は収集データの利用については特に限定しない。
【0025】
基地局10は、自装置宛のパケットだけなく、全ての受信可能なパケットを受信する動作モードを有する。この動作モードは、一般的にはプロミスキャスモード(無差別モード)と呼ばれる。一般的に、基地局10のネットワークインタフェース(図示しない)は、到来したパケットのうち、自装置宛のパケットを受信して上位システムに通知する。これに対して、プロミスキャスモードは、自装置宛のパケットだけでなく、自装置宛以外のパケットも含め全ての到来パケットを無差別に受信して上位システムに通知する動作モードである。この実施形態で、基地局10のネットワークインタフェースがプロミスキャスモードで動作することの意義に関しては後述する。
【0026】
各移動局20(20−1〜20−8)は、移動体に取り付けられた無線通信装置(無線機)である。この実施形態では、移動体が人間である場合を想定して説明するが、移動体は、自転車、自動車、可動型ロボット、無人航空機等の移動可能なものを広く適用することができる。
【0027】
各移動局20は、センサを備えている。センサは、常時又は間欠的(定期的、周期的を含む意味である。)に計測対象を計測し、各移動局20は、自身のセンサにより計測されたデータを含むパケットを、基地局10を最終的な宛先としてマルチホップ送信する。
【0028】
なお、各移動局20はセンサを備えるのに対して、基地局10はセンサを備えてない点で両者の機能は異なるが、移動局20及び基地局10の基本的な機能は同じものを用いることができる。以下では、各移動局20及び基地局10のうち移動局20の内部構成を、図2を用いて説明する。
【0029】
図2は、この実施形態に係る移動局20の内部構成の一例を示す内部構成図である。
【0030】
図2において、この実施形態に係る無線通信装置は、送信手段1001、受信手段1002、タイマー1003、ビーコンパケット生成手段1004、データ生成手段1005、送信先選択手段1006、ビーコン受信手段1007、ビーコン管理手段1008、データ受信手段1009、移動計測手段1010、周辺無線機テーブル1011を有する。
【0031】
移動局20は、CPU、ROM、ROM、EEPROM、入出力インタフェース等の装置や通信手段(無線インターフェース)、センサ等を搭載している。移動局20における各種機能は、CPU(コンピュータ)が処理プログラム(無線通信プログラム)を実行することにより実現される。また無線通信プログラムがインストールされることによりシステム構築されるようにしてもよく、その場合でも、無線通信プログラムは図2に示す各要素として表すことができる。
【0032】
送信手段1001は、ビーコン信号又はデータ信号で搬送波を変調して得た電波を送出する機能を担っている。受信手段1002は、到来した電波を復調して受信信号を獲得して、ビーコン信号をビーコン受信手段1007に与え、データ信号をデータ受信手段1009に与える機能を担っている。
【0033】
なお、送信手段1001及び受信手段1002は、図2では図示しないアンテナ部と接続している。送信手段1001及び受信手段1002が、無線信号を送受信する無線インタフェース(パケット送受信手段)を構成している。移動局20では、局間でビーコンパケットを送受信したり、人体の脈拍データ等のデータを含むデータパケットを送受信したりする。
【0034】
ビーコン受信手段1007は、受信手段1002を介して、基地局10がフラッディングにより定期的に送信したビーコン信号を受信する機能を担っている。ビーコン受信手段1007は、ビーコン受信時の受信電力値をビーコン管理手段1008に供給したり、又ビーコン信号に含まれている、送信局の移動速度、送信局のパスコスト、必要であれば送信局の位置情報等をビーコン管理手段1008に供給したりする。
【0035】
移動計測手段1010は、自局の移動状況に関する情報を獲得する機能を担っている。移動計測手段1010は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、角加速度センサ、地磁気センサ等の一部又は全部を適用することができる。移動計測手段1010は、自局の移動状況に関する計測結果をビーコン信号に含めて送信するため、自局の移動状況に関する結果をビーコン管理手段1008に与える。なお、移動計測手段1010は、この実施形態の必須要素ではない。
【0036】
ビーコン管理手段1008は、ビーコン受信手段1007から受信したビーコン信号を取得し、ビーコン信号の管理やビーコン信号の転送制御機能を担っている。ビーコン管理手段1008は、ビーコン受信手段1007からビーコンに含まれている送信局のパスコスト(すなわち、送信局の識別情報に対応付けられているパスコスト)を取得し、周辺にある他の移動局20のパスコストを保持するために、当該送信局のパスコストを周辺無線機テーブル1011に記憶する。
【0037】
また、ビーコン管理手段1008は、ビーコン受信手段1007からビーコン受信時の受信電力値と、移動計測手段1010が計測した一定時間当りの移動距離(移動速度)とを受け取り、ビーコン受信時の受信電力値と自局の移動速度とに基づいて、局間のリンクコストを求めるようにしてもよい。
【0038】
さらに、ビーコン管理手段1008は、周辺無線機テーブル1011を参照して、自局から基地局10までのリンクコストが最も小さい値となる経路を選択し、その経路を使用して通信したときの自局のパスコストを決定する。
【0039】
タイマー1003は、他の局からフラッディングパケットを受信してから、当該フラッディングパケットを転送するまでの遅延(パケット転送遅延時間)を管理するためのタイマーである。
【0040】
ビーコンパケット生成手段1004は、フラッディングするビーコンパケットを生成する機能を担っている。ビーコンパケット生成手段1004は、自局のパスコスト、送信局としての自局の移動距離、必要に応じて自局の位置情報等をビーコンパケットに含むようにする。
【0041】
データ受信手段1009は、受信手段1002を介して、他の局から送信されたデータパケットを受信する機能を担っている。データ受信手段1009は、受信処理が終わったデータパケットを送信先選択手段1006に与える。例えば、受信したデータパケットを次の局に転送する場合には、次の局に転送するために、データ受信手段1009は、データパケットを送信先選択手段1006に供給する。
【0042】
データ生成手段1005は、基地局10に向けて送信するデータを生成する機能を担っている。例えば、人体の脈拍データ等を生成するが、データ種類は特に限定されるものではない。データ生成手段1005のデータ送信契機は特に限定されるものではなく、例えば、上位層(図示しないアプリケーション等)で発生したデータを送信データとすることができる。
【0043】
周辺無線機テーブル1011は、周辺に位置している他の移動局20に関する情報を含むテーブルである。周辺無線機テーブル1011は、例えば、周辺の移動局1011のアドレス情報、基地局10までのホップ数、パスコスト、受信電力値など等の情報を対応付けて記憶する。周辺無線機テーブル1011は、基地局10までの経路テーブルなどを適用することができる。
【0044】
送信先選択手段1006は、データ生成手段1005が生成したデータを含むパケット、又はデータ受信手段1009が受信したデータパケットの転送先を選択する機能を担っている。
【0045】
送信先選択手段1006は、周辺無線機テーブル1011を参照して、自局から基地局10までの経路のうち、コストが最小値となる経路を選択し、その経路での次の移動局(次の移動局のアドレス)をデータ転送先に指定する。そして、転送先を指定したデータパケットが送信手段1001に供給されて、データパケットが送信手段1001から転送先に送信される。
【0046】
また、送信先選択手段1006は、自局20が基地局10と直接通信可能な場合に、データパケットの宛先に、自局の周辺に存在する他の移動局20を指定するようにする。
【0047】
上記のように、自局20が基地局10と直接通信可能な場合に、周辺の他の移動局20を宛先に指定することで、データパケットの経路を迂回させることができる。基地局10はプロミスキャスモードで動作しているので、他の移動局20を宛先としたデータパケットが、直接、基地局10に到達したときには、そのまま基地局10はデータパケットを受信することができる。また、自局20と基地局10との間のリンクの通信品質が悪い場合でも、迂回経路で伝送されたデータパケットが基地局10に到達すれば、基地局10はデータパケットを受信することができる。なお、送信先選択手段1006による送信先の選択方法の詳細な説明は、動作の項で詳細に説明する。
【0048】
[リンクコスト]
図3は、この実施形態に係る無線通信システム1におけるリンクコストの一例を説明する説明図である。
【0049】
図3において、太線は局間のデータ転送経路を示し、点線は転送に用いていないリンクを示している。各リンクに付記している四角囲みの数字はリンクコストを示し、各移動局20に付記している数字は各移動局のパスコストを示している。なお、基地局10のパスコストは「0」である。
【0050】
例えば、移動局20−6から基地局10までの転送経路は、「移動局20−6」→「移動局20−4」→「基地局10」である。この場合、移動局20−4と基地局10との間のリンクコストの値が「4」であるため、基地局10に向けてデータ転送する移動局20−4のパスコストの値は「4」となる。また、移動局20−6と移動局20−4との間のリンクコストの値が「2」である。従って、移動局20−6が移動局20−4を転送先として基地局10に向けてデータ送信するときの移動局20−6のパスコストの値は「6(=2+4)」となる。
【0051】
リンクコストは、局間の通信路の通信品質を評価した値である。リンクの評価の仕方は様々であり、例えば、「1〜99」、「1〜9999」などの範囲の値で通信路の通信品質を評価する。一般的に、値が小さいほど通信品質が良く、値が大きくなるほど通信品質が悪いと評価している。すなわち、リンクコストの値が「1」であれば、その通信路の通信品質は良いと判断される。
【0052】
(A−2)実施形態の動作
次に、この実施形態に係る無線通信システム1における無線通信処理の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
(A−2−1)ネットワークの構成動作
無線通信システム1は、無線マルチホップネットワークであり、その動作の例を説明する。ネットワークにおける経路決定(ルーティング)等の通信制御アルゴリズムは限定されないものである。
【0054】
ネットワークを構成する基地局10及び各移動局20には、固有のアドレス(例えば、MACアドレス、ショートアドレス等)が割り当てられている。
【0055】
以下では、基地局10と各移動局20とにより構成されるネットワークの構成方法を説明する。
【0056】
ここでは、競技場や運動場において、競技や運動を行なう人間に無線通信装置(移動局20)が取り付けられ、その人が走ったりして激しく移動することを想定する。従って、移動局2の移動も多くなされるので、頻繁に(例えば1秒毎に)ネットワークを再構成する必要が生じ得る。
【0057】
そのため、例えば、基地局10は、所定のタイミングで、ビーコンパケットを送信する。より具体的には、基地局10は、1秒毎に、ビーコンパケットを送信する。また、ビーコンパケットを受信した各移動局20は、ランダム時間後にビーコンパケットを送信する。このようにすることで、ネットワーク全体にビーコン信号が行き亘ることになる。
【0058】
この動作をフラッディングと呼ぶ。各局が送信するビーコンパケットは、自局(ビーコンパケットの送信局)のパスコスト、移動速度、位置情報等を含める。例えば、図3を用いて、ネットワークの構成例を説明する。
【0059】
基地局10がビーコンパケットを送信すると、基地局10の電波到達範囲内に存在している移動局20−1、20−3、20−5、20−7が、直接ビーコンパケットを受信する。
【0060】
ビーコンパケットを受信した各移動局20では、受信手段1002が電波を捕捉し、ビーコン受信時の受信電力値が計測される。また、ビーコン受信手段1007は、受信手段1002のビーコン受信時の受信電力値と、受信したビーコンパケットをビーコン管理手段1008に供給する。
【0061】
ビーコン管理手段1008では、ビーコンパケットに含まれている送信局のパスコストを抽出して、当該送信局のパスコストを周辺無線機テーブル1011に記憶する。ここで、基地局10のパスコストは「0」と設定されているので、基地局10から直接ビーコンパケットを受信した各移動局20は、基地局10のパスコスト「0」を周辺無線機テーブル1011に記憶する。
【0062】
一方、ビーコンパケットの送信局が移動局20である場合に、ビーコンパケットの送信局(移動局20)のパスコストがビーコンパケットに含まれているので、その場合には、当該送信局のパスコストを周辺無線機テーブル1011に記憶する。
【0063】
また、ビーコン管理手段1008は、ビーコン受信時の受信電力値と、移動計測手段1010からの自局の移動状況の計測結果(例えば、所定時間内の移動量(移動速度))などを受け取り、ビーコンパケットの送信局(基地局10又は移動局20)と自局との間の通信路のリンクコストを導出する。そして、当該リンクコストを周辺無線機テーブル1011に記憶する。
【0064】
ビーコン管理手段1008によるリンクコストの導出方法は、この実施形態では特に限定されるものではなく、様々な方法を用いることができる。例えば、送信局からのビーコン信号の受信電力値の大きさと予め設定した閾値との比較結果に応じて、リンクコストを導出するようにしてもよい。また例えば、受信電力値と、送信局と自局との距離との関係性に基づいてリンクコストを定義付けたリンクコストテーブルを予め用意しておき、受信電力値と、送信局と自局の移動量とに基づいてリンクコストを導出するようにしてもよい。
【0065】
各移動局20は、ビーコンパケットの直前に、自局から基地局10までの経路のうち、コストが最小値となる経路が選択され、その経路における次の局が親ノードとして選択される。そして、その親ノードを経由する経路のパスコストが求められ、そのパスコストを自局のパスコストとする。
【0066】
ビーコンパケット生成部1004が、少なくとも、自局のパスコスト、自局の移動速度を挿入したビーコンパケットをフラッディングする。各移動局20はランダムな時間でビーコンパケットをフラッディングする。
【0067】
上記のようなビーコンパケットのフラッディングを順次行うことにより、各移動局20が急激に移動したり、回転を伴った移動をしたりしても、逐次、局間のリンクコストを更新できる。
【0068】
(A−2−2)データ送信時の処理
次に、各移動局20が基地局10に向けてデータを含むパケットを送信するときの処理を説明する。
【0069】
各移動局20が基地局10に向けてデータ通信する際、送信先選択手段1006が、周辺無線機テーブル1011を参照して、自局から基地局10までのパスコストが最小値となる経路を選択する。
【0070】
送信先選択手段1006は、パスコストが最小値となる経路の次の移動局20を親ノードとし、その親ノードにデータパケットを送信するようにする。つまり、送信先選択手段1006は、親ノードのアドレスを含むデータパケットを生成し、送信手段1001がデータパケットを送信する。
【0071】
各移動局20の間で、上記のデータ送信処理を繰り返すことで、データパケットが基地局10に向けてマルチホップ送信される。
【0072】
(A−2−3)送信先選択処理
続いて、各移動局20が選択した親ノードが基地局10であるときの送信先選択処理の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0073】
図4図7は、この実施形態に係る送信先選択処理を説明する説明図である。
【0074】
[プロミスキャスモードを用いる基本概念]
上述したようなネットワークの構成方法によれば、概ね狙い通りのネットワークを構成することができる。しかし、各移動局20が移動するときに、各局間のリンクの状態が刻々と変化するため、データ通信が失敗することが想定される。例えば、局間に人体等が存在すると、人体が障害物となってしまい、当該局間のリンクの通信品質が落ちてしまい、通信が失敗することがある。
【0075】
例えば、図4を用いて、移動局20−BがB1の位置からB2の位置に移動した場合を例に挙げて説明する。
【0076】
移動局20−BがB1の位置にいる時点で形成された経路は、「移動局20−B(2ホップ目)」→「移動局20−A(1ホップ目)」→「基地局10」とする。そして、移動局20−Bが、B1の位置からB2の位置に移動し、B2の位置で移動局20−Bが移動局20−Aにデータパケットを送信するものとする(S30)。
【0077】
しかし、このとき、B2の位置の移動局20−Bと移動局20−Aとの間に障害物(例えば人体等)が存在してしまうと、移動局20−Bと移動局20−Aとの間のリンクの通信品質が落ち、通信が失敗することが生じ得る(S31)。
【0078】
なお、図4で図示しないが、例えば移動局20−Aと基地局10との間に障害物が存在し得ることもある。つまり、「移動局20−B→移動局20−A」のリンクと、「移動局20−A→基地局10」のリンクとのいずれか又は両方の通信品質が落ちてしまうと、通信が失敗する可能性が生じ得る。
【0079】
そこで、この実施形態では、基地局10がプロミスキャスモードで動作するようにしている。従って、移動局20−Bが、移動局20−A宛のデータパケットを送信している場合でも、基地局10は、直接通信可能となった移動局20−Bが送信した移動局20−A宛のデータパケットを受信することができる(S32)。
【0080】
その結果、「移動局20−B→移動局20−A」のリンクと、「移動局20−A→基地局10」のリンクとのいずれか又は両方の通信品質が落ちた場合でも、「移動局20−B→基地局10」のリンクの通信品質が良好であれば、通信の失敗を回避することができる。
【0081】
[親ノードが基地局10とするときの送信先選択処理]
上述した方式を用いた場合、基地局10と直接通信可能な移動局20は、通常であれば、データパケットの宛先に基地局10を指定することになる。
【0082】
しかしながら、基地局10がプロミスキャスモードを前提とした場合でも、1ホップ目の移動局と基地局10との間のリンクが使用できなくなるときには、通信が失敗することもある。
【0083】
例えば、図5に示すように、基地局10と直接通信可能な移動局20−Aと、基地局10との間に障害物が存在する場合などである。上記のような場合、基地局10から1ホップ目の位置の移動局20−Aは、データパケットの宛先に基地局10を指定することになるので、局間に障害物が存在することで「移動局20−A→基地局10」のリンクが使用できなくなり、代替手段が存在しなくなってしまう。
【0084】
そこで、移動局20が基地局10と直接通信可能な場合でも、データパケットの宛先に、自局の周辺に存在する他の移動局20を指定するようにする。すなわち、送信先選択手段1006が周辺無線機テーブル1011を参照して、データパケットの宛先に基地局10を指定(選択)する際に、基地局10を宛先に指定するのではなく、周辺の他の移動局20を指定するようにする。
【0085】
このようにすることで、基地局10と直接通信可能な移動局20と基地局10との間のリンクの通信品質が悪い場合でも、データパケットの転送経路を迂回することができ、通信の失敗を回避できる。
【0086】
ここで、自局20が基地局10と直接通信可能な場合に、送信先選択手段1006が上記周辺の他の移動局20を選択する方法の一例を説明する。
【0087】
[選択方法1]
送信先選択手段1006は、基地局10の近くに存在する他の移動局20を選択する。
【0088】
選択方法1は、基地局10の近くに存在する他の移動局20をデータパケットの宛先に指定することで、最短コストの経路でデータパケットを迂回させることを意図している。
【0089】
基地局10の近くに存在する他の移動局20の選択方法の一例として、周辺の他の移動局20のパスコストの値を参照する方法がある。これは、局間の距離とパスコストの値の関係性を考慮すると、局間の距離が近いときには、パスコストの値が小さくなるという傾向がある。そこで、送信先選択手段1006は、周辺無線機テーブル1011を参照して、パスコストの値が最小値である他の移動局20を選択する。
【0090】
例えば、図6において、基地局10と直接通信可能な移動局20−Aに注目して説明する。移動局20−Aの周辺には、移動局20−C及び20−Dが存在しているものとする。この例では、説明を容易にするため、移動局20−C及び20−Dは共に、基地局10と直接通信可能な局であるとする。
【0091】
移動局20−Cと基地局10との間のリンクコストの値は「2」とし、移動局20−Cのパスコストの値は「2」とする。一方、移動局20−Dと基地局10との間のリンクコストの値は「4」とし、移動局20−Dのパスコストの値は「4」とする。
【0092】
この例の場合、送信先選択手段1006は、周辺無線機テーブル1011を参照して、パスコストの値が最小値である移動局20−Cを、データパケットの宛先として指定する。
【0093】
[選択方法2]
送信先選択手段1006は、自局20とある程度離れた位置に存在する他の移動局20を選択する。
【0094】
選択方法2は、自局20の周辺に複数の障害物が存在し得るケースを考慮している。例えば、サッカー選手に移動局20を取り付けて、又ゴールポストに基地局10を固定したときのネットワーク構成を想定する。ゴールポスト付近に多数の選手が密集して、競り合いのプレーが行なわれるようなとき、複数の選手の体が障害物となり得る。また、無線通信装置を取り付けている選手(移動体)自身の体も障害物となり得る。そのため、基地局10又は自局20の近くにある他の移動局20にデータパケットを送信しても、局間のリンクがふさがってしまうことがあったり、選手自身の体の向きによっては自身の体が通信品質に影響を与えてしまったりしてしまい、通信が失敗することもあり得る。
【0095】
そこで、選択方法2は、自局20からある程度離れた位置に存在する他の移動局20を指定するようにしている。このようにすることで、比較的通信品質が良好と考えられる他の移動局20にデータパケットの迂回させることで、通信の失敗を回避できる。
【0096】
自局20とある程度離れた位置に存在する他の移動局20の選択方法の一例として、自局20が受信したビーコンの受信電力値を参照する方法がある。これは、局間の距離と受信電力値との関係性を考慮すると、局間の距離が遠くなるほど、ビーコンの受信電力値は小さくなるという傾向がある。そこで、送信先選択手段1006は、周辺無線機テーブル1011を参照して、ビーコンの受信電力値が所定の閾値以下となる他の移動局20を選択する。なお、閾値は、運用に応じて適宜決定することができる。
【0097】
受信電力値と閾値とを比較したときに、閾値以下となる複数の受信電力値がある場合、その複数の受信電力値の中からランダムに選択した他の移動局20をするようにしてもよい。また別の方法として、複数の受信電力値のうち、受信電力値が最も高いもの若しくは最も低いものの他の移動局20を選択するようにしてもよい。
【0098】
例えば、図7において、基地局10と直接通信可能な移動局20−Aに注目して説明する。移動局20−Aの周辺には、移動局20−C、20−D及び20−Eが存在しているものとする。移動局20−C、20−D及び20−Eのそれぞれのビーコンの受信電力値のうち、移動局20−Eのビーコンの受信電力値が閾値以下であるとする。この例の場合、送信先選択手段1006は、周辺無線機テーブル1011を参照して、閾値以下の受信電力値であ移動局20−Eを、データパケットの宛先として指定する。この例の場合、データパケットは、「移動局20−E→移動局20−C→基地局10」の経路で伝送される。
【0099】
以上のように、送信先選択手段1006は、選択方法1又は選択方法2のいずれかの方法を用いてデータパケットの宛先を選択することができる。
【0100】
ここで、図6及び図7において、基地局10はプロミスキャスモードで動作している。従って、移動局20−Aと基地局10との間に障害物が存在しない場合には、基地局10は、移動局20−Aが送信した他の移動局20を宛先としたデータパケットを受信することができる。
【0101】
また、移動局20−Aと基地局10との間に障害物が存在しない場合、基地局10には、移動局20−Aが送信したデータパケットと、他の移動局20を経由したデータパケットとが到着することがある。しかし、この場合、基地局10では、いずれか早くに到着したデータパケットを受信し、遅くに到着したデータパケットを破棄することで解決することができる。
【0102】
また、データパケットの宛先に他の移動局20を指定して送信することにより、当該データパケットの中継回数が増加するので、他の移動局の通信に影響することが問題となり得る。しかし、この実施形態では、上記の点について問題ないと考えられる。
【0103】
この実施形態では、各移動局20から基地局10に向けてデータパケットを送信するタイミングは、例えばTDMA方式のように時間帯が割り当てられている。具体的には、基地局10が送信したビーコン信号の経過時間に応じて、各移動局10に特定の時間帯を割り当てる方法を適用できる。このような構成にすることで、移動局20から基地局10までの中継回数が増加しでも、通信回数が増加することによる他の移動局20の通信への悪影響はないこととなる。なお、上り通信はTDMA方式のような通信動作に限定されるものではなく、通常のCSMAにより衝突回避をしながら送信動作する構成を取ることは可能である。換言すると、各移動局20が、周辺の他の移動局20の送信タイミングを調整しながら送信動作を行なう方式であればよい。
【0104】
(A−3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、移動の激しい環境におけるマルチホップネットワークにおいて、プロミスキャスモードを用いること、及びそれを前提とした親の選択(データパケットの送信先の選択)を行なうことで、単純に受信電力値などを用いた場合と比較して、通信に失敗する確率を減少させることが可能となる。結果としてデータの収集成功率を上げることができる。
【0105】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用することができる。
【0106】
(B−1)基地局と直接通信可能な移動局において、送信先選択手段が、データパケットの宛先を指定する方法は、上述した実施形態の選択方法1、選択方法2に限定されない。
【0107】
例えば、競技・運動の種類によっては、特定の複数の移動局が同じような動きをすることが考えられる。例えば、サッカー等の競技の同一チームの選手や監督・コーチに移動局を取り付ける場合、選手たちはまとまった動きをするなどといった状況が考えられる。このような状況においては特定の移動局(すなわち、特定の選手や監督・コーチに取り付けた移動局)を優先的に選択することで、移動による通信特性の悪化を防止できる可能性がある。このような用途のために、各移動局にグループ番号を付与しておき、ビーコンにグループ番号を含めて送信する構成を取ることが考えられる。これにより、ビーコンを受信した各移動局は、ビーコンに含まれるグループ番号に基づいて、グループに属する移動局からのビーコンであることを識別できる。つまり、送信先選択手段は、当該グループに属する特定の移動局を選択することができる。
【0108】
また例えば、基地局と直接通信可能な移動局が、宛先に指定する局を予め固定的に設定しておくようにしてもよい。当該局は、例えば、固定設置される基地局10の電波到来範囲の境界付近に設けておき、基地局から1ホップの位置にいる移動局が、当該局をデータパケットの宛先に指定するにしてもよい。
【0109】
また、上述した実施形態では、選択方法1と選択方法2のいずれかを用いる場合を例示したが、状況に応じて、選択方法1と選択方法2とを切り替えて用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…無線通信システム、10…基地局、20(20−1〜20−8、20−A〜20−E)…移動局、
1001…送信手段、1002…受信手段、1003…タイマー、1004…ビーコンパケット生成手段、1005…データ生成手段、1006…送信先選択手段、1007…ビーコン受信手段、1008…ビーコン管理手段、1009…データ受信手段、1010…移動計測手段、1011…周辺無線機テーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7