(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750656
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】酸素捕捉配合物及び酸素を捕捉する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20200824BHJP
C08K 3/105 20180101ALI20200824BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20200824BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20200824BHJP
A61J 1/03 20060101ALI20200824BHJP
B65D 81/26 20060101ALI20200824BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20200824BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K3/105
C08K5/00
B01D53/14 311
A61J1/03 370
B65D81/26 S
B01J20/26 A
B32B27/18 G
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-196031(P2018-196031)
(22)【出願日】2018年10月17日
(65)【公開番号】特開2020-63372(P2020-63372A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2018年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】506062779
【氏名又は名称】フード インダストリー リサーチ アンド ディベロップメント インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ユ−チ
(72)【発明者】
【氏名】リン, チュン−フォン
(72)【発明者】
【氏名】ウ, イ−ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン, シ−フン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ビンフェイ バリー
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0104033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/02
A61J 1/03
B01D 53/14
B01J 20/26
B32B 27/18
B65D 81/26
C08K 3/105
C08K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む、酸素捕捉配合物。
【請求項2】
前記カロテノイドが、リコペン、ゼアキサンチン、レチノール、カンタキサンチン、α−、β−、γ−及びδ−カロテン、アスタシン、アスタキサンチン、クリサンテマキサンチン、トルラロジン、ビオラキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、リボフラビン、キサントフィル又はルテインである、請求項1に記載の酸素捕捉配合物。
【請求項3】
前記光増感剤の量が、前記酸化性ポリマー樹脂の重量に対して約0.5〜約5重量%の範囲である、請求項1又は2に記載の酸素捕捉配合物。
【請求項4】
基材にコーティングされた酸素捕捉フィルムの形態である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素捕捉配合物。
【請求項5】
前記基材が、包装物品の外部層及び/又は内部層である、請求項4に記載の酸素捕捉配合物。
【請求項6】
前記包装物品が、中間層及び/又は接着層を更に含む、請求項5に記載の酸素捕捉配合物。
【請求項7】
包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、酸素捕捉配合物を前記包装物品に供給して、前記酸素捕捉配合物と酸素とを接触させ、前記包装物品における前記酸素雰囲気を低減させるステップを含み、前記酸素捕捉配合物が、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む、方法。
【請求項8】
前記カロテノイドが、リコペン、ゼアキサンチン、レチノール、カンタキサンチン、α−、β−、γ−及びδ−カロテン、アスタシン、アスタキサンチン、クリサンテマキサンチン、トルラロジン、ビオラキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、リボフラビン、キサントフィル又はルテインである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光増感剤の量が、前記酸化性ポリマー樹脂の重量に対して約0.5〜約5重量%の範囲である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、
a)酸素捕捉配合物をUV照射に曝露して、酸素捕捉を誘発させるステップであり、前記酸素捕捉配合物が、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む、ステップと、
b)誘発させた前記酸素捕捉配合物を前記包装物品の内部に供給して、前記酸素捕捉配合物と酸素とを接触させ、前記包装物品における前記酸素雰囲気を低減させるステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記曝露するステップが、約250mJ/cm2〜600mJ/cm2の紫外線C(UVC)域のエネルギー密度を有する前記UV照射に前記酸素捕捉配合物を曝露することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カロテノイドが、リコペン、ゼアキサンチン、レチノール、カンタキサンチン、α−、β−、γ−及びδ−カロテン、アスタシン、アスタキサンチン、クリサンテマキサンチン、トルラロジン、ビオラキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、リボフラビン、キサントフィル又はルテインである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記光増感剤の量が、前記酸化性ポリマー樹脂の重量に対して約0.5〜約5重量%の範囲である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸素捕捉配合物が、基材にコーティングされた酸素捕捉フィルムの形態である、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、
a)酸素捕捉フィルムを含む多層包装フィルムをUV照射に曝露して、酸素捕捉を誘発させるステップであり、前記酸素捕捉フィルムが、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む酸素捕捉配合物から構成される、ステップと、
b)前記多層包装フィルムをシーリングして前記包装物品を形成し、前記酸素捕捉配合物と酸素とを接触させ、前記包装物品における前記酸素雰囲気を低減させるステップと
を含む、方法。
【請求項16】
前記曝露するステップが、約250mJ/cm2〜600mJ/cm2の紫外線C(UVC)域のエネルギー密度を有する前記UV照射に前記酸素捕捉フィルムを曝露することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カロテノイドが、リコペン、ゼアキサンチン、レチノール、カンタキサンチン、α−、β−、γ−及びδ−カロテン、アスタシン、アスタキサンチン、クリサンテマキサンチン、トルラロジン、ビオラキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、リボフラビン、キサントフィル又はルテインである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記光増感剤の量が、前記酸化性ポリマー樹脂の重量に対して約0.5〜約5重量%の範囲である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記多層包装フィルムが、外部層と、内部層と、任意選択で接着層とを更に含む、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記酸素捕捉フィルムが、前記外部層又は前記内部層にコーティングされている、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本発明は、さらなる誘発剤(triggering agent)又は加熱若しくは光照射により酸素捕捉機能を誘発させる必要のない酸素捕捉配合物に関する。特に、配合物は、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む。
【0002】
[0002]酸素捕捉包装技術は、食品包装産業において幅広く使用されてきた。肉並びにチーズ、燻製及び加工ランチョンミートのような食料品、同様に電子部品、医薬品及び医療用品のような食品以外の製品を含む、酸素に敏感な製品のほとんどは、酸素の存在下では劣化する。酸素への曝露を制限することで、特に食品産業における包装された製品の品質及び貯蔵寿命を維持及び向上する手段がもたらされる。したがって、包装された製品から酸素を除去すること、及び貯蔵の間の酸素透過に対するバリアを生成することは、包装技術における重要な目的である。
【0003】
[0003]包装された敏感な材料が酸素に曝露されることを制限するために、幾つかの技術が開発されてきた。このような技術は、酸素に対する透過率が低いバリア材料を包装の一部として使用すること、(酸素と反応可能な材料を有する小袋を使用することで)包装材料以外に酸素を消費可能なものを含むこと、及び包装において低減された酸素環境を生み出すこと(例えば、ガス置換包装(modified atmosphere packaging)(MAP)及び真空包装)を含む。上記の技術のそれぞれには、業界における相応しい場所があるが、酸素捕捉剤を包装物品の一部として含むことが酸素の曝露を制限する最も望ましい手段のうちの1つであることはよく認知されている。
【0004】
[0004]1970年代後半に、Mitsubishi Gas Chemical Company,Inc.(日本)により開発された脱酸素剤であるエージレス(Ageless)(登録商標)が、酸素捕捉小袋、ラベルステッカー又は食品包装材料自体の構成要素の形態で商業用途に導入された。酸素捕捉の原理は、酸素捕捉剤と酸素との間の反応に依存する。これまでに開発された捕捉剤においては、鉄系、亜硫酸塩系、アスコルビン酸塩系及び酵素系のシステム、並びに酸化性ポリアミド及びエチレン性不飽和炭化水素の間で区分することができる。これらの酸素捕捉剤は、包装中の酸素含量を空気の0.01%未満へと効果的に低減できることが好ましい。酸素含量を0.3〜3%にしか低減できないMAP、例えば真空包装技術又は窒素充填技術に比べて、酸素捕捉効果がより明白である。しかしながら、酸素化反応を活性化するためには、酸素捕捉剤を、例えば、水、高温又は光で誘発させる必要がある。鉄系捕捉剤は、金属鉄の水酸化鉄(II)及び水酸化鉄(III)への酸化に基づいている。捕捉プロセスを開始するために、反応は、促進作用を有する特定の促進剤に加えて、水分を必要とする。この反応により、意図的な活性化を可能にする誘発機構ができあがる。しかしながら、このような捕捉剤は、含水量が高い製品にしか適していない。さらに、このような粉末状捕捉剤をポリマーシートにおいて使用する際の一般的な欠点は、これらのシートの透明性の低下及び機械特性の悪化である。誘発剤又は誘発プロセスを用いない場合、酸素捕捉効果を開始することはできない。さらなる別の態様において、誘発剤を包装材料に直接添加して、自己誘発型酸素捕捉包装材料を生成することができる。
【0005】
[0005]従来的に、誘発プロセスには、二重結合を含有するポリマーの酸素捕捉機能を活性化させる特定量のエネルギーを供給するために、高温又は紫外光が必要とされる。例えば、米国特許第5911910号には、酸化性有機化合物、例えば非置換又は置換エチレン性不飽和炭化水素ポリマーから生成された包装フィルムを、強度100mJ/cm
2超の紫外光に曝露し、65〜80°Fの温度にチャンバ内で加熱して、酸化性有機化合物の酸素捕捉機能を誘発させることができると開示されている。米国特許第6610215号には、酸化性有機化合物、例えばエチレン−メチルシクロヘキセンコポリマー又はエチレン−メチルアクリレート/シクロヘキセニルメチルアクリレートターポリマー等の環状オレフィン化合物と、遷移金属触媒とを含む熱活性化された酸素捕捉配合物が開示されている。酸素捕捉配合物を、単層構造又は多層構造を有するバッグ及びフィルムにおいて使用することができる。酸素捕捉機能は、酸素捕捉配合物を75〜300℃の温度に60分より長く加熱することによって誘発することができる。
【0006】
[0006]米国特許第7468144号には、過酸化物、例えば過酸化水素を使用することによって、酸化性有機化合物と遷移金属とを含む酸素捕捉配合物を熱により誘発させる方法が開示されている。当該方法は、酸素捕捉配合物から製造された包装物品の表面を2%の過酸化水素溶液で濡らし、その後、70℃の熱風を用いて余分な過酸化水素溶液を除去し、最後に、物品を紫外光に曝露して、酸素捕捉機能を誘発させることを含む。結果は、包装物品を過酸化物で前処理することによって、酸化性有機化合物によりもたらされる酸素捕捉効果を向上させることができることを示す。
【0007】
[0007]誘発剤は、当技術分野においても幅広く研究されてきた。例えば、米国特許第6139770号には、誘発剤が、少なくとも2つのベンゾフェノン部分を含有するベンゾフェノン誘導体、例えばトリベンゾイルトリフェニルベンゼン及び置換トリベンゾイルトリフェニルベンゼンを含む光開始剤であってもよいこと、並びにこのような光開始剤を含有する酸素捕捉配合物が、約200nm〜約750nmの範囲の波長を有する紫外光若しくは可視光、電子ビーム又は熱での誘発により活性化することができることが開示されている。米国特許第7153891号には、誘発剤が、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンからなる群から選択される1種又は複数の材料を含む光開始剤であってもよいこと、並びにこのような光開始剤を含む酸素捕捉剤配合物が、主に254ナノメートルの発光波長を有する殺菌灯の化学線放射の線量により誘発することができることが開示されている。
【0008】
[0008]一般的な二重結合を含有するポリマー系酸素捕捉剤は、光に曝露するか又は高温に加熱することにより誘発させる必要がある。しかしながら、加熱プロセスは、多大な時間を要するのみならず、包装材料の特定の処理温度範囲に限定されているため、コーティング、印刷又はヒートシールされた多層包装フィルムにとって特に不適切である。一方で、放射線誘発型酸素捕捉剤のために、食品加工工場は、高強度UV照射設備を更に購入する必要があり、さらなる設備投資費が生じる。
【0009】
[0009]よって、包装物品の酸素捕捉機能を誘発させるために様々なアプローチが開発されてきたものの、酸素捕捉配合物及びこれを利用した包装材料を改善する必要が依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
[0010]本発明は、さらなる誘発剤又は加熱若しくは光照射により酸素捕捉機能を誘発させる必要のない改善された酸素捕捉配合物、及びこれから製造された物品を提供する。
【0011】
[0011]よって、本発明の一態様は、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む酸素捕捉配合物を対象とする。
【0012】
[0012]本発明の別の態様は、包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、酸素捕捉配合物を包装物品に供給して、酸素捕捉配合物と酸素とを接触させ、包装物品における酸素雰囲気を低減させるステップを含み、酸素捕捉配合物が、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む、方法を対象とする。
【0013】
[0013]本発明のさらなる態様は、包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、a)酸素捕捉配合物をUV照射に曝露して、酸素捕捉を誘発させるステップであり、酸素捕捉配合物が、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む、ステップと、b)誘発させた酸素捕捉配合物を包装物品の内部に供給して、酸素捕捉配合物と酸素とを接触させ、包装物品における酸素雰囲気を低減させるステップとを含む、方法を対象とする。
【0014】
[0014]本発明のさらなる態様は、包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、a)酸素捕捉フィルムを含む多層包装フィルムをUV照射に曝露して、酸素捕捉を誘発させるステップであり、酸素捕捉フィルムが、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む酸素捕捉配合物から構成される、ステップと、b)多層包装フィルムをシーリングして包装物品を形成し、酸素捕捉配合物と酸素とを接触させ、包装物品における酸素雰囲気を低減させるステップとを含む、方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
[0015]
図1(a)及び(b)は、ブランクフィルム、及び1重量%のベンゾフェノン又は1重量%のβ−カロテンを含有する酸素捕捉剤フィルムの、捕捉時間に対する11mlのガス封入ボトル内において低減される酸素濃度及び酸素量の変化を、それぞれ示す。
[0016]
図2(a)及び(b)は、様々なエネルギー密度を有するUVC光への曝露下での、1重量%のβ−カロテンを含有する酸素捕捉剤フィルムの捕捉時間に対する、曝露11mlのガス封入ボトル内において低減される酸素濃度及び酸素量の変化を、それぞれ示す。
[0017]
図3(a)及び(b)は、様々な量のβ−カロテンを含有する酸素捕捉剤フィルムの捕捉時間に対する、11mlのガス封入ボトル内において低減される酸素濃度及び酸素量の変化を、それぞれ示す。
[0018]
図4は、1重量%のβ−カロテン、リコペン、レチノール又はアスタキサンチンを含有するフィルムの捕捉時間に対する、11mlのガス封入ボトル内における酸素濃度の変化を示す。
【0016】
[0019]本発明の様々な実施形態についての以下の詳細な説明、実施例及び関連する説明付きの表を参照することによって、本発明をより容易に理解することができる。特に定めのない限り、本明細書において使用される用語(技術用語及び科学用語を含む)はすべて、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用されている辞書において定義されているような用語は、関連技術の文脈におけるそれらの用語の意味と矛盾しないと解釈されるべきであり、本明細書において明示的に定義されない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味で解釈はされないものと理解される。本明細書に使用されている用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図してはいないことも理解されたい。
【0017】
[0020]本明細書で使用されているように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、複数の指示物を含むことを留意すべきである。したがって、文脈からそうでないと求められない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0018】
[0021]2つ以上の項目の列挙を参照する際の「又は」という単語は、その単語についての以下の解釈すべてを網羅する:列挙中の項目のいずれか、列挙中の項目のすべて、及び列挙中の項目の任意の組合せ。
【0019】
[0022]しばしば、範囲は、本明細書では、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値として表す。このような範囲を表す場合、実施形態には、一方の特定の値から、及び/又は他方の特定の値の範囲が含まれる。同様に、「約」という単語を使用して値を近似値として表す場合、特定の値は、別の実施形態を形成すると理解される。さらに、範囲のそれぞれの端点は、もう一方の端点との関連においても、あるいはもう一方の端点とは無関係にも、重要であると理解される。本明細書で使用されているように、「約」という用語は、±20%、好ましくは±10%、更により好ましくは±5%を指す。
【0020】
[0023]文脈から明らかにそうでないと求められない限り、明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、「を含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などの単語は、排他的又は網羅的な意味とは反対に、包含的な意味で、すなわち、「を含むが、これらに限定されることはない」という意味で解釈されるべきである。さらに、「本明細書において」、「上記」、「下記」という単語及び類似の趣旨の単語は、本願で使用される場合、本願を全体として指すものであって、本願の任意の特定の部分を指すものではない。
【0021】
[0024]「酸素雰囲気が低減された」又は「酸素雰囲気を低減する」は、海面位での標準温度及び圧力にある地球大気における酸素分圧と比較して、包装物品における酸素分圧が低減されていることを指す。酸素雰囲気が低減された包装は、酸素分圧が海面位での標準温度及び圧力にある地球大気の酸素分圧より低いガス置換包装を含み得る。
【0022】
[0025]本発明によると、「包装物品」は、ウェブ、例えば、単一層若しくは多層フィルム、単一層若しくは多層シート、容器、例えば、バッグ、収縮バッグ、ポーチ、ケーシング、トレー、蓋付きトレー、重ねたトレー、成形シュリンク包装(form shrink packages)、真空スキン包装、フローラップ包装(flow wrap packages)、熱成形包装、包装用挿入物又はこれらの組合せの形態にあり得る製造対象を指す。本発明によると、包装物品は、柔軟性、硬質又は半硬質の材料を含んでいてもよく、熱収縮性であってもそうでなくても、配向であっても非配向であってもよいと当業者により理解される。
【0023】
[0026]本明細書で使用されているように、「中間層」は、少なくとも2つの他の層の間に配置されており、これらの層と接触した層を指す。
【0024】
[0027]本明細書で使用されているように、「外層」は、相対的な用語であり、表面層である必要はない。
【0025】
[0028]「外部層」という用語は、フィルム又は製品の最も外側の表面を含む層を指す。例えば、外部層は包装の外部表面を形成することができ、この外部表面は、2つの包装のヒートシーリング材を重ねる間、別の包装の外部層に接触している。
【0026】
[0029]「内部層」という用語は、フィルム又は製品の最も内側の表面を含む層を指す。例えば、内部層は、封じられた包装の内部表面を形成する。内部層は、食品接触層及び/又はシーラント層であってもよい。
【0027】
[0030]「接着層」という用語は、1つ又は複数の層に置かれてこの層が別の表面へと接着されるのを促進する層又は材料を指す。接着層は、多層フィルムの2つの層の間に配置されて、これらの2つの層を互いに関連した位置に維持して、望ましくない層間剥離を防止することが好ましい。特に示されない限り、接着層は、1つ又は複数の表面が接着層材料と接触し所望のレベルの接着をもたらす任意の適切な組成物を有していてもよい。多層フィルムにおける第一の層と第二の層との間に置かれた接着層は、第一の層及び第二の層の双方の構成要素を任意選択で含み、第一の層及び第二の層の双方への、接着層の向かい側への接着層の同時接着を促進することができる。
【0028】
[0031]本明細書で使用されているように、「シール層」、「シーリング層」、「ヒートシール層」及び「シーラント層」という用語は、外側フィルム層若しくはフィルムのシーリングに関与する層、それ自体、同じフィルムの別のフィルム層若しくは別のフィルム、及び/又はフィルムではない別の物品、例えばトレーを指す。シーラント層は、フィルムをそれ自体又は別の層にシーリングする任意の適切な厚さの内部層であることが一般的である。ラップ型シールとは反対に、フィン型シールのみを有する包装に関して、「シーラント層」という用語は通常、包装の内部表面フィルム層を指す。内層は、食品包装における食品接触層としての役割も頻繁に果たすことができる。
【0029】
[0032]「食品接触層」は、包装された食料品に接触する包装材料の一部を指す。
【0030】
[0033]一実施形態において、本発明は、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む酸素捕捉配合物を提供する。
【0031】
[0034]本発明の好ましい実施形態において、酸化性ポリマー樹脂は、以下のような二重結合を含有するオレフィン化合物を含んでいてもよい:
(i)オレフィンモノマー、例えばエチレン及びプロピレンのみならず、高級1−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン又は1−オクテンのホモポリマー及びコポリマー。ポリエチレンLDPE及びLLDPE、HDPE、並びにポリプロピレンが好ましい、
(ii)オレフィンモノマーと、ブタジエン、イソプレンのようなジオレフィンモノマー、及びノルボルネンのような環状オレフィンとのホモポリマー及びコポリマー、あるいは
(iii)1種又は複数の1−オレフィン及び/又はジオレフィンと、一酸化炭素及び/又は他のビニルモノマーとのコポリマー。ビニルモノマーは、アクリル酸及びその相応するアクリル酸エステル、メタクリル酸及びその相応するエステル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルケトン、スチレン、無水マレイン酸、並びに塩化ビニルを含むが、これらに限定されることはない。
本発明において使用される酸化性ポリマー樹脂は、ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエンコポリマーであり得ることがより好ましい。
【0032】
[0035]遷移金属触媒を酸素捕捉配合物に添加して、酸化性ポリマー樹脂の酸化反応を促進する。遷移金属触媒により、配合物は、「活性化された」酸素捕捉配合物になる。遷移金属触媒は、周期表の第一、第二又は第三の遷移系列から選択される金属を含む塩であり得る。金属は、Rh、Ru又はSc〜Zn(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZn)の系列にある元素のうちの1つであることが好ましく、Mn、Fe、Co、Ni及びCuのうちの少なくとも1つであることがより好ましく、Coであることが最も好ましい。このような塩について適したアニオンは、塩化物イオン、酢酸イオン、オクタン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、パルミチン酸イオン、2−エチルヘキサン酸イオン、ネオカプリン酸イオン、デカン酸イオン、ネオデカン酸イオン及びナフテン酸イオンを含むが、これらに限定されることはない。これらの塩の使用の例は、米国特許第3,840,512号及び米国特許第4,101,720号に記載されており、例えばネオカプリン酸コバルトである。
【0033】
[0036]本発明の一実施形態において、カロテノイドを光増感剤として使用して、酸素捕捉機能を誘発させることができる。カロテノイドは、リコペン、ゼアキサンチン、レチノール、カンタキサンチン、α−、β−、γ−及びδ−カロテン、アスタシン、アスタキサンチン、クリサンテマキサンチン、トルラロジン、ビオラキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、リボフラビン、キサントフィル、ルテイン、並びにこれらの任意の組合せからなる群から選択されることが好ましく、β−カロテンであることがより好ましい。
【0034】
[0037]本発明によると、遷移金属触媒の量は、酸化性ポリマー樹脂の重量に対して、約0.001〜約5重量%、好ましくは約0.01〜約4重量%、より好ましくは約0.1〜約2重量%であってもよく、光増感剤の量は、約0.5〜約5重量%、好ましくは約0.75〜約4重量%、より好ましくは約1〜約3重量%の範囲である。
【0035】
[0038]必須ではないが、添加剤を酸素捕捉配合物中で使用してもよい。従来から公知の添加剤は、以下のものを含むが、これらに限定されることはない:(i)フィラー及び補強剤、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物及び金属水酸化物、カーボンブラック、グラファイト、木粉、他の天然産物の粉末、合成繊維、フィラーとして使用されるステアリン酸塩、例えばステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛、(ii)顔料、例えば、カーボンブラック、ルチル型又はアナターゼ型の二酸化チタン、及び他の着色顔料、(iii)光安定剤及び/又は酸化防止剤、並びに(iv)加工添加剤、例えば、滑り防止剤/粘着防止剤、可塑剤、光学的光沢剤、帯電防止剤及び発泡剤。
【0036】
[0039]本発明の酸素捕捉配合物を製造する方法において、遷移金属触媒、光増感剤及び任意選択の添加剤は、酸化性ポリマー樹脂と、同時に、又は連続的に、又は実際の加工ステップの直前にも混ぜることができる。
【0037】
[0040]本発明の酸素捕捉配合物は、酸素捕捉フィルムの形態であってもよく、酸素捕捉フィルムは、乾式若しくは湿式噴霧、又はダスティングにより、又はロールコーティング、又はマイヤーバー若しくはドクターブレードを使用したコーティングにより、又は印刷手段(例えば、グラビア印刷又はフレキソ印刷を使用)により、又は静電転写を使用することにより、基材にコーティングされてもよい。
【0038】
[0041]本発明による酸素捕捉配合物を使用して、包装物品、例えば、単層又は多層プラスチック製のフィルム、シート、ラミネート、バッグ、ボトル、スタイロフォームカップ、ユテンシル、ブリスター包装、箱及び包装用ラップを製造することができる。包装物品は、押出成形、押出ブロー成形、流延成形、フィルムブロー成形、カレンダー成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、熱成形、スピン成形、ブロー押出成形及び回転成形を含むが、これらに限定されることはない、当業者が利用可能な任意の方法により製造することができる。
【0039】
[0042]包装物品は、外部層と、食品接触層と、酸素捕捉フィルムとを含む多層食品包装であってもよい。外部層には、ポリオレフィン樹脂、好ましくは、(i)EVAと、(ii)EAO(例えばVLDPE)と、(iii)融点が80〜98℃であるエチレン−ヘキセン−1コポリマーとのブレンドが利用される。食品接触層は、内部層であり、シーラント層としての役割も果たし得る。食品接触層における使用に適した材料は、150℃超で熱安定性であるべきであり、包装、貯蔵及び調理の間に経るあらゆる条件下で、水性及び油性食品との接触に関するFDAガイドラインのすべてを満たすべきである。食品接触層の例としては、ポリエステル、アクリル及びシリコーンが挙げられる。好ましい食品接触層はポリプロピレン(PP)層である。
【0040】
[0043]多層化された食品包装物品は、酸素捕捉フィルムと外部層との間、及び/又は酸素捕捉フィルムと食品接触層との間に配置された中間層を更に含んでいてもよい。一般的に適した中間層は、酸素捕捉フィルムのどちらの側にも存在する接着層であり、外部層又は食品接触層に接触している。接着層の好ましい一構成要素は、EMAC SP1330及びポリウレタン(PU)である。
【0041】
[0044]本発明の実施形態において、食品包装用の多層包装フィルムは、プラスチック基材に酸素捕捉配合物をコーティングして酸素捕捉フィルムを製造することによって製造することができる。乾燥後、酸素捕捉フィルムは、接着剤を含む食品接触層に結合可能である。食品包装用の多層包装フィルムは、食品接触層に酸素捕捉配合物をコーティングして酸素捕捉フィルムを製造することによっても製造することができる。その後、酸素捕捉フィルムを、接着剤を含む印刷された外部層に結合させることができる。その後、外部層と、食品接触層と、酸素捕捉フィルムと、任意選択で中間層としての接着層とを含む食品包装用に製造した多層包装フィルムを巻いて、酸素捕捉フィルムと酸素との接触を防止すべきである。
【0042】
[0045]本発明の酸素捕捉配合物の利点のうちの1つは、酸素化反応を活性化させるために水で又は高温若しくは光により誘発させる必要がないことである。しかしながら、UV光又はパルス光で誘発させる一般的な方法により、酸素捕捉剤の酸素化反応が促進され得る。よって、本発明の酸素捕捉配合物は、従来の任意の光誘発式プロセス又はシステムにも適している。
【0043】
[0046]上記の観点から、本発明は、包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、酸素捕捉配合物を包装物品に供給して、酸素捕捉配合物と酸素とを接触させるステップを含み、酸素捕捉配合物が、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む、方法も提供する。
【0044】
[0047]本発明は、包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、a)酸素捕捉配合物をUV照射に曝露して、酸素捕捉を誘発させるステップであり、酸素捕捉配合物が、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒とを含む、ステップと、b)誘発させた酸素捕捉配合物を包装物品の内部に供給して、酸素捕捉配合物と酸素とを接触させ、包装物品における酸素雰囲気を低減させるステップとを含む、方法も提供する。
【0045】
[0048]本発明は、包装物品における酸素雰囲気を低減させる方法であって、a)酸素捕捉フィルムを含む多層包装フィルムをUV照射に曝露して、酸素捕捉を誘発させるステップであり、酸素捕捉フィルムが、酸化性ポリマー樹脂と、遷移金属触媒と、1種又は複数のカロテノイドから選択される光増感剤とを含む酸素捕捉配合物から構成される、ステップと、b)多層包装フィルムをシーリングして包装物品を形成し、酸素捕捉配合物と酸素とを接触させ、包装物品における酸素雰囲気を低減させるステップとを含む、方法を更に提供する。
【0046】
[0049]本発明によると、曝露するステップは、約250mJ/cm
2〜600mJ/cm
2、好ましくは約350mJ/cm
2〜600mJ/cm
2、より好ましくは約450mJ/cm
2〜600mJ/cm
2の紫外線C(UVC)域のエネルギー密度を有するUV照射に酸素捕捉配合物を曝露することを含む。
【0047】
[0050]本発明の一実施形態において、酸素捕捉配合物は、包装物品の内部層において存在している。
【0048】
[0051]本発明の実施形態についての先の詳細な説明は、網羅することも、本発明を先に開示した形態に正確に限定することも意図してはいない。本発明の特定の実施形態及び本発明の実施例が説明の目的で先に記載されている一方で、当業者により認識されるように、様々な等価の変形形態が本発明の範囲内で可能である。
【実施例】
【0049】
実施例1:酸素捕捉フィルムを含む多層構造体の調製
[0052]β−カロテン含有酸素捕捉配合物を調製するために、0.03gのβ−カロテン(1重量%)を9gの酢酸ブチル溶媒に添加し、得られた溶液を加熱して、β−カロテンを溶解させた。その後、連続的に撹拌及び加熱しながら、3gのスチレン−ブタジエン−スチレン及び0.03gのネオカプリン酸コバルト(1重量%)を上記溶液に添加して、1重量%のβ−カロテンを含有する酸素捕捉配合物を得た(上記の重量パーセントは、スチレン−ブタジエン−スチレンの総重量に対して計算した)。スクレーパーを使用して、配合物をテレフタレート(PET)基材にコーティングした。コーティングしたPET基材を80℃で乾燥させると、PET基材上の酸素捕捉配合物が、厚さ45μmの酸素捕捉フィルムになった。
【0050】
[0053]上記の方法に従って比較用フィルムを調製し、ここで、ブランクフィルムは、β−カロテンを添加することなく得られ、ベンゾフェノン含有酸素捕捉フィルムは、β−カロテンを0.03gのベンゾフェノン(スチレン−ブタジエン−スチレンの総重量に対して1重量%)と置き換えることによって得られた。
【0051】
実施例2:UV灯への曝露
[0054]実施例1で調製したβ−カロテン含有フィルム、ブランクフィルム及びベンゾフェノン含有フィルムを切断して、9cm
2の面積の片にした。その後、フィルムそれぞれの配合物でコーティングされた表面を、表1で列挙された強度分布プロファイルを有する400WのUV灯に、10秒間7cmの距離で曝露した。
【0052】
【表1】
【0053】
[0055]曝露後、フィルムを個別に11mlの気密ボトル内に置いた。ボトルそれぞれの酸素濃度は、間隔を置いてガスクロマトグラフィーにより測定した(Trace1310)。
図1に示されているように、1重量%のβ−カロテン又は1重量%のベンゾフェノンを含有する双方のフィルムの酸素捕捉効果は、UV光に30秒間曝露することによって誘発させることができる。さらに、1重量%のβ−カロテンを含有する酸素捕捉フィルムにより達成される酸素捕捉効果は、1重量%のベンゾフェノン(従来の誘発剤)を含有する酸素捕捉フィルムにより達成される酸素捕捉効果と500時間内で類似している。上記の結果により、従来的に使用される誘発剤、例えばベンゾフェノンが、天然及び非水溶性のβ−カロテンと置き換えられ得ると証明される。
【0054】
実施例3:紫外線C光のエネルギー密度の影響
[0056]実施例1で調製した1重量%のβ−カロテンを含有する酸素捕捉フィルムを、0秒、15秒、20秒、25秒又は30秒間、19mV/cm
2のUVCパワー密度を有する400WのUV灯に個別に曝露した。よって、パワー密度(19mV/cm
2)に曝露時間(0秒、15秒、20秒、25秒又は30秒)を掛けることで、UVC域のエネルギー密度(mJ/cm
2)を算出することができる。同様に、曝露したフィルムを11mlの気密ボトル内に個別に置いた。ボトルそれぞれの濃度酸素は、間隔を置いてガスクロマトグラフィーにより測定した(Trace1310)。
図2(a)及び2(b)に示されているように、1重量%のβ−カロテンを含有する酸素捕捉フィルムの酸素捕捉効果は、1重量%のβ−カロテンを含有する酸素捕捉フィルムを285mJ/cm
2以上のエネルギー密度を有するUVC光に曝露する場合、25時間以内に誘発させることができる。
【0055】
実施例4:β−カロテンの量の影響
[0057]0.015g、0.03g及び0.09gのβ−カロテン(0.5重量%、1重量%又は3重量%)を9gの酢酸ブチル溶媒にそれぞれ添加し、得られた溶液を加熱して、β−カロテンを溶解させた。その後、連続的に撹拌及び加熱しながら、3gのスチレン−ブタジエン−スチレン及び0.03gのネオカプリン酸コバルト(1重量%)をそれぞれの溶液に添加して、0.5重量%、1重量%及び3重量%のβ−カロテンをそれぞれ含有する3つの酸素捕捉配合物を得た(上記の重量パーセントは、スチレン−ブタジエン−スチレンの総重量に対して計算した)。スクレーパーを使用して、配合物をテレフタレート(PET)基材にコーティングした。コーティングしたPET基材を80℃で乾燥させると、PET基材上の酸素捕捉配合物が、厚さ45μmの酸素捕捉フィルムになった。
【0056】
[0058]0.5重量%、1重量%及び3重量%のβ−カロテンを含有する酸素捕捉フィルムを切断して9cm
2の面積の片にして、酸素捕捉配合物でコーティングした表面を、19mW/cm
2のUVC域のパワー密度を有する400WのUV灯(570mJ/cm
2のエネルギー密度に相当)に、30秒間7cmの距離で曝露した。曝露後、フィルムを11mlの気密ボトル内に個別に置いた。ボトルそれぞれの酸素濃度は、間隔を置いてガスクロマトグラフィーにより測定した(Trace1310)。
【0057】
[0059]
図3(a)及び3(b)に示されているように、570mJ/cm
2のエネルギー密度を有するUVC光で誘発させた後に、1重量%以上のβ−カロテンを含有するフィルムは、50時間以内に酸素捕捉効果を示すことができる。
【0058】
実施例5:酸素捕捉包装の調製
[0060]0.009g、0.03g及び0.09gのβ−カロテン(0.3重量%、1重量%又は3重量%)を9gの酢酸ブチル溶媒にそれぞれ添加し、得られた3つの溶液を加熱して、β−カロテンを溶解させた。その後、連続的に撹拌及び加熱しながら、3gのスチレン−ブタジエン−スチレン及び0.03gのネオカプリン酸コバルト(1重量%)を当該溶液に添加し、β−カロテン含有酸素捕捉配合物を得た(上記の重量パーセントは、スチレン−ブタジエン−スチレンの総重量に対して計算した)。その後、スクレーパーを使用して、配合物をポリプロピレン(PP)基材にそれぞれコーティングした。コーティングしたPP基材を80℃で乾燥させると、PP基材上の酸素捕捉配合物が、厚さ25μmの酸素捕捉フィルムになった。#6コーティングロッドを使用して、ポリウレタン(PU)接着剤をポリエチレンテレフタレート(PET)基材にコーティングした。コーティングしたPET基材を乾燥させた後に、上記PET基材のPU接着剤側をPP基材それぞれの酸素捕捉フィルムに結合し、薄膜を形成した。形成された薄膜を独立的にアルミニウムホイルバッグに入れた。
【0059】
[0061]製造した薄膜を切断して、3×3cm
2のサイズの片にした。同じ薄膜からの2つの層状片のPP基材を互いに向かい合うように配置し、2つの層状片をシールして、包装を形成した。その後、11mlの空気を包装それぞれに注入した。包装における酸素濃度は、間隔を置いてガスクロマトグラフィーにより測定した(Trace1310)。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
[0062]上記の結果は、β−カロテンの量がスチレン−ブタジエン−スチレンの重量に対して3重量%以上である場合、酸素捕捉配合物により、誘発剤又は加熱若しくは光を使用することなく包装における酸素濃度を著しく低減させることができることを示す。
【0062】
実施例6:他のカロテノイド
[0063]実施例1に記載の方法に従って、それぞれ1重量%のβ−カロテン、リコペン、レチノール又はアスタキサンチンを含有するフィルムを調製し、その後、実施例2に記載の400WのUV灯に、30秒間7cmの距離で曝露した。
図4に示されているように、1重量%の異なるカロテノイドを含有するフィルムすべてにより、酸素捕捉効果をそれぞれ誘発させることができる。