(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基板、インデックスマッチング層および透明電極層を有する積層体βの製造方法であって、 下記工程(I)、(II−2)、(II−3)および(III)を含む製造方法。
(I) 透明基板を有する基板1上に、下記(4)〜(5)の全てを満たす活性エネルギー線硬化性組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射し前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化し、インデックスマッチング層を形成する工程。
(II−2) 前記インデックスマッチング層上に、真空を利用した成膜法により金属酸化物を付着し、アンカー層を形成する工程。
(II−3) 前記アンカー層上に、真空を利用した成膜法により導電性金属化合物を付着し、透明導電層を形成する工程。
(III) 前記透明導電層をパターニングして透明電極層を形成する工程。
(4) 活性エネルギー線硬化性組成物が、屈折率が1.70〜2.72の金属酸化物粒子(A)、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)、および他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)を含み、
前記金属酸化物粒子(A)が、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、及び酸化アルミニウム粒子より選択される1種以上であり、
前記3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)が、多官能化合物であり、
他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)が、多官能の(メタ)アクリル化合物である。
(5) 前記金属酸化物粒子(A)、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)、および他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)の合計100質量%中、前記3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)を2〜50質量%含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る積層体αについて説明する。
積層体αは、前述の通り、透明基板、インデックスマッチング層および透明導電層を有する積層体である。
インデックスマッチング層は活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物である。
前記活性エネルギー線硬化性組成物は、屈折率が1.70〜2.72の金属酸化物粒子(A)、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)および他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)を含み、前記(A)、(c1)(c2)の合計100質量%中、前記3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)を2.0質量%以上、50.0質量%以下含む。
【0020】
屈折率が1.70〜2.72の金属酸化物(A)のうち、
屈折率が2.72の酸化チタンとしては、
石原産業(株)製:TTO−55(A)、TTO−55(B)、TTO−55(C)、TTO−55(D)、TTO−55(S)、TTO−55(N)、TTO−51(A)、TTO−51(C)、TTO−S−1、TTO−S−2、TTO−S−3、TTO−S−4、ST−01、ST−21、ST−30L、ST−31、
堺化学工業(株)製:STR−60C、STR−60C-LP、STR−100C、STR−100C−LP、STR−100A−LP、STR−100W、
テイカ(株)製:MT−05、MT−100S、MT−100HD、MT−100SA、MT−500HD、MT−500SA、MT−600SA、MT−700HD、
シーアイ化成(株)製:ナノテックTiO
2が、
屈折率が2.22の酸化ジルコニウムとしては、
住友大阪セメント(株)製:OZC−3YC、OZC−3YD、OZC−3YFA、OZC−8YC、OZC−0S100、
日本電工(株)製:PCS、PCS−60、PCS−90、T−01が、
屈折率が1.77の酸化アルミニウムとしては、
日本アエロジル(株)製:AEROXIDEAluC、AEROXIDEAlu65、AEROXIDEAlu130、シーアイ化成(株)製:ナノテックAl
2O
3等が挙げられる。
【0021】
これら金属酸化物(A)の平均一次粒子径は、活性エネルギー線硬化性組成物における分散性を向上し、形成される硬化膜、即ちIM層の可視光等の光に対する散乱を抑制し、透明性を向上できるという点から、5〜100nmであることが好ましく、5〜30nmであることがより好ましい。
金属酸化物(A)の平均一次粒子径は、電子顕微鏡の観察により求めることができる。即ち、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JEM−2800」)を用いて倍率2万倍で観察した際の粒子10個の平均サイズを平均一次粒子径として用いた。
【0022】
また、活性エネルギー線硬化性組成物における金属酸化物(A)の分散粒径(D50)は、該活性エネルギー線硬化性組成物の硬化膜を形成した際の透明性の点から10〜500nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
金属酸化物(A)の分散粒径は、動的光散乱法を利用した日機装(株)製「ナノトラックUPA」等を用いて求めることができる。具体的には、金属酸化物(A)を溶剤に分散させた金属酸化物分散体を、測定濃度が1.0になるように希釈液に添加し測定した。
【0023】
IM層の形成に用いられる活性エネルギー線硬化性組成物は、金属酸化物粒子(A)を結合し、成膜する成分、即ちバインダーとして、後述する3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)および他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)からなる活性エネルギー線硬化性成分(C)を含む。
IM層の形成に用いられる活性エネルギー線硬化性組成物は、金属酸化物粒子(A)、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)および他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)の合計100重量%中に、前記3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)を2質量%以上、50質量%以下含む。3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)は2質量%以上、10質量%以下であることがより好ましい。
3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)を2質量%以上含むことによって、IM層とIM層上に形成される透明導電層や透明電極層との密着性が向上し、透明導電層や透明電極層の剥落を防止できる。3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)を50質量%以下含むことによって、IM層の耐擦傷性を大きく損なうことなく、IM層上に形成される透明導電層や透明電極層との密着性を向上させることができる。
【0024】
3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)としては、例えば、分子中に1つ以上の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル系化合物、脂肪酸ビニル化合物、アルキルビニルエーテル化合物、α−オレフィン化合物、ビニル化合物、エチニル化合物等の重合性不飽和二重結合基を有する化合物を用いることができる。
3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)のアミノ基に結合している官能基は特に限定されない。
3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)としては、単官能化合物、多官能化合物を適宜使用することができる。光硬化性の点からは、多官能のものが好ましい。
【0025】
3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)の市販品としては、以下のものが例示できる。
ダイセル・オルネクス(株)製:Ebecryl80、Ebecryl81、Ebecryl83、Ebecryl7100
共栄社化学(株)製:ライトエステルDE、ライトエステルDM
東亜合成(株)製:アロンDA、
アルケマ(株)製:CN383、CN371 NS、CN386、CN549 NS、CN550、CN551 NS
【0026】
他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)としては、例えば、(メタ)アクリル系化合物、脂肪酸ビニル化合物、アルキルビニルエーテル化合物、α−オレフィン化合物、ビニル化合物、エチニル化合物等の重合性不飽和二重結合基を有する化合物を用いることができる。
これらの重合性不飽和二重結合基を有する化合物は、さらに水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミド基、シラノール基等の官能基を有していてもよい。
【0027】
(メタ)アクリル系化合物としては、ベンジル(メタ)アクリレート、アルキル系(メタ)アクリレート、アルキレングリコール系(メタ)アクリレート、カルボキシル基と重合性不飽和二重結合とを有する化合物、水酸基を有する(メタ)アクリル系化合物、窒素含有(メタ)アクリル系化合物等がある。また、単官能化合物、多官能化合物(化合物(a)を除く)を適宜使用することができる。光硬化性、塗膜のハードコート性の点からは、多官能のものが好ましい。
【0028】
単官能の(メタ)アクリル系化合物として具体的には、アルキル系(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキレン(メタ)アクリレートが挙げられる。極性の調整を目的とする場合には、炭素数2〜10、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また、レべリング性の調節等を目的とする場合には、炭素数6以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0029】
アルキレングリコール系(メタ)アクリレートとしては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端に水酸基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレート;
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にアルコキシ基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレート;
フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレンエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にフェノキシまたはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
カルボキシル基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、珪皮酸等が挙げられる。
【0031】
水酸基含有(メタ)アクリル系化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
窒素含有(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミンド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド等のジアルキロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和化合物;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等のジアルキルアミノ基を有する不飽和化合物;及び、対イオンとしてCl
-、Br-、I
-等のハロゲンイオンまたはQSO3
−(Q:炭素数1〜12のアルキル基)を有するジアルキルアミノ基含有不飽和化合物の4級アンモニウム塩等がある。
【0033】
その他の不飽和化合物としては、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
【0034】
さらに、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物及びその誘導体;グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート等のグリシジル基含有アクリレートが挙げられる。
【0035】
脂肪酸ビニル化合物としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、クロトン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、クロル酢酸ビニル、オレイン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
アルキルビニルエーテル化合物としては、ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
α−オレフィン化合物としては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられる。
【0038】
ビニル化合物としては、アリル酢酸、アリルアルコール、アリルベンゼン、シアン化アリル等のアリル化合物、シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトン、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン等が挙げられる。
エチニル化合物としては、アセチレン、エチニルベンゼン、エチニルトルエン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等が挙げられる。
これらは、一種類で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
これらのなかでも、強度、耐擦傷性の観点より、(メタ)アクリレート化合物が好ましく、特にポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、少なくとも3つの官能基を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類、3個以上のアクリロイル基を有する多官能のアクリレート類(前記ポリウレタンポリウレタンポリ(メタ)アクリレートやポリエポキシポリ(メタ)アクリレート以外の)を好適に使用することができる。
ポリエポキシポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化して、官能基を(メタ)アクリロイル基としたものであり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
【0040】
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、
例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、
ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるものがある。
あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0041】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物等が挙げられる。
【0042】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)の市販品としては、以下のものが例示できる。
東亜合成(株)製:アロニックスM−400、アロニックスM−402、アロニックスM−408、アロニックスM−450、アロニックスM−7100、アロニックスM−8030、アロニックスM−8060、
大阪有機化学工業(株)製:ビスコート♯400、
化薬サートマー(株)製:SR−295、
新中村化学工業(株)製:NKエステルA−TMMT、NKエステルA−TMM−3LM−N、NKエステルA-9570W、NKオリゴEA−1020、NKオリゴEMA−1020、NKオリゴEA−6310、NKオリゴEA−6320、NKオリゴEA−6340、NKオリゴMA−6、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA、NKオリゴU−15HA、NKオリゴU−324A、
BASF社製:LaromerEA81、
荒川化学工業(株)製:ビームセット371、ビームセット575、ビームセット577、ビームセット700、ビームセット710;
根上工業(株)製:アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HS、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−901T、アートレジンHDP、アートレジンHDP−3、アートレジンH61、
日本合成化学工業(株)製:紫光UV−7600B、紫光UV−7610B、紫光UV−7620EA、紫光UV−7630B、紫光UV−1400B、紫光UV−1700B、紫光UV−6300B、
共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−4A、ライトアクリレートDPE−6A、UA−306H、UA−306T、UA−306I、
日本化薬(株)製:KAYARADDPHA、KAYARADDPHA2C、KAYARADDPHA−40H、KAYARADD−310、KAYARADD−330、KAYARAD PET−30、等が挙げられる。
【0045】
本発明において用いられる活性エネルギー線硬化性組成物は、少なくとも、前述の(A)〜(C)と、必要に応じて溶剤とを含有するものであり、さらに様々な添加剤を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において含むことができる。
添加剤としては、例えば、光重合開始剤、光硬化性化合物、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電性ポリマー、導電性界面活性剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0046】
溶剤を加える場合は、溶剤を揮発させた後に活性エネルギー線による硬化処理を行なうことが好ましい。
溶剤としては、特に制限されるものでなく、様々な公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には例えば、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン、トルエン、キシレン、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ブチルアセテート、イソアミルアセテート、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0047】
なかでも、水酸基含有溶剤は、親水性の高い粒子表面物性を持つ金属酸化物に対して濡れ性が良いことから、溶剤組成中に含有されることで、金属酸化物の分散性及びその活性エネルギー線硬化性組成物の経時安定性の向上において非常に効果的であり、かつ塗工工程のレベリング性も向上することから好ましい。
全溶剤組成中の水酸基含有溶剤含有量は、10〜100重量%であることが好ましい。具体的には、水酸基含有溶剤としては、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。特に、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルは、金属酸化物の分散性と分散安定性がより良好となることから好ましい。
【0048】
本発明における活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、光重合開始剤を含むことができる。
光重合開始剤としては、光励起によって活性エネルギー線硬化性成分(C)のアクリロイル基の重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物等が使用できる。
【0049】
具体的には、モノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル−エタノン、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシエチル)メタアンモニウムシュウ酸塩、2−/4−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン−3−メチルナフト(1,2−d)チアゾリン等が挙げられる。
【0050】
ジカルボニル化合物としては、1,2,2−トリメチル−ビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2,3−ジオン、ベンザイル、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート、4−フェニルベンザイル等が挙げられる。
アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−ジ-2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−スチリルプロパン−1−オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノ−プロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等が挙げられる。
【0051】
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。
【0052】
アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0053】
アミノカルボニル化合物としては、メチル−4−(ジメトキシアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5´−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
【0054】
光重合開始剤の市販品としては、
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184、651、500、907、127、369、784、2959、BASF社製ルシリンTPO、日本シイベルヘグナー(株)製エサキュアワン等があげられる。
【0055】
光重合開始剤は、上記化合物に限定されず、紫外線により重合を開始させる能力があれば、どのようなものでも構わない。これらの光重合開始剤は、一種類で用いられるほか、二種類以上を混合して用いてもよい。
光重合開始剤の使用量に関しては、特に制限はされないが、活性エネルギー線硬化性化合物(C)の全量100重量部に対して1〜20重量部の範囲内で使用することが好ましい。増感剤として、公知の有機アミン等を加えることもできる。
さらに、上記ラジカル重合用開始剤のほかに、カチオン重合用の開始剤を併用することもできる。
【0056】
活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性成分(C)の他に、活性エネルギー線硬化性の官能基を有しない樹脂もバインダー機能を担うものとしてを含んでいてもよい。
活性エネルギー線硬化性の官能基を有しないバインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、一種類で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。バインダー樹脂は、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分(溶剤以外の成分。以下、同じ。)の全量を基準(100重量%)として、20重量%以下の範囲内で使用することが好ましい。
【0057】
活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法としては、特に制限されず、いくつかの方法が挙げられる。
具体的には、初めに屈折率が1.70〜2.72の金属酸化物粒子(A)、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)と他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)を混合分散し、安定な金属酸化物分散体を得た後、他の様々な添加剤を添加及び調整し製造する方法;初めから、屈折率が1.70〜2.72の金属酸化物粒子(A)、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)、他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)及びその他の添加剤の全てが混合された状態で、分散し製造する方法;等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性成分(C)はその一部を金属酸化物粒子(A)の分散時に使用し、残りを分散後に添加することもできる。
【0058】
次に、積層体αについて説明する。
積層体αは、前述の通り透明基板、IM層および透明導電層を有する積層体であって、IM層が透明導電層と接しているか、IM層と透明導電層との間にアンカー層を有し、IM層とアンカー層とが接し、アンカー層と透明導電層とが接している。
【0059】
IM層が透明導電層と接している場合について説明する。
透明基板を有する基板1上に活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して、透明基板上の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させることでIM層を形成する。
IM層の厚みは、好ましくは0.03μm〜30μm、より好ましくは0.05μm〜10μmである。
【0060】
この透明基板としては、ガラス、プラスチック等が挙げられ、特に制限されるものではない。具体的なプラスチックの種類としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また基材の形状としてはフィルムシート、板状パネル、レンズ形状、ディスク形状、ファイバー状の物が挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0061】
前記の透明基板に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を直接塗工してIM層を形成することもできるし、透明基板にハードコート層やアンチブロッキング層のような表面処理層を予め設けた基板1に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を直接塗工してIM層を形成することもできる。ハードコート層やアンチブロッキング層は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物から前述の金属酸化物粒子(A)のような高屈折率の粒子を除いた活性エネルギー線硬化性組成物から形成することができる。透明基板とIM層の間にハードコート層を設けておくとIM層が傷つきにくくなるという効果が期待できる。アンチブロッキング層を設けた基板1を用いるとIM層を設けるまでの工業的生産工程において、基板1の搬送性が向上し生産性が向上するという効果が期待できる。
【0062】
塗工方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばロットまたはワイヤーバー等を用いた方法や、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロットまたはスピン等の各種コーティング方法を用いることができる。
硬化処理は、透明基板に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、自然または強制乾燥させたあとに活性エネルギー線を照射し硬化する。
【0063】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、波長400〜500nmの可視光線等の利用が挙げられる。
紫外線および波長400〜500nmの可視光線の線源(光源)には、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。電子線源には、熱電子放射銃、電解放射銃等を使用することができる。これらの活性エネルギー線照射に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱処理を併用することができる。
なお、電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害または有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なう方がより好ましい。硬化処理のタイミングは、塗工と同時でもよいし、塗工後でもよい。
【0064】
照射する活性エネルギー線量は、400〜2000mJ/cm
2の範囲内であることが好ましく、さらには工程上管理しやすい点から、400〜1000mJ/cm
2の範囲内であることが好ましい。IM層とITO膜との密着性向上の点から照射量は400mJ/c
2以上であることが好ましく、透明基板とIM層との密着性向上の点から照射量は2000mJ/cm
2以下であることが好ましい。
【0065】
IM層上に設けられる透明導電層について説明する。
透明導電層は、真空を利用した成膜法により形成された層である。
真空を利用した成膜法としては、例えば、真空蒸着法(物理的蒸着法または化学的蒸着法)、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを用いることができる。これらの方法により、IM層上に導電性金属化合物を付着させ透明導電層を形成できる。
透明導電層の厚みは、導電性向上、およびIM層との密着性向上の点から、1nm〜数十nmの範囲内であることが好ましく、さらには0.01〜1μmの範囲内であることがより好ましい。
透明導電層の形成に用いられる導電性金属化合物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0066】
次に、積層体αの他の態様、即ち、IM層と透明導電層との間にアンカー層を有し、IM層とアンカー層とが接し、アンカー層と透明導電層とが接している積層体αについて説明する。
IM層と透明導電層とが接する前述の場合と同様にして、まず、透明基板上にIM層を形成する。次いで、IM層上にアンカー層を形成した後、透明導電層を形成する。
【0067】
アンカー層は、透明導電層の場合と同様に真空を利用した成膜法により形成された層である。アンカー層の形成に用いられる金属酸化物としては、酸化ケイ素が挙げられる。
【0068】
IM層上またはアンカー層上に設けられた透明導電層をパターニングし透明電極層とすることによって、積層体αから積層体βを製造することができる。
パターニングの方法としてはエッチングを例示できる。
【0069】
積層体αにおける透明導電層、積層体βにおける透明電極層は、IM層との密着性に優れ、剥落し難いので安定した導電性を発現できる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
<屈折率が1.70〜2.72の金属酸化物粒子(A)>
A−1:酸化ジルコニウム粒子(屈折率:2.72)
A−2:酸化チタン粒子(屈折率:2.22)
【0071】
<3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)>
c1−1:ダイセル・オルネクス(株)製Ebecryl80
c1−2:ダイセル・オルネクス(株)製Ebecryl7100
【0072】
<他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)>
c2−1:日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA
c2−2:日立化成(株)製:NKオリゴU−15HA
【0073】
(実施例1)
金属酸化物粒子(A)として上記A−1を40質量部、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)として上記c1−1を2質量部、他の活性エネルギー線硬化性成分(c2)として上記c2−1を58質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを150質量部、光重合開始剤としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184を活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して5質量部、混合・分散して、D50粒子径が81nmの活性エネルギー線硬化性組成物1を得た。
なお、D50粒子径は、後述する方法に従い求めた。
【0074】
透明基板である100μm厚の易接着処理ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4100」)上に、バーコーターを用いて、得られた活性エネルギー線硬化性組成物1を塗工し、乾燥して有機溶剤を除去した後、高圧水銀ランプを用いて400mJ/cm
2の紫外線を照射し、1.0μmの硬化膜(IM層)を形成し、中間体を得た。
後述する方法に従い、IM層の屈折率・耐擦傷性、中間体のヘイズ・全光線透過率を求めた。
【0075】
次いで、得られ中間体のIM層上に、マグネトロンスパッタ装置((株)真空デバイス製「MSP−30Tマグネトロンスパッタ」)により、酸化インジウムスズをスパッタして、25nmの透明導電層を形成し、積層体αを得た。
得られた積層体αについて、後述する2種類の方法に従い、IM層と透明導電層との密着性を評価した。
【0076】
(実施例2〜10)、(比較例1〜5)
(A)〜(c2)の各成分を表1に示す種類・配合比率とした以外は、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性組成物、中間体、積層体αを得、同様に評価した。
【0077】
(D50粒子径、D90粒子径)
実施例、比較例で得られた各活性エネルギー線硬化性組成物について、測定装置に日機装(株)製「ナノトラックUPA」を、希釈液にメチルエチルケトンを用いて、D50粒子径を求めた。
【0078】
(IM層の屈折率)
得られた中間体と、メトリコン社製「プリズムカプラモデル2010」を用いて、IM層の波長594nmにおける屈折率を求めた。
【0079】
(IM層の耐擦傷性)
実施例、比較例で得られた各中間体のIM層が試験面となるように学振試験機にセットし、IM層の表面を、スチールウールのNo.0000で、荷重200gの条件で10回往復擦った。
試験後のIM層の表面のキズの本数で評価した。
A:0〜5本。
B:6〜10本。
C:11〜20本。
D:21本以上。
【0080】
(中間体のヘイズ、全光線透過率)
中間体のヘイズ及び全光線透過率は、日本電色工業(株)製「分光ヘーズメーターSH7000」を用いて求めた。ヘイズは実用的には1.0%以下であることが必要である。
【0081】
(密着性試験1:クロスカット試験)
JIS K 5600−5−6に準拠し、積層体αにおける透明導電層の表面に、1mmの間隔で碁盤目状にカッターで傷を付け、100マスの格子パターンを形成した後、碁盤目状の傷全体を覆うようにセロハンテープを付着させ、引きはがし、透明導電層の剥離状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
0:傷の線の周囲が完全に滑らかで、どの格子にも剥がれがない。
1:傷の交点周囲に導電層の小さな剥がれが観察されるが、剥がれた面積の合計は碁盤目の5%未満。
2:傷の縁方向に沿って導電層が剥がれたり、傷の交差点で導電層が剥がれたりしており、剥がれた面積の合計が碁盤目の5%以上、15%未満。
3:剥がれた面積の合計が碁盤目の15%以上35%未満。
4:剥がれた面積の合計が碁盤目の35%以上80%未満。
5:剥がれた面積の合計が碁盤目の80%以上であり、碁盤目状の傷の外部にも剥がれが観察される。
【0082】
(密着性試験2:SW試験前後の表面抵抗値変化)
中間体の代わりに積層体αを用い、透明導電層が試験面となるように積層体αを学振試験機にセットし、IM層の耐擦傷性試験と同様の条件で透明導電層の表面をスチールウールで擦る前後における透明導電層の表面抵抗値を以下の方法で測定し、以下の基準に示すすように試験前の表面抵抗値に対する試験後の表面抵抗値の変化によって評価した。
<導電層の表面抵抗値測定方法>
測定装置に三菱化学(株)製「ロレスターGX MCP−T600」を用いて、積層体αの透明導電層にプローブを押し当て透明電導電層の表面抵抗値を求めた。耐擦傷性試験後では、スチールウールで擦った箇所を横切るようにプローブを押し当て積層体αの透明導電層の表面抵抗値を求めた。
<評価基準>
0:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の10倍未満。
1:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の10倍以上、100倍未満。
2:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の100倍以上。
【0083】
(耐湿熱性試験:ボイル試験前後の表面抵抗値変化)
中間体の代わりに積層体αを用い、積層体αを100℃の沸水に30秒間浸漬させ、ボイル試験前後における透明導電層の表面抵抗値を、前記密着性試験2:SW試験前後の表面抵抗値変化と同様の方法で測定し、以下の基準に示すように試験前の表面抵抗値に対する試験後の表面抵抗値の変化によって評価した。
<評価基準>
0:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の100,000倍未満。
1:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の100,000倍以上、1000,000倍未満。
2:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の1000,000倍以上。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)を含まない比較例1、3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)の量が少ない比較例2や比較例3はクロスカット試験ではIM層と透明導電層の密着性は良好であるが、スチールウールで擦ると透明導電層の剥落により、表面抵抗値が極端に増大する。また、比較例1〜3は、IM層の耐湿熱性が劣るので、表面抵抗値が極端に増大する。
3級アミノ基を有する活性エネルギー線硬化性成分(c1)の量が多い比較例4や比較例5は、IM層の耐擦傷性が劣る。