特許第6750673号(P6750673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6750673ブルーム・ブリード抑制剤及びそれを含む組成物並びにエラストマー成形品
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  • 特許6750673-ブルーム・ブリード抑制剤及びそれを含む組成物並びにエラストマー成形品 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750673
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ブルーム・ブリード抑制剤及びそれを含む組成物並びにエラストマー成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20200824BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20200824BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08L91/00
   C08K3/22
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-514142(P2018-514142)
(86)(22)【出願日】2017年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2017006033
(87)【国際公開番号】WO2017187727
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-89873(P2016-89873)
(32)【優先日】2016年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 晃治
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−323682(JP,A)
【文献】 特開2013−177531(JP,A)
【文献】 特開2002−173410(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/033955(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/194466(WO,A1)
【文献】 特開2015−120823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00− 21/02
C08L 91/00− 91/08
C08K 3/00− 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系化合物に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む共重合体の水素添加物を含有するエラストマーと、ナフテン系オイルを含有する配合剤とを含むエラストマー成形品から、上記配合剤のブリード又はブルームを抑制する材料であって、無機材料からなる粉末を含有し、上記無機材料が、下記一般式(1)で表される化合物であり、かつ、粉末X線回折測定により得られたX線回折像において検出されるピークが認められないか、又は、認められてもピークの半値幅が0.5degree以上の低結晶質であるブルーム・ブリード抑制剤。
aNaO・bZnO・cAl・dSiO・fHO (1)
(式中、a、b、c、dは0又は正数であり、かつ、b及びcのうち、少なくとも1つは正数であり、fは正数である。)
【請求項2】
上記粉末の比表面積が30g/m以上である請求項1に記載のブルーム・ブリード抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブルーム・ブリード抑制剤と、ジエン系化合物に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む共重合体の水素添加物を含有するエラストマーと、ナフテン系オイルを含有する配合剤とを含む組成物であって、上記ブルーム・ブリード抑制剤の含有量が、上記組成物の全体に対して0.5〜10質量%である組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物から得られたエラストマー成形品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のブルーム・ブリード抑制剤を用いて、ジエン系化合物に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む共重合体の水素添加物を含有するエラストマーと、ナフテン系オイルを含有する配合剤とを含むエラストマー成形品から上記配合剤のブリード又はブルームを抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム、エラストマー等と併含する原料組成物を用いて得られた成形品(以下、「エラストマー成形品」という)から、配合剤のブリード又はブルームを抑制するブルーム・ブリード抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エラストマー成形品の形成に用いる原料組成物には、ゴム、エラストマー等の他に、要求性能に応じて、種々の添加剤が配合されている。例えば、ゴムを主とする場合には、プロセスオイル、加工助剤、老化防止剤、加硫促進剤等が配合され、エラストマーを主とする場合には、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤等が配合される。
近年、エラストマー成形品の各種性能が向上する中、経時により添加剤が表出する現象が見られることがあった。このようなブルーム・ブリード現象は、外観性を低下させるだけでなく、初期物性が維持できなかったり、エラストマー成形品どうし、又は、エラストマー成形品と包装材料等とが接着してしまったりする不具合をもたらした。そこで、これらの不具合を抑制するために、原料組成物に、新たな添加剤を配合する試みがなされてきた。
【0003】
特許文献1には、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンからなるエチレン・プロピレンゴムを含むゴム基材100重量部あたり、0〜150重量部のプロセスオイル及び加硫ゴム硬度70以上とするに十分なカーボンブラック又はカーボンブラックを主体とする充填剤を含み、0.01〜10重量部のジチオ酸塩化合物を加硫促進剤として用いるゴム組成物において、0.1〜15重量部の非反応性フェノールホルムアルデヒド樹脂又はポリエチレングリコールを添加することを特徴とする硫黄加硫可能な高硬度ゴム組成物が開示されている。
特許文献2には、硫黄系加硫剤と、場合により加硫促進剤とを含有するエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体とを基体とするゴムに、基体ゴム100重量部あたり特定構造を有するジチオリン酸亜鉛化合物を0.2〜10.0重量部配合してなることを特徴とするブルーム現象の改善されたゴム組成物が開示されている。
特許文献3には、その表面及び細孔内に老化防止剤を付着させた多孔質ガラス繊維をゴム配合中に配合されていることを特徴とする老化防止剤によるブルームを抑制したゴム製品が開示されている。
特許文献4には、天然ゴム、ジエン系合成ゴム又はエチレン・プロピレンゴムを主とする原料組成物に配合されるブリード・ブルーム防止剤として、特定構造を有する第4級アンモニウム塩化合物からなるものが開示されている。
特許文献5には、天然ゴム又は合成ゴムを主とする原料組成物に配合されるブルーム防止剤として、エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体けん化物のアルキレンオキサイド付加物と、ポリエーテル化合物とからなるものが開示されている。
また、特許文献6には、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂100重量部、層状珪酸塩0.1〜20重量部、並びに、ヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤0.01〜5重量部を含有し、層状珪酸塩は、層状結晶の少なくとも一部の単層同士が単層表面の中心をずらせて重なりあって、見掛け上、厚さ5〜50nm、長さ500nm以上の平板状となって分散していることを特徴とする耐候性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−18749号公報
【特許文献2】特開平2-41345号公報
【特許文献3】特開平3−119044号公報
【特許文献4】特開平3−139541号公報
【特許文献5】特開2000−265049号公報
【特許文献6】特開2003−105202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、エラストマー成形品から、配合剤のブリード又はブルームの抑制効果に優れたブルーム・ブリード抑制剤及びそれを含む組成物並びにエラストマー成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、非晶質の無機材料からなる粉末を含有する原料組成物を用いると、得られるエラストマー成形品において、添加剤等の配合剤に関わるブルーム・ブリード現象の発生が抑制されたことを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示される。
1.エラストマー成形品から配合剤のブリード又はブルームを抑制する材料であって、非晶質の無機材料からなる粉末を含有するブルーム・ブリード抑制剤。
2.上記無機材料が、下記一般式(1)で表される化合物である上記項1に記載のブルーム・ブリード抑制剤。
aMO・bMO・cM・dM・eP・fHO (1)
(式中、Mはアルカリ金属原子、Mは2価の金属原子、Mは3価の金属原子、Mは4価の金属原子であり、a、b、c、d及びeのうち、少なくとも1つは正数であり、残りは0又は正数であり、fは正数である。)
3.上記一般式(1)におけるMOがZnOである上記項2に記載のブルーム・ブリード抑制剤。
4.上記一般式(1)におけるMがAlである上記項2に記載のブルーム・ブリード抑制剤。
5.上記粉末の比表面積が30g/m以上である上記項1乃至4のいずれか一項に記載のブルーム・ブリード抑制剤。
6.上記項1乃至5のいずれか一項に記載のブルーム・ブリード抑制剤と、エラストマー又は未架橋ゴムとを含有する組成物であって、
上記ブルーム・ブリード抑制剤の含有量が、上記組成物の全体に対して0.5〜10質量%である組成物。
7.上記項6に記載の組成物から得られたエラストマー成形品。
8.上記項1乃至5のいずれか一項に記載のブルーム・ブリード抑制剤を用いて、エラストマー成形品から配合剤のブリード又はブルームを抑制する方法。
【0007】
本発明において、エラストマー成形品は、エラストマー又は未架橋ゴムを主とし、必要に応じて、樹脂を含有してもよい原料組成物(本発明の組成物)を用いて得られた成形品であり、原料組成物に含まれる配合剤の種類によっては、エラストマー成形品が架橋物からなる場合と、非架橋物からなる場合とがある。
【発明の効果】
【0008】
本発明のブルーム・ブリード抑制剤によれば、ブルーム・ブリード現象の発生が抑制されるエラストマー成形品を与えることができる。
本発明の組成物は、非晶質無機粉末からなるブルーム・ブリード抑制剤を含有するため、ブルーム・ブリード現象の発生が抑制されるエラストマー成形品の形成に好適である。また、組成物を用いてエラストマー成形品を製造する際に、変質、分解等を引き起こすことなく、また、他の成分と反応することなく、所定形状のエラストマー成形品を効率的よく製造することができる。
本発明のエラストマー成形品は、非晶質無機粉末からなるブルーム・ブリード抑制剤を含有するため、使用又は保管における経時によるブルーム・ブリード現象が発生しにくく、長期に渡って外観性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】非晶質無機粉末の一例である0.01Al・ZnO・0.05HO粉末のX線回折ピークの半値幅Hを求める方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のブルーム・ブリード抑制剤は、非晶質の無機材料からなる粉末(以下、「非晶質無機粉末」という)を含有する。本発明のブルーム・ブリード抑制剤は、非晶質無機粉末のみからなるものであってよいし、ブルーム・ブリード現象の発生を抑制する限りにおいて、非晶質無機粉末と、他の粉末とからなるものであってもよい。
本発明において、非晶質とは、粉末X線回折測定により得られたX線回折像において検出されるピークが認められないか、又は、認められてもピークの半値幅が0.5degree以上の低結晶質のものである。図1は、非晶質無機材料の一種である、0.01Al・ZnO・0.05HOからなる粉末のX線回折像であり、31.7degreeにおける特徴的な回折ピークの半値幅Hを求める方法を示す概略図であり、Hが約0.8degreeであることを示す。
【0011】
上記非晶質無機材料は、特に限定されず、アルカリ金属原子、2価の金属原子、3価の金属原子、及び、4価の金属原子から選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む酸化物又はこれを含む複合物であることが好ましく、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
aMO・bMO・cM・dM・eP・fHO (1)
(式中、Mはアルカリ金属原子、Mは2価の金属原子、Mは3価の金属原子、Mは4価の金属原子であり、a、b、c、d及びeのうち、少なくとも1つは正数であり、残りは0又は正数であり、fは正数である。)
【0012】
上記一般式(1)において、Mはアルカリ金属原子であり、Li、Na、K、Rb、Cs等が挙げられる。これらのうち、Naが好ましい。Mは2価の金属原子であり、Be、Mg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属原子、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pd、Pt、Pb、Cd等が挙げられる。これらのうち、Mg及びZnが好ましい。Mは3価の金属原子であり、Al、Fe等が挙げられる。これらのうち、Alが好ましい。また、Mは4価の金属原子であり、Si、Ti、Zr等が挙げられる。これらのうち、Siが好ましい。
尚、上記一般式(1)を構成するM、M、M又はMは、いずれも一種のみであってよいし、二種以上であってもよい。
【0013】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例は、下記式(1−1)〜(1−16)で表される。尚、下記式において、a、b、c、d及びeは、0又は正数であり、fは、正数であり、b=b+b、c=c+c、d=d+dである。
aMO・dSiO・fHO (1−1)
aMO・bMO・dSiO・fHO (1−2)
aMO・cM・dSiO・fHO (1−3)
aMO・d・dSiO・fHO (1−4)
aMO・bMO・eP・fHO (1−5)
aMO・cM・eP・fHO (1−6)
aMO・dM・eP・fHO (1−7)
aMO・bMO・cAl・fHO (1−8)
aMO・c・cAl・fHO (1−9)
aMO・dM・cAl・fHO (1−10)
aMO・bZnO・fHO (1−11)
cM・bZnO・fHO (1−12)
aMO・bO・bZnO・fHO (1−13)
aMO・cM・bZnO・fHO (1−14)
aMO・dZrO・fHO (1−15)
aMO・dTiO・fHO (1−16)
【0014】
本発明においては、上記一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−11)、(1−12)及び(1−13)で表される化合物が、ブルーム・ブリード現象の発生の抑制効果に優れることから、特に好ましい。具体的な化合物は、以下に例示される。
0.1NaO・SiO・0.1H
NaO・0.01MgO・SiO・0.1H
NaO・0.2Al・SiO・0.1H
0.13NaO・Al・8.2SiO・0.7H
0.1NaO・ZnO・0.1H
ZnO・0.27H
0.2NaO・0.1MgO・ZnO・0.1H
0.007Al・ZnO・0.02H
0.007Al・ZnO・0.15H
【0015】
上記非晶質無機粉末の形状及び粒径は、特に限定されない。レーザー回折式粒度分布機で測定されるメジアン粒径は、好ましくは0.1〜20μm程度である。エラストマー成形品を製造する際に用いる原料組成物における分散性や加工性、並びに、得られるエラストマー成形品におけるブルーム・ブリード現象の発生を抑制する効果が確実に得られることから、特に好ましくは0.5〜15μmである。
【0016】
上記非晶質無機粉末の比表面積は、エラストマー成形品におけるブルーム・ブリード現象の発生を抑制する効果が十分に得られることから、好ましくは30g/m以上、より好ましくは50m/g以上、更に好ましくは80m/g以上、特に好ましくは100〜450m/gである。尚、上記非晶質無機粉末の比表面積は、BET法で測定することができる。
【0017】
上記のように、本発明のブルーム・ブリード抑制剤は、他の無機材料又は有機材料からなる粉末(他の粉末)を含有してもよいが、この場合、本発明のブルーム・ブリード抑制剤に含まれる非晶質無機粉末の含有割合の下限は、好ましくは50質量%、より好ましくは80質量%である。
【0018】
本発明の組成物(以下、「原料組成物」という)は、上記本発明のブルーム・ブリード抑制剤と、エラストマー又は未架橋ゴムとを含有することを特徴とする。本発明の原料組成物は、更に、樹脂、添加剤、溶剤等を含有することができる。樹脂は、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂のいずれでもよい。以下、樹脂の含有の可否に関わらず、エラストマー又は未架橋ゴムを合わせて「高分子成分」という。
【0019】
上記エラストマー及び未架橋ゴムとしては、ジエン系化合物に由来する構造単位を含む(共)重合体又はその水素添加物(以下、「ジエン系エラストマー」という);オレフィン共重合体;アクリルゴム;ウレタン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー等を用いることができる。
【0020】
上記ジエン系エラストマーは、更に、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位等を含んでもよい。
上記ジエン系エラストマーとしては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、イソプレン・イソブチレン共重合ゴム(IIR)、スチレン系AB型ジブロック共重合体、スチレン系ABA型トリブロック共重合体、スチレン系ABAB型テトラブロック共重合体、スチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体、これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体等が挙げられる。
【0021】
上記オレフィン共重合体としては、エチレン単位と、α−オレフィンに由来する構造単位とを含み、更に、非共役ジエン化合物に由来する構造単位を含む共重合体又はその無水カルボン酸変性物(以下、「エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム」という)、エチレン単位と、不飽和カルボン酸に由来する構造単位とを含む共重合体等が挙げられる。
【0022】
上記エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムに係るα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等が挙げられ、非共役ジエン化合物としては、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチルテトラヒドロインデン、メチルノルボルネン等が挙げられる。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとしては、エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・ブテン共重合ゴム、エチレン・ヘキセン共重合ゴム、エチレン・オクテン共重合ゴム等が挙げられる。
【0023】
上記高分子成分が樹脂を含有する場合、この樹脂は、通常、エラストマー又は未架橋ゴムの種類により、選択される。上記樹脂としては、オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明の原料組成物を製造する場合、均一組成のエラストマー成形体が効率よく得られることから、使用するブルーム・ブリード抑制剤の水分量は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。上記水分量は、カールフィッシャー法により測定することができる。
【0025】
本発明の原料組成物におけるブルーム・ブリード抑制剤の含有量は、エラストマー成形品におけるブルーム・ブリード現象の発生を抑制する効果が十分に得られることから、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%、更に好ましくは2〜6質量%である。含有量が10質量部を超えると、エラストマー成形品の強度低下、色調変化等の不具合を招く可能性がある。本発明において、ブルーム・ブリード抑制剤は、一種のみ、又は、二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0026】
本発明の原料組成物は、加工性を向上させる、所望の形状又は特性を有するエラストマー成形品を効率よく製造する等のために、通常、添加剤、溶剤等の配合剤を含有する。
添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、防黴剤、着色剤、架橋剤(加硫剤)、加硫促進剤、加硫遅延剤、しゃっ解剤、ステアリン酸等の加工助剤、ワックス等の滑剤、プロセスオイル、粘着付与剤、充填剤、メチレン供与体、メチレン受容体有機コバルト化合物等が挙げられる。これらのうち、ブルーム・ブリード現象に係る成分は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、防黴剤、加硫促進剤、加工助剤、滑剤、プロセスオイル等である。
【0027】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、
トリアジン系化合物等が挙げられる。
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。
【0028】
上記可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系可塑剤、高分子型可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。
上記難燃剤としては、含ハロゲン化合物、含リン化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。
上記加硫促進剤としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプロベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾール−ジベンゾチアジル−ジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、オルソトリル−ビ−グアニド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア系化合物;アセトアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミン又はアルデヒド−アンモニア系化合物;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系化合物;亜鉛華等が挙げられる。
上記プロセスオイルとしては、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル等が挙げられる。
【0029】
上記充填剤としては、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機充填剤;クマロンインデン樹脂、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂等の高分子充填剤が挙げられる。
【0030】
架橋構造を有するエラストマー成形品を製造する場合には、イオウ系化合物、有機過酸化物等の架橋剤(加硫剤)が用いられる。
上記イオウ系化合物としては、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0031】
尚、架橋剤として有機過酸化物を使用する場合、架橋助剤と併用することが好ましい。架橋助剤としては、イオウ;p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;ビスマレイミド等のマレイミド系化合物;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
また、加硫剤としてイオウ系化合物を使用する場合、上記加硫促進剤と併用することが好ましい。
【0032】
本発明の原料組成物は、例えば、原料成分を、密閉型混練機、オーブンロール、押出機等により、混練した後、得られた混練物に、必要に応じて、架橋剤(加硫剤)、加硫促進剤等を配合することにより製造することができる。ここで、原料成分の使用方法としては、全量を一括して用いる方法、ブルーム・ブリード抑制剤と配合剤とを、予め混合し、その後、得られた混合物と、エラストマー又は未架橋ゴムとを混練する方法等とすることができる。
【0033】
本発明のエラストマー成形品は、上記本発明の原料組成物を用いて得られた物品である。具体的な製造方法は、射出成型、押出成型、インフレーション成型、真空成型、発泡成型、熱プレス等が挙げられる。従って、本発明のエラストマー成形品は、中実体又は発泡体からなるものとすることができ、固体部分においては、架橋された高分子マトリックス又は非架橋の高分子マトリックスの中に、ブルーム・ブリード抑制剤と、原料組成物に配合剤として含まれたブルーム・ブリード現象に係る成分とが分散して含まれた構造を有する。
【0034】
本発明のブルーム・ブリード抑制剤を含むエラストマー成形品が、ブルーム・ブリード現象の発生が抑制される効果を有する理由は、判明していないが、本発明者は、ブルーム・ブリード抑制剤と添加剤との親和性が高いことによるものと考えている。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。尚、「%」は質量%である。
【0036】
1.評価方法
(1)ブルーム・ブリード抑制剤の粉末X線回折
粉末X線回折の測定を、リガク社製X線回折装置「RINT2400V」(型式名)を用いて、Cu Kα線により行い、X線回折像を得た。測定条件は、管電圧40kV及び電流150mAとした。得られた回折ピークの特定位置(2θ)における半値幅を、図1に示す方法により求めた。
(2)ブルーム・ブリード抑制剤の比表面積
JIS Z8830−2001、「気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準じ、堀場製作所社製連続流動式表面積計「SA−6200」(型式名)を用いて測定した。
(3)ブルーム・ブリード抑制剤のメジアン粒径(d50)
ブルーム・ブリード抑制剤を、マルバーン社製レーザー回折式粒度分布測定装置「MS2000」(型式名)を用いて測定し、メジアン粒径(d50)を体積基準で測定した。
(4)ブルーム・ブリード現象の抑制効果確認試験
70質量部のスチレン系テトラブロック共重合体の水素添加物と、30質量部のスチレン系トリブロック共重合体の水素添加物と、20質量部のポリプロピレン樹脂と、これらの高分子成分の合計に対して、3質量%又は6質量%相当量のブルーム・ブリード抑制剤と、0.5質量部のカーボンブラックとを、ヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドした。次いで、100質量部のナフテン系オイルを添加して、十分に混合し原料組成物を得た。その後、押出機を用いて約200℃で溶融混練して、原料ペレットを作製した。そして、射出成形機を用い、170℃で板状試験片(11mm×11mm×1mm)を得た。そして、50℃で2週間保管した。保管前後の板状試験片の表面を目視観察し、下記基準で評価した。
○:ブリード又は虹色発色現象等が見られなかった
×:ブリード又は虹色発色現象が顕著であった
【0037】
2.ブルーム・ブリード抑制剤を含有する組成物の調製、試験片(エラストマー成形品)の作製及び評価
実施例1及び2
ブルーム・ブリード抑制剤として、X線回折像の31.7deg.における回折ピークの半値幅が約0.8deg.である0.007Al・ZnO・0.15HO粉末(比表面積:104m/g、メジアン粒径:1.7μm)を用い、高分子成分の合計に対してこれを3質量%又は6質量%含む原料組成物を調製した。その後、ブルーム・ブリード現象の抑制効果確認試験を行った(表1参照)。
【0038】
実施例3
ブルーム・ブリード抑制剤として、X線回折像で明瞭な回折ピークが検出されないZnO・0.27HO粉末(比表面積:188m/g、メジアン粒径:9.8μm)を用い、高分子成分の合計に対してこれを3質量%含む原料組成物を調製した。その後、ブルーム・ブリード現象の抑制効果確認試験を行った(表1参照)。
【0039】
実施例4
ブルーム・ブリード抑制剤として、X線回折像で明瞭な回折ピークが検出されない0.13NaO・Al・8.2SiO・0.7HO粉末(比表面積:245m/g、メジアン粒径:7.9μm)を用い、高分子成分の合計に対してこれを3質量%含む原料組成物を調製した。その後、ブルーム・ブリード現象の抑制効果確認試験を行った(表1参照)。
【0040】
比較例1
ブルーム・ブリード抑制剤として、X線回折像の31.7deg.における回折ピークの半値幅が0.1deg.である酸化亜鉛(以下、「酸化亜鉛(I)」という)からなる粉末(比表面積:0.4m/g、メジアン粒径:0.3μm)を用い、高分子成分の合計に対してこれを3質量%含む原料組成物を調製した。その後、ブルーム・ブリード現象の抑制効果確認試験を行った(表1参照)。
【0041】
比較例2
ブルーム・ブリード抑制剤として、X線回折像の31.7deg.における回折ピークの半値幅が0.3deg.である酸化亜鉛(以下、「酸化亜鉛(II)」という)からなる粉末(比表面積:20m/g、メジアン粒径:0.2μm)を用い、高分子成分の合計に対してこれを3質量%含む原料組成物を調製した。その後、ブルーム・ブリード現象の抑制効果確認試験を行った(表1参照)。
【0042】
比較例3
ブルーム・ブリード抑制剤として、X線回折像の9.4deg.における回折ピークの半値幅が0.2deg.であるタルク粉末(比表面積:22m/g、メジアン粒径:7.8μm)を用い、高分子成分の合計に対してこれを3質量%含む原料組成物を調製した。その後、ブルーム・ブリード現象の抑制効果確認試験を行った(表1参照)。
【0043】
比較例4
ブルーム・ブリード抑制剤を配合しないエラストマーのみを用いて、板状試験片を作製し、ブルーム・ブリード現象の抑制効果確認試験を行った(表1参照)。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から明らかなように、実施例1〜4で用いたブルーム・ブリード抑制剤は、長期に渡って、ブルーム・ブリード現象の抑制効果を有するエラストマー成形品を与えることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のブルーム・ブリード抑制剤又はこれを含む組成物を使用することで、各種エラストマー成形品の外観不良等の不具合が抑制されるので、物性の低下等を低減することができる。従って、本発明のブルーム・ブリード抑制剤又はこれを含む組成物は、長期に渡って使用される、車両分野、OA・家電分野、電気・電子分野、医療分野、工具、日用雑貨等の各種部材の形成に好適である。そして、具体的なエラストマー成形品としては、ガスケット、キャップシール、チューブ、消音ギア、工具類のグリップ、歯ブラシ、ペン、かみそり、カッター等のグリップ、靴底、ハンドブレーキグリップカバー、シフトノブ、アームレスト、アシストグリップ、玩具等が挙げられる。
図1