特許第6750685号(P6750685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6750685感光性導電ペーストおよび導電パターン形成用フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750685
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】感光性導電ペーストおよび導電パターン形成用フィルム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20200824BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20200824BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20200824BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20200824BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20200824BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20200824BHJP
   H05K 3/02 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/004 512
   C08F2/44 C
   C08F2/48
   C08F2/44 A
   H01B1/22 A
   H01B13/00 503D
   H05K1/09 A
   H05K3/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-553264(P2018-553264)
(86)(22)【出願日】2018年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2018037381
(87)【国際公開番号】WO2019073926
(87)【国際公開日】20190418
【審査請求日】2019年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2017-197414(P2017-197414)
(32)【優先日】2017年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水口 創
(72)【発明者】
【氏名】小山 麻里恵
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−044259(JP,A)
【文献】 特開2015−152457(JP,A)
【文献】 特開2007−329452(JP,A)
【文献】 特開2016−184084(JP,A)
【文献】 特開2017−156652(JP,A)
【文献】 特開2014−126609(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/159655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 − 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4級アンモニウム塩化合物(A)、カルボキシル基含有樹脂(B)、光重合開始剤(C)、不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)および導電性粒子(E)を有する感光性導電ペーストであって、該4級アンモニウム塩化合物(A)が、4級アンモニウムクロリド化合物、4級アンモニウムブロミド化合物および4級アンモニウムヨージド化合物から選ばれたいずれかの化合物である感光性導電ペースト。
【請求項2】
前記導電性粒子(E)100重量部に対して、前記4級アンモニウム塩化合物(A)を0.01〜5重量部含有する請求項1記載の感光性導電ペースト。
【請求項3】
前記4級アンモニウム塩化合物(A)中におけるアニオンの割合が10.0重量%以上である請求項1または2記載の感光性導電ペースト。
【請求項4】
前記4級アンモニウム塩化合物(A)の分子量が350以下である請求項1〜3のいずれか記載の感光性導電ペースト。
【請求項5】
前記4級アンモニウム塩化合物(A)の窒素原子に結合する基の少なくとも三つがC2x+1(x=1〜4)である請求項1〜4のいずれか記載の感光性導電ペースト。
【請求項6】
離型性フィルムおよび請求項1〜5のいずれか記載の感光性導電ペーストの乾燥膜を含み、該離型性フィルム上に該乾燥膜が積層された導電パターン形成用フィルム。
【請求項7】
融点が140℃以上である弾性体の少なくとも一方の表面に、請求項1〜5のいずれか記載の感光性導電ペーストの硬化物からなる電極を有する圧力センサー。
【請求項8】
請求項6記載の導電パターン形成用フィルムおける、乾燥膜に対して露光および現像を行い、離型性フィルム上にパターンを形成した後、該パターンが基板に接するように導電パターン形成用フィルムを基板に積層し、この積層体を加熱加圧することによって、該パターンを基板の両面および端面に転写し、さらに該パターンを加熱してキュアすることによって、配線が基板端面を経由して基板の両面に形成された両面配線付基板を得る配線付基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性導電ペーストおよびこれを用いた導電パターン形成用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、感光性導電ペーストを用いたフォトリソグラフィー法により、耐熱性の低い基材上に微細な導電パターンを形成する技術が提案されている。耐熱性の低い基板に導電パターンを形成するためには、高温加熱により有機物を除去する焼成工程を経ることなく、絶縁性を有する有機物中において導電性粒子同士を接触させて導電パスを形成する必要がある。かかる技術に用いられる感光性導電ペーストとして、例えば、2以上のアルコキシ基を有する化合物、不飽和二重結合を有する感光性成分、光重合開始剤、導電性フィラーを含む導電ペースト(例えば、特許文献1参照)や、導電粉末、有機バインダー、光重合性モノマー、光重合開始剤および溶剤を含む感光性導電ペースト(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0003】
一方、ジカルボン酸およびその酸無水物、不飽和二重結合を有し、酸価が40〜200mgKOH/gの範囲である感光性成分、光重合開始剤、導電性フィラーを含む感光性導電ペースト(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−180580号公報
【特許文献2】国際公開2004−061006号
【特許文献3】国際公開2012−124438号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2の技術により得られる導電パターンは硬く、耐屈曲性が低いという課題があった。また、特許文献3の技術により得られる導電パターンは、ITOなどの耐酸性の低い基材の場合、高温高湿環境に晒されると密着性が低下するという課題を有していた。
【0006】
そこで本発明は、低温かつ短時間で導電性が発現し、高温高湿環境に晒された後におけるITOとの密着性および耐屈曲性に優れた微細配線の形成がフォトリソグラフィー法により可能な感光性導電ペーストおよび導電パターン形成用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、感光性導電ペーストおよび導電パターン形成用フィルムが、4級アンモニウム塩化合物を含有することにより、導電性粒子表面からの金属原子の拡散を促進し、従来よりも低温かつ短時間で微細な導電パターンが形成できるとともに、基材の歪みを抑え、高温高湿環境に晒された後におけるITOとの密着性および耐屈曲性を向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、4級アンモニウム塩化合物(A)、カルボキシル基含有樹脂(B)、光重合開始剤(C)、不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)および導電性粒子(E)を有する感光性導電ペーストであって、該4級アンモニウム塩化合物(A)が、4級アンモニウムクロリド化合物、4級アンモニウムブロミド化合物および4級アンモニウムヨージド化合物から選ばれたいずれかの化合物である感光性導電ペーストおよびそれを用いた導電パターン形成用フィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温高湿環境に晒された後におけるITOとの密着性に優れ、耐屈曲性に優れた微細配線の形成が可能な感光性導電ペーストおよび導電パターン形成用フィルムが得られる。これらを用い、加工方法や構成部材を適宜調整することで、曲面や鋭角面への配線形成や耐久性の高い圧力センサーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の比抵抗評価に用いた評価サンプルの模式図である。
図2】実施例38で作製した圧力センサーの断面模式図である。
図3】実施例39で作製した圧力センサーの断面模式図である。
図4】実施例40で作製した比抵抗測定用回路基板の断面、端面および上下面の模式図である。
図5】比較例4で作製した圧力センサーの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の感光性導電ペーストは、4級アンモニウム塩化合物(A)、カルボキシル基含有樹脂(B)、光重合開始剤(C)、不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)および導電性粒子(E)を含有する。
【0012】
本発明の感光性導電ペーストにより得られる導電パターンは、有機成分と無機成分との複合物となっており、導電性粒子(E)同士が、熱キュア時の原子拡散現象によって互いに接触することにより導電性が発現するものである。4級アンモニウム塩化合物(A)は、熱キュア時の原子拡散現象を促進するため、感光性導電ペーストが4級アンモニウム塩化合物(A)を含有することにより、低温かつ短時間で導電性を発現することができる。そのため、本発明の感光性導電ペーストは、導電パターン形成時に、過度な硬化収縮を抑制し、高温高湿環境に晒された後における導電パターンと基材との密着性や耐屈曲性を高く維持することができる。かかる効果は4級アンモニウム塩特有の効果である。一般的に塩基性の高い1級アミン化合物や2級アミン化合物を添加した場合、カルボキシル基含有樹脂(B)のカルボキシル基と中和反応するため、フォトリソグラフィー加工における微細パターニング性が損なわれる。また、3級アミン化合物を添加した場合、熱キュア時の原子拡散現象が起こらないため、低温かつ短時間での導電性発現効果が得られない。
【0013】
感光性導電ペーストがカルボキシル基含有樹脂(B)を含有することにより、フォトリソグラフィー加工におけるアルカリ現像性を高め、高解像度のパターン加工を可能にする。感光性導電ペーストが光重合開始剤(C)および不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)を含有することにより、フォトリソグラフィー加工時の露光による光重合により、感光性導電ペーストがアルカリに不溶化し、微細パターニングを可能にする。
【0014】
4級アンモニウム塩化合物(A)としては、例えば、4級アンモニウムクロリド化合物、4級アンモニウムブロミド化合物、4級アンモニウムヨージド化合物や、これらの水和物等が挙げられる。4級アンモニウムクロリド化合物としては、例えば、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンゾイルクロリンクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、アセチルコリンクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、コリンクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。4級アンモニウムブロミド化合物としては、例えば、4級アンモニウムクロリド化合物として例示した化合物の塩素を臭素におきかえた化合物等が挙げられる。4級ヨージド化合物としては、例えば、4級アンモニウムクロリド化合物として例示した化合物の塩素をヨウ素におきかえた化合物等が挙げられる。これらを2種以含有してもよい。これらの中でも、4級アンモニウムクロリド化合物は、熱キュア時の導電性粒子の原子拡散現象を促進しやすく、短時間の熱キュアにより導電性をより向上させることができるため好ましい。
【0015】
4級アンモニウム塩化合物(A)中におけるアニオンの割合(アニオンの原子量/4級アンモニウム塩化合物の分子量)は、10.0重量%以上が好ましい。アニオンの割合が10.0重量%以上であれば、アニオンの安定性が高く、熱キュア時の導電性粒子の原子拡散現象を促進しやすく、短時間の熱キュアにより導電性をより向上させることができる。一方、アニオンの割合は、50.0重量%以下が好ましい。アニオンの割合が50.0重量%以下であれば、有機成分に対する溶解性を向上させることができ、4級アンモニウム塩化合物(A)の結晶析出を抑制することができる。なお、アニオンの割合とは、4級アンモニウム塩化合物(A)の分子量に対する、4級アンモニウム塩化合物(A)に含まれるアニオンの原子量の重量割合である。
【0016】
4級アンモニウム塩化合物(A)の窒素原子に結合する基の少なくとも三つがC2x+1(x=1〜4)であることが好ましい。窒素原子に結合する基の少なくとも三つがC2x+1(x=1〜4)であるとアニオンの安定性が高く、熱キュア時の導電性粒子の原子拡散現象を促進しやすく、低温かつ短時間の熱キュア条件においても導電性を向上させることができる。
【0017】
4級アンモニウム塩化合物(A)は、分子量が350以下であることが好ましい。分子量が350以下であるとアニオンの安定性が高く、熱キュア時の導電性粒子の原子拡散現象を促進しやすく、低温かつ短時間の熱キュア条件においても導電性を向上させることができる。
【0018】
本発明の感光性導電ペーストにおける4級アンモニウム塩化合物(A)の含有量は、導電性粒子(E)100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。4級アンモニウム塩化合物(A)の含有量が0.01重量部以上であると、導電性粒子(E)の原子拡散現象を促進しやすく、短時間の熱キュアにより導電性をより向上させることができる。4級アンモニウム塩化合物(A)の含有量は、0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。一方、4級アンモニウム塩化合物(A)の含有量が5重量部以下であると、金属ハロゲン化物の生成を抑え、導電性をより向上させることができる。
【0019】
カルボキシル基含有樹脂(B)としては、例えば、アクリル系共重合体、カルボン酸変性エポキシ樹脂、カルボン酸変性フェノール樹脂、ポリアミック酸、カルボン酸変性シロキサンポリマーなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、紫外光透過率の高いアクリル系共重合体またはカルボン酸変性エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
アクリル系共重合体としては、アクリル系モノマーと不飽和酸またはその酸無水物との共重合体が好ましい。
【0021】
アクリル系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、iso−プロパンアクリレート、グリシジルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、メタクリルフェノール、メタクリルアミドフェノール、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレートなどのフェノール性水酸基含有モノマーや、それらのアクリル基をメタクリル基に置換した化合物などが挙げられる。これらの中でも、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびイソボルニルアクリレートから選ばれたモノマーが特に好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0022】
不飽和酸またはその酸無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニルや、これらの酸無水物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。不飽和酸の共重合比により、アクリル系共重合体の酸価を調整することができる。
【0023】
カルボン酸変性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物と、不飽和酸または不飽和酸無水物との反応物が好ましい。ここで、カルボン酸変性エポキシ樹脂とは、エポキシ化合物のエポキシ基をカルボン酸またはカルボン酸無水物で変性したものであり、エポキシ基は含まれていない。
【0024】
エポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル類、グリシジルアミン類、エポキシ樹脂などが挙げられる。より具体的には、グリシジルエーテル類としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどが挙げられる。グリシジルアミン類としては、例えば、tert−ブチルグリシジルアミンなどが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0025】
前述のアクリル系共重合体やカルボン酸変性エポキシ樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和二重結合を有する化合物を反応させることにより、不飽和二重結合を導入することができる。カルボキシル基含有樹脂(B)に不飽和二重結合を導入することにより、露光時に露光部の架橋密度を向上させることができ、現像マージンを広くすることができる。
【0026】
カルボキシル基含有樹脂(B)としては、ウレタン結合を有するものも好ましく用いることができる。カルボキシル基含有樹脂(B)がウレタン結合を有することにより、得られる導電パターンの耐屈曲性をより向上させることができる。カルボキシル基含有樹脂(B)にウレタン結合を導入する方法としては、例えば、水酸基を有するアクリル系共重合体や水酸基を有するカルボン酸変性エポキシ樹脂の場合、これらの水酸基にジイソシアネート化合物を反応させる方法が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0027】
カルボキシル基含有樹脂(B)は、フェノール性水酸基を有するものも好ましく用いることができる。カルボキシル基含有樹脂(B)がフェノール性水酸基を有することにより、基材表面の水酸基やアミノ基などの極性基と水素結合を形成し、得られる導電パターンと基材との密着性をより向上させることができる。
【0028】
カルボキシル基含有樹脂(B)の酸価は、50〜250mgKOH/gが好ましい。酸価が50mgKOH/g以上であれば、現像液への溶解度が高くなり、現像残渣の発生を抑制することができる。酸価は60mgKOH/g以上がより好ましい。一方、酸価が250mgKOH/g以下であれば、現像液への過度な溶解を抑え、パターン形成部の膜減りを抑制することができる。酸価は200mgKOH/g以下がより好ましい。なお、カルボキシル基含有樹脂(B)の酸価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定することができる。
【0029】
カルボキシル基含有樹脂(B)の酸価は、例えば、アクリル系共重合体の場合、構成成分中の不飽和酸の割合により、所望の範囲に調整することができる。カルボン酸変性エポキシ樹脂の場合、多塩基酸無水物を反応させることにより、所望の範囲に調整することができる。カルボン酸変性フェノール樹脂の場合、構成成分中の多塩基酸無水物の割合により、所望の範囲に調整することができる。
【0030】
光重合開始剤(C)としては、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、オキシム系化合物、α−ヒドロキシケトン系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、アントロン化合物、アントラキノン化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン誘導体としては、例えば、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、フルオレノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン等が挙げられる。アセトフェノン誘導体としては、例えば、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン等が挙げられる。チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等が挙げられる。ベンジル誘導体としては、例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等が挙げられる。ベンゾイン誘導体としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等が挙げられる。オキシム系化合物としては、例えば、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム等が挙げられる。α−ヒドロキシケトン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、例えば、2−メチル−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン等が挙げられる。フォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。アントロン化合物としては、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン等が挙げられる。アントラキノン化合物としては、例えば、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、光感度の高いオキシム系化合物が好ましい。
【0031】
本発明の感光性導電ペースト中における光重合開始剤(C)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(B)100重量部に対して、0.05〜30重量部が好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が0.05重量部以上であると、露光部の硬化密度が上昇し、現像後の残膜率を高くすることができる。光重合開始剤(C)の含有量は、1重量部以上がより好ましい。一方、光重合開始剤(C)の含有量が30重量部以下であると、導電ペーストを塗布して得られる塗布膜上部における光重合開始剤(C)による過剰な光吸収が抑制される。その結果、導電パターンを容易にテーパー形状にすることができ、基板との密着性をより向上させることができる。
【0032】
不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1.4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物などの2官能モノマー;ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレートなどの3官能モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどの4官能モノマー;ダイセル・サイテック社製EBECRYL204、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL264、EBECRYL265、EBECRYL284やサートマー社製CN972、CN975、CN978などのウレタン結合含有モノマーなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、ウレタン結合含有モノマーは、導電パターンの耐屈曲性をより向上させることができることから好ましい。
【0033】
本発明の感光性導電ペースト中における不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(B)100重量部に対して1〜100重量部が好ましい。不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)の含有量が1重量部以上であると、露光部の架橋密度が高まり、未露光部と露光部との現像液に対する溶解度差を大きくすることができ、微細パターニング性をより向上させることができる。一方、不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)の含有量が100重量部以下であると、得られる導電パターンのTgを抑え、耐屈曲性をより向上させることができる。
【0034】
導電性粒子(E)としては、例えば、銀、金、銅、白金、鉛、スズ、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、インジウムやこれらの合金などの粒子が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、導電性の観点から、銀、金および銅から選ばれる金属の粒子が好ましく、コストおよび安定性の観点から銀粒子がより好ましい。また、導電性粒子(E)は、樹脂や無機酸化物等により表面が被覆されていてもよい。
【0035】
導電性粒子(E)の長軸長を短軸長で除した値であるアスペクト比は、1.0〜3.0が好ましい。導電性粒子(E)のアスペクト比を1.0以上とすることにより、導電性粒子(E)同士の接触確率を高めることができる。アスペクト比が1.1以上であれば接触確率をより高めることができるので、より好ましい。一方、導電性粒子(E)のアスペクト比を3.0以下とすることにより、フォトリソグラフィー法により導電パターンを形成する場合において、露光光が遮蔽されにくく、現像マージンを広くすることができる。導電性粒子(E)のアスペクト比は、2.0以下がより好ましい。ここで、導電性粒子(E)のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率15000倍で導電性粒子(E)を観察し、無作為に選択した100個の導電性粒子の一次粒子について、それぞれの長軸長および短軸長を測定し、両者の平均値から算出することができる。
【0036】
導電性粒子(E)の粒子径は、0.05〜5.0μmが好ましい。導電性粒子(E)の粒子径を0.05μm以上とすることにより、粒子間の相互作用を適度に抑制し、感光性導電ペースト中における導電性粒子(E)の分散性を向上させることができる。導電性粒子(E)の粒子径は、0.1μm以上がより好ましい。一方、導電性粒子(E)の粒子径を5.0μm以下とすることにより、得られる導電パターンの表面平滑度、パターン精度および寸法精度を向上させることができる。導電性粒子(E)の粒子径は、2.0μm以下がより好ましい。ここで、導電性粒子(E)の粒子径は、レーザー照射型の粒度分布計を用いて測定することができる。測定により得られた粒度分布のD50の値を導電性粒子(E)の粒子径(D50)とする。
【0037】
本発明の感光性導電ペースト中における導電性粒子(E)の含有量は、全固形分中65〜90重量%が好ましい。導電性粒子(E)の含有量が65重量%以上であると、キュア時の導電性粒子(E)同士の接触確率が向上し、導電性をより向上させ、断線確率を低減することができる。導電性粒子(E)の含有量は70重量%以上がより好ましい。一方、導電性粒子(A)の含有量が90重量%以下であると、露光工程における塗膜の透光性が向上し、微細パターニング性および耐屈曲性をより向上させることができる。ここで全固形分とは、溶剤を除く、感光性導電ペーストの全構成成分をいう。
【0038】
本発明の感光性導電ペーストは、光重合開始剤(C)と共に増感剤を含有することができる。増感剤としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0039】
本発明の感光性導電ペースト中における増感剤の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(B)100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましい。増感剤の含有量が0.05重量部以上であれば、光感度が向上する。一方、増感剤の含有量が10重量部以下であると、感光性導電ペーストを塗布して得られる塗布膜上部における過剰な光吸収が抑制される。その結果、導電パターンを容易にテーパー形状にすることができ、基板との密着性をより向上させることができる。
【0040】
本発明の感光性導電ペーストは、溶剤を含有することができる。溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、2,2,4,−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。溶剤の沸点は150℃以上が好ましい。沸点が150℃以上であると、溶剤の揮発が抑制され、感光性導電ペーストの増粘を抑制することができる。
【0041】
本発明の感光性導電ペーストは、エポキシ樹脂などの4級アンモニウム塩化合物(A)によって硬化反応を起こすような原料を多量に存在するとフォトリソグラフィー法によるパターニング性が損なわれるので好ましくない。
【0042】
本発明の感光性導電ペーストは、その所望の特性を損なわない範囲であれば、分子内に不飽和二重結合を有しない非感光性ポリマー、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料等の添加剤を含有することができる。
【0043】
非感光性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド前駆体、既閉環ポリイミドなどが挙げられる。
【0044】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0045】
レベリング剤としては、例えば、特殊ビニル系重合体、特殊アクリル系重合体などが挙げられる。
【0046】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0047】
本発明の感光性導電ペーストは、4級アンモニウム塩化合物(A)、カルボキシル基含有樹脂(B)、光重合開始剤(C)、不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)、導電性粒子(E)および必要に応じて溶剤や添加剤を混合することにより製造することができる。混合装置としては、例えば、三本ローラーミル、ボールミル、遊星式ボールミル等の分散機や混練機などが挙げられる。
【0048】
本発明の導電パターン形成用フィルムは、離型性フィルムおよび前述の感光性導電ペーストの乾燥膜を含み、該離型性フィルム上に該乾燥膜が積層されたものである。
【0049】
離型性フィルムとしては、フィルム表面に離型層を有するものが好ましい。離型層を構成する離型剤としては、例えば、長鎖アルキル系離型剤、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、転写時に離型剤移りが生じた場合であっても、後工程、特に現像工程において、現像液のハジキなどの現象を生じにくく、面内ムラを抑制して微細パターニング性をより向上させることができることから、長鎖アルキル系離型剤が好ましい。離型層の厚みは50〜500nmが好ましい。剥離層の厚みが50nm以上であれば、転写時の転写ムラを抑制することができ、500nm以下であれば、転写時の離型剤移りを低減することができる。
【0050】
離型性フィルムの剥離力は、500〜5000mN/20mmが好ましい。剥離力が500mN/20mm以上であれば、感光性導電ペーストの乾燥膜を形成する際にハジキの発生を抑制することができる。剥離力が5000mN/20mm以下であれば、乾燥膜の基材への転写時のプロセスマージンを広くすることができる。ここで、本発明における離型性フィルムの剥離力とは、離型性フィルムの剥離層面に日東電工(株)製アクリル粘着テープ「31B」を2kgローラーを用いて貼付し、30分後に、アクリル粘着テープを剥離角度180°、剥離速度0.3m/minで剥離したときの剥離力を指す。
【0051】
離型性フィルムに用いられるフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド、アラミド、フッ素樹脂、アクリル系樹脂またはポリウレタン系樹脂を含むフィルムなどが挙げられる。光学特性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンまたはポリカーボネートを含むフィルムが好ましい。光学特性の高い基材であれば、離型性フィルム越しに露光することができ、乾燥膜とフォトマスクが接触しないため、マスク汚染を抑制することができる。フィルム基材の厚みは、5〜150μmが好ましい。フィルム基材の厚みが5μm以上であれば、感光性導電ペーストの乾燥膜を形成する際にフィルム基材を安定に搬送することができ、乾燥膜の厚みムラを抑制することができる。フィルム基材の厚みは10μm以上がより好ましい。一方、フィルム基材の厚みが150μm以下であれば、離型性フィルム越しの露光の際に露光光の回折の影響を小さくすることができ、微細パターニング性をより向上させることができる。フィルム基材の厚みは30μm以下がより好ましい。
【0052】
感光性導電ペーストの乾燥膜の膜厚は、0.5〜10.0μmが好ましい。乾燥膜の膜厚が0.5μm以上であると、配線ごとの抵抗値ばらつきの抑制や、凹凸のある基材上に対しても容易にパターン形成することができる。乾燥膜の膜厚は1.0μm以上がより好ましい。一方、乾燥膜の膜厚が10.0μm以下であれば、露光時に光が乾燥膜の膜深部まで到達しやすくなり、現像マージンを広げることができる。乾燥膜の膜厚は5.0μm以下がより好ましい。なお、感光性導電ペーストの乾燥膜の膜厚は、例えば、“サーフコム”(登録商標)1400((株)東京精密製)などの触針式段差計を用いて測定することができる。より具体的には、ランダムな3つの位置の膜厚を触針式段差計(測長:1mm、走査速度:0.3mm/sec)でそれぞれ測定し、その平均値を膜厚とする。
【0053】
本発明の導電パターン形成用フィルムは、前述の感光性導電ペーストを、離型性フィルム上に塗布し、乾燥することにより製造することができる。塗布方法としては、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーターまたはバーコーターを用いた塗布などが挙げられる。乾燥方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線等による加熱乾燥や、真空乾燥などが挙げられる。乾燥温度は50〜180℃が好ましく、乾燥時間は1分間〜数時間が好ましい。
【0054】
次に、本発明の感光性導電ペーストを用いて基板上に導電パターンを形成する方法について説明する。基板上に、本発明の感光性導電ペーストの乾燥膜を形成し、該乾燥膜を露光および現像することによりパターン加工し、得られたパターンをキュアすることにより、基板上に導電パターンを形成することができる。感光性導電ペーストの乾燥膜は、本発明の感光性導電ペーストを基板上に塗布し、乾燥することにより形成してもよいし、前述の導電パターン形成用フィルムを用いて、感光性導電ペーストの乾燥膜を基板上に転写することにより形成してもよい。
【0055】
基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、エポキシ樹脂基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板、ガラス基板、シリコンウエハー、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板、加飾層形成基板、絶縁層形成基板などが挙げられる。
【0056】
感光性導電ペーストの塗布方法としては、導電パターン形成用フィルムの製造方法において、感光性導電ペーストの塗布方法として例示した方法が挙げられる。
【0057】
塗布膜厚は、塗布の方法、感光性導電ペーストの固形分濃度や粘度等に応じて適宜決定することができるが、感光性導電ペーストの乾燥膜の膜厚が0.1〜50.0μmになるように設定することが好ましい。乾燥膜の膜厚が0.1μm以上であると、配線ごとの抵抗値ばらつきを抑制することができる。乾燥膜の膜厚は0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましい。一方、乾燥膜の膜厚が50.0μm以下であれば、露光時に光が乾燥膜の膜深部まで到達しやすくなり、現像マージンを広げることができる。乾燥膜の膜厚は10.0μm以下がより好ましい。感光性導電ペーストの乾燥膜の膜厚は、導電パターン形成用フィルムにおける感光性導電ペーストの乾燥膜の膜厚と同様に測定することができる。
【0058】
塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥して溶剤を揮発させることが好ましい。乾燥方法としては、導電パターン形成用フィルムにおける感光性導電ペーストの乾燥方法として例示した方法が挙げられる。
【0059】
基板上に本発明の導電パターン形成用フィルムを転写する方法としては、例えば、基板に感光性導電ペーストの乾燥膜が接するように、基板上に本発明の導電パターン形成用フィルムを積層した後、ニップローラー等を用いて加熱加圧することにより転写する方法が挙げられる。以下、この方法を熱転写と呼ぶ。転写性を向上させるためには、ニップローラーを50〜120℃に加熱して転写することが好ましい。
【0060】
フォトリソグラフィー法により導電パターンを形成する場合において、感光性導電ペーストの乾燥膜に、任意のパターン形成用マスクを介して露光することが好ましい。本発明の導電パターン形成用フィルムを転写することにより乾燥膜を設ける方法を用いた場合には、導電パターン形成用フィルムの離型性フィルム越しに露光してもよいし、離型性フィルムを剥離した後に露光してもよい。露光の光源としては、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)またはg線(436nm)が好ましく用いられる。
【0061】
露光後、現像液を用いて現像することにより、未露光部を溶解除去して、所望のパターンを得る。本発明の導電パターン形成用フィルムを転写することにより乾燥膜を設ける方法を用いた場合には、離型性フィルムを剥離した後に現像を行うことが好ましい。別の態様として、本発明の導電パターン形成用フィルムに対して、乾燥膜の露光および現像を上記と同様に行った後、得られたパターンを基材に転写する方法も採用することができる。
【0062】
アルカリ現像を行う場合の現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの水溶液が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、場合によっては、これらの水溶液に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の極性溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;界面活性剤などを1種以上添加してもよい。
【0063】
現像方法としては、例えば、露光した感光性導電ペーストの乾燥膜を有する基板を静置または回転させながら現像液を乾燥膜面にスプレーする方法、露光した感光性導電ペーストの乾燥膜を有する基板を現像液中に浸漬する方法、露光した感光性導電ペーストの乾燥膜を有する基板を現像液中に浸漬しながら超音波をかける方法などが挙げられる。
【0064】
現像後、リンス液によるリンス処理を施してもよい。リンス液としては、例えば、水、あるいは、水にエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類または乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類を添加した水溶液などが挙げられる。
【0065】
現像により得られたパターンを加熱してキュアすることにより、導電パターンを得ることができる。キュア温度は、100〜200℃が好ましい。キュア温度が100℃以上であれば、原子拡散を十分に誘起して、導電性をより向上させることができる。キュア温度は120℃以上がより好ましい。一方、キュア温度を200℃以下とすることにより、基材の選択自由度を高めることができる。キュア温度は150℃以下がより好ましい。
【0066】
キュア方法としては、例えば、オーブン、イナートオーブン、ホットプレートによる加熱乾燥、紫外線ランプ、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、キセノンフラッシュランプ等の電磁波やマイクロ波による加熱乾燥、真空乾燥などが挙げられる。加熱により、導電パターンの硬度が高くなることから、他の部材との接触による欠けや剥がれ等を抑制し、さらには導電パターンと基板との密着性をより向上させることができる。
【0067】
本発明の感光性導電ペーストまたは導電パターン形成用フィルムを用いて得られる導電パターンは、タッチパネル、積層セラミックコンデンサ、積層インダクタ、太陽電池等に用いられる配線付基板用途に好適に用いられる。中でも、狭額縁化のため微細化が求められるタッチパネル用周囲配線やタッチパネルのビューエリア電極として、より好適に用いられる。
【0068】
また、本発明の導電パターン形成用フィルムを用いることにより、曲面形状の基板や基板端面等の鋭角面への配線形成を容易に行うことができる。本発明の導電パターン形成用フィルムにおける、本発明の感光性導電ペーストの乾燥膜に対して露光および現像を行い、離型性フィルム上にパターンを形成する。配線形成を行いたい曲面や基板端面に該パターンが接するように、基板に導電パターン形成用フィルムを積層する。この積層体を加熱加圧することによって、該パターンを基板上に熱転写した後、該パターンを加熱してキュアすることで、配線を曲面や基板端面にも形成することができる。また、この方法を用いて前記パターンを基板の両面および端面に熱転写した後、該パターンを加熱してキュアすることで、配線が基板端面を経由して基板の両面に形成された両面配線付基板の作製が可能になる。離型性フィルム上に形成したパターンを熱転写する方法としては、ヒートロールや金型を用いた熱圧着などが挙げられる。
【0069】
また、本発明の感光性導電ペーストまたは導電パターン形成用フィルムを用いて耐久性の高い圧力センサーを作製することができる。
【0070】
圧力センサーは、圧力によって膜厚が変形する弾性体の両側に電極を配置し、電極間に生じる静電容量変化を読み取ることでセンシングを行う。つまり圧力による弾性体の膜厚変化の割合が大きいほど、圧力センサーのセンシング性が高くなる。
【0071】
圧力センサーに用いる弾性体の材料としては、例えば、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマーが挙げられる。弾性体は、融点が140℃以上のものが好ましい。弾性体に発泡体処理や表面エンボス加工処理をして用いてもよい。中でもポリエーテルエステルエラストマーの表面エンボス加工品が、センシング性および環境負荷耐性が高いので好ましい。
【0072】
圧力センサーに用いる弾性体の厚みは10〜200μmが好ましい。弾性体の厚みが10μm以上であれば圧力印加時の膜厚の変位量を大きくすることができ、静電容量値のバラツキを抑制することができる。また、弾性体の厚みが200μm以下であれば圧力センサーの薄膜化および軽量化が可能になる。
【0073】
弾性体表面に本発明の感光性導電ペーストを塗布し、乾燥、露光、現像およびキュアを行う方法、または、弾性体表面に本発明の導電パターン形成用フィルムを転写し、露光、現像およびキュアを行う方法により、弾性体の表面に、本発明の感光性導電ペーストの硬化物からなる電極を直接形成することができる。また、別の方法としては、電極パターンをPETフィルムなどの基板上に形成したものを、粘着剤を用いて弾性体に貼り付けてもよい。本発明の感光性導電ペーストまたは本発明の導電パターン形成用フィルムを用いて電極を形成する方法が、圧力センサー全体の薄膜化の観点から好ましい。弾性体の一方の表面に本発明の感光性導電ペーストまたは本発明の導電パターン形成用フィルムを用いて電極を形成し、反対側の表面に別の方法を用いて電極を形成してもよい。
【実施例】
【0074】
次に、本発明の感光性導電ペーストについて、実施例により説明する。
【0075】
各実施例における評価方法は、次のとおりである。
【0076】
<微細パターニング性(微細配線の形成)>
実施例1〜36および比較例1〜3については、膜厚50μmのPETフィルム“ルミラー(登録商標)”T60(東レ(株)製)上に、実施例1〜36および比較例1〜3により得られた感光性導電ペーストを、乾燥後の膜厚が2μmになるように塗布し、100℃の乾燥オーブン内で5分間乾燥した。
【0077】
実施例37、40および比較例6については、離型性フィルムAL−5(リンテック社(株)製、剥離力1480mN/20mm、膜厚16μm)の剥離層面上に、実施例37または比較例1により得られた感光性導電ペーストを、乾燥後の膜厚が2μmになるように塗布し、100℃の乾燥オーブン内で5分間乾燥し、導電パターン形成用フィルムを得た。引き続き、乾燥膜がPETフィルム“ルミラー(登録商標)”T60(東レ(株)製)に接するように、ラミネーターを用いて60℃、1.0m/分の速度で、PETフィルムと導電パターン形成用フィルムを熱圧着した。
【0078】
露光部の線太り量を考慮し、得られる導電パターンが一定のラインアンドスペース(以下、L/Sと称す)になるように調整したフォトマスクを介して、超高圧水銀ランプを有する露光装置(PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用いて、実施例1〜36および比較例1〜3は、露光量400mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光を行った。実施例37、40および比較例6は、離型性フィルム面にフォトマスクを密着させ、同様に露光量50mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光した。
【0079】
露光後、0.1重量%のNaCO水溶液を用いて、20秒間スプレー現像し、超純水によりリンス処理を行った。その後、熱風オーブンを用いて、140℃で30分間加熱処理(キュア)を行い、5種類のL/Sの値が異なる導電パターンをそれぞれ得た。各ユニットのL/Sの値は30/30、20/20、15/15、10/10および7/7である。得られた導電パターンを、光学顕微鏡で観察した。パターン間に残渣がなく、かつパターン剥がれのない導電パターンのうち、最も小さいL/Sの値を現像可能なL/Sの値とし、微細パターニング性を評価した。
【0080】
<導電性(比抵抗)>
実施例1〜36および比較例1〜3については、膜厚50μmのPETフィルム“ルミラー(登録商標)”T60上に、実施例1〜36および比較例1〜3により得られた感光性導電ペーストを、乾燥後の膜厚が2μmになるように塗布し、塗布膜を100℃の温度の乾燥オーブン内で5分間乾燥した。
【0081】
実施例37、40および比較例6については、前記離型性フィルムAL−5の剥離層面上に、実施例37または比較例1により得られた感光性導電ペーストを、乾燥後の膜厚が2μmになるように塗布し、100℃の乾燥オーブン内で5分間乾燥し、導電パターン形成用フィルムを得た。引き続き、乾燥膜がPETフィルム“ルミラー(登録商標)”T60に接するように、ラミネーターを用いて60℃、1.0m/分の速度で、PETフィルムと導電パターン形成用フィルムを熱圧着した。
【0082】
フォトマスクを介して、上記<微細パターニング性>に記載の条件で露光および現像を行い、配線パターンを得た。得られた配線パターン各4サンプルについて、そのうち3サンプルを140℃の熱風オーブン内で、それぞれ15分間、30分間および60分間加熱処理(キュア)して、キュア時間の異なる図1に示す比抵抗測定用サンプルを得た。残りの1サンプルについては、120℃の熱風オーブン内で、30分間加熱処理し、図1に示す比抵抗測定用サンプルを得た。図1において、符号1は導電パターン、符号2はPETフィルムを示す。得られた比抵抗測定用サンプルのそれぞれの導電パターン1の端部を抵抗計でつないで抵抗値を測定し、下記式(1)に基づいて比抵抗を算出し、導電性を評価した。
比抵抗(Ω・cm)={抵抗値(Ω)×膜厚(m)×線幅(m)}/{ライン長(m)×100} ・・・ (1)。
【0083】
<耐屈曲性>
上記<導電性(比抵抗)>に記載の方法により得られた図1に示す比抵抗測定用サンプルを、面状態無負荷U字伸縮試験機DLDMLH−FS(ユアサシステム機器(株))に、導電パターンが山折になるようセットし、図1に示す短辺Aと短辺Bとの距離が10mmになるまで近づけては元に戻す屈曲動作を1万回繰り返した。試験前後の配線抵抗値を測定し、下記の式(2)に示す変化率から耐屈曲性を評価した。
変化率(%)={試験後の配線抵抗値(Ω)/試験前の配線抵抗値(Ω)}×100・・・(2)。
【0084】
<高温高湿環境試験後におけるITOとの密着性>
実施例1〜36および比較例1〜3については、ITO付きPETフィルム“ELECRYSTA”(登録商標)V150A−OFSD5C5(日東電工(株)製)上に、実施例1〜36および比較例1〜3により得られた感光性導電ペーストを、乾燥後の膜厚が2μmになるように塗布し、100℃の乾燥オーブン内で、5分間乾燥した。
【0085】
実施例37、40および比較例6については、前記離型性フィルムAL−5の剥離層面上に、実施例37または比較例1により得られた感光性導電ペーストを、乾燥後の膜厚が2μmになるように塗布し、100℃の乾燥オーブン内で5分間乾燥し、導電パターン形成用フィルムを得た。乾燥膜がITO付きPETフィルム“ELECRYSTA”(登録商標)V150A−OFSD5C5(日東電工(株)製)に接するように、60℃、1.0m/分の速度で、PETフィルムと導電パターン形成用フィルムを熱圧着した。
【0086】
得られた各積層体の印刷面を全面露光した後、140℃の乾燥オーブン内で30分間キュアした後、1mm幅で10×10の碁盤目状にカッターで切れ目を入れ、85℃、85%RHの恒温恒湿槽SH−661(エスペック(株)製)に240時間投入した。その後、サンプルを取り出し、碁盤目状の箇所にセロハンテープ(ニチバン(株)製)を貼着して剥がし、残存マス数を目視で計数し、密着性を評価した。
【0087】
<圧力センサーのセンシング性>
作製した圧力センサーを厚み1mmのスライドガラスで挟み、直径10mmの円柱でサンプル中央部を500gf(4.9N)の力で押し込み、押し込み前後の膜厚から圧縮変位率(%)((押し込み前膜厚−押し込み後膜厚)/押し込み前膜厚×100)を測定した。
【0088】
<圧力センサーの環境負荷耐性>
作製した圧力センサーを厚み1mmのスライドガラスで挟み、85℃、85%RHの環境槽に240h投入した後、直径10mmの円柱でサンプル中央部を500gf(4.9N)の力で押し込み、押し込み前後の膜厚から圧縮変位率(%)((押し込み前膜厚−押し込み後膜厚)/押し込み前膜厚×100)を測定した。
【0089】
<圧力センサーの静電容量測定>
作製した圧力センサーに100kHz、3Vの交流電圧を印加し、静電容量値が10pF以上であれば良とし、10pF未満であれば不良とした。
【0090】
実施例、比較例で用いた材料は以下の通りである。
【0091】
[4級アンモニウム塩化合物(A)]
・テトラメチルアンモニウムクロリド(分子量:109)
・コリンクロリド(分子量:139)
・トリエチルメチルアンモニウムクロリド(分子量:151)
・ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(分子量:161)
・テトラエチルアンモニウムクロリド(分子量:165)
・アセチルコリンクロリド(分子量:181)
・ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(分子量:185)
・テトラプロピルアンモニウムクロリド(分子量:221)
・ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(分子量:227)
・デシルトリメチルアンモニウムクロリド(分子量:235)
・ベンゾイルクロリンクロリド(分子量:243)
・ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(分子量:263)
・テトラブチルアンモニウムクロリド(分子量:277)
・トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(分子量:291)
・ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(分子量:320)
・ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド(分子量:339)
・ジデシルジメチルアンモニウムクロリド(分子量:362)
・ベンザルコニウムクロリド(分子量:368)
・ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド(分子量:396)
・ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド(分子量418)
・ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド(分子量:424)
・テトラブチルアンモニウムブロミド(分子量:322)
・テトラブチルアンモニウムヨージド(分子量:369)。
【0092】
[カルボキシル基含有樹脂(B)]
(合成例1)カルボキシル基含有アクリル系共重合体(B−1)
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのエチルアクリレート(以下、「EA」)、20gのメタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2−EHMA」)、20gのn−ブチルアクリレート(以下、「BA」)、15gのN−メチロールアクリルアミド(以下、「MAA」)、25gのアクリル酸(以下、「AA」)、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で6時間加熱して重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。得られた反応溶液をメタノールで精製することにより未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することにより、共重合比率(重量基準):EA/2−EHMA/BA/MAA/AA=20/20/20/15/25の、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(B−1)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(B−1)の酸価は153mgKOH/gであった。
【0093】
(合成例2)不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有アクリル系共重合体(B−2)
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2−EHMA、20gのBA、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で6時間加熱して重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのグリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間加熱して付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することにより未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することにより、共重合比率(質量基準):EA/2−EHMA/BA/GMA/AA=20/40/20/5/15の、不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有アクリル系共重合体(B−2)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(B−2)の酸価は107mgKOH/gであった。
【0094】
(合成例3)カルボン酸変性エポキシ樹脂(B−3)
窒素雰囲気の反応容器中に、492.1gのDMEA、860.0gのEOCN−103S(日本化薬(株)製;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;エポキシ当量:215.0g/当量)、288.3gのAA、4.92gの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールおよび4.92gのトリフェニルホスフィンを仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mg・KOH/g以下になるまで加熱して反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。引き続き、この反応液に169.8gのDMEAおよび201.6gのテトラヒドロ無水フタル酸を仕込み、95℃で4時間加熱して反応させ、カルボン酸変性エポキシ樹脂(B−3)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(B−3)の酸価は104mgKOH/gであった。
【0095】
(合成例4)ウレタン結合を有するカルボキシル基含有樹脂(B−4)
窒素雰囲気の反応容器中に、368.0gのRE−310S(日本化薬(株)製;エポキシ当量:184.0g/当量)、141.2gのAA、1.02gのハイドロキノンモノメチルエーテルおよび1.53gのトリフェニルホスフィンを仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで加熱して反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。その後、この反応溶液に755.5gのDMEA、268.3gの2,2−ビス(ジメチロール)−プロピオン酸、1.08gの2−メチルハイドロキノンおよび140.3gのスピログリコールを加え、45℃に昇温した。この溶液に485.2gのトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを、反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間加熱して反応させ、ウレタン結合を有するカルボキシル基含有樹脂(B−4)を得た。得られたウレタン結合を有するカルボキシル基含有樹脂(B−4)の酸価は80.0mgKOH/gであった。
【0096】
[光重合開始剤(C)]
・“IRGACURE”(登録商標)OXE01(BASFジャパン(株)製、オキシム系化合物)(以下、OXE01と称す)。
【0097】
[不飽和二重結合を有する反応性モノマー(D)]
・ライトアクリレートBP−4EA(共栄社化学(株)製)
・CN972(ウレタン結合含有光重合性化合物 サートマー(株)製)。
【0098】
[導電性粒子(E)]
・粒子径(D50)0.7μm、アスペクト比1.1のAg粒子
・粒子径(D50)0.7μm、アスペクト比2.2のAg粒子。
【0099】
[弾性体]
・ハイトレル(登録商標)4047N(融点:182℃、東レデュポン(株)製)
・片面エンボス加工ハイトレル(登録商標)4047N(直径100μm深さ30μm)(融点182℃、東レデュポン(株)製)
・ミラクトラン(登録商標)E394POTA(融点130℃、東ソー(株)製)。
【0100】
(実施例1)
100mLクリーンボトルに、10.0gの不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有アクリル系共重合体(B−2)、0.50gのOXE01、5gのライトアクリレートBP−4EA、10.0gのDMEAおよび0.24gのテトラメチルアンモニウムクロリドを入れ、自転−公転真空ミキサー“あわとり錬太郎”(登録商標)ARE−310((株)シンキー製)を用いて混合して、25.74gの樹脂溶液(固形分61.1質量%)を得た。
【0101】
得られた25.74gの樹脂溶液と、粒子径(D50)0.7μm、アスペクト比1.1のAg粒子47.22gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、72.96gの感光性導電ペーストを得た。表1に感光性導電ペーストの組成を示す。
【0102】
得られた感光性導電ペーストを用いて、前述の方法により、微細パターニング性、導電性、高温高湿環境試験後におけるITOとの密着性および耐屈曲性をそれぞれ評価した。微細パターニング性の評価指標となる現像可能なL/Sの値は10/10であり、良好なパターン加工がされていることが確認された。導電パターンの比抵抗は、60分キュアで7.1×10−5Ωcm、30分キュアで7.5×10−5Ωcm、15分キュアで8.1×10−5Ωcmであった。高温高湿環境試験後におけるITOとの密着性評価結果は残存マス数100であった。耐屈曲性は変化率120%であった。評価結果を表5に示す。
【0103】
(実施例2〜36)
表1〜4に示す組成の感光性導電ペーストを実施例1と同じ方法で作製し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0104】
(実施例37)
100mLクリーンボトルに、10.0gのウレタン結合を有するカルボキシル基含有樹脂(B−4)、0.5gのOXE−01、5gのCN972、30.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PMACと称す)および0.24gのベンジルトリエチルアンモニウムクロリドを入れ、自転−公転真空ミキサー“あわとり錬太郎”(登録商標)ARE−310((株)シンキー製)を用いて混合して、45.74gの樹脂溶液(固形分34.4質量%)を得た。
【0105】
得られた45.74gの樹脂溶液と、粒子径(D50)0.7μm、アスペクト比1.1のAg粒子47.22gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、92.96gの感光性導電ペーストA37を得た。実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0106】
(比較例1)
4級アンモニウム塩化合物を添加しなかった以外は実施例1と同様に感光性導電ペースト製造し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0107】
(比較例2〜3)
4級アンモニウム塩化合物の代わりに表4に示す化合物を用いた以外は実施例1と同様に感光性導電ペーストを製造し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0108】
(実施例38)
図2に示す圧力センサーを作成した。弾性体3として厚み100μmのハイトレル(登録商標)4047Nを用いた。実施例1で用いた感光性導電ペーストを用いて、実施例1と同様の条件で弾性体3の片面に直径30mmの円形電極パターン1を形成した。また、実施例1で用いた感光性導電ペーストを用いて、厚み50μmのPETフィルム2上に直径30mmの円形電極パターン1を形成した。図2に示すように、円形電極パターン1を形成したPETフィルム2を、厚み10μmの粘着層4を介して前記の片面電極形成済みの弾性体3に電極同士が平行かつ、上下位置が重なるように貼り付けて圧力センサーを得た。得られた圧力センサーのセンシング性と環境負荷耐性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0109】
(実施例39)
図3に示す圧力センサーを作成した。弾性体3として厚み100μmの片面エンボス付ハイトレル(登録商標)4047Nを用いた。実施例1で用いた感光性導電ペーストを用いて、実施例1と同様の条件で弾性体3のフラット面に直径30mmの円形電極パターン1を形成した。また、実施例1で用いた感光性導電ペーストを用いて、厚み50μmのPETフィルム2上に直径30mmの円形電極パターンを形成した。図3に示すように、円形電極パターン1を形成したPETフィルム2を、厚み10μmの粘着層4を介して前記の片面電極形成済みの弾性体3のエンボス加工面に電極同士が平行かつ、上下位置が重なるように貼り付けて圧力センサーを得た。得られた圧力センサーのセンシング性と環境負荷耐性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0110】
(実施例40)
図4に示す比抵抗測定用サンプルを作成した。実施例37で作製した導電パターン形成用フィルムをフォトマスクを介して、上記<微細パターニング性>に記載の条件で露光および現像して、離型性フィルム上に配線パターンを形成した。厚み1mmのガラス基板5の両面および端面に、前記パターン形成済みの導電パターン形成用フィルムを用いて、150℃で配線パターンを熱転写した後、離型性フィルムを剥離した。引き続き、140℃の乾燥オーブン内で30分間キュアすることにより、図4に示す比抵抗測定用サンプルを得た。得られた比抵抗測定用サンプルを用いて上記<微細パターニング性>に記載の方法で比抵抗を算出し、導電性を評価した。評価結果を表5に示す。
(比較例4)
図5に示す圧力センサーを作成した。弾性体3として厚み100μmのハイトレル(登録商標)4047Nを用いた。比較例1で用いた感光性導電ペーストを用いて、厚み50μmのPETフィルム2上に電極パターン1を形成したものを2枚作製した。図5に示すように、2枚の円形電極パターン1を形成したPETフィルム2を、厚み10μmの粘着層4を介して弾性体3の両面に貼り付けて圧力センサーを得た。
(比較例5)
感光性導電ペーストとして比較例1で用いた感光性導電ペーストを用い、弾性体3としてミラクトラン(登録商標)E394POTAを用いた以外は実施例38と同じ方法で圧力センサーを製造し、実施例38と同様にして評価を行った。評価結果を表6に示す。
(比較例6)
比較例1で用いた感光性導電ペーストを用い、実施例40と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】
実施例1〜37の感光性導電ペーストは、いずれも微細パターニング性に優れ、短時間のキュアにより、導電性、高温高湿環境試験後におけるITOとの密着性および屈曲耐性に優れた導電パターンを製造することができた。一方、4級アンモニウム塩化合物を含有しない比較例1〜3の感光性導電ペーストは、短時間のキュアによる導電性、高温高湿環境試験後におけるITOとの密着性および耐屈曲性を両立することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の感光性導電ペーストおよび導電パターン形成用フィルムは、タッチパネル用の周囲配線、ビューエリア用電極、圧力センサー、配線付基板の導電パターンなどの製造のために好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1:導電パターン
2:PETフィルム
A:比抵抗測定用サンプルの短辺
B:比抵抗測定用サンプルの反対側の短辺
3:弾性体
4:粘着層
5:ガラス基板
図1
図2
図3
図4
図5