特許第6750765号(P6750765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6750765
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/08 20060101AFI20200824BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   H01L41/08
   H01L41/187
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-526343(P2020-526343)
(86)(22)【出願日】2019年4月24日
(86)【国際出願番号】JP2019017432
【審査請求日】2020年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2018-177134(P2018-177134)
(32)【優先日】2018年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 諭卓
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸介
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/054447(WO,A1)
【文献】 特開2015−087284(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/115363(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/114002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/08
H01L 41/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部に間接的に支持されて、前記基部より上側に位置し、複数の層からなるメンブレン部とを備え、
前記メンブレン部は、前記基部に重なっておらず、かつ、単結晶圧電体層と、該単結晶圧電体層の上側に配置された上部電極層と、前記単結晶圧電体層を挟んで前記上部電極層の少なくとも一部に対向するように配置された下部電極層とを含み、
前記メンブレン部には、上下方向に貫通する貫通溝が設けられており、
前記貫通溝は、前記メンブレン部を構成する前記複数の層のうち最も厚い層において、第1段部が形成されており、
前記貫通溝の幅は、前記第1段部を境に下側が上側より狭くなっており、
前記貫通溝の前記幅は、前記貫通溝の上端から下端に向かうに従って狭くなっている、圧電デバイス。
【請求項2】
前記貫通溝は、前記第1段部より上方にて、前記メンブレン部を構成する前記複数の層のいずれか一層において、第2段部がさらに形成されており、
前記貫通溝の前記幅は、前記第2段部を境に下側が上側より狭くなっている、請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記単結晶圧電体層は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムで構成されている、請求項1または請求項に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスの構成を開示した文献として、国際公開第2017/218299号(特許文献1)がある。特許文献1に記載された圧電デバイスは、基板と、メンブレン部とを備えている。基板は、貫通するように形成された開口部を有している。メンブレン部は、少なくとも1つの弾性層と、上部電極層および下部電極層の間に挟まれた少なくとも1つの圧電層とから形成されている。メンブレン部は、開口部より上方において基板に取り付けられている。開口部の端に近接するメンブレン部において、エッチングされることにより貫通溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/218299号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の層からなるメンブレン部を有する圧電デバイスにおいては、メンブレン部内に生じる応力によって層間剥離が発生する場合がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、メンブレン部内に生じる応力による層間剥離の発生を抑制できる、圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく圧電デバイスは、基部と、メンブレン部とを備えている。メンブレン部は、基部に間接的に支持されて、基部より上側に位置している。メンブレン部は、複数の層からなる。メンブレン部は、基部に重なっておらず、かつ、単結晶圧電体層と、上部電極層と、下部電極層とを含んでいる。上部電極層は、単結晶圧電体層の上側に配置されている。下部電極層は、単結晶圧電体層を挟んで上部電極層の少なくとも一部に対向するように配置されている。メンブレン部には、上下方向に貫通する貫通溝が設けられている。貫通溝は、メンブレン部を構成する複数の層のうち最も厚い層において、第1段部が形成されている。貫通溝の幅は、第1段部を境に下側が上側より狭くなっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の層からなるメンブレン部を有する圧電デバイスにおいて、メンブレン部内に生じる応力による層間剥離の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの平面図である。
図2図1の圧電デバイスについてII−II線方向から見た断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の下面に密着層を設けた状態を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、密着層および単結晶圧電体層の各々の下面に下部電極層を設けた状態を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、下部電極層および単結晶圧電体層の各々の下面に中間層を設けた状態を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面を平坦にした状態を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、図6に示す複数の層に基部を接合させる状態を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面に基部を接合させた状態を示す断面図である。
図9】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の上面を削った状態を示す断面図である。
図10】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の上面に上部電極層を設けた状態を示す断面図である。
図11】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層に孔部を設けた状態を示す断面図である。
図12】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層から中間層の途中まで貫通溝を設けた状態を示す断面図である。
図13】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面に達するように貫通溝を設けた状態を示す断面図である。
図14】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、開口部を形成した状態を示す断面図である。
図15】本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電デバイスの断面図である。
図16】本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電デバイスの断面図である。
図17】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの断面図である。
図18】本発明の実施形態2の係る圧電デバイスの製造方法において、下部電極層および単結晶圧電体層の各々の下面に中間層を設けた状態を示す断面図である。
図19】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面を平坦にした状態を示す断面図である。
図20】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、図19に示す複数の層に積層体を接合させる状態を示す断面図である。
図21】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面に積層体を接合させた状態を示す断面図である。
図22】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の上面を削った状態を示す断面図である。
図23】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の上面に上部電極層を設けた状態を示す断面図である。
図24】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層に孔部を設けた状態を示す断面図である。
図25】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層から活性層の途中まで貫通溝を設けた状態を示す断面図である。
図26】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、活性層の下面に達するように貫通溝を設けた状態を示す断面図である。
図27】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、開口部を形成した状態を示す断面図である。
図28】本発明の実施形態2の第1変形例に係る圧電デバイスの断面図である。
図29】本発明の実施形態2の第2変形例に係る圧電デバイスの断面図である。
図30】本発明の実施形態2の第3変形例に係る圧電デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態に係る圧電デバイスについて図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの平面図である。図2は、図1の圧電デバイスについてII−II線方向から見た断面図である。図1においては、圧電デバイスの内部の構成を点線で示している。
【0011】
図1および図2に示すように、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100は、基部110と、メンブレン部120とを備えている。
【0012】
基部110は、上側主面111、および、上側主面111とは反対側に位置する下側主面112を有している。基部110には、上下方向に貫通する開口部113が形成されている。
【0013】
基部を構成する材料は特に限定されない。本実施形態において、基部110はSiで構成されている。
【0014】
図2に示すように、基部110の上側主面111上には、複数の層が積層されている。メンブレン部120は、上記複数の層のうち、開口部113の上側に位置する部分である。すなわち、メンブレン部120は、複数の層からなる。
【0015】
メンブレン部120は、基部110の開口部113の上側に位置しているため、基部110に重なっていない。すなわち、メンブレン部120は、基部110に間接的に支持されて、基部110より上側に位置している。
【0016】
図1および図2に示すように、本実施形態において、メンブレン部120を構成する上記複数の層は、単結晶圧電体層130と、上部電極層140と、下部電極層150と、中間層160とを含んでいる。
【0017】
単結晶圧電体層130は、基部110より上側に位置している。単結晶圧電体層130は、単結晶圧電体層130の一部がメンブレン部120に含まれるように配置されている。単結晶圧電体層130の上面および下面の各々は、平坦である。
【0018】
単結晶圧電体層130は、後述する貫通溝とは異なる孔部131を有している。孔部131は、単結晶圧電体層130を上下に貫通するように形成されている。本実施形態において、孔部131は、基部110の上方に位置し、メンブレン部120に含まれていない。
【0019】
単結晶圧電体層130は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムで構成されている。タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムで構成された単結晶圧電体層130は、分極状態が一様である。
【0020】
上部電極層140は、単結晶圧電体層130の上側に配置されている。上部電極層140は、上部電極層140の一部がメンブレン部120に含まれるように配置されている。
【0021】
本実施形態において、上部電極層140は単結晶圧電体層130の一部の上側に積層されている。なお、上部電極層140と単結晶圧電体層との間に、Tiなどで構成された密着層が配置されていてもよい。
【0022】
下部電極層150は、単結晶圧電体層130を挟んで上部電極層140の少なくとも一部に対向するように配置されている。下部電極層150は、下部電極層150の一部がメンブレン部120に含まれるように配置されている。また、下部電極層150は、メンブレン部120において、単結晶圧電体層130を挟んで上部電極層140の少なくとも一部と対向するように配置されている。
【0023】
下部電極層150の一部は、単結晶圧電体層130に形成された孔部131より下方に位置するように配置されている。本実施形態においては、下部電極層150は、密着層155を介して単結晶圧電体層130と接続されている。密着層155は、単結晶圧電体層130の孔部131の下方を覆うように形成されている。
【0024】
本実施形態において、下部電極層150の一部は、密着層155の下面を覆うように、密着層155の下側に配置されている。密着層155は、メンブレン部120には含まれていない。なお、密着層155は必ずしも設けられていなくてもよい。密着層155が設けられていない場合、下部電極層150の一部は、孔部131の下方を直接覆うように形成される。
【0025】
下部電極層150は、Pt、NiまたはAuなどの導電性材料で構成されている。密着層155の材料は、導電性および密着性を有する材料であれば特に限定されない。密着層155は、たとえばTi、Cr、NiまたはNiCrで構成される。
【0026】
中間層160は、単結晶圧電体層130より下方に配置されている。本実施形態においては、中間層160は、下部電極層150の下面、および、単結晶圧電体層130の下面のうち下部電極層150に覆われていない部分の、各々と接するように設けられている。
【0027】
中間層160の下面には凹部161が形成されており、中間層160の下面において凹部161以外の部分は平坦である。図1および図2に示すように、凹部161の下側周縁部と、開口部113の上側周縁部とは、上下方向に連続している。本実施形態において、凹部161の上底面は、メンブレン部120の下面を構成している。
【0028】
なお、中間層160と基部110とは互いに直接接続されていなくてもよく、中間層160と基部110とは、金属層を介して互いに接続されていてもよい。
【0029】
中間層160の材料は、絶縁物であれば特に限定されない。本実施形態において、中間層160は、SiO2で構成されている。また、中間層160は、電気絶縁性および断熱性を有する有機材料で構成されていてもよい。
【0030】
圧電デバイス100は、第1外部電極層171と第2外部電極層172とをさらに含んでいる。第1外部電極層171は、上部電極層140の一部の上側に積層されている。第2外部電極層172は、単結晶圧電体層130の一部および密着層155の各々の上側に積層されている。すなわち、第2外部電極層172は、孔部131内において、密着層155を介して下部電極層150の上側に積層されている。なお、下部電極層150として二層配線が積層されていてもよい。第1外部電極層171および第2外部電極層172の各々は、メンブレン部120に含まれていない。
【0031】
このように、メンブレン部120は、単結晶圧電体層130と、上部電極層140と、下部電極層150と、中間層160とを含んでいる。
【0032】
図2に示すように、メンブレン部120において、上部電極層140は、単結晶圧電体層130の上側に配置されている。メンブレン部120において、下部電極層150は、単結晶圧電体層130を挟んで上部電極層140の少なくとも一部に対向するように配置されている。
【0033】
本実施形態において、メンブレン部120を構成する複数の層のうち最も厚い層は、中間層160である。
【0034】
上記の構成により、上部電極層140と下部電極層150との間に電圧が印加されることによって、単結晶圧電体層130の伸縮に応じてメンブレン部120が上下に屈曲振動する。
【0035】
メンブレン部120には、上下方向に貫通する貫通溝180が設けられている。図1および図2に示すように、上部電極層140における貫通溝180の幅は、単結晶圧電体層130の上面における貫通溝180の幅より広い。貫通溝180に隣接する単結晶圧電体層130の上面の一部は露出している。
【0036】
なお、上部電極層140および単結晶圧電体層130の各々における貫通溝180の溝幅の関係は、上記に限らない。たとえば、上部電極層140における貫通溝180の幅が、単結晶圧電体層130の上面における貫通溝180の幅と略同一であってもよい。貫通溝180側に位置する、上部電極層140の端面および単結晶圧電体層130の端面の各々が、互いに上下方向に連続していてもよい。
【0037】
本実施形態において、貫通溝180側に位置する、単結晶圧電体層130の端面および下部電極層150の端面の各々は、互いに上下方向に連続している。
【0038】
本実施形態において、貫通溝180側に位置する、下部電極層150の端面および中間層160の端面の各々は、互いに上下方向に連続している。すなわち、貫通溝180側に位置する、メンブレン部120を構成する複数の層のうち最も厚い層の端面およびその最も厚い層上に位置する層の端面の各々が、互いに上下方向に連続している。
【0039】
本実施形態において、貫通溝180は、中間層160において第1段部181が形成されている。すなわち、貫通溝180は、メンブレン部120を構成する複数の層のうち最も厚い層において、第1段部181が形成されている。貫通溝180の幅は、第1段部181を境に下側が上側より狭くなっている。
【0040】
貫通溝180における開口部113側の端部は、中間層160の凹部161の上底面に位置している。
【0041】
図2に示すように、貫通溝180の幅は、貫通溝180の上端から下端に向かうに従って狭くなっている。なお、貫通溝180の幅が、貫通溝180の上端から下端に向かうに従って段階的に狭くなっていてもよい。すなわち、貫通溝180の上端から下端に向かうに従って貫通溝180の幅が同一となっている部分が含まれていてもよい。本実施形態においては、貫通溝180の幅は、上部電極層の上端から下端まで略同一である。このように、貫通溝180は、開口部113側の端部において最も狭くなるように形成されている。
【0042】
以下、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の下面に密着層を設けた状態を示す断面図である。形成時の単結晶圧電体層130の厚みは、本実施形態に係る圧電デバイス100に最終的に含まれる単結晶圧電体層130の厚みより厚い。
【0043】
図3に示すように、リフトオフ法、めっき法、または、エッチング法などにより、単結晶圧電体層130の下面に密着層155を設ける。
【0044】
図4は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、密着層および単結晶圧電体層の各々の下面に下部電極層を設けた状態を示す断面図である。図4に示すように、リフトオフ法、めっき法、または、エッチング法などにより、密着層155の下面全面および単結晶圧電体層の下面の一部に、下部電極層150を設ける。
【0045】
図5は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、下部電極層および単結晶圧電体層の各々の下面に中間層を設けた状態を示す断面図である。図5に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法またはPVD(Physical Vapor Deposition)法などにより、下部電極層150および単結晶圧電体層130の各々の下面に、中間層160を設ける。
【0046】
図6は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面を平坦にした状態を示す断面図である。図6に示すように、中間層160の下面を化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などにより、平坦にする。
【0047】
図7は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、図6に示す複数の層に基部を接合させる状態を示す断面図である。図8は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面に基部を接合させた状態を示す断面図である。
【0048】
図7および図8に示すように、中間層160の下面に、開口部113が形成されていない、基部110である基板を接合させる。
【0049】
図9は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の上面を削った状態を示す断面図である。図9に示すように、単結晶圧電体層130の上面をCMPなどにより削って、単結晶圧電体層130を所望の厚さにする。この場合、単結晶圧電体層130の厚さは、電圧の印加による単結晶圧電体層130の所望の伸縮量が得られるように調整される。
【0050】
なお、単結晶圧電体層130の上面側に、予めイオン注入することにより、剥離層を形成していてもよい。この場合、単結晶圧電体層130の上面をCMPなどにより削る前に、剥離層を剥離させることにより、単結晶圧電体層130の厚さ調整が容易になる。
【0051】
図10は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の上面に上部電極層を設けた状態を示す断面図である。図10に示すように、リフトオフ法、めっき法、または、エッチング法などにより、単結晶圧電体層130の上面の一部に、上部電極層140を設ける。
【0052】
図11は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層に孔部を設けた状態を示す断面図である。図11に示すように、単結晶圧電体層130の一部をエッチングすることにより、孔部131を形成する。
【0053】
図12は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層から中間層の途中まで貫通溝を設けた状態を示す断面図である。図12に示すように、単結晶圧電体層130側からエッチングをすることにより、単結晶圧電体層130から中間層160の途中まで貫通溝180を形成する。これにより、中間層160にトレンチが形成される。
【0054】
図13は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面に達するように貫通溝を設けた状態を示す断面図である。図13に示すように、中間層160に形成されたトレンチの底部をさらにエッチングすることにより、中間層160の下面に達するように貫通溝180を形成する。貫通溝180は、中間層160において第1段部181が形成されている。このエッチングに伴い、基部110に、図13に示すようなトレンチが形成されていてもよいし、トレンチが形成されていなくてもよい。
【0055】
図14は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、開口部を形成した状態を示す断面図である。図14に示すように、基部110の下側主面112側から基部110に対して、深掘反応性イオンエッチング(Deep RIE:Deep Reactive Ion Etching)などにより、基部110に開口部113を形成し、かつ、中間層160に凹部161を形成する。これにより、本実施形態に係る圧電デバイス100において、メンブレン部120が形成される。
【0056】
最後に、リフトオフ法、めっき法またはエッチング法などにより、第1外部電極層171および第2外部電極層172の各々が設けられる。なお、第1外部電極層171および第2外部電極層172の各々は、メンブレン部120を形成する前に設けられてもよい。上記の工程により、図2に示すような本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100が製造される。
【0057】
上記のように、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100においては、貫通溝180は、メンブレン部120を構成する複数の層のうち最も厚い層において、第1段部181が形成されており、貫通溝180の幅は、第1段部181を境に下側が上側より狭くなっている。
【0058】
これにより、メンブレン部120が屈曲振動する際に最も高い応力が作用する、最も厚い層である中間層160と中間層160に隣接する下部電極層150との間への応力集中を、第1段部181によって緩和することができるため、メンブレン部120内に生じる応力による中間層160と下部電極層150との間での層間剥離の発生を抑制することができる。
【0059】
特に、本実施形態においては、貫通溝180側に位置する、下部電極層150の端面および中間層160の端面の各々が、互いに上下方向に連続しているため、中間層160と下部電極層150との間への応力集中を、第1段部181によって効果的に緩和することができる。
【0060】
本実施形に係る圧電デバイス100においては、貫通溝180の幅は、貫通溝180の上端から下端に向かうに従って狭くなっている。これにより、単結晶圧電体層130が位置する部分の貫通溝180の幅を広く確保しつつ、第1段部181より下側の貫通溝180の幅を狭くすることができる。
【0061】
その結果、メンブレン部120が屈曲振動する際に単結晶圧電体層130に作用する応力を緩和して、単結晶圧電体層130と上部電極層140との間、および、単結晶圧電体層130と下部電極層150との間の、各々における層間剥離の発生を抑制することができる。また、第1段部181より下側の貫通溝180の幅を狭くすることができるため、貫通溝180の幅が広くなりすぎることによる圧電デバイス100の特性低下が起きることを抑制できる。たとえば、圧電デバイス100が音響デバイスとして用いられる場合には、貫通溝180の幅が広くなりすぎることによる音響抵抗の低下を抑制することができる。
【0062】
本実施形に係る圧電デバイス100においては、単結晶圧電体層130は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムで構成されている。これにより、圧電デバイス100の圧電特性を向上させることができる。
【0063】
なお、本実施形態に係る圧電デバイス100においては、貫通溝180に複数の段部が形成されていてもよい。ここで、本実施形態に係る圧電デバイス100の変形例について説明する。
【0064】
図15は、本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電デバイスの断面図である。図15に示す圧電デバイス100aの断面図は、図2に示す圧電デバイス100の断面図と同一の断面視にて図示している。
【0065】
図15に示すように、本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電デバイス100aにおいては、貫通溝180は、単結晶圧電体層130において第2段部182aがさらに形成されている。
【0066】
本変形例において、第2段部182aは、単結晶圧電体層130に貫通溝180を形成するためのエッチングを、2回に分けることにより形成できる。まず、1回目のエッチングにより、単結晶圧電体層130にトレンチを形成する。2回目のエッチングにより、単結晶圧電体層130のトレンチの底部をエッチングする。これにより、単結晶圧電体層130に第2段部182aを形成することができる。
【0067】
図16は、本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電デバイスの断面図である。図16に示す圧電デバイス100bの断面図は、図2に示す圧電デバイス100の断面図と同一の断面視にて図示している。
【0068】
図16に示すように、本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電デバイス100bにおいては、貫通溝180は、メンブレン部120を構成する複数の層のうち最も厚い層である中間層160において、第2段部182bがさらに形成されている。
【0069】
本変形例において、第2段部182bは、中間層160に貫通溝180を形成するためのエッチングを、3回に分けることにより形成できる。まず、1回目のエッチングにより、中間層160に第1トレンチを形成する。2回目のエッチングにより、第1トレンチの底部をエッチングすることにより、第2トレンチを形成する。これにより、中間層160に第2段部182bを形成することができる。3回目のエッチングにより、第2トレンチの底部をエッチングする。これにより、中間層160に第1段部181を形成することができる。
【0070】
上記のように、本発明の実施形態1の第1変形例および第2変形例に係る圧電デバイス100a,100bの各々において、貫通溝180は、第1段部181より上方にて、メンブレン部120を構成する複数の層のいずれか一層において、第2段部182a,182bがさらに形成されている。貫通溝180の幅は、第2段部182a,182bを境に下側が上側より狭くなっている。
【0071】
これにより、メンブレン部120が屈曲振動する際にメンブレン部120を構成する複数の層の層間への応力集中を、第2段部182a,182bによっても緩和することができるため、メンブレン部120内に生じる応力による層間剥離の発生をさらに抑制することができる。
【0072】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスについて説明する。本発明の実施形態2に係る圧電デバイスは、主に、メンブレン部および基部の各々の構成が、実施形態1に係る圧電デバイス100と異なる。よって、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0073】
図17は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの断面図である。図17に示す圧電デバイス200の断面図は、図2に示す圧電デバイス100の断面図と同一の断面視にて図示している。
【0074】
図17に示すように、本発明の実施形態2に係る圧電デバイス200は、基部210と、メンブレン部220とを備えている。
【0075】
図17に示すように、基部210は、下側基部210aと、下側基部210aの上側に位置する上側基部210bとを含んでいる。基部210は、上側主面211、および、上側主面211とは反対側に位置する下側主面212を有している。本実施形態において、上側基部210bの上面が上側主面211であり、下側基部210aの下面が下側主面212である。基部210には、上下方向に下側基部210aと上側基部210bとを貫通する開口部213が形成されている。
【0076】
基部210を構成する材料は特に限定されない。本実施形態において、下側基部210aはSiで構成されている。上側基部210bはSiO2で構成されている。
【0077】
図17に示すように、基部210の上側主面211上には、複数の層が積層されている。メンブレン部220は、上記複数の層のうち、開口部213の上側に位置する部分である。すなわち、メンブレン部220は、複数の層からなる。
【0078】
メンブレン部220は、基部210の開口部213の上側に位置しているため、基部210に重なっていない。すなわち、メンブレン部220は、基部210に間接的に支持されて、基部210より上側に位置している。
【0079】
図17に示すように、本実施形態において、メンブレン部220を構成する上記複数の層は、単結晶圧電体層230と、上部電極層240と、下部電極層250と、中間層260と、活性層290とを含んでいる。
【0080】
本実施形態において、中間層260の下面に凹部は形成されていない。また、本実施形態における中間層260は、本発明の実施形態1における中間層160より厚さが薄くなるように形成されている。
【0081】
活性層290は、中間層260の下面の全面と接続するように設けられている。また、活性層290は、開口部213の上方を覆うように、基部210の上側主面211上に積層されている。すなわち、本実施形態においては、開口部213に中間層260の下面が露出している。
【0082】
活性層290を構成する材料は特に限定されないが、本実施形態において、活性層290はSiで構成されている。
【0083】
このように、本実施形態において、メンブレン部220は、単結晶圧電体層230と、上部電極層240と、下部電極層250と、中間層260と、活性層290とを含んでいる。
【0084】
図17に示すように、メンブレン部220において、上部電極層240は、単結晶圧電体層230の上側に配置されている。メンブレン部220において、下部電極層250は、単結晶圧電体層230を挟んで上部電極層240の少なくとも一部に対向するように配置されている。
【0085】
本実施形態において、メンブレン部220を構成する複数の層のうち最も厚い層は、活性層290である。
【0086】
上記の構成により、上部電極層240と下部電極層250との間に電圧が印加されることによって、単結晶圧電体層230の伸縮に応じてメンブレン部220が上下に屈曲振動する。
【0087】
メンブレン部220には、上下方向に貫通する貫通溝280が設けられている。
本実施形態において、貫通溝280側に位置する、中間層260の端面および活性層290の端面の各々は、互いに上下方向に連続している。すなわち、貫通溝280側に位置する、メンブレン部220を構成する複数の層のうち最も厚い層の端面およびその最も厚い層上に位置する層の端面の各々が、互いに上下方向に連続している。
【0088】
本実施形態において、貫通溝280は、活性層290において第1段部281が形成されている。すなわち、貫通溝280は、メンブレン部220を構成する複数の層のうち最も厚い層において、第1段部281が形成されている。貫通溝280の幅は、第1段部281を境に下側が上側より狭くなっている。
【0089】
貫通溝280の開口部213側の端部は、中間層260の下面に位置している。
図17に示すように、貫通溝280の幅は、貫通溝280の上端から下端に向かうに従って狭くなっている。なお、貫通溝280の幅が、貫通溝280の上端から下端に向かうに従って段階的に狭くなっていてもよい。すなわち、貫通溝280の上端から下端に向かうに従って貫通溝280の幅が同一となっている部分が含まれていてもよい。本実施形態においては、貫通溝280の幅は、上部電極層の上端から下端まで略同一である。このように、貫通溝280は、開口部213側の端部において最も狭くなるように形成されている。
【0090】
以下、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法について説明する。
図18は、本発明の実施形態2の係る圧電デバイスの製造方法において、下部電極層および単結晶圧電体層の各々の下面に中間層を設けた状態を示す断面図である。まず、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100の製造方法と同様にして、単結晶圧電体層230の下側に密着層255および下部電極層250を設ける。次に、図18に示すように、CVD法またはPVD法などにより、下部電極層250および単結晶圧電体層230の各々の下面に、中間層260を設ける。
【0091】
図19は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面を平坦にした状態を示す断面図である。図19に示すように、中間層260の下面を化学機械研磨などにより、平坦にする。
【0092】
図20は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、図19に示す複数の層に積層体を接合させる状態を示す断面図である。図21は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、中間層の下面に積層体を接合させた状態を示す断面図である。
【0093】
図20および図21に示すように、中間層260の下面に、積層体10を接合させる。積層体10は、開口部213が形成されていない基部210と、基部210の上面に接合された活性層290とから構成されている。本実施形態において、積層体10はSOI(Silicon on Insulator)基板である。
【0094】
図22は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の上面を削った状態を示す断面図である。図22に示すように、単結晶圧電体層230の上面をCMPなどにより削って、単結晶圧電体層230を所望の厚さにする。この場合、単結晶圧電体層230の厚さは、電圧の印加による単結晶圧電体層230の所望の伸縮量が得られるように調整される。
【0095】
なお、単結晶圧電体層230の上面側に、予めイオン注入することにより、剥離層を形成していてもよい。この場合、単結晶圧電体層230の上面をCMPなどにより削る前に、剥離層を剥離させることにより、単結晶圧電体層230の厚さ調整が容易になる。
【0096】
図23は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層の上面に上部電極層を設けた状態を示す断面図である。図23に示すように、リフトオフ法、めっき法、または、エッチング法などにより、単結晶圧電体層230の上面の一部に、上部電極層240を設ける。
【0097】
図24は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層に孔部を設けた状態を示す断面図である。図24に示すように、単結晶圧電体層230の一部をエッチングすることにより、孔部231を形成する。
【0098】
図25は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、単結晶圧電体層から活性層の途中まで貫通溝を設けた状態を示す断面図である。図25に示すように、単結晶圧電体層230側からエッチングをすることにより、単結晶圧電体層230から活性層290の途中まで貫通溝280を形成する。これにより、活性層290にトレンチが形成される。
【0099】
図26は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、活性層の下面に達するように貫通溝を設けた状態を示す断面図である。図26に示すように、活性層290に形成されたトレンチの底部をさらにエッチングすることにより、活性層290の下面に達するように貫通溝280を形成する。このエッチングに伴い、基部210に、図26に示すようなトレンチが形成されていてもよいし、トレンチが形成されていなくてもよい。
【0100】
図27は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの製造方法において、開口部を形成した状態を示す断面図である。図27に示すように、基部210の下側主面212側から基部210に対して、深堀反応性イオンエッチングなどにより、基部210に開口部213を形成する。これにより、本実施形態に係る圧電デバイス200において、メンブレン部220が形成される。
【0101】
最後に、リフトオフ法、めっき法またはエッチング法などにより、第1外部電極層171および第2外部電極層172の各々が設けられる。上記の工程により、図17に示すような本発明の実施形態2に係る圧電デバイス200が製造される。
【0102】
上記のように、本発明の実施形態2に係る圧電デバイス200においては、貫通溝280は、メンブレン部220を構成する複数の層のうち最も厚い層において、第1段部281が形成されており、貫通溝280の幅は、第1段部281を境に下側が上側より狭くなっている。
【0103】
これにより、メンブレン部220が屈曲振動する際に最も高い応力が作用する、最も厚い層である活性層290と活性層290に隣接する中間層260との間への応力集中を、第1段部281によって緩和することができるため、メンブレン部220内に生じる応力による活性層290と中間層260との間での層間剥離の発生を抑制することができる。
【0104】
特に、本実施形態においては、貫通溝280側に位置する、中間層260の端面および活性層290の端面の各々が、互いに上下方向に連続しているため、活性層290と中間層260との間への応力集中を、第1段部281によって効果的に緩和することができる。
【0105】
本実施形に係る圧電デバイス200においては、貫通溝280の幅は、貫通溝280の上端から下端に向かうに従って狭くなっている。これにより、単結晶圧電体層230が位置する部分の貫通溝280の幅を広く確保しつつ、第1段部281より下側の貫通溝280の幅を狭くすることができる。
【0106】
その結果、メンブレン部220が屈曲振動する際に単結晶圧電体層230に作用する応力を緩和して、単結晶圧電体層230と上部電極層240との間、および、単結晶圧電体層230と下部電極層250との間の、各々における層間剥離の発生を抑制することができる。また、第1段部281より下側の貫通溝280の幅を狭くすることができるため、貫通溝280の幅が広くなりすぎることによる圧電デバイス200の特性低下が起きることを抑制できる。たとえば、圧電デバイス200が音響デバイスとして用いられる場合には、貫通溝280の幅が広くなりすぎることによる音響抵抗の低下を抑制することができる。
【0107】
本実施形に係る圧電デバイス200においては、単結晶圧電体層230は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムで構成されている。これにより、圧電デバイス200の圧電特性を向上させることができる。
【0108】
なお、本実施形態に係る圧電デバイス200においては、貫通溝280に複数の段部が形成されていてもよい。ここで、本実施形態に係る圧電デバイス200の変形例について説明する。
【0109】
図28は、本発明の実施形態2の第1変形例に係る圧電デバイスの断面図である。図28に示す圧電デバイス200aの断面図は、図17に示す圧電デバイス200の断面図と同一の断面視にて図示している。
【0110】
図28に示すように、本発明の実施形態2の第1変形例に係る圧電デバイス200aにおいては、貫通溝280は、中間層260において第2段部282aがさらに形成されている。
【0111】
本変形例において、第2段部282aは、中間層260に貫通溝280を形成するためのエッチングを2回に分けることにより形成できる。まず、1回目のエッチングにより、中間層260に第1トレンチを形成する。2回目のエッチングにより、第1トレンチの底部をエッチングすることにより、第2トレンチを形成する。これにより、中間層260に第2段部282aを形成することができる。
【0112】
図29は、本発明の実施形態2の第2変形例に係る圧電デバイスの断面図である。図29に示す圧電デバイス200bの断面図は、図17に示す圧電デバイス200の断面図と同一の断面視にて図示している。
【0113】
図29に示すように、本発明の実施形態2の第2変形例に係る圧電デバイス200bにおいては、貫通溝280は、単結晶圧電体層230において第2段部282bがさらに形成されている。
【0114】
本変形例において、第2段部282bは、単結晶圧電体層230に貫通溝280を形成するためのエッチングを2回に分けることにより形成できる。まず、1回目のエッチングにより、単結晶圧電体層230にトレンチを形成する。2回目のエッチングにより、単結晶圧電体層230のトレンチの底部をエッチングする。これにより、単結晶圧電体層230に第2段部282bを形成することができる。
【0115】
図30は、本発明の実施形態2の第3変形例に係る圧電デバイスの断面図である。図30に示す圧電デバイス200cの断面図は、図17に示す圧電デバイス200の断面図と同一の断面視にて図示している。
【0116】
図30に示すように、本発明の実施形態2の第3変形例に係る圧電デバイス200cにおいては、貫通溝280は、中間層260において第2段部282cが形成され、単結晶圧電体層230において第3段部283cがさらに形成されている。
【0117】
本変形例において、第2段部282bおよび第3段部283cの各々は、単結晶圧電体層230、下部電極層250および中間層260の各々に貫通溝280を形成するためのエッチングを3回に分けることにより形成できる。まず、1回目のエッチングにより、単結晶圧電体層230にトレンチを形成する。2回目のエッチングにより、単結晶圧電体層230のトレンチの底部をエッチングし、中間層260にトレンチを形成する。これにより、単結晶圧電体層230に第3段部283cを形成することができる。3回目のエッチングにより、中間層260トレンチの底部をエッチングする。これにより、中間層260に第2段部282cを形成することができる。
【0118】
上記のように、本発明の実施形態2の第1変形例、第2変形例および第3変形例に係る圧電デバイス200a,200b,200cの各々において、貫通溝280は、第1段部281より上方にて、メンブレン部220を構成する複数の層のいずれか一層において、第2段部282a,282b,282cまたは第3段部283cがさらに形成されている。貫通溝280の幅は、第2段部282a,282b,282cおよび第3段部283cの各々を境に下側が上側より狭くなっている。
【0119】
これにより、メンブレン部220が屈曲振動する際にメンブレン部220を構成する複数の層の層間への応力集中を、第2段部182a,182b,282cおよび第3段部283cによっても緩和することができるため、メンブレン部220内に生じる応力による層間剥離の発生をさらに抑制することができる。
【0120】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0121】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
10 積層体、100,100a,100b,200,200a,200b,200c 圧電デバイス、110,210 基部、111,211 上側主面、112,212 下側主面、113,213 開口部、120,220 メンブレン部、130,230 単結晶圧電体層、131,231 孔部、140,240 上部電極層、150,250 下部電極層、155,255 密着層、160,260 中間層、161 凹部、171 第1外部電極層、172 第2外部電極層、180,280 貫通溝、181,281 第1段部、182a,182b,282a,282b,282c 第2段部、210a 下側基部、210b 上側基部、283c 第3段部、290 活性層。
【要約】
基部(110)と、メンブレン部(120)とを備えている。メンブレン部(120)は、基部(110)に間接的に支持されて、基部(110)より上側に位置している。メンブレン部(120)は、複数の層からなる。メンブレン部(120)は、基部(110)に重なっておらず、かつ、単結晶圧電体層(130)と、上部電極層(140)と、下部電極層(150)とを含んでいる。メンブレン部(120)には、上下方向に貫通する貫通溝(180)が設けられている。貫通溝(180)は、メンブレン部(120)を構成する複数の層のうち最も厚い層において、第1段部(181)が形成されている。貫通溝(180)の幅は、第1段部(181)を境に下側が上側より狭くなっている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30