【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、総務省、「テラヘルツ波デバイス基盤技術の研究開発−300GHz帯増幅器技術−」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1矩形導波管と第2矩形導波管との間に円形導波管が接続されるとともに、前記円形導波管に誘電体板が前記第1矩形導波管側の空間と前記第2矩形導波管側の空間を仕切るように保持され、かつ、前記円形導波管において少なくとも前記円形導波管の軸方向に塑性変形を許容する塑性変形許容部を有する高周波窓の製造方法であって、
前記第1矩形導波管側の空間及び前記第2矩形導波管側の空間をそれぞれ所定圧力とし、かつ、前記第2矩形導波管から前記第1矩形導波管へ所定周波数の電磁波を送信したときのS11の値が極小となるように、前記円形導波管の軸方向の長さを調節する工程を含み、
前記円形導波管の軸方向の長さを調節する際、前記塑性変形許容部を塑性変形する、
高周波窓の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。なお、下記の実施形態は、あくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【0014】
[実施形態1]
実施形態1に係る高周波窓について図面を用いて説明する。
図1は、実施形態1に係る高周波窓の構成を模式的に示した軸方向に沿った断面図である。
図2は、実施形態1に係る高周波窓の構成を模式的に示した(A)
図1のX−X´間の断面図、(B)
図1のY−Y´間の断面図、(C)
図1のZ−Z´間の断面図である。
【0015】
高周波窓100は、外部(例えば、大気圧又はガスが充填された外部)に対してマイクロ波管の内部(例えば、真空)の気密を保ったまま信号(電磁波)の入出力を行うための装置である。高周波窓100は、RF(Radio Frequency)窓、ピルボックス型高周波窓とも呼ばれる。高周波窓100は、真空管装置の入出力部に設けられる。高周波窓100は、中心軸80に沿った方向に、第1矩形導波管10、第1円形導波管20、誘電体板30、第2円形導波管40、第2矩形導波管50の順に接続された構成となっている。高周波窓100は、円形導波管70(第1円形導波管20、第2円形導波管40)と、第1矩形導波管10と、第2矩形導波管50と、誘電体板30と、を備える。
【0016】
円形導波管70は、円形筒部(第1円形筒部21、第2円形筒部41)と、側壁部(第1側壁部23、第2側壁部43)と、を有する管状部材である。円形導波管70は、第1矩形導波管10と第2矩形導波管50との間に配されている。円形導波管70は、第1円形導波管20と、第2円形導波管40と、が組み立てられた構成となっている。
【0017】
第1円形導波管20は、第1円形筒部21と、第1側壁部23と、を有する管状部材である。
【0018】
第1円形筒部21は、内側に断面が円形状の第1円形管路22を有する筒状部分である。第1円形管路22は、外周が第1円形筒部21によって囲まれた空間であり、断面が円形状の管路となる。第1円形筒部21は、第2円形筒部41側の端部から第1円形筒部21の径方向外側に延在した第1フランジ部24を有する。第1フランジ部24は、接合部60を介して誘電体板30と接合している。第1円形筒部21は、第1フランジ部24の外周端部から全周に渡って第2円形筒部41側に突出した装着部25を有する。装着部25は、第2円形筒部41の第2フランジ部44の外周面に装着可能である。装着部25は、誘電体板30の径方向の移動を規制する。装着部25は、接合部60を介して第2フランジ部44及び誘電体板30と接合している。
【0019】
第1側壁部23は、第1円形筒部21の軸方向(中心軸80に沿った方向)の外側(第1矩形導波管10側)を塞ぐように第1円形筒部21に接続されている。第1側壁部23は、第1ダイヤフラム26を有する。
【0020】
第1ダイヤフラム26は、少なくとも第1円形導波管20の軸方向(中心軸80に沿った方向)の長さ(第1円形管路22の軸方向の長さL’)を変えられるように塑性変形を許容する塑性変形許容部である。第1ダイヤフラム26は、第1側壁部23の少なくとも一部にて全周に渡って第1円形導波管20の軸方向の外側(第1矩形導波管10側)に膨んでいる。第1ダイヤフラム26は、第1円形導波管20の内側と外側との気圧差が生じても第1円形導波管20の軸方向の長さを維持するように構成されている。第1ダイヤフラム26によって囲まれた内側の空間は、第1環状膨らみ部28となる。第1環状膨らみ部28は、第1円形管路22と接続されている。第1ダイヤフラム26は、第1側壁部23における第1側壁部23と第1円形筒部21との接続部分の近傍(外周寄りの位置)に配設されていることが好ましい。なお、第1ダイヤフラム26は外周寄りの位置に限るものではない。第1ダイヤフラム26は、塑性変形を許容するために、第1ダイヤフラム26の厚さを第1円形導波管20における第1ダイヤフラム26以外の部分の厚さよりも薄くすることが好ましい。
【0021】
第2円形導波管40は、第2円形筒部41と、第2側壁部43と、を有する管状部材である。
【0022】
第2円形筒部41は、内側に断面が円形状の第2円形管路42を有する筒状部分である。第2円形管路42は、外周が第2円形筒部41によって囲まれた空間であり、断面が円形状の管路となる。第2円形筒部41は、第2円形筒部41側の端部から第2円形筒部41の径方向外側に延在した第2フランジ部44を有する。第2フランジ部44は、外周面にて装着部25の内側に装着可能である。第2フランジ部44は、接合部60を介して装着部25及び誘電体板30と接合している。
【0023】
第2側壁部43は、第2円形筒部41の軸方向(中心軸80に沿った方向)の外側(第2矩形導波管50側)を塞ぐように第2円形筒部41に接続されている。第2側壁部43は、第2ダイヤフラム46を有する。
【0024】
第2ダイヤフラム46は、少なくとも第2円形導波管40の軸方向(中心軸80に沿った方向)の長さ(第2円形管路42の軸方向の長さL)を変えられるように塑性変形を許容する塑性変形許容部である。第2ダイヤフラム46は、第2側壁部43の少なくとも一部にて全周に渡って第2円形導波管40の軸方向の外側(第2矩形導波管50側)に膨んでいる。第2ダイヤフラム46は、第2円形導波管40の内側と外側との気圧差が生じても第2円形導波管40の軸方向の長さを維持するように構成されている。第2ダイヤフラム46によって囲まれた内側の空間は、第2環状膨らみ部48となる。第2環状膨らみ部48は、第2円形管路42と接続されている。第2ダイヤフラム46は、第2側壁部43における第2側壁部43と第2円形筒部41との接続部分の近傍(外周寄りの位置)に配設されていることが好ましい。なお、第2ダイヤフラム46は外周寄りの位置に限るものではない。第2ダイヤフラム46は、塑性変形を許容するために、第2ダイヤフラム46の厚さを第1円形導波管20における第2ダイヤフラム46以外の部分の厚さよりも薄くすることが好ましい。第2ダイヤフラム46は、第2側壁部43の内壁面を軸方向にシフト量Sだけ移動させると、第2ダイヤフラム46の外面の軸方向の頂点がS/2だけ移動するように設定することができる。この点は、第1ダイヤフラム26についても同様である。
【0025】
なお、実施形態1に係る高周波窓100では、第1ダイヤフラム26及び第2ダイヤフラム46を設けているが、第1ダイヤフラム26及び第2ダイヤフラム46のどちらか一方だけ設けるようにしてもよい。
【0026】
第1矩形導波管10は、断面が矩形状の第1矩形管路11を有する管状部材である。第1矩形導波管10は、第1矩形管路11が第1円形管路22に通ずるように第1側壁部23に接続されている。第1矩形導波管10は、第1円形導波管20と一体的に構成されてもよい。
【0027】
第2矩形導波管50は、断面が矩形状の第2矩形管路51を有する管状部材である。第2矩形導波管50は、第2矩形管路51が第2円形管路42に通ずるように第2側壁部43に接続されている。第2矩形導波管50は、第2円形導波管40と一体的に構成されてもよい。
【0028】
第1円形導波管20、第2円形導波管40、第1矩形導波管10、及び、第2矩形導波管50の材料には、例えば、銅、ニッケル等の金属、丹銅、黄銅、リン青銅、アルミニウム青銅、洋白、白銅等の銅合金、FeNiCo合金、コバール、モネル、ハステロイ、ニクロム、インコネル、パーマロイ、コンスタンタン、ジュラニッケル、アルメル、クロメル、インバー、エリンバー等のニッケル合金を用いることができる
【0029】
矩形導波管10、50の寸法は、EIAJ(Electronic Industries Association of Japan/日本電子機械工業会)規格に従って、使用する周波数帯域に応じて設定される。例えば、電磁波の周波数が0.3THzである場合、矩形導波管10、50の寸法は、周波数帯域217〜330GHzに適用されるEIAJ規格TT−3006のEIAJ形名WRI−2600の内径呼寸法0.864mm×0.432に従う。なお、円形導波管20、40の寸法は、調整対象であるため、規格になっていない。円形導波管20、40及び矩形導波管10、50の壁の厚さは0.1mm未満とすることができる。
【0030】
誘電体板30は、円板状に構成された誘電体よりなる部材である。誘電体板30は、第1円形管路22の気圧(例えば、真空)と第2円形管路42の気圧(例えば、大気圧)とを仕切る役割がある。また、誘電体板30は、電磁波の多重反射を防止する役割もある。さらに、誘電体板30は、所定周波数の電磁波を選択的に通す役割もある。誘電体板30は、誘電体板30の軸方向両側から第1フランジ部24と第2フランジ部44との間に挟み込まれることによって第1円形筒部21及び第2円形筒部41に気密に保持される。誘電体板30は、接合部60を介して第1フランジ部24及び第2フランジ部44並びに装着部25と接合している。誘電体板30の材料には、例えば、サファイア、クォーツ等を用いることができ、導波管10、20、40、50に用いられる材料の熱膨張率に近い熱膨張率の誘電体材料を用いることが好ましい。なお、誘電体板30の寸法は、調整対象であるため、規格になっていない。
【0031】
接合部60は、第1フランジ部24と誘電体板30との間の接合面、装着部25と誘電体板30との間の接合面、第2フランジ部44と誘電体板30との間の接合面、及び、装着部25と第2フランジ部44との間の接合面に介在する部分である。接合部60は、各接合面を密着して接合させる。接合部60は、例えば、メタライズ部、溶接部、ろう付け部(例えば、融点が800〜1000℃のろう材)等とすることができる。各接合面の接合部60は、全て同じ手法の接合部60でもよく、それぞれ別々の手法の接合部60でもよい。
【0032】
以上のような高周波窓100は、円形導波管20、40にダイヤフラム26、46を形成する以外は、従来の方法で組み立てることができる。その後、第1矩形導波管10側の空間(第1矩形管路11、第1円形管路22;例えば、真空)及び第2矩形導波管50側の空間(第2矩形管路51、第2円形管路42;例えば、大気圧)をそれぞれ所定圧力とし、かつ、第2矩形導波管50から第1矩形導波管10へ所定周波数の電磁波を送信し、設計値どおりの共振周波数が得られるか否かを検査する。部品寸法精度、組み立て精度、誘電率のバラツキ等により、設計値どおりの共振周波数が得られない場合は、S11の値が極小となるように、円形導波管20、40の軸方向(中心軸80に沿った方向)の長さ(円形管路22、42の軸方向の長さL、L’)を調節する。円形導波管20、40の軸方向の長さを調節する際、ダイヤフラム26、46が塑性変形される。
【0033】
実施形態1によれば、円形導波管20、40にダイヤフラム26、46を設けることで、部品寸法精度、組み立て精度、誘電率のバラつき等により設計値とのずれが生じても、ダイヤフラム26、46を塑性変形させて円形導波管20、40の軸方向の長さを調節することができるので、組立後においても設計値とのずれを修正することができ、高周波窓100としての最適な特性が得られる。また、高周波窓100をマイクロ波管に組み込んだ後において、真空気密を保ったままでも、帯域(共振周波数、S11)を調整することができる。したがって、実施形態1によれば、部品寸法精度、組み立て精度、誘電率のバラつき等があっても、ダイヤフラム26、46により、所望の帯域を得ることができるため、高周波窓100を再作製する必要がなくなり、コストダウンにつながる。また、実施形態1によれば、ダイヤフラム26、46は、円形導波管20、40の内側と外側との気圧差が生じても円形導波管20、40の軸方向の長さを維持するように構成されているので、構造による悪影響を最小限にすることができる。
【0034】
[実施例1、2]
実施例1、2に係る高周波窓の3次元電磁界解析について図面を用いて説明する。
図3は、実施例1に係る高周波窓の(A)電磁界解析用の構成を模式的に示した斜視図、(B)S11とシフト量S及び周波数との関係を示したグラフである。
図4は、実施例2に係る高周波窓の(A)電磁界解析用の構成を模式的に示した斜視図、(B)S11とシフト量S及び周波数との関係を示したグラフである。
【0035】
実施例1、2に係る高周波窓の構成については、実施形態1(
図1、
図2参照)に係る高周波窓の基本構成と同様であるが、第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当;誘電体板30の影にある)の大きさ(寸法)が異なり、その他の構成部(第1矩形管路11、第1円形管路22、誘電体板30、誘電体板30の影にある第2円形管路(
図1の42に相当)、第2矩形管路51)の寸法は同じである。なお、
図3(A)及び
図4(B)では、導波管(
図1の10、20、40、50に相当するもの)の壁面(例えば、Cu等の金属)を省略している。
【0036】
各構成部の寸法について、共振周波数が250GHz程度になるように設定した。つまり、第1矩形管路11の断面寸法は縦0.432mm×横0.864mm、第1円形管路22の寸法は直径1.3mm×厚さ0.2mm〜0.3mm(中央値0.25mm)、誘電体板30の寸法は直径2mm×厚さ0.1mm、第2円形管路(
図1の42に相当)の寸法は直径1.3mm×厚さ0.2mm〜0.3mm(中央値0.25mm)、第2矩形管路51の断面寸法は縦0.432mm×横0.864mmに設定した。
図3(A)の第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当)の寸法は、外径1.3mm、内径1.25mm、断面直径0.05mmに設定した。
図4(A)の第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当)の寸法は、外径1.3mm、内径1.2mm、Z方向の突出量0.1mm(
図3(A)の第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当)の断面直径の2倍)に設定した。
【0037】
高周波窓の3次元電磁界解析には、CST社製MICROWAVE−STUDIOを用いた。実施例1に係る高周波窓の3次元電磁界解析結果は、
図3(B)のとおりであり、実施例2に係る高周波窓の3次元電磁界解析結果は、
図4(B)のとおりである。
図3(B)及び
図4(B)では、横軸が周波数、縦軸がS11(リターンロス)のゲインの値を示している。なお、第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当)は、
図1と同様に、第1円形管路22、第2円形管路(
図1の42に相当)の軸方向の長さ(
図1のL、L’に相当)が軸方向にシフト量S変化した場合、第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当)の頂点は軸方向にS/2変化するとして計算している。なお、シフト量Sの変化のさせ方は、第1円形管路及び第2円形管路の両方を変化させている。
【0038】
図3(B)を参照すると、実施例1ではシフト量Sが変化するにつれて共振周波数(グラフでゲインが極小になっている部分の周波数)が変化している。S11に関しては、それほど変化していないが、最適な値を共振周波数との組み合わせで選択することができる。
【0039】
図4(B)を参照すると、実施例2ではシフト量Sが変化するにつれて共振周波数が変化していることがわかる。S11に関しては、それほど変化していないが、最適な値を共振周波数との組み合わせで選択することができる。また、実施例2では、実施例1の第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当)の断面直径の2倍にしているが、特性の傾向に大きな差は認められず、第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当)の大きさによる設計値のずれは小さく、第1環状膨らみ部28、第2環状膨らみ部(
図1の48に相当)の設計が厳密でなくともよいことがわかる。この点も、実施形態1の構成のメリットといえる。
【0040】
[実施形態2]
実施形態2に係る高周波窓について図面を用いて説明する。
図5は、実施形態2に係る高周波窓の構成を模式的に示した軸方向に沿った断面図である。
図6は、実施形態2に係る高周波窓の構成を模式的に示した(A)
図5のX−X´間の断面図、(B)
図5のY−Y´間の断面図、(C)
図5のZ−Z´間の断面図である。
【0041】
実施形態2は、実施形態1の変形例であり、ダイヤフラム27、47を、側壁部23、43に設けるのをやめて、円形筒部21に設けたものである。
【0042】
第1ダイヤフラム27は、少なくとも第1円形導波管20の軸方向(中心軸80に沿った方向)の長さ(第1円形管路22の軸方向の長さL’)を変えられるように塑性変形を許容する塑性変形許容部である。第1ダイヤフラム27は、第1円形筒部21の少なくとも一部にて全周に渡って第1円形導波管20の径方向の外側に膨んでいる。第1ダイヤフラム27は、第1円形導波管20の内側と外側との気圧差が生じても第1円形導波管20の軸方向の長さを維持するように構成されている。第1ダイヤフラム27によって囲まれた内側の空間は、第1環状膨らみ部29となる。第1環状膨らみ部29は、第1円形管路22と接続されている。第1ダイヤフラム27は、第1円形筒部21における第1円形筒部21と第1側壁部23との接続部分の近傍(軸方向の第1矩形導波管10寄りの位置)に配設されていることが好ましい。なお、第1ダイヤフラム27は第1矩形導波管10寄りの位置に限るものではない。第1ダイヤフラム27は、塑性変形を許容するために、第1ダイヤフラム27の厚さを第1円形導波管20における第1ダイヤフラム27以外の部分の厚さよりも薄くすることが好ましい。
【0043】
第2ダイヤフラム47は、少なくとも第2円形導波管40の軸方向(中心軸80に沿った方向)の長さ(第2円形管路42の軸方向の長さL)を変えられるように塑性変形を許容する塑性変形許容部である。第2ダイヤフラム47は、第2円形筒部41の少なくとも一部にて全周に渡って第2円形導波管40の径方向の外側に膨んでいる。第2ダイヤフラム47は、第2円形導波管40の内側と外側との気圧差が生じても第2円形導波管40の軸方向の長さを維持するように構成されている。第2ダイヤフラム47によって囲まれた内側の空間は、第2環状膨らみ部49となる。第2環状膨らみ部49は、第2円形管路42と接続されている。第2ダイヤフラム47は、第2円形筒部41における第2円形筒部41と第2側壁部43との接続部分の近傍(軸方向の第2矩形導波管50寄りの位置)に配設されていることが好ましい。なお、第2ダイヤフラム47は第2矩形導波管50寄りの位置に限るものではない。第2ダイヤフラム47は、塑性変形を許容するために、第2ダイヤフラム47の厚さを第1円形導波管20における第2ダイヤフラム47以外の部分の厚さよりも薄くすることが好ましい。第2ダイヤフラム47は、第2側壁部43の内壁面を軸方向にシフト量Sだけ移動させると、第2ダイヤフラム47の軸方向の外側(第2矩形導波管50側)の端部がSだけ移動するように設定することができる。この点は、第1ダイヤフラム27についても同様である。
【0044】
その他の構成、製造方法については、実施形態1と同様である。
【0045】
実施形態2によれば、実施形態1と同様に、円形導波管20、40にダイヤフラム27、47を設けることで、部品寸法精度や組み立て精度、誘電率のバラつき等があっても、ダイヤフラム27、47により、所望の帯域を得ることができるため、再作製する必要がなくなり、コストダウンにつながる。また、実施形態2によれば、円形導波管20、40の軸方向の矩形導波管10、50側にスペースがない場合に適用することができる。
【0046】
[実施例3、4]
実施例3、4に係る高周波窓の3次元電磁界解析について図面を用いて説明する。
図7は、実施例3に係る高周波窓の(A)電磁界解析用の構成を模式的に示した斜視図、(B)S11とシフト量S及び周波数との関係を示したグラフである。
図8は、実施例4に係る高周波窓の(A)電磁界解析用の構成を模式的に示した斜視図、(B)S11とシフト量S及び周波数との関係を示したグラフである。
【0047】
実施例3、4に係る高周波窓の構成については、実施形態2(
図5、
図6参照)に係る高周波窓の基本構成と同様であるが、第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49の大きさ(寸法)が異なり、その他の構成部(第1矩形管路11、第1円形管路22、誘電体板30、第2円形管路42、第2矩形管路51)の寸法は同じである。なお、
図7(A)及び
図8(B)では、導波管(
図5の10、20、40、50に相当するもの)の壁面(例えば、Cu等の金属)を省略している。
【0048】
各構成部の寸法について、共振周波数が200GHz程度になるように設定した。つまり、第1矩形管路11の断面寸法は縦0.432mm×横0.864mm、第1円形管路22の寸法は直径1mm×厚さ0.085mm〜0.185mm(中央値0.135mm)、誘電体板30の寸法は径2mm×厚さ0.1mm、第2円形管路42の寸法は径1mm×厚さ0.085mm〜0.185mm(中央値0.135mm)、第2矩形管路51の断面寸法は縦0.432mm×横0.864mmに設定した。
図7(A)の第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49の寸法は、外径1mm、内径0.95mm、断面直径0.05mmに設定した。
図8(A)の第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49の寸法は、外径1mm、内径0.9mm、断面直径0.1mm(
図7(A)の第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49の断面直径の2倍)になるように設定した。
【0049】
高周波窓の3次元電磁界解析には、CST社製MICROWAVE−STUDIOを用いた。実施例3に係る高周波窓の3次元電磁界解析結果は、
図7(B)のとおりであり、実施例4に係る高周波窓の3次元電磁界解析結果は、
図8(B)のとおりである。
図7(B)及び
図8(B)では、横軸が周波数、縦軸がS11(リターンロス)のゲインの値を示している。なお、第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49は、
図5と同様に、第1円形管路22、第2円形管路42の軸方向の長さ(
図5のL、L’に相当)が軸方向にシフト量Sだけ変化した場合、第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49の軸方向外側の端部は軸方向にSだけ変化するとして計算している。なお、シフト量Sの変化のさせ方は、第1円形管路及び第2円形管路の両方を変化させている。
【0050】
図7(B)を参照すると、実施例3ではシフト量Sが変化するにつれて共振周波数(グラフでゲインが極小になっている部分の周波数)が変化している。S11に関しては、それほど変化していないが、最適な値を共振周波数との組み合わせで選択することができる。
【0051】
図8(B)を参照すると、実施例4ではシフト量Sが変化するにつれて共振周波数が変化していることがわかる。S11に関しては、それほど変化していないが、最適な値を共振周波数との組み合わせで選択することができる。また、実施例4では、実施例3と比べて第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49の断面直径を2倍にしているが、特性の傾向に大きな差は認められず、第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49の大きさによる設計値のずれは小さく、第1環状膨らみ部29、第2環状膨らみ部49の設計が厳密でなくともよいことがわかる。この点も、実施形態2の構成のメリットといえる。
【0052】
[実施形態3]
実施形態3に係る高周波窓について図面を用いて説明する。
図9は、実施形態3に係る高周波窓の構成を模式的に示した軸方向に沿った断面図である。
【0053】
実施形態3は、実施形態1の変形例であり、フランジ部(
図1の24、44)及び装着部(
図1の25)をやめて、誘電体板30が円形筒部71の内周面にて接合部60を介して気密に保持されるようにしたものである。ダイヤフラム76a、76bは、実施形態1と同様に、側壁部73a、73bに形成されている。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0054】
実施形態3によれば、実施形態1と同様に、円形導波管70にダイヤフラム76a、76bを設けることで、部品寸法精度や組み立て精度、誘電率のバラつき等があっても、ダイヤフラム76a、76bにより、所望の帯域を得ることができるため、再作製する必要がなくなり、コストダウンにつながる。また、実施形態3によれば、円形導波管70の径方向外側にスペースがない場合に適用することができる。
【0055】
[実施形態4]
実施形態4に係る高周波窓について図面を用いて説明する。
図10は、実施形態4に係る高周波窓の構成を模式的に示した軸方向に沿った断面図である。
【0056】
実施形態4は、実施形態2の変形例であり、フランジ部(
図5の24、44)及び装着部(
図5の25)をやめて、誘電体板30が円形筒部71の内周面にて接合部60を介して気密に保持されるようにしたものである。ダイヤフラム77a、77bは、実施形態2と同様に、円形筒部71に形成されている。その他の構成は、実施形態2と同様である。
【0057】
実施形態4によれば、実施形態2と同様に、円形導波管70にダイヤフラム77a、77bを設けることで、部品寸法精度や組み立て精度、誘電率のバラつき等があっても、ダイヤフラム77a、77bにより、所望の帯域を得ることができるため、再作製する必要がなくなり、コストダウンにつながる。また、実施形態4によれば、円形導波管70の軸方向の矩形導波管10、50側にスペースがない場合に適用することができる。
【0058】
[実施形態5]
実施形態5に係る高周波窓について図面を用いて説明する。
図11は、実施形態5に係る高周波窓の構成を模式的に示した軸方向に沿った断面図である。
図12は、実施形態5に係る高周波窓の構成を模式的に示した(A)
図11のX−X´間の断面図、(B)
図11のY−Y´間の断面図、(C)
図11のZ−Z´間の断面図である。
【0059】
高周波窓100は、円形導波管70と、第1矩形導波管10と、第2矩形導波管50と、誘電体板30と、を備える。
【0060】
円形導波管70は、断面が円形状の円形管路72a、72bを有する円形筒部71と、円形筒部71の軸方向(中心軸80に沿った方向)両側に側壁部73a、73bを有する管状部材である。円形導波管70は、少なくとも円形導波管70の軸方向(中心軸80に沿った方向)の長さを変えられるように塑性変形を許容する塑性変形許容部75a、75bを有する。
【0061】
第1矩形導波管10は、断面が矩形状の第1矩形管路11を有するとともに、第1矩形管路11が円形管路72aに通ずるように側壁部73aに接続された管状部材である。
【0062】
第2矩形導波管50は、断面が矩形状の第2矩形管路51を有するとともに、第2矩形管路51が円形管路72bに通ずるように他方の側壁部73bに接続された管状部材である。
【0063】
誘電体板30は、板状に構成されるとともに、円形管路72a、72b内に配され、かつ、円形筒部71に気密に保持された誘電体よりなる部材である。
【0064】
以上のような高周波窓100は、円形導波管70に塑性変形許容部75a、75bを形成する以外は、従来の方法で組み立てることができる。その後、第1矩形導波管10側の空間(第1矩形管路11、円形管路72a)及び第2矩形導波管50側の空間(第2矩形管路51、円形管路72b)をそれぞれ所定圧力とし、かつ、第2矩形導波管50から第1矩形導波管10へ所定周波数の電磁波を送信し、設計値どおりの共振周波数が得られるか否かを検査する。部品寸法精度、組み立て精度、誘電率のバラツキ等により、設計値どおりの共振周波数が得られない場合は、S11の値が極小となるように、円形導波管70の軸方向(中心軸80に沿った方向)の長さを調節する。円形導波管70の軸方向の長さを調節する際、塑性変形許容部75a、75bが塑性変形される。
【0065】
実施形態5によれば、円形導波管70に塑性変形許容部75a、75bを設けることで、部品寸法精度、組み立て精度、誘電率のバラつき等により設計値とのずれが生じても、塑性変形許容部75a、75bを塑性変形させて円形導波管70の軸方向の長さを調節することができるので、組立後においても設計値とのずれを修正することができる。
【0066】
(付記)
本発明では、前記第1の視点に係る高周波窓の形態が可能である。
【0067】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記塑性変形許容部は、前記円形導波管の内側と外側との気圧差が生じても前記円形導波管の軸方向の長さを維持するように構成される。
【0068】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記塑性変形許容部は、前記円形筒部の少なくとも一部にて全周に渡って前記円形導波管の径方向外側に膨んだダイヤフラムである。
【0069】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記ダイヤフラムは、前記円形筒部における前記円形筒部と前記側壁部との接続部分の近傍に配設されている。
【0070】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記塑性変形許容部は、前記側壁部の一方又は両方の少なくとも一部にて全周に渡って前記円形導波管の軸方向外側に膨んだダイヤフラムである。
【0071】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記ダイヤフラムは、前記側壁部における前記側壁部と前記円形筒部との接続部分の近傍に配設されている。
【0072】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記ダイヤフラムの厚さは、前記円形導波管における前記ダイヤフラム以外の部分の厚さよりも薄い。
【0073】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記円形導波管は、断面が円形状の第1円形管路を有する第1円形筒部と、前記第1円形筒部の軸方向外側に第1側壁部を有する第1円形導波管と、断面が円形状の第2円形管路を有する第2円形筒部と、前記第2円形筒部の軸方向外側に第2側壁部を有する第2円形導波管と、を備え、前記誘電体板は、前記誘電体板の軸方向両側から前記第1円形筒部と前記第2円形筒部とによって挟み込まれることによって前記第1円形導波管及び前記第2円形導波管に気密に保持され、前記第1円形管路及び前記第2円形管路は、前記円形管路に対応し、前記第1円形筒部及び前記第2円形筒部は、前記円形筒部に対応し、前記第1側壁部及び前記第2側壁部は、前記側壁部に対応する。
【0074】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記第1円形筒部は、前記第2円形筒部側の端部から前記第1円形筒部の径方向外側に延在した第1フランジ部を有し、前記第2円形筒部は、前記第1円形筒部側の端部から前記第2円形筒部の径方向外側に延在した第2フランジ部を有し、前記誘電体板は、前記誘電体板の軸方向両側から前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とによって挟み込まれることによって前記第1円形導波管及び前記第2円形導波管に気密に保持される。
【0075】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記第1円形筒部は、前記第1フランジ部の外周端部から全周に渡って前記第2円形筒部側に突出した装着部を有し、前記装着部は、前記第2フランジ部の外周面に装着可能である。
【0076】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記装着部は、前記誘電体板の径方向の移動を規制する。
【0077】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記装着部は、接合部を介して前記第2フランジ部及び前記誘電体板と接合し、前記誘電体板は、接合部を介して前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部と接合する。
【0078】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記誘電体板は、接合部を介して前記円形筒部の内周面と接合する。
【0079】
前記第1の視点に係る高周波窓において、前記接合部は、メタライズ部、溶接部及びろう付け部のいずれかである。
【0080】
本発明では、前記第2の視点に係る高周波窓の製造方法の形態が可能である。
【0081】
なお、上記の特許文献の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(必要により不選択)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、本願に記載の数値及び数値範囲については、明記がなくともその任意の中間値、下位数値、及び、小範囲が記載されているものとみなされる。