(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750805
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】統合挟み込み防止システムを有する自動車用のシーリング
(51)【国際特許分類】
B60J 10/76 20160101AFI20200824BHJP
B60J 10/16 20160101ALI20200824BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20200824BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
B60J10/76
B60J10/16
B60J1/00 C
B60J1/17 A
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-227272(P2017-227272)
(22)【出願日】2017年11月27日
(65)【公開番号】特開2018-177192(P2018-177192A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】17167477.3
(32)【優先日】2017年4月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513318515
【氏名又は名称】シー.アール.エフ. ソシエタ コンソルティレ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェカ アントニーノ ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】チアペロ パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ブロカニ グラジアノ
(72)【発明者】
【氏名】ランバティーニ ヴィトー ガイド
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−099765(JP,A)
【文献】
特表2013−546179(JP,A)
【文献】
特開2000−327815(JP,A)
【文献】
特開2008−088768(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0267914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
B60J 5/00
B60J 10/00−10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン系ナノフィラーで補充されたエラストマーのポリマー材料から形成される少なくとも1つの本体を備える、自動車窓または自動車の他の可動部分用のシーリングであって、前記本体は、
自動車の可動部分の動作中に無関係物との干渉を検出することが可能な1または複数の電気変形センサーを画定すべく、カーボン系ナノフィラーで補充された前記ポリマー材料が、レーザ照射により局在的にピエゾ抵抗性にされている1または複数のピエゾ抵抗性エリアを有する外面と、
前記シーリングと関連付けられる電極との、前記ピエゾ抵抗性エリアの1または複数の電気接続ラインを画定すべく、カーボン系ナノフィラーで補充されている前記ポリマー材料がレーザ照射により局在的に導電性にされている1または複数の導電性パスと
を含む、シーリング。
【請求項2】
前記自動車の前記可動部分は、自動車のサイドドアの、垂直可動式の電動窓である、請求項1に記載のシーリング。
【請求項3】
シーリングの本体は溝形であり、中央部分と、前記自動車の外部を向くように意図される外翼部と、前記自動車の内部を向くように意図され、前記外翼部よりさらに下方に伸長する内翼部とを有し、
前記シーリングは、少なくとも前記内翼部の下側端縁部に、前記シーリングの長手方向に沿って分布される前記ピエゾ抵抗性エリアの複数を提供する、
請求項2に記載のシーリング。
【請求項4】
互いに直列に電気的に接続される前記ピエゾ抵抗性エリアの複数を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシーリング。
【請求項5】
互いに並列に電気的に接続される前記ピエゾ抵抗性エリアの複数を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシーリング。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のシーリングを備える自動車の電動式ドアまたはハッチバック。
【請求項7】
自動車であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのシーリングと、前記ピエゾ抵抗性エリアを含む1または複数の導電性パスの電気抵抗を監視し、測定された前記電気抵抗が予め決定された値から乖離した場合に警報信号を発生する電子制御ユニットとを備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車窓または自動車の他の可動部分用の電動式のシーリングおよび/または案内シールに関する。
【背景技術】
【0002】
電動式の可動部分の動作中の安全性は、ユーザまたは他の無関係物の望ましくない挟み込みを回避すべく、自動車製造業者により特に考えられている問題である。今まで、例えば、電動式の自動車窓の場合、システムは、自動車窓の電動式モータの電流吸収に基づき使用され、またはシステムは、自動車窓の案内シール上の導電性の電気接点に基づき使用される。しかしながら、現在の市場における解決策は、挟み込みの発生の誤警報を引き起こすことがあるから、信頼性に乏しい、および/または比較的複雑で高価である。
【0003】
同一の出願人は、文献WO2012/055934A1において、レーザ照射によって非導電性ポリマー基材に導電性および/またはピエゾ抵抗性トレースを製造する方法を提案しており、上記基材は、合成ポリマー材料であり、熱分解後に非炭化ポリマーを有する母材と、カーボンナノチューブまたは窒化炭素またはカーボンナノファイバーを含む分散相とを備える。
【0004】
本発明は、挟み込み防止システムを統合したシールを製造するためのこの方法の有利な用途を見いだすという要求に基礎を置き、シールは、例えば、自動車のサンルーフ、スライド式のサイドドアまたは後部ドア等の電動式の動作システムを有する自動車窓または自動車の他のタイプの可動部分用である。 [発明の目的]
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、文献WO2012/055934A1の出願人により提案される方法により提供される可能性を有利な方法で利用する自動車窓または自動車の他の可動部分用のシーリングおよび/または案内シールを作り出すことである。
【0006】
本発明の別の目的は、一方で簡易かつ経済的に構成され、他方で可動部分の動作中に無関係物を挟み込んだ場合、極めて信頼できる特徴を有するコンポーネントによって前述の目的を達成するというものである。
【発明の概要】
【0007】
前述の目的を達成することに鑑みて、本発明は、カーボン系ナノフィラーで補充されたエラストマーのポリマー材料から形成される少なくとも1つの本体を備える点で特徴付けられる、自動車窓または自動車の他の可動部分用のシーリングおよび/または案内シールを提供することを目的とし、上記本体は、
自動車の上記可動部分の動作中に無関係物との干渉を検出することが可能な1または複数の電気変形センサーを画定すべく、カーボン系ナノフィラーで補充されたポリマー材料が、レーザ照射により局在的にピエゾ抵抗性にされている1または複数のピエゾ抵抗性エリアを有する外面と、
上記シールと関連付けられる電極を有する、上記ピエゾ抵抗性エリアの1または複数の電気接続ラインを画定すべく、カーボン系ナノフィラーで補充された上記ポリマー材料がレーザ照射により局在的に導電性にされている1または複数の導電性パスと
を含む。
【0008】
これらの特徴のおかげで、本発明によるシールは、追加のセンサを使用する必要なく、または挟み込みの誤警報に敏感なロジック回路に頼ることなく、シールそれ自体内に挟み込み防止機能を統合する。
【0009】
本発明の好適な実施形態において、自動車の可動部は、自動車のサイドドアの、垂直に可動である、電動式の自動車窓である。
【0010】
好ましくは、シールの本体は、溝形であり、中央部分と、自動車の外部を向くように意図される外翼部と、自動車の内部を向くように意図され、上記外翼部よりさらに下方に伸長する内翼部とを有する。シールは、シールの長手方向に沿って、少なくとも上記内翼部の下側端縁部に分布される上記ピエゾ抵抗性エリアの複数を提供する。
【0011】
本発明は、自動車も対象とし、上記に示されるタイプのシールと、前述のピエゾ抵抗性エリアを含む1または複数の導電性パスの電気抵抗を監視し、測定された電気抵抗が予め決定された値から乖離した場合に警報信号を発生するように構成される電子制御ユニットとを含む。
【0012】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付される図面は、単に非限定な例として提供される。
【
図1】本発明によるシールを有する自動車のサイドドアの概略側面図である。
【
図5】本発明によるシールの製造方法の段階を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付される図面において、参照番号1は、自動車の可動部のための、本発明によるシーリングおよび/または案内シールを示す。図面に示される実施形態において、シール1は、自動車のサイドドア7の垂直に可動である、電動式の自動車窓Cと関連付けられる(
図1、6および7)。しかしながら、この具体的な実施形態は、本発明によるシールが、例えば、開閉式のサンルーフ、スライドサイドドアまたは後部ブーツ等の電動式動作システムを有する自動車の他のタイプの可動部分とも関連付けられ得るので、決して限定的に考えられるべきではない。
【0015】
本発明の基本的な特徴によれば、シール1は、同一の出願人による文献WO2012/055934A1の開示による、カーボン系ナノフィラーが補充されたポリマー材料から成る機能化部分を有するエラストマーのポリマー材料から形成される本体2(
図4)を有する。
【0016】
この文献の既知の方法において、ポリマー系の材料は、例えば、カーボンナノチューブまたは窒化炭素またはカーボンナノファイバー等のカーボン系ナノフィラーが、材料を導電性にするには不十分な量において補充される。本発明によるシールの製造方法の段階を示す図面、特に
図5を参照して示される実施形態において、シール1の長手方向の伸長部に沿った外面3は、WO2012/055934A1の既知の方法に従う。この方法は、1または複数のパス6に沿ってシール1の外面3を導電性にすべく、シール1のポリマー材料上にレーザヘッドHが発するレーザビームLを向け、そこで、レーザビームが材料の炭化を引き起こすことを想定する。
【0017】
図5は、2つの直交方向X,Yに従って移動可能であり、さらに1つの平面または2つの直交平面においてレーザビームLを旋回するための手段を備えるレーザヘッドHを概略的に示す。
図4および
図5の概略的に示される実施形態は、単に例示として提供され、代替的に、シール1がレーザヘッドHに対して移動することを想定することが可能であり、またはシール1およびレーザヘッドHの動作の組み合わせを想定することが可能である。ベース材料、ナノフィラーのタイプ、使用可能なレーザのタイプ、レーザヘッドHを移動するための手段に関連した詳細は、より簡潔かつ明確にするためにここで図示されない。なぜなら、それらの性質により選択されるそのような詳細は、本発明の範囲に含まれず、文献WO2012/055934A1に含まれる開示に従って、任意の既知の方法で達成可能だからである。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、シール1の外面3上のレーザ照射は、導電性パス6に加えて、導電性ライン6に接続される複数のピエゾ抵抗性エリア4(
図4および
図5)を形成するようにして実行される。
図5に示される実施形態において、ピエゾ抵抗性エリア4は、互いに直列に電気的に接続されるが、代替的に互いに並列にも接続され得る。ピエゾ抵抗性エリア4および導電性パス6を備えるセンサー化された面3はまた、各々の端部に電極9付きの金属端子を提供する(
図4)。シール1の面3に沿って配置されるピエゾ抵抗性エリア4は、シール1の外面3上に局在的な圧力を及ぼすことにより作動可能となる1または複数の電気変形センサーを画定する。
【0019】
図面に示される、特に
図2および
図3の断面図に示される実施形態を参照すると、シールの本体2は、溝形である。実際に、本体2は、中央部分20、自動車の外部を向くように意図される外翼部21および自動車の内部を向くように意図される内翼部22を提供する。内翼部22は、外翼部21に対して下方にさらに伸長し、さらにまた、シール1は、シール1のシーリング機能を向上するために構成される複数の中央翼部24を有する。この実施形態において、ピエゾ抵抗性エリア4を用いてセンサー化された外面3は、内翼部22の下側端縁部23に配置される。
【0020】
上述のピエゾ抵抗性エリア4を備えた面3のおかげで、本発明によるシール1は、自動車窓Cの動作中にシール1と自動車窓Cとの間で無関係物8の挟み込みを検出するための統合システムを有する(
図6、
図7)。
【0021】
挟み込み後にエリア4に及ぼされる圧力が、導電性パス6を介して端子9へ、かつ、これらから、本発明によるシールが取り付けられる自動車の電子制御ユニットE(
図4、6および7)へと送信される電気信号を発生する。
【0022】
電子制御ユニットEは、自動車窓Cの動作中に無関係物8の挟み込み(
図6および
図7)後に、測定される電気抵抗が予め決定された閾値から乖離した場合、警報信号を発生するようにプログラミングされ得る。
【0023】
上述の特徴のおかげで、本発明によるシールは、簡易かつ経済的に構成されると、同時に、シールが取り付けられる可動部分の動作中に無関係物を挟み込んだ場合に極めて信頼性の高い対象を作り出すことにより、文献WO2012/055934A1の出願人により提案される方法によって提供される可能性を有利に利用する。
【0024】
もちろん、本発明の原理を損なうことなく、構造の詳細および実施形態は、単に例として説明および図示された実施の形態に関して広く変更することができるが、本発明の範囲から逸脱しない。