【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、最初に指定したような、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するためのデバイスであって、このデバイスにより、チャンバの各区画が、懸濁液を保持するように設計され、懸濁液を充填又は放出するための少なくとも1つのポートを備える、デバイスによって満たされる。すなわち、チャンバの各区画は、少なくとも2つのポートを通じてチャンバの内外に移動可能な懸濁液のアリコートを受容及び保持することができ、各区画には、少なくとも1つのポートが設けられ、このポートを通じて、それぞれの区画を懸濁液で満たすことができ、及び/又はこのポートを通じて、この区画から懸濁液を除去することができる。この有利な構成により、チャンバの充填及びチャンバからの放出を同時に行うことが可能になり、それによって、懸濁液の変更に必要な時間が最小になり、このため、懸濁液の2つの後続の電気的処理間のタイムラグが最小になる。この最小化の結果として、大量、すなわち、1mlを越える量の場合の処理時間が大幅に加速される。本発明によるデバイスの別の利点は、懸濁液の繰返しの充填及び処理により、スケーリング可能なプロセスが可能になることである。例えば、チャンバが合計1mlの容量を有する場合、このチャンバの任意の複数容量を、迅速化された方式で容易に処理することができる。
【0012】
したがって、本発明によるデバイスは、フロースルーデバイスではなく、一種のプッシュプルメカニズムにより、チャンバの充填及びチャンバからの放出を同時に行うことを可能にするデバイスである。
【0013】
本発明の例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのポートがチャンバの一方の端部に配設され、少なくとも1つのさらなるポートがチャンバの他方の端部に配設される。チャンバの反対側同士の端部にポートを設けることによって、プッシュプルメカニズムを容易に確立することが可能になり、ここで、分離要素、したがって懸濁液は、チャンバの一方の端部における1つの区画への充填と、チャンバの反対側の端部における別の区画からの放出とを同時に行うように、チャンバの2つの端点間で動くことができる。さらに、そのような幾何学的配置によって、電気穿孔システム又は電気融合システムにおいて、本発明によるデバイスの最適な統合が可能になる。なぜなら、ポートは互いに分離されており、このためデバイスの異なる端部からアクセスすることができるためである。
【0014】
少なくとも2つのポートがチャンバの各端部に配設される実施形態では、一方のポートを、懸濁液を充填するための入口ポートとして用いることができる一方、他方のポートを、懸濁液を放出するための出口ポートとして用いることができる。
【0015】
死容積の最小化は、チャンバポート、特に、入口ポートの大きさを低減することによって達成することができる。小さな死容積を確保するためのさらなる又は代替的な手段は、チャンバ出口/入口ポートの近くで管のY結線を用いることとすることができる。
【0016】
さらに、デバイスの出口ポートに管を取り付けることによって、チャンバ内の圧力ピーク補償が可能になる。
【0017】
本発明の別の実施形態において、分離要素は、分離要素を操作及び/又は制御する少なくとも1つの調整要素に結合される。有利な実施形態では、調整要素はチャンバの外側に配設され、各区画が、本発明によるデバイスの機能に影響を及ぼし得る一切の干渉要素を欠くようにする。例えば、分離要素は、少なくとも部分的に調整要素によってチャンバ内で動かすことができる。
【0018】
調整要素は、例えば、分離要素と連動する回転可能な本体とすることができる。例えば、回転可能な本体は、回転運動を行うように分離要素を動かす、回転子状の要素とすることができる。そのような実施形態は、特に、チャンバが湾曲形状を有する場合に、分離要素の厳密な制御及び一定の運動を確保する。一方、本発明の代替的な実施形態では、調整要素、及びこのため分離要素は、別の方向、例えば線形方向における移動を行うことができる。
【0019】
分離要素は、ウォームギヤ、スパーギヤ、ベベルギヤ、ギヤロッド、ベルトドライブ及び角棒鋼からなる群から選択される構成要素を介して調整要素によって駆動することができる。一方、適切な場合、他のギヤメカニズム又はパワー伝達要素も用いることができる。
【0020】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、分離要素は、端点間の位置にある場合、チャンバの異なる区画の液体及び/又は気体を通さない分離を確保する封止部材である。例えば、分離要素は、可撓性及び/又は弾性材料を含むことができる。分離要素の弾性変形性に起因して、分離要素は、チャンバ内で圧力ピークを補償することがさらに可能である。分離要素は、例えば、より良好な封止特性のために弾性材料を含む2成分プラスチック部品として設計することができる。分離要素は、チャンバを最適に清掃するためのシールリップをさらに含むことができる。このために、シールリップは、チャンバの内面及び/又は電極の表面及び/又は分離要素の他の構成要素に適した方向に向けることができる。本発明の有利な実施形態では、分離要素の起こり得る偏向又は起こり得る偏向の一部をバンプストッパによって制限し、分離要素の封止機能を維持することができる。
【0021】
1つの特定の実施形態では、分離要素は、少なくとも2つの離間された部品を備え、分離要素の離間された部品間の内部空間は、圧縮性材料を含む。そのような設計により、分離素子がチャンバ内の圧力変動の平衡をとる一種の干渉物としての役割を果たすように、有効な圧縮補償が提供される。圧縮性材料は、単に空気若しくは任意の他のガスとすることができるか、又は圧縮性の発泡材料若しくは細胞物質とすることができる。
【0022】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、チャンバは少なくとも2つのセグメントを含み、各セグメントは少なくとも1つの電極を含む。チャンバ内の電界の制御された生成を厳密に達成することができるように、各セグメントを個々に電気的にアドレス指定することができることがこの実施形態の利点である。例えば、アーク及び/又は懸濁液の望ましくない加熱を回避するために、電圧パルスは区画の異なるセグメントに順番に印加することができる。このために、各セグメントには、少なくとも1つの第1の電極及び少なくとも1つの第2の電極を設けることができ、第2の電極は少なくとも2つのセグメントの共通電極とすることができる。本発明の1つの実施形態では、チャンバの各区画は、少なくとも1つの電極を設けられた少なくとも1つのセグメントを含むことができる。
【0023】
本発明によるデバイスのチャンバは、互いに取り付けられた2つの構成要素の対応する凹部を備える。すなわち、本発明によるデバイスは、例えば、2つの構成要素を互いに取り付けることによって組み立てることができ、各構成要素は、他の構成要素の凹部に対応する凹部を備える。これらの2つの構成要素が互いに取り付けられている場合、これらの構成要素の位置合わせされた凹部がデバイスのチャンバを形成する。チャンバ内で電界を生成することができるように、各凹部に少なくとも1つの電極を設けることができる。電極のうちの少なくとも幾つかを分割することができる。例えば、(対称軸の一方の側にある)電極の半分を分割することができる一方、(対称軸の他方の側にある)電極の他方の半分は、対電極として用いることができる単一の非分割電極とすることができる。有利な実施形態では、2つの構成要素は同一であり、それによってコスト効率の良い生成が確保される。同一の構成要素は回転対称であるため、構成要素を互いに取り付けることによる容易な組み立てがこの場合に依然として可能である。
【0024】
1つの特定の実施形態では、チャンバは、少なくとも1つの基板部材であって、少なくとも実質的に絶縁材料から作製され、電極が取り付けられる少なくとも1つの表面を備える、少なくとも1つの基板部材をさらに備え、上記表面は、電極と少なくとも1つの電気接点との間で電気接続を提供するように設計された少なくとも1つの導電領域を備える。導電領域は、例えば、少なくとも1つの穴、表面の3次元特徴、又は平坦な領域とすることができる。穴は、少なくとも内面に導電材料を設けられた基板部材内の穿孔とすることができる。穴は、導電材料で少なくとも部分的に満たされ、電極から基板部材の同じ表面又は別の表面への導電性パスを提供することができる。3次元特徴は、窪み、バンプ、ライン、凹部、陥凹部、突起及びウェルからなる群から選択することができる。導電領域は、少なくとも1つの導電性パス、例えば、プリント回路基板(PCB)トラックを介して少なくとも1つの電気接点と電気的に結合することができる。電気接点は導電材料から作製され、少なくとも1つの電気接点、例えば、ばね接点によって接触されるように設計され、電源に対し直接の又は間接的な電気接続を提供する。そのような基板部材を用いることによって、本発明によるデバイスのコスト効率の良い生成が可能になる。なぜなら、電極及び対応する接点を含む部材は、時間を節減したワンステップ製造プロセスにおいて製造することができるためである。さらに、この実施形態では、電極設計は電気接点の場所と独立しており、最適化された電極設定を、最適な電気接続と組み合わせることができるようになっている。電極を接触させる手段は、電極の設計及び位置と独立して設計することができる。
【0025】
本発明の有利な実施形態では、基板部材はプリント回路基板(PCB)等とすることができる。PCBは、熱散逸を可能にするために懸濁処理を低速化することができるように、より良好な温度制御のための内部サーミスタ(熱抵抗器)を備えることができる。
【0026】
例えば、電極は、導電ポリマー、特に、導電材料をドープされたポリマーから作製することができる。ポリマーは、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイド若しくはこれらのポリマーの混合物からなるか、又は少なくともこれらに基づくことができる。ポリマーは、例えば、カーボンファイバ、グラファイト、すす、カーボンナノチューブ及び/又は生来から導電性を持つ合成材料をドープされることが可能である。代替的に、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、硫化ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリプロピレン等の生来から導電性を持つポリマーを電極材料として用いてもよい。
【0027】
適切な基板部材を提供するために、ポリマーは、基板部材の1つ又は複数の側に少なくとも2つの導電領域を設けられた、基板部材の一方の側の上に成形することができ、ポリマーは少なくとも1つの導電領域に対し少なくとも部分的に、密な物理的接触を形成し、導電領域は、平坦とするか、又は基板部材内の窪み若しくは基板部材を通る穴の表面とすることができ、ポリマーは、窪み内に又は穴を通って延在し、電極から、導電ポリマーで外側被覆されていない接点への導電性パスを形成する。
【0028】
本発明の1つの態様は、細胞、細胞小器官及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するためのデバイスであって、懸濁液を保持するための少なくとも1つのチャンバを備え、チャンバは少なくとも1つの電極を備え、チャンバは少なくとも1つの基板部材をさらに備え、この少なくとも1つの基板部材は、少なくとも実質的に絶縁材料から作製され、電極が取り付けられる表面を備え、この表面は、電極と少なくとも1つの電気接点との間で電気接続を提供するように設計された少なくとも1つの導電領域を備える、デバイスを提供することである。基板部材の表面上の導電領域は、少なくとも部分的に上側被覆されるか又は導電材料で満たされ、電極から接点への導電性パスを提供する、窪み又は穴とすることができる。このデバイスによれば、電極及び導電材料が同じ材料から作成されれば有益である場合がある。例えば、電極は、導電ポリマー、特に、上記で説明されたような、導電材料をドープされたポリマー又は生来から導電性を持つポリマーから作製することができる。ポリマーは、基板部材の一方の側の上に成形され、平坦な導電領域と密な物理的接触を形成することができるか、又は導電めっきを施された窪み内に若しくは導電めっきを施された穴を通って延在し、電極から接点までの導電性パスを形成することができる。本発明の有利な実施形態では、基板材料は、プリント回路基板(PCB)等とすることができる。
【0029】
PCBの上側被覆によって電極と接触することにより、電気接点のロケーションと独立して電極を設計することが可能になり、それによって、最適化された電極設計を、最適な電気接続と組み合わせることができる。すなわち、電極と接触するための手段は、電極の設計及び位置と独立して設計することができる。PCBは、懸濁液の処理を低速化して熱散逸を可能にすることができるように、より良好な温度制御のための内部サーミスタ又は任意の他の感温電気部品を含むことができる。
【0030】
代替的に、チャンバの電極は、金属、例えば、アルミニウム又は任意の他の導電材料から作製することができる。
【0031】
本発明によるデバイスは、チャンバの外側で分離要素を固定するための手段をさらに備えることができ、それによって、スケーリング可能なチャンバは、固定の容量を有する静的チャンバに容易に変換することができる。例えば、デバイスの静的な変形形態は、約0.5ml、1.0ml、1.5ml又は2.0mlの固定の処理量を有することができる。
【0032】
本発明によるデバイスの他の構成要素に対してチャンバを封止するために、少なくとも1つのガスケットを調整要素とチャンバとの間に配設することができる。
【0033】
チャンバは、チャンバの一方の側に沿って少なくとも部分的に延在し、この側を環境に対し封止する、少なくとも1つの封止インレイをさらに備えることができる。この封止インレイは、上述したガスケットと反対側のチャンバの一方の側に、すなわち、調整要素と反対側のチャンバの一方の側に配設することができる。封止インレイは、弾性及び圧縮性の材料を含む場合、チャンバ内の圧力補償をさらに可能にする。封止インレイは、発泡シリコーン又は同様の不活性材料から作製することができる。
【0034】
別の例示的な実施形態によれば、本発明によるデバイスは、このデバイスを本発明による別のデバイスに取り付けるための積層手段をさらに備えることができる。すなわち、電気穿孔又は電気融合システムの性能は、本発明に従って複数のデバイスを積層して、時間単位あたりに処理可能な量を増大させることによって容易に向上させることができる。例えば、積層されたデバイスを、複数のチャンバが並列に接続されるように結合することができる。このようにして、システムの総容量を、例えば10倍に増大させることが可能であることが有利である。
【0035】
本発明によるデバイスの容量を増大させるための別の手法は、1つのデバイス内に2つ以上のチャンバを設けることである。この場合、チャンバは並列に又は同心円状に配置することができる。
【0036】
積層可能バージョン及び/又はマルチチャンババージョンにより、システムの総容量を、10mlまで、又はさらには100ml以上まで容易に増大させることができる。基本的には、処理される細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の数は、いかなる形でも制限されない。例えば、適切なスケールアップにより、10
7個〜10
8個、10
7個〜10
9個、又は10
7個〜10
10個の細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の処理が可能になる。
【0037】
本発明の有利な実施形態では、デバイスは、機能状態において直立の向きを有するように設計される。この直立の向きが、チャンバの上部に配設されたチャンバ出力ポートと組み合わされると、完全な気泡除去が保証される。
【0038】
目的は、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するための方法であって、
a)懸濁液のアリコートを、懸濁液に電界を印加するためのデバイスの少なくとも1つのチャンバに充填することであって、このチャンバは少なくとも2つの電極を備え、チャンバ内に配設された分離要素は第1の方向に動かされることと、
b)チャンバの少なくとも2つの電極を介してアリコートに電圧パルスを印加することと、
c)チャンバからアリコートを放出し、同時に懸濁液のさらなるアリコートをチャンバ内に充填することであって、分離要素は、第1の方向と反対の第2の方向に動かされ、分離要素は、アリコートを互いに分離することと、
d)チャンバの少なくとも2つの電極を介して電圧パルスをさらなるアリコートに印加することと、
を含む、方法によってさらに満たされる。
【0039】
プロセスは、この時点で、チャンバからさらなるアリコートを完全に放出することによって終了することができる。ここで、分離要素は、第2の方向と反対の第1の方向に動かされる。
【0040】
本発明による有利な方法において、チャンバの同時の充填及び放出が達成され、それによって、懸濁液の変更に必要な時間が最小になり、このため、懸濁液の2つの後続の電気的処理間のタイムラグが最小になる。この最小化の結果として、大量、すなわち、1mlを越える量の場合の処理時間が大幅に加速される。
【0041】
本発明による方法は、
e)チャンバからさらなるアリコートを放出し、同時に、懸濁液のさらなるアリコートをチャンバ内に充填することであって、分離要素は、第2の方向と反対の第1の方向に動かされ、分離要素は、アリコートを互いに分離することと、
f)チャンバの少なくとも2つの電極を介してさらなるアリコートに電圧パルスを印加することと、
g)任意選択で、懸濁液全体が処理されるまで懸濁液のさらなるアリコートについてステップc)〜f)を繰り返すことと、
によって、より大きな量のさらなる処理のために継続することができる。
【0042】
したがって、懸濁液の繰返しの充填及び処理に起因して、本発明による方法は、スケーリング可能なプロセスである。例えば、チャンバが合計1mlの容量を有する場合、この容量のうちの任意の複数容量を、迅速化された方式で容易に処理することができる。
【0043】
例えば、上記方法において用いられるデバイスは、上記で説明した本発明によるデバイスとすることができる。
【0044】
例えば、分離要素は、分離要素と連動する調整要素によって、少なくとも部分的に、チャンバ内で動かすことができる。調整要素が回転可能な本体、例えば、回転子状の要素である場合、分離要素は、調整要素を回転することによって動かすことができる。そのような実施形態は、特に、チャンバが湾曲形状を有する場合に、分離要素の厳密な制御及び一定の動きを確保する。懸濁液は、ポンプ要素、例えば、真空ポンプ又は蠕動ポンプ等によってチャンバ内に充填及びチャンバから放出されることが可能である。このために、本発明によるデバイスに、このデバイスを共通ポンプシステムに適合させる、ルアースリップコネクタ又は取付け可能及び取外し可能である任意の他のコネクタを設けることができる。ポンプ圧力は、チャンバの内面に沿って拭取りを行う分離要素の動きによって支持され、それによって、処理済みの試料がチャンバから完全に排出することが確保される。さらに、圧送及び拭取りの組み合わせにより、結果として、気泡、細胞残屑及び任意の他の顆粒が効果的に除去されることになる。
【0045】
特定の用途では、処理される細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞と、基材及び反応剤とを別個の格納容器で準備し、チャンバの充填及び後続の処理の直前にこれらを混合することが必要であるか又は有利である場合がある。
【0046】
本発明は、図面を参照して詳細にさらに例示的に説明される。