特許第6750828号(P6750828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750828
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ストラップピン金具
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/07 20060101AFI20200824BHJP
   F16B 21/09 20060101ALI20200824BHJP
   A45C 13/30 20060101ALI20200824BHJP
   G10D 3/00 20200101ALI20200824BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   F16B21/07 A
   F16B21/09
   A45C13/30 K
   G10D3/00
   G10D1/08
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-211053(P2017-211053)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-82635(P2019-82635A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年6月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592201092
【氏名又は名称】後藤ガット有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 篤
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌甲
(72)【発明者】
【氏名】宮島 洋
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0206871(US,A1)
【文献】 実公昭35−23275(JP,Y1)
【文献】 米国特許第808573(US,A)
【文献】 特開平9−140439(JP,A)
【文献】 特開2004−183739(JP,A)
【文献】 実開昭63−157324(JP,U)
【文献】 実開昭49−135593(JP,U)
【文献】 実開昭50−83460(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/07
F16B 21/09
A45C 13/30
G10D 1/08
G10D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器に設けられたストラップピンに帯状のストラップを着脱自在に装着するためのストラップピン金具であって、前記ストラップの端部には前記ストラップピンが係合可能な取付孔が設けられるストラップピン金具であって、
ベース板と、
前記ベース板に配設され、前記ストラップの前記取付孔を保持するストラップ保持部と、
前記ベース板に形成され、前記ストラップピンを挿入可能な貫通孔と、
前記ベース板に取り付けられた押え板であって、前記貫通孔を開放して前記貫通孔への前記ストラップピンの挿入動作を許容する開放位置と、前記貫通孔の一部を閉鎖して前記貫通孔から前記ストラップピンの抜出動作を阻止する閉鎖位置との間で移動可能な押え板と、
を備える、ストラップピン金具。
【請求項2】
前記押え板は、前記ベース板の法線方向に直交する方向を回転中心に回転可能に取り付けられている、
請求項1に記載のストラップピン金具。
【請求項3】
前記押え板は、前記ベース板の法線方向を回転中心に回転可能に取り付けられている、
請求項1に記載のストラップピン金具。
【請求項4】
前記押え板を前記閉鎖位置に付勢する付勢部材を備える、
請求項2又は3に記載のストラップピン金具。
【請求項5】
前記貫通孔は、互いに孔径が異なる大孔部と小孔部とが連結して構成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のストラップピン金具。
【請求項6】
前記貫通孔は、1つの丸孔で構成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のストラップピン金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギターなどの楽器にストラップを取り付けるためのストラップピン金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、楽器12に取り付けられたストラップピン20の一例を示した図である。図1に示すように、ギターなどの楽器12は、立った状態で演奏する場合、楽器用ストラップ(以下、単に「ストラップ」)30が使用される。そのため、楽器12には、ストラップ30を装着するためのストラップピン20が取り付けられている。ストラップ30は、長さ調節可能な帯状部材32と、帯状部材32の両端に設けられた舌片状の装着部34とを備えている。装着部34には後述する取付孔36(図3参照)が形成されており、ストラップピン20が着脱自在に取り付けられる。なお、図1では、ストラップピン20は、楽器12のボディ13のエンド部14と、楽器12のボディ13のエンド部14の反対側で、ネック15との接合部にあるヒール部16とにそれぞれに取り付けられた構成を一例として示したが、この構成に限定されるものではない。
【0003】
図2は、ストラップピン20の一例を示した図である。図2において、符号2Aはストラップピン20の斜視図を示し、符号2Bはストラップピン20の側面図を示している。図2の符号2A及び2Bに示すように、ストラップピン20は、断面円形状の括れ部20aと、括れ部20aの先端に(括れ部20aの軸方向に直交する径方向の)外向きに広がった形状を有する拡径部20bと、括れ部20aの拡径部20bとは反対側に設けられ、楽器12との取付面を構成する取付部(取付板)20cとを備えている。ストラップピン20は、楽器12に図示しないネジによりネジ止め固定される。なお、ストラップピン20には様々な形状及び大きさのものがあるが、その全体的な特徴は図2に示したものとほぼ同様である。
【0004】
図3は、ストラップ30の装着部34の一例を示した図である。図3に示すように、ストラップ30の装着部34には、ストラップピン20を取り付けるための取付孔36が設けられている。この取付孔36には、スリット38がつながって形成されている。楽器12にストラップ30を装着する場合には、スリット38で取付孔36を広げつつ、取付孔36にストラップピン20の拡径部20bを貫通させ、取付孔36に括れ部20aを位置させることにより、括れ部20aでスリット38が狭まることで固定し、かつ拡径部20bによって抜け止めを図り、楽器12に対するストラップ30の装着状態を維持することができるようになっている。これにより、演奏者は、立った状態で演奏する場合、楽器12に装着されたストラップ30を肩で吊り下げるようにして使用することができる。
【0005】
しかしながら、図3に示したストラップ30の装着部34では、ストラップピン20を取り付けるための取付孔36とスリット38とがつながっているため、楽器12に設けられたストラップピン20からストラップ30が外れて脱落しやすい問題がある。
【0006】
かかる問題に対し、特許文献1では、ストラップ装着部の上に補強部を重ね合わせ、取付孔(保持孔)からのスリットが入る位置が異なるストラップ装着部と補強部とを重ねてストラップピンへ装着する構成としたストラップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−217991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、演奏者が演奏を終えて楽器をしまうとき、体に固定した楽器のストラップをストラップピンから外して片づける。そして、再び演奏を始めるときには、ストラップを肩にかけ、ストラップの取付孔を楽器のストラップピンに取り付けて準備をする。同様に、楽器を変える場合にも、ストラップの取り付け及び取り外しが必要になる。
【0009】
特許文献1に開示されたストラップでは、従来のストラップ(図3参照)に比べて、楽器のストラップピンからストラップが外れ難い構造となっているものの、逆に、この構造を採用したことにより、ストラップの取り外しが困難なものとなっており、演奏者にとって利便性に欠けたものとなっている。また、ストラップの取り付け及び取り外しを繰り返すとどうしても、ストラップの取付孔が弛んでしまい、楽器の保持力が弱くなり、楽器の落下の恐れも出てくる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、楽器に対するストラップの取り付け及び取り外しを簡単に行うことができるストラップピン金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、以下の発明を提供する。
【0012】
本発明の第1態様に係るストラップピン金具は、ベース板と、ベース板に配設され、ストラップを保持するストラップ保持部と、ベース板に形成され、ストラップピンを挿入可能な貫通孔と、ベース板に取り付けられた押え板であって、貫通孔を開放して貫通孔へのストラップピンの挿入動作を許容する開放位置と、貫通孔の一部を閉鎖して貫通孔からストラップピンの抜出動作を阻止する閉鎖位置との間で移動可能な押え板と、を備える。
【0013】
本発明の第2態様に係るストラップピン金具は、第1態様において、押え板は、ベース板の法線方向に直交する方向を回転中心に回転可能に取り付けられている。
【0014】
本発明の第3態様に係るストラップピン金具は、第1態様において、押え板は、ベース板の法線方向を回転中心に回転可能に取り付けられている。
【0015】
本発明の第4態様に係るストラップピン金具は、第2態様又は第3態様において、押え板を閉鎖位置に付勢する付勢部材を備える。
【0016】
本発明の第5態様に係るストラップピン金具は、第1態様から第4態様のいずれか1つの態様において、貫通孔は、互いに孔径が異なる大孔部と小孔部とが連結して構成される。
【0017】
本発明の第6態様に係るストラップピン金具は、第1態様から第4態様のいずれか1つの態様において、貫通孔は、1つの丸孔で構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、楽器に対するストラップの取り付け及び取り外しを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】楽器に取り付けられたストラップピンの一例を示した図
図2】ストラップピンの一例を示した図
図3】ストラップの装着部の一例を示した図
図4】第1の実施形態に係るストラップピン金具を示した図
図5】第1の実施形態に係るストラップピン金具とストラップピンとの連結方法を説明するための図
図6】第1の実施形態に係るストラップピン金具とストラップピンとの連結方法を説明するための図
図7】第2の実施形態に係るストラップピン金具を示した図
図8】本発明の発展例であるストラップピン金具を示した図
図9】本発明の発展例であるストラップピン金具とストラップピンとの連結方法を説明するための図
図10】本発明の発展例であるストラップピン金具とストラップピンとの連結方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係るストラップピン金具50を示した図である。図4において、符号4Aはストラップピン金具50の平面図を示し、符号4Bはストラップピン金具50の側面図を示している。
【0022】
図4に示すように、本実施形態のストラップピン金具50は、ストラップピン20とストラップ30との間に介在して両者を接続する接続具であり、主として、ベース板52と、押え板54と、ストラップ保持部56とを備えている。
【0023】
ベース板52は、平板状部材により構成される。ベース板52には、ストラップピン20を挿入可能な貫通孔58が形成されている。この貫通孔58は、互いに孔径が異なる大孔部58aと小孔部58bとが連結して構成される。図4の符号4Aに示すように、平面視で、大孔部58aは略円形状の形状を有している。また、小孔部58bは、大孔部58aからストラップ保持部56とは反対方向に延びる長孔状の形状を有している。
【0024】
大孔部58aは、ストラップピン20の拡径部20bの外径よりも大きく形成されており、ストラップピン20の拡径部20bを挿通可能な大きさとなっている。
【0025】
小孔部58bは、ストラップピン20の括れ部20aの外径よりも大きく、かつストラップピン20の拡径部20bの外径よりも小さく形成されており、ストラップピン20のうち括れ部20aのみを挿通可能な大きさとなっている。
【0026】
押え板54は、前後方向(ベース板52の長手方向)の後側(ストラップ保持部56側)が屈曲した形状を有している。すなわち、押え板54は、図4の符号4Bに示すように、ベース板52を側方向から見たときに、全体として略「へ」の字状(略「L」字状又)の形状を有している。この押え板54は、前側の前端部62と後側の後端部64とがその境界部である屈曲部66を介して接続された構成となっている。
【0027】
さらに、この押え板54は、ベース板52の法線方向に直交する方向を回転中心に回転可能にベース板52に取り付けられている。具体的には、ベース板52の長手方向に直交する方向に沿った屈曲線上にヒンジ部68を介して取り付けられており、その屈曲線に沿った方向を回転中心として回転可能な状態となっている。このヒンジ部68はバネ付きヒンジ(本発明の「付勢部材」に相当)から構成され、そのバネの有する付勢力によって、押え板54の前端部62がベース板52に押さえ付けられる方向に付勢されている。つまり、押え板54の前端部62は、ヒンジ部68のバネにより貫通孔58の一部である大孔部58aを閉鎖する閉鎖位置に付勢された状態となっている。
【0028】
このように押え板54の前端部62がヒンジ部68のバネにより閉鎖位置に付勢された状態で、そのバネの付勢力に抗して押え板54を押し操作(前端部62を下側から押圧あるいは後端部64を上側から押圧)すると、押え板54の前端部62は、貫通孔58の大孔部58aを開放する開放位置に移動し、貫通孔58の大孔部58aにストラップピン20を挿入可能な状態となる。
【0029】
ストラップ保持部56は、ベース板52に配設された円柱状部材から構成される。ストラップ保持部56は、ストラップ30の装着部34の取付孔36に挿通可能な大きさに形成されている。ストラップ保持部56にストラップ30を固定する場合には、ストラップ30の装着部34の取付孔36にストラップ保持部56を挿通して図示しないネジで締付け固定することで、ストラップ保持部56にストラップ30の装着部34を連結する。あるいは、ストラップ保持部56の先端にキャップを嵌合して連結してもよいし、紐などでストラップ保持部56とストラップ30の装着部34とを連結してもよい。また、ピンやEリング等を用いてストラップ保持部56とストラップ30の装着部34とを連結してもよい。
【0030】
以上のような構成を有するストラップピン金具50を用いて楽器12にストラップ30を取り付ける場合には、最初に、ストラップ30の装着部34の取付孔36にストラップ保持部56を挿通して図示しないネジで締付け固定しておく。次に、図5の符号5A及び5Bに示すように、ストラップピン20と貫通孔58の大孔部58aとの位置合わせをした状態で、ベース板52の下面側からストラップピン20を貫通孔58の大孔部58aを挿入する。このとき、ヒンジ部68のバネの有する付勢力によって閉鎖位置に付勢された押え板54の前端部62をストラップピン20で押し込むことで、押え板54の前端部62は開放位置に移動し、貫通孔58の大孔部58aにストラップピン20の拡径部20bを挿入することができる。そして、ストラップピン20の括れ部20aまで差し込んだ後、図6の符号6A及び6Bに示すように、ストラップピン20の括れ部20aを貫通孔58の小孔部58bまでスライド移動させると、バネの付勢力で自然に押え板54は貫通孔58の大孔部58aを閉鎖する閉鎖位置に復帰する。これにより、ストラップピン20は貫通孔58から抜け落ちることなく、ストラップピン金具50とストラップピン20とが確実に連結された状態となる。
【0031】
また、演奏を終えて楽器12を取り外す時は、押え板54の後端部64を上方からベース板52に向かって押し込むことで、貫通孔58の大孔部58aを塞いでいる押え板54の前端部62が閉鎖位置から開放位置に移動するので、ストラップピン20を大孔部58a側にスライド移動させて、大孔部58aからストラップピン20を容易に取り外すことができる。
【0032】
以上のとおり、本実施形態のストラップピン金具50は、ベース板52と、ベース板52に配設され、ストラップ30を保持するストラップ保持部56と、ベース板52に形成され、ストラップピン20を挿入可能な貫通孔58と、ベース板52に取り付けられた押え板54とを備え、この押え板54は、貫通孔58を開放して貫通孔58へのストラップピン20の挿入動作を許容する開放位置と、貫通孔58の一部を閉鎖して貫通孔58からストラップピン20の抜出動作を阻止する閉鎖位置との間で移動可能に構成されるので、ストラップピン金具50とストラップピン20との連結及び連結解除を容易かつ迅速に行うことができる。これにより、ストラップ30とストラップピン20との間をストラップピン金具50を介在させて接続した構成とすることにより、楽器12に対するストラップ30の取り付け及び取り外しを簡単に行うことができる。
【0033】
なお、本実施形態では、押え板54を付勢部材(ヒンジ部68のバネ)により貫通孔58の一部を閉鎖する閉鎖位置に付勢する態様を示したが、これに限らず、例えば、図示しないロック機構(係合機構)を用いて、押え板54を閉鎖位置に固定したロック状態と、押え板54を閉鎖位置と開放位置との間で移動可能とした非ロック状態との間で切り替えられるようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、ベース板52が平板状部材からなる構成を一例として示したが、これに限らず、例えば、ベース板52はその長手方向に沿って山状又は谷状に屈曲又は湾曲して形成されていてもよい。また、押え板54は、ベース板52の形状に応じて山状又は谷状に屈曲又は湾曲して形成されていてもよい。後述する第2の実施形態及び発展例においても同様である。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、上述した第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0036】
図7は、第2の実施形態に係るストラップピン金具50Aを示した図である。なお、図7中、図4と共通又は類似する構成要素には同一の番号を付している。
【0037】
第2の実施形態は、押え板54の構成が異なる点を除いて第1の実施形態と同様である。具体的には、第2の実施形態における押え板54は、弾性変形可能な板バネとして機能するようになっている。また、この押え板54は、ベース板52の法線方向を回転中心に回転可能な状態となっている。なお、符号69は、ベース板52の回転軸部を示している。
【0038】
本実施形態において、ストラップピン金具50Aとストラップピン20とを連結する場合には、上述した第1の実施形態と同様に、ストラップピン20と貫通孔58の大孔部58aとの位置合わせをした状態で、ベース板52の下面側からストラップピン20を貫通孔58の大孔部58aに挿入する。このとき、ストラップピン20で押え板54を押し込みながら貫通孔58の大孔部58aにストラップピン20を差し込んでいくと、板バネとして機能する押え板54は、その弾性力によって湾曲して変形しながらストラップピン20を貫通孔58の大孔部58aに挿入することができる。そして、ストラップピン20の括れ部20aまで差し込んだ後、ストラップピン20の括れ部20aを貫通孔58の小孔部58bまでスライド移動させると、押え板54はその弾性力によって自然に元の形状に戻り、貫通孔58の大孔部58aを閉鎖する閉鎖位置に復帰する。これにより、ストラップピン20は貫通孔58から抜け落ちることなく、ストラップピン金具50Aとストラップピン20とが確実に連結された状態となる。
【0039】
ストラップピン20とストラップピン金具50Aとの連結を解除する場合には、図7の符号7Aに示すように、押え板54を貫通孔58の大孔部58aを開放する開放位置(2点鎖線で図示)まで回転させることにより、ストラップピン20を貫通孔58から取り外すことが可能となる。
【0040】
したがって、本実施形態のストラップピン金具50Aにおいても、第1の実施形態と同様に、ストラップ30とストラップピン20との間をストラップピン金具50Aを介在させて接続した構成とすることにより、楽器12に対するストラップ30の取り付け及び取り外しを簡単に行うことができる。
【0041】
なお、本実施形態において、押え板54は、ストラップピン20が抜けないように貫通孔58の一部である大孔部58aを閉鎖する機能があれば、楽器12を支える強度は必要ないので、第1の実施形態の押え板54よりも厚みの薄い樹脂製又は金属製の薄板状部材でも対応可能である。
【0042】
また、本実施形態において、押え板54は回転軸部69を回転中心として回転可能な構成となっているが、押え板54は図示しない付勢部材(バネ等)により貫通孔58の大孔部58aを閉鎖する閉鎖位置に付勢されていることが望ましい。これにより、ストラップピン金具50Aとストラップピン20との連結が不用意に解除されることを防止することができる。
【0043】
また、本実施形態において、押え板54には突起などの操作部が設けられていることが望ましい。これにより、ストラップピン20からストラップピン金具50Aを取り外す際に、押え板54の回転操作を容易に行うことができ、取り外し作業を簡単に行うことが可能となる。
【0044】
(発展例)
次に、本発明の発展例を説明する。上述した各実施形態では、ベース板52に設けられる貫通孔58は、互いに孔径が異なる大孔部58aと小孔部58bとが連結された構成としたが、貫通孔58の形状は必ずしもこのような大小の孔部の組み合わせでなくても本発明の目的の機能を果たすことが可能である。
【0045】
図8は、本発明の発展例としてのストラップピン金具50Bを示した図である。図8において、符号8Aはストラップピン金具50Bの平面図を示し、符号8Bはストラップピン金具50Bの分解組立図を示している。なお、図8中、図4と共通又は類似する構成要素には同一の番号を付している。
【0046】
図8の符号8Aに示すように、本発明の発展例としてのストラップピン金具50Bは、デザイン性の観点から、全体的に丸みをおびた形状のもの(略卵型形状)となっている。
【0047】
このストラップピン金具50Bは、ベース板52と、押え板54と、ストラップ保持部56とを備える点は上述した各実施形態と共通しているが、ベース板52に形成される貫通孔58の形状が平面視円形状の丸孔によって構成される点が上述した各実施形態とは大きく異なる点である。この貫通孔58の内径は、ストラップピン20の拡径部20bの外径よりも大きく形成されている(図9及び図10参照)。
【0048】
押え板54は、図8の符号8Aに示すように、平面視したときに、ベース板52の基端側領域(ストラップ保持部56側の領域)とほぼ重なる形状を有し、かつ、ベース板52の法線方向を回転中心に回転可能な状態となっている。この押え板54は、ベース板52と重なる位置(閉鎖位置)に配置されたときには貫通孔58の一部を塞ぐようになっている。このとき、貫通孔58と押え板54との間に形成される隙間Hがストラップピン20の拡径部20bの外径よりも小さく、かつ、ストラップピン20の括れ部20aの外径よりも大きくなるように、押え板54と貫通孔58との位置関係や大きさが定められている(図9及び図10参照)。
【0049】
したがって、押え板54の回転操作により、押え板54が貫通孔58を開放する開放位置に配置された場合には、貫通孔58へのストラップピン20の挿入動作が許容された状態となる。一方、貫通孔58にストラップピン20が挿入された状態で、押え板54の回転操作により、押え板54が貫通孔58の一部を閉鎖する閉鎖位置に配置された場合には、貫通孔58と押え板54との間に形成される隙間Hが上述した大きさとなるように設定されているので、貫通孔58からストラップピン20の抜出動作が阻止された状態となる。
【0050】
ベース板52の両脇(両側面)には、それぞれ窪み部(凹部)70が設けられている。この窪み部70により、押え板54にはベース板52と重ならない非重なり領域が形成されるので、この領域に対応する押え板54をその回転方向に押し込むことにより、押え板54の回転操作を簡便に行うことが可能となる。
【0051】
また、ベース板52には、ストラップ保持部56と貫通孔58との間に相当する中間領域に、押え板54とは反対側に向かって突出する平面視円形状の凸部72が形成されている。この凸部72は、ストラップピン金具50Bにストラップ30が取り付けられた場合に、ストラップ30の先端部を支持するストラップ支持部として機能する。
【0052】
ストラップ保持部56は、ボルト74とナット76を用いてストラップ30をベース板52に固定する部分である。ストラップ保持部56にストラップ30を取り付ける場合には、図9の9A及び9Bに示すように、押え板54の基端側に設けられた回転孔78と、ベース板52の基端側に設けられたボルト挿通用孔80と、ストラップ30の取付孔36とを、平面視で互いに重なるように位置合わせをした状態で、押え板54側から各孔にボルト74を挿通し、その反対側から突出したボルト74の先端部をワッシャー82を介してナット76によって締め付け固定する。このとき、押え板54が回転孔78を支点として回転可能な程度にナット76を締め付けておく。これにより、ストラップピン金具50Bとストラップ30とが連結された状態となるとともに、押え板54の回転操作が可能となる。
【0053】
ストラップピン金具50Bとストラップピン20とを連結する場合には、図9の符号9A及び9Bに示すように、押え板54を所定の方向(例えば時計周り方向)に回転操作し、押え板54を開放位置に移動させる。そして、ベース板52の貫通孔58にストラップピン20を挿入する。次に、図10の符号10A及び10Bに示すように、押え板54を逆方向(例えば反時計周り方向)に回転操作し、押え板54を元の状態、すなわち、押え板54を閉鎖位置に移動させる。これにより、ベース板52の貫通孔58に挿入されたストラップピン20の括れ部20aは、貫通孔58と押え板54との間に形成される隙間Hに配置されるようになるので、ストラップピン20は貫通孔58から抜け落ちることなく、ストラップピン金具50Bとストラップピン20とが確実に連結された状態となる。
【0054】
なお、ストラップピン金具50Bとストラップピン20との連結を解除する場合には、逆の手順を行えばよいので、説明の重複を避けるためその説明を省略する。
【0055】
以上のように、本発明の発展例であるストラップピン金具50Bによれば、ベース板52に設けられる貫通孔58が1つの孔部で構成されており、押え板54の回転操作により、押え板54を、貫通孔58の一部を閉鎖する閉鎖位置と、貫通孔58を開放する開放位置との間で切り替え可能に構成することができる。したがって、ストラップ30とストラップピン20との間をストラップピン金具50Bを介在させて接続した構成とすることにより、楽器12に対するストラップ30の取り付け及び取り外しを簡単に行うことができ、上述した各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、上述した発展例では、押え板54の回転操作により、押え板54を、貫通孔58の一部を閉鎖する閉鎖位置と、貫通孔58を開放する開放位置との間で切り替え可能に構成したが、この構成に限定されず、例えば、押え板54を厚みの薄い樹脂製又は金属製の薄板状部材で構成し、押え板54を弾性変形可能な板バネとして機能させるようにしてもよい。この構成によれば、押え板54を回転操作することなく、上述した第2の実施形態と同様の手順で、ストラップピン金具50Bとストラップピン20とを連結することが可能である。すなわち、ストラップピン20と貫通孔58との位置合わせをした状態で、ベース板52の下面側からストラップピン20を貫通孔58に挿入する。このとき、ストラップピン20で押え板54を押し込みながら貫通孔58にストラップピン20を差し込んでいくと、板バネとして機能する押え板54は、その弾性力によって湾曲して変形しながらストラップピン20を貫通孔58に挿入することができる。そして、ストラップピン20の括れ部20aまで差し込んだ後、ストラップピン20の括れ部20aを貫通孔58の縁部(ストラップ保持部56側とは反対側の縁部)までスライド移動させると、押え板54はその弾性力によって自然に元の形状に戻り、貫通孔58の一部を閉鎖する閉鎖位置に復帰する。これにより、ストラップピン20は貫通孔58から抜け落ちることなく、ストラップピン金具50Bとストラップピン20とが確実に連結された状態となる。
【0057】
なお、ストラップピン20とストラップピン金具50Bとの連結を解除する場合には、上述した発展例と同様に、押え板54を回転操作することにより、ストラップピン20を貫通孔58から取り外すことが可能となる。
【0058】
また、上述した発展例では、好ましい態様の一例として、ベース板52に設けられる貫通孔58が平面視円形状の丸孔によって構成される場合を示したが、これに限らず、例えば、楕円状、多角形状、その他形状であってもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態及びその発展例について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
12…楽器、13…ボディ、14…エンド部、15…ネック、16…ヒール部、20…ストラップピン、20a…括れ部、20b…拡径部、20c…取付部、30…ストラップ、32…帯状部材、34…装着部、36…取付孔、38…スリット、50…ストラップピン金具、52…ベース板、54…押え板、56…ストラップ保持部、58…貫通孔、58a…大孔部、58b…小孔部、62…前端部、64…後端部、66…屈曲部、68…ヒンジ部、69…回転軸部、70…窪み部、72…凸部、74…ボルト、76…ナット、78…回転孔、80…ボルト挿通用孔、82…ワッシャー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10