【実施例】
【0123】
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0124】
実施例1:4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸
[第1工程](E)−3−(2−クロロフェニル)−1−(2−メトキシフェニル)プロプ−2−エン−1−オンの調製
【0125】
【化15】
【0126】
2’−メトキシアセトフェノン(1.0g,6.7mmol,1.0当量)と2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(30ml)をエタノール(50ml)に溶解させ、0℃で30分攪拌した後、2−クロロベンズアルデヒド(1.123g,8.0mmol,1.2当量)を滴下し、2日間室温で攪拌した。エタノールを留去し、酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮し、標題化合物を固体として得た(2.178g、収率100%)。
【0127】
Rf値:0.21(n−ヘキサン/酢酸エチル=7:1 v/v)。
【0128】
1H-NMR(300 MHz,CDCl
3)δ: 8.01 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.71-7.62 (m, 2H), 7.50-7.39 (m, 2H), 7.35 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.30-7.26 (m, 2H), 7.06-6.98 (m, 2H), 3.89 (s, 3H)。
【0129】
[第2工程]5−(2−クロロフェニル)−3−(2−メトキシフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾールの調製
【0130】
【化16】
【0131】
(E)−3−(2−クロロフェニル)−1−(2−メトキシフェニル)プロプ−2−エン−1−オン(2.02g,7.4mmol,1.0当量)とフェニルヒドラジン(1.1ml,11.2mmol,1.5当量)、をエタノール(50ml)に溶解させ、酢酸(2ml)を加え、アルゴン雰囲気下で加熱還流下一晩攪拌した。酢酸エチルで抽出し、有機相を水で洗浄後、無水硫酸マグネシウム乾燥し濃縮した。得た中間体粗生成物をベンゼン(30ml)に溶解させ、DDQ(2.52g,11.1mmol,1.5当量)を加え、加熱還流下一晩攪拌した。反応混合物を室温にもどし、酢酸エチルを用いてセライトろ過した。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=8:1 v/v)により精製して、標題化合物を得た(2.387g、収率:89.3%)。
【0132】
Rf値:0.31(n−ヘキサン/酢酸エチル=8:1 v/v)。
【0133】
1H-NMR(300 MHz,CDCl
3)δ: 8.16 (dd, J = 7.6, 1.8 Hz, 1H), 7.42-7.40 (m, 1H), 7.36-7.21 (m, 9H),7.11 (s, 1H), 7.05 (td, J = 7.5, 1.2 Hz, 1H), 7.00 (dd, J = 8.3, 0.9 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H)。
【0134】
[第3工程]5−(2−クロロフェニル)−3−(2−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾールの調製
【0135】
【化17】
【0136】
5−(2−クロロフェニル)−3−(2−メトキシフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール(1.71g,4.7mmol,1.0当量)を無水ジクロロメタン(30ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下−10℃にて、三臭化ほう素(17%ジクロロメタン溶液、約1mol/L)(9.45ml,9.45mmol,2.0当量)を滴下し、室温に戻しながら一晩撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止させ、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=9:1 v/v)により精製し、標題の化合物を(1.41g、収率:86.2%)を得た。
【0137】
Rf値:0.32(n−ヘキサン/酢酸エチル=9:1 v/v)。
【0138】
1H-NMR(400 MHz,CDCl
3)δ: 10.82 (s, 1H), 7.64 (dd, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.43 (dq, J = 8.0, 0.6 Hz, 1H), 7.38-7.24 (m, 9H), 7.07 (dd, J = 8.2, 1.2 Hz, 1H), 6.97-6.93 (m, 1H), 6.90 (s, 1H)。
【0139】
[第4工程]4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸エチルの調製
【0140】
【化18】
【0141】
5−(2−クロロフェニル)−3−(2−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール(1.14g,3.3mmol,1.0当量)、4−ブロモ酪酸エチル(0.64g,3.3mmol,1.0当量)、炭酸カリウム(0.45g,3.3mmol,1.0当量)、およびヨウ化カリウム(0.54g,3.3mmol,1.0当量)の乾燥DMF(50ml)溶液を70℃で攪拌し、24時間後さらに4−ブロモ酪酸エチル(0.64g,3.3mmol,1.0当量)、炭酸カリウム(0.45g,3.3mmol,1.0当量)、ヨウ化カリウム(0.54g,3.3mmol,1.0当量)を加え、70℃でさらに一晩攪拌した。室温に戻した後に反応混合物に1mol/L塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウム乾燥し濃縮した。残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(n−ヘキサン/酢酸エチル=8:1 v/v,Rf=0.16)、微黄色油状の標題化合物を得た(1.602g、収率:100%)。
【0142】
Rf値:0.16(n−ヘキサン/酢酸エチル=8:1 v/v)。
【0143】
1H-NMR(300 MHz, CDCl
3)δ: 8.14 (dd, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.44-7.41 (m, 1H), 7.35-7.21 (m, 9H), 7.08 (s, 1H), 7.05 (td, J = 7.5, 1.1 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 4.16-4.07 (m, 4H), 2.57 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.24-2.15 (m, 2H), 1.22 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0144】
[第5工程]4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸の調製
【0145】
【化19】
【0146】
4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸エチル(5.00g,10.8mmol)を2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(50mL)とエタノール(25mL)の混合溶媒に溶解させ、一晩還流した。エタノールを留去し、残差に希塩酸を加え酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1 v/v,Rf=0.37)、標題化合物を(3.54g、収率:74.3%)を得た。
【0147】
Rf値:0.37(n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1 v/v)、融点:85.5−86.5℃、化学純度:98%(逆相HPLCの面積%、検出UV波長:254nm)。
【0148】
1H-NMR:(300 MHz CDCl
3) δ: 8.00 (1H, dd, J = 7.7, 1.7 Hz), 7.43-7.40 (1H, m), 7.35-7.21 (9H, m), 7.06 (1H, td, J = 7.5, 1.1 Hz), 7.00 (1H, s), 6.99 (1H, d, J = 7.3 Hz), 4.15 (2H, t, J = 6.0 Hz ), 2.60 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.19 (2H, quin, J = 6.7 Hz)。
【0149】
質量分析値(FAB (M+1)
+):433.2。
【0150】
実施例2:4−(2−(1−(4−ブロモフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸【0151】
【化20】
【0152】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを、第2工程においてフェニルヒドラジンの代わりに4−ブロモフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0153】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ: 7.97 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.35-7.23 (m, 8H), 7.05 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.99 (s, 1H), 4.15 (t. J = 6.0 Hz, 2H), 2.62. (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.24-2.17 (m, 2H)。
【0154】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
25H
22BrN
2O
3 計算値 477.0814;実測値 477.0812.
実施例3:4−(2−(1−(3,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸【0155】
【化21】
【0156】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを、第2工程においてフェニルヒドラジンの代わりに3,4−ジクロロフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0157】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 8.00 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.38- 7.28 (m, 7H), 7.12-6.98 (m, 4H), 4.16 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.64 (t, J = 7.2 Hz), 2.25-2.18 (m, 2H)。
【0158】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
25H
21Cl
2N
2O
3, 計算値 467.0929, 実測値 467.0942。
【0159】
実施例4:4−(2−(5−(2−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸【0160】
【化22】
【0161】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりに2−ブロモベンズアルデヒドを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0162】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 8.03 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 7.61 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.34-7.20 (m, 9H), 7.05 (ddd, J = 7.6, 7.6, 1.2 Hz, 1H), 7.00-6.98 (m, 2H), 4.15 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.22-2.16 (m, 2H)。
【0163】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
25H
22BrN
2O
3 計算値 479.0793;実測値 479.0800。
【0164】
実施例5:4−(2−(1−(4−イソプロピルフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸【0165】
【化23】
【0166】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを、第2工程においてフェニルヒドラジンの代わりに4−イソプロピルフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0167】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 7.93(dd, J = 7.8, 1.8 Hz, 1H), 7.30- 7.26 (m, 8H), 7.21-7.18 (m, 2H), 7.06-6.95 (m, 3H), 4.15 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.95-2.88 (m, 1H), 2.59 (t, J = 7.2 Hz), 2.23-2.16 (m, 2H), 1.25-1.23 (m, 6H)。
【0168】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
28H
29N
2O
3,, 計算値 441.2178, 実測値 441.2177。
【0169】
実施例6:4−(2−(1−(3−クロロフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸【0170】
【化24】
【0171】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを、第2工程においてフェニルヒドラジンの代わりに3−クロロフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0172】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 8.01 (dd, J = 7.8, 1.8 Hz, 1H), 7.51-7.50 (m, 1H), 7.35- 7.21 (m, 8H), 7.18-7.15 (m, 1H), 7.07-7.03 (m, 1H), 7.01-6.98 (m, 2H), 4.16 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.64 (t, J = 7.2 Hz), 2.25-2.18 (m, 2H)。
【0173】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
25H
22ClN
2O
3, 計算値 433.1319, 実測値 433.1330。
【0174】
実施例7:4−(2−(1−(4−フルオロフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸【0175】
【化25】
【0176】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを、第2工程においてフェニルヒドラジンの代わりに4−フルオロフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0177】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 7.96 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 7.36-7.26 (m, 8H), 7.07-7.02 (m, 3H), 6.99 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.98 (s, 1H), 4.16 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.62 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.24- 2.18 (m, 2H)。
【0178】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
25H
22FN
2O
3, 計算値 417.1614, 実測値 417.1622。
【0179】
実施例8:4−(2−(1−(4−tert−ブチルフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸【0180】
【化26】
【0181】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを、第2工程においてフェニルヒドラジンの代わりに4−tertブチルフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0182】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 7.96 (dd, J = 7.6, 2.0 Hz, 1H), 7.37- 7.27 (m, 10H), 7.06-7.02 (m, 1H), 6.99 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.96 (s, 1H), 4.15 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.23-2.17 (m, 2H), 1.31 (s, 9H)。
【0183】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
29H
31N
2O
3, 計算値 455.2334, 実測値 455.2346。
【0184】
実施例9:4−(2−(1,5−ジフェニル−1H−ピラゾール−3−イル)−4−フルオロフェノキシ)ブタン酸【0185】
【化27】
【0186】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりにベンズアルデヒド、2’−メトキシアセトフェノンの代わりに5’−フルオロ−2’−メトキシアセトフェノンをを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0187】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ= 7.75 (dd, J = 9.6, 3.2 Hz, 1H), 7.37-7.27 (m, 11H), 7.01-6.97 (m, 2H), 6.92 (dd, J= 8.8, 4.4 Hz, 1H), 4.12 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.23-2.17 (m, 2H)。
【0188】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
25H
22FN
2O
3, 計算値 417.1614, 実測値 417.1597。
【0189】
実施例10:4−(2−(5−クロロフェニル−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)−4−フルオロフェノキシ)ブタン酸【0190】
【化28】
【0191】
第1工程において2’−メトキシアセトフェノンの代わりに5’−フルオロ−2’−メトキシアセトフェノンをを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0192】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 7.82 (1H, dd, J = 9.6, 3.1 Hz), 7.42 (1H, br-d, J = 8.2 Hz), 7.34-7.21 (8H, overlapped), 7.05 (1H, s), 6.99 (1H, ddd, J = 9.0, 7.6, 3.1 Hz), 6.91 (1H, dd, J = 9.1, 4.6 Hz), 4.11 (2H, t, J = 6.1 Hz), 2.60 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.18 (2H, quin, J = 6.7 Hz)。
【0193】
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ [ppm]; 176.6, 158.1, 156.6, 152.3 (d, J = 1.8 Hz), 147.8 (d, J = 1.8 Hz), 140.4, 139.9, 134.0, 132.2, 130.2 (d, J = 6.8 Hz), 130.0, 128.8(2C), 127.3, 126.7, 124.2(2C), 123.5 (d, J = 7.9 Hz), 115.4 (d, J = 24.7 Hz), 115.1 (d, J = 23.1 Hz), 113.6 (d, J = 8.0 Hz), 110.7, 67.7, 30.4, 24.6。
【0194】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M-H]
-) C
25H
19C
l1F
1N
2O
3, 計算値 449.10682, 実測値 449.10312。
【0195】
化学純度:>99%(逆相HPLCの面積%、検出UV波長:254nm)。
【0196】
実施例11:4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−(4−イソプロピルフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)−4−フルオロフェノキシ)ブタン酸【0197】
【化29】
【0198】
第1工程において2’−メトキシアセトフェノンの代わりに5’−フルオロ−2’−メトキシアセトフェノンを用い、第2工程においてフェニルヒドラジンの代わりに4−イソプロピルフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0199】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]; 7.81 (1H, dd, J = 9.7, 3.1 Hz), 7.43 (1H, br-d, J = 8.1 Hz), 7.34-7.21 (5H, overlapped), 7.13 (2H, br-d, J = 8.5 Hz), 7.03 (1H, s), 6.98 (1H, ddd, J= 9.1, 7.5, 3.1 Hz), 6.91 (1H, dd, J= 9.0, 4.6 Hz), 4.11 (2H, t, J = 6.1 Hz), 2.88 (1H, sept, J = 6.9 Hz), 2.60 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.18 (2H, quin, J = 6.6 Hz), 1.21 (6H, d, J = 6.9 Hz)。
【0200】
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ [ppm]; 175.8, 158.1, 156.6, 152.2, 148.1, 147.5, 140.3, 137.6, 134.0, 132.2, 130.3, 130.1, 130.0, 126.8(2C), 126.7, 124.1(2C), 115.4 (d, J = 24.4 Hz), 115.0 (d, J= 23.1 Hz), 113.6 (d, J = 8.2 Hz), 110.4, 67.6, 33.7, 30.3, 24.6, 23.9(2C)。
【0201】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M-H]
-)C
28H
25Cl
1F
1N
2O
3, 計算値 491.15377. 実測値 491.15054。
【0202】
化学純度:>99%(逆相HPLCの面積%、検出UV波長:254nm)。
【0203】
実施例12:4−(2−(5−(2−メチルフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)−フェノキシ)ブタン酸【0204】
【化30】
【0205】
第1工程において2−クロロベンズアルデヒドの代わりに2−メチルベンズアルデヒドを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0206】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 8.04 (1H, dd, J = 7.7, 1.7 Hz), 7.34-7.17 (10H, overlapped), 7.06 (1H, td, J= 7.5, 1.0 Hz), 6.99 (1H, br-d, J = 8.3 Hz), 6.89 (1H, s), 4.14 (2H, t, J= 6.1 Hz), 2.58 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.17 (2H, quin, J = 6.6 Hz), 2.06 (3H, s)。
【0207】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 177.2, 156.0, 148.9, 142.7, 140.1, 137.2, 130.9, 130.7, 130.4, 129.24, 129.19, 128.9, 128.7(2C), 126.9, 125.8, 123.9(2C), 122.1, 121.1, 112.4, 110.0, 66.8, 30.6, 24.6, 20.0。
【0208】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M-H]
-)C
26H
23N
2O
3, 計算値 411.17087, 実測値 411.16706。
【0209】
化学純度:>99%(逆相HPLCの面積%、検出UV波長:254nm)。
【0210】
実施例13:4−(2−(5−(2−ブロモフェニル)−1−(4−イソプロピルフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)−4−フルオロフェノキシ)ブタン酸【0211】
【化31】
【0212】
第1工程において2’−メトキシアセトフェノンの代わりに5’−フルオロ−2’−メトキシアセトフェノンを、および2−クロロベンズアルデヒドの代わりに2−ブロモベンズアルデヒドを用い、第2工程においてフェニルヒドラジンの代わりに4−イソプロピルフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様の手法により、標題の化合物を調製した。
【0213】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]; 7.82 (1H, dd, J = 9.7, 3.1 Hz), 7.62 (1H, br-d, J = 7.6 Hz), 7.29-7.21 (5H, overlapped), 7.13 (2H, br-d, J = 8.5 Hz), 7.02 (1H, s), 6.98 (1H, ddd, J= 9.0, 7.6, 3.1 Hz), 6.91 (1H, dd, J= 9.1, 4.7 Hz), 4.11 (2H, t, J = 6.1 Hz), 2.87 (1H, sept, J = 6.9 Hz), 2.61 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.18 (2H, quin, J = 6.6 Hz), 1.21 (6H, d, J = 6.9 Hz)。
【0214】
13C-NMR (150 MHz, CDCl
3) δ [ppm]; 176.0, 158.1, 156.6, 152.2, 148.1, 147.4, 141.8, 137.5, 133.1, 132.42, 132.35, 130.2(2C), 127.2, 126.8(2C), 124.2(2C), 115.4 (d, J = 24.4 Hz), 115.0 (d, J= 23.1 Hz), 113.6 (d, J = 8.5 Hz), 110.4, 67.7, 33.7, 30.3, 24.6, 23.8(2C)。
【0215】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M-H]
-) C
28H
25Br
1F
1N
2O
3, 計算値 535.10326, 実測値 535.10054。
【0216】
化学純度:>99%(逆相HPLCの面積%、検出UV波長:254nm)。
【0217】
実施例14:(S)−4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)−フェノキシ)−2−メチルブタン酸
[第1工程](S)−4−ベンジル−3−(4−(ベンジルオキシ)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オンの調製
【0218】
【化32】
【0219】
4−ベンジルオキシブタン酸(2.50g,12.9mmol,1.0当量)、(S)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(4.56g,25.7mmol,2.0当量)、4−ジメチルアミノピリジン(1.57g,12.9mmol,1,0当量)を乾燥ジクロロメタン(100ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下0℃にて、ジイソプロピルカルボジイミド(2.19ml,14.2mmol,1.1当量)を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、ジクロロメタンで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1 v/v)により精製し、表題の化合物(3.67g、収率:80.6%)を無色の油状物質として得た。
【0220】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]:7.35-7.26 (m, 8H), 7.19 (d, J= 6.9 Hz, 2H), 4.64-4.56 (m, 1H), 4.51 (s, 2H), 4.14-4.07 (m, 2H), 3.58 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.27 (dd, J = 13.8, 3.3 Hz, 1H), 3.07 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.69 (dd, J = 13.2, 9.3 Hz, 1H), 2.04 (quintet, J = 6.6 Hz, 2H)。
【0221】
[第2工程](S)−4−ベンジル−3−((S)−4−(ベンジルオキシ)−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オンの調製
【0222】
【化33】
【0223】
(S)−4−ベンジル−3−(4−(ベンジルオキシ)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オン(1.39g,3.94mmol,1.0当量)を乾燥テトラヒドロフラン(40ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下−50℃にてナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液、4.73ml,4.73mmol,1.2当量)を滴下した。反応混合物を−50℃で5分、−15℃で15分撹拌した。再び−50℃に冷却し、乾燥テトラヒドロフラン(4ml)に溶解させたヨードメタン(1.23ml,19.7mmol,5.0当量)を滴下した。反応混合物を15分で5℃ずつ昇温していき、−5℃で5時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=3:1 v/v)により精製し、表題の化合物(1.15g、収率:79%)を淡黄色の油状物質として得た。
【0224】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]:7.34-7.19 (m, 8H), 7.17-7.14 (m, 2H), 4.49-4.36 (m, 3H), 4.00-3.88 (m, 2H), 3.73 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 3.61-3.50 (m, 2H), 3.20 (dd, J = 13.5, 3.6 Hz, 1H), 2.70 (dd, J = 13.2 Hz, 1H), 2.24-2.12 (m, 1H), 1.79-1.70 (m, 1H), 1.24 (d, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0225】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 177.10, 153.26, 138.51, 135.42, 129.40, 128.84, 128.27, 127.59, 127.53, 127.23, 72.84, 68.47, 65.83, 55.21, 37.98, 35.14, 33.63, 18.08。
【0226】
[第3工程](S)−4−ベンジル−3−((S)−4−ヒドロキシ−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オンの調製
【0227】
【化34】
【0228】
(S)−4−ベンジル−3−((S)−4−(ベンジルオキシ)−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オン(1.06g,2.90mmol,1.0当量)をエタノール(10ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下パラジウム炭素(0.10g)を加え、風船を用いてフラスコ内を水素で満たした。反応混合物を水素雰囲気下、室温で12時間撹拌し、セライトを用いてろ過し、酢酸エチルで洗いこんだ。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1 v/v)により精製し、表題の化合物(0.779g、収率:97.0%)を淡黄色の液体として得た。
【0229】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 7.38-7.28 (m, 3H), 7.20-7.17 (m, 2H), 5.18 (br-s, 1H), 4.48 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 4.35 (td, J = 8.7, 3.0 Hz, 1H), 4.23-4.05 (m, 3H), 2.94-2.81 (m, 2H), 2.65-2.54 (m, 1H), 2.49-2.39 (m, 1H), 2.00-1.86 (m, 1H), 1.29 (d, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0230】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 180.17, 158.96, 135.97, 129.07, 128.97, 127.34, 69.71, 66.27, 53.81, 41.55, 34.18, 30.74, 15.22。
【0231】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M+H]
+)C
15H
20NO
4, 計算値 278.1392, 実測値 278.1389。
【0232】
[第4工程](S)−4−ベンジル−3−((S)−4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オンの調製
【0233】
【化35】
【0234】
5−(2−クロロフェニル)−3−(2−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール(0.300g,0.865mmol,1.0当量)、(S)−4−ベンジル−3−((S)−4−ヒドロキシ−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オン(0.252g,0.908mmol,1.05当量)、トリフェニルホスフィン(0.238g,0.908mmol,1.05当量)を乾燥ジエチルエーテルに溶解させ、アルゴン雰囲気下0℃でアゾジカルボン酸ジイソプロピル(40%トルエン溶液, 約1.9mol/L)を滴下した。反応混合物を室温で3日間撹拌し、濃縮して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=3:1 v/v)により精製し、表題の化合物(0.321g、収率:61.2%)を無色の油状物質として得た。
【0235】
[α]
25D +54.9 (c = 1.0, CHCl
3)
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 8.13 (dd, 7.8, 1.8 Hz, 1H), 7.54-7.48 (m, 1H), 7.40-7.19 (m, 12H), 7.13-7.10 (m, 2H), 7.06 (s, 1H), 7.04 (td, J = 3.3, 1.2 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.50-4.42 (m, 1H), 4.27-4.20 (m, 1H), 4.15-4.07 (m, 1H), 4.04 (dt, J = 6.9, 1.5 Hz, 1H), 3.99 (dd, J = 9.0, 2.4 Hz, 1H), 3.90 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 3.16 (dd, J = 13.8, 3.3 Hz, 1H), 2.71 (dd, J = 13.5, 9.6 Hz, 1H), 2.46-2.34 (m, 1H), 2.08-1.97 (m, 1H), 1.31 (d, J = 7.2 Hz, 1H)。
【0236】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 176.4, 156.0, 153.0, 148.5, 140.3, 140.1, 135.2, 134.0, 132.4, 130.6, 130.0, 129.8, 129.4, 129.1, 128.8, 128.7, 127.2, 126.9, 126.8, 123.9, 121.8, 121.0, 112.1, 111.0, 66.4, 66.0, 55.1, 37.8, 35.2, 33.2, 18.2。
【0237】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M+H]
+)C
36H
33ClN
3O
4, 計算値 606.2154, 実測値 606.2142。
【0238】
[第5工程](S)−4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)−フェノキシ)−2−メチルブタン酸の調製
【0239】
【化36】
【0240】
(S)−4−ベンジル−3−((S)−4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オン(0.100g,0.165mmol,1.0当量)をテトラヒドロフラン/水(3:1,2.0ml)に溶解させ、0℃で30%過酸化水素水(0.10ml,0.89mmol,5.4当量)を滴下し、続けて水(0.3ml)に溶解させた水酸化リチウム(0.028g,0.66mmol,4.0当量)を滴下した。0℃で3時間撹拌し、水(0.5ml)に溶解させたチオ硫酸ナトリウム(0.1g)を加えて反応を停止し,1mol/L塩酸水溶液で反応混合物を酸性とした。テトラヒドロフランを留去し、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=3:1 v/v)により精製し、表題の化合物(54.5mg、収率:73.9%)を無色のアモルファスとして得た。
【0241】
[α]
25D +47.5 (c = 1.0, CHCl
3)。
【0242】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 7.93 (dd, J = 7.5, 1.8 Hz, 1H), 7.42-7.38 (m, 1H), 7.35-7.21 (m, 9H), 7.05 (td, J = 7.5, 1.2 Hz, 1H), 7.01-6.98 (m, 2H), 4.26-4.19 (m, 1H), 4.08-4.00 (m, 1H), 2.94-2.82 (m, 1H), 2.17-2.07 (m, 1H), 2.05-1.98 (m, 1H), 1.10 (d, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0243】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 180.3, 156.0, 149.0, 140.4, 139.7, 133.9, 132.2, 130.2, 130.04, 129.99, 129.5, 129.4, 128.9(2C), 127.4, 126.7, 124.5(2C), 121.7, 121.1, 112.4, 110.3, 65.6, 36.4, 33.3, 17.0。
【0244】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M+H]
+)C
26H
24Cl
1N
2O
3, 計算値 447.14755, 実測値 447.14591。
【0245】
実施例15:(R)−4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)−フェノキシ)−2−メチルブタン酸
[第1工程](R)−4−ベンジル−3−(4−(ベンジルオキシ)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オンの調製
【0246】
【化37】
【0247】
4−ベンジルオキシブタン酸(2.50g,12.9mmol,1.0当量)、(R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(4.56g,25.7mmol,2.0当量)、4−ジメチルアミノピリジン(1.57g,12.9mmol,1,0当量)を乾燥ジクロロメタン(100ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下0℃にて、ジイソプロピルカルボジイミド(2.19ml,14.2mmol,1.1当量)を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、ジクロロメタンで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1 v/v)により精製し、表題の化合物(3.76g、収率:82.7%)を無色の油状物質として得た。
【0248】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]:7.35-7.26 (m, 8H), 7.19 (d, J= 6.6 Hz, 2H), 4.64-4.56 (m, 1H), 4.51 (s, 2H), 4.13-4.06 (m, 2H), 3.58 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.27 (dd, J = 13.5, 3.3 Hz, 1H), 3.07 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.69 (dd, J = 13.2, 9.3 Hz, 1H), 2.04 (quintet, J = 6.9 Hz, 2H)。
【0249】
[第2工程](R)−4−ベンジル−3−((R)−4−(ベンジルオキシ)−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オンの調製
【0250】
【化38】
【0251】
(R)−4−ベンジル−3−(4−(ベンジルオキシ)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オン(0.750g,2.12mmol,1.0当量)を乾燥テトラヒドロフラン(20ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下−50℃にてナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液、2.55ml,2.55mmol,1.2当量)を滴下した。−50℃で5分、−15℃で15分撹拌した。再び−50℃に冷却し、乾燥テトラヒドロフラン(2ml)に溶解させたヨードメタン(0.66ml,11mmol,5.0当量)を滴下した。反応混合物を15分で5℃ずつ昇温していき、−5℃で5時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=3:1 v/v)により精製し、表題の化合物(0.62g、収率:80%)を淡黄色の油状物質として得た。
【0252】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]:7.34-7.19 (m, 8H), 7.17-7.14 (m, 2H), 4.49-4.36 (m, 3H), 3.73 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 3.61-3.50 (m, 2H), 3.20 (dd, J = 13.2, 3.3 Hz, 1H), 2.70 (dd, J = 13.2, 9.6 Hz, 1H), 2.24-2.12 (m, 1H), 1.79-1.70 (m, 1H), 1.24 (d, J = 6.6 Hz, 3H)。
【0253】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm] : 177.11, 153.27, 138.52, 135.43, 129.41, 128.85, 128.28, 127.64, 127.54, 127.23, 72.84, 68.48, 65.84, 55.22, 37.99, 35.15, 33.64, 18.08。
【0254】
[第3工程](R)−4−ベンジル−3−((R)−4−ヒドロキシ−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オンの調製
【0255】
【化39】
【0256】
(R)−4−ベンジル−3−((R)−4−(ベンジルオキシ)−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オン(0.597g,1.63mmol,1.0当量)をエタノール(5.0ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下パラジウム炭素(0.06g)を加え、風船を用いてフラスコ内を水素で満たした。反応混合物を水素雰囲気下、室温で12時間撹拌し、セライトを用いてろ過し、酢酸エチルで洗いこんだ。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1 v/v)により精製し、表題の化合物(0.388g、収率:86.1%)を淡黄色の液体として得た。
【0257】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 7.37-7.28 (m, 3H), 7.19-7.17 (m, 2H), 5.26 (br-s, 1H), 4.48 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 4.35 (td, J = 8.7, 2.4 Hz, 1H), 4.23-4.05 (m, 3H), 2.94-2.82 (m, 2H), 2.68-2.54 (m, 1H), 2.49-2.39 (m, 1H), 2.00-1.86 (m, 1H), 1.29 (d, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0258】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 180.18, 159.02, 135.96, 129.07, 128.97, 127.32, 69.70, 66.27, 53.80, 41.53, 34.18, 30.73, 15.21。
【0259】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M+H]
+)C
15H
20NO
4, 計算値 278.1392, 実測値 278.1387。
【0260】
[第4工程](R)−4−ベンジル−3−((R)−4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オンの調製
【0261】
【化40】
【0262】
5−(2−クロロフェニル)−3−(2−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール(0.300g,0.865mmol,1.0当量)、(R)−4−ベンジル−3−((R)−4−ヒドロキシ−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オン(0.252g,0.908mmol,1.05当量)、トリフェニルホスフィン(0.238g,0.908mmol,1.05当量)を乾燥ジエチルエーテルに溶解させ、アルゴン雰囲気下0℃でアゾジカルボン酸ジイソプロピル(40%トルエン溶液, 約1.9mol/L)を滴下した。反応混合物を室温で3日間撹拌し、濃縮して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=3:1 v/v)により精製し、表題の化合物(0.323g、収率:61.6%)を無色の油状物質として得た。
【0263】
[α]
25D -53.3 (c = 1.0, CHCl
3)。
【0264】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 8.13 (dd, J = 7.5, 1.8 Hz, 1H), 7.52-7.49 (m, 1H), 7.40-7.19 (m, 12H), 7.13-7.10 (m, 2H), 7.06-7.00 (m, 2H), 6.98 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.50-4.42 (m, 1H), 4.27-4.20 (m, 1H), 4.15-4.07 (m, 1H), 4.04 (dt, J = 6.9, 1.8 Hz, 1H), 3.99 (dd, J = 9.0, 2.4 Hz, 1H), 3.90 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 3.16 (dd, J = 13.5, 3.3 Hz, 1H), 2.71 (dd, J = 13.5, 9.6 Hz, 1H), 2.46-2.34 (m, 1H), 2.08-1.97 (m, 1H), 1.31 (d, J = 7.2 Hz, 1H)。
【0265】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm]: 176.4, 156.0, 153.0, 148.5, 140.3, 140.1, 135.2, 134.0, 132.4, 130.0, 129.8, 129.4, 129.1, 128.9, 128.7, 127.2, 126.9, 126.8, 123.9, 121.8, 121.0, 112.1, 111.0, 66.4, 66.0, 55.1, 37.8, 35.2, 33.2, 18.2。
【0266】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M+H]
+)C
36H
33ClN
3O
4, 計算値 606.2154. 実測値 606.2178。
【0267】
[第5工程](R)−4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)−フェノキシ)−2−メチルブタン酸の調製
【0268】
【化41】
【0269】
(R)−4−ベンジル−3−((R)−4−(2−(5−(2−クロロフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)−2−メチルブタノイル)オキサゾリジン−2−オン(0.140g,0.231mmol,1.0当量)をテトラヒドロフラン/水(3:1,2.8ml)に溶解させ、0℃で30%過酸化水素水(0.14ml,1.25mmol,5.4当量)を滴下し、続けて水(0.4ml)に溶解させた水酸化リチウム(0.039g,0.92mmol,4.0当量)を滴下した。0℃で3時間撹拌し、水(0.7ml)に溶解させたチオ硫酸ナトリウム(0.14g)を加えて反応を停止し,1mol/L塩酸水溶液で反応混合物を酸性とした。テトラヒドロフランを留去し、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液n−ヘキサン/酢酸エチル=3:1 v/v)により精製し、表題の化合物(91.0mg、収率:88.2%)を無色のアモルファスとして得た。
【0270】
[α]
25D -48.2 (c = 1.0, CHCl
3)。
【0271】
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3) δ [ppm]; 7.96 (dd, J = 7.5, 1.5 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 10.8, 1.2 Hz, 1H), 7.34-7.20 (m, 9H), 7.05 (td, J = 7.2, 0.9 Hz, 1H), 6.99-6.97 (m, 2H), 4.24-4.17 (m, 1H), 4.09-4.01 (m, 1H), 2.21-2.10 (m, 1H), 2.03-1.92 (m, 1H), 1.13 (d, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0272】
13C-NMR (75 MHz, CDCl
3) δ [ppm]; 180.8, 156.0, 148.9, 140.3, 139.8, 133.9, 132.2, 130.14, 130.12, 130.0, 129.4, 129.4, 128.8(2C), 127.3, 126.7, 124.4(2C), 121.7, 121.1, 112.4, 110.5, 65.6, 36.4, 33.2, 17.0。
【0273】
高分解能質量分析(ESI-TOF-MS, [M+H]
+)C
26H
24Cl
1N
2O
3, 計算値 447.14755, 実測値 447.14874。
【0274】
比較例1:4−(2−(1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸
[第1工程]((E)−1−(2−メトキシフェニル)−3−フェニルプロプ−2−エン−1−オンの調製
【0275】
【化42】
【0276】
2’−メトキシアセトフェノン(1.09g,6.60mmol)と10%水酸化カリウム水溶液(80mL,142mmol)をエタノール(15mL)に溶解させ,0℃で30分間撹拌した後,ベンズアルデヒド(0.800mL,7.92mmol)を滴下し,約2日間室温で撹拌した。エバポレーターによりエタノールを留去し,酢酸エチル(30mL)で4回抽出し,硫酸マグネシウムで乾燥し,濾過した溶液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1:7 (v/v))によって精製し,標題化合物を黄色油状物質として得た(1.52mg,6.36mmol,収率:96%)。
【0277】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ: 7.64 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.61-7.57 (m, 3H), 7.48 (ddd, J = 15.2, 15.2, 2.0 Hz, 1H), 7.41-7.35 (m, 4H), 7.05 (dd, J = 6.4, 6.4 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 3.91 (s, 3H)。
[第2工程]3−(2−(ベンジルオキシ)フェニル)−1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾールの調製
【0278】
【化43】
【0279】
(E)−1−(2−メトキシフェニル)−3−フェニルプロプ−2−エン−1−オン(300mg,1.26mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶解させ,アルゴン雰囲気下,−78℃でシリンジを用いて三臭化ホウ素(1.0mol/Lジクロロメタン溶液、2.52mL)を加えた。反応混合物を−78℃で30分間撹拌し,室温に戻して7時間撹拌した。反応溶液を飽和食塩水(150mL)にあけ、酢酸エチル(30mL)で4回抽出し,抽出液を飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥し,濾過した溶液を濃縮した。残渣をアセトンに溶解させ,炭酸カリウム(367mg,2.66mmol)存在下,ベンジルブロミド(239μL,2.01mmol)をシリンジを用いて加え,11時間加熱還流した。アセトンを留去し,酢酸エチル(30mL)で4回抽出し,飽和食塩水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥し,濾過した溶液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1:7(v/v))によって精製し,生成物として(E)−1−(2−(ベンジルオキシ)フェニル)−3−フェニルプロプ−2−エン−1−オン(287mg,0.91mmol,収率:69%(2工程))を得た。得られた化合物を2−メトキシフェニルヒドラジン塩酸塩(238mg,1.37mmol)と共にエタノール(20mL)に溶解させ,酢酸(2.0mL)を加えた。反応溶液をアルゴン雰囲気下で約20時間加熱還流した。溶媒をエバポレーターにより留去し,酢酸エチル(30mL)で4回抽出し,硫酸マグネシウムで乾燥し,濾過した溶液を濃縮した。残渣を2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(413mg,1.82mmol)と共にベンゼン(20mL)に溶解させ,85℃で16時間加熱した。反応溶液を室温に戻し,セライト濾過し,濾液を濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1:10(v/v))によって精製し,標題化合物を淡黄色アモルファス状物質として得た(249mg,0.570mmol,収率:63%(2工程))。
【0280】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ=8.13 (dd, J= 8.0, 1.6 Hz, 1H), 7.55-7.53 (m, 3H), 7.55- 7.17 (m, 10H), 7.13 (s, 1H), 7.07-7.03 (m, 3H), 6.87 (dd, J = 8.4, 1.2 Hz, 1H), 5.23 (s, 2H), 3.43 (s, 3H)。
【0281】
[第3工程]2−(1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノールの調製
【0282】
【化44】
【0283】
3−(2−(ベンジルオキシ)フェニル)−1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール(245mg,0.570mmol)を酢酸エチルに溶解させ,10%パラジウム担持活性炭(49mg)を加え,0.3MPaの水素雰囲気下で6時間接触還元を行った。反応混合物をセライト濾過し,濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1:10(v/v))によって精製し,標題の化合物を無色アモルファス状物質として得た(153mg,0.447mmol,収率:78%)。
【0284】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ =10.87 (s, 1H), 7.66 (dd, J = 8.7, 1.2 Hz, 1H), 7.47 (dd, J = 5.9, 1.5 Hz, 1H), 7.41-7.37 (m, 1H), 7.30-7.27 (m, 5H), 7.24- 7.21 (m, 1H), 7.08-7.02 (m, 2H), 6.96-6.92 (m, 1H), 6.90-6.88 (m, 2H), 3.45 (s, 3H)。
【0285】
[第4工程]4−(2−(1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸メチルの調製
【0286】
【化45】
【0287】
実施例1の第4工程と同様の手法により,2−(1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノールから4−(2−(1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸メチル(172mg,0.388mmol,81%)を無色油状物として得た。
【0288】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ=8.09 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 7.53 (dd, J = 7.8, 1.4 Hz, 1H), 7.37-7.33 (m, 1H), 7.30-7.23 (m, 7H), 7.08 (s, 1H), 7.07-6.96 (m, 4H), 6.86 (dd, J = 8.4, 1.2 Hz, 1H), 4.15(t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.66 (s, 3H), 3.43 (s, 3H), 2.63 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.27-2.19 (m, 2H)。
【0289】
[第5工程]4−(2−(1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸の調製
【0290】
【化46】
【0291】
実施例1の第5工程と同様の手法により,4−(2−(1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸メチルから4−(2−(1−(2−メトキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノキシ)ブタン酸(95.0mg,0.220mmol,58%)を無色アモルファス状物質として得た。
【0292】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ=7.83 (dd, J = 7.8, 1.8 Hz, 1H), 7.46 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 7.39-7.24 (m, 7H), 7.05-6.98 (m, 3H), 6.92-6.88 (m, 2H), 4.14(t, J= 6.0 Hz, 2H), 3.49 (s, 3H), 2.56 (t, J= 7.2 Hz, 2H), 2.21-2.15 (m, 2H)。
【0293】
高分解能質量分析(FAB, [M+H]
+) C
26H
25N
2O
4, 計算値 429.1814, 実測値 429.1827。
【0294】
試験例1:FABP3リガンド活性評価
FABP3リガンド活性評価に対する評価には,1,8−ANS(1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸)を用いた蛍光ディスプレースメントアッセイを採用した。1,8−ANSのような蛍光性物質は,疎水性の環境下において,蛍光強度が増加する性質を有する。この性質を利用し,1,8−ANSをFABPの疎水性リガンド結合部位に各化合物と競合的に結合させ,1,8−ANSを用いる実験系で使用される波長である励起波長355nm,測定波長460nmでその蛍光強度を比較することにより,各化合物のFABPに対するリガンド活性を評価した。化合物の希釈溶媒はエタノールを採用した。
【0295】
測定用96穴プレートとしてNunc製の黒色プレートを使用し,各ウェルに,40μLのリン酸ナトリウムバッファー及びFABP3(AVISCERA BIOSCIENCE社製)のリン酸ナトリウムバッファー溶液(250nM、25μL)を加え,ブランクには25μLのリン酸ナトリウムバッファーを加えた.各ウェルに検出試薬として1,8−ANS(ALDRICH社製)溶液(10μM、エタノール/リン酸ナトリウムバッファー溶液=1:4 v/v、25μL)を加え,各種濃度に希釈した化合物のエタノール溶液を10μLずつ加えた(最終エタノール濃度は15%)。プレートリーダー内で10秒間振盪し,室温で10分間インキュベートした.その後,励起波長355nm,測定波長460nmで蛍光測定した。測定にはパーキンエルマージャパン(株)製 ARVO
TM X Oneを使用した。評価した化合物は,1×10
−5M,1×10
−6M,1×10
−7M,1×10
−8Mの4点で評価した。また,ポジティブコントロールとしてFABP3との親和性を有するオレイン酸,ネガティブコントロールとして,リガンドの溶媒であるエタノールを用いた。
【0296】
試験例2:FABP4リガンド活性評価
FABP4の評価もFABP3と同じく1,8−ANSを用いた蛍光ディスプレースメントアッセイを採用した。FABP4についてはCayman Chemical Companyから販売されているアッセイキット(FABP4 Inhibitor/Ligand Screening Assay Kit)を用いて評価した。化合物を溶解する溶媒はエタノールを用い,ポジティブコントロールにはキット付属のアラキドン酸を用いた。測定手順は上記のFABP3アッセイと同様に行った。
測定は各2回行い,その平均値を測定結果とした。IC
50の算出には,Light Stone社のPCソフトOriginを用いた。評価結果を表1に示す。
【0297】
【表1-1】
【0298】
【表1-2】
【0299】
試験例3:α−シヌクレインオリゴマー形成阻害活性試験
既存の方法に従い(Shioda ら, J Biol Chem 2014;289:18957-18965)PC12細胞にα−シヌクレイン及びFABP3の遺伝子をトランスフェクションし、血清含有DMEM(10% ウマ血清, 5%牛新生仔血清, ペニシリン/ストレプトマイシン含有)中で、該細胞をリガンド(実施例1〜4の化合物、10μM)により16時間処置した。それらの細胞をホモジナイズしたサンプルを、未変性条件で5〜13.5%ポリアクリルアミドゲルで80mAで3時間泳動し、その後PVDFメンブレンに70V定電圧下で2時間転写し、ウエスタンブロッティングに供した。
【0300】
結果を
図1に示す。培養液中にの添加により、FABP3リガンド(実施例1〜3、10μM)の化合物を添加した系ではα−シヌクレインのオリゴマー形成が抑制されたのに対し、比較例1の化合物を添加した系ではオリゴマーの形成が抑制されたなかったことが確認された。
【0301】
試験例4:α−シヌクレイン凝集抑制効果確認のためのin vivo試験
無菌リン酸緩衝液生理食塩液(pH=7.4)中で、ヒトα−シヌクレインリコンビナントタンパク質(5μg/μL、rPeptide., Bogart,GA)を37℃、100rpmの条件下で7日間インキュベーションし、線維化ヒトα−シヌクレイン(α-Syn PPF 、シヌクレイン凝集体)を作製した。無菌リン酸緩衝液生理食塩液(pH=7.4)中で超音波処理後、10週齢の雄性 C57BL6 N マウス(12時間の明暗サイクル(明期9:00-21:00;暗期21:00-9:00)温度23±1℃、湿度55±5%の条件下で飼育)の右側黒質領域 (Bregma から後方3.3mm,右方1.2mm,深さ3.85mm)にα-Syn PPF を流速0.2μL/分で10μgを脳定位固定装置に脳固定後マイクロシリンジで注入した。手術24時間後、溶媒(n=3)またはFABP3リガンド(実施例1の化合物、1.0mg/kg,p.o.、n=3)を一日一回四週間投与した。各行動薬理試験終了後、マウスを還流固定し、一匹のマウスから各領域(前頭前皮質、線条体、背側海馬、黒質腹側被蓋野領域)の50μmの脳切片3枚を作製した。リン酸化α−シヌクレイン (ser129) (α-Syn S129) 抗体(Abcam, Cambridge, UK)を用い、α−シヌクレイン凝集体を免疫組織化学染色法により同定した。
図2に示すように、FABP3 リガンド投与群においては、α−シヌクレイン凝集体(封入体)形成の抑制が確認された。
【0302】
図3は、α-Syn S129 陽性細胞がみられた脳領域を累積でプロットしたものである(両群n=3)。各個体のα-Syn PPFを注入した側にα−シヌクレイン凝集体が生じていること、およびFABP3 リガンド投与群において凝集が抑制されることが確認された。
【0303】
染色した脳切片においてα-Syn S129 陽性細胞数をカウントし、測定脳領域の面積で標準化した結果を
図4のグラフに示す(両群n=3)。FABP3リガンド投与群において凝集が抑制されることが確認された。
【0304】
試験例5:運動機能評価
α-Syn PPF 注入マウスに一日一回四週間、溶媒(n=3)またはFABP3リガンド(実施例1の化合物、1.0mg/kg,p.o.、n=3)を投与し、ローターロッド試験およびビームウォーキング試験により運動機能を評価した。ローターロッド試験はマウスをローラーの上に載せ、20rpmの速度でローラーを回転させた際にマウスが落下するまでの時間(Latency)を測定した。落下するまでの時間はリガンド投与群で減少傾向が確認された。ビームウォーキング試験は細い板の上にマウスを置き歩行させ、ゴールボックスに辿り着くまでに足を踏み外した回数を測定した。結果を
図5に示す。ビームウォーキング試験ではリガンド投与群において踏み外し回数の減少傾向が確認された。
【0305】
試験例6:認知機能評価試験
α−Syn PPF 注入マウスに一日一回四週間、溶媒(n=3)またはFABP3リガンド(実施例1の化合物、1.0mg/kg,p.o.、n=3)を投与し、新規物体認識試験により、認知機能を評価した。新規物体認識試験は、訓練試行では同じ形の物体を置きマウスに記憶させ、試験試行では片方の物体を新規物体に代え、両物体に対する接触割合を評価した。結果を
図6に示す。新規物体認識試験では、リガンド投与群において新規物体と既知物体の間で接触割合に大きな差があり、認知機能の改善傾向が確認された。
【0306】
試験例7:パーキンソン病モデル動物を用いた認知機能評価試験
ドパミン神経毒である1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP、25mg/kg,i.p.、Sigma-Aldrich社(St Louis, MO)より購入)を10週齢の雄性 C57BL6 N マウスに一日一回五日間連続投与し、パーキンソン病モデル動物を作製した。MPTP最終投与24時間後から溶媒またはFABP3リガンド(実施例3の化合物、1.0mg/kg,p.o.、各群n=7)を一日一回二週間投与した。認知機能障害がみられるMPTP投与四週間後に新規物体認識試験により認知機能を評価した。結果を
図7に示す。MPTP投与後に溶媒のみを投与した群(対象群)では認知機能障害が確認されたのに対し、リガンド投与群では障害が見られなかった。
【0307】
試験例8:パーキンソン病モデル動物を用いた運動機能評価試験
MPTP最終投与24時間後から溶媒またはFABP3リガンド(実施例3の化合物)(1.0mg/kg,p.o.、各群n=7)を一日一回二週間投与した。運動機能障害がみられるMPTP投与三週間後にローターロッド試験およびビームウォーキング試験により、運動機能を評価した。結果を
図8に示す。ローターロッド試験では溶媒のみを投与した群(対象群)でLatancy が有意に減少し、リガンド投与群で完全に回復した。ビームウォーキング試験では対象群で足を踏み外す回数が有意に上昇し、リガンド投与群で完全に回復した。両試験において、MPTP投与後に生じた運動機能障害が、リガンド投与群では回復したことが確認された。
【0308】
試験例9:パーキンソン病モデル動物を用いた運動機能評価試験
MPTP(25mg/kg,i.p.)を10週齢の雄性C57BL6 N マウスに一日一回五日間連続投与し、パーキンソン病モデル動物を作製した。MPTP最終投与24時間後から溶媒(n=6)、FABP3リガンド(実施例1の化合物、0.1mg/kg(n=5),0.5mg/kg(n=7),または1.0mg/kg(n=6),p.o.)、FABP3リガンド(実施例3の化合物、1.0mg/kg,p.o.)および非FABP3リガンド(比較例1の化合物、1.0mg/kg,p.o.)を一日一回投与した。運動機能障害がみられるMPTP投与後三週目において、ローターロッド試験及びビームウォーキング試験により運動機能を評価した。結果を
図9に示す。ローターロッド試験では溶媒のみを投与した群(対象群)で低下したLatencyは実施例1および3の化合物で有意に改善し、比較例1の化合物では改善しなかった。ビームウォーキング試験では足を踏み外す回数がMPTP投与で有意に上昇し、実施例1および3の化合物で有意に改善し、比較例1の化合物では改善しなかった。すなわち、比較例1の化合物投与群においては効果が確認できなかったのに対し、実施例1および3の化合物投与群では有意に効果が確認された。
【0309】
試験例10:パーキンソン病モデル動物を用いた認知機能評価試験
MPTP(25mg/kg,i.p.)を10週齢の雄性C57BL6 N マウスに一日一回五日間連続投与し、パーキンソン病モデル動物を作製した。MPTP最終投与24時間後から溶媒(n=6)、FABP3リガンド(実施例1の化合物、0.1mg/kg(n=5),0.5mg/kg(n=7),または1.0mg/kg(n=6),p.o.)、FABP3リガンド(実施例3の化合物、1.0mg/kg,p.o.)および非FABP3リガンド(比較例1の化合物、1.0mg/kg,p.o.)を一日一回投与した。認知機能障害がみられるMPTP投与後四週目に新規物体認識試験および受動回避試験を用い認知機能について評価した。受動回避試験は、訓練試行では明室にマウスを入れ、暗室にマウスが入った際に電気刺激(0.3mA,2秒)を与えた。24時間後にもう一度マウスを明室にいれ、暗室に入るまでの時間を測定した。結果を
図10に示す。
【0310】
比較例1の化合物投与群においては効果が確認できなかったのに対し、実施例1および3の化合物投与群では有意に効果が確認された。
【0311】
試験例11:パーキンソン病モデル動物を用いたドパミン神経保護評価試験
MPTP(25mg/kg,i.p.)を10週齢のC57BL6 Nマウスに一日一回5日間連続投与し、パーキンソン病モデル動物を作製した。MPTP最終投与24時間後から溶媒(n=6)、FABP3リガンド(実施例1の化合物、0.1mg/kg(n=5),0.3mg/kg(n=6)または1.0mg/kg(n=4),p.o.)、FABP3リガンド(実施例3の化合物、1.0mg/kg(n=4),p.o.)および非FABP3リガンド(比較例1の化合物、1.0mg/kg(n=7),p.o.)を一日一回投与した。ドパミン神経の脱落およびα−シヌクレイン多量体形成がみられるMPTP投与後4週目においてマウスを灌流固定し、50μmの厚さで黒質領域を含む脳切片を作製した。ドパミン神経のマーカー蛋白質であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)抗体(Immunostar社製、mouse monoclonal antibody 22941、1:1000)と反応させ、蛍光標識された二次抗体(Alexa 594 anti-mouse IgG (Jackson ImmunoResearch社製、1:500))で検出し、陽性細胞数を評価した。結果を
図11に示す。
【0312】
溶媒のみ投与群で低下したTH陽性細胞数は実施例1および3の化合物の投与により有意に改善し、比較例1の化合物では改善しなかった。すなわち、比較例1の化合物ではドパミン神経細胞数に改善効果が確認できなかったのに対し、実施例1および3の化合物投与群では有意に効果が確認された。
【0313】
試験例12:パーキンソン病モデル動物を用いたα-シヌクレイン凝集抑制評価試験
MPTP(25mg/kg,i.p.)を10週齢のC57BL6 Nマウスに一日一回5日間連続投与し、パーキンソン病モデル動物を作製した。MPTP最終投与24時間後から溶媒(n=6)、FABP3リガンド(実施例1の化合物、0.1mg/kg(n=5),0.3mg/kg(n=6)または1.0mg/kg(n=4),p.o.)、FABP3リガンド(実施例3の化合物、1.0mg/kg(n=4),p.o.)および非FABP3リガンド(比較例1の化合物、1.0mg/kg(n=7),p.o.)を一日一回投与した。ドパミン神経の脱落およびα−シヌクレイン多量体形成がみられるMPTP投与後4週目においてマウスを灌流固定し、50μmの厚さで黒質領域を含む脳切片を作製した。TH抗体(Immunostar社製、mouse monoclonal antibody 22941、1:1000)およびα−シヌクレイン抗体(Santa Cruz社製、rabbit polyclonal antibody SC-7011-R、1:200)と反応させ、蛍光標識された二次抗体(Alexa 488 anti-rabbit IgG (Jackson ImmunoResearch社製、1:500))で検出し、陽性細胞数を評価した。結果を
図12に示す。
【0314】
溶媒のみ投与群で増加したTHおよびα−シヌクレイン二重陽性細胞数は実施例1の化合物で改善し、実施例3では改善傾向がみられた。一方、比較例1の化合物では改善しなかった。すなわち、シヌクレインの凝集が生じていないドパミン神経細胞数に関して、比較例1の化合物では改善効果が確認できなかったのに対し、実施例1および3の化合物投与群では有意に効果が確認された。
【0315】
試験例13:ANSを用いたFABPリガンドの親和性評価試験
大腸菌[BL21(DE3)株]にGST−FABP3およびGST−FABP4をそれぞれ発現させたのち、グルタチオンカラムを用いてアフィニティー精製を行った。
【0316】
GST−FABP3およびGST−FABP4ベクターのクローニングは以下の方法で行った。マウス心臓から単離したmRNAをcDNAに逆転写したのち、PCR法によりFABP3遺伝子(RefSeqID:NM_010174.1)およびFABP4遺伝子(RefSeqID:NM_024406.2)をそれぞれ増幅させた。これらのcDNAをそれぞれDNA ligasion kit(タカラバイオ、草津)およびIn-fusion kit(タカラバイオUSA、CA,USA)を用いて、pGEX−2Tベクター(GEヘルスケアジャパン、東京)のBamHI/EcoRI切断部位の間に挿入することで、ベクターを作製した。
【0317】
図15にシーケンシングを行ったGST−FABP3およびGST−FABP4の塩基配列を記載する(最初と最後のGGATTCおよびGAATTC が制限酵素切断部位である)。
【0318】
GST結合タンパク質の精製は、GST purification kit(タカラバイオUSA)を用いて行った。大腸菌を遠心により回収したのち、付属のExtractionバッファーと酸化アルミニウム粉末を加え、乳鉢で破砕した。遠心した上清を付属のグルタチオンカラムに加え、氷上で30分間静置した。その後、カラム内の上清を捨て、Extractionバッファーで洗浄を行ったのち、グルタチオンを含む溶出バッファーで溶出した。溶出産物のタンパク質濃度を280 nm の吸光度から算出したのち、ANSアッセイに用いた。
【0319】
FABPタンパク質と結合し蛍光を発する1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸(ANS,最終濃度4mM、10mM KH
2PO
4,40mM KCl,pH7.4の溶液中)とFABPタンパク質(最終濃度0.4mM)、さらに各種リガンドを0nM、100nM、1000nM、2000nM、4000nM (最終)の濃度で2分間インキュベートしたのち、ANSの蛍光を測定した(Ex/Em=355nm/460nm)。各リガンド濃度における蛍光強度をリガンド非存在下におけるANS蛍光強度に対する相対値(%)に変換したのち、以下の等式を用いて非回帰分析により解離定数Kd(nM)を算出した。
【0320】
F=F
0−{[1+(P
t+L
t)Ka−[(P
t−L
t)
2Ka
2+2(P
t+L
t)Ka+1]
1/2]/[2P
tKa]}(F
0−F
max)
F:ある条件における相対蛍光強度(%);
F
0:リガンド非存在下における蛍光強度(=100);
P
t:FABPタンパク質濃度(=400nM);
L
t:リガンド濃度(=100,1000,2000,4000nM);
Ka:解離定数Kdの逆数(nM
−1);
F
max*:FABPがリガンドにより完全に占有された時の相対蛍光強度。
【0321】
結果を表2に示す。リガンドとして使用したLigands 1〜10は、それぞれ実施例1〜3の化合物、比較例1の化合物、実施例10〜15の化合物を使用した。その構造式を以下に示す。
【0322】
【化47】
【0323】
【化48】
【0324】
【化49】
【0325】
今回、リガンドの溶解性の観点から、L
t=100,000nM(リガンド6および8以外),20,000nM(リガンド6および8)時の相対蛍光強度をFmaxとした。
【0326】
測定結果に基づいて算出した解離定数Kdを以下の表に示す。
【0327】
【表2】
【0328】
上記表のKd値は3回の測定の平均±SEとして表示されている。
【0329】
なお、図面に示す試験結果において、*および**はそれぞれコントロールに対する有意差p<0.05、およびp<0.01であることを示し、#および##はそれぞれMPTP投与後に溶媒を投与した群に対する有意差がp<0.05、およびp<0.01であることを示す。