(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鉄骨造建築物等においては、露出型柱脚構造が多く採用されており、この露出型柱脚構造は、鉄筋コンクリートの基礎に埋め込まれたアンカーボルトと、鉄骨の柱脚に溶接されたベースプレートとをナットで締結することで、建築物を基礎に接合するようになっている。
【0003】
地震により設計者の意図しない態様で柱脚部が変形又は破壊された場合、建築物の倒壊を引き起こすことがある。このため、建築物の健全性を保つためには、柱脚部が変形又は破壊されていないことが要求される。また、建築物の健全性を保つためには、柱脚部だけでなく他の重要な接合部が破壊されていないことも要求される。したがって、接合部の健全性を判定するためには、接合部の状態をモニタリングすることが必要となる。
【0004】
そこで、従来、加速度計、光ファイバーやレーザー変位計等を用いて構造物の状態をモニタリングするモニタリングシステムが導入されている。しかし、このモニタリングシステムは、システム全体が複雑かつ高価であり、光ファイバー中に光を伝搬させるための電源設備も必要であるため、運用のためのシステム費用も高くなってしまう。
【0005】
また、特に比較的小規模な構造物等に対しては、システム自体が大きく経費が嵩むため、経済的にも合致し得ないという問題点があった。このような理由から、現状では、例えば20年以上の長期に渡って構造物等の接合部をモニタリングすることは行われていなかった。
【0006】
このような問題点を解決すべく、本発明者は、特許文献1に記載のボルト型歪み検出器を提案した。特許文献1のボルト型歪み検出器は、頭部と軸部を備え軸方向に貫通する軸孔が形成されている頭部側部材と、軸部のみからなり基端から先端に向かう軸孔が形成されている先端側部材とが、軸方向で間隔をあけた状態で配置されている。このボルト型歪み検出器は、頭部側部材と先端側部材の軸孔にピエゾケーブルを内蔵するセンサロッドが挿通され、頭部側部材と先端側部材とがセンサロッドの両端部で結合されて、全体がボルト形状に一体化されており、ピエゾケーブルのリード部を頭部側から外部へ引き出すように構成されている。
【0007】
特許文献1に記載のボルト型歪み検出器は、既存の構造物のボルト挿入孔を利用して、容易に且つ長期間にわたって安定的に取り付けることができ、かつ頭部側部材と先端側部材とが離間し、中間部にはセンサロッドが存在するだけの構造なので、変形しやすく、構造物の撓みや捩れなどの変形を高感度で検出することができる。
【0008】
また、このボルト型歪み検出器は、ピエゾケーブルを用いたことによる簡単、安価で、センサ電源を必要としない構造であることから、容易に多点に設置でき、長期間にわたって安定的に測定し続けることができる。このため、このボルト型歪み検出器は、各種土木・建築構造物等の健全性モニタリングシステムに好適に用いることができる。
【0009】
また、本発明者は、特許文献2に記載のリミット型変位検出器を提案した。特許文献2の
図5から
図7に記載のリミット型変位検出器は、木造の建築物における柱、梁、桁等の仕口に形成された孔部のうち、使用しないドリフトピン用の孔部に挿入して、建築物の健全性をモニタリングするようになっている。
【0010】
このリミット型変位検出器は、ガラス管を試験管状に形成した支持部材を備えており、この支持部材の内部にピエゾフィルム(圧電素子)が全長にわたって配置されている。また、このリミット型変位検出器は、ドリフトピンを模した形状の金属管を備えており、この金属管の内部に支持部材がほぼ密着状態で挿入されている。
【0011】
そして、このリミット型変位検出器は、建物の柱および梁の仕口に形成した孔部に挿入された状態で、地震等の災害によって建物の架構が大きく変形して柱および梁間に損傷となる大きな変形が生じた際に、金属管が変形してガラス管からなる支持部材が破損するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の変位検出器は、構造物等の動的な振動や変位を検出するものであるため、構造物に小さな撓みや捩れ等の変形が生じた場合にも、変形に応じた電圧を出力する特性を有していた。
【0014】
このため、構造物等に健全性を失う程度の変位が発生していない場合であっても、変位に応じた多数の出力信号がボルト型歪み検出器から出力される。したがって、健全性が失われたことを表す信号を出力信号の中から識別して構造物等の健全性を判定するためには、出力に応じた変位の基準が必要であった。また、構造物が破壊限界に至る前だけ検出信号を発生するだけでは、破壊限界後の構造物の状態を推測できないため、構造物が破壊限界に至る前後に渡って検出信号を発生できることが求められていた。
【0015】
また、特許文献2に記載の変位検出器は、変形の仕方や変形する部位が仕口の形状に左右されるため常に一定でないという特性がある。このため、特許文献2に記載の変位検出器は、圧電素子の端部より外側で変形した場合、建築物の健全性を判定可能な有意な検出信号を発生できない場合がある。また、特許文献2に記載の変位検出器は、仕口の種類や形状によっては、仕口に発生した変形により金属管の複数の部位に局所的な剪断力が急激に作用し、破損していない状態から完全に破損されてノイズを多く発生して検出信号を発生できない状態に急激に変化する場合がある。
【0016】
したがって、特許文献2に記載の変位検出器は、仕口の種類や形状によっては、建築物の健全性を判定可能な検出信号を発生できない場合や、破壊限界後に検出信号の解析を困難にする場合が想定されるため、多くの改善の余地を残していた。
【0017】
そこで、本発明は、検出信号から構造物等の健全性を容易に判定でき、構造物等が破壊限界に至る前後に渡って検出信号を発生できるリミット型変位検出装置および構造物等の健全性モニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、少なくとも2つの構造部材が接合部で接合された構造物に用いられて、前記構造物の健全性を検知するリミット型変位検出装置であって、前記接合部に跨がって前記構造物に固定され、前記構造物の健全性を損なう加力によって塑性変形する金属からなる第1の拘束部材と、前記第1の拘束部材に固定され、前記構造物の健全性を損なう加力によって破損する脆性部材からなる第2の拘束部材と、前記第2の拘束部材の表面に密着して接合されることで前記第2の拘束部
材により形状が拘束され、前記第1の拘束部材が塑性変形する際の前記第2の拘束部材の破損の進行に応じた検出信号を発生する検出素子と、を備え、前記検出素子が圧電素子からなり、前記第1の拘束部材が、前記接合部に跨がって前記構造物に固定された第1の取付部材および第2の取付部材と、前記第1の取付部材により軸方向の一端部と他端部が支持され、かつ、前記第2の取付部材により軸方向の中央部が支持された円筒状の金属管と、からなり、前記第2の拘束部材が、内面に前記圧電素子が固定されて前記圧電素子を密閉し、かつ、外面に前記金属管が密接して前記金属管により覆われる円筒状の硬質ガラス管からなることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記金属管は、前記一端部に配置され、前記一端部から軸方向に向かって拡径する円錐状のテーパ金具と、前記テーパ金具に螺号した状態で前記テーパ金具の前記他端部寄りに配置され、前記他端部側から操作されることで前記テーパ金具を前記他端部側に移動させるねじ機構と、を備え、前記ねじ機構が操作されることで、前記一端部の外径が前記テーパ金具により拡径されて前記第1の取付部材に嵌め合わされることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記圧電素子は、前記硬質ガラス管の内面に沿って円弧状に湾曲した状態で密着状態で固定されることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、少なくとも2つの構造部材が接合部で接合された構造物に用いられて、前記構造物の健全性を検知するリミット型変位検出装置であって、前記接合部に跨がって前記構造物に固定され、前記構造物の健全性を損なう加力によって塑性変形する金属からなる第1の拘束部材と、前記第1の拘束部材に固定され、前記構造物の健全性を損なう加力によって破損する脆性部材からなる第2の拘束部材と、前記第2の拘束部材の表面に密着して接合されることで前記第2の拘束部材および前記第1の拘束部材により形状が拘束され、前記第1の拘束部材が塑性変形する際の前記第2の拘束部材の破損の進行に応じた検出信号を発生する検出素子と、を備え、前記検出素子が圧電素子からなり、前記第1の拘束部材が、帯状の金属板と、前記金属板の両端部に一体に設けられ、かつ、前記接合部に跨がって前記構造物に固定された第1の取付部材および第2の取付部材と、からなり、前記第2の拘束部材が、前記金属板との間に前記圧電素子を挟み込んだ状態で樹脂により前記圧電素子を密閉し前記金属板に固定された帯状の硬質ガラス板からなることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のリミット型変位検出装置と、前記リミット型変位検出装置の検出信号が入力され、前記検出信号に基づいてマイコンのプログラムにより危険度を自律的に判定して表示する放置装置と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記リミット型変位検出装置の前記検出信号を、有線又は無線の電気通信網を介して、前記報知装置に伝送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リミット型変位検出装置は、大地震等の構造物等の健全性を損なう加力によって、第1の拘束部材が塑性変形し、第2の拘束部材が破損し、この破損状態に応じた検出信号を検出素子が出力する。
【0020】
このため、リミット型変位検出装置は、建造物等の変形又は破損の指針となる検出信号を発生できる。したがって、検出信号から構造物等の健全性を容易に判定できる。
【0021】
さらに、リミット型変位検出装置は、第2の拘束部材が第1の拘束部材に固定されているため、構造物等が破壊限界に至って第2の拘束部材が破損した後も検出素子が検出信号を発生できる。
【0022】
この結果、検出信号から構造物等の健全性を容易に判定でき、構造物等が破壊限界に至る前後に渡って検出信号を発生できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るリミット型変位検出装置および構造物等の健全性モニタリングシステムの実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るリミット型変位検出装置を示す図である。
【0025】
[リミット型変位検出装置]
図1、
図2において、露出型柱脚構造を有する建築物1は、鉄鋼製の柱脚2と、鉄筋コンクリート製の基礎4とを備えている。柱脚2の下部には、鉄鋼製のベースプレート3が溶接により固定されている。基礎4には、アンカーボルト5が埋設されている。この建築物1は、アンカーボルト5にナット6を締結することで、柱脚2がベースプレート3を介して基礎4に接合されている。この建築物1は、本発明における構造物を構成している。
【0026】
建築物1には、柱脚2と基礎4との接合部1Aを跨がってリミット型変位検出装置10が設けられている。リミット型変位検出装置10は、柱脚2と基礎4との変位をモニタリングするものである。
【0027】
リミット型変位検出装置10は、変位に応じた出力信号を発生するリミット型変位検出ユニット30と、このリミット型変位検出ユニット30を建築物1に取付ける圧延鋼板からなる専用取付金具21、22、23とを有する。
【0028】
専用取付金具21は、倒立したL字状の全体形状を有している。専用取付金具21は、柱脚2のベースプレート3の上面に2つのボルト24で締結される水平部21Aと、この水平部21Aの端部から鉛直下方に延伸する鉛直部21Bとを有する。専用取付金具21は、水平部21Aに形成された孔21A1にボルト24を締結することでベースプレート3に固定される。
【0029】
専用取付金具22は、コの字状の全体形状を有している。専用取付金具22は、専用取付金具21の鉛直部21Bに2つのボルト25で締結される鉛直部22Aと、この鉛直部22Aの端部から水平に延伸する2つの支持部22B、22Cとを有している。支持部22B、22Cには、それぞれ支持孔22B1、22C1が形成されており、支持孔22B1、22C1には、リミット型変位検出ユニット30が挿通されている。
【0030】
このように、柱脚2のベースプレート3に取付けられた専用取付金具21、22は、支持部22B、22Cによりリミット型変位検出ユニット30の一端部および他端部を支持している。本実施の形態の専用取付金具21、22は、本発明における第1の取付部材を構成している。
【0031】
一方、専用取付金具23は、L字状の全体形状を有している。専用取付金具23は、基礎4の上面に2つのボルト26で締結される水平部23Aと、この水平部23Aの端部から鉛直上方に延伸する鉛直部23Bと、この鉛直部23Bの中央部から水平方向に延伸する支持部23Cとを有する。支持部23Cには支持孔23C1が形成されており、この支持孔23C1には、リミット型変位検出ユニット30が挿通されている。
【0032】
なお、水平部23Aには2つの長孔23A1が形成されており、この長孔23A1に2つのボルト26を締結することで基礎4に対する専用取付金具23の位置を調整することができる。また、専用取付金具23の位置を調整することで、3つの支持孔22B1、22C2、23C1を同軸上に整列させることができる。
【0033】
このように、専用取付金具23の支持部23Cは、リミット型変位検出ユニット30の軸方向の中央部を支持している。本実施の形態の専用取付金具23は、本発明における第2の取付部材を構成している。このリミット型変位検出装置10において、前述したように専用取付金具21は建築物1のベースプレート3の上面に取付けられており、専用取付金具23は建築物1の基礎4の上面に取付けられている。このため、建築物1の完成後であっても、リミット型変位検出装置10を建築物1に設置することができる。
【0034】
図3において、リミット型変位検出ユニット30は、圧電素子31と、圧電素子31を密閉する硬質ガラス管32と、硬質ガラス管32の外面に密接した状態で硬質ガラス管32を覆う円筒状の金属管33とを有している。
【0035】
圧電素子31は、帯状のピエゾフィルムからなり、形状変化等の変位が生じた場合に、検出信号である変形や破損に応じた電圧を発生するようになっている。圧電素子31は本発明における検出素子を構成している。なお、検出素子としては、圧電素子31に代えて導電性樹脂または歪みゲージを用いることができるが、圧電素子31は電源が不要であるので好適である。
【0036】
硬質ガラス管32は、脆性部材である硬質ガラスを試験管と同様の形状に形成したものからなる。硬質ガラス管32は、一端部が閉じられて他端部が開口している。硬質ガラス管32の他端部は、封止部材34により封止されている。硬質ガラス管32の内面には、圧電素子31が固定されている。圧電素子31は、円弧状に湾曲した状態で、紫外線硬化樹脂等からなる接着剤により、硬質ガラス管32の内面に沿って密着して固定されている。
【0037】
圧電素子31の他端部には出力用ケーブル35が接続されており、この出力用ケーブル35は、封止部材34を貫通して、硬質ガラス管32の他端部側に引き出されている。
【0038】
金属管33は、建築物1の健全性を損なう加力によって塑性変形する圧延鋼板からなる。金属管33の他端部側には円形のナット37が螺合されている。ナット37は、封止部材34に圧接しており、金属管33における硬質ガラス管32の軸方向の位置を、封止部材34を介して位置決めしている。また、ナット37は、支持部22Cに突き当たることで、金属管33を軸方向に位置決めしている。なお、硬質ガラス管32と金属管33とは、ゆるみばめ程度の公差で嵌め合わされている。
【0039】
圧電素子31は、硬質ガラス管32に密閉された状態で、硬質ガラス管32および金属管33により形状が拘束されている。この金属管33は、前述した第1の取付部材および第2の取付部材としての専用取付金具21、22、23とともに、本発明における第1の拘束部材を構成している。硬質ガラス管32は、本発明における第2の拘束部材を構成している。
【0040】
具体的には、硬質ガラス管32および金属管33は、建築物1に変位が発生していない通常の状態において、硬質ガラス管32および金属管33の双方が円筒状の形状を維持し、圧電素子31の形状を拘束するようになっている。
【0041】
本実施の形態では、硬質ガラスからなる硬質ガラス管32と金属からなる金属管33は、大地震等により建築物1の健全性を損なう加力が支持部22B、22Cと支持部23Cとの間に作用した際に、双方の延性、降伏強度、靭性、脆性等により、ほぼ同じタイミングで変形又は破損し、圧電素子31の拘束を解除するように構成されている。
【0042】
すなわち、本発明における「健全性を損なう加力」とは、圧電素子31を拘束している金属管33と硬質ガラス管32が変形又は破損する程度の変位を引き起こす加力のことである。なお、「破損」とは、硬質ガラス管32に亀裂が入った状態も含む。圧電素子31は、硬質ガラス管32に亀裂が入った状態でも、この亀裂を検出して、変形や破損に応じた電圧を出力する。
【0043】
ここで、健全性とは、地震等による力(加速度)が建築物1等の構造物等に作用した際、構造物として存在し得る状態をいい、例えば、本震時に加わった力より弱い力が余震等より作用したとしても、構造物等の破損(倒壊)のおそれがない状態をいう。
【0044】
建築物1の健全性を損なう加力が建築物1およびリミット型変位検出装置10に作用した際は、金属管33と硬質ガラス管32が、ほぼ同じタイミングで変形や破損し、圧電素子31は、金属管33と硬質ガラス管32とによる拘束から、限定された部分のみが解放される。
【0045】
より詳しくは、建築物1の健全性を損なう加力が建築物1に作用した際は、建築物1の健全性を損なう加力によって、
図3において、軸方向の中央部の支持部23Cに対して両端部の支持部22B、22Cが矢印で示す剪断方向に変位する。この剪断方向の変位により、金属管33は、
図3に破線で示すように、支持部22B、22C、23C、の間隔等によって予め設定された変形態様で、V字状に屈曲またはU字状に湾曲するように変形する。そして、塑性変形した金属管33に押圧された硬質ガラス管32は、変形して破損する。このときの硬質ガラス管32の破損は、小さな亀裂から大きな破断へと断続的に成長する態様で進行する。
【0046】
そして、圧電素子31は、拘束から解放されたタイミングで変形又は破損に応じたパルス状の出力電圧を発生する。すなわち、圧電素子31は、硬質ガラス管32の破損が進行して亀裂が成長する度にパルス状の大きな出力電圧を発生する。このため、圧電素子31が出力する電圧は、新たな増幅装置等により増幅することなく報知器等の機器で検出可能な大きな値となる。
【0047】
このように、リミット型変位検出装置10は、静的な変動を検出する静的荷重センサであり、中小地震時に小さな撓みや捩れ等の変形が生じた場合には電圧を出力せず、大地震時に大きな変位が発生したときのみに初めて、変形又は破損に応じた電圧を出力するようになっている。また、硬質ガラス管32が破損した後であっても、圧電素子31は破断しておらず、塑性変形した金属管33と破損した硬質ガラス管32とに支持されている。このため、硬質ガラス管32が破損した後であっても、圧電素子31が出力電圧を発生可能な状態であり、圧電素子31からの出力電圧を監視することで建築物1の状態を推定できる。なお、金属管33の材料として真鍮を用いてもよい。すなわち、金属管33は、建築物の変位を金属管33に伝達する専用取付金具21、22、23よりも軟質な材料から構成されていてもよい。これにより、専用取付金具21、22、23より先に金属管33が降伏して塑性変形するように設定できる。したがって、拘束部材としての金属管33および専用取付金具21、22、23は、建築物1の柱脚2の破壊限界に相当した変位の出力を得るのが目的であるため、強度を求める必要はない。建築物1の変位量と金属管33の変形量との間に一定の相関を持たせることができるセンサの計測強度であればよい。
【0048】
図4において、金属管33の一端部には、軸方向に延伸する4条の切り溝33Bが形成されている。また、金属管33の一端部には、一端部から軸方向の外方に向かって拡径する円錐状のテーパ金具39と、このテーパ金具39に螺合した状態でテーパ金具39の他端部寄りに配置されたねじ機構40と、が設けられている。ねじ機構40は、他端部側から操作されることでテーパ金具39を他端部側に移動させるようになっている。
【0049】
具体的には、
図4、
図5において、ねじ機構40は、テーパ金具39に螺合したフランジボルト41と、このフランジボルトの頭部41Aに形成された鍔状のフランジ部41Bと、このフランジ部41Bと軸方向で対向する金属管33の小径部33Aとを有している。なお、
図5では、硬質ガラス管32および圧電素子31を図示省略している。
【0050】
小径部33Aは、金属管33の一端部において内径が狭められた部分であり、フランジ部41Bに軸方向に当接することで、フランジボルト41が金属管33の一端部側に移動することを規制している。フランジボルト41は、金属管33の他端部側から挿入されたドライバ等の工具により、テーパ金具39を頭部41A側に引き寄せるように回転される。
【0051】
ねじ機構40が工具により操作されると、
図3に示すように、テーパ金具39が金属管33の他端部に向かって移動して切り溝33Bを広げるため、金属管33の一端部がテーパ金具39により挿入した穴径より拡径される。
【0052】
これにより、金属管33の一端部は、支持部22Bの支持孔22B1に密接した状態となり、支持部22Bに強固に支持される。なお、このねじ機構40では、金属管33の4条の切り溝33Bにテーパ金具39が食い込むため、テーパ金具39がフランジボルト41と供回りしてしまうことが防止される。
【0053】
[リミット型変位検出装置の出力電圧]
次に、建築物1に加力試験1、2を実施した際の本発明によるリミット型変位検出装置10の出力電圧について説明する。ここで、加力試験1は、建築基準法における中小地震を模したものであり、建築物1の健全性を損なわない大きさの加力を実施する試験である。加力試験2は、建築基準法における大地震を模したものであり、建築物1の健全性を損なう大きさの加力を実施する試験である。
【0054】
この加力試験1、2では、柱脚2におけるベースプレート3の下面から上方の所定距離に加力心を設定し、この加力心において柱脚2に油圧ジャッキで水平加力を作用させた。また、加力方向は、アンカーボルト5に引っ張り荷重が作用する方向とした。
【0055】
加力試験1では、加力心における柱脚2の水平方向変位量が6mmとなるように加力を実施した。水平方向変位量が6mmのときに変形角は1/200[rad]となった。変形角とは、柱脚2の水平方向変位量を、ベースプレート3の下面から加力心までの距離で除算した値である。この加力試験1では、油圧ジャッキの圧力を漸次増大させてゆき、約170秒経過時に90[kN]で柱脚2の破壊限界となり加力を停止した。
【0056】
加力試験2では、加力心における柱脚2の水平方向変位量が18mmとなるように加力を実施した。水平方向変位量が18mmのときに変形角は1/67[rad]となった。この加力試験2では、油圧ジャッキの圧力を漸次増大させてゆき、240秒経過時に140[kN]で柱脚2が破壊に至った。
【0057】
この加力試験1、2では、リミット型変位検出装置10の出力電圧を計測するとともに、リミット型変位検出装置10の近傍のベースプレート3上に配置した図示しない比較用のボルト型歪検出センサの出力電圧を計測した。比較用のボルト型歪検出センサは、動的な変動を検出する動的荷重センサであり、小さな撓みや捩れ等の変形に対しても、変形に応じた電圧を出力する特性を有している。比較用のボルト型歪検出センサの出力電圧は、リミット型変位検出装置10の出力電圧よりも小さい信号であるため、増幅器により800倍に増幅した値を計測した。
【0058】
また、この加力試験1、2では、リミット型変位検出装置10の専用取付金具21の水平部21Aの鉛直方向変位量を図示しない変位計により計測するとともに、比較用のボルト型歪検出センサの近傍のベースプレート3の上面の鉛直方向変位量を同様に図示しない変位計により計測した。
【0059】
図6、
図7は、加力試験1、2を実施した際の試験結果を示す図である。
図6、
図7において、縦軸は柱脚2のベースプレート3の上面の鉛直方向変位量[mm]および各センサの出力電圧[V]を表し、横軸は加力時間[秒]を示している。
【0060】
また、
図6、
図7において、上段は、比較用のボルト型歪検出センサの出力電圧[V](実線で示す)と、このボルト型歪検出センサが配置されたベースプレート3の上面の鉛直方向変位量[mm](破線で示す)を表している。
【0061】
また、
図6、
図7において、下段は、リミット型変位検出装置10の出力電圧[V](実線で示す)と、このリミット型変位検出装置10の専用取付金具21の水平部21Aの鉛直方向変位量[mm](変位計で測定した値(破線))を表している。
【0062】
中小地震時に相当する加力試験1を実施した場合は、
図6の上段に示すように、比較用のボルト型歪検出センサの出力電圧は、柱脚2が破壊限界に到達した約170秒経過時で5Vであった。約170秒経過時に、近傍の変位計による鉛直方向変位量は−0.4mmであった。
【0063】
一方、
図6の下段に示すように、リミット型変位検出装置10の出力電圧は、この加力試験1の実施中に検出されず、約170秒経過時にも検出されていない。約170秒経過時に、近傍の変位計による鉛直方向変位量は−0.7mm程度であった。
【0064】
このように、中小地震時に相当する加力試験1では、建築物1の健全性を損なわない程度の大きさの加力を実施しているため、柱脚2が予測する変位に到達するが、破壊に至っていない。リミット型変位検出装置10においては、硬質ガラス管32および金属管33は、変形や損傷をしていない。このため、硬質ガラス管32および金属管33が圧電素子31を拘束し続けるので、圧電素子31が電圧を出力しない。したがって、リミット型変位検出装置10が出力電圧を発生していないことに基づいて、柱脚2が破壊に至っておらず健全性を損なっていないことを明確かつ容易に判定できる。
【0065】
また、大地震時に相当する加力試験2を実施した場合は、
図7の上段に示すように、比較用のボルト型歪検出センサの出力電圧は約105秒経過後から発生し始め、このときの出力電圧は2.1Vであった。約105秒経過時の近傍の変位計による鉛直方向変位量は−4.5mm程度の沈みによる変位が測定された。
【0066】
更に、同実験で、約240秒経過時は、ボルト型歪検出センサの出力電圧が1.6Vで、近傍の変位計による鉛直方向変位量が−5.5mmであった。したがって、比較用のボルト型歪検出センサの出力電圧の波形からは、柱脚2が破壊直前の状態にあることを判定できず、また、柱脚2が破壊に至ったことを推測できない。
【0067】
一方、
図7の下段に示すように、リミット型変位検出装置10の出力電圧は、約125秒経過時に2.25Vを記録し、このときの近傍の変位計による鉛直方向変位量は−1.5mmであった。
【0068】
更に、約175秒経過時および210秒経過時は、リミット型変位検出装置10の出力電圧がそれぞれ−1.5Vおよび−0.8Vであることが明確に確認できる。約175秒から210秒経過時の近傍の変位計による鉛直方向変位量は−4.5mmから−5.8mmであった。その後、約240経過時は、リミット型変位検出装置10の出力電圧は発生していない。
【0069】
このように、大地震に相当する加力試験2では、柱脚2が破壊に至る約240秒後の直前である、約175秒から210秒経過時に、リミット型変位検出装置10が大きな出力電圧を発生している。すなわち、リミット型変位検出装置10は、建築物1の健全性の変化に応じた出力電圧を発生している。このため、リミット型変位検出装置10の約175秒から210秒経過時の出力電圧に基づいて、柱脚2が破壊直前の状態にあることを明確に判定でき、さらに、この出力電圧の直後に柱脚2が破壊に至ったことを容易に推測できる。
【0070】
[構造物等の健全性モニタリングシステム]
次に、リミット型変位検出装置10を用いたモニタリングシステムの一例について説明する。
【0071】
図8において、モニタリングシステム50は、複数のリミット型変位検出装置10と、これらの複数のリミット型変位検出装置10に接続された報知装置51とを有している。本実施の形態のモニタリングシステム50は、本発明における構造物等の健全性モニタリングシステムを構成している。
【0072】
報知装置51は、例えば、LED(Light Emitting Diode::発光ダイオード)52が設けられた表示盤53及びマイコン57や、汎用のパーソナルコンピュータ54からなる。このモニタリングシステム50では、リミット型変位検出装置10の出力信号が十分に大きく、リミット型変位検出装置10と報知装置51の間に増幅装置を設ける必要がないため、リミット型変位検出装置10の出力信号を出力用ケーブル35を介して報知装置51に直接入力することができる。
【0073】
また、モニタリングシステム50では、リミット型変位検出装置10の出力信号を、有線又は簡易(ジグビー等)無線の電気通信網55を介して報知装置51に入力することができる。電気通信網55としては、例えば、有線LANや一般の無線LANを用いることができる。
【0074】
報知装置51は、例えば、リミット型変位検出装置10の出力信号の大きさおよび出力回数が所定条件を満たしたことに基づいて報知を行うようになっている。具体的には、リミット型変位検出装置10の出力信号に基づいて、マイコン57のプログラムにより危険度を自律的に判定して表示盤53に表示する。また、モニタリングシステム50は、データ集約型の判定が可能なように、機械学習法を含む大容量の情報処理能力を備えていてもよい。
【0075】
モニタリングシステム50は、
図9に示すように、解析装置58を備えることが好適である。解析装置58は、情報通信網を介して複数の報知装置51に接続されている。この解析装置58は、報知装置51から遠隔の監視施設に設けられている。解析装置58は、複数の報知装置51からの検出信号を学習データとして大量に蓄積する。解析装置58は、蓄積した大量の学習データを用いて、深層学習等の機械学習に基づくアルゴリズムによって、報知装置51が建築物1の健全性を判定するための最適な閾値等を演算する。そして、解析装置58は、演算で求めた最適な閾値等を報知装置51に設定する。
【0076】
この
図9において、建築物1は高層ビルからなる。建築物1は、各階にリミット型変位検出装置10が設けられており、多数のリミット型変位検出装置10が報知装置51に接続されている。報知装置51は、解析装置58により最適な変数や閾値等が設定されることで、多数のリミット型変位検出装置10からの各検出信号に応じて、建築物1の健全性を的確に判定することができる。言い換えると、解析装置58により最適な閾値等を求めて報知装置51に設定することにより、報知装置51は、多数のリミット型変位検出装置10を好適に管理することができる。なお、解析装置58により演算された最適な変数や閾値等に基づいて、解析装置58が設けられた監視施設の監視員が、複数の建築物1の健全性について遠隔で判定することも可能である。
【0077】
次に、作用効果について説明する。以上説明したように、本実施の形態に係るリミット型変位検出装置10は、検出素子として圧電素子31を採用しており、大地震時に相当する変位により変形又は破損した際に大きな出力電圧を発生できる。このため、センサ用電源や付属の増幅装置を不要とすることができ、構造物等の健全性を安価で簡便にモニタリングできる。
【0078】
また、圧電素子31を硬質ガラス管32および金属管33で密閉しているため、圧電素子31を経年変化や腐食等から長期に渡って保護することができ、構造物の健全性を長期に渡ってモニタリングできる。
【0079】
さらに、リミット型変位検出装置10は、大地震時に相当する加力により、極限以上の大きな変位が柱脚2に発生する以前のタイミングで、金属管33が塑性変形し、硬質ガラス管32が破損し、この破損状態に応じた検出信号を圧電素子31が出力する。このため、リミット型変位検出装置10は、建造物等の変形又は破損の指針となる検出信号を発生できる。このため、圧電素子31からの破壊に比例した出力電圧に基づいて、構造物の健全性を容易に判定できる。
【0080】
さらに、リミット型変位検出装置10は、硬質ガラス管32が金属管33に固定されているため、構造物等が破壊限界に至って硬質ガラス管32破損した後も圧電素子31が検出信号を発生できる。
【0081】
この結果、検出信号から構造物等の健全性を容易に判定でき、構造物等が破壊限界に至る前後に渡って検出信号を発生できる。
【0082】
また、本実施の形態に係るリミット型変位検出装置10は、圧電素子31が固定された硬質ガラス管32を金属管33で覆い、金属管33の軸方向の両端部および中央部を、支持部22B、22Cおよび支持部23Cで支持している。
【0083】
このため、大地震等により建築物1の健全性を損なう限界の変位が柱脚2に発生する以前のタイミングで、リミット型変位検出ユニット30を変形又は破損させてそれに相当する出力電圧を得ることができる。これにより、建築物1が破損するタイミングを明確に判定できる。
【0084】
また、本実施の形態に係るリミット型変位検出装置10によれば、ねじ機構40が操作されることで、金属管33の一端部がテーパ金具39により拡径されて専用取付金具22の支持部22Bに支持されるため、振動等による脱落を防ぎ、リミット型変位検出装置10を強固に構造物に装着できる。
【0085】
また、本実施の形態に係るリミット型変位検出装置10において、圧電素子31は、円弧状に湾曲した状態で硬質ガラス管32の内面に沿って密着状態で固定されている。
【0086】
これにより、硬質ガラス管32の内部で圧電素子31が意図せず変形して不要な出力電圧を発生することを防止できる。また、硬質ガラス管32が変形又は破損したときに圧電素子31が座屈して塑性変形が可能な様に、明確なタイミングで大きな出力電圧を得ることができる。
【0087】
また、本実施の形態に係るモニタリングシステム50は、リミット型変位検出装置10の出力信号に応じて報知装置51が報知を行うようになっている。
【0088】
これにより、建築物1の健全性を損なう限界の変位(破壊限界)が柱脚2に発生する以前のタイミングで、報知装置51がリミット型変位検出装置10から出力信号を受け取ることができ、この出力に応じて報知装置51が報知を行うことができるため、構造物等の健全性を容易に判定できる。
【0089】
また、本実施の形態に係るモニタリングシステム50において、報知装置51は、リミット型変位検出装置10の出力信号の大きさおよび出力回数がマイコン57のプログラムにより、所定条件を満たしたことに基づいて報知を行うようになっている。具体的には、リミット型変位検出装置10の出力信号に基づいて、マイコン57のプログラムにより危険度を自律的に判定して表示盤53に表示する。
【0090】
これにより、建築物1が健全性を喪失したタイミングで報知装置51が報知を行うことができる。
【0091】
また、本実施の形態に係るモニタリングシステム50において、報知装置51は、機械学習法を含む大容量の情報処理能力を備えている。
【0092】
これにより、報知装置51は、複数のリミット型変位検出装置10からの検出信号に基づいて、複数の建築物1に対してそれぞれの健全性を判定できる。
【0093】
また、本実施の形態に係るモニタリングシステム50は、リミット型変位検出装置10の出力信号を、有線又は簡易無線の電気通信網55を介して報知装置51に伝送している。これにより、報知装置51は、建築物1に設けた複数のリミット型変位検出装置10を情報通信網を介して遠隔的にモニタリングでき、複数のリミット型変位検出装置10に基づいて建築物1の健全性を判定できる。
【0094】
(第2の実施の形態)
図10、
図11において、構造物等7は、鋼鉄製の構造部材8、9を有しており、構造部材8と構造部材9とは90°の角度で付き合わされて溶接により接合されている。具体的には、構造部材8と構造部材9とは、接合部7Aにおいて、突き合わせ溶接又は隅肉溶接等により接合されている。
【0095】
構造物等7には、接合部7Aに跨がってリミット型変位検出装置70が設けられている。リミット型変位検出装置70は、構造部材8と構造部材9との変位をモニタリングするものである。
【0096】
リミット型変位検出装置70は、圧電素子71と、帯状の硬質ガラス板73と、帯状の金属取付板74とを有している。圧電素子71は、帯状のピエゾフィルムからなり、形状変化等の変位が生じた場合に、出力信号である電圧を発生するようになっている。圧電素子71の端部には出力用ケーブル75が接続されており、圧電素子71で発生した電圧は出力用ケーブル75から出力される。
【0097】
硬質ガラス板73は、脆性部材である硬質ガラスからなり、構造物等7の健全性を損なう加力によって破損するようになっている。硬質ガラス板73は、圧電素子71を挟み又は圧電素子71を覆う形式で圧電素子71を密閉している。硬質ガラス板73は、圧電素子71よりも大きく形成されている。硬質ガラス板73には、紫外線硬化樹脂等の樹脂を接着剤に用いることにより、圧電素子71が固定されている。硬質ガラス板73は、本発明における第2の拘束部材を構成する。
【0098】
金属取付板74は、圧延鋼からなり、構造物等7の健全性を損なう加力によって塑性変形するようになっている。金属取付板74の上面には、紫外線硬化樹脂等からなる接着剤により硬質ガラス板73が固定されている。金属取付板74には、孔74Aが形成されており、圧電素子71の端部に接続された出力用ケーブル75は、この孔74Aを通して金属取付板74の背面側に引き出されている。金属取付板74は、本発明における第1の拘束部材を構成する。
【0099】
金属取付板74の構造部材8側の一端部には、約45°の曲げ加工により取付部74Bが形成されており、この取付部74Bは、構造部材8の表面に沿って延伸している。取付部74Bには孔74B1が形成されており、取付部74Bはこの孔74B1にボルト76を挿し通して締結することで構造部材8に固定される。本実施の形態の取付部74Bは、本発明における第1の取付部を構成する。
【0100】
金属取付板74の構造部材9側の他端部には、約45°の曲げ加工により取付部74Cが形成されており、この取付部74Cは、構造部材9の表面に沿って延伸している。取付部74Cには孔74C1が形成されており、取付部74Cはこの孔74C1にボルト76を挿し通して締結することで構造部材9に固定される。本実施の形態の取付部74Cは、本発明における第2の取付部を構成する。第1の取付部としての取付部74B、および、第2の取付部としての取付部74Cは、金属取付板74とともに、本発明における第1の拘束部材を構成する。このように、リミット型変位検出装置70において、金属取付板74の一端部の取付部74Bは構造物等7の構造部材8の表面に取付けられており、金属取付板74の他端部の取付部74Cは構造物等7の構造部材9の表面に取付けられている。このため、構造物等7の完成後であっても、リミット型変位検出装置70を構造物等7に設置することができる。
【0101】
なお、取付部74B、74Cは、必ずしもボルト76の締結により構造部材8、9に取付ける必要はなく、接合強度が十分に大きいものであれば、スポット溶接等の他の手法により構造部材8、9に取付けてもよい。
【0102】
本実施の形態では、硬質ガラスからなる硬質ガラス板73と金属からなる金属取付板74は、地震等により構造物等7の健全性に大きな影響を与える変位が取付部74Bと取付部74Cとの間に発生した際に、硬質ガラス板73と金属取付板74の延性、降伏強度、靭性、脆性等により、金属取付板74は破断しないで表面の硬質ガラス板73のみが破損するように構成されている。
【0103】
例えば、地震等により大きな変位が発生した際は、
図12に示すように、構造部材8が矢印で示す方向にねじれつつ大きく傾き、構造部材8と構造部材9との接合部7Aに隙間が発生する。これにより、金属取付板74にもねじれと延びが発生する。そして、金属取付板74が塑性変形し、塑性変形した金属管33とともに変形することで、硬質ガラス板73が破損する。このときの硬質ガラス板73の破損は、部分的な小さな亀裂から全体的な大きな亀裂に至るように段階的に進行する。これにより、硬質ガラス板73と金属取付板74がほぼ同じタイミングで変形して、硬質ガラス板73のみが破損し、金属取付板74の拘束から圧電素子71が徐々に解放され、圧電素子71が硬質ガラス板73の損傷に比例した出力電圧を発生する。このため、圧電素子71が出力する電圧は、増幅装置により増幅することなく報知装置51で検出可能な指針値となる。また、
図12のように硬質ガラス板73が破損した後であっても、圧電素子71が破断しておらず、金属取付板74と硬質ガラス板73に挟まれた状態で支持されている。このため、硬質ガラス板73が破損した後であっても、圧電素子71が出力電圧を発生可能な状態であり、圧電素子71からの出力電圧を監視することで構造物等7の状態を推定できる。
【0104】
このように、リミット型変位検出装置70は、第1の実施の形態のリミット型変位検出装置10と同様に、簡易的な静的な変動を検出する静的荷重センサであり、中小地震時に小さな撓みや捩れ等の変形が生じた場合には電圧を出力せず、大地震等による大きな変位が発生したときに初めて、指針値となる電圧を出力するようになっている。
【0105】
このリミット型変位検出装置70は、第1の実施の形態のリミット型変位検出装置10に代えて報知装置51に接続したり、リミット型変位検出装置10とともに報知装置51に接続することで、
図8、
図9のモニタリングシステム50と同様のモニタリングシステムを構成することができる。
【0106】
このように構成されたリミット型変位検出装置70およびこのリミット型変位検出装置70を用いたモニタリングシステムは、第1の実施の形態のリミット型変位検出装置10およびモニタリングシステム50と同様に、検出信号から構造物等の健全性を容易に判定でき、構造物等が破壊限界に至る前後に渡って検出信号を発生できる。
【0107】
上述のとおり、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次ぎの請求項に含まれることが意図されている。
【0108】
上記実施の形態では、リミット型変位検出装置10、70およびモニタリングシステム50により鉄鋼製の建築物1又は構造物等7の接合部の変位をモニタリングする場合について説明したが、本発明は、木造、鉄筋コンクリート構造(RC)等の接合部に対して変位をモニタリングする場合にも適用することができる。また、本発明は、船舶や車両等の接合部に対して変位をモニタリングする場合にも適用することができる。更に、本発明は、応用計測として斜面の土砂崩れ等の検出にも適用可能である。