(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質の取扱い履歴、或いは予定がある敷地において、鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材と培養基材を、対策対象の土壌に添加し、連通する立体導電網を地中に形成して、該立体導電網に導通する鉄還元細菌を包含する微生物群集と汚染物質との接触を通じて、汚染物質の代謝や分解を図る土壌汚染物質の対策方法であって、前記鉄還元細菌の代謝に由来する不溶性鉄化合物の生成と集積を図り、土壌間隙の閉塞を促して、前記汚染物質の移動の抑制を図り、該移動が抑制された該汚染物質に対し、更なる微生物代謝や分解を図る前記土壌汚染物質の対策方法。
前記敷地において、前記汚染物質による土壌汚染が既知である土壌汚染エリアとその周辺部を対象として、前記立体導電網と鉄還元細菌を包含する微生物群集を形成することを特徴とする請求項1に記載された土壌汚染物質の対策方法。
前記汚染物質を代謝可能な微生物、および/或いは、前記鉄還元細菌を別途培養し、前記鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材、および/或いは、前記培養基材と共に、対策対象の土壌に添加することを特徴とする請求項1から請求項2の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法。
前記鉄還元細菌が用いる、電子受容体の供給、および/或いは、電子受容体の賦活化を目的として、空気または酸素を含む気体を、対策対象の土壌に供給することを特徴とする請求項1から請求項7の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法。
前記井戸様構造物が、1本の管構造物で構成され、観測井戸機能と共に、該ストレーナ区間から、過酸化物溶液、および/或いは、気体を対策対象の土壌に注入する機能を有する、少なくとも2区間以上のストレーナを配することを特徴とする請求項9に記載された土壌汚染物質の対策方法。
前記鉄還元細菌を包含する微生物群集の代謝を通じて発生した二酸化炭素ガスを少なくとも含む1種類以上の地中ガス成分濃度を測定して、該ガス成分の濃度分布から前記汚染物質の地下漏洩地点の推定を、加えて実施することを特徴とする請求項1から請求項11の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、「汚染漏洩の早期検知と漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」技術における「汚染漏洩の早期検知」に関連する従来技術としては、特許文献1〜3に示す技術は、後述する様な種々の問題点を有していた。
【0009】
特許文献1は、注入した検査用流体に汚染物質を捕捉し、検査用流体を含む地下水を回収して汚染を検知する技術であるが、地下水深度が深く存在する場合、メッシュ調査にはボーリングマシン等を用いた多数の観測井戸の設置を必要とすることとなり、係るコストからの実用性や汎用性に難があった。
また、本技術は、注入した検査用流体が均等に周囲に広がり、また確実に戻ってくることを前提とする調査であるが、この前提には地層が均質である必要性があり、自然状態において、このような理想的な条件は、まず存在しえない。本技術は、極めて環境依存性が高く、検査用流体の広がり方によっては、汚染が見過ごされ、或いは過小評価される懸念を有する技術であった。
【0010】
また特許文献2は、地下水中の各種微生物の呼吸源となるイオン種の濃度分布から汚染の存在を推定する技術であるが、特許文献1と同様に、地下水深度が深く存在する場合、メッシュ調査には多数の観測井戸を設置する必要があり、コスト面からの実用性や汎用性に難があった。
加えて、汚染分解微生物の呼吸源となる硝酸イオンや硫酸イオンが、初期条件にて調査サイトにおいてほぼ均一の濃度で存在しなければ、汚染量に応じた定量的評価を適切に実施することは困難であり、汚染を過小評価してしまう、或いは見誤ってしまう等、不確実性を有する技術でもあった。
総じて、本技術は、極めて環境依存性が高く、汚染を過小評価してしまう、或いは見誤ってしまう、不確実性を有する技術であった。
【0011】
また更に、特許文献3は、表層ガスを用いた調査方法であり、施工が容易で低コストを期待できる実施形態であるが、こちらも特許文献2同様に、調査サイトにおいて、呼吸源や栄養塩に不足が無く微生物代謝を担保する基本条件が整っていなければ、汚染量に応じた評価を適切に実施することは困難であり、汚染を過小評価してしまう不確実性を有する技術でもあった。
総じて、本技術もまた、極めて環境依存性が高く、汚染を過小評価してしまう、或いは見誤ってしまう、不確実性を有する技術であった。
【0012】
このように、「汚染漏洩の早期検知と漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」技術における「汚染漏洩の早期検知」に関連する従来技術は、いずれも極めて環境依存性が高く、汚染が見過ごされる、或いは過小評価される懸念を有する、おおむね高コストな技術であった。
【0013】
ところで、「汚染漏洩の早期検知と漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」技術における「漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」に関連する従来技術である、特許文献4〜6に示す技術も、後述する様な種々の問題点を有していた。
【0014】
たとえば、特許文献4に示される技術の様に、有機性化合物による土壌汚染から汚染物質の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)を図るための方法として、錠剤状の活性炭含有物を用いた低溶出化手法が提案されている。
【0015】
ところが、特許文献4に示されている錠剤状の活性炭含有物を用いた汚染物質の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)を図るための方法は、汚染された表層土壌や河川底泥等への散布による対策用の技術であり、地質構造を有する汚染された飽和帯へ適用するためには、錠剤状の活性炭含有物の形状から、掘削し混合する方法等に限定され、適用性が限定される技術であった。
加えて、本技術は、単に活性炭錠剤に汚染物質を吸着させ局所的な低溶出化を図る技術であって、汚染物質の低減が可能な浄化技術では無い、即ち、汚染物質の含有量を低減することが困難な技術であった。
【0016】
また、係る汚染含有量の低減が困難な点は、特許文献5の汚染吸着能を有する微細炭素系粒子を用いた汚染対策技術も同様であった。
即ち、汚染吸着能を有する微細炭素系粒子に吸着した汚染を分解除去する機能がなければ、散布した汚染吸着能を有する微細炭素系粒子は、いずれは吸着量の限界に至り、その場合は、汚染吸着能を有する微細炭素系粒子を繰り返し投入する様な、不経済な処理となってしまいかねない技術であった。
【0017】
特許文献6に示される汚染土壌浄化後における再汚染防止方法は、土壌地下水汚染対策後の不用意な汚染溶出を対象とした技術であるが、特許文献5同様に、汚染吸着能を有する活性炭やゼオライトが、単に汚染物質の吸着のみに使用されており、本技術においても、汚染吸着能を有する吸着粒子に吸着した汚染を分解除去する機能がなく、これらの吸着粒子は、いずれは吸着量の限界に至り、その場合は、汚染吸着能を有する吸着粒子を繰り返し投入する様な、不経済な処理となってしまいかねない技術であった。
【0018】
総じて、従来の土壌汚染に対して土壌へ種々の汚染吸着能を有する微細炭素系粒子を添加して汚染対策を実施する技術は、一定量の汚染に対し「移動/拡散抑制・低溶出化」を図ることは可能であるが、汚染含有量の低減たる「分解」までを考慮した、効果の継続性や費用対効果を兼ね備えた技術では無かった。
【0019】
この様な背景から、本発明の目的を、汚染が過小評価される懸念が少ない環境依存性が低い廉価な「汚染漏洩の早期検知」技術、また、移動/拡散抑制・低溶出化は元より、汚染含有量の低減たる汚染分解までを考慮した「漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」技術の上市化と設定した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために、本件発明者らが鋭意開発を進めたところ、導電性資材による立体導電網を活用して、鉄還元細菌が有する機能を応用したバイオプリベンション法(生物学的汚染予防法)とその付帯対策技術群による、「汚染漏洩の早期検知と漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」を一連で達成する以下の発明に至った。
即ち、本発明の要旨とするところは、次の(1)〜(14)である。
【0021】
(1)生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質の取扱い履歴、或いは予定がある敷地において、鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材と培養基材を、対策対象の土壌に添加し、連通する立体導電網を地中に形成して、該立体導電網に導通する鉄還元細菌を包含する微生物群集と汚染物質との接触を通じて、汚染物質の代謝や分解を図
る土壌汚染物質の対策方法
であって、前記鉄還元細菌の代謝に由来する不溶性鉄化合物の生成と集積を図り、土壌間隙の閉塞を促して、前記汚染物質の移動の抑制を図り、該移動が抑制された該汚染物質に対し、更なる微生物代謝や分解を図る前記土壌汚染物質の対策方法。
【0023】
(
2)前記敷地において、前記汚染物質による土壌汚染が既知である土壌汚染エリアとその周辺部を対象として、前記立体導電網と鉄還元細菌を包含する微生物群集を形成することを特徴とする(1
)に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0024】
(
3)前記汚染物質を代謝可能な微生物、および/或いは、前記鉄還元細菌を別途培養し、前記鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材、および/或いは、前記培養基材と共に、対策対象の土壌に添加することを特徴とする(1)から(
2)の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0025】
(
4)
微生物代謝に応じた電子供与体、および/或いは、電子受容体を、対策対象の土壌に添加することを特徴とする(1)から(
3)の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0026】
(
5)前記鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材が、活性炭であることを特徴とする(1)から(
4)の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0027】
(
6)前記活性炭および鉄粉を、また前記培養基材として脂溶性有機資材を少なくとも一部に含む資材を添加して、汚染物質の代謝や分解を還元条件下で促進化する操作を
、任意のタイミングで実施することを特徴とする(
5)に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0028】
(
7)前記活性炭および鉄粉を対策対象の土壌に添加し、更に過酸化物を少なくとも一部に含む資材を添加して、汚染物質の代謝や分解を酸化条件下で促進化する操作を
、任意のタイミングで実施することを特徴とする(
5)に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0029】
(
8)前記鉄還元細菌が用いる、電子受容体の供給、および/或いは、電子受容体の賦活化を目的として、空気または酸素を含む気体を、対策対象の土壌に供給することを特徴とする(1)から(
7)の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0030】
(
9)
井戸様構造物を介して、過酸化物を対策対象の土壌に添加して、前記鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材の付着性物質による機能低下の再生を図る操作を実施することを特徴とする(1)から(
8)の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0031】
(
10)前記井戸様構造物が、1本の管構造物で構成され、観測井戸機能と共に、該ストレーナ区間から、過酸化物溶液、および/或いは、気体を対策対象の土壌に注入する機能を有する、少なくとも2区間以上のストレーナを配することを特徴とする(
9)に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0032】
(
11)前記過酸化物が過硫酸化合物であることを特徴とする(
7)、(
9)、或いは(
10)の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0033】
(
12)前記鉄還元細菌を包含する微生物群集の代謝を通じて発生した二酸化炭素ガスを少なくとも含む1種類以上の地中ガス成分濃度を測定して、該ガス成分の濃度分布から前記汚染物質の地下漏洩地点の推定を
、加えて実施することを特徴とする(1)から(
11)の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0034】
(
13)前記有害物質が、1,4-ジオキサンであることを特徴とする(1)から(
12)の少なくとも1項に記載された土壌汚染物質の対策方法である。
【0035】
以下、本発明について更に詳述する。
本発明では、
鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材による立体導電網を活用して、鉄還元細菌が有する機能を応用したバイオプリベンション法(生物学的汚染予防法)とその付帯対策技術群による、「汚染漏洩の早期検知と漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」たる一連の汚染対策を実施することを前提とする。
【0036】
本発明のうち(1)に係る土壌汚染物質の対策方法によれば、
鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材と培養基剤を、対象土地の飽和帯或いは不飽和帯に添加して、連通する立体導電網を地中に形成することにより、立体導電網に導通する鉄還元細菌を包含する微生物群集の代謝によって、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質の代謝を促し、汚染物質の低減を図ることができる。
【0037】
なお、土壌中には、豊富な三価鉄が存在するとしても、「鉄還元細菌(を包含する微生物群集)」及び「汚染物質」並びに「電子受容体」の三者が同地点に存在しなければ、高い代謝活性を得ることはできない。更に、この三者が同地点に存在したとしても、時間経過に従い代謝が進行し、相対量として「汚染物質」>「電子受容体」となった場合は、その地点において「電子受容体」の不足を生じることとなり、結果、「鉄還元細菌(を包含する微生物群集)」の代謝は低下し「汚染物質」の代謝も停止する。
しかしながら、本発明であるところの、連通する立体導電網を土壌中に張り巡らせることにより、少なくとも、「鉄還元細菌(を包含する微生物群集)」及び「汚染物質」並びに「立体導電網」の三者が同地点に存在すれば、鉄還元細菌由来の電子を、この立体導電網が近傍の数多の電子受容体迄の電子移動を仲介する。
また更に、培養が進み鉄還元細菌の存在量が増加すれば、導通状態に無い立体導電網同士が、鉄還元細菌が仲立ちすることで導通状態となり、立体導電網同士が有機的に連結するので、係る立体導電網の敷設が叶った範囲の三価鉄を、あまねく電子受容体として活用することが可能となる。
係る機構によって、本発明によるところの立体導電網を地中に設置することにより、代謝収支における相対量として「汚染物質」<「電子受容体」の状態となるので、鉄還元細菌等による汚染物質の代謝が、その場で継続し、より多くの汚染物質の浄化を継続的に図ることができる。
【0038】
ところで、本発明によるところの立体導電網を敷設し、鉄還元細菌を包含する微生物群集の代謝によって、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質の分解と浄化が図られる過程において、二酸化炭素や三価鉄由来の種々の鉄化合物が、周囲の土壌間隙中に蓄積される。
【0039】
係る、前者の蓄積する二酸化炭素を利用すれば、(
12)に係る方法であるところの、地上と連通する地中孔を通じて土壌ガスを採取し、二酸化炭素を少なくとも含む1種類以上のガス成分濃度を、定期的に測定することにより、係るガス成分の濃度分布から該汚染物質の地下漏洩とその漏洩地点を早期に検知できるので、その後の一連の土壌汚染物質対策を有効且つ効果的に実施することができる。
また、係る汚染物質の地下漏洩調査を精度良く定期的に実施することにより、汚染漏洩の存在と漏洩地点を、漏洩を生じた極初期の段階で検知することにより、広範・深部に移動/拡散し重篤な汚染被害を引き起こす可能性のあるリスクを回避し、結果的には浄化対策コストを格段に低減した汚染対策を実施することができる。
実際、浅層での1立米の汚染土壌の掘削除去と処理には数万円程度が掛かる。地下水流速が0.3m/日、垂直/水平方向への移動速度がこの1/10だとして、これを1年間放置すれば、汚染長は100m超、汚染深度/幅は10m超にも及ぶ。単純に1年間で0.5〜1万立米程度の汚染土壌が生じることとなり、この対策処理には、高々1年の放置で億単位の費用損失が想定される深刻な損害状況となる。
【0040】
一方、後者の三価鉄由来の鉄化合物類は、上述した立体導電網の機能によって、鉄還元細菌を包含する微生物群集の代謝によって汚染物質の分解と浄化が図られる部位に蓄積するとは限らない。その多くは、鉄還元細菌を包含する微生物群集が存在する周縁の、三価鉄が存在する酸化環境近傍の土壌と立体導電網が接触する部分にて、三価鉄由来の種々の鉄化合物の蓄積が図られる。
即ち、(
1)に係る方法であるところの、嫌気的環境の周囲に存在する酸化的環境に近い部位にて三価鉄由来の種々の鉄化合物、例えば、マグネタイトや、酸素と二価鉄の反応にて生じた水酸化鉄等の不溶性鉄化合物類を蓄積させることにより、その汚染近傍の土壌間隙の閉塞が促され、汚染物質の移動/拡散抑制を図りながら、鉄還元細菌を包含する微生物群集の近傍に係る汚染物質を留め、更に係る鉄還元細菌を包含する微生物群集の代謝により汚染物質の低減を効率良く図ることができる。
【0041】
また、係る土壌間隙の閉塞により汚染物質の移動は極めて緩やかになるが、鉄還元細菌を包含する微生物群集による汚染物質の代謝速度は変わらないので、係る周囲の二酸化炭素濃度をスポット的に高く維持することができ、(
12)に係る方法であるところの、土壌ガス調査による汚染漏洩地点検出の確度を、本機構により格段に高めることができる。
【0042】
ところで、(
2)に係る土壌汚染物質の対策方法によれば、すでに汚染が既知となっている場合においても、未知の場合と同様に、鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材と培養基材を、対象土地の飽和帯或いは不飽和帯に添加して、連通する立体導電網を地中に形成することにより、立体導電網に導通する鉄還元細菌を包含する微生物群集の汚染物質の代謝によって、更なる汚染の移動/拡散を防止しながら、既知汚染の浄化を図ることができる。
【0043】
また更に、(
5)に係る土壌汚染物質の対策方法によれば、多孔質な炭素系資材を、より好ましくは活性炭とすることで、汚染物質の吸着能をより高めることにより、より精度の高い汚染物質の移動/拡散抑制と土壌からの低溶出化を実現できる。
【0044】
ところで、汚染物質の取扱い履歴のある敷地において土壌汚染が既知であれば、この既知汚染は、浄化対策が叶うタイミングを見計らって優先的に浄化することが好ましい。
本発明であるところの(
6)と(
7)に示す土壌汚染物質の対策方法によれば
、任意のタイミングにおいて、導電性資材として活性炭および鉄粉を選択し、更に必要に応じて過酸化物等を併せて活用することにより、安価で迅速なスポット浄化を効果的に実施することができる。
【0045】
また、(
3)に係る土壌汚染物質の対策方法によれば、汚染物質の微生物代謝を司る微生物、および/或いは、前記鉄還元細菌を別途培養し、該土壌に添加することによって、本発明を展開する対象地における汚染の移動/拡散抑制や微生物分解を、より強化し確実に実施することができる。
【0046】
ところで、(
4)に係る土壌汚染物質の対策方法によれば、汚染物質の微生物代謝を司る微生物や鉄還元細菌の電子供与体、および/或いは、電子受容体を、浄化対象の土壌に不足なく添加することによって、本発明を展開する対象地における汚染の微生物分解や鉄還元細菌による移動/拡散抑制をより確実に実施することができる。
【0047】
また、(
8)に係る土壌汚染物質の対策方法によれば、空気または酸素を含む気体を土壌に供給することによって、嫌気性の鉄還元細菌に対しては、電子受容体の酸化による賦活化を図り、一方、好気性を呈する鉄還元細菌や好気性微生物に対しては、電子受容体たる酸素の供給が図られることにより、このワンステップ操作をもって、土壌中の嫌気/好気の両領域における汚染物質の微生物分解を極めて効率的に促すことができる。
【0048】
例えば、ベンゼンは、嫌気性の鉄還元細菌によっても、好気性菌によっても生物学的分解が可能であるが、従来技術では、主として土壌を掘削してスタティックパイル等を形成して、パイル中央下部からの連続吸気による好気的分解により浄化が図られていた。
但し、この従来技術たるスタティックパイルを用いた純然たる好気的分解では、スタティックパイル内に均一に通気を実施することは、ほぼ不可能であり、酸素の供給は、一部の土壌間隙が通気道となり、局所的に実施されるに過ぎなかった。このため、連続通気によって、酸素供給と共に土壌の乾燥を図り、更に一定期間毎にパイルの切り返し作業を繰り返して実施して、乾燥状態にある土壌の団粒構造や土塊を更に砕くことにより、対象土壌に満遍なく酸素が行き渡る様な作業の併用が必須であった。
ところが、本発明であるところの連通する立体導電網を土壌中に形成することによって、鉄還元細菌にとっての電子受容体たる土壌中に存在する三価鉄を、余すところなく利用することができるので、好気的分解では必須であった、酸素たる電子受容体を満遍なく汚染土壌の隅々まで行き渡らせる為の切返し作業や連続吸気を大幅に減じた作業にて、ベンゼン汚染の浄化を図ることができる。
【0049】
この場合、重機を多用する切返や大型送気装置を用いた吸気(通気)は、鉄還元細菌の電子受容体たる三価鉄の多くが還元された場合に、最少回数で実施し、係る還元された鉄化合物の一部を酸素によって再酸化して、鉄還元細菌の電子受容体となる三価鉄の再生を図る程度に実施することで、低エネルギー且つ低コストを特徴とした浄化を実施できる。
【0050】
この様に、本発明であるところの立体導電網を適切に設置することにより、より多くの土壌中の三価鉄を電子受容体として活用できるので、通常の汚染濃度であり、一般的な三価鉄含有を有する土壌であれば、特段の切返や大型の送気装置を用いた吸気(通気)を行わずとも、初期の立体導電網設置の混合作業を含めた最少工数にて、汚染浄化を実施することができる。
理論上では、一般の土壌に含まれる三価鉄の含有量からすれば、最大で1g/kg濃度で存在するベンゼンの嫌気的代謝分解を満たす電子受容体量が存在する。これは、一般に見られるベンゼン汚染土壌の汚染濃度よりも遥かに高い濃度である。
【0051】
ところで、上述する様な、酸素と三価鉄の両者が存在する環境においては、この両者を電子受容体として利用可能な一部の鉄還元細菌の増殖を特異的に促すことができる。
この一部の鉄還元細菌は、三価鉄を電子受容体として用いる場合には二価鉄と有機酸を生成し、一方、酸素を電子受容体として用いる場合には、過酸化水素を生成する性質が知られており、本発明であるところの(
8)に係る土壌汚染物質の対策方法にて、空気または酸素を含む気体を対策対象の土壌に、一定間隔を持って供給することによって、二価鉄と有機酸と過酸化水素が同時に存在するタイミングを形成して、これら生成物を基材とする化学酸化機構たるフェントン反応により、更なる汚染物質の分解を促すことができる。
【0052】
また、(
9)と(
10)に示す土壌汚染物質の対策方法によれば
、井戸様構造物、好ましくは、1本の管構造物で構成され、観測井戸機能と共に、該ストレーナ区間から、過酸化物溶液、および/或いは、気体を対策対象の土壌に注入する機能を有する井戸様構造物を用いて、過酸化物を、対策対象の土壌に、効果的に満遍なく添加することにより、前記鉄還元細菌の細胞外電子伝達を仲介する多孔質な炭素系資材を少なくとも一部に含む資材の付着性物質による機能低下の再生を可能とし
、正常稼働を維持することができる。
【0053】
また更に、(
7)と(
9)と(
10)に示す土壌汚染物質の対策方法において、過酸化物として、過硫酸化合物を利用することで、より良い汚染浄化・洗浄効果を得ることができる。
【0054】
ところで、平成21年の環境省告示により環境基準化が図られた1,4-ジオキサンは、一般には、生分解性が低いと評価されてきた有害物質であり、特にバイオ浄化対策方法に関する知見は未だ少ない状況にあった。
本発明であるところの(
13)に示す土壌汚染物質の対策方法によれば、有害物質である1,4-ジオキサンに対し、鉄還元細菌を活用した「汚染漏洩の早期検知と漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」迄の、一貫した汚染対策を実施することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明により、法定の第一種特定有害物質及びそれに類する有害物質による、既知、あるいは未知の土壌汚染に対し、導電性資材による立体導電網を活用して、鉄還元細菌が有する機能を応用したバイオプリベンション法(生物学的汚染予防法)とその付帯対策技術群による、「汚染漏洩の早期検知と漏洩汚染の移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)」を一連で達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明を代表する実施の基本形態について
図1から
図3の図面を用いて説明する。
特に本発明の本旨とするところは、導電性資材1により、連通する立体導電網2を地中に形成し、鉄還元細菌を包含する微生物群集3の代謝を、立体導電網2と生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4が共存する範囲にて活性化することにより、漏洩汚染に対し、下記を要素とする一連の汚染対策を実施することにある。
【0058】
(A)汚染漏洩地点の推定、好ましくは漏洩の早期検知。
(B)不溶性鉄化合物等の生成による汚染の移動/拡散抑制。
(C)有害物質の土壌からの低溶出化。
(D)鉄還元細菌を包含する微生物群集によるバイオプリベンション。
(E)アプローチの容易な既知汚染に対する導電性資材を活用したスポット浄化。
【0059】
なお、地表17で漏洩した生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4は、漏洩地点12から不飽和帯18へ、また不飽和帯18から更に飽和帯20に浸透する経過をたどるのが一般的であるが、飽和帯20に達した生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4が、自然地下水流向に応じて流下し、広域汚染を引き起こすと、より深刻な問題となる。
本発明の本旨とするところの、立体導電網2は、地表17から不飽和帯18、更に飽和帯20に至る、いずれの土壌区分にも形成することが可能であるが、ここでは、より深刻な問題が懸念される飽和帯20での適用を例に挙げて、以下、係る実施の形態について述べる。
【0060】
さて、飽和帯20に存在する鉄還元細菌を包含する微生物群集3は、飽和帯嫌気的環境域において三価の鉄化合物であるゲータイトやフェリハイドライト等を構成物とする酸化的土壌粒子5に対し、直接ないし間接的に電子を付与し、二価鉄イオンやマグネタイト等の二価鉄を含む鉄化合物類を生成する呼吸を行う。
【0061】
ここに、鉄還元細菌を包含する微生物群集3と共に立体導電網2が存在すると、鉄還元細菌を包含する微生物群集3から立体導電網2に付与された電子は、立体導電網2に接する全ての酸化的土壌粒子5に対し電子を付与することが可能となり、呼吸源たる電子受容体として機能する酸化的土壌粒子5を潤沢に用いて、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4の浄化が図られ、更に、係る電子付与により還元的な不溶性鉄化合物11や二価鉄イオンを生成する。
【0062】
汚染の初期状態は、正に酸化的土壌粒子5で構成される土壌間隙に、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4が滲入した状況であり、この時点においては、酸化的土壌粒子5、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4、鉄還元細菌を包含する微生物群集3が、ほぼ同じ地点に存在し、この地点で不溶性鉄化合物11や二価鉄イオンを生成する。
【0063】
一方、時間経過と共に、鉄還元細菌を包含する微生物群集3の汚染物質の代謝が進むと、汚染漏洩地点の酸化的土壌粒子5は、鉄還元細菌を包含する微生物群集3の呼吸源として使われると、還元的土壌粒子6に変化し、ついには、本地点での呼吸源が枯渇する。この時点から立体導電網2を介した、更に周囲の酸化的土壌粒子5への電子付与する呼吸が始まる。
【0064】
この結果、不溶性鉄化合物11は、鉄還元細菌を包含する微生物群集3が生育する飽和帯嫌気的環境域7ではなく、周囲の飽和帯好気的環境域8との境界域にて生成・蓄積され、この集積の結果、土壌間隙の閉塞化が促される。また、併せて生じた二価鉄イオンに関しても、周囲の清浄表層地下水9に含まれる分子状酸素との反応から、三価の鉄化合物である不溶性鉄化合物11が生成され、鉄還元細菌を包含する微生物群集3の増殖した菌体も相まって、これら不溶性の粒子群によって土壌間隙の閉塞化が促される。
【0065】
ところで、環境省「平成20年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果」によれば、一般に、土壌汚染は、配管の破損や不適切な取扱いの様な一過性のトラブルによって生じる場合が多く、排水の地下浸透等、連続・継続的な漏洩事例の割合は少ないことが示されている。
【0066】
このように、一過性のトラブルが、ブラウンフィールド化が懸念される様な重篤な汚染へと進行する一つの原因として、従来技術においては、未然に防止できなかった係る一過性の汚染に対し、適切な早期検知、移動/拡散抑制を図る技術が存在しなかったことが原因として挙げられる。
結果、一過性の僅かな汚染漏洩であっても、見過ごされ汚染が拡大すれば、放置された時間経過によっては、上述した様に想像もつかない様な対策費が掛かる、重篤な汚染へと進行してしまう。
したがって、一過性の個々の少量規模の漏洩トラブルに対し、いかに早期に検知し、移動/拡散抑制を施すかが、汚染の重篤化を防止する、即ちブラウンフィールド化を防止する上で重要となる。
【0067】
本発明によるところの、漏洩汚染に対する早期検知は、係る生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4の漏洩を契機として、鉄還元細菌を包含する微生物群集3の代謝が活発化して生じる、大量の二酸化炭素ガス13を指標として(A)汚染漏洩地点の推定を実施するものである。
【0068】
例えば、ベンゼン原液0.1L程度が地中に漏洩し、鉄還元細菌を包含する微生物群集3によって、完全に二酸化炭素ガス13まで分解されたと仮定すれば、1モルのベンゼンから最大6モルの二酸化炭素を生じるので、概ね100Lを超える二酸化炭素ガス13が生成する。
そして、表層地中ガスの二酸化炭素は、大気圧変化によって生じる大気とのガス交換によって、漏洩地点12の周囲を最大濃度として、濃度分布を生じながら、次第に周囲に拡散する。
【0069】
この希釈拡散された二酸化炭素ガス13を、例えば10ppmオーダー程度で精度良く測定するとすれば、最大で数百倍希釈、即ち元の生成二酸化炭素体積の数百倍の体積である数十立米の地中ガスに希釈された場合においても、大気中濃度レベルからしても十分な有意差を持った、ダイナミックレンジの広い地中ガス中の二酸化炭素ガス濃度分布14を生じる。
【0070】
この二酸化炭素ガス濃度分布14の形成原理から、大気中濃度レベルとは有意差を持つ二酸化炭素ガス濃度地点を検出し、この地点を起点として、更により濃度の高い地点を更にメッシュを狭めて体系的に追求して漏洩地点12を追求する。
【0071】
以下、本発明を代表する実地の表層土壌ガス調査について
図2を用いて説明する。
【0072】
具体的には、対象地を、調査メッシュ15で分割して調査地点16を地表17に設定し、不飽和帯18に1m深度程度の採取孔19を作成後、地中ガスを採取し、地中ガス中の二酸化炭素ガス13の濃度を測定して、メッシュ上における二酸化炭素ガス濃度分布14から、基本メッシュにおいて相対的に濃度の高い濃度地点を抽出すると共に各地点のガス濃度から、対象メッシュ上における二酸化炭素ガス濃度分布14を明らかにする。なお、飽和帯20が浅層に存在し、所定深度の採取孔19を設置できない場合は、より浅い深度に採取孔19を設置して、地中ガスを採取する。
【0073】
次に、調査メッシュ15上でのガス濃度分布に応じて、特に最大濃度地点周辺のメッシュ幅を、更に、1/2(図中のX1地点)、1/4(図中のY1地点とY2地点)と、順次狭めて、更なる最高二酸化炭素濃度の検出地点を追求し、絞込んで、漏洩地点12を推定する。
【0074】
ここで、より具体的なところでは、本発明であるところの二酸化炭素ガス13を用いた表層土壌ガス調査では、経験的に8mメッシュを基本メッシュとして用いる。このように、初期メッシュを8mで設定すると、8→4→2→1mと、3段階にメッシュを絞込んでも、以後の地点出しにおけるメジャーの目盛をm単位の整数値で簡便に設定できるので、この様なメッシュ設定を心掛けて調査の効率化を図る。
また、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4の使用や漏洩が、ほぼ無いと想定されるエリアに関しては、8mの倍数である16mや32mを採用しても良い。
【0075】
なお、本発明であるところの表層ガス調査時の、地面への削孔作業、ガス試料の採取作業等は、上述した土壌汚染対策法での土壌ガス調査(環境省告示第16号調査)の方法に準じたガス調査機材(削孔機、ガス採取管、採取バッグ等)にて、代用することが可能である。
【0076】
なお、係る表層ガス調査の際、二酸化炭素ガス濃度のみならず、ベンゼンの様に揮発性がある漏洩物質であれば、ベンゼンをターゲットとした、ベンゼンガス検知管、PID検出器、FID検出器、IR吸光検出器等を用いて、地中のベンゼンガス濃度を二酸化炭素ガス濃度と共に測定しても良い。
【0077】
但し、揮発したベンゼンガスは、地中ガスとして、上述した二酸化炭素ガスと同様の挙動で希釈拡散が図られるが、ベンゼンガスの理論上での最大発生量は、上記の二酸化炭素発生量の1/6程度でしかない。また、ベンゼンガスは、その希釈拡散過程において、土壌微生物によって容易に分解され二酸化炭素ガスに変換され消失してしまう可能性が高い事に留意する。
【0078】
経験的には、二酸化炭素ガスの水平分布は、揮発性汚染物質ガスの水平分布より、明らかに広く分布する傾向にあり、実際、揮発性汚染物質ガスは、漏洩地点12の極近傍でないと検出されない場合が多い。従って、揮発性汚染物質ガスを併用した測定は、メッシュを絞り込む段階から始め、総じて効率の良い調査を実施する。
また、揮発性汚染物質のガス濃度測定の目的を、漏洩地点12の確定のクロスチェックと位置付けると、二酸化炭素ガス調査結果を検証する上での有意義な測定となる。二酸化炭素ガス調査は精度が高いので、汚染物質以外の有機物の分解によって生じた非汚染物質由来の二酸化炭素ガスを検出する場合もあり、係るクロスチェックは、特定の有害物質汚染の漏洩地点の確定には、重要な操作となる。
【0079】
上述から明らかな様に、測定対象として二酸化炭素ガス13の選択、調査メッシュ15の精度、漏洩地点12の絞り込み作業の実施という点において、或いは、導電性資材1で構成される立体導電網2での鉄還元細菌を包含する微生物群集3の代謝活用、また代謝産物による土壌間隙閉塞を促し漏洩汚染の高濃度維持を図るという点において、本発明によるところの表層ガス調査は、公定調査たるフェーズ2土壌ガス調査(環境省告示第16号調査)や従来の表層ガス調査方法等とは大きく異なる。
【0080】
本発明であるところの表層ガス調査法は、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4における漏洩汚染の検知、漏洩汚染地点の推定等、一連の汚染機構の推定を精度高く実施することに主眼が置かれた調査方法と位置付けられる。
また、本法は、公定のフェーズ2の土壌ガス調査よりも高精度にて、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4の存在と漏洩地点の検知が可能である特徴を有する。後述する様な、公定のフェーズ2の土壌ガス調査対策に向けた事前基本情報として活用する他、以降のあらゆる汚染対策の設計に有効に活用することが好ましい。
【0081】
以下、第一種特定有害物質を取り扱う工場・事業所等の操業中の段階から計画的に一連の土壌汚染対策に取り組むための、本発明を代表する実施の形態について説明する。
【0082】
後述する様に、第一種特定有害物質等の有害物質を取り扱う工場・事業所を廃止する場合や、工事等で敷地の範囲が変わったり、土を掘り返したりする場合等、土壌汚染対策法で規定される要件を満たす場合は、同法に規定される所定の調査が必須となる。
係る調査での、フェーズ2土壌ガス調査にて、「定量下限値以上の濃度検出」地点が存在すれば、以後、フェーズ3のボーリング調査による汚染の存在確定、更に汚染レベルに応じた汚染区域指定を経て、区域解除を目的とした浄化対策という一連を実施する義務を負い、行政指導下にて、数百万〜数億円規模の浄化対策費、手間、時間を要する事業的負担を要求されかねないレールが、所定の手順や監督署の指導に従って、敷かれることとなる。
【0083】
まずは、係るフェーズ2土壌ガス調査をクリアーすることを念頭に、本発明であるところの(A)〜(D)の汚染物質の対策方法をもって、操業中の段階から計画的に土壌汚染対策に取り組み、土壌汚染の早期発見、早期対策の見地に立った一連の汚染対策を執り行うことが好ましい。
【0084】
ところで、最も好ましい本発明であるところの汚染対策の運用方法は、第一種特定有害物質の取扱いが、今後に予定される敷地に対し、汚染が未然な更地の状態から、汚染対策をスタートすることである。
【0085】
具体的には、第一種特定有害物質の取扱いが予定される敷地の表層土壌に対し、地盤改良を施すがごとく、バックホウ、パワーブレンダー、トレンチャー型スタビライザー、汎用スタビライザー等の重機を用いて効率良く地中に導電性資材や培養基材を表層土壌に混合し、連通する立体導電網を、表層土壌中に形成する。
【0086】
なお、この様に、広い敷地に対し導電性資材を添加する場合は、特に黒色の強い海砂等、多量に導電性のマグネタイト(砂鉄)等を含む安価な土木資材を用いて、価格を抑えた立体導電網の施工となる様に心掛ける。
【0087】
その後は、定期的に上述した表層ガス調査を実施して、土壌ガスに有意に大気レベルを超える二酸化炭素ガスや汚染ガスが検知された場合を契機として、漏洩対策をリアルタイムで実施する。
また、係る表層ガス測定地点が建屋内に存在する、或いは舗装や被覆面に存在する場合は、ガソリンスタンドの地中タンク周囲に設置されている様な漏洩検知孔のごとくのガス採取孔を常設し、以後は、都度の穿孔作業無しの土壌ガス採取と分析のみを実施する、効率の良い定期的表層ガス調査を実施することが好ましい。
【0088】
ところで、既に、建屋が存在し、有害物質等の取扱いが始まっている場合は、まず、地表面に導電性資材と共に培養基材を含む水溶液を地表面に散布した後、一定時間を経過した後に、本発明であるところの表層ガス調査を実施する。
第一種特定有害物質を取扱いが始まっており、既に漏洩汚染が発生している可能性が高い状況において、導電性資材の大規模な添加施工を実施して現場の土壌ガスを大きく撹乱してしまうと、本来の調査目的たる漏洩地点情報を失してしまいかねないので、ここでの施工優先順位には、注意を要する。
【0089】
係る表層ガス調査にて、汚染漏洩の存在が否定されるエリアであれば、自走式ボーリングマシンや打撃式簡易機械ボーリングマシンを活用して、導電性資材を分散状態で含む水溶液等を、当該敷地の飽和帯或いは不飽和帯の間隙を通じて土壌に注入して、連通する立体導電網を地中の広範囲に形成しても良いし、粒子状の導電性資材等をバックホウ、パワーブレンダー、トレンチャー型スタビライザー、汎用スタビライザー等の重機を用いて土壌と混合し、連通する立体導電網を、表層土壌中に形成しても良い。施工場所の状況に応じて導電資材等と施工機器を選択し、適切な立体導電網の設置を図る。
【0090】
最後に、既に汚染漏洩の存在が認知されるエリアであれば、まず、(E)アプローチの容易な既知汚染に対する導電性資材を活用したスポット浄化を積極的に図ることが好ましい。
一方、現状ではアプローチが困難な汚染に対しては、その周囲の土壌に対し、本発明であるところの、活性炭や多孔質黒鉛等の低溶出型導電性資材他を、上記の要領で土壌に添加し、鉄還元細菌を包含する微生物群集の代謝を活性化して、(B)不溶性鉄化合物等の生成による汚染の移動/拡散抑制、(C)有害物質の土壌からの低溶出化、(D)鉄還元細菌を包含する微生物群集によるバイオプリベンションを図る。
係る施工後は、定期的な表層ガス調査を実施して、更なる漏洩汚染の早期検知と早期対策を図ると共に、浄化施工を施したエリアに関しては、浄化経過を、ガス調査を通じて経過観察する。
【0091】
なお、第一種特定有害物質等の揮発性有機化合物を含む汚染である場合、汚染中心部の高濃度領域は、切削油やグリース等を伴う汚染である場合が多い。油分の多い汚染中心部の汚染に対しては、多孔質黒鉛を主体とした油汚染を考慮した施工を、また、飽和帯にて地下水流によって流下し、主として有害物質のみとなった汚染に対しては活性炭を主体とした施工を行うなど、汚染状態に応じた、最適な汚染吸着能を有する多孔質な炭素系導電性材料を選択する。
【0092】
なお、これらの選定やブレンド比率等に関しては、あらかじめラボ等での事前試験等を行う必要があり、また現地施工時においても、定期的な確認を実施して、より確実な施工となるように心掛ける。
【0093】
また、有害物質の種類に応じて、鉄還元細菌を包含する微生物群集による分解が最適となる様に、添加する肥料資材、電子供与体、電子受容体等の調整を実施する。例えば、有害物質が有機塩素系のテトラクロロエチレンならば、鉄還元細菌を包含する微生物群集による分解は、呼吸と共役する脱塩素反応により進行し、それぞれの相対的な濃度によっては、三価鉄の還元反応と競合する可能性もある。ラボの事前検討によってこの様な現象が見られた場合は、鉄還元細菌を包含する微生物群集における、鉄還元細菌以外の微生物による脱塩素化反応も併せて考慮し、応じた電子供与体や分解菌等の添加を検討する。
【0094】
ところで、既に有害物質の取扱いや管理を終了した、或いは終了を予定する敷地である場合も、汚染の恐れが高い状況と判断し、上記と同様の考え方で対策に臨む。
【0095】
これら一連を、係る事業が終了した後に実施される、公定調査たるフェーズ2調査をクリアーするための対策として実施する。
【0096】
なお、係るフェーズ2土壌ガス調査にて、所定の基準値を超えなければ、そこで公定調査たる汚染区域判定は終了し、土地利用、売買等に関し、汚染が無き土地とほぼ同等の活用が可能となる。
【0097】
一方、このフェーズ2土壌ガス調査にて「定量下限値以上の濃度検出」とスクリーニングされた地点が存在し、その後のフェーズ3調査での汚染確定を経て、汚染区域として「要措置区域」或いは「形質変更時要届出区域」が指定された場合は、この一連の区域解除を目的とした更なる浄化対策を実施する。
【0098】
具体的には、本発明であるところの、(B)不溶性鉄化合物等の生成による汚染の移動/拡散抑制、(C)有害物質の土壌からの低溶出化、(D)鉄還元細菌を包含する微生物群集によるバイオプリベンションを継続し、また必要に応じて(E)アプローチの容易な既知汚染に対する導電性資材を活用したスポット浄化を実施して、まずは、汚染区域指定区分である、「要措置区域」から「形質変更時要届出区域」への変更、続いて、「形質変更時要届出区域」の解除といった順次の区域解除を目標とする浄化対策を図ることが好ましい。
【0099】
なお、土壌汚染対策法での各種調査にて、汚染区画が明確に示されている場合において、本発明であるところの(A)汚染漏洩地点の推定が実施されていない場合は、汚染漏洩地点を確認するために、本発明に準じた表層土壌ガス調査を実施し、係る汚染漏洩地点を必ず浄化対象に含める様にする。
【0100】
現行の土壌汚染対策法施行後の浄化対策では、施工事業者によっては、汚染漏洩地点を確認せずに、フェーズ2土壌ガス調査結果とフェーズ3のボーリング調査結果に基づいて、汚染漏洩地点の把握か省みられることなく浄化対策が計画・実施される場合も少なく無い。
結果、公定調査結果で確定された汚染地点範囲の浄化が完了し、しばらく経った後に、同地点で再度汚染が検出され、施工不良が問われる係争事例も発生している。
汚染は、原因があって結果を生じるものであり、汚染機構を判じ得ない別観点での汚染調査結果だけを見て対処し、原因を究明しなかった場合に起こり得る、典型的な浄化施工業者の過失事例である。現時点における土壌汚染対策法の調査は、敷地に対する汚染の有無を調査する目的で実施される調査であり、汚染機構を明確に反映する調査ではないことに留意する。
漏洩地点が明確ではない場合は、本発明であるところの(A)汚染漏洩地点の推定を実施、又は応用し、汚染機構を明確とした、確度の高い浄化対策を実施する。
【0101】
なお、このように既に汚染の存在が明確である状況では、土壌に添加する導電性資材として、多孔質黒鉛等、特に多孔質な炭素系の導電性資材を用いて、立体導電網の構築によって生じる不溶性鉄化合物の生成による汚染の移動/拡散抑制作用と共に、多孔質な炭素系資材が有する物質吸着能により、更なる汚染の土壌からの低溶出化を図る様に心掛ける。施工方法も上述のごとく、施工場所や汚染状況に応じて、適切な方法を選択する。
【0102】
特に対象地が「要措置区域」を指定された場合は、所定の溶出基準を満たす経口摂取経路の遮断措置が求められ、行政対応としては、係る汚染地下水の飲用・利用の制限を実施するのが一般的であり、一方、事業サイドとしては、係る汚染の移動/拡散抑制と第二溶出基準を満たす土壌からの低溶出化と共に浄化を図る対策を、本発明によるところの対策方法にて確度高く実施し、まずは「要措置区域」から「形質変更時要届出区域」への早急なる区分変更が図られる様に努める。
【0103】
この「要措置区域」から「形質変更時要届出区域」への区分変更によって、当該区域への人の立ち入りや、建屋の建設等の形質変更に対する規制要件が、大幅に減免され、実質的な商業的生産活動が可能となる。係る商業的生産活動を、対象区域にて早急に再開し、以後、積極的な商業展開を実施する等、今後の浄化費用負担の軽減を図る様に心掛ける。
【0104】
なお、その後の「形質変更時要届出区域」の解除には、更に所定の溶出基準濃度までの浄化が求められ、また一定期間の予後調査が要求される。この場合は、本発明であるところの、(C)有害物質の土壌からの低溶出化、(D)鉄還元細菌を包含する微生物群集によるバイオプリベンションを継続し、また必要に応じて(E)アプローチの容易な既知汚染に対する導電性資材を活用したスポット浄化を実施して、所定の溶出基準を満たす浄化を図り、一定の期間を経た後の区域指定解除を目指す。
【0105】
係る生物学的浄化の完了には、汚染程度にもよるが、一般に半年から数年の時間を要する。「形質変更時要届出区域」の状況で、実質的な商業的生産活動を再開するなどの土地利用の改善を図り浄化費用負担の軽減を図りながら、一定期間「形質変更時要届出区域」の状態で、生物学的浄化の完了を待つことが可能であれば、現状にて主流である「要措置区域」から一足飛びの「浄化対策完了」を早急に図る、費用対効果の薄い浄化対策に、莫大な費用を掛ける必要性は無くなる。
【0106】
なお、浄化対策費用が、その対象地の土地価格の2割を超えると、浄化対策を実施した上での土地売買が成立せずに、土地の塩漬けたるブラウンフィールド化する可能性を示す市場調査結果がある。
【0107】
有害物質の取扱いがあって、ブラウンフィールド化が懸念される敷地であることがあらかじめ想定されるのであれば、有害物質を取り扱う事業の操業中の段階から、まずは、事業終了後の公定試験たるフェーズ2の土壌ガス調査にて「汚染無し」と判定される様な、早期検知と早期対策を特徴とする本発明であるところの(A)から(E)の土壌汚染対策を、係る調査に先んじて計画的に実施することが極めて重要である。
【0108】
ここで実施の形態に係る、導電性資材としては、具体的には例えば、鉱物系導電材であれば、マグネタイト、ヘマタイト、レピドクロサイト、ゲータイト等が、金属系導電材であれば、鉄粉、アルミ粉、マグネシウム粉等が、炭素系導電材であれば、黒鉛、カーボンブラック、黒炭、白炭、オガ炭、竹炭、バイオ炭等の粉末、または、これらの繊維様製品、多孔質炭素系粒子たる活性炭等を利用することができるが、導電性を呈し、鉄還元細菌の細胞表面での電子伝達を仲介できる導電性資材であれば、本発明にて利用することが可能であり、上記に具体的に示した資材に限定されることはない。また、他の資材を混合し、これらの導電性資材を一部に含む資材であれば、本発明での導電性資材として活用可能であることは言うまでもない。
【0109】
ここで実施の形態に係る、導電性資材の形状は、展開する土壌や形成条件によりサイズも様々に存在する不定型ではあるものの、導電性資材が土壌粒子の表面に付着し、土壌間隙中にて互いに連通することで立体導電網の基礎が形成され、更に土壌粒子の表面での鉄還元細菌の仲介で拡大・補強される共通性質を有する。この土壌間隙をトンネルに例えれば、このトンネルの内壁面に沿って立体導電網が形成される。
また、係る立体導電網の立体的な外観形状は、スポンジ樹脂形状に近似される。本来のスポンジ樹脂は、多くの空隙を内包する網目状の樹脂構造で外観が形成されるが、係る立体導電網及び土壌間隙の外観は、この網目状の樹脂の外観に近似できる。なお、実際のスポンジを形成する樹脂は中空構造を採らないが、中空構造を有すると仮定すれば、近似される土壌間隙は、この中空部分に該当し、同様に近似される立体導電網は、中空を規定する外表面に相当する。
即ち、立体導電網は、その形状が土壌間隙と土壌粒子との境界形状に近似され、外観がスポンジ樹脂構造に近似される網目状に連なった立体物が、中空たるトンネル形状を呈する網糸によって形成されたごとくの構造物と説明される。
【0110】
また、ここで実施の形態に係る、培養基材としては、窒素肥料(アンモニウム塩、硝酸塩、尿素等)、リン酸肥料(リン酸塩、過燐酸石灰等)、カリウム肥料、各種金属塩(マグネシウム、マンガン、モリブデン、コバルト等)、ビタミン類等の培地成分の他、これら培地成分を吸着し徐放的に供給するための鉱物系粒子(ゼオライト、鹿沼土、タルク等)等や、電子供与体(有機物等、零価鉄等の金属粒子等)、電子受容体(有機物、硝酸塩、硫酸塩、鉄化合物、マンガン化合物、フミン酸等の有機酸、炭酸化合物等)を利用することができるが、鉄還元細菌を包含する微生物群集の増殖や代謝を促す資材であれば、本発明にて利用することが可能であり、上記に具体的に示した資材に限定されることはない。また、他の資材を混合し、これらの培養基材を一部に含む資材であれば、本発明にて培養基材として活用可能であることは言うまでもない。
【0111】
また更に、ここで実施の形態に係る有害物質としては、土壌汚染対策法における第一種特定有害物質である、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼンが挙げられ、本発明の対策対象とすることが可能である。その他、水質環境基準や土壌環境基準に定められる、1,4-ジオキサンや塩ビモノマー等も、本発明の対策にて適用可能である。なお、上記の第一種特定有害物質の他にも、化審法等で定められる対象物質を含む汚染が、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質の態様を示すものであれば該当し、言うまでもなく上記に具体的に示した化学物質に限定されることはない。
【0112】
ここで、本発明にて用いることが可能な鉄還元細菌としては、具体的には例えば、ゲオバクター属細菌、ペロバクター属細菌、フェリモナス属細菌、シュワネラ属細菌、ロドフェラックス属細菌、フェリバクテリウム属細菌、アナエロミクソバクター属細菌、デスルフロムサ属細菌、デスルフロモナス属細菌、デスルフィトバクテリウム属細菌、ゲオグローブス属細菌、バチルス属細菌、フェログロブス属細菌、ゲオバチルス属細菌、及び、ゲオスリックス属細菌等が挙げられる。
なお、細胞表面や導電性ワイヤ等の細胞構成器官を介して導電性資材や他の細菌に対し電子伝達できる微生物であれば、本発明にて利用することが可能であり、上記に具体的に示した微生物に限定されることはない。
【0113】
また、本発明では、鉄還元細菌と共生関係にある他の嫌気性細菌を含めた、鉄還元細菌を包含する微生物群集3による生物学的浄化を図ることを主旨の一つとする。以下、本発明であるところの鉄還元細菌を包含する微生物群集の詳細について、
図3を用いて説明する。
【0114】
鉄還元細菌群23は、環境中において、他の嫌気性(共生)細菌群24と共にバイオマットを形成し、生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4を、電子供与体として、或いは電子受容体として消費する。この消費を促すことにより、汚染物質の浄化が図られる。
生分解性を呈し有害物質を包含する汚染物質4という表現が示す通り、汚染物質は、少なくとも1種類以上の有害物質を含む複合物質で構成され、この複合物質の総合的な代謝を図る上で、多様な細菌の機能をもって対処する必要がある、本発明においては、鉄還元細菌群23を主体とし嫌気性(共生)細菌群24を包含する微生物群集にて、係る総合的な代謝を図る。
【0115】
ここで、例えば、対象が有機塩素化合物汚染であれば、鉄還元細菌群23の他、硫酸還元細菌群やメタン細菌群、デハロコッコイデス等の脱塩素細菌群、或いはビタミンB12産生菌等から構成される嫌気性(共生)細菌群24で構成される、鉄還元細菌を包含する微生物群集3によって脱塩素化を図る。
ここで、本発明にて用いることが可能な、鉄還元細菌以外の有機塩素化合物の脱塩素化菌として、具体的には例えば、デハロコッコイデス属細菌、メタノサルシナ属細菌、デスルフィトバクテリウム属細菌、デハロバクター属細菌等が挙げられ、これらは、有機塩素化合物を電子受容体として利用し、適切な電子供与体と培養基剤を併せて供給することで有機塩素化合物に対して脱塩素化たる浄化を(ビタミンB12産生菌等との共生によって)図る特徴を有する。
【0116】
ここで、鉄還元細菌群23を主体とする微生物群集とすることで、一部の嫌気性(共生)細菌群24と、細胞表面、導電性ワイヤ22、その他導電物質を通じて、係る電子の授受を行なって、エネルギー効率の良いバイオ浄化を図ることが期待される。
例えば、嫌気性(共生)細菌群24の一部として存在する脱塩素細菌群と鉄還元細菌との電子授受を介した、より緊密な共生関係が築かれた鉄還元細菌を包含する微生物群集3を、現場土着の菌叢によって構築しバイオスティミュレーションを実施する、或いは係る電子授受が図られる共生系が成立した集積培養系をあらかじめ取得し、バイオオーグメンテーション的手法を現場で展開することにより、鉄還元細菌より生じた電子を脱塩素細菌群の脱塩素化に利用させるエネルギー効率の良い脱塩素化バイオ浄化が期待される。
【0117】
また、例えば、対象がガソリン汚染であれば、ガソリン中のベンゼンは、バイオマット中の鉄還元細菌群23により分解され、一方、他のガソリン成分は、バイオマット中の硝酸還元菌群、硫酸還元細菌群やメタン細菌群等から構成される嫌気性(共生)細菌群24により分解が図られる。このように、ガソリン汚染に対しては、鉄還元細菌を包含する微生物群集3による多様な微生物を介した生物学的浄化を図る。
【0118】
なお、鉄還元細菌群23の一部には、バイオマット境界21付近に伸びた導電性ワイヤ22を通じて、分子状酸素に対し電子伝達が可能なことも知られ、この様に、鉄還元細菌は、好気環境から嫌気環境に至る幅広い環境において、多様でユニークな電子伝達を行うことを可能とする。
【0119】
ところで、燃料油汚染の浄化に関しては、嫌気性の油分解菌のみならず、好気性の油分解菌による浄化事例も多くの実績がある。本発明であるところの嫌気性の鉄還元細菌と好気性の油分解菌を用いた、嫌気/好気条件のハイブリッド浄化を実施する場合は、汚染の移動/拡散抑制が担保された条件にて、対象汚染土壌に対し、嫌気分解を阻害しない程度の断続的な酸素を含むガスの通気を実施して、還元された鉄還元細菌の電子受容体の再生と、好気性油分解菌に対しては電子受容体たる酸素の供給を実施して効率の良い浄化を実施する。
【0120】
なお、本ハイブリッド浄化を実施する場合は、できれば、対象土を掘削し、掘削土をパイルに成型し、適切な通気(吸気)配管を設置して、実施することが好ましいが、原位置にて土壌改良を実施するがごとくの切返しを実施して、簡便な通気装置での断続的な通気を実施するだけでも、十分に時間を掛けることで、浄化が達成される。
【0121】
ところで、本発明にて利用可能な、燃料油や油脂分を分解可能な好気性微生物としては、具体的には例えば、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルディア属、シュードモナス属、マイコバクテリウム属、ノカルディオイデス属、プラウセレラ属、バークホールデリア属、アルカニボラックス属、キサントモナス属、アシネートバクター属、ラルストニア属、オレイフィラス属、タラソリタス属、キサントバクター属、アシディスファエラ属、バチルス属、ゲオバチルス属細菌等が挙げられる。なお、燃料油や油脂分を分解できる好気性微生物であれば、本発明にて利用することが可能であり、上記に具体的に示した細菌群に限定されることはない。
【0122】
この様に、ベンゼンを含む複合汚染を例にとっても、鉄還元細菌と様々な微生物群との組合せたる鉄還元細菌を包含する微生物群集3により、多様な浄化方法を提案できる。
現場状況、土着微生物の汚染分解能、分解菌添加の有効性の確認を、施工前にラボで確認するなど、適切な浄化設計を実施すると共に、納期、浄化コストに鑑み、最適な浄化を実施する様に心掛ける。
【0123】
なお、特殊なケースではあるが、呼吸基質として酸素と三価鉄の両方を用いることができるシュワネラ属細菌等の一部の鉄還元細菌の現場適用が可能であれば、空気または酸素を含む気体を対策対象の土壌に対し一定間隔を持って供給する。結果、係る特殊な鉄還元細菌は、酸素を呼吸基質として用いる時間帯には過酸化水素を生成し、また通気をストップして嫌気的に三価鉄を呼吸基質として用いる時間帯には、二価鉄と有機酸を生成する。
この操作を交互に繰り返すことで、二価鉄と有機酸と過酸化水素が同時に存在する時間帯を形成し、これら生成物群を基材とする非生物学的な化学酸化分解たるフェントン反応を生じやすい条件を設定して、更なる汚染物質浄化の促進を図る様に心掛ける。
【0124】
以上、想定される汚染状況や対策目的に応じた本発明の発明を実施するための形態や実施例を説明してきたが、少なくとも導電性資材と培養基材を用いて、対策対象の土壌に連通する立体導電網を地中に形成し、鉄還元細菌を包含する微生物群集と汚染物質との接触を通じて汚染物質の代謝や分解を図
るバイオプリベンション技術(生物学的汚染予防技術)を基本構成とす
る汚染対策であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることはいうまでもない。
【0125】
また、後述す
る浄化対策の付帯技術(任意のタイミングでの汚染浄化技術や井戸様構造物を用いた導電性資材の再生技術)に関しても、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることはいうまでもない。
【0126】
係る付帯技術である、任意のタイミングでの汚染浄化を実施する場合は、導電性資材として、特に活性炭および鉄粉を選択的に用いる。この場合の汚染浄化方法として、化学酸化分解法と還元脱塩素法を選択できるが、方法の選択は、必ず適用可能性試験を施工前に実施して、その効能の確認と必要資材の施用量を決定する。
【0127】
化学酸化分解法では、導電性資材の他に過酸化物や有機酸の種類を検討して適切な条件を設定する。過酸化物としては、例えば、過酸化水素、オゾン、次亜塩素酸塩、過マンガン酸塩、マグネシウム過酸化物、過硫酸塩などを含む資材を挙げることができる。これらの過酸化物は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物としては、特に過硫酸化合物を用いることが好ましい。
また、有機酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、ピルビン酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、酢酸、蟻酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸などから選ばれる有機酸またはその塩を含む資材を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、活性炭と鉄粉との組合せによって汚染・有害物質を分解できる過酸化物および/或いは、有機酸を含む資材であれば、本発明にて利用することが可能であり、上記に具体的に示した資材に限定されることはない。
【0128】
また、還元脱塩素法では、導電性資材の他に脂溶性有機資材を少なくとも一部に含む資材を添加して適切な条件を設定する。脂溶性有機資材を用いる利点は、地下水流や雨水浸透による流下・流出を最少とできることにあり、比較的長期間を要する還元脱塩素法の実施において汚染土壌に対し長期に亘って本剤の供給を図る目的で用いる。
一方、展開する土壌環境が酸化雰囲気にあり、短期間で還元条件に移行させる必要がある場合等には、脂溶性有機資材を主とした構成であって、一部に水溶性有機物を含む様な資材構成にて還元脱塩素法を実施する方法を採用しても良い。
脂溶性有機資材としては、植物油(菜種油、大豆油、コーン油、ゴマ油、米油、係る植物油の廃油等)、動物油(ラード、牛脂、係る動物脂の廃油等)、脂肪酸などを含む資材を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0129】
また、もう一つの付帯技術である、導電性資材の再生方法を、
図4に記載した井戸様構造物の概略図を用いて説明する。
井戸様構造物は、4aに示す多重分配継手25によって仕切られ、仕切られた区間に配置されたストレーナ(有孔)管26から、過酸化物溶液、および/或いは、気体を、流体移送管27を介して、対策対象の土壌に注入する機能を有する。注入された過酸化物溶液は、注入気体流28によって注入過酸化物溶液の撹拌流29を生じ、対象土壌たる帯水層中への浸透・拡散が図られる。この気体を用いた過酸化物溶液の撹拌は、1本の井戸に複数のストレーナを配して実施したほうが、影響範囲をより広く取ることができる。
【0130】
この複数のストレーナを配する1本の井戸は、4aや4bに示す様に多重分配継手25を1本の井戸内に複数配置して、仕切られた複数のストレーナ区間を設置し、更に流体移送外管群30と流体移送内管31を包含する多重管構造を有する流体移送管27を、多重分配継手25とストレーナ(有孔)管26に通じた後に、流体移送管固定具32にて固定し、最後にストレーナ(有孔)管26や無孔管33を固定して製作する(4c)。
【0131】
この対象土壌に浸透・拡散された過酸化物溶液にて、導電性資材に付着した機能損壊物質の洗浄・分解を行い、導電性資材の機能たる、導電特性、表面吸着特性、空間特性等の諸機能の回復を図る。なお、過酸化物としては、例えば、過酸化水素、オゾン、次亜塩素酸塩、過マンガン酸塩、マグネシウム過酸化物、過硫酸塩などを含む資材を挙げることができる。これらの過酸化物は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。但し、過酸化物としては、特に過硫酸化合物を用いることが好ましい。
【0132】
なお、本井戸様構造物は、導電性資材の再生を行っていない期間には、各ストレーナ区間における観測井戸として活用し、多区間のモニタリングによって精度の高いモニタリングを実施する。また、地層構造が破壊されていない互層構造を有する汚染土壌に本井戸様構造物を適用する場合であれば、本井戸様構造物の特徴である多数のストレーナ区間を、互層構造の各地層に分配して配置することで、各層に対する個別のモニタリングや各層に特化した流体の注入・回収操作を実施できる多目的井戸として活用する。
【0133】
以上、本発明の発明を実施するための形態や実施例を説明してきたが、具体的な構成は前述した形態や事例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【実施例】
【0134】
以下に、実施例により本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0135】
本実験では、導電性資材の添加量が異なるローム土壌を容器内に入れ、係る土壌の一部に灯油・ガソリンの混合油を添加して、鉄還元細菌による呼吸量の違いを、容器内の二酸化炭素濃度から評価した。
【0136】
試験手順を以下に示す。
(a)基本培養土の調整を、窒素ガス置換した嫌気グローブボックス内にて、ローム土壌1Lに対し、鉄還元細菌用の培地(脱塩素水道水100m1、NH
4Cl:0.15g、NaH
2PO
4:0.06g、CaCl
2・2H
2O:0.01g、KCl:0.01g、MgCl
2・6H
2O:0.2mg)を添加・混合して作成した。
引き続き、同グローブボックス内にて、この基本培養土を5等分し、土壌1kg当たり、10mg、50mg、100mg、500mgのナノ活性炭(<1nmφ)を加えた4系統の試験土壌と、1系統の活性炭無添加土壌を作成し、セプタムで仕切られたガス放出・採取孔を有する500ml容のガラス瓶に各試験土壌を充填した。
続いて、充填した土壌の中央部に、灯油とガソリンを1:1で混合した混合油1mlを、瓶中央の地表部から周囲への広がりを最少として垂直に浸透させる様、ゆっくりとスパイクし、更に全体の土壌構造を乱さない様に注意しながら蓋を取付け、摂氏15℃のインキュベータで静置状態での培養試験に供した。
【0137】
(b)続いて、経過時間毎に、各試験区のガス放出・採取孔から0.5mlのガスをガスタイトシリンジにて採取し、TCDガスクロマトグラフィーに供して、採取ガス中の二酸化炭素濃度を求めた。
【0138】
上記の実験結果を
図4に示す。
図4のグラフより明らかなように、活性炭濃度が高い程、二酸化炭素濃度上昇が早期に始まることが分かった。また、到達時間の差はあるものの、二酸化炭素濃度の到達濃度は、活性炭添加量が50mgを超えるとほぼ変わらなくなり、80〜90%近辺で頭打ちとなった。
【0139】
なお、試験終了時点で、試験土壌を冷凍固定した後に容器から取出し、更に、解凍して観察に供したところ、活性炭添加量が50mgを超えた試験区では、試験初期には黒掛かった褐色であった土色が、試験土壌の全面が黒掛かった青色に変化している様子が観察された。一方、無添加区と10mg添加区では、全面の青色変化は観察されず、青色化は中央部付近に限定されていた。また10mg添加区での青色部と褐色部の境界に、放射状に伸びる糸状の青色ラインが複数観察された。
【0140】
これらの実験結果から、少なくとも、係る活性炭を適切に土壌に混合して、土壌中に立体導電網を形成することにより、汚染存在部のみならず離れた場所の電子受容体も併せて活用して、系全体としての鉄還元細菌の代謝活性を高められることが分かった。また係る代謝では、顕著な二酸化炭素の発生を伴うことが確認された。
【実施例2】
【0141】
実施例1では、二酸化炭素の発生、及び、立体導電網の形成に関する評価を実施したが、係る実施例2では、導電性資材を用いた効果としての、汚染移動/拡散抑制、土壌からの低溶出化、微生物浄化に関する評価について、土壌カラム試験を用いて実施した。
【0142】
試験手順を以下に示す。
(a)重量比95の粒径0.1mmのガラスビーズと重量比5の腐葉土を良く混合して充填した内径φ5cm×1m有効長の温調ジャケット付模擬土壌カラムを3本用意し、続いて、煮沸・脱気処理と活性炭処理を施し、更にスチールウールを充填したプレカラムを通じて脱酸素化を図った嫌気除塩素水道水を、嫌気グローブボックス内で調整し、シリンジポンプを用いて、カラム間隙体積の3倍量分を通水してコンディショニングを実施した。なお、コンディショニングは、カラム通過線速が、概ね30cm/日となるように、シリンジポンプの流量を調整した。
【0143】
(b)また、上述の「嫌気除塩素水道水」に対し1,4-ジオキサンを1mg/L濃度となる様に添加し、更に栄養塩の添加の有無の違いから2種類の供給溶液を、嫌気グローブボックス内で作成し、カラム試験の各試験区に供した。各試験区における培養条件の違いを表1に示す。
【0144】
【表1】
なお、栄養塩は、溶液1Lに対し、NH
4Cl:1.5g、NaH
2PO
4:0.6g、CaCl
2・2H
2O:0.1g、KCl:0.1g、MgCl
2・6H
2O:2mg、Fe(III)‐EDTA:2.5gを添加し、pH7に調整して実験に供した。
ところで、本来であれば、自然界の土壌中には、少なからず不溶性の三価鉄が含まれ、必ずしも培地を通じた三価鉄成分の供給は必要としないが、今回は、試験の途中から、鉄還元細菌の寄与を評価するために、敢えて溶解性鉄成分を通水に加えて供給する系にて実験を行った。
なお、各試験区の通水は、初期のカラム通過線速が、概ね30cm/日となるように設定したが、その後の経過に従って、供給圧力が上昇した場合を想定し、供給圧力が50kPaで通水自動停止、10kPa迄、圧力が低下すると通水自動復帰となる様な圧力調整による断続的な通水を設定した。また、カラム温度は、温調ジャケットを通じて摂氏15℃の恒温となるように調整した。
この様な設定の下で、10日間のコンディショニングを実施し、また、経時的にカラム通過水中の1,4-ジオキサン濃度を、PID/GCを用いたヘッドスペース法にて測定した。
【0145】
(c)係る10日間のコンディショニング後、試験区1と試験区2の各カラムに対し、カラム体積の0.1倍量の5%重量濃度のナノ活性炭スラリー溶液をカラムに通過させ、活性炭粒子をガラスビーズ表面に吸着させる操作を実施した。
【0146】
(d)以後、経時的なカラム通過水中の1,4-ジオキサン濃度を、PID/GCを用いたヘッドスペース法での測定を継続した。また、活性炭添加後90日から100日迄の10日間は、試験区1に対し、通水溶液の栄養塩中からFe(III)‐EDTAを除いた溶液の通液を実施して通過水中の1,4-ジオキサン濃度を観察した。
【0147】
結果を、
図5から
図7のグラフに示す。
図5は、各試験区における供給1,4-ジオキサン濃度と経時的なカラム流出水中の1,4-ジオキサン濃度から求めた濃度比である。−10日から0日目迄は、各試験区共に、活性炭添加前のコンディショニング期間であり、試験区1と2に対しては、0日目に活性炭の添加を実施した。
【0148】
図5にて明らかな様に、活性炭添加区である試験区1と2に関しては、活性炭添加後、数日を経て、濃度比が減少傾向に移行し、更に数日を経て、ほぼ検出が見られなくなった。詳細には、試験区1は、活性炭添加後34日目に、また試験区2は56日目に、水質環境基準である0.05mg/L以下となった。以後、試験区1は97日目迄、試験区2は57日目迄の2日間にて、係る基準値以下を達成した。
【0149】
この両試験区における、地下水基準を達成する迄の日数、及び、継続期間の違いは、栄養塩添加の有無の違いであり、鉄還元細菌、或いは鉄還元細菌を包含する微生物群集の増殖に伴う1,4-ジオキサン分解の有無の違いによるものと推察された。
なお、微生物分解の関与がほとんど無いと想定される試験区2の濃度比の変化に関しては、主として活性炭の吸着効果による1,4-ジオキサン濃度の減少と想定されるが、70日目以降で観察される急激な1,4-ジオキサン濃度比の上昇は、添加した活性炭の吸着容量が限界となる破過状態に達した結果であると推察される。
【0150】
一方、試験区1に関しては、70日を超えてもなお、環境基準値以下を保っており、係る現象の比較からも、1,4-ジオキサンの分解・浄化に、鉄還元細菌、或いは鉄還元細菌を包含する微生物群集の一定の寄与が示唆される。
この鉄還元細菌等の寄与を更に明確にする為に、通水からFe(III)‐EDTAを除いた試験を90日目から100日目迄の10日間実施したところ、111日目をピークとする一過性の1,4-ジオキサン濃度比の戻りが観察され、カラム流出水中の1,4-ジオキサン濃度が環境基準値以下を保つ上で、鉄還元菌等は、分解を担う一定の寄与を果たしていることが明確となった。
【0151】
ところで、試験区3は、試験区1同様にカラム通水に栄養塩が存在する試験区であるが、試験区1で観察された様な明瞭な1,4-ジオキサン濃度の低下は観察されなかった。この試験区3と試験区1との条件の差は、活性炭添加の有無であるが、
図6に示す1,4-ジオキサン除去能の比較では、試験区1と試験区2&3の和との除去能を比較すると、後者が74日目以降、急激な能力低下を示すのに対し、前者は74日以降も高い除去能力を維持している(111日目を負のピークとする別目的での評価期間を除く)ことが明瞭に示されている。
この結果が示すところは、試験区2に示される活性炭の吸着による1,4-ジオキサン除去効果と、試験区3に示される鉄還元細菌等の分解による1,4-ジオキサン除去効果、双方の効果の和以上の効果が、活性炭と鉄還元細菌等の組み合わせによって生じることが、試験区1が示す結果との比較によって明らかとなった。
今回の実験では、電子受容体は通水液から連続的に供給しているので、立体導電網形成程度の違いから生じる電子受容体律速による差では無い。活性炭による汚染濃縮効果、或いは、付着やバイオマット形成等の促進効果が、鉄還元細菌等の増殖や分解促進に寄与した等、別観点における1,4-ジオキサン除去の促進効果の存在が示唆される。
【0152】
また、
図7に示す各カラムの供給圧の経時的変化を比較すると、活性炭のみを添加した試験区2の供給圧力に変化は無く、また、栄養塩のみを添加した試験区3の供給圧力にも幾分の上昇傾向が観察されたものの、試験区1の供給圧力の上昇が最も顕著であった。
係る圧力上昇の差は、鉄還元細菌の代謝によって生じる不溶性鉄化合物の生成や増殖した鉄還元細菌等による土壌間隙の閉塞化によって生じたものと推察され、試験区1の鉄還元細菌等の代謝活性は、試験区3と比較して、より顕著であったと考察される。
【0153】
総じて、系への活性炭添加は、立体導電網形成も相まって、系全体での鉄還元細菌等の代謝活性を高める作用があり、これにより、1,4-ジオキサン浄化能の向上と、土壌間隙の閉塞化たる透水係数の低下が図られ、汚染地下水に含まれる有害物質の、移動/拡散抑制(含:局所的な低溶出化・汚染分解)たる、流下量の抑制を促すものと推察された。
【実施例3】
【0154】
実施例2の成果に基づき、1,4-ジオキサンを、ベンゼン或いはテトラエチレンに変更し、培養液成分はそれぞれの分解に適した組成に変更して、実施例2と同様の試験を実施したところ、両有害物質共に、1,4-ジオキサンとほぼ同様の結果が示され、有害物質種を芳香族炭化水素系物質や有機ハロゲン化合物に替えても、同様な効果を再現できることが示された(データ不載)。
【実施例4】
【0155】
本実験では、導電性資材としてマグネタイト(砂鉄)を用いた立体導電網を地中に形成し、導通する鉄還元細菌を包含する微生物群集を活用して、過酸化水素と二価鉄と有機酸の生成を促して、フェントン反応を誘導し、難生分解性汚染物質の分解を図る方法に関する検証を実施した。
【0156】
試験手順を以下に示す。
(a)難生分解性汚染物質を含む土壌として、好気性のバイオレメディエーションの実施履歴があるC重油汚染土で、汚染浄化が不調で汚染が残存してしまった汚染未完了土(汚染濃度:約3千mg/kg)を選択した。この難生分解性油分を含む土壌に対し、米糠とマグネタイト(砂鉄)をそれぞれ重量比0.2%で添加し、更に、窒素とリンを0.01%の割合で添加(窒素肥料として尿素、リン肥料として過リン酸石灰を使用)し、供試土壌を作成した。
【0157】
(b)続いて、上記供試土壌を、5台の2L容のステンレス製容器の口一杯まで装填して5系統の試験区を設定し、培養温度20度のインキュベータ内にて培養に供した。培養開始後、各試験区での油分濃度を経時的に測定した。
また、試験開始後、油分の減少が観察された試験区の土壌試料(500ml程度)を用いて、係る分解効果がフェントン反応で生じたヒドロキシラジカル由来の分解反応であることを判定するために、土壌重量の0.5%量のマンニトール(ヒドロキシラジカルのスカベンジャーとして:マスキング試験)を添加し、その後、500ml容の容器に充填し、本試験条件と同様の操作にてインキュベーションとその後の経時的な油分濃度の測定を実施した(なお、マンニトール添加前後で、添加による土壌微生物の呼吸活性に変化がないことを確認済。)。
【0158】
上記の実験結果を表2に示す。表2から明らかな様に、通気条件によってC重油の浄化性能が異なる結果を得た。1日毎の撹拌を実施した試験区2の通気サイクルにて、C重油汚染土由来の難生分解性汚染物質の分解を最も顕著に図ることができた。
【0159】
【表2】
また、分解が顕著であった試験区2の1カ月後の土壌試料を用いて、ヒドロキシラジカルのマスキング試験を実施した結果、マンニトール添加後の油分濃度の減少は、その後の試験区2の油分濃度の変化と比べて極めて明瞭に鈍化したことから、試験区2で観察された顕著な分解反応は、ヒドロキシラジカルに由来する可能性が高いことが示唆された。
【実施例5】
【0160】
実施例5では、各種汚染物質分解で用いられる資材(過酸化物、有機酸鉄、脂肪酸)と代表的な導電性資材(活性炭、鉄粉)とを組み合わせた場合の汚染浄化性能について評価した。表3にその概要を示す。試験区1〜3は活性炭のみの系、試験区7〜9は鉄粉のみの系、試験区4〜6は鉄粉と活性炭を組み合わせた系を設定した。
【0161】
【表3】
【0162】
なお、各試験区の詳細な設定は、以下とした。黒ボク土を重量濃度で50%含む地下水100mlに対し、「過酸化水素+クエン酸鉄添加」系の試験では、最終濃度として、過酸化水素濃度:10g/L、クエン酸鉄濃度:1g/Lとなるように試験系に添加した。「過硫酸ナトリウム添加」系の試験では、最終濃度として、過硫酸ナトリウム濃度:10g/Lとなるように試験系に添加した。「脂肪酸添加」系の試験では、最終濃度として、市販の脂肪酸資材であるアムテクリーンP(パナソニック環境社製):10g/Lとなるように試験系に添加した。そして、鉄粉および活性炭を、最終濃度総量として10g/Lとなるように、また、全ての系に、培養基材としてIMK培地(和光純薬社製):252mg/Lとなるように、添加した。
【0163】
それぞれの反応液を調整後、反応液100mlを500ml容の密栓瓶に入れ、還元系の密栓瓶に対しては、気相を純窒素ガスで置換した後に密栓して、更にテトラクロロエチレン濃度:40mg/Lとなるようにテトラクロロエチレン標準溶液(1mg/ml)を500ml容の密栓瓶の試験系に添加して、15℃に保ったインキュベータ内に保管し、試験を開始した。続いて、反応開始から10日後と30日後に、各試験系の塩素イオン濃度をイオン電極により測定し各試験系におけるテトラクロロエチレンの塩素イオンまでの分解程度を観察した。結果を表4に示す。
【0164】
【表4】
表4では、試験区1、4、7のデータをカッコ付で示しているが、これは試験開始直後から、急激な発泡に見舞われ、試験系を開放して密封を保てなかったため、参考データとして示すものである。また、係る発泡現象から過酸化水素の実用面での問題が指摘された。
今回の30日間の試験では、分解速度や終点濃度から、程度の差こそあれ、全ての試験系で、それぞれの対照区と比較して有意な塩素イオンの生成たるテトラクロロエチレンの分解が観察された。また、各試験区の比較から、活性炭或いは鉄粉を単独に添加した試験系よりも活性炭と鉄粉の両者が存在する試験系で顕著なテトラクロロエチレンの分解が観察され、特に過硫酸ナトリウムを加えた系で顕著な分解が観察された。
【0165】
なお、テトラクロロエチレン濃度:40mg/L条件において、完全分解によって生じる塩素イオン濃度は、理論上34.2mg/Lと計算されるが、過硫酸ナトリウムを加えた試験区2、5、8の30日後の塩素イオン濃度は、係る完全分解に近い濃度が観察された。また、これらの過硫酸ナトリウムを加えた系では、10日目の結果を見る限り、活性炭と鉄粉の両者が存在する試験系での分解速度が、最も良いことが分かった。
【0166】
この様に、活性炭存在下でテトラクロロエチレンが完全分解に近い状態までに至ったことから、添加された過硫酸ナトリウムによって、活性炭に吸着されたテトラクロロエチレンまでもが分解されたことが示唆された。即ち、過硫酸ナトリウム添加によって活性炭の再生が可能であることが分かった。
【0167】
総じて、各種汚染物質分解で用いられる資材(過酸化物、有機酸鉄、脂肪酸)と代表的な導電性資材(活性炭、鉄粉)とを組み合わせて汚染浄化性能を評価した結果、導電性資材として活性炭と鉄粉の両者が存在する条件下にて、各種汚染物質分解で用いられる資材(過酸化物、有機酸鉄、脂肪酸)を添加することにより、汚染浄化の促進をより一層図ることができること、また、過酸化物としては、過硫酸ナトリウムが好ましく、本剤を用いることによって、汚染が吸着した活性炭の再生が可能であることが分かった。
【実施例6】
【0168】
実施例6では、導電性資材の付着性物質による機能低下の再生を、井戸様構造物を利用して図る際の通気・撹拌操作に関する評価を実施した。
【0169】
(実験1)本実験は、井戸様構造物が有する多区間のストレーナからの通気影響範囲に関する考察を得るために実施した。
地下水位がGL‐1.8mに存在し、GL‐9.5mの粘土シルト層を基底とする、細砂〜中砂を主体として構成される第一帯水層を有するサイトにて、25cmストレーナ区間4箇所(井戸底から、A区間:25−50、B区間:100−125、C区間:175−200、D区間:250−275cm区間)を有するφ50mmの井戸様構造物を設置した。
また、その井戸様構造物から直線距離で、0.5m、1.0m、1.5m、2.0mの位置に全層ストレーナを有する観測井戸を設置した。続いて、各ストレーナからの通気量を、圧縮空気を用いて10L/分の強度となるようにマスフローメータを用いて調整した。上記設定の下、最下部のストレーナから順次通気を実施して、1昼夜経過後における観測井戸での発泡状況から、各通気条件における通気影響範囲を求めた。
また上記にて一連の試験を実施した後に、A区間のみから40L/分の強度での通気を行なう実験を併せて実施した。結果を表5に示す。
【0170】
【表5】
上記試験の結果、単一区間のストレーナで一定量の通気を実施するよりも、多区間のストレーナを用いて総量として同量の通気を行う方が、通気影響範囲を広く設定できることが分かった。
【0171】
(実験2)続いて、井戸様構造物からの通気による撹拌効果を検証する目的で、過酸化物の代用として、約1%食塩溶液を400L用意し、通気開始前の4区間のストレーナからそれぞれ100Lを注入後、4区間のストレーナから10L/分の強度となるように通気を実施した。以後、経過時間毎に各観測井戸における電気伝導度を測定し、通気の撹拌効果について考察を実施した。
【0172】
結果、本試験条件において概ね3日間を経過すると、各観測井戸での電気伝導度が50〜100μS/cmの範囲に収束することが分かり、多区間ストレーナを有する井戸様構造物からの気体通気による一定エリア内の撹拌が可能であることが示された。
【0173】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、具体的な構成は前述した実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。