(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750870
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】表面改質装置
(51)【国際特許分類】
B29C 71/04 20060101AFI20200824BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20200824BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
B29C71/04
B01J19/08 C
C08J7/00 303
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-162999(P2016-162999)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-30277(P2018-30277A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】特許業務法人アイリンク国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】東 明路
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】田村 豊
(72)【発明者】
【氏名】二木 大介
(72)【発明者】
【氏名】森下 貴生
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−500384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 71/04
B01J 19/08
C08J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ローラと、この処理ローラに対向する放電電極と、この放電電極を囲う電極チャンバとを設け、上記処理ローラと上記放電電極との間で放電させて、上記処理ローラに沿って搬送されるフィルムの表面を改質する表面改質装置であって、
上記放電電極よりも上記フィルムの搬送方向の下流側に、同伴流に含まれるガスや結晶状異物を吸引する吸引手段が備えられ、
上記吸引手段は、
上記処理ローラに対向配置された吸引ボックスと、この吸引ボックスに接続された吸引機とからなり、
上記吸引ボックスは、
上記処理ローラの曲率に沿って処理ローラと対向する曲面からなる対向面を備えるとともに、上記対向面には、その全面に亘って複数の小孔が形成された表面改質装置。
【請求項2】
上記吸引手段は、処理ローラで搬送されるフィルムと対向するセット位置と、処理ローラで搬送されるフィルムから退避するオフセット位置との間で移動可能にされた請求項1に記載の表面改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コロナ放電処理によって、絶縁性のフィルムの表面を改質する表面改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして、
図3に示した表面改質装置が従来から知られている。
この装置は、処理ローラ1と、上記処理ローラ1に対向配置した電極チャンバ2と、この電極チャンバ2内に設けられた放電電極4とを備えている。
上記電極チャンバ2は、上記処理ローラ1の所定の範囲を覆う大きさを有する。すなわち、電極チャンバ2の開口部2aは、処理ローラ1の軸方向長さにほぼ等しくするとともに、上記軸方向両端の開口部2aの曲率を、処理ローラ1の曲率とほぼ等しくしている。
【0003】
さらに、電極チャンバ2には、上記軸方向に長さを持った3本の放電電極4を、処理ローラ1の曲率に沿って設けている。
なお、上記放電電極4のそれぞれは、絶縁体からなる電極ホルダ3及び支持棒5を介して電極チャンバ2の天井部2bに固定している。
【0004】
上記天井部2bには、複数の排気口2cを形成するとともに、この排気口2cを、図示していない吸引機に接続している。
したがって、処理ローラ1に沿ってフィルムFを搬送しながら、放電電極4に高周波高電圧を印加してコロナ放電させると、その放電エネルギーによって、フィルム1の表面が改質される。
また、コロナ放電させる過程で有害なオゾンが発生するが、このオゾンは、吸引機の吸引力にひかれて上記排気口2cから排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−043215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにコロナ放電の処理過程ではオゾンが生成されるが、このオゾンと反応して放電チャンバ内に結晶状異物が生成されることも知られている。
しかし、従来の表面改質装置の吸引機は、比較的軽いオゾン等のガスを吸引する目的のもとで、その吸引力が設定されている。したがって、相対的に重い結晶状異物を吸引できないという問題があった。
【0007】
この問題を解決するために、吸引機の吸引力を強くすることも考えられる。
しかし、その吸引力が強すぎると、開口部2aに対応した部分で、フィルムFがバタついてしまう。例えば、吸引力が強すぎると、フィルムFが処理ローラ1からはがされるようにして持ち上げられるが、ある程度持ち上げられると、今度は、フィルムF側の張力によって処理ローラ1側に再び引き戻される。このようにフィルムFが引き上げられたり、引き戻されたりが繰り返されるので、フィルムFが上記のようにバタついてしまう。
【0008】
そして、フィルムFが上記のように引き上げられると、フィルムFと放電電極4との間隔が一定でなくなり、放電エネルギーの安定性も損なわれてしまう。もし、放電エネルギーが安定でなければ、表面改質処理も不均一になり、フィルムFの品質を低下させてしまう。
また、フィルムFが引き上げられたときに、フィルムFが放電電極4に接触すると、フィルムFを損傷してしまう。
【0009】
このような理由から、吸引機の吸引力を大きくするにも限界があった。
そのために、従来の表面改質装置では、放電チャンバ内の結晶状異物を十分に取り切れなかった。
このように取り切れなかった結晶状異物は、高速搬送されるフィルムの表面に発生する同伴流に乗って、電極チャンバ2から流出してしまう。
また、電極チャンバ2内で除去しきれなかったオゾンも、同伴流に乗って電極チャンバ2から流出することもあった。
【0010】
このように、同伴流とともに流出した結晶状異物は、そのままフィルムFに付着したり、あるいはフィルムFの搬送過程で周囲に飛散したりする。
フィルムFに付着した結晶状異物は、フィルムFを汚して品質を低下させ、飛散した結晶状異物は、例えば外部装置に付着してそれを酸化させるという問題を発生していた。
【0011】
さらに、放電処理されたフィルムFの搬送方向の下流側には、フィルムFの搬送方向を転換させるガイドローラや、フィルムFのバタつきを押えるニップローラなどが備わっているが、上記のようにフィルムFに結晶状異物が付着していると、この結晶状異物が上記ローラの表面に付着したり、あるいはその表面に堆積したりする。
【0012】
ガイドローラやニップローラに付着もしくは堆積した結晶状異物は、それを放置しておくと、接触するフィルム表面を汚したり、あるいはその表面を傷つけたりするので、積極的に取り除かなくてはならない。
しかし、ガイドローラやニップローラに付着もしくは堆積した結晶状異物を取り除くためには、フィルムFの搬送ラインを止めなければならないので、結晶状異物を取り除く度に、作業を停止しなければならない。
【0013】
また、上記同伴流に乗って電極チャンバ2から流出したオゾンは、人体に悪影響を及ぼす危険もあった。
このように、従来の表面改質装置では、電極チャンバ2内で生成されるオゾンや結晶状異物を除去できないために、種々の問題を発生していた。
この発明の目的は、オゾン及びN
Ox等のガスの排気はもちろん、電極チャンバ内に生成する結晶状異物も除去できる表面改質装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、処理ローラと、この処理ローラに対向する放電電極と、この放電電極を囲う電極チャンバとを設け、上記処理ローラと上記放電電極との間で放電させて、上記処理ローラに沿って搬送されるフィルム表面を改質する表面改質装置を前提としている。
そして、第1の発明は、上記放電電極よりも上記フィルムの搬送方向の下流側に、上記フィルムに同伴する同伴流とともにオゾン等のガス及び結晶状異物を吸引する吸引手段を備え
、この吸引手段が吸引ボックスと吸引機とからなる。そして、上記吸引ボックスが、上記処理ローラの曲率に沿って処理ローラと対向する曲面からなる対向面を備えるとともに、上記対向面には、その全面に亘って複数の小孔が形成されたことを特徴としている。
【0015】
第2の発明は、上記吸引手段が、処理ローラで搬送されるフィルムと対向するセット位置と、処理ローラで搬送されるフィルム位置から退避するオフセット位置との間で移動可能にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、電極チャンバよりもフィルムの搬送方向下流側に、フィルムに沿って発生する同伴流に含まれるガスや結晶状異物を吸引する吸引手段を設けたので、電極チャンバの吸引力は、相対的に軽いオゾン等のガスのみを排気できる能力を備えればよい。言い換えると、電極チャンバ内の吸引力を必要以上に強くしなくてもよいので、吸引力が強すぎてフィルムをバタつかせることがない。フィルムのバタつきを押えられるので、バタつきが要因になっていた問題は発生しない。
【0017】
また、電極チャンバとは別に設けた上記吸引手段によって、上記同伴流に含まれるガスや結晶状異物を除去できるので、吸引手段の吸引力は、結晶状異物を吸引するために必要な大きさに自由に設定できる。このように吸引手段の吸引力を必要な大きさに設定できるので、上記同伴流に含まれるガスとともに結晶状異物を確実に除去できる。
したがって、電極チャンバからのオゾンの流出や、フィルムに対する結晶状異物による弊害という問題をことごとく解決できる。
【0018】
第2の発明によれば、搬送ラインにフィルムをセットするとき、当該吸引手段をオフセット位置に退避させておけば、フィルムを搬送ラインにセットするときの作業がやりやすくなる。そして、フィルムを搬送ラインにセットした後は、吸引手段をセット位置に復帰させれば、オゾン等のガスとともに結晶状異物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態における処理ローラ、電極チャンバ及び吸引手段である吸引ボックスとの位置関係を示した概略図である。
【
図2】第1実施形態における吸引ボックスを示した斜視図である。
【
図3】従来の表面改質装置の処理ローラと電極チャンバとの位置関係を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1,2を用いてこの表面改質装置の実施形態を説明する。
なお、本発明は従来の構成に、電極チャンバ2とは別な位置で結晶状異物等を除去するための吸引手段を加えたことが異なっており、従来と同様の構成要素には
図3と同じ符号を用いている。
【0021】
図1に示すように、この表面改質装置は、その前提として、処理ローラ1と、上記処理ローラ1に対向配置した電極チャンバ2と、この電極チャンバ2内に設けられた放電電極4とを備えている。
上記電極チャンバ2は、上記処理ローラ1の所定の範囲を覆う大きさを有する。すなわち、電極チャンバ2の開口部2aは、処理ローラ1の軸方向長さにほぼ等しくするとともに、上記軸方向両端の開口部2aの曲率を、処理ローラ1の曲率とほぼ等しくしている。
【0022】
さらに、電極チャンバ2には、上記軸方向に長さを持った3本の放電電極4が、処理ローラ1の曲率に沿って設けられている。そして、この放電電極4には、図示していない高電圧源が接続されている。
そして、上記放電電極4のそれぞれは、絶縁体からなる電極ホルダ3及び支持棒5を介して電極チャンバ2の天井部2bに固定している。
なお、上記放電電極4には、いろいろあるがその種類は問わない。例えば、ワイヤー、針、誘電体あるいはバー等のいずれであってもよい。
【0023】
上記天井部2bには、複数の排気口2cが形成されるとともに、この排気口2cには、図示していない吸引機が接続されている。
上記のように構成された電極チャンバ2と処理ローラ1の間には、処理ローラ1に沿ってフィルムFを搬送させている。そして、放電電極4に高周波高電圧を印加してコロナ放電させると、その放電エネルギーによって、イオンが生成されるとともに、このイオンによってフィルムFの表面が改質される。
なお、上記電極チャンバ2は、上記処理ローラ1の最上部に対向するように設けているが、上記処理ローラ1に対向する位置であれば、上記電極チャンバ2をどの位置に配置してもかまわない。
【0024】
また、コロナ放電の処理過程では、有害なオゾンが発生することが知られている。このように発生したオゾンは、吸引機の吸引力にひかれて上記排気口2cから排気される。
さらに、オゾンは、コロナ放電の処理過程で生成され続けるので、このオゾンと反応して放電チャンバ2内に結晶状異物が生成されることも知られている。
【0025】
電極チャンバ2に接続された吸引機は、比較的軽いオゾン等のガスを吸引する目的のもとで、その吸引力が設定されている。そのため、相対的に重い結晶状異物を吸引できず、フィルムFの搬送によって発生する同伴流とともに、電極チャンバ2から流出する。
なお、同伴流には、結晶状異物だけでなく、吸引しきれなかったオゾンなどのガスも含まれている。
【0026】
この実施形態では、上記放電電極4よりも上記フィルムFの搬送方向の下流側に、同伴流に含まれるガスや結晶状異物を吸引する吸引手段Vが備えられている。
この吸引手段Vは、上記処理ローラ1に対向配置した吸引ボックス6と、この吸引ボックス6に接続される図示しない吸引機からなる。
【0027】
この吸引ボックス6は、上記処理ローラ1の軸方向長さにほぼ等しくするとともに、上記処理ローラ1に対向する対向面6aを備え、この対向面6aの曲率を処理ローラ1の曲率とほぼ等しくしている。そして、この対向面6aには、複数の小孔7を形成している。また、この吸引ボックス6は、配管8及び10を介して吸引機に連続する排気口6bとを備えている。
【0028】
上記吸引ボックス6に接続した吸引機を作動させて、吸引ボックス6内を負圧にするとともに、高速で移動するフィルムFの表面に同伴する同伴流に含まれるガスや結晶状異物を、上記吸引ボックス6の内部に吸い込む。
このように、吸引手段Vを電極チャンバ2とは別にしたので、吸引手段Vの吸引力を上げて、同伴流に含まれるガスや結晶状異物を除去できる。
【0030】
さらに、この吸引ボックス6は、
図2に示す移動レール9,9上を移動可能に設けられ、吸引ボックス6を、処理ローラ1で搬送されるフィルムFと対向するセット位置と、処理フィルムFから退避するオフセット位置との間で移動可能にしている。
したがって、搬送ラインにフィルムFをセットするとき、当該吸引手段Vをオフセット位置に退避させておけば、作業がやりやすくなる。そして、フィルムFを搬送ラインにセットした後は、吸引手段Vをセット位置に復帰させれば、オゾン等のガスとともに結晶状異物を除去することができる。
【0031】
なお、図中符号11は、上記吸引ボックス6よりも、フィルムFの搬送方向下流側に設けたニップローラで、フィルムFを処理ローラ1に押し付けるものである。このニップローラ11でフィルムFを処理ローラ1に押し付けておけば、吸引手段Vの吸引力を上げても、フィルムFが処理ローラ1と上記対向面6aとの間でバタついたりしない。
また、符号12は、フィルムFの搬送過程でのたるみを押えたり、搬送方向を転換したりするガイドローラである。
【0032】
そして、この実施形態では、吸引手段Vで結晶状異物を取り除くことができるので、ニップローラ11やガイドローラ12に、上記結晶状異物が付着したりしない。
ニップローラ11やガイドローラ12に結晶状異物が付着しないので、例えば、その付着物を取り除くために、ニップローラ11やガイドローラ12を短期間で清掃しなくてもよくなる。言い換えると、それらローラ11,12を清掃するために、搬送ラインを止めなくてもよくなる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
放電処理過程において生成されるガスや結晶などの結晶状異物を除去する場合に有用である。
【符号の説明】
【0034】
F…フィルム、1…処理ローラ、2…電極チャンバ、2a…開口部、2c…排気口、4…放電電極、6…吸引ボックス、6a…対向面、6b…排気口、7…吸引口、11…ニップローラ、12…ガイドローラ