(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
魚の鮮度を長期間に亘り保持するためには、魚体の保存温度の管理と浸透圧による塩分流出入を防ぐ必要がある。
従来用いられている魚の鮮度保持の方法としては、例えば、漁船の船倉内の海水に塊状の真水氷を大量に投入し、魚を保存するという方法がある。しかしながら、この氷は融けると真水であるため、時間の経過と共に船倉内における海水中の塩分濃度の変化や低下により、魚の鮮度が著しく落ちてしまうという問題がある。また、塊氷によって魚体に傷が付くことも懸念される。
【0003】
この問題を解決する方策として、海水等のブラインから製造されたシャーベット状の氷を使用する方法がある。
海水等のブラインを製氷する技術は、スタティック氷製造方式とダイナミック氷製造方式とに大別することができる。
スタティック氷製造方式はブラインを容器に入れ、それを間接的に冷却して塊状の氷をつくる方式であるが、これはバッチ方式であり、しかも塊氷を粉砕する工程を別途必要とするため、経済的に不向きである。
ダイナミック氷製造方式はブラインを振動させながら凍結するもので、直接熱交換法と間接熱交換法が存在する。
【0004】
直接熱交換法は、ブラインと冷媒を直接混合し、氷を生成させた後、氷と冷媒とを分離させる方法である。しかし、この方法は、冷媒が水産物へ混入するため、人体への悪影響が懸念されるという問題がある。
間接熱交換法としては、掻き取り法、熱媒剥離法(ハーベスト法)、過冷却法等の方法が存在している。このうち、掻き取り法は、装置の運転操作が容易であり、経済性もある点で優れているため、掻き取り法を用いた製氷機は広く用いられている。
【0005】
しかし、従来の掻き取り法を用いた製氷機(特許文献1参照)は、氷を掻き取るための掻き取り部を構成するスクレーパの先端が、内面に氷膜が生成される内管の接線に対して大きく傾斜して設けられている。そのため、低塩分濃度の塩水(例えば塩分濃度1%)で製氷を行った場合、掻き取った氷がスクレーパの裏面に付着し、付着した氷が掻き取り動作(回転動作)に対する抵抗を増加させる。その結果、掻き取り部を回転駆動させるモータに過負荷がかかり、製氷中に停止してしまう場合があり、製氷効率の低下を招いていた。この問題を解決するためには、高出力のモータを使用することが考えられるが、高出力のモータを使用すると消費電力が増加するため好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、その解決課題は、掻き取り法を用いた製氷機において、掻き取った氷がスクレーパに付着して掻き取り動作(回転動作)に対する抵抗を増加させることを防ぎ、モータに過負荷が加わることを防止し、少ない消費電力で効率良く製氷することができるスラリーアイス製造機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、製氷対象となる海水等のブラインを内部に収容する円筒状の容器と、前記容器内部に前記ブラインを供給するための供給管と、前記容器内部で生成された氷を排出するための排出管と、前記容器の外周面に沿って設けられた冷媒通路と、前記容器の中心軸方向に延びるように配設された回転軸と、前記回転軸に取り付けられて前記容器内周面に生成された氷を掻き取る掻き取り部と、を備えており、前記掻き取り部を構成するスクレーパの掻き取り刃面が、前記容器の半径方向又は半径方向と平行に配置されている、ことを特徴とするスラリーアイス製造機に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記容器は、中心軸が上下方向を向くように配置されており、前記容器の内部空間は、前記掻き取り部が配設された下方空間と、前記下方空間と連通しており前記掻き取り部が配設されていない上方空間とを備えており、前記上方空間の周面には、前記排出管が接続されており、前記回転軸の周面には、前記上方空間にある氷を前記排出管に向けて移動させるための氷案内部材が取り付けられている、ことを特徴とする請求項1記載のシスラリーアイス製造機に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記氷案内部材が半円筒形状に形成されており、前記氷案内部材は、半円筒の内側の面が前記容器の内周面に向くように且つ長さ方向が前記回転軸に対して傾斜して取り付けられている、ことを特徴とする請求項2記載のスラリーアイス製造機に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記掻き取り部は、前記スクレーパを前記回転軸に固定するためのスクレーパ固定板を備えており、前記スクレーパ固定板は、前記容器の下方部において前記スクレーパと前記回転軸とを連結し、前記容器の上方部においてのみ前記スクレーパと前記回転軸との間に空間が形成されている、ことを特徴とする請求項2又は3記載のスラリーアイス製造機に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記回転軸に撹拌羽根が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のスラリーアイス製造機に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、掻き取り部を構成するスクレーパの掻き取り刃面が、容器の半径方向又は半径方向と平行に配置されていることから、掻き取った氷がスクレーパに付着して掻き取り動作(回転動作)に対する抵抗を増加させることが防止される。その結果、モータに過負荷が加わることが防がれ、少ない消費電力で効率良く製氷することが可能なスラリーアイス製造機が提供される。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、容器の内部空間は、掻き取り部が配設された下方空間と、下方空間と連通しており掻き取り部が配設されていない上方空間とを備えていることから、容器内部において浮き上がった氷を、掻き取り部が配設された下方空間から掻き取り部が配設されていない上方空間へと移動させることができる。そのため、下方空間における掻き取り部の回転抵抗を小さくすることが可能となる。
また、上方空間の周面には、排出管が接続されており、回転軸の周面には、上方空間にある氷を排出管に向けて移動させるための氷案内部材が取り付けられていることから、下方空間から上方空間に浮き上がってきた氷を、排出管に向けて移動させることができる。そのため、氷が上方空間において長時間留まって固まることが防がれ、生成された氷を円滑に排出することが可能となる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、氷案内部材が半円筒形状に形成されており、氷案内部材は、半円筒の内側の面が容器の内周面に向くように且つ長さ方向が回転軸に対して傾斜して取り付けられていることから、回転軸と共に氷案内部材が回転すると、上方空間に溜まっている氷が、半円筒の内側の面に捕捉されて、容器の外方向(半径方向外側)に向けて送られる。そのため、氷が上方空間において長時間留まって固まることがより確実に防がれ、生成された氷を非常に円滑に排出することが可能となる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、容器の上方部においてスクレーパと回転軸との間に空間が形成されていることから、スクレーパ固定板の回転抵抗を小さくすることが可能となる。具体的には、掻き取られた氷は、水よりも比重が小さいために容器内部において上方へと浮き上がることから、容器内部の上方には下方に比べて氷が多く存在している状態となる。そのため、容器の上方部においてスクレーパと回転軸との間に空間を形成する(即ち、スクレーパ固定板を存在させない)ことにより、スクレーパ固定板が回転時において氷に当たりにくくなり、回転抵抗を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るスラリーアイス製造機の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図4は本発明に係るスラリーアイス製造機(以下、単に製氷機と称す場合がある)を示す図であって、
図1は正面図、
図2は縦断面図、
図3は下方部分の分解斜視図、
図4は上方部分の分解斜視図である。
【0019】
本発明に係る製氷機は、製氷対象となる海水等のブラインを内部に収容する容器(1)と、容器(1)の内部に前記ブラインを供給するための供給管(2)と、容器(1)の内部で生成された氷を排出するための排出管(3)と、容器(1)の外周面に沿って設けられた冷媒通路(4)と、容器(1)の中心軸方向に延びるように配設された回転軸(5)と、回転軸(5)に取り付けられて容器(1)の内周面に生成された氷を掻き取る掻き取り部(6)とを備えている。
【0020】
容器(1)は、円筒状であって、中心軸が上下方向を向くように配置されている。
容器(1)の内部には製氷対象となる海水等のブラインが収容される。
容器(1)は、製氷部となる円筒状の容器本体(7)と、容器本体(7)の下端を塞ぐように取り付けられた下部カバー(8)と、容器本体(7)の上端を塞ぐように取り付けられた上部カバー(9)とから構成されている。
【0021】
容器本体(7)は、ステンレス鋼等の金属素材から形成されている。
容器本体(7)の外周面に沿って冷媒通路(4)が設けられている。
容器(1)の下方には冷媒入口(41)が設けられ、容器(1)の上方には冷媒出口(42)が設けられている。冷媒入口(41)から供給された冷媒は、冷媒通路(4)を通って冷媒出口(42)から取り出される。冷媒は、冷媒通路(4)を流通する際に容器本体(7)の外周面を冷却し、これにより容器本体(7)の内周面に氷膜が生成される。
【0022】
下部カバー(8)は、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成されている。
下部カバー(8)は円板状であって、中心よりやや外側位置に貫通穴が形成され、この貫通穴に供給管(2)が接続されている。
下部カバー(8)は、Oリング(19)を挟んで、容器本体(7)の下端部に形成されたフランジ部に対してボルトで固定されている。
【0023】
上部カバー(9)は、ステンレス鋼等の金属素材から形成されている。
上部カバー(9)は、上下逆向きの有底円筒状であって、その周面に形成された貫通穴部分に排出管(3)が接続されている。
上部カバー(9)の下面には、容器(1)を縦向き(中心軸が上下方向となる向き)に設置するための架台(10)が取り付けられている。
上部カバー(9)の下端部にはフランジ部が形成されており、このフランジ部が、円環状の合成樹脂製のフランジ部材(18)及びOリング(19)を挟んで、容器本体(7)の上端部に形成されたフランジ部に対してボルトで固定されている。
【0024】
回転軸(5)は、上部カバー(9)及び容器本体(7)の内部中心を上下方向に貫くように配置されており、その上端部と下端部は軸受(11)によって回転可能に支持されている。
回転軸(5)の上端部は、カップリング(15)を介して電動機(モータ)(16)の回転軸と連結されている。モータ(16)は、上部カバー(9)の上部に取り付けられたモータ取付台(17)の上部に固定されている。
【0025】
図5乃至
図7は掻き取り部(6)の構成を示す図であって、
図5は斜視図、
図6は正面図、
図7は上面図である。
掻き取り部(6)は、回転軸(5)に対して固定されている。
掻き取り部(6)は、容器本体(7)の内面に付着した氷を掻き取るためのスクレーパ(12)と、スクレーパ(12)を回転軸(5)に固定するためのスクレーパ固定板(13)とを備えている。
回転軸(5)は、
図7に示すように横断面が六角形状であって、六角形の六面のうちの対向する二面にスクレーパ固定板(13)がボルトにより固定されている。
【0026】
スクレーパ固定板(13)は、上下方向に延びる2つの帯状板部(13a)(13b)と、2つの帯状板部(13a)(13b)を下方部で連結する連結部(13c)とから構成され、全体として略U字状に形成されている。
一方の帯状板部(13a)は回転軸(5)に対して固定され、他方の帯状板部(13b)に対してスクレーパ(12)が固定されている。
これにより、スクレーパ固定板(13)は、容器(1)の下方部においてのみスクレーパ(12)と回転軸(5)とを連結し、容器(1)の上方部においてはスクレーパ(12)と回転軸(5)との間には連結部(13c)が存在しない空間(14)が形成される。
【0027】
空間(14)は、スクレーパ固定板(13)の回転抵抗を小さくすることに寄与する。スクレーパ(12)により掻き取られた氷は、水よりも比重が小さいために容器(1)の内部において上方へと浮き上がることから、容器(1)内部の上方には下方に比べて氷が多く存在している状態となる。そのため、容器(1)の上方部においてスクレーパ(12)と回転軸(5)との間に空間(14)を形成することにより、スクレーパ固定板(13)が回転時において氷に当たりにくくなり、回転抵抗を小さくすることができる。
【0028】
スクレーパ(12)は、長方形の板状体であり、その長手方向の両端が容器本体(7)の上下両端に至るように形成されている。
スクレーパ(12)は、氷掻き取り側の端部(以下、先端部と称す)は、所定角度の先端角(鋭角)を有して形成されており、その先端部が、容器本体(7)の内周面との間に僅かな隙間(例えば0.5mm)を有するように配置されている。
スクレーパ(12)の掻き取り側(回転方向前方側)の刃面(以下、掻き取り刃面と称す)(12a)は、容器本体(7)の半径方向(一点鎖線参照)と平行に配置されている(
図7参照)。また、図示しないが、掻き取り刃面(12a)を容器本体(7)の半径方向に配置する(
図7において、掻き取り刃面(12a)を一点鎖線と一致させる)構成としてもよい。
掻き取り刃面(12a)を容器本体(7)の半径方向からずらして平行に配置する場合、そのずれ量はできるだけ小さくすることが好ましく、回転軸(5)の半径分だけずれる(
図7参照)ようにすることが好ましい。
【0029】
このように、掻き取り部(6)を構成するスクレーパ(12)の掻き取り刃面(12a)が、容器本体(7)の半径方向又は半径方向と平行となるように配置することにより、掻き取った氷がスクレーパ(12)に付着して掻き取り動作(回転動作)に対する抵抗を増加させることが防止される。その結果、モータ(16)に過負荷が加わることが防がれ、少ない消費電力で効率良く製氷することが可能なスラリーアイス製造機となる。
この優れた効果は、本出願人によって実証されており、詳しくは後述する実施例に基づいて説明する。
【0030】
スクレーパ固定板(13)は2つあり、各スクレーパ固定板(13)は、横断面が六角形状の回転軸(5)の対向する二面にそれぞれ固定されている。
各スクレーパ固定板(13)には、夫々スクレーパ(12)が固定されており、一方のスクレーパ(12)の掻き取り刃面(12a)と他方のスクレーパ(12)の掻き取り刃面(12a)とは、互いに平行であり且つ容器中心軸を挟んで回転対称(点対称)の位置関係にある。
上述の実施形態ではスクレーパ固定板(13)及びスクレーパ(12)の数は2つであるが、本発明において、スクレーパ固定板(13)及びスクレーパ(12)の数は2つに限定されない。例えば1つ(
図8参照)、若しくは3つ(
図9参照)又は4つ(
図10参照)とすることができる。
尚、
図7乃至
図10に仮想線(二点鎖線)で示された円は、容器本体(7)の内周面を表している。
【0031】
容器(1)の内部空間は、掻き取り部(6)が配設された下方空間と、この下方空間と連通しており掻き取り部(6)が配設されていない上方空間とを備えている。ここで、下方空間は、容器本体(7)の内部空間に相当し、上方空間は上部カバー(9)の内部空間に相当する。
これにより、容器(1)内部において浮き上がった氷を、掻き取り部(6)が配設された下方空間から掻き取り部(6)が配設されていない上方空間へと移動させることができる。そのため、下方空間における掻き取り部(6)の回転抵抗を小さくすることが可能となる。
【0032】
上方空間を構成する上部カバー(9)の周面には排出管(3)が接続されており、上部空間に位置する回転軸(5)の上端部近傍の周面には、上方空間にある氷を排出管(3)に向けて移動させるための氷案内部材(20)が取り付けられている。氷案内部材(20)は回転軸(5)と共に回転する。
これにより、下方空間から上方空間に浮き上がってきた氷を、排出管(3)に向けて移動させることができる。そのため、氷が上方空間において長時間留まって固まることが防がれ、生成された氷を円滑に排出することが可能となる。
【0033】
氷案内部材(20)は半円筒形状に形成されており、半円筒の内側の面が容器(1)の内周面に向くように且つ長さ方向が回転軸(5)に対して傾斜して取り付けられている(
図3参照)。氷案内部材(20)は2つあり、2つの氷案内部材(20)が回転軸(5)の中心を挟んで対称に取り付けられている。
回転軸(5)と共に氷案内部材(20)が回転すると、上方空間に溜まっている氷が、半円筒の内側の面に捕捉されて、容器(1)の外方向(半径方向外側)に向けて送られる。そのため、氷が上方空間において長時間留まって固まることがより確実に防がれ、生成された氷を非常に円滑に排出することが可能となる。
【0034】
回転軸(5)には、撹拌羽根(21)が取り付けられている。
撹拌羽根(21)は、回転軸(5)の下方寄り位置に取り付けられており、容器本体(7)の内部に位置している。
撹拌羽根(21)は長方形板状であって、2枚の撹拌羽根(21)が回転軸(5)の中心を挟んで対称位置に且つ回転軸(5)に対して傾斜して取り付けられている。
回転軸(5)と共に撹拌羽根(21)が回転すると、容器本体(7)内にある氷を含んだ水が撹拌される。これにより、製氷が効率良く行われることとなり、製氷能力を向上させることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明に係るスラリーアイス製造機の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確にする。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
<実施例>
上述した本発明に係る製氷機(
図1乃至
図7参照)を2台使用して製氷を行った。
【0036】
実施例の製氷機にて2m
3の塩分濃度1%の塩水から製氷を行い、製氷運転時における電動機の電流値(A)と製氷機内の水温(℃)の時間的変化を測定した。測定結果を
図11に示す。
図11に示される通り、製氷運転時における電動機の電流値(A)は約1.1Aと低く、製氷に要する時間は約2時間と短かった。尚、製氷機を2台使用したのは単に設備上の都合による。
【0037】
本発明の製氷機の特性(仕様・運転条件)の一例(実施例で使用した製氷機)を表1に示す。
【0038】
【表1】