(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6750907
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】サイクロン型分級装置及びこれを備えた振動乾燥機
(51)【国際特許分類】
B04C 3/06 20060101AFI20200824BHJP
B07B 7/08 20060101ALI20200824BHJP
B07B 11/02 20060101ALI20200824BHJP
B07B 11/06 20060101ALI20200824BHJP
B04C 3/00 20060101ALI20200824BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20200824BHJP
B01J 8/16 20060101ALI20200824BHJP
B22C 5/06 20060101ALI20200824BHJP
F26B 17/00 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
B04C3/06
B07B7/08
B07B11/02
B07B11/06
B04C3/00 A
B01J8/24 301
B01J8/16
B22C5/06
F26B17/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-84841(P2019-84841)
(22)【出願日】2019年4月26日
【審査請求日】2020年2月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月8日にJFEミネラル株式会社栃木鉱業所に「サイクロン型分級装置」を販売した。 平成30年10月15日に成洋産業株式会社 東北営業所に「サイクロン型分級装置」を販売した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519155103
【氏名又は名称】松園 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100165135
【弁理士】
【氏名又は名称】百武 幸子
(72)【発明者】
【氏名】松園 茂樹
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2018−510781(JP,A)
【文献】
特公昭49−010018(JP,B1)
【文献】
実公昭38−009078(JP,Y1)
【文献】
実公昭42−016235(JP,Y1)
【文献】
実開昭61−087549(JP,U)
【文献】
実開昭63−144853(JP,U)
【文献】
実開昭54−026179(JP,U)
【文献】
実公昭51−029850(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 3/06
B22C 5/00−5/18
B04C 7/00−9/00
B07B 7/00
F26B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状領域を備えた旋回室と、
前記旋回室の下方に配置され、旋回流を引き起こす複数の羽根を備えた気体流入管と、
前記旋回室の中心部に配置され、微粒子を含む空気を排出するための微粒子排出口と、
前記微粒子排出口の上方で連結される集塵ダクトと、該集塵ダクトと連結して空気を吸
引する集塵機と、
前記旋回室の周壁面の一部に開口して設けられた粗粒子排出口と、
前記粗粒子排出口に連結した粗粒子排出管と、
前記粗粒子排出口又は前記粗粒子排出管に設けられ、粗粒子との衝突角度と、ブレードの出し量を調節でき、旋回する前記粗粒子に衝突させ進行方向を変えて捕集する量を調整する調整ブレードと、
を備えることを特徴とするサイクロン型分級装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサイクロン型分級装置であって、前記気体流入管には、前記複数の羽根の傾きを変更する変更手段が設けられていることを特徴とするサイクロン型分級装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサイクロン型分級装置であって、前記微粒子排出口には、吸引する空気の量を変更する変更手段が設けられていることを特徴とするサイクロン型分級装置。
【請求項4】
請求項3に記載のサイクロン型分級装置であって、吸引する空気の量を変更する変更手段は、前記微粒子排出口のパンチングメタルから成る多孔筒を2つ重ね合わせて構成し、前記多孔筒をずらすことで開口する孔の大きさを変更し、吸引する空気の量を変更する手段であることを特徴とするサイクロン型分級装置。
【請求項5】
粉粒体を振動させながら移送して乾燥させる振動乾燥機であって、流動室と、前記流動室に前記粉粒体を入れる入口と、前記流動室の振動機と、前記流動室の下部から送風する送風機及びブロアーと、前記流動室の上方に備えられるフードと、前記流動室の出口と連通した回収部と、から構成され、前記粉粒体を前記流動室で移送する際に発生する粉塵を集める前記フードの上方に請求項1〜4のいずれかに記載のサイクロン型分級装置を備え、前記粗粒子排出口を介して前記粗粒子排出管から捕集された粗粒子を、乾燥させた前記粉粒体と共に前記回収部で回収することを特徴とする振動乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗粒子と微粒子を含有する粉塵から粗粒子を分別し、回収することができるサイクロン型分級装置と、これを備えた
振動乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳物用の鋳型をつくるために、砂(以下、鋳物砂と記す)が使用されている。鋳物砂には、高い強度と、耐火性、非膨張性があることが必要とされ、粒形の改善や微粉の除去が必要とされる。そのため、鋳物砂の製造・再生工程には、乾燥、粉砕、篩分け、研磨、冷却、焙焼があり、その工程中に大量の粉塵が発生する。発生した大量の粉塵は、集塵フードに集められ、集塵ダクトで運ばれ、集塵機でフィルタ処理された後、産業廃棄物として処理される。発生した粉塵の中には、鋳物砂として使用できる粗い粒子(以下、粗粒子と記す)が含まれているが、この粗粒子も粉塵と共に集塵ダクトで運ばれ、産業廃棄物として処理される。
【0003】
粉塵中に粗粒子が含まれることで、集塵ダクトや集塵機に摩擦による損傷を与え、特に穴が空いた場合には、粉塵がまき散らされ、周辺環境に悪影響を及ぼす。また、粉塵中に粗粒子が含まれることで産業廃棄物が増え、それにより処理コストが増し、環境にも悪影響である。そのため、粉塵中の粗粒子を捕集することが望まれる。更に、捕集した粗粒子は鋳物砂として使用できるため、次の工程に戻すことが望まれる。この対策として、集塵機の前に大容量の工業用サイクロンを設置し、それにより粉塵中の粗粒子を取り除く作業が行われている。
【0004】
しかしながら、大容量の工業用サイクロンは、設置するためのスペースの問題や、導入費や維持費など設備費がかかる問題、捕集した粗粒子を次の工程に戻す搬送設備の問題があった。そのため、省スペースでコンパクト、かつ費用を低減できる小型のサイクロンを設置することが望まれる。更に、捕集した粗粒子を即次の工程に戻す設備レイアウトを可能にするサイクロンが望まれる。
【0005】
小型のサイクロン装置として、例えば特許文献1〜3が開示されている。特許文献1〜3は、いずれも粉塵中の粗粒子を捕集することを目的とした小型サイクロン装置である。小型サイクロン本体内で、粉塵が旋回流となって旋回する周壁面に沿って流入口(供給口、吸引口とも言う)が設けられ、流入口を通って粉塵を含む気体がサイクロン本体内に流入する。粉塵中の粗粒子は、周壁面に開口された開放口により捕集される。それにより、粉塵中の粗粒子を効率よく捕集することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−236410号公報
【特許文献2】特開2006−116471号公報
【特許文献3】特開2009−90219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3のサイクロン装置は、いずれも粉塵が旋回する周壁面に沿って、流入口が設けられている。周壁面に沿って旋回流を発生させるため、流入口を大きく広げることができず(例えば特許文献1の
図1参照)、大量に発生する粉塵を処理するには、非効率である。そのため、流入口が大きく、大量に発生する粉塵を一度に処理でき、かつ粗粒子を効率よく捕集することができる小型のサイクロン装置(サイクロン型分級装置)が望まれる。また、粗粒子の旋回数を最小限に調整でき、粗粒子の摩擦により装置に損傷を与えることを防止する手段が必要とされている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、大量に発生する粉塵を一度に処理でき、かつ粗粒子を効率よく捕集でき、粗粒子の旋回数を最小限に調整することができるサイクロン型分級装置と、これを備えた
振動乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、円筒状領域を備えた旋回室と、前記旋回室の下方に配置され、旋回流を引き起こす複数の羽根を備えた気体流入管と、前記旋回室の中心部に配置され、微粒子を含む空気を排出するための微粒子排出口と、前記微粒子排出口の上方で連結される集塵ダクトと、該集塵ダクトと連結して空気を吸引する集塵機と、前記旋回室の周壁面の一部に開口して設けられた粗粒子排出口と、前記粗粒子排出口に連結した粗粒子排出管と、前記粗粒子排出口又は前記粗粒子排出管に設けられ、
粗粒子との衝突角度と、ブレードの出し量を調節でき、旋回する前記粗粒子に衝突させ進行方向を変えて捕集する量を調整する調整ブレードを備えることを特徴とするサイクロン型分級装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のサイクロン型分級装置であって、前記気体流入管には、前記複数の羽根の傾きを変更する変更手段が設けられていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のサイクロン型分級装置であって、前記微粒子排出口には、吸引する空気の量を変更する変更手段が設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のサイクロン型分級装置であって、吸引する空気の量を変更する変更手段は、前記微粒子排出口のパンチングメタルから成る多孔筒を2つ重ね合わせて構成し、前記多孔筒をずらすことで開口する孔の大きさを変更し、吸引する空気の量を変更する手段であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、粉粒体を振動させながら移送して乾燥させる振動乾燥機であって、流動室と、前記流動室に前記粉粒体を入れる入口と、前記流動室の振動機と、前記流動室の下部から送風する送風機及びブロアーと、前記流動室の上方に備えられるフードと、前記流動室の出口と連通した回収部と、から構成され、前記粉粒体を前記流動室で移送する際に発生する粉塵を集める前記フードの上方に請求項1〜4のいずれかに記載のサイクロン型分級装置を備え、前記粗粒子排出口を介して前記粗粒子排出管から捕集された粗粒子を、乾燥させた前記粉粒体と共に前記回収部で回収することを特徴とする振動乾燥機である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のサイクロン型分級装置によると、大量に発生する粉塵を一度に処理でき、かつ粗粒子を効率よく捕集することができる。また、本発明のサイクロン型分級装置は粗粒子の旋回数を最小限に調整でき、粗粒子の摩擦により装置に損傷を与えることを防止できる。さらに、本発明のサイクロン型分級装置は小型で場所をとらず、かつ費用を低減することができ、捕集した粗粒子を容易に再利用することができる。また、サイクロン型分級装置を備えた
振動乾燥機は、発生した粉塵から粗粒子を捕集できるため、効率よく鋳物砂などを製造することができる。更に、集塵ダクトなどの装置の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサイクロン型分級装置の正面図である。
【
図2】
図1に示すサイクロン型分級装置内のA−A矢視図である。
【
図3】
図1に示すサイクロン型分級装置の羽根の説明図であり、(A)は羽根の一部の平面説明図、(B)は1枚の羽根の正面説明図である。
【
図4】
図1に示すサイクロン型分級装置の粗粒子排出口の説明図である。
【
図5】
図1に示すサイクロン型分級装置の平面図である。
【
図6】
図1に示すサイクロン型分級装置の微粒子排出口の説明図であり、(A)は多孔筒を2つ重ね合わせた状態の一部分の平面説明図、(B)は2つ重ね合わせた状態のパンチングメタルの開口する孔の様子を示す説明図である。
【
図7】
図1に示すサイクロン型分級装置の空気の流れを示す説明図である。
【
図8】
図1に示すサイクロン型分級装置を備えた
振動乾燥機の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施例と記す)を、図面に基づいて説明する。以下の図において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して重複した説明を省略する。なお、以下の実施例において、サイクロン型分級装置に使用する物として、砂(粗粒子)を含む粉塵を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、他の粉粒体や液体にも使用できるものである。
【0013】
[サイクロン型分級装置1の構成]
本発明のサイクロン型分級装置の構成について、
図1〜6を参照して説明する。
図1は、本実施例に係るサイクロン型分級装置の正面図である。
図2は
図1のサイクロン型分級装置内のA−A矢視図、
図3はサイクロン型分級装置の羽根の説明図であり、(A)は羽根の一部の平面説明図、(B)は1枚の羽根の正面説明図である。
図4はサイクロン型分級装置の粗粒子排出口の説明図、
図5はサイクロン型分級装置の平面図、
図6は、微粒子排出口の(A)は多孔筒を2つ重ね合わせた状態の一部分の平面説明図であり、(B)は2つ重ね合わせた状態のパンチングメタルの開口する孔の様子を示す説明図である。
【0014】
サイクロン型分級装置1は、円筒状領域を備えた旋回室10と、旋回室10の下方に配置され、旋回流を引き起こす複数の羽根12を備えた気体流入管11と、旋回室10の中心部に配置され、微粒子を含む空気を排出するための微粒子排出口15と、微粒子排出口15の上方で連結される集塵ダクト16と、該集塵ダクト16と連結して空気を吸引する集塵機(図示せず)と、旋回室10の周壁面の一部に開口して設けられた粗粒子排出口13と、粗粒子排出口13に連結した粗粒子排出管14と、粗粒子排出口13又は前記粗粒子排出管14に設けられた旋回する粗粒子に衝突させ進行方向を変えて捕集する量を調整する調整ブレード19から構成される。
【0015】
[気体流入管11と羽根12]
図1に示すように、サイクロン型分級装置1の気体流入管11は、旋回室10の下部に設置されており、旋回室10の底面全体が気体流入管11と連結している。そのため、流入口は、従来技術(例えば特許文献1〜3)よりも広くなっており、大量に発生する粉塵
を一度に流入させることができる。気体流入管11は、中心が円筒になっており、その周囲に羽根12が配置されており、羽根12と羽根12の間を通って気体が流入する。
【0016】
図2は、
図1のサイクロン型分級装置1内のA−A矢視図である。図の複雑化を避けるため、
図2では微粒子排出口15を省略している。
図2に示すように、気体流入管11の羽根12は、中心の円筒の周囲に配置されている。本実施例では8枚配置されているが、羽根12の枚数はこれに限定されず、いくつ配置してもよい。
図3(A)は、羽根12の一部を上面から見た説明図(平面説明図)である。
図3(A)に示すように、各羽根12は均等な間隔で配置されている。本実施例では、平面図において中心角30度の羽根12が、15度置きに配置されている。
【0017】
図3(B)は、
図3(A)の1枚の羽根12を正面から見た説明図(正面説明図)である。
図3(B)に示すように、羽根12は水平ではなく、水平から所定の角度で傾斜するように円筒に配置されている。本実施例では、水平からの角度(以下、傾斜角度と記す)が30度になるように、それぞれ配置されている。羽根12の形状や配置間隔、傾斜角度は上記のものに限定されず、適宜変更可能である。また、気体流入管11には、羽根12の傾斜角度を流入する粉塵の量や種類に応じて変更できる変更手段を設けてもよい。例えば、
図3(B)に示すように、羽根12の回転軸121を取り付けて、回転軸121を回す(又は羽根12を回す)ことで、傾斜角度を変更することができる。回転軸121は、羽根12を安定して保持でき、かつ調整し易いものが好ましい。変更手段は、これに限定されず、他の手動の手段でもよいし、自動で傾斜角度を制御する制御装置とすることもできる。
【0018】
[旋回室10と粗粒子排出口13]
図1に示すように、本実施例のサイクロン型分級装置1の旋回室10は、下方から上方に向けて内径が広がった形状であり(下向きの円錐台形状)、上部に円筒状領域を備えている。下方から気体流入管11の羽根12間を通って流入した空気は、羽根12の傾斜により旋回流となって旋回するが、旋回室10が下向きの円錐台形状であることで、より旋回しやすくなっている。また、後述する微粒子排出口15により、旋回室10の内部の空気を吸収するにあたり、旋回室10が下向きの円錐台形状であることで、旋回室10を旋回する捕集寸前の粗粒子との適度な距離を保つことができ、分級効率性と分級調節性を向上させている。旋回室10の形状は
図1に示したものに限定されず、空気が旋回し、分級効率性と分級調節性が高い形状であれば、いかなる形状でもよい。
【0019】
また、旋回室10の周壁面の一部に、粗粒子排出口13が設けられている。粗粒子排出口13には、後述する調整ブレード19が取り付けられており、その調整ブレード19に粗粒子が衝突して粗粒子排出口13に入り、連結している
粗粒子排出管14で捕集される。粗粒子排出管14や粗粒子捕集室の寸法は、サイクロン型分級装置1を設置する装置の寸法に合うように設計される。なお、粗粒子排出管14又は粗粒子捕集室には、粗粒子を含む空気が逆戻りすることを防ぐようにスリット板(調整板)などを設けることが好ましい。
【0020】
粗粒子排出口13の寸法は、
図1に示すように、縦方向(垂直方向)の寸法が旋回室10の底面から円筒状領域の下部程度まで、周方向の寸法が旋回室10の周囲の長さの6分の1から8分の1程度である。塵埃を含む空気は旋回室10の内部で旋回運動するが、重い粗粒子は遠心力を多く受けるため、旋回室10の周壁面に押し付けられるよう旋回し、粗粒子排出口13から粗粒子排出管14を介して排出される。
【0021】
なお、粗粒子排出口13の寸法は旋回室10の大きさにより、適宜変更可能である。粗粒子排出口13の位置(位相)は、旋回室10の周壁面360度どの位置に設けてもよいが、次の装置へ搬送しやすい方向に設けることが効率的である。また、粗粒子排出口13は本実施例では1つ設けているが、大型の旋回室10や粗粒子が多い場合などには、複数の粗粒子排出口13を設ける構成としてもよい。
【0022】
また、粗粒子排出口13付近又は粗粒子排出管14に、捕集する粗粒子を含む空気の量を調整するための調整ブレード19が設けられている。それにより、粗粒子をより多く捕集するために調整することができ、効率よく捕集できる。本実施例では、
図4に示すように、粗粒子排出口13付近に、旋回する粗粒子に衝突させ進行方向を変えて捕集する量を調整する調整ブレード19を備える。調整ブレード19は、耐摩耗板をボルトで取り付けて製造されるため、耐久性が高く、調整しやすい構成となっている。調整ブレード19は粗粒子との衝突角度と、ブレードの出し量を調節できる。つまり、
図4に示すように、調整ブレード19は、角度が0〜90度の範囲で変更でき、また、旋回室10の中心方向へ前後に動かすことができる。それにより、旋回室10の内部外周面から少々内側を旋回する粗粒子の捕集とその分級を効果的に行うことができる。
【0023】
図5に示すように旋回室10の上面は、集塵ダクト16を囲んで旋回室10を密閉する上蓋17で覆われている。上蓋17の一部又は全部が、内部を視認できる部材(透明又は半透明の部材)で構成されていることが好ましい。本実施例では、粗粒子排出口13上の上蓋17の一部を透明板(例えば塩化ビニル板)18で構成している。それにより、旋回室10内の空気の旋回状態や粗粒子の排出状態を確認できる。
【0024】
[微粒子排出口15と集塵ダクト16]
図1に示すように、微粒子を含む空気を排出するための微粒子排出口15が、旋回室10の中心部、上部に配置されている。また、微粒子排出口15の上方で集塵ダクト16が連結され、集塵ダクト16は集塵機に連結されている。
【0025】
旋回室10中の微粒子を含む空気流は、微粒子排出口15と集塵ダクト16を介して集塵機により吸引される。また、粗粒子排出口13で捕集されなかった粗粒子を含む空気流も同様に集塵機に吸引される。微粒子排出口15から粗粒子が排出されないように、微粒子排出口15にフィルタを備えてもよい。集塵機は、強力な吸込み能力と高性能フィルタを備えるものが好ましい。微粒子排出口15は、微粒子が排出できればいかなる構成でもよいが、例えば、本実施例ではパンチングメタルから成る多孔筒により構成される。旋回室10の空気流が、微粒子排出口15の多孔板の各小孔を通り集塵ダクト16を介して集塵機に吸い込まれる。
【0026】
なお、微粒子排出口15には、吸引する空気の量を変更する変更手段(手動又は自動)が設けてもよい。例えば、
図6(A)に示すように、微粒子排出口15のパンチングメタルから成る多孔筒150、151を2つ重ね合わせて構成し、その多孔筒をずらすことで開口する孔の大きさを変更し、吸引する空気の量を変更させることができる。
図6(A)は、多孔筒150、151を2つ重ね合わせた状態の一部分の平面説明図であるが、本実施例では内側の多孔筒150を固定し、外側の多孔筒151を回転してずらして、孔の大きさを変更する構成としている。その際、多孔筒151の上面の突起152(
図1参照)を使用して、簡単に回転してずらすことができる。内側の多孔筒150と、外側の多孔筒151のずらし方は、これに限定されず、内側の多孔筒150をずらしてもよいし、両方ずらしてもよい。空気が通る孔の大きさは、
図6(B)に示すように、多孔筒150、151のパンチングメタルの孔の重なり具合により変更する。パンチングメタルの孔の重なった部分が開口している部分を示すが、100%開口している状態から10〜90%の開口に変更できる。微粒子排出口15の吸引する空気の量を変更する変更手段は、これに限定されず、いかなる手段を用いてもよい。吸引する空気量の変更手段により、粗粒子の捕集効率を、集塵ダクト16のコンディションに合わせて調節できる。また、粗粒子を少しだけ捕集して、微粒子を多く排出させたい場合など、状況に応じて吸引する空気量を簡単に調整することができる。
【0027】
[動作]
以上のように構成されたサイクロン型分級装置1の動作について、
図7を参照して説明する。
図7は、本実施例のサイクロン型分級装置1の空気の流れを示す説明図である。
図7において、空気(粉塵)の流れを矢印(実線)で示す。なお、前述のように、空気は気体流入管11の中心部の周囲に備えた羽根12と羽根12の間を通って流入する(
図8においても同様である)。まず、集塵器が作動すると、集塵ダクト16と微粒子排出口15を介して旋回室10中の空気が強力に吸引される。
【0028】
サイクロン型分級装置1を設置した装置で発生した粉塵は、気体流入管11を通過して旋回室10中に吸い込まれる。気体流入管11には、上記の通り周囲に複数の羽根12が配置されているため、羽根12を通過した空気が旋回流を引き起こし、
図7に示すように旋回室10内の空気全体が旋回する。気体流入管11は旋回室10の周壁に沿って設けられておらず、底面に設けられているため、大量に発生する粉塵を一度に吸い込むことができる。
【0029】
微粒子を含む比較的軽い空気は、旋回による遠心力が少なく、微粒子排出口15から吸引されて排出される。しかし、重い粗粒子は遠心力を多く受けるため、旋回室10の周壁面に押し付けられるよう旋回し、粗粒子排出口13から排出される。粗粒子の重量が大きいほど、遠心力を多く受けるため、1度の旋回で粗粒子排出口13から排出される可能性が高くなる。粗粒子排出口13から排出された粗粒子は、粗粒子排出管14を介して下方で回収される。回収された粗粒子は製品として再利用又は原料になる。
【0030】
このように、本発明のサイクロン型分級装置1は、大量に発生した粉塵を一度に吸い込み、粗粒子を効率よく捕集することができる。また、本発明のサイクロン型分級装置1は、調整ブレード19と、羽根の傾きを変更する変更手段と、吸引する空気の量を変更する変更手段を備えることができ、それぞれを個別に調整できるため、粗粒子の旋回数を最小限に調整でき、粗粒子の摩擦により装置に損傷を与えることを防
止できる。また、本発明のサイクロン型分級装置1は小型で場所をとらないため、既存の粉塵発生装置の集塵ダクトと集塵フードの間にサイクロン型分級装置1を設置でき、容易に粗粒子回収装置を小規模な付加工事で実現できる。
【0031】
[サイクロン型分級装置1を備えた
振動乾燥機2]
次にサイクロン型分級装置1を備えた
振動乾燥機2について
図8を参照して説明する。
図8は、サイクロン型分級装置1を備えた
振動乾燥機2の説明図である。
図8においても
図7と同様に、空気(粉塵)の流れを矢印(実線)で示す。なお、以下
の説明では、振動乾燥・冷却するものとして鋳物砂を例に挙げて説明するが、本発明の
振動乾燥機2に使用するものはこれに限定されない。
【0032】
鋳物砂の製造・再生工程には、乾燥又は冷却装置として
振動乾燥機2が使用される。
振動乾燥機2は主に、入口21と、流動室20と、振動機(図示せず)と、下部から風を送風する送風機(図示せず)と、フード22と、ブロアー23と、流動室20の出口と連通した回収部24から構成される。本発明のサイクロン型分級装置1は、
振動乾燥機2のフード22上に設置される。
【0033】
流動室20の下部はパンチングメタル等
の多孔板からなり、送風機からの送風(下からの矢印で示す)が多孔板の各小孔を通り流動室20に吹き込まれるようになっている。入口から入れられた大量の砂は、振動機からの振動と、
振動乾燥機2の下部に設置された送風機からの送風により、粒子状の砂が液体の特性を持って流動化され、流動室20の出口方向に乾燥または冷却されながら移送される。移送された砂は、出口を通って回収部24で回収される。
【0034】
砂が流動室20を移送する際に大量の粉塵が発生する。発生した大量の粉塵は、フード22に集められる。流動室20の入口付近の下部のブロアー23により、空気が下から上方向に勢いよく吹き込まれ、粉塵がフード22の方向(上方向)に移動し、一部漏れた粉塵は横方向に移動する。従来の鋳物砂の製造装置の場合、発生した大量の粉塵はフード22に集められ、集塵ダクトで運ばれ集塵機で処理さていたが、本発明ではフード22で集められた粉塵はサイクロン型分級装置1で処理されるため、粉塵の中の鋳物砂として使用できる粗粒子を捕集することができる。
【0035】
フード22で集められた粉塵は、サイクロン型分級装置1の気体流入管11を通過して旋回室10中に吸い込まれる。前述のように、羽根12を通過した空気が旋回流を引き起こし、重い粗粒子は旋回室10の周壁面に押し付けられるよう旋回し、粗粒子排出口13から排出される。粗粒子排出口13から排出された粗粒子は、粗粒子排出管14を介して下方の回収部24に送られる。粗粒子は重力によって、粗粒子排出管14の下方に送られるが、排出開口からの大気吸引を低減しつつ、粗粒子を固化させずに排出できる弁141を備えることが好ましい。弁141は、例えばヒンジと調整ネジで構成される。回収部24は、次の工程に連通しており、回収された粗粒子は次の工程に送られる。
【0036】
このようにして、サイクロン型分級装置1を備えた
振動乾燥機2により、発生した粉塵から粗粒子を効率よく捕集でき、鋳物砂として再利用することができる。更に、集塵ダクトや集塵機に粗粒子による摩擦で損傷を与えることを防
止できる。また、粗粒子を捕集することで産業廃棄物の量が減り、環境負荷を低減することができる。
【0037】
以上説明してきた様に、本発明のサイクロン型分級装置は、従来技術と比較して、大量に発生した粉塵を一度に吸い込むことができ、粗粒子を効率よく捕集することができる。特に本発明のサイクロン型分級装置は、旋回する粗粒子に衝突させ進行方向を変えて捕集する量を調整する調整ブレードと、羽根の傾きを変更する変更手段と、吸引する空気の量を変更する変更手段を備え、それぞれを個別に調整できることで、粗粒子の旋回数を最小限に調整でき(粗粒子が装置にできるだけ非接触で旋回するように調整でき)、粗粒子の摩擦により装置に損傷を与えることを防
止できる。これにより、鋳物砂用サイクロンで大きな課題である、本体の摩耗を根源からなくし、耐摩耗材を使用しないで製造することができる。また、本発明のサイクロン型分級装置は小型で場所をとらないため設置しやすく、従来のサイクロン装置と比較して費用を低減することができる。さらに、サイクロン型分級装置を備えた
振動乾燥機により、発生した粉塵から粗粒子を効率よく捕集でき、例えば鋳物砂として再利用することができる。
【0038】
また、本発明のサイクロン型分級装置は、上記の
振動乾燥機のみならず、焙焼炉、研磨機、混錬機、クラッシャー等、様々な粉塵発生機にも使用できるものである。応用として、本発明のサイクロン型分級装置を木工場のおかくず回収に使用されている従来型サイクロンの代替機として使用できる
。
【0039】
なお、上述した実施例のサイクロン型分級装置と、これを備えた
振動乾燥機は一例であり、その構成は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 サイクロン型分級装置
2 サイクロン型分級装置を備えた
振動乾燥機
10 旋回室
11 気体流入管
12 羽根
13 粗粒子排出口
14 粗粒子排出管
15 微粒子排出口
16 集塵ダクト
17 上蓋
18 透明板
19 調整ブレード
20 流動室
21 入口
22 フード
23 ブロアー
24 回収部
121 回転軸
141 弁
150,151 多孔筒
152 多孔筒の突起
【要約】
【課題】大量に発生する粉塵を一度に処理でき、かつ粗粒子を効率よく捕集でき、粗粒子の旋回数を最小限に調整することができるサイクロン型分級装置と、これを備えた
振動乾燥機を提供する。
【解決手段】サイクロン型分級装置1は、円筒状領域を備えた旋回室10と、旋回室10の下方に配置され、旋回流を引き起こす複数の羽根12を備えた気体流入管11と、旋回室10の中心部に配置され、微粒子を含む空気を排出するための微粒子排出口15と、微粒子排出口15の上方で連結される集塵ダクト16と、該集塵ダクトと連結して空気を吸引する集塵機と、旋回室10の周壁面の一部に開口して設けられた粗粒子排出口13と、粗粒子排出口13に連結した粗粒子排出管14と、粗粒子排出口13又は粗粒子排出管14に設けられ、旋回する粗粒子に衝突させ進行方向を変えて捕集する量を調整する調整ブレード19を備える。
【選択図】
図1