(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記促進酸化槽における酸化分解が,オゾンの供給,過酸化水素の供給,高分子有機酸の供給,UV照射,超音波噴射のいずれか又は複数を組み合わせることによって行われる請求項1又は2に記載の汚排水浄化システム。
前記第一膜分離槽ないし第二膜分離槽において用いられる膜が,MF膜(精密ろ過膜),UF膜(限外ろ過膜),NF膜(ナノろ過膜)ないしRO膜(逆浸透膜)のいずれか又は複数から選択される請求項9又は10に記載の汚排水浄化システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し,下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず,本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
<<I.汚排水浄化システムの概要>>
本発明の汚排水浄化システムは,浄化処理などを行う各槽を近接配置して,配管の長さをできるだけ短縮するとともに,促進酸化槽を設けて分解能を更に向上させたことを特徴とする。
【0015】
すなわち,本発明の汚排水浄化システムは,各槽を近接して配置することにより,各槽間の位置のズレをほとんど無くすことができるとともに,配管の長さをできるだけ短縮することが可能となるものである。
そして,これらの構成により,本発明の汚排水浄化システムは,配管のズレや歪みが極めて生じにくい構造となっているものである。
なお,本発明において,「近接して配置」とは,各槽間が接している,もしくは,移動や日常使用時における各槽間の位置のズレが故障に繋がらないほど近接していることとして定義される。
【0016】
また,促進酸化槽は,酸化によって有機物を分解するとともに,槽内に流入・発生した固形物を浮遊させ,スカムポンプによって嫌気槽に返送する構成となっており,酸化による分解と固形物の浮遊分離を可能とするものである。
【0017】
本発明の汚排水浄化システムは,必須の構成要素として,嫌気槽,無酸素槽,好気槽,促進酸化槽を備える。これらの必須の構成要素は,汚排水浄化システムにおいて,汚排水の分解処理とシステムからの固形物の除去を主として担う役割を果たすものである。
本発明の汚排水浄化システムにおいては,他の構成要素を備えることもできる。このような任意の構成要素としては,促進酸化槽に続いて配置される,第一膜分離槽,オゾン接触槽,生物活性炭槽,第二膜分離槽を挙げることができる。これらの構成要素を備えることにより,促進酸化槽までで浄化処理された汚排水についてさらに浄化処理を行い,法的規制をクリアできる程度,もしくは,飲料水や洗浄水として利用できる程度にまで浄化処理することが可能となるので,本発明の汚排水浄化システムの有用性を向上させることができるという効果が得られる。
【0018】
本発明において必須および任意の構成要素とされる各槽は,一つもしくは複数の他の槽と近接して配置される。また,各槽は,その上部もしくは底部で直接繋がっているか,もしくは,適宜,移送管ないし返送管が配置され,これにより,各槽間における処理水の移動が可能となっている。さらには,各槽における水位が同一に保持される構成となっている。そして,これらの構成によれば,重力に従った処理水の移動が可能となり,移動のための最小限のエネルギーで自己完結式の汚排水浄化システムとして機能させることが可能になるという効果が得られる。
なお,本発明において,「水位が同一に保持」とは,重力によって処理水の移動が生じうる程度の同一であればよく,この意味において,厳密に同一であることを必ずしも必要とするものではない。
【0019】
本発明の汚染水浄化システムにおいては,これを種々の用途で使用することが可能である。
すなわち,
図6などに例示されるように畜舎や簡易トイレなどにおける糞尿処理,簡易ハウスにおける糞尿ならびに生活排水処理など,有機物の分解に関わる種々の用途として用いることができる。
【0020】
以下,本発明の汚排水浄化システムにおける各槽の構成等について説明する。
[嫌気槽]
嫌気槽は,汚排水発生源から供給される汚排水を嫌気性菌により浄化処理する機能を果たす。また,嫌気槽は,固液分離機に連結されており,これに原水あるいは処理水を供給することにより,システムからの固形物の除去を補助する機能を果たす。嫌気槽は,これらの機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
嫌気槽は,典型的には,
図2,
図3に示すように,円筒状の形状であって,内部に嫌気性菌を備えるとともに,水中ポンプとこれに接続された移送管により,固液分離機に連結された構成とすればよい。
【0021】
[無酸素槽]
無酸素槽は,嫌気槽から供給される汚排水中の窒素成分を脱窒菌により浄化処理する機能を果たす。無酸素槽は,かかる機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
無酸素槽は,典型的には,
図2,
図3に示すように,円筒状の形状であって,内部に脱窒菌を備えた構成とすればよい。
【0022】
[好気槽]
好気槽は,無酸素槽から供給される汚排水を好気性菌により有機物の浄化処理する機能を果たす。好気槽は,かかる機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。このような好気性菌として,例えば,枯草菌,ポリリン酸蓄積細菌(PAO)や後述する硝化菌などを用いることができる。
好気槽は,典型的には,
図2,
図3に示すように,円筒状の形状であって,内部に好気性菌を備えた構成とすればよい。
【0023】
[促進酸化槽]
促進酸化槽は,好気槽から供給される汚排水を酸化分解により浄化処理する機能と,槽内に流入・発生した固形物をスカムポンプによって嫌気槽に返送する機能と,を果たす。促進酸化槽は,かかる機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
また,促進酸化槽においては,・OH Radical(単に「ヒドロキシルラジカル」と略する)をはじめとする種々の反応がなされることから,ラジカル反応に対して耐性の高い素材を用いることが好ましく,例えば,ステンレス素材のものなどを用いることが好ましい。
【0024】
促進酸化槽における酸化分解については,酸化分解が可能な限り,特に限定されるものではなく,種々の手法を採用することができる。
促進酸化の手法については,オゾン(O
3)の供給,過酸化水素(H
2O
2)の供給,高分子有機酸(高電子密度有機酸)の供給,UVの照射,超音波装置,これらを単独もしくは複数組み合わせて用いることができる。これにより,促進酸化を効果的に行うことができるという効果が得られる。
高分子有機酸については,槽内におけるPHを調整するとともに,オゾンとの反応によってラジカルを発生させる高電子密度を持つ有機酸である限り,特に限定されるものではなく,種々の高分子有機酸を用いることができる。このような高分子有機酸としては,典型的には,フルボ酸(fulvic acid),フミン酸(humic acid)を用いることができ,これらのいずれか又は複数を少なくとも含んでいることが好ましい。
高分子有機酸は,下記式に例示されるように,オゾンとの電子移動反応を通じて,ヒドロキシルラジカルなどのラジカル体を発生し,促進酸化槽における酸化反応を促すことが可能となる。
(式1)O
3+高電子密度有機酸 → O
3・有機酸(オゾン付加体有機酸)
(式2)O
3・有機酸(オゾン付加体有機酸) → O
3-+有機酸
+
(式3)O
3-+H
+ →HO
3 →OH+O
2
【0025】
促進酸化槽における酸化分解は,さらに電気分解を組み合わせることによって行うことが好ましい。かかる好ましい構成によれば,促進酸化槽における酸化分解をさらに効率良く行うことができるという効果が得られる。
この場合,促進酸化槽は,その中心部に,電気分解を行う電気分解槽を備えることが好ましい。かかる好ましい構成によれば,中心部における促進酸化による分解の機能と,外部における浮遊分離の機能と,を分けることが可能となるので,汚排水の酸化分解と固形物の除去を効率良く行うことができるという効果が得られる。
【0026】
本発明においては,マイクロバブル発生器をさらに備え,促進酸化槽の底部においてマイクロバブルを発生させることが好ましい。かかる好ましい構成によれば,促進酸化槽内に流入・発生した固形物を浮遊させ,スカムポンプによって嫌気槽に返送しやすい構成とすることが可能となるので,システムからの固形物の除去を促進させることができるという効果が得られる。
マイクロバブル発生器については,促進酸化槽の底部におけるマイクロバブルの発生が可能な限り,特に限定されるものではなく,種々の性能のものを採用することができ,また,種々の位置に設置することができる。マイクロバブル発生器は,典型的には,
図2,
図4に示すように,促進酸化槽の上部に設置することができる。
【0027】
本発明においては,促進酸化槽と電気分解槽が,同心の円筒状に形成されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば,促進酸化槽の底部で発生したマイクロバブルによる上部への水流を,抵抗の少ない状態で上部まで到達させることが可能となるので,固形物の浮遊分離を促進させることができるという効果が得られる。
【0028】
これら一連の促進酸化により,意図的にヒドロキシルラジカルを発生させ,酸化力を向上・促進させることが可能となる。
すなわち,オゾンや過酸化水素,さらには
図5に示すような紫外線(UV)などを組み合わせて用いることにより,強力な酸化剤であるヒドロキシルラジカルを発生させ,水中の難分解性汚染物質を分解・除去することが可能となる。特に,ダイオキシン類や環境ホルモン,農薬などの微料汚染物質の分解・除去に優れた効果を発揮することが期待できる。
さらに,オゾンや過酸化水素,UVなどによる分解が行われた後の主たる生成物は,酸素や水であるため,二次廃棄物がほとんど発生しないという効果が得られる。
また,促進酸化槽で発生したヒドロキシルラジカルを用いることにより,汚排水における脱色や脱臭,COD低減,殺菌などの効果も同時にもたらすことが可能となる。
【0029】
[第一膜分離槽]
第一膜分離槽は,促進酸化槽から供給される汚排水を膜分離により浄化処理する機能を果たす。第一膜分離槽は,かかる機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
また,第一膜分離槽は,後述する第二膜分離槽と比較すると,いわゆる粗分離としての性質を有するものであり,第一膜分離槽ないし第二膜分離槽において用いられる膜としては,MF膜(精密ろ過膜),UF膜(限外ろ過膜),NF膜(ナノろ過膜)ないしRO膜(逆浸透膜)を適宜組み合わせて用いればよい。第一膜分離槽においては,典型的には,UF膜を用いればよい。
【0030】
[オゾン接触槽]
オゾン接触槽は,第一膜分離槽から供給される汚排水をオゾンにより浄化処理する機能を果たす。オゾン接触槽は,かかる機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
【0031】
[生物活性炭槽]
生物活性炭槽は,オゾン接触槽から供給される汚排水を生物活性炭により浄化処理する機能を果たす。生物活性炭槽は,かかる機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
【0032】
[第二膜分離槽]
第二膜分離槽は,生物活性炭槽から供給される汚排水を膜分離により浄化処理する機能を果たす。第二膜分離槽は,かかる機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
第二膜分離槽は,処理水を最終的にシステム外へ放出する出口として機能するものであり,放出された処理水の使用用途に応じて,適宜,用いる膜を選択することができる。
【0033】
<<II.実施の形態>>
[実施の形態1]
以下,本発明の実施の形態1における汚排水浄化システムの構成について,
図1から
図5を参照しながら説明する。
【0034】
図1は本発明の実施の形態1における汚排水浄化システムの構成と流れを示す概念図,
図2は当該汚排水浄化システムの全体構成を示す立面図,
図3は当該汚排水浄化システムの全体構成を示す平面図,
図4は当該汚排水浄化システムを構成する促進酸化槽を示す図((a)は立面図,(b)は平面図),
図5は当該汚排水浄化システムを構成する促進酸化循環装置(マイクロバブル発生器)を示す立面図である。
【0035】
図1から
図3に示すように,本実施の形態の汚排水浄化システム1は,上流側(汚排水発生源側)から順に配置された,汚排水発生源から供給される汚排水(原水)を浄化処理する原水集水槽2(
図2,
図3では不図示)と,原水集水槽2で浄化処理された汚排水を嫌気性菌により浄化処理する嫌気槽3と,嫌気槽3で浄化処理された汚排水を脱窒菌により浄化処理する無酸素槽4と,無酸素槽4で浄化処理された汚排水を好気性菌により浄化処理する好気槽5と,好気槽5で浄化処理された汚排水を酸化分解により浄化処理する促進酸化槽6と,促進酸化槽6で浄化処理された汚排水を膜分離により浄化処理する第一膜分離槽7と,第一膜分離槽7で浄化処理された汚排水をオゾンにより浄化処理するオゾン接触槽8と,オゾン接触槽8で浄化処理された汚排水を生物活性炭により浄化処理する生物活性炭槽9と,生物活性炭槽9で浄化処理された汚排水を膜分離により浄化処理する第二膜分離槽10(
図2,
図3では不図示)と,第二膜分離槽10で浄化処理されて得られた処理水を貯水する処理水貯水槽11(
図2では不図示)と,を備えている。
原水集水槽2,嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5,促進酸化槽6は,それぞれ,円筒タンクからなり,これらは縦置きにされている。
また,第一膜分離槽7,オゾン接触槽8,生物活性炭槽9,第二膜分離槽10,処理水貯水槽11は,それぞれ,角筒タンクからなり,これらも縦置きにされている。
なお,これらの円筒タンクや角筒タンクの素材については特に限定する必要はなく,典型的には,PVC(ポリ塩化ビニル)製のものを用いればよい。
また,促進酸化槽6やオゾン接触槽8においては,ラジカル反応などに対して耐性の高い素材を用いる必要があり,典型的には,ステンレス素材などを用いればよい。
【0036】
これら各槽は,他のいずれか又は複数の槽に近接して配置されている。そして,嫌気槽3と無酸素槽4,ならびに,無酸素槽4と好気槽5は,それぞれ,底部で連通孔12,13を介して直接繋がっている。また,好気槽5と促進酸化槽6,促進酸化槽6と第一膜分離槽7,オゾン接触槽8と生物活性炭槽9,生物活性炭槽9と第二膜分離槽10,ならびに,第二膜分離槽10と処理水貯水槽11は,それぞれ,上部で連通管14,15,16等を介して連通されている。ここで,連通管14,15,16等は,各槽の底面からほぼ同じ高さの位置に設けられており,これにより,各槽における水位が同一に保持される構成となっている。
以上の構成により,重力に従った自然流荷原理により処理水の移動が可能となり,移動のための最小限のエネルギーで自己完結式の汚排水浄化システムとして機能させることが可能になる。
また,各槽が近接して配置されていることにより,各槽間の位置のズレをほとんど無くすことができるとともに,配管の長さをできるだけ短縮することが可能となる。そして,かかる構成により,配管のズレや歪みが極めて生じにくい汚排水浄化システムを実現することが可能となる。
【0037】
本実施の形態の汚排水浄化システム1においては,原水集水槽2に汚排水(原水)が一定量溜まると,汚水ポンプ(不図示)が自動的に起動し,原水集水槽2内の汚排水が移送パイプ17を介して嫌気槽3へ圧送されるように構成されている。そして,嫌気槽3に汲み上げられた汚排水は,連通孔12,13および連通管14,15を介して無酸素槽4,好気槽5,促進酸化槽6,第一膜分離槽7の順に移動する。このように,原水集水槽2内の汚排水の水位が上がると,当該汚排水が自動的に嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5,第一膜分離槽7の順に移動するので,流量調整槽を別途設けなくても,汚排水の流れに如何なる問題も発生することはない。その結果,汚排水浄化システムのコンパクト化を図ることができる。
また,第一膜分離槽7内の汚排水は,自吸式ポンプ18によってオゾン接触槽8に汲み上げられるように構成されている。そして,オゾン接触槽8に汲み上げられた汚排水は,連通管16等を介して生物活性炭槽9,第二膜分離槽10,処理水貯水槽11の順に移動する。このように,第一膜分離槽7内の汚排水は,自動的にオゾン接触槽8,生物活性炭槽9,第二膜分離槽10,処理水貯水槽11の順に移動するので,流量調整槽を別途設けなくても,汚排水の流れに如何なる問題も発生することはない。その結果,汚排水浄化システムのコンパクト化を図ることができる。
なお,ここでは,第一膜分離槽7内の汚排水が,自吸式ポンプ18によってオゾン接触槽8に汲み上げられるように構成されている場合を例に挙げて説明したが,必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば,第一膜分離処理後の汚排水を,重力に従ってオゾン接触槽8に移動させるための連通孔(不図示)を底部に設けるようにしてもよい。
【0038】
原水集水槽2は,汚排水発生源から供給される汚排水(原水)から夾雑固形物を除去するスクリーン機能を有している。そして,夾雑固形物が除去された後の汚排水は,嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5において嫌気性菌による嫌気性分解,好気性菌による好気性分解等を受けて浄化処理される。
【0039】
嫌気槽3には嫌気性菌が投入されている。そして,原水集水槽2から嫌気槽3に汲み上げられた汚排水は,当該嫌気槽3内において,嫌気性菌による嫌気性分解(還元反応)を受けて浄化処理される。
また,嫌気槽3内には,断続的に起動する水中ポンプ19が設置されている。そして,当該水中ポンプ19には,他端が固液分離機(デカンタ)20の流入口に接続された第一移送管21の一端が接続され,固液分離機20の流出口には,他端が無酸素槽4内に位置する第二移送管22の一端が接続されている。これにより,嫌気槽3に汲み上げられた汚排水に含まれている微細固形物を,固液分離機20の吐出口から吐出して除去できるようにされている。
図2中,参照符号23は,嫌気槽3中の嫌気菌により有機物の嫌気分解処理と好気槽から返送されたPAO菌によりリン処理を促進させるために嫌気槽3内を撹拌する撹拌用ポンプを示している。
【0040】
嫌気槽3で浄化処理された汚排水は,固液分離機20および連通孔12を介して無酸素槽4に移動される。
無酸素槽4の上部には,自吸式ポンプ24が設置されている。そして,自吸式ポンプ24の流入口には,他端が後段の好気槽5内に位置する第一返送管25の一端が接続され,自吸式ポンプ24の流出口には,他端が無酸素槽4の水面に位置する第二返送管26の一端が接続されている。これにより,無酸素槽4には,好気槽5で増殖された硝化菌によってアンモニア態窒素が硝化されることで硝酸態窒素や亜硝酸態窒素が返送され,無酸素槽内で増殖された脱窒菌と無酸素状態で接触する。そして,脱窒菌が汚排水中の有機物成分を水素供与体として脱窒を行うことにより,汚排水中の硝酸態窒素が窒素ガスに変化して除去される。
図2中,参照符号27は,無酸素槽4中の窒素除去処理を促進させるために無酸素槽4内を撹拌する撹拌用ポンプを示している。
【0041】
無酸素槽4で浄化処理された汚排水は,連通孔13を介して好気槽5に移動される。この好気槽5には,好気性菌である硝化菌が投入されている。そして,無酸素槽4で浄化処理された汚排水は,好気槽5内で曝気処理され,好気槽5に投入培養された好気性菌による有機物の酸化分解が行われるとともに,アンモニアはアンモニア酸化菌と亜硝酸酸化菌によって硝酸,亜硝酸になる硝化反応が行われる。
無酸素槽4の上方には,自吸式ポンプ28が設置されている。そして,自吸式ポンプ28の流入口には,他端が好気槽5内に位置する第三返送管29の一端が接続され,自吸式ポンプ28の流出口には,他端が嫌気槽3の水面の真上に位置する第四返送管30の一端が接続されている。これにより,嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5での一連の浄化処理を繰り返し行うことができるので,浄化処理の品質を高めることが可能となる。
なお,好気槽5は,上流側の好気槽5aと,下流側の好気槽5bと,からなっている。そして,無酸素槽4と上流側の好気槽5aとが,底部で連通孔13を介して直接繋がっている。また,第一返送管25の他端は,上流側の好気槽5a内に位置している。また,第三返送管29の他端は,下流側の好気槽5b内に位置している。
また,嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5においては,遠赤外線を通じて微生物の活性化と保温断熱効果が高められるように工夫されている。
【0042】
好気槽5で浄化処理された汚排水は,連通管14を介して促進酸化槽6に移動される。そして,好気槽5で浄化処理された汚排水は,促進酸化槽6内で酸化分解により浄化処理される。
図2から
図4に示すように,促進酸化槽6には,スカムポンプ31が浮設され,当該スカムポンプ31には,他端が嫌気槽3の水面の真上に位置する第五返送管32の一端が接続されている。これにより,促進酸化槽6内に流入・発生した微細固形物を,嫌気槽3に返送し,固液分離機20の吐出口から吐出して除去できるようにされている。
【0043】
図2から
図5に示すように,本実施の形態の汚排水浄化システム1は,促進酸化循環装置(マイクロバブル発生器)34を備えており,促進酸化槽6の底部においてマイクロバブルを発生させることができるようにされている。かかる構成によれば,促進酸化槽6内に流入・発生した微細固形物を浮遊させ,スカムポンプ31によって嫌気槽3に返送しやすくなるので,システムからの微細固形物の除去を促進させることができる。
【0044】
より具体的には,促進酸化循環装置(マイクロバブル発生器)34は,促進酸化循環装置本体35と,促進酸化槽6内に設置され,揚水管36を介して促進酸化循環装置本体35の一端に接続された水中ポンプ37と,促進酸化循環装置本体35の他端に接続され,先端のマイクロバブル放出部38aが促進酸化槽6内の底部に配置される放出管38と,を備えている。
促進酸化循環装置本体35は,揚水管36に接続された微細気泡発生ノズル39と,当該微細気泡発生ノズル39と放出管38との間に順に配置された,UVランプ40,TiO
2 ボール41が封入された石英管42,気液混合管43と,を備えており,微細気泡発生ノズル39部分に過酸化水素(H
2O
2),高分子有機酸(フルボ酸,フミン酸など),オゾン(O
3)を単独もしくは複数組み合わせて送り込むことができるようにされている。
促進酸化槽6内には,PVC(ポリ塩化ビニル)製の円筒タンクからなる電気分解槽33が同心状に配置されており,電気分解槽33の内周面には,TiO2陽陰極板46a,46bが配置されている。そして,促進酸化槽6と電気分解槽33は,底部で連通孔47を介して直接繋がっている。また,電気分解槽33と促進酸化槽6は,上部で連通管48を介して連通されている。ここで,連通管48は,上述した連通管14,15,16等とほぼ同じ高さの位置に設けられている。
【0045】
以上の構成を備えた促進酸化槽6により,意図的にOHラジカルを発生させ,酸化力を向上・促進させることが可能となる。すなわち,オゾンや過酸化水素,さらには紫外線(UV)などを組み合わせて用いることにより,強力な酸化剤であるヒドロキシルラジカルを発生させ,水中の難分解性汚染物質を分解・除去することが可能となる。特に,ダイオキシン類や環境ホルモン,農薬などの微料汚染物質の分解・除去に優れた効果を発揮することが期待できる。また,オゾンや過酸化水素,高分子有機酸の組み合わせにより,分解後の主たる生成物は,酸素や水であるため,二次廃棄物がほとんど発生しないという効果が得られる。さらに,オゾンを用いるなどにより,汚排水における脱色や脱臭,COD低減,殺菌などの効果も同時にもたらすことが可能となる。
また,促進酸化槽6における酸化分解において,上記のように,さらに電気分解を組み合わせることにより,促進酸化槽6における酸化分解をさらに効率良く行うことが可能となる。
【0046】
図1から
図3に示すように,促進酸化槽6で浄化処理された汚排水は,連通管15を介して第一膜分離槽7に移動される。そして,促進酸化槽6で浄化処理された汚排水は,第一膜分離槽7内で膜分離により浄化処理される。
第一膜分離槽7は,後述する第二膜分離槽10と比較すると,いわゆる粗分離としての性質を有するものであり,膜(メンブレイン)としてはUF膜(限外ろ過膜)49が用いられている。
図2中,参照符号50は散気管を示しており,当該散気管50は,活性汚泥への酸素供給と気泡の上昇流による膜面洗浄の機能を果たす。
なお,第一膜分離槽7で捕捉された固形物や剥離した生物膜は,逆洗水として嫌気槽3へ移送される。
【0047】
第一膜分離槽7で浄化処理された汚排水は,自吸式ポンプ18によってオゾン接触槽8に汲み上げられる。そして,第一膜分離槽7で浄化処理された汚排水は,オゾン接触槽8内でオゾンにより浄化処理される。
図2中,参照符号51は水中ポンプ式のナノマイクロバブルインジェックトを示しており,当該ナノマイクロバブルインジェックト51により,オゾンを含むナノマイクロバブルを発生させて,第一膜分離槽7で浄化処理された汚排水をさらに浄化処理することができるようにされている。
【0048】
オゾン接触槽8で浄化処理された汚排水は,連通管16を介して生物活性炭槽9に移動される。そして,オゾン接触槽8で浄化処理された汚排水は,生物活性炭槽9内で生物活性炭52により浄化処理される。
【0049】
図1に示すように,生物活性炭槽9で浄化処理された汚排水は,第二膜分離槽10に移動される。そして,生物活性炭槽9で浄化処理された汚排水は,第二膜分離槽10内で膜分離により浄化処理される。
第二膜分離槽10における膜としては,得られる処理水の使用用途に応じて,MF膜(精密ろ過膜),NF膜(ナノろ過膜)ないしRO膜(逆浸透膜)などが用いられる。
【0050】
図1,
図3に示すように,第二膜分離槽10で浄化処理されて得られた処理水は,処理水貯水槽11に貯められる。処理水貯水槽11に貯められた処理水は,水質が政令で定める技術上の基準に適合していれば,河川等に放流してもよい。また,河川等に放流することなく,敷地内で処理するようにしてもよい(再使用)。
【0051】
本実施の形態の汚排水浄化システム1は,例えば,トイレ室の汚水槽(汚排水発生源)から供給される汚排水の浄化処理に適用することができる。また,
図6に示すように,畜舎から供給される汚排水の浄化処理に適用することもでき,この場合,原水集水槽2で除去された夾雑固形物や嫌気槽3で除去された微細固形物を堆肥化することができる。
【0052】
[実施の形態2]
次に,本発明の実施の形態2における汚排水浄化システムの構成について,
図7から
図13を参照しながら説明する。
【0053】
図7は本発明の実施の形態2における汚排水浄化システムの構成と流れを示す概念図,
図8は当該汚排水浄化システムの全体構成を示す立面図,
図9は当該汚排水浄化システムの全体構成を示す平面図,
図10は当該汚排水浄化システムを構成する促進酸化槽を示す図((a)は立面図,(b)は平面図),
図11は当該汚排水浄化システムを構成する促進酸化装置(マイクロバブル発生器)を示す立面図((a)はオゾンガスと過酸化水素水混合注入型,(b)はオゾン水と過酸化水素水分離注入型),
図12および
図13は当該汚排水浄化システムを構成する促進酸化槽の構造に起因する効果を説明するための図である。
【0054】
図7から
図9に示すように,本実施の形態の汚排水浄化システム53は,上流側(汚排水発生源側)から順に配置された,汚排水発生源から供給される汚排水(原水)を浄化処理する原水集水槽2(
図8では不図示)と,原水集水槽2で浄化処理された汚排水を嫌気性菌により浄化処理する嫌気槽3と,嫌気槽3で浄化処理された汚排水を脱窒菌により浄化処理する無酸素槽4と,無酸素槽4で浄化処理された汚排水を好気性菌により浄化処理する好気槽5と,好気槽5で浄化処理された汚排水を酸化分解により浄化処理する促進酸化槽6と,促進酸化槽6で浄化処理された汚排水を生物処理により浄化処理する生物曝気槽54と,生物曝気槽54で浄化処理された汚排水を膜分離により浄化処理する第一膜分離槽7と,第一膜分離槽7で浄化処理された汚排水をオゾンにより浄化処理するオゾン接触槽8と,オゾン接触槽8で浄化処理された汚排水を生物活性炭により浄化処理する生物活性炭槽9と,を備えている。
生物活性炭槽9で浄化処理された汚排水は,処理水槽55(
図8では不図示)に貯められる。処理水槽55に貯められた処理水は,第二膜分離槽10(
図8では不図示)に移送され,MF膜(精密ろ過膜),NF膜(ナノろ過膜)などを用いた膜分離により浄化処理されて処理水槽55に返送される。そして,水質が政令で定める技術上の基準に適合していれば,河川等に放流される。一方,水質が政令で定める技術上の基準に適合していなければ,河川等に放流されることなく,産業用水として使用される。また,第二膜分離槽10でRO膜(逆浸透膜)を用いた膜分離により浄化処理されて得られた処理水は,精製水槽56に貯められ,精製水(飲用水)として使用される。
【0055】
原水集水槽2,嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5,生物曝気槽54,第一膜分離槽7,オゾン接触槽8,生物活性炭槽9,処理水槽55,第二膜分離槽10,および精製水槽56は,それぞれ,角筒タンクからなり,これらは縦置きにされている。
また,促進酸化槽6は,円筒タンクからなり,この円筒タンクも縦置きにされている。
なお,これらの円筒タンクや角筒タンクの素材については特に限定する必要はないが,典型的には,PVC(ポリ塩化ビニル)製のものを用いればよい。
また,促進酸化槽6においては,ラジカル反応などに対して耐性の高い素材を用いる必要があり,典型的には,ステンレス素材などを用いればよい。
【0056】
これら各槽は,他のいずれか又は複数の槽に近接して配置されている。そして,嫌気槽3と無酸素槽4,無酸素槽4と好気槽5,ならびに,促進酸化槽6と生物曝気槽54は,それぞれ,底部で連通孔12,13,57を介して直接繋がっている。また,好気槽5と促進酸化槽6,生物曝気槽54と第一膜分離槽7,オゾン接触槽8と生物活性炭槽9,処理水槽55と第二膜分離槽10,ならびに,第二膜分離槽10と精製水槽56は,それぞれ,上部で連通管14,15,16等を介して連通されている。ここで,連通管14,15,16等は,各槽の底面からほぼ同じ高さの位置に設けられており,これにより,各槽における水位が同一に保持される構成となっている。
以上の構成により,重力に従った処理水の移動が可能となり,移動のための最小限のエネルギーで自己完結式の汚排水浄化システムとして機能させることが可能になる。
また,各槽が近接して配置されていることにより,各槽間の位置のズレをほとんど無くすことができるとともに,配管の長さをできるだけ短縮することが可能となる。そして,かかる構成により,配管のズレや歪みが極めて生じにくい汚排水浄化システムを実現することが可能となる。
【0057】
本実施の形態の汚排水浄化システム53においては,原水集水槽2に汚排水(原水)が一定量溜まると,汚水ポンプ(不図示)が自動的に起動し,原水集水槽2内の汚排水が移送パイプ17を介して嫌気槽3へ圧送されるように構成されている。そして,嫌気槽3に汲み上げられた汚排水は,連通孔12,13,連通管14,連通孔57および連通管15を介して無酸素槽4,好気槽5,促進酸化槽6,生物曝気槽54,第一膜分離槽7の順に移動する。このように,原水集水槽2内の汚排水の水位が上がると,当該汚排水が自動的に嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5,促進酸化槽6,生物曝気槽54,第一膜分離槽7の順に移動するので,流量調整槽を別途設けなくても,汚排水の流れに如何なる問題も発生することはない。その結果,汚排水浄化システムのコンパクト化を図ることができる。
また,第一膜分離槽7内の汚排水は,自吸式ポンプ18によってオゾン接触槽8に汲み上げられるように構成されている。そして,オゾン接触槽8に汲み上げられた汚排水は,連通管16等を介して生物活性炭槽9,処理水槽55,第二膜分離槽10,精製水槽56の順に移動する。このように,第一膜分離槽7内の汚排水は,自動的にオゾン接触槽8,生物活性炭槽9,処理水槽55,第二膜分離槽10,精製水槽56の順に移動するので,流量調整槽を別途設けなくても,汚排水の流れに如何なる問題も発生することはない。その結果,汚排水浄化システムのコンパクト化を図ることができる。
なお,ここでは,第一膜分離槽7内の汚排水が,自吸式ポンプ18によってオゾン接触槽8に汲み上げられるように構成されている場合を例に挙げて説明したが,必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば,第一膜分離処理後の汚排水を,重力に従ってオゾン接触槽8に移動させるための連通孔(不図示)を底部に設けるようにしてもよい。
【0058】
原水集水槽2は,ドラムスクリーン(不図示)を備え,汚排水発生源から供給される汚排水(原水)から夾雑固形物を除去する機能を果たす。そして,夾雑固形物が除去された後の汚排水は,嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5において嫌気性菌による嫌気性分解,好気性菌による好気性分解等を受けて浄化処理される。
【0059】
嫌気槽3には嫌気性菌が投入されている。
図8中,参照符号58は,嫌気性菌が固定される微生物担体を示している。そして,原水集水槽2から嫌気槽3に汲み上げられた汚排水は,当該嫌気槽3内において,嫌気性菌による嫌気性分解(還元反応)を受けて浄化処理される。
また,嫌気槽3内には,断続的に起動する水中ポンプ19が設置されている。そして,当該水中ポンプ19には,他端が固液分離機20の流入口に接続された第一移送管21の一端が接続され,固液分離機20の流出口には,他端が無酸素槽4内に位置する第二移送管22の一端が接続されている。これにより,嫌気槽3に汲み上げられた汚排水に含まれている微細固形物を,固液分離機20の吐出口から吐出して除去できるようにされている。
【0060】
嫌気槽3で浄化処理された汚排水は,固液分離機20および連通孔12を介して無酸素槽4に移動される。
無酸素槽4の上部には,自吸式ポンプ24が設置されている。そして,自吸式ポンプ24の流入口には,他端が後段の好気槽5内に位置する第一返送管25の一端が接続され,自吸式ポンプ24の流出口には,他端が無酸素槽4内に位置する第二返送管26の一端が接続されている。これにより,無酸素槽4には,好気槽5で増殖された硝化菌も返送され,嫌気槽3で浄化処理された汚排水と脱窒菌とが無酸素状態で接触する。そして,嫌気槽3で浄化処理された汚排水は無酸素槽で増殖されている脱窒菌が汚排水中の有機物成分を水素供与体として脱窒を行うことにより,汚排水中の硝酸態窒素が窒素ガスに変化して除去される。
図2中,参照符号59は,硝化菌が固定される微生物担体を示している。また,参照符号60は,無酸素槽4中の活性汚泥濃度を均一化するために無酸素槽4内を撹拌する下向式撹拌ポンプを示している。
【0061】
無酸素槽4で浄化処理された汚排水は,連通孔13を介して好気槽5に移動される。この好気槽5には,好気性菌である硝化菌が投入されている。そして,無酸素槽4で浄化処理された汚排水は,好気槽5内で曝気処理され,好気槽5に投入培養された好気性菌による有機物の酸化分解が行われるとともに,アンモニアはアンモニア酸化菌と亜硝酸酸化菌によって硝酸,亜硝酸になる硝化反応が行われる。
図2中,参照符号61は,硝化菌が固定される微生物担体を示している。
無酸素槽4の上方には,自吸式ポンプ28が設置されている。そして,自吸式ポンプ28の流入口には,他端が好気槽5内に位置する第三返送管29の一端が接続され,自吸式ポンプ28の流出口には,他端が嫌気槽3の水面の真上に位置する第四返送管30の一端が接続されている。これにより,嫌気槽3,無酸素槽4,好気槽5での一連の浄化処理を繰り返し行うことができるので,浄化処理の品質を高めることが可能となる。
なお,好気槽5は,上流側の好気槽5aと,下流側の好気槽5bと,からなっている。そして,無酸素槽4と上流側の好気槽5aとが,底部で連通孔13を介して直接繋がっている。また,第一返送管25の他端は,上流側の好気槽5a内に位置している。また,第三返送管29の他端は,下流側の好気槽5b内に位置している。
また,無酸素槽4,好気槽5においては,遠赤外線ランプにより,微生物の活性化と保温断熱効果が高められるように工夫されている。
【0062】
好気槽5で浄化処理された汚排水は,連通管14を介して促進酸化槽6に移動される。そして,好気槽5で浄化処理された汚排水は,促進酸化槽6内で酸化分解により浄化処理される。
図8から
図10に示すように,促進酸化槽6には,スカムポンプ31が浮設され,当該スカムポンプ31には,他端が嫌気槽3の水面の真上に位置する第五返送管32の一端が接続されている。これにより,促進酸化槽6内に流入・発生した微細固形物を,嫌気槽3に返送し,固液分離機20の吐出口から吐出して除去できるようにされている。
【0063】
図8から
図11(a)に示すように,本実施の形態の汚排水浄化システム53は,インライン促進酸化装置(マイクロバブル発生器)62を備えており,促進酸化槽6内においてマイクロバブルを発生させることができるようにされている。そして,かかる構成によれば,促進酸化槽6内に流入・発生した微細固形物を浮遊させ,スカムポンプ31によって嫌気槽3に返送しやすくなるので,システムからの微細固形物の除去を促進させることができる。
【0064】
より具体的には,インライン促進酸化装置(マイクロバブル発生器)62は,促進酸化装置本体63と,促進酸化槽6内に設置され,揚水管64を介して促進酸化装置本体63の一端に接続された水中ポンプ65と,促進酸化装置本体63の他端に接続された放出管66と,を備えている。
促進酸化装置本体63は,揚水管64に接続されたインジェックト型ナノマイクロバブル発生ノズル67と,当該ナノマイクロバブル発生ノズル67と放出管66との間に順に配置された,気液混合管68と,円筒型超音波噴射振動子69と,を備えており,ナノマイクロバブル発生ノズル67部分にオゾン(O
3)ガス,過酸化水素水(H
2O
2)を単独もしくは組み合わせて送り込むことができるようにされている。
促進酸化槽6内には,円筒タンクからなる電気分解槽33が同心状に配置されており,電気分解槽33の内周面には,TiO2陽陰極板46a,46bが配置されている。そして,促進酸化槽6と電気分解槽33は,底部で連通孔47を介して直接繋がっている。なお,インライン促進酸化装置(マイクロバブル発生器)62の水中ポンプ65は,電気分解槽33の底部に設置されており,放出管66は,電気分解槽33の外側に配置されている。また,
図8,
図10中,参照符号70は,槽内に有機酸であるフミン酸(humic acid)を溶出させる腐植土を示している。
なお,促進酸化槽6内の円筒タンクの素材については特に限定する必要はないが,典型的には,PVC(ポリ塩化ビニル)製のものを用いればよい。
【0065】
以上の構成を備えた促進酸化槽6により,意図的にヒドロキシルラジカルを発生させ,酸化力を向上・促進させることが可能となる。すなわち,オゾンや過酸化水素,さらには紫外線(UV)などを組み合わせて用いることにより,強力な酸化剤であるOHラジカルを発生させ,水中の難分解性汚染物質を分解・除去することが可能となる。特に,ダイオキシン類や環境ホルモン,農薬などの微料汚染物質の分解・除去に優れた効果を発揮することが期待できる。また,オゾンや過酸化水素,紫外線(UV),超音波,ナノマイクロバブルなどを使用するため,分解後の主たる生成物は,酸素や水であるため,二次廃棄物がほとんど発生しないという効果が得られる。さらに,オゾンを用いるなどにより,汚排水における脱色や脱臭,COD低減,殺菌などの効果も同時にもたらすことが可能となる。
また,促進酸化槽6における酸化分解において,上記のように,さらに電気分解を組み合わせることにより,促進酸化槽6における酸化分解をさらに効率良く行うことが可能となる。
【0066】
さらに,
図11,
図12,
図13に示すように,同心円筒状の促進酸化槽6および電気分解槽33とインライン促進酸化装置62との組合せによれば,ナノマイクロバブル発生ノズル67と気液混合管68と円筒型超音波噴射振動子69とによって生成される螺旋流が旋回流となり,反応を促進することとなる。すなわち,円筒状の電気分解槽33およびインライン促進酸化装置62を備えた本実施の形態の促進酸化槽(旋回流(渦流)式促進酸化槽)6の構成によれば,従来型促進酸化槽に比べて効率的に撹拌できるため,(1)有機物との反応効率が良い,(2)反応速度が速い,(3)反応死角が無い,(4)必要オゾン量が少なくて済む,(5)ランニングコストが低い,などの効果が得られる。
この場合,ナノマイクロバブル(微細気泡)は,旋回流によって10から50μm径の気泡となり,1から10mm程度のミリバブルに比べて溶解率が高くなる。すなわち,円筒状の電気分解槽33およびインライン促進酸化装置62を備えた本実施の形態の促進酸化槽(旋回流(渦流)式促進酸化槽)6の構成によれば,オゾンガスを溶解させるための加圧溶解タンクを用いることなく溶解率を高めることができる。
【0067】
図7から
図9に示すように,促進酸化槽6で浄化処理された汚排水は,連通孔57を介して生物曝気槽54に移動される。そして,促進酸化槽6で浄化処理された汚排水は,生物曝気槽54内で生物処理により浄化処理される。
図8中,参照符号71は,生物処理に用いられる微生物が固定される微生物担体を示している。
【0068】
生物曝気槽54で浄化処理された汚排水は,連通管15を介して第一膜分離槽7に移動される。そして,生物曝気槽54で浄化処理された汚排水は,第一膜分離槽7内で膜分離により浄化処理される。
第一膜分離槽7は,後述する第二膜分離槽10と比較すると,いわゆる粗分離としての性質を有するものであり,膜(メンブレイン)としてはUF膜(限外ろ過膜)49が用いられている。
図8中,参照符号50は散気管を示しており,当該散気管50は,活性汚泥への酸素供給と気泡の上昇流による膜面洗浄の機能を果たす。
【0069】
第一膜分離槽7で浄化処理された汚排水は,自吸式ポンプ18によってオゾン接触槽8に汲み上げられる。そして,第一膜分離槽7で浄化処理された汚排水は,オゾン接触槽8内でオゾンにより浄化処理される。
図8中,参照符号51は水中ポンプ式のナノマイクロバブルインジェックトを示しており,当該ナノマイクロバブルインジェックト51により,オゾンを含むナノマイクロバブルを発生させて,第一膜分離槽7で浄化処理された汚排水をさらに浄化処理することができるようにされている。また,参照符号72は,光触媒であるTiO
2ボールを示しており,当該TiO
2ボールに紫外線を照射するだけで殺菌処理が可能となる。
【0070】
オゾン接触槽8で浄化処理された汚排水は,連通管16を介して生物活性炭槽9に移動される。そして,オゾン接触槽8で浄化処理された汚排水は,生物活性炭槽9内で生物活性炭52により浄化処理される。
【0071】
次いで,上記したように,生物活性炭槽9で浄化処理された汚排水は,処理水槽55に貯められる。処理水槽55に貯められた処理水は,第二膜分離槽10に移送され,MF膜(精密ろ過膜),NF膜(ナノろ過膜)などを用いた膜分離により浄化処理されて処理水槽55に返送される。そして,水質が政令で定める技術上の基準に適合していれば,河川等に放流される。一方,水質が政令で定める技術上の基準に適合していなければ,河川等に放流されることなく,産業用水として使用される。また,第二膜分離槽10でRO膜(逆浸透膜)を用いた膜分離により浄化処理されて得られた処理水は,精製水槽56に貯められ,精製水(飲用水)として使用される。
【0072】
本実施の形態の汚排水浄化システム53も,例えば,トイレ室の汚水槽(汚排水発生源)から供給される汚排水の浄化処理に適用することができる。
【0073】
なお,本実施の形態においては,オゾンガスと過酸化水素水混合注入型のインライン促進酸化装置を用いる場合を例に挙げて説明したが,必ずしもかかる構成の促進酸化装置に限定されるものではない。例えば,
図11(b)に示すようなオゾン水と過酸化水素水分離注入型のインライン促進酸化装置73を用いてもよい。
より具体的には,インライン促進酸化装置73は,促進酸化装置本体74と,促進酸化槽6内に設置され,揚水管64を介して促進酸化装置本体74の一端に接続された水中ポンプ65と,促進酸化装置本体74の他端に接続された放出管66と,を備えている。
促進酸化装置本体74は,揚水管64に接続されたナノマイクロバブル発生ノズル67と,当該ナノマイクロバブル発生ノズル67と放出管66との間に順に配置された,インジェックター75と,円筒型超音波噴射振動子69と,を備えており,ナノマイクロバブル発生ノズル67部分にオゾン水を,インジェックター75部分に過酸化水素水をそれぞれ送り込むことができるようにされている。
【0074】
上記のとおり,本発明について説明を行ってきたが,本発明の有用性について,補足して説明を行う。
昨今,有機物処理について,下記が技術的課題として重要となっている。
(1) 高分子凝集剤など化学薬品を排除し,産業廃棄物の処理量を低減すること。
(2) 世界的な水資源不足問題を解消するために,汚排水の放流処理はもちろんのこと,産業用水として再使用が可能な程度にまで分解・精製処理が可能であること。
(3) コンパクトで経済的であること。
(4) 畜産糞尿処理の脱色や微量化学物質,病原性微生物の除去などの難分解性物質の浄化処理が可能であること。
【0075】
汚染水処理については,従来,微生物処理方式が採用されてきた。すなわち,微生物処理方式は,汚排水処理コストが比較的安価である点で有用である。しかしながら微生物処理方式は,設備が膨大なものとなりがちであり,難分解性物質の分解ができず万全な処理方法ではないという課題がある。そのため,微生物処理方式において,微生物処理だけでは処理できない難分解性物質を,生物分解処理しやすい易分解性物質へ分解するためには,生物処理方式と組み合わせが可能な新たな処理方法の開発が必要である。
【0076】
オゾン処理法は,オゾンの強い酸化力により処理対象物を酸化分解することから,生物処理と併用できる方法のひとつである。
特にオゾン処理法は,処理に伴って汚泥などの二次廃棄物が生じないことや反応後オゾンが無害な酸素になることから,溶存酸素が必要な微生物処理方式には極めて有用な処理技術である。
しかしながら,オゾンを単独で用いるオゾン処理法では,処理水中の亜硝酸態窒素や有機性物質などの還元性物質がオゾンと反応し消失してしまう一方,オゾンと反応性が低い物質もあり,分解が困難な物質がある点で課題を有するものである。
【0077】
一方,ヒドロキシルラジカルは,オゾンと比較すると,分解できる物質の幅が広く分解力も高いことから,このヒドロキシラジカルを利用したいわゆる促進酸化法(AOP)が開発されている。
しかるに,促進酸化法(AOP)の根幹であるヒドロキシルラジカルを安定的に発生させるために様々な方法が試されているが,これは至っていない状況であり,今も研究が進んでいる状況である。
【0078】
本発明は,上述した有機物処理における技術的課題を克服するとともに,ヒドロキシルラジカルの安定的発生とこれの利用に必要な装置を開発し,実用化するものである。
【0079】
本発明の実施態様2は,A2O2式の分解方式を提供しうるものである。以下,A2O2方式について,説明を行う。
【0080】
1.嫌気槽(A)+無酸素槽(A)+好気槽(O)+(促進酸化槽)+生物曝気槽(O)
A2O2方式は,A2O方式の生物処理法から促進酸化処理後,改めて生物曝気槽を設ける処理方式である。固液分離装置前段に嫌気槽を位置させることで浮上スラッチ,リンを過剰摂取したPAO菌を原水嫌気槽に返送処理する。また,促進酸化槽の前段階で無酸素槽を設け,生物学的窒素とリン除去を行い,窒素除去に必要な炭素源として有機物を利用することで,メタノールの注入を省略することができる。さらに,促進酸化槽を設けて生物処理方式とを組合せることにより,下記の利点ないし技術的特徴を有する。
(1) 活性汚泥法など,従来の生物処理には曝気後沈澱及び脱水処理が必要であったが,促進酸化槽におけるナノマイクロバブルによるスラッチの浮上処理で,沈澱及び脱水処理が不要になる。
(2) 促進酸化槽の過酸化水素を生物処理するとともに,オゾンと過酸化水素は最終的には酸素になり処理水中において高い酸素濃度を維持できるため,これを生物処理(好気性菌による処理)に利用可能である。
(3) オゾン+高分子有機酸触媒剤という,新しい方法のヒドロキシルラジカル生成法を提供するものである。すなわち,促進酸化槽内に腐植土を吊るすことでフミン酸(Humic Acid)やフルボ酸(Fulvic Acid)を放出する。もしくは,液状フミン酸(Humic Acid)フルボ酸(Fulvic Acid)を直接供給する,これらにより,ヒドロキシルラジカル生成の触媒作用を行う。
(4) 促進酸化槽でナノマイクロバブルを利用してスラッチを浮上させ,スカムポンプでの分離処理が出来ることから,沈殿槽と脱水工程が要らない。
(5) 促進酸化槽に最適化された,一体型インライン促進酸化装置の開発。
(6) インジェクターとの一体型の気液注入方法の開発。
(7) 促進酸化槽の構造上の特徴として円筒型とし,旋回流を造る。
(8) ナノマイクロバブル発生ノズルにより効率的溶解が出来るので,従来のオゾン溶存率を高める為の高圧タンクが要らない。
【0081】
また,本発明により,システムのコンパクト化と浄化能力の向上が可能となり,下記の利点ないし技術的特徴を有する。
(1) 曝気槽の容量,曝気時間,配管省略などコンパクト化。
(2) 浄化処理副産物や沈殿物などの二次廃棄物の無発生。
(3) 産業廃棄物量の低減と世界的な水資源不足を解消。
(4) 高分子凝集剤などの化学薬品(バルキング解消用,消泡剤など)を排除して最終処理水に化学成分を残さないので産業用水として最適。
(5) 畜産糞尿の固液分離後の固形物は有機肥料のクオリティの向上。
(6) 凝集剤必要時は凝集性バイオポリマー(微生物凝集剤)の開発使用。