(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態のブレース取付具10について説明する。
図1は、実施形態のブレース取付具10によりブレース1を矩形構造体2の内部に対角線状に交差するように取付けた耐力壁3を示す。
図2は、矩形構造体2の縦枠4の下部に固定されたブレース取付具10の斜視図である。
【0014】
ブレース1は、住宅やビル等の建物の耐力壁3として、矩形の矩形構造体2の内側にX字状の交叉配置で取り付けられている、いわゆる筋交いである。ブレース1は、一般に金属製丸棒部材であり、この金属製丸棒部材の両端の外周にねじ溝1aが設けられている。ブレース取付具10とは、そのブレース1を矩形構造体2に取り付けるための金具である。
【0015】
矩形構造体2は、縦枠4と横枠5を矩形に枠組みしたものである。実施形態の矩形構造体2は、木材で製造されているが、これに限らず、矩形構造体2は、金属製の溝形鋼や角管等で構成されることもある。
一対のブレース1は、両端のねじ溝1a部分においてブレース取付具10を介して矩形構造体2の内側にX字状の交叉配置で連結される。これにより、耐力壁3が構成される。
【0016】
ブレース取付具10は、縦枠4にボルト11で接合されている。ただし、これに限定されず、溶接やリベット等の他の方法で接合してもよい。
【0017】
図3は実施形態のブレース取付具10を示す図で、(a)は斜視図、(b)は断面図である。図示するようにブレース取付具10は、矩形の取付部12と、取付部12の一辺から延びるジョイント部13と、ジョイント部13の内部に保持されたねじ穴部材14とを備える。
【0018】
取付部12及びジョイント部13は、一体(一枚)の板状部材から製造されている。取付部12は矩形で、実施形態では4つのボルト孔15が設けられている。ただし、ボルト孔15の数は4つに限定されず、それ以上でもそれ以下でもよい。このボルト孔15に
図2に示すようにボルト11を差し込み、矩形構造体2に設けられたボルト孔(図示せず)に螺合することで、ブレース取付具10は矩形構造体2に取り付けられる。
【0019】
ジョイント部13は、取付部12の一側辺から連続している円筒形状の部分である。ジョイント部13の軸線は、取付部12の平面に対して、所定角度θで傾いている。このθは、
図1に示すように、縦枠4に対するブレース1の角度に対応している。
【0020】
ねじ穴部材14は、ジョイント部13の内側に保持された円筒部材である。ねじ穴部材14の外径は、ジョイント部13の内径と略同径である。ねじ穴部材14の外周面はジョイント部13の内周面と接しており、これによりねじ穴部材14はジョイント部13に保持されている。
ねじ穴部材14には、ねじ穴16が設けられている。このねじ穴16に、ブレース1のねじ溝1aが形成された部分が螺合される。
【0021】
(製造方法)
図4は、本実施形態のブレース取付具10の製造方法を説明する図である。
まず、金属板から、所定形状のブランク17を打抜く(
図4(a))。
ブランク17は、矩形部材の両長辺における同位置から、短辺と平行(幅方向)に延びる、同じ長さの一対の切欠き部18が設けられた形状である。
ブランク17は、一対の切欠き部18により2つの矩形部分に分けられ、その一方は矩形構造体2に取り付けられる上述の取付部12となる。この取付部12には、4つのボルト孔15が打ち抜かれている。
【0022】
矩形部分の他方は、ジョイント部形成部13Aである。
ジョイント部形成部13Aの幅(ブランク17における短辺の長さ)Lは、ねじ穴部材14の円周の長さ以下である。
【0023】
次いで、ジョイント部形成部13Aを、U曲げ加工する(
図4(b))。
このU曲げ加工されたジョイント部形成部13Aの内側に、予め製造されているねじ穴部材14を配置する(
図4(c))。
ねじ穴部材14のねじ径や接続方法を変更することにより、異なる径のねじ溝1aが設けられたブレース1に対応したジョイント部13への交換が可能となる。
【0024】
ねじ穴部材14を包み込むようにジョイント部形成部13Aを丸め加工する(
図4(d))。
このとき、上述のようにジョイント部形成部13Aの幅Lは、ねじ穴部材14の円周の長さ以下である。このため、ジョイント部形成部13Aをねじ穴部材14の外周に沿うように丸め加工したときに、ジョイント部形成部13Aの端部同士が接触してねじ穴部材14の外周面とジョイント部13の内周面との間に隙間が生じにくい。
したがって、ねじ穴部材14がジョイント部13に強く保持され、ブレース1をねじ穴部材14を取り付ける際に、ねじ穴部材14がブレース1と供回りする可能性が少なくなる。
なお、この場合、ジョイント部形成部13Aの端部同士の間に若干隙間が形成されるが、隙間がわずかであれはジョイント部13のねじ穴部材14に対する保持力に影響は少ない。
【0025】
次いで、ジョイント部13の軸線が取付部12の平面に対して所定角度θで傾くように、ジョイント部13を傾ける(
図4(e))。
【0026】
そして、完成したブレース取付具10を、
図1及び2に示すように矩形構造体2の縦枠4の下部にボルト11で固定し、一対のブレース1の両端部をブレース取付具10のねじ穴部材14に螺合させることで、耐力壁3を構成する。
【0027】
(比較形態)
図5は、実施形態のブレース取付具10に対する比較形態のブレース取付具10’を示す斜視図であり、
図2に対応している。
比較形態のブレース1’の端部は、所定径の孔が設けられた羽子板14’と呼ばれる板部材に溶接等で保持されている。
比較形態のブレース取付具(ガセットプレート)10’は、取付部12’と、取付部12’に対して垂直に設けられた羽子板ジョイント部13’とを備える。
羽子板ジョイント部13’は、取付部12’の中央部より、取付部12’に対して垂直となるように取付部12’の一辺に沿って溶接されている。
比較形態によると、取付部12’と羽子板ジョイント部13’との間、及びブレース1’と羽子板14’との間を溶接で接合している。したがって熱ひずみによる寸法変化が発生するため、耐力壁として耐震性能が低下する。
また、材料として、めっき鋼材を用いた場合、溶接を行うと後の補修作業(溶接のためにめっきが除去された部分に補修塗料を塗る等)が必要となる。
【0028】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態のブレース取付具10によると、ブレース取付具10を、建築物の矩形構造体の内側に設置する際に、溶接を必要としない。また、ブレースの先端に溶接される羽子板も不要である。そのため、溶接の熱ひずみによる寸法変化が少なく、耐震強度の低下を抑制できる。
(2)また、ブレース取付具10を製造するための部品点数も少なくなるため、作業性が向上し、安価に製造・施工できる。
(3)更に実施形態のブレース取付具10は、ジョイント部13に挿入するねじ穴部材14の内径を変更することにより他のねじ寸法への交換が容易である。
(4)材料として、めっき鋼材を用いた場合であっても、溶接を行わないので、溶接を行う際にめっきが除去された部分に補修塗料を塗る等の保守作業が不要である。
【0029】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態のブレース取付具20の斜視図である。
図7は第2実施形態のブレース取付具20の製造方法を説明する図である。
第2実施形態のブレース取付具20が第1実施形態のブレース取付具10と異なる点は以下の2点である。
(1)ねじ穴部材24の外周の一部に、軸方向に沿って平坦に切り欠いた平坦部24aが設けられている(
図7(b)参照)。
(2)ジョイント部23も、ねじ穴部材24の平坦部24aの形状に沿うように、円筒の側壁の一部に軸方向に沿って平坦な平坦部23aが設けられている。
【0030】
第2実施形態のブレース取付具20の製造方法は、第1実施形態と同様であるが、U曲げ加工されたジョイント部形成部23Aの内側にねじ穴部材24を配置する際に(
図7(c))、平坦部24aの反対側が、ジョイント部23の幅方向の中央部の内面に接するように配置する。
そして、ねじ穴部材24を包み込むようにジョイント部形成部23Aを丸め加工する(
図7(d))。
この際、ジョイント部23にも、ねじ穴部材24の平坦部24aの形状に沿うように、円筒の側壁の一部に軸方向に沿って平坦な平坦部23aが形成される。
【0031】
第2実施形態によると、ねじ穴部材24とジョイント部23とにそれぞれ平坦部24aと平坦部23aとが設けられ、互いに接している。このため、ねじ穴部材24がジョイント部23に対して第1実施形態よりも更に回転しにくくなる。
したがって、ねじ穴部材24がジョイント部23に対してより強固に保持され、ブレース1をねじ穴部材24に取り付ける際に、ねじ穴部材24がブレース1と供回りする可能性がより少なくなる。
【0032】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態のブレース取付具30の斜視図である。
図9は第3実施形態のブレース取付具30の製造方法を説明する図である。
第3実施形態のブレース取付具30が第1実施形態のブレース取付具10と異なる点は、円筒状のジョイント部33の軸A方向の両端に、径方向内側に延びるつば部33a、33bが設けられている点である。
【0033】
図9(a)に示すように、第3実施形態のブランク37は、第1実施形態と同様に、切欠き部38により2つの矩形部分に分けられ、その一方は矩形構造体2に取り付けられる取付部32である。
矩形部分の他方であるジョイント部形成部33Aの、切欠き部38側の縁部は、第1実施形態と比べて、切欠き部38側に延びている。言い換えれば、切欠き部38は、幅方向に延びる部分と、この幅方向に延びる部分の先端からジョイント部形成部33A側に屈曲して延びる部分と、を有する。
そして、
図9(b)に示すように、ジョイント部形成部33Aのその延びた部分と、ジョイント部形成部33Aの、切欠き部38側の縁部と反対側の縁部とを、同方向に折り曲げことにより、つば部33a、33bが形成される。
【0034】
その後、ジョイント部形成部33Aを、第1実施形態と同様に、U曲げ加工し、ねじ穴部材34を内部に配置し、ジョイント部形成部33Aをねじ穴部材34の外周に沿うように丸め加工し、ブレース1の配置角度に対応する角度θで折り曲げる(
図9(c)〜(f))。
【0035】
第3実施形態によると、ジョイント部33の軸方向の両端に内側に張り出したつば部33a、33bが形成されているので、第1実施形態よりも、ねじ穴部材34のジョイント部33からの抜けが更に防止され、ねじ穴部材34のジョイント部33に対する供回りも更に防止される。
【0036】
(第4実施形態)
図10は、本発明の第4実施形態のブレース取付具40の斜視図である。
図11は第4実施形態のブレース取付具40の製造方法を説明する図である。
第4実施形態のブレース取付具40は、第3実施形態のブレース取付具30において更に、円筒状のジョイント部43の軸方向の一方(切欠き部38側の縁部と反対側の縁部)の径方向内側に張り出したつば部43aに、切れ込み43cが設けられている。
第4実施形態のブレース取付具40の製造方法は、第3実施形態と同様である。
【0037】
第4実施形態によると、第3実施形態の効果に加え、つば部43aに切れ込み43cが設けられているので、ジョイント部形成部43Aを、U曲げ加工する(
図11(c))際に、第3実施形態と比べて曲げやすい。
【0038】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態のブレース取付具50の斜視図である。
図13は第5実施形態のブレース取付具50の製造方法を説明する図である。
第5実施形態のブレース取付具50は、第3実施形態のブレース取付具30と比べて、ねじ穴部材54の形状が異なる。ねじ穴部材54は、
図13(c)に示すように、両端部54aの外径が、ねじ穴部材54の他の部分と比べて、ジョイント部53のつば部53aの厚み分だけ小さくなっている。
そして、その外径が小さくなっている部分の外周に、ジョイント部53のつば部53aが位置する。
【0039】
第5実施形態によると、ねじ穴部材54の端面(ねじ穴への挿入口)がジョイント部53のつば部53aの端面と略同一の位置(同一面上)に配置されるので、ブレース1のねじ溝1aをねじ穴部材54のねじ穴に挿入する際に、挿入しやすい。
また、ねじ穴部材54の端部が、ジョイント部53のつば部53aによって保持されるので、ねじ穴部材54がジョイント部53に対してより強固に固定される。
【0040】
(第6実施形態)
図14は、本発明の第6実施形態のブレース取付具60の斜視図である。第6実施形態のブレース取付具60は、第4実施形態のブレース取付具40において、第5実施形態と同様に、ねじ穴部材64の両端の外径がジョイント部63のつば部63aの厚み分だけ小さくしたものである。
第6実施形態によると、第4実施形態及び第5実施形態と同様の効果を有する。
【0041】
(第7実施形態)
図15は、本発明の第7実施形態のブレース取付具70の斜視図である。
図16は、第7実施形態のブレース取付具の製造方法を説明する図である。
第7実施形態のブレース取付具70は、第2実施形態と同様に、ねじ穴部材74の外周の一部に、軸方向に沿って平坦に切り欠いた平坦部74aが設けられている。ジョイント部73も、ねじ穴部材74の平坦部74aの形状に沿うように、円筒の側壁の一部に軸方向に沿って平坦な平坦部73dが設けられている。
また、第3実施形態と同様に、ジョイント部73の軸方向の両端に内側に張り出したつば部73a、73bが形成されている。
更に、第4実施形態と同様につば部73aに、切れ込み73cが設けられている。
したがって、第7実施形態は、第2,3,4実施形態の効果を有する。
【実施例】
【0042】
以下、第7実施形態のブレース取付具70の実施例について説明する。
(1)ブレース取付具70の材料として以下のものを用いた。
亜鉛めっき鋼板:SGC400、付着量:Z12、板厚:3.2mm
なお、裸材(めっきがない鋼材)や亜鉛めっき鋼材でもよい。
(2)製造するブレース取付具の寸法は以下とした。
取付部12:w60×H80mm
ジョイント部13:φ26.4×L50mm
ねじ穴部材14:φ20mm ねじ寸法 M10
(3)製造設備は以下のものを用いた。
2,000kNプレス機
【0043】
(4)金型工程として、
図16に示す以下の工程によりブレース取付具70を製造した。実施例では、単発プレス機の7工程であるが、生産量に合わせて鋼帯を用いる順送金型を使用してもよい。
【0044】
(第1工程)
亜鉛めっき鋼板を所定の形状のブランク77を打抜いた。
ここで、ジョイント部形成部73Aは、内部に設置されるねじ穴部材74の円周長さ以下の長さとし、ねじ穴部材74を強く保持するために、ジョイント部73形成後(ねじ穴部材74の周囲を保持した後)に若干隙間が形成されるように、ねじ穴部材34の円周長さより2mm短い幅とした。
【0045】
(第2工程)
ボルト孔75及びつば部74a、74b形成のための打ち抜き(ピアス)を行った(
図16(a))。つば部74aを形成する部分に付いては、座屈を抑制するため、90度毎に5mm幅の切り欠き74cを設置した。
【0046】
(第3工程)
フランジアップ(縁立て)(
図16(b))を行った、
【0047】
(第4工程)
U曲げ加工を行った(
図16(c))。
【0048】
(第5工程)
U曲げ加工されたジョイント部73の内側にねじ穴部材74を設置した(
図16(d))。
ここで、ねじ穴部材74は、供回りを抑制するために周面の一部が直径から0.25mm切除され平坦部74aが作製されたものである。
【0049】
(第6工程)
ジョイント部73の内側にねじ穴部材74を設置した後、ねじ穴部材74を包み込むように丸め加工した(
図16(e))。
【0050】
(第7工程)
ジョイント部73を所定の角度になるように曲げ、ブレース取付具70が完成した(
図16(f))。
【0051】
(4)矩形構造体2として、以下のものを用いた。
集成木材 □80mm W910×H2,730mm
【0052】
(5)ブレース1として、以下のものを用いた。
(ターンバックル胴有でも可)鋼鉄製 φ10×2,350mm ねじ寸法:M10
【0053】
製造したブレース取付具70を、耐力壁3として使用する上記寸法の集成木材で構成された矩形構造体2に、ブレース1が矩形構造体2の対角線の状態に設置できるようにボルトで固定し設置した。
ブレース取付具70に両端部をM10のねじ加工したブレース1を取付けた。ブレース1は中間部にターンバックル胴を使用し、ブレース1の長さを調整した。
【0054】
以上、実施例のブレース取付具70は、溶接を行っていないので、熱歪み等による変形がなかった。
めっき鋼材を用いたが、溶接を行っていないので、溶接後の補修作業(溶接のためにめっきが除去された部分に補修塗料を塗る等)が不要であった。