特許第6750961号(P6750961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750961
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】隠蔽情報基材
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/36 20140101AFI20200824BHJP
   B42D 25/27 20140101ALI20200824BHJP
   B42D 25/351 20140101ALI20200824BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B42D25/36
   B42D25/27
   B42D25/351
   B41M3/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-92026(P2016-92026)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-196880(P2017-196880A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年1月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】丸山 徹
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−103864(JP,A)
【文献】 実開平01−146979(JP,U)
【文献】 特開平09−001975(JP,A)
【文献】 特開2013−022853(JP,A)
【文献】 米国特許第05282651(US,A)
【文献】 米国特許第05484169(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/36
B42D 25/27
B42D 25/351
B41M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が設けられた基材上において、前記情報を覆うように前記基材の厚さ方向における同一領域に、有色成分とマイクロカプセルとが設けられており、
前記マイクロカプセルが、前記有色成分を消色に導くための消色成分を内包し、
前記基材上の、前記有色成分と前記マイクロカプセルとが設けられている領域及びその周縁部が覆われるように、透明又は半透明の保護層で被覆されてなる、隠蔽情報基材。
【請求項2】
情報が設けられた基材上において、前記情報を覆うように前記基材の厚さ方向における同一領域に、有色成分とマイクロカプセルとが設けられており、
前記マイクロカプセルが、前記有色成分を消色に導くための消色成分を内包し、
前記基材、前記有色成分と前記マイクロカプセルとが設けられている領域、第2の粘着剤層、第2の保護層、第1の粘着剤層及び第1の保護層が、これらの厚さ方向に、積層された積層構造体を形成しており、
前記積層構造体を第1の保護層側から見下ろしたときに、第2の粘着剤層、第2の保護層及び第1の粘着剤層は、情報が存在する中央部とその近傍の領域に重ならない様に、前記有色成分と前記マイクロカプセルとが設けられている領域の周縁部に沿って設けられている、隠蔽情報基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽情報基材に関する。
【背景技術】
【0002】
平常時には読み取りができないようにされた情報が、基材上に記録されてなる隠蔽情報基材は、既に幅広く社会に普及しており、実生活においてなくてはならない重要な情報伝達手段となっている。受信者は、このような隠蔽情報基材を受信した場合、適切な手段によって、隠蔽されている秘匿情報を表出させることで、基材上に記録されている情報を取得でき、さらに、送信者からこの隠蔽情報基材を受信するまでの間においては、第三者に秘匿情報が読み取られることを防止できる。
このような隠蔽情報基材の一例としては、抽選番号、文字や図形等の秘密情報の表示部の上に、脆弱に形成された銀色などの隠蔽層を有したカードで、その隠蔽層をコインなどで擦って削り落として、隠蔽されていた秘密情報の表示を認識できる、いわゆるスクラッチカード等が挙げられる。
【0003】
このような隠蔽情報基材を、情報の隠蔽方法の観点から分類して例示すると、基材上の隠蔽すべき情報が、擦過により顕在化するもの(特許文献1及び特許文献2参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−73977号公報
【特許文献2】特許第5031124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2で開示されている隠蔽情報基材では、発色剤により情報を形成させるため、可変印刷を行うことが困難であった。
さらに、特許文献1で開示されている隠蔽情報基材は、擦られることにより発色する特殊な材料を用い、発色させない部分で隠蔽情報を構成する構造となっており、隠蔽情報の形成を可変で行なうことが困難であった。また、特許文献2で開示されている隠蔽情報基材は、擦ることにより得られる隠蔽情報をネガパターンと下地層により構成する構造となっており、構成が煩雑なため隠蔽情報の形成を可変で行なうことが困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材上の情報を隠蔽して構成された隠蔽情報基材において、隠蔽情報の取得を容易とすることが可能であり、汎用性が高い隠蔽情報基材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1態様は、情報が設けられた基材上において、前記情報を覆うように前記基材の厚さ方向における同一領域に、有色成分とマイクロカプセルとが設けられており、前記マイクロカプセルが、前記有色成分を消色に導くための消色成分を内包し、前記基材上の、前記有色成分と前記マイクロカプセルとが設けられている領域及びその周縁部が覆われるように、透明又は半透明の保護層で被覆されてなる、隠蔽情報基材を提供する。
本発明の第2態様は、情報が設けられた基材上において、前記情報を覆うように前記基材の厚さ方向における同一領域に、有色成分とマイクロカプセルとが設けられており、前記マイクロカプセルが、前記有色成分を消色に導くための消色成分を内包し、前記基材、前記有色成分と前記マイクロカプセルとが設けられている領域、第2の粘着剤層、第2の保護層、第1の粘着剤層及び第1の保護層が、これらの厚さ方向に、積層された積層構造体を形成しており、前記積層構造体を第1の保護層側から見下ろしたときに、第2の粘着剤層、第2の保護層及び第1の粘着剤層は、情報が存在する中央部とその近傍の領域に重ならない様に、前記有色成分と前記マイクロカプセルとが設けられている領域の周縁部に沿って設けられている、隠蔽情報基材を提供する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基材上の情報を隠蔽して構成された隠蔽情報基材において、隠蔽情報の取得を容易とすることが可能であり、汎用性が高い隠蔽情報基材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の隠蔽情報基材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の隠蔽情報基材の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の隠蔽情報基材のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の隠蔽情報基材のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の隠蔽情報基材のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<隠蔽情報基材>>
本発明の一実施形態に係る隠蔽情報基材は、情報が設けられた基材上において、前記情報を覆うように前記基材の厚さ方向における同一領域上に、有色成分とマイクロカプセルとが設けられており、前記マイクロカプセルが、前記有色成分を消色に導くための消色成分を内包するものである。
本発明の隠蔽情報基材において、有色成分とマイクロカプセルは、例えば、前記基材の厚さ方向において、互いに重なる位置に存在している。
【0011】
なお、本明細書において、「マイクロカプセル」とは、特に断りのない限り、複数個のマイクロカプセルの集合体を意味するものとする。ここで、マイクロカプセルの集合体には、例えば、数百〜数万個等の多数のマイクロカプセルの集合体も包含される。
【0012】
本発明の隠蔽情報基材は、基材上を押圧することにより隠蔽情報の取得を可能とし、情報取得の工程が簡略化される。また、この隠蔽情報基材は、従来の隠蔽情報基材とは異なり、削りカスが生じる等の衛生面の問題を生じない。したがって、本発明の隠蔽情報基材を用いることで、隠蔽情報基材に記録されている秘匿情報を容易に取得できる。また、本発明の隠蔽情報基材は、隠蔽すべき情報を基材上に通常の方法で記録できるため、情報の記録方法に制約がなく、さらに安価な製造が可能であり、前記隠蔽情報基材は汎用性が高い。
【0013】
なお、本明細書においては、以下、単なる「情報の取得」とは、本発明の隠蔽情報基材を用いた場合に可能となる情報の取得を意味し、その例としては、目視や、CCDカメラ又はスキャナの利用等による、光学像の取得が挙げられる。
【0014】
図1は、本発明の隠蔽情報基材の一実施形態を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、図1以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0015】
ここに示す隠蔽情報基材101は、基材9の、前記情報90が設けられている領域上に、前記有色成分を含有する有色層15と、マイクロカプセル(図示略)を含有するマイクロカプセル含有層12と、が積層されてなるものである。
すなわち、隠蔽情報基材101は、有色層15、マイクロカプセル含有層12及び基材9が、この順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、有色成分とマイクロカプセルとが、基材の厚さ方向における同一領域に設けられ、互いに重なる位置に存在しているものである。
【0016】
基材9の構成材料及び色は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
基材9の好ましい構成材料としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、レジンコート紙、合成紙等の紙類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の合成樹脂等が挙げられる。
【0017】
基材9の構成材料が前記合成樹脂である場合、基材9の情報が設けられた表面はマット処理、コロナ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0018】
基材9の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、ここに示すようなシート状の基材9の厚さは、通常10〜1000μmであることが好ましいが、これは一例である。
【0019】
基材9は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるもの(複数層が積層されたもの)でもよい。基材9が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
なお、本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
基材9が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材9の厚さとなるようにするとよい。
【0020】
基材9に記録されている情報90は、例えば、紫外線硬化型インクや酸化重合型のオフセット印刷用インク等の通常のインクにより形成された印刷層等、又はトナー、インクジェット用顔料インク、インクジェット用染料インクにより形成された印字層等の公知の方法で形成されたものでよく、特に限定されない。例えば、情報90の構成材料は不透明であるなど、情報90の存在を認識できるものであればよく、目的に応じて任意に選択でき、例えば、その色は、基材9の色を考慮して、任意に選択できる。情報90の形状も、例えば、文字、バーコード、QRコード(登録商標)、画像等、目的に応じて任意に選択できる。このように、情報90の形成に制約がない点で、隠蔽情報基材101の使用は、従来の隠蔽情報基材の使用よりも顕著な利点を有する。
【0021】
基材9に記録されている情報90の厚さ(高さ)は、特に限定されず、その構成材料や目的に応じて任意に選択できるが、0.01〜200μmであることが好ましく、0.05〜80μmであることがより好ましく、0.1〜5μmであることが特に好ましい。
【0022】
有色層15は、有色層15側から隠蔽情報基材101を見たときに、基材上の情報の取得を不可能にするか又は困難にする程度に、不透明なものである。
【0023】
有色層15は、これを有色化するための有色成分を含有する。
このような有色層15としては、例えば、発色している状態のロイコ色素を含有する層が挙げられる。ロイコ色素は、公知のものでよく、発色している状態のロイコ色素とは、顕色剤との反応により発色しているものである。
【0024】
有色層15の有色成分の含有量は、1〜15g/mであることが好ましく、3〜5g/mであることがより好ましい。
【0025】
有色層15の厚さは、特に限定されないが、0.1〜30μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。有色層15の厚さが前記下限値以上であることで、情報媒体9上の情報90の隠蔽効果がより高くなる。また、有色層15の厚さが前記上限値以下であることで、有色層15が過剰な厚さとなることが避けられ、例えば、隠蔽情報基材101の情報の取得がより容易となる。
【0026】
有色層15は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるもの(複数層が積層されたもの)でもよい。有色層15が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
有色層15が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい有色層15の厚さとなるようにするとよい。
【0027】
マイクロカプセル含有層12は、消色成分を内包するマイクロカプセル(図示略)を含有する。マイクロカプセル含有層12は、例えば、マイクロカプセルが破壊され内包されていた消色成分が放出される前においては、透明又は半透明であってもよく、不透明であってもよく、少なくともマイクロカプセルが破壊され内包されていた消色成分が放出された後に、透明又は半透明であれば特に限定されない。
なお、本明細書において、「透明又は半透明である」とは、特に断りのない限り、隠蔽情報基材における情報の隠蔽効果が発現しない程度の透明性を有することを意味し、例えば、JIS K 7136に準拠して測定された全光線透過率が35%以上であることを意味する。そして、「不透明である」とは、この条件を満たさないことを意味する。
前記マイクロカプセルは、外殻となる膜が消色成分を包み込んだ構成を有することで消色成分を内包しており、後述する公知の方法で形成できる。
【0028】
前記マイクロカプセルは、前記有色成分を消色に導くための消色成分を内包する。
前記消色成分は、有色層15に到達して、有色層15を消色化し、透明又は半透明とする。消色成分は、例えば、有色層15が前記ロイコ色素を含有する層である場合には、顕色剤に作用して、ロイコ色素を発色状態から消色状態へと変化させる。
なお、本明細書において、「有色層の消色化」とは、有色層が完全な無色になることだけでなく、有色層による情報の隠蔽効果が解消される程度に、有色層の色味が薄くなることも意味し、有色層が実質的に色味を有する状態となることも包含する。
【0029】
マイクロカプセル含有層12のマイクロカプセルの含有量が多い場合に、消色成分を内包している状態では、光の乱反射により、マイクロカプセル含有層12を不透明とすることができる。一方、このように不透明なマイクロカプセル含有層12は、マイクロカプセルが破壊され内包されていた消色成分が放出されると、光の乱反射が弱まり、透明又は半透明とすることができる。
【0030】
マイクロカプセル含有層12のマイクロカプセルの含有量は、マイクロカプセル含有層12の厚さ(換言すると、後述するマイクロカプセル含有組成物等の塗工量)に応じて異なるが、1〜20g/mであることが好ましく、3〜15g/mであることがより好ましく、4〜10g/mであることが特に好ましい。
なお、ここで示した含有量は一例であり、上述のような作用で有色層15が消色化される限りにおいて、例えば、マイクロカプセル含有層12の厚さや、その他の条件を考慮して、マイクロカプセルの前記含有量は、適宜調節することができる。
【0031】
マイクロカプセル含有層12は、マイクロカプセルと、マイクロカプセル化するための乳化材のみからなるものであってもよいし、マイクロカプセルの分散媒など、マイクロカプセル及び乳化剤以外の成分を含有していてもよい。
マイクロカプセル分散媒は、公知のものでよく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン無水マレイン酸の加水分解物等が挙げられる。
【0032】
本発明において、マイクロカプセル1粒子の平均粒子径は、その内包する成分によらず、1〜10μmであることが好ましい。マイクロカプセルの平均粒子径が前記下限値以上であることで、マイクロカプセル含有層の押圧時におけるマイクロカプセルの破壊が、適正な範囲で容易となる。また、マイクロカプセルの平均粒子径が前記上限値以下であることで、マイクロカプセル含有層の非押圧時におけるマイクロカプセルの安定性が向上する。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、コールターカウンターを用いる方法で測定された、体積累積分布の中央値D50を意味する。
【0033】
隠蔽情報基材101を押圧すると、マイクロカプセル含有層12も押圧され、その圧力によってマイクロカプセルの内部から外部へ消色成分が放出され、この放出された消色成分が有色層15に到達する。すると、平常時には不透明で情報90を隠蔽していた有色層15が、この消色成分の作用により消色する。その結果、隠蔽情報基材101の一部の構造を取り除かなくても、情報90を取得できるようになる。
【0034】
なお、本明細書においては、マイクロカプセル含有層において、マイクロカプセルが内包物を放出した後の隠蔽情報基材も、基材及びマイクロカプセル含有層を備えた構成を維持している限り、便宜上、「隠蔽情報基材」と称する。
【0035】
消色成分は、上記のような特性を有するものであれば、特に限定されず、その具体例としては、例えば、有色層15が前記ロイコ色素を含有する層である場合には、顕色剤に作用して、ロイコ色素を発色状態から消色状態へと変化させるもの等が挙げられる。
このようなロイコ色素を消色する消色成分は、公知のものでよく、具体的には、例えば、エステル(エステル結合を有する化合物)、ケトン(カルボニル基を有する化合物)、エーテル(エーテル結合を有する化合物)、脂肪族アルコール(水酸基を有する脂肪族化合物)、アミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
【0036】
また、消色成分の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、アジピン酸ジブチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、酢酸ブチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ヘキシルアルコール、シクロヘキサン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0037】
消色成分は、常温常圧における沸点が、250℃以上であるものが好ましい。このような沸点を有する消色成分は、マイクロカプセルから放出された後も、揮発し難いことで、隠蔽情報基材101を、秘匿情報が表出された状態で維持できる時間がより長くなる。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
【0038】
マイクロカプセル含有層12の厚さは、特に限定されないが、1〜40μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。マイクロカプセル含有層12の厚さが前記下限値以上であることで、マイクロカプセル含有層12がその機能を発現するのに十分な量のマイクロカプセルを含有することが容易となる。また、マイクロカプセル含有層12の厚さが前記上限値以下であることで、マイクロカプセル含有層12が過剰な厚さとなることが避けられ、例えば、隠蔽情報基材101を押圧したときに、マイクロカプセルの消色成分の放出が容易となり、隠蔽情報基材101の情報90の取得がより容易となる。
【0039】
マイクロカプセル含有層12は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるもの(複数層が積層されたもの)でもよい。マイクロカプセル含有層12が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
マイクロカプセル含有層12が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましいマイクロカプセル含有層12の厚さとなるようにするとよい。
【0040】
隠蔽情報基材101は、情報90が設けられた基材9上において、前記情報90を覆うように前記基材9の厚さ方向における同一領域上に、有色成分とマイクロカプセルとが設けられている。
隠蔽情報基材101において、有色成分とマイクロカプセルとは、例えば、基材9の厚さ方向において、互いに重なる位置に存在している。
【0041】
隠蔽情報基材101は、平常時は、有色層15が不透明であるため、基材9に記録されている情報90は有色層15で被覆され、隠蔽されていることにより、取得できない。
一方、隠蔽情報基材101を押圧することで、マイクロカプセル含有層12が押圧されると、その中のマイクロカプセルから消色成分が放出され、この消色成分が有色層15に到達し、有色層15が消色化されて透明又は半透明となる。したがって、隠蔽情報基材101の一部の構造を取り除かなくても、それまで隠蔽されていた情報を取得できるようになる。
【0042】
図2は、本発明の隠蔽情報基材の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す隠蔽情報基材201は、マイクロカプセル含有層12と有色層15との配置位置が逆である点以外は、図1に示す隠蔽情報基材101と同じものである。
すなわち、隠蔽情報基材201は、基材9、有色層15及びマイクロカプセル含有層12が、この順に、これらの厚さ方向において積層されてなる。
【0043】
隠蔽情報基材101と同様に、隠蔽情報基材201は、情報90が設けられた基材9上において、前記情報90を覆うように前記基材9の厚さ方向における同一領域に、有色成分とマイクロカプセルとが設けられている。
隠蔽情報基材201において、有色成分とマイクロカプセルとは、例えば、基材9の厚さ方向において、互いに重なる位置に存在している。
【0044】
隠蔽情報基材201は、隠蔽情報基材101と同様の作用により、平常時には、基材9に記録されている情報90は隠蔽され、隠蔽情報基材201を押圧し、マイクロカプセル含有層12が押圧された場合には、情報90を取得できるようになる。
【0045】
図3は、本発明の隠蔽情報基材のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す隠蔽情報基材301は、マイクロカプセル含有層12及び有色層15を備えるのに代えて、有色成分及びマイクロカプセルをともに含有するマイクロカプセル含有有色層(以下、「マイクロカプセル含有有色層」と称する)16を備える点以外は、図1に示す隠蔽情報基材101と同じものである。マイクロカプセル含有有色層は、有色成分を含有するマイクロカプセル含有層ということもできる。
すなわち、隠蔽情報基材301は、情報90が設けられている基材9と、マイクロカプセル含有有色層16と、を備えてなる。換言すると、隠蔽情報基材301は、基材9及びマイクロカプセル含有有色層16が、これらの厚さ方向において積層されてなる。
【0046】
隠蔽情報基材301は、情報90が設けられた基材9上において、前記情報90を覆うように前記基材9の厚さ方向における同一領域に、有色成分とマイクロカプセルとが設けられている。
【0047】
マイクロカプセル含有有色層16は、隠蔽情報基材101における有色層15と同様に、発色している状態のロイコ色素等の、有色化するための有色成分を含有する。さらに、マイクロカプセル含有有色層16は、それ自体を消色化するための前記消色成分を内包するマイクロカプセルを含有する。
【0048】
隠蔽情報基材301が情報媒体に貼付されて隠蔽情報媒体を構成している場合、マイクロカプセル含有有色層16は、マイクロカプセル含有有色層16側から隠蔽情報媒体を見たときに、情報媒体上の情報の取得を不可能にするか又は困難にする程度に、不透明なものである。
【0049】
マイクロカプセル含有有色層16のマイクロカプセルの含有量は、上述のマイクロカプセル含有層12のマイクロカプセルの含有量と同様である。
マイクロカプセル含有有色層16の有色成分の含有量は、上述の有色層15の有色成分の含有量と同様である。
【0050】
マイクロカプセル含有有色層16の厚さは、特に限定されないが、1〜100μmであることが好ましく、1〜35μmであることがより好ましく、4〜20μmであることが特に好ましい。マイクロカプセル含有有色層16の厚さが前記下限値以上であることで、媒体上の情報の隠蔽効果がより高くなるとともに、マイクロカプセル含有有色層16がその機能を発現するのに十分な量のマイクロカプセルを含有することが容易となる。また、マイクロカプセル含有有色層16の厚さが前記上限値以下であることで、マイクロカプセル含有有色層16が過剰な厚さとなることが避けられ、例えば、隠蔽情報基材301を押圧したときに、マイクロカプセルの消色成分の放出が容易となり、隠蔽情報基材301の情報の取得がより容易となる。
【0051】
マイクロカプセル含有有色層16は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるもの(複数層が積層されたもの)でもよい。マイクロカプセル含有有色層16が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
マイクロカプセル含有有色層16が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましいマイクロカプセル含有有色層16の厚さとなるようにするとよい。
【0052】
隠蔽情報基材301における基材9は、隠蔽情報基材101における基材9と同じものである。
【0053】
隠蔽情報基材301は、平常時は、マイクロカプセル含有有色層16が不透明であるため、基材9に記録されている情報90はマイクロカプセル含有有色層16で被覆され、隠蔽されていることにより、取得できない。
一方、隠蔽情報基材301を押圧することで、マイクロカプセル含有有色層16が押圧されると、その中のマイクロカプセルから消色成分が放出され、この消色成分の作用により、マイクロカプセル含有有色層16自体が消色化されて透明又は半透明となる。したがって、隠蔽情報基材301の一部の構造を取り除かなくても、それまで隠蔽されていた情報を取得できるようになる。
【0054】
図1〜3に示す隠蔽情報基材は、有色成分とマイクロカプセルとを含有する領域上に、さらに保護層を備えることが好ましい。
図4は、図1に示す隠蔽情報基材がさらに保護層を備えたものを模式的に示す断面図である。
【0055】
図4に示す隠蔽情報基材401は、基材9、マイクロカプセル含有層12及び有色層15の他に、粘着剤層13及び保護層17を備える点以外は、図1に示す隠蔽情報基材101と同じものである。
すなわち、隠蔽情報基材401は、基材9と、マイクロカプセル含有層12と、有色層15と、粘着剤層13と、保護層17と、を備えてなる。換言すると、隠蔽情報基材401は、基材9、マイクロカプセル含有層12、有色層15、粘着剤層13及び保護層17が、これらの厚さ方向において積層されてなる。
【0056】
粘着剤層13は、保護層17をマイクロカプセル含有層12及び有色層15からなる隠蔽層上に貼付するためのものである。
粘着剤層13は、透明又は半透明であれば特に限定されず、公知のものであればよい。
【0057】
粘着剤層13は、例えば、粘着性樹脂等の粘着成分を含有して構成される。
前記粘着成分の接着強度は、目的に応じて適宜調節すればよく、粘着剤層13は、再剥離可能なものであってもよいし、再剥離不能で永久接着するものであってもよい。ここで、「再剥離」とは、接着対象面の状態を損ねることなく、剥離可能であることを意味する。
粘着剤層13は、情報90を取得するためには再剥離不能であっても何ら問題ないが、再剥離可能であれば、保護層17のマイクロカプセル含有層12及び有色層15からなる隠蔽層上への貼付をやり直すことが可能となり、取り扱い性が向上する。一方、粘着剤層13が再剥離不能であれば、例えば、隠蔽情報基材401の移送中に、保護層17の剥離が高度に抑制される。
【0058】
粘着剤層13の厚さは、特に限定されないが、1〜400μmであることが好ましく、1〜150μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。
粘着剤層13の厚さが前記下限値以上であることで、保護層17をより安定してマイクロカプセル含有層12及び有色層15からなる隠蔽層上に貼付できる。また、粘着剤層13の厚さが前記上限値以下であることで、粘着剤層13が過剰な厚さとなることが避けられ、例えば、後述するような情報90の取得がより容易となる。
【0059】
粘着剤層13は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるもの(複数層が積層されたもの)でもよい。粘着剤層13が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
粘着剤層13が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい粘着剤層13の厚さとなるようにするとよい。
【0060】
保護層17は、マイクロカプセル含有層12及び有色層15からなる隠蔽層を保護するためのものである。特に、保護層17は、マイクロカプセル含有層12のマイクロカプセルが内包する消色成分が揮発し、消色した有色層15が再び有色化することを防ぐものが好ましい。また、粘着性の高い隠蔽層は傷が入りやすくゴミが付着しやすいため、このようなことを防ぐものが好ましい。
保護層17は、透明又は半透明であれば特に限定されず、公知のものであればよい。
保護層17は、例えば、粘着防止性及び非ブロッキング性を有する透明な樹脂等の保護成分を含有して構成される。非ブロッキング性を有する透明な樹脂としては、例えば、紫外線硬化型の樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂、ニトロセルロース、マレイン酸樹脂等の溶剤型熱可塑性樹脂;ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂;各種のアクリル共重合樹脂やポリウレタン等コロイダルディスパージョン又はエマルジョンの形になる樹脂等が挙げられる。
なお、保護層17は、マイクロカプセルが破壊されて、マイクロカプセルが内包する消色成分が放出された際に、消色成分が吸収されないものであることが好ましく、消色成分が吸収されるものである場合は、消色成分が有色層に作用し有色層を消色化し透明又は半透明とする作用に影響を与えない程度のものであることが好ましい。
また、保護層17は、マイクロカプセルの破壊に必要な圧力が保護層17上に加わった際に、マイクロカプセルまで圧力が伝わる程度の柔軟性を有することが好ましい。
【0061】
保護層17の厚さは、特に限定されないが、1〜1000μmであることが好ましく、5〜250μmであることがより好ましい。
保護層17の厚さが前記下限値以上であることで、マイクロカプセルに含まれる消色成分の揮発を抑制するができ、基材上の情報の隠蔽効果がより高くなる。さらに、保護層17の厚さが前記下限値以上であることで、保護効果がより優れる。また、保護層17の厚さが前記上限値以下であることで、保護層17が過剰な厚さとなることが避けられ、例えば、隠蔽情報基材401を押圧したときに、マイクロカプセルの消色成分の放出が容易となることもあり、隠蔽情報基材401の情報90の取得がより容易となる。
【0062】
保護層17は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるもの(複数層が積層されたもの)でもよい。保護層17が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
保護層17が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい保護層17の厚さとなるようにするとよい。
【0063】
隠蔽情報基材401における基材9は、隠蔽情報基材101における基材9と同じものである。
【0064】
図4に示す本発明の隠蔽情報基材において、基材9上の有色成分とマイクロカプセルとが設けられている領域以外の領域に粘着剤層を形成することで、保護層を隠蔽情報基材401に固定することもできる。
また、保護層の形成においては、図1図3における隠蔽情報基材101、201及び301の最表面のうち基材とは異なる面に、予め粘着剤を含有させておいてもよい。より具体的には、例えば、図1における有色層15に粘着剤を含有させることが考えられる。このような構成により、保護層を有色層に張り合わせることが可能となる。
【0065】
図5は、本発明の隠蔽情報基材のさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図5は、図4と同様に、図1に示す隠蔽情報基材がさらに保護層を備えたものを模式的に示す断面図である。
【0066】
図5に示す隠蔽情報基材501は、基材9、マイクロカプセル含有層12及び有色層15の他に、第1の粘着剤層13a、第2の粘着剤層13b、第1の保護層17a及び第2の保護層17bを備える点以外は、図1に示す隠蔽情報基材101と同じものである。
より具体的には、隠蔽情報基材501は、基材9、マイクロカプセル含有層12、有色層15、第2の粘着剤層13b、第2の保護層17b、第1の粘着剤層13a及び第1の保護層17aが、これらの厚さ方向において積層され、ただし、これらの積層構造体を第1の保護層17a側から見下ろしたときに、情報90が存在する中央部とその近傍の領域には、第2の粘着剤層13b、第2の保護層17b及び第1の粘着剤層13aが設けられておらず、有色層15と第1の保護層17aとの間は中空部となっている。換言すると、前記積層構造体を第1の保護層17a側から見下ろしたときに、第2の粘着剤層13b、第2の保護層17b及び第1の粘着剤層13aは、情報90が存在する中央部とその近傍の領域に重ならない様に、有色層15の周縁部に沿って設けられている。
【0067】
第1の粘着剤層13aは、第1の保護層17aを第2の保護層17b上に貼付するためのものである。
一方、第2の粘着剤層13bは、第2の保護層17bをマイクロカプセル含有層12及び有色層15からなる隠蔽層上に貼付するためのものである。
第1の粘着剤層13a及び第2の粘着剤層13bは、隠蔽情報基材401における粘着剤層13と構成材料が同じものである。また、第1の粘着剤層13a及び第2の粘着剤層13bに含まれる粘着成分は同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0068】
第1の粘着剤層13a及び第2の粘着剤層13bの厚さは、特に限定されないが、合計の厚さが、上記の好ましい粘着剤層13の厚さとなるようにするとよい。
【0069】
第1の保護層17aは、マイクロカプセル含有層12及び有色層15からなる隠蔽層を保護するためのものであって、特に、マイクロカプセル含有層12のマイクロカプセルが内包する消色成分の揮発の防止、並びに粘着性の高い隠蔽層への傷及びゴミの付着の防止を目的としている。
一方、第2の保護層17bは、第2の保護層17bの厚みによって形成された中空部により、マイクロカプセル含有層12のマイクロカプセルを割れにくくするためのものである。
第1の保護層17a及び第2の保護層17bは、隠蔽情報基材401における保護層17と構成材料が同じものである。また、第1の保護層17a及び第2の保護層17bに含まれる保護成分は同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0070】
第1の保護層17a及び第2の保護層17bの厚さは、特に限定されないが、合計の厚さが、上記の好ましい保護層17の厚さとなるようにするとよい。
【0071】
隠蔽情報基材501における基材9は、隠蔽情報基材101における基材9と同じものである。
【0072】
本発明の隠蔽情報基材は、図1図5に示すものに限定されず、例えば、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1図5に示すものにおいて一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0073】
例えば、ここまでは隠蔽情報基材として、基材、マイクロカプセル含有層及び有色層を備えたものや、これらの有色層及びマイクロカプセル含有層に代えてマイクロカプセル含有有色層を備えたもの、基材、マイクロカプセル含有層、有色層、粘着剤層及び保護層を備えたものについて説明した。本発明の隠蔽情報基材は、これらの層のいずれにも該当しない、他の層を備えてなるものでもよく、前記他の層の配位位置は、その目的に応じて任意に選択できる。
ただし、本発明の効果がより顕著に得られる点から、本発明の隠蔽情報基材は、前記他の層を備えていないものが好ましい。
【0074】
<<隠蔽情報基材の製造方法>>
本発明の隠蔽情報基材は、これを構成する各層を、適した配置位置となるように積層することで、製造できる。
例えば、図1に示す隠蔽情報基材101は、基材9、マイクロカプセル含有層22及び有色層15を、この順に、これらの厚さ方向において積層することで、製造できる。
【0075】
基材9に記録されている情報90は、例えば、通常のインクにより形成された印刷層等、公知の方法で形成でき、特に限定されない。例えば、情報90の構成材料は、不透明であるなど、情報90の存在を認識できるものであればよく、目的に応じて任意に選択でき、例えば、その色は、基材9の色を考慮して、任意に選択できる。情報90の形状も、例えば、文字、バーコード、QRコード(登録商標)、画像等、目的に応じて任意に選択できる。このように、情報90の形成に制約がない点で、本発明の隠蔽情報基材は、従来の隠蔽情報基材よりも顕著な利点を有する。
【0076】
前記マイクロカプセル含有層は、公知の方法により形成できる。例えば、芯物質となる前記消色成分の存在下で、膜形成成分により外殻となる膜を形成することで、これら芯物質を内包するマイクロカプセルを作製し、このようなマイクロカプセルを含有する分散液等の、マイクロカプセル含有組成物を目的とする箇所に塗工して、乾燥させることで、前記マイクロカプセル含有層を形成できる。
【0077】
消色成分を内包するマイクロカプセルは、例えば、化学的方法、物理化学的方法、又は物理的及び機械的方法等により作製できる。
【0078】
マイクロカプセルの作製方法のうち、前記化学的方法としては、例えば、界面重合法、in situ重合法、液中硬化被膜法等により、膜形成成分を作製し、カプセル化する方法が挙げられる。
【0079】
前記界面重合法としては、例えば、多塩基酸ハライドとポリオールとを界面重合させてポリエステルからなる膜を形成する方法、多塩基酸ハライドとポリアミンとを界面重合させてポリアミドからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリオールとを界面重合させて、ポリウレタンからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリアミンとを界面重合させて、ポリウレアからなる膜を形成する方法等が挙げられる。
【0080】
前記in situ重合法としては、例えば、メラミン及び尿素から選ばれる1種とホルマリン又はこれらの初期重縮合物と、スチレン無水マレイン酸共重合体の部分加水分解物との共重合体からなる膜を形成する方法、スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させてポリスチレン共重合体からなる膜を形成する方法、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとを共重合させてポリメタクリレート共重合体からなる膜を形成する方法等が挙げられる。
【0081】
前記液中硬化被膜法としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂又はアルギン酸ソーダ等を液中で硬化させる方法等が挙げられる。
【0082】
マイクロカプセルの作製方法のうち、物理化学的方法としては、例えば、単純コアセルベーション法;複合コアセルベーション法;pHコントロール法;非溶媒添加法等の水溶液からの相分離法や、有機溶媒からの相分離法等のコアセルベーション法等が挙げられる。これら物理化学的方法で用いる前記膜形成成分としては、例えば、ゼラチン、セルロース、ゼラチン−アラビアゴム等が挙げられる。
また、物理化学的方法としては、例えば、ポリスチレン等を用いる界面沈降法等も挙げられる。
【0083】
マイクロカプセル化の方法のうち物理的及び機械的方法としては、例えば、スプレードライング法、気中懸濁被膜法、真空蒸着被膜法、静電的合体法、融解分散冷却法、無機質壁カプセル化法等が挙げられる。これら物理的及び機械的方法で用いる前記膜形成成分としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0084】
前記マイクロカプセル含有層の厚さは、例えば、マイクロカプセル含有組成物の塗工量や、塗工に用いるマイクロカプセル含有組成物のマイクロカプセルの含有量等を調節することで、調節できる。
【0085】
前記有色層は、公知の方法により形成でき、例えば、含有成分が異なる点以外は、前記粘着剤層の場合と同じ方法で形成できる。すなわち、例えば、有色成分が発色している状態のロイコ色素である場合には、ロイコ色素及び顕色剤を含有する有色組成物を用い、これを目的とする箇所に塗工して、乾燥させることで、有色層を形成できる。
有色層の厚さは、例えば、有色組成物の塗工量や、塗工に用いる有色組成物の有色成分の含有量等を調節することで、調節できる。
【0086】
マイクロカプセル含有有色層は、例えば、前記マイクロカプセル含有組成物に、さらに有色成分を配合して得られたマイクロカプセル含有有色組成物を用い、これを目的とする箇所に塗工して、乾燥させることで形成できる。
マイクロカプセル含有有色層の厚さは、例えば、マイクロカプセル含有有色組成物の塗工量や、塗工に用いるマイクロカプセル含有有色組成物のマイクロカプセル又は有色成分の含有量等を調節することで、調節できる。
【0087】
前記粘着剤層は、公知の方法により形成できる。例えば、粘着性樹脂等の粘着成分を含有する粘着剤組成物を用い、これを目的とする箇所に塗工して、乾燥させることで、粘着剤層を形成できる。
粘着剤層の厚さは、例えば、粘着剤組成物の塗工量や、塗工に用いる粘着剤組成物の粘着成分の含有量等を調節することで、調節できる。
【0088】
前記保護層は、公知の方法により形成できる。例えば、粘着防止性及び非ブロッキング性を有する透明な樹脂等の保護成分を含有する保護剤組成物を用い、これを目的とする箇所に塗工して、乾燥させることで、保護層を形成できる。
保護層の厚さは、例えば、保護層の塗工量や、塗工に用いる保護剤組成物の保護成分の含有量等を調節することで、調節できる。
【0089】
このように、基材以外の各層は、ここまでに説明した層に限らず、いずれも、その層の構成に必要な成分を含有する各種組成物を用い、これを目的とする箇所に塗工して、乾燥させることで形成でき、各層の厚さは、前記組成物の塗工量や、塗工に用いる前記組成物の含有成分の含有量等を調節することで、調節できる。
【0090】
また、基材以外の各層は、積層すべき箇所に前記組成物を塗工して、乾燥させることで、直接形成してもよいし、例えば、剥離フィルムの剥離処理面に前記組成物を塗工して、乾燥させることで、あらかじめ形成しておいた層を、積層すべき箇所に貼り合わせて転写することで、形成してもよい。
【0091】
<<隠蔽情報基材の使用方法>>
本発明の隠蔽情報基材は、隠蔽情報の取得に利用できる。
すなわち、隠蔽情報基材は、隠蔽情報基材を押圧して有色層を消色化することで、隠蔽情報基材の一部の構造を取り除かなくても、隠蔽されていた情報を取得できる。
このように、本発明の隠蔽情報基材は、情報の記録方法には制約がなく、安価に製造でき、汎用性が高い。また、従来の隠蔽情報基材とは異なり、隠蔽層を取り除く操作が不要となり、取り扱いが容易となる。さらに、隠蔽層の一部が破れる等、隠蔽層を取り除くときに生じた不具合が基材に設けられた情報上に存存してしまうことにより、秘匿情報の取得が困難になることもない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、スクラッチカード等をはじめとする、基材上の情報が隠蔽されている隠蔽情報基材からの、隠蔽情報の取得に利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
101,201,301,401,501・・・隠蔽情報基材、9・・・基材、90・・・情報、12・・・マイクロカプセル含有層、13・・・粘着剤層、13a・・・第1の粘着剤層、13b・・・第2の粘着剤層、14・・・マイクロカプセル含有粘着剤層、15・・・有色層、16・・・マイクロカプセル含有有色層、17・・・保護層、17a・・・第1の保護層、17b・・・第2の保護層。
図1
図2
図3
図4
図5