特許第6751005号(P6751005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6751005-比例弁 図000002
  • 特許6751005-比例弁 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751005
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】比例弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20200824BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20200824BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20200824BHJP
   F23K 5/00 20060101ALN20200824BHJP
【FI】
   F16K1/32 B
   F16F1/12 N
   F16K31/06 340
   !F23K5/00 301C
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-211278(P2016-211278)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2018-71640(P2018-71640A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】大稲 高裕
(72)【発明者】
【氏名】宇於崎 充
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−137879(JP,A)
【文献】 特開2015−169270(JP,A)
【文献】 特開2007−162911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00− 1/54
F16F 1/00− 6/00
F16K 31/06−31/11
F23K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側の流入室と、下側の流出室と、流入室と流出室との間の弁座とを有する弁筐と、流入室の上端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結された、弁座の流出室側の面に対向する弁体と、弁体に下方への押圧力を付与すると共にこの押圧力を可変するソレノイドとを備える比例弁であって、
弁体に設けた上側のバネ受け座と流出室に設けた下側のバネ受け座との間に、弁体を上方に付勢するコイルバネを介設するものにおいて、
各バネ受け座に、コイルバネに内挿される突起部が設けられ、この突起部は、コイルバネの両端の各座巻部の内周面に近接対向してコイルバネを芯決めする芯決め部を有し、各バネ受け座に設けられた突起部の芯決め部の軸長は、各座巻部の軸長以下であることを特徴とする比例弁。
【請求項2】
請求項1記載の比例弁であって、前記弁筐は、前記流入室及び前記弁座が形成された上部筐体と、前記流出室が形成された下部筐体とを結合することで構成されるものにおいて、前記上側と下側の両バネ受け座の少なくとも一方のバネ受け座に設けられた前記突起部の芯決め部は、前記座巻部に所定量の遊びを持って内挿されるように形成されることを特徴とする比例弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調節のために使用する比例弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の比例弁として、上側の流入室と、下側の流出室と、流入室と流出室との間の弁座とを有する弁筐と、流入室の上端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結された、弁座の流出室側の面に対向する弁体と、弁体に下方への押圧力を付与すると共にこの押圧力を可変するソレノイドとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、比例弁に流れる流体の流量がソレノイドへの通電電流値に応じて変化すると共に、流入室の流体圧(一次圧)が変動しても、ダイヤフラムに連動して弁体が変位し、一次圧の変動による流量の変動が防止される。
【0003】
また、このものでは、弁体に設けた上側のバネ受け座と流出室に設けた下側のバネ受け座との間に、弁体を上方に付勢するコイルバネを介設し、コイルバネの付勢力により弁体の自重をキャンセルして、自重の影響で制御精度が悪化することを回避している。
【0004】
ここで、弁体にコイルバネにより所定の付勢力を作用させるには、各バネ受け座に、コイルバネの内周面に近接対向してコイルバネを芯決めする芯決め突起を設け、コイルバネが傾かないようにする必要がある。然し、芯決め突起を設けると、コイルバネの伸縮時に変位するバネ線材の部分が芯決め突起に接触して摺動抵抗が発生し、制御精度に悪影響が及ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−35572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、制御精度が良好に維持されるようにした比例弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、上側の流入室と、下側の流出室と、流入室と流出室との間の弁座とを有する弁筐と、流入室の上端面を閉塞するダイヤフラムと、ダイヤフラムに連結された、弁座の流出室側の面に対向する弁体と、弁体に下方への押圧力を付与すると共にこの押圧力を可変するソレノイドとを備える比例弁であって、弁体に設けた上側のバネ受け座と流出室に設けた下側のバネ受け座との間に、弁体を上方に付勢するコイルバネを介設するものにおいて、各バネ受け座に、コイルバネに内挿される突起部が設けられ、この突起部は、コイルバネの両端の各座巻部の内周面に近接対向してコイルバネを芯決めする芯決め部を有し、各バネ受け座に設けられた突起部の芯決め部の軸長は、各座巻部の軸長以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、各バネ受け座に設けた突起部の芯決め部によりコイルバネの両端の各座巻部が芯決めされるため、コイルバネが傾くことはない。更に、芯決め部の軸長が各座巻部の軸長以下であるため、コイルバネの伸縮時に変位するバネ線材の部分が芯決め部に接触して摺動抵抗が発生するようなことはなく、コイルバネの傾きが防止されることと相俟って、制御精度が良好に維持される。
【0009】
また、本発明において、弁筐が、流入室及び弁座が形成された上部筐体と、流出室が形成された下部筐体とを結合することで構成される場合には、上側と下側の両バネ受け座の少なくとも一方のバネ受け座に設けられた突起部の芯決め部は、座巻部に所定量の遊びを持って内挿されるように形成されることが望ましい。これによれば、上部筐体に対する下部筐体の組付け公差で一方のバネ受け座の突起部の芯決め部の中心に対し他方のバネ受け座の突起部の芯決め部の中心が偏心しても、座巻部が芯決め部に対し上記遊び分だけ偏心可能となるため、コイルバネが傾くことはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の比例弁の切断側面図。
図2】実施形態の比例弁の下部筐体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、1は、燃焼装置のガス供給路に介設する本発明の実施形態の比例弁の弁筐を示している。この弁筐1は、流入口2aに連なる上側の流入室2と、流出口3aに連なる下側の流出室3と、流入室2と流出室3との間の弁座4とを有している。尚、弁筐1は、流入室2及び弁座4を形成した上部筐体1aと流出室3を形成した下部筐体1bとを結合して構成されている。
【0012】
また、比例弁は、流入室2の上端面を閉塞するダイヤフラム5と、弁座4の流出室3側の面(下面)に対向する弁体6とを備えている。弁体6は、これに一体の軸部6aを介してダイヤフラム5に連結されている。
【0013】
比例弁は、更に、弁体6に下方への押圧力を付与すると共にこの押圧力を可変する、ダイヤフラム5の上方に配置されたソレノイド7を備えている。ソレノイド7は、コイル7aと、コイル7aの内周に配置した上下動自在な可動鉄心7bとを備えている。そして、可動鉄心7bの下端をダイヤフラム5の上方に突出する軸部6aの上端に当接させ、コイル7aへの通電電流値に比例した下方への押圧力が弁体6に付与されるようにしている。これにより、比例弁に流れる流体の流量(ガス流量)が通電電流値に比例して変化する。また、流入室2の流体圧(一次圧)が変動しても、ダイヤフラム5に連動して弁体6が変位し、一次圧の変動による流量の変動が防止される。
【0014】
また、比例弁は、弁体6に設けた上側のバネ受け座61と流出室3に設けた下側のバネ受け座31との間に介設した、円筒形状で等線径、等ピッチのコイルバネ8を備えている。そして、コイルバネ8により弁体6を弁体6及び可動鉄心7bの自重分の付勢力で上方に付勢し、弁体6及び可動鉄心7bの自重の影響で制御精度が悪化することを防止できるようにしている。尚、上側のバネ受け座61は、弁体6の下面に環状に設けられている。また、下側のバネ受け座31は、図2に示す如く、流出室3の底部に放射状に3枚立設した起立片3bの上端に設けられている。
【0015】
ここで、コイルバネ8が傾くと、弁体6を所定の付勢力、即ち、弁体6及び可動鉄心7bの自重分の付勢力で上方に付勢できなくなる。そこで、上側と下側の各バネ受け座61,31に、コイルバネ8に内挿される突起部62,32を設けている。突起部62,32は、コイルバネ8の両端の各座巻部8aの内周面に近接対向してコイルバネ8を芯決めする芯決め部62a,32aと、芯決め部62a,32aの先方に径方向内方に傾斜してのびるガイド部62b,32bとを有している。そして、コイルバネ8の両端の各座巻部8aをガイド部62b,32bを通して芯決め部62a,32aに外挿するようにしている。これによれば、コイルバネ8の両端の各座巻部8aが芯決め部62a,32aにより芯決めされた状態になり、コイルバネ8が傾くことを防止できる。
【0016】
また、本実施形態では、各突起部62,32の芯決め部62a,32aの軸長を、各座巻部8aの軸長以下に設定している。そのため、コイルバネ8の伸縮時に変位するバネ線材の部分が芯決め部62a,32aに接触して摺動抵抗が発生するようなことはなく、コイルバネ8の傾きが防止されることと相俟って、比例弁による流量制御の制御精度が良好に維持される。
【0017】
尚、上部筐体1aに対する下部筐体1bの組付け公差で上側のバネ受け座61に設けられた突起部62の芯決め部62aの中心に対し下側のバネ受け座31に設けられた突起部32の芯決め部32aの中心が偏心してしまうことがある。この場合、各芯決め部62a,32aが各座巻部8aに遊びなく内挿されていると、上記偏心によりコイルバネ8の上端の座巻部8aに対し下側の座巻部8aが偏心して、コイルバネ8が傾いてしまう。
【0018】
そこで、本実施形態では、上側と下側の両バネ受け座61,31に設けられた突起部62,32の芯決め部62a,32aを、上下両端の各座巻部8aに所定量(例えば、0.1mm)の遊びPを持って内挿されるように形成している。これによれば、各座巻部8aが各芯決め部62a,32aに対し遊びP分だけ偏心可能となる。そのため、上部筐体1aに対する下部筐体1bの組付け公差で上側のバネ受け座61に設けられた突起部62の芯決め部62aの中心に対し下側のバネ受け座31に設けられた突起部32の芯決め部32aの中心が偏心しても、少なくとも一方の座巻部8aがコイルバネ8の傾きを矯正するように対応する芯決め部に対し偏心し、コイルバネ8が傾くことはない。
【0019】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、上側と下側の両バネ受け座61,31に設けられた突起部62,32の芯決め部62a,32aが各座巻部8aに遊びPを持って内挿されるようにしているが、両バネ受け座61,31の一方のバネ受け座に設けられる突起部の芯決め部のみを対応する座巻部に遊びを持って内挿されるように形成し、他方のバネ受け座に設けられる突起部の芯決め部は対応する座巻部に遊びを持たずに内挿されるようにしてもよい。
【0020】
また、上記実施形態では、下側のバネ受け座31が放射状に3枚立設した起立片3bの上端に設けられている関係で、下側のバネ受け座31の突起部32が放射状に設けられているが、起立片3bを円柱状又は円筒状として、突起部32を円柱状又は円筒状に形成してもよい。更に、各突起部32,62を、ガイド部32b,62bを省略した、芯決め部32a,62aのみで構成されるものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…弁筐、1a…上部筐体、1b…下部筐体、2…流入室、3…流出室、31…下側のバネ受け座、32…突起部、32a…芯決め部、4…弁座、5…ダイヤフラム、6…弁体、61…上側のバネ受け座、62…突起部、62a…芯決め部、7…ソレノイド、8…コイルバネ、8a…座巻部。
図1
図2