特許第6751024号(P6751024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6751024ポリマー/瀝青バインダーを製造するために用いることができるポリマー/瀝青一次混合物、及びこれらの一次混合物から得られる生成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751024
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ポリマー/瀝青バインダーを製造するために用いることができるポリマー/瀝青一次混合物、及びこれらの一次混合物から得られる生成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20200824BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20200824BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20200824BHJP
   E01C 7/26 20060101ALN20200824BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L95/00
   C08K5/11
   !E01C7/26
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-548242(P2016-548242)
(86)(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公表番号】特表2017-505369(P2017-505369A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】FR2015050142
(87)【国際公開番号】WO2015110754
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2018年1月10日
(31)【優先権主張番号】1450448
(32)【優先日】2014年1月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516219428
【氏名又は名称】エファージュ・インフラストラクチャーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ルー,フレデリック
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0283365(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/087869(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/068461(WO,A1)
【文献】 特開昭63−000357(JP,A)
【文献】 特開2006−176598(JP,A)
【文献】 特開2005−082615(JP,A)
【文献】 特開2005−154465(JP,A)
【文献】 米国特許第06518354(US,B1)
【文献】 特開2009−040827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08J 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瀝青/ポリマー組成物を製造するために有用な一次混合物であって:
(a)25〜80重量%の、ブタジエン単位の全重量に対して重量基準で5%〜50%の間のスチレン単位の割合を有する、線状又は星形の分子構造を有するスチレンとブタジエンのコポリマー;
(b)15〜70重量%の、100〜3000g/モルの間の平均分子量を有する少なくとも1種類の熱可塑性粘着性付与樹脂;及び
(c)5〜20重量%の、1種類以上のC16〜C18脂肪酸のアルキル(モノ)エステル;
を含む、前記一次混合物。
【請求項2】
粘着性付与樹脂(b)が、NF−EN−ISO660にしたがって測定して50mg−KOH/g未満の酸価を有する、請求項に記載の一次混合物。
【請求項3】
粘着性付与樹脂(b)が炭化水素樹脂及び/又はフェノールテルペン樹脂から選択される、請求項又はに記載の一次混合物。
【請求項4】
(a)25〜80重量%の、ブタジエン単位の全重量に対して重量基準で5%〜50%の間のスチレン単位の割合を有する、線状又は星形の分子構造を有するスチレンとブタジエンのコポリマー;
(b)15〜70重量%の、100〜3000g/モルの間の平均分子量を有する少なくとも1種類の熱可塑性粘着性付与樹脂;及び
(c)5〜20重量%の、1種類以上のC16〜C18脂肪酸のアルキル(モノ)エステル;
を押出/混合することから構成される、請求項のいずれかに記載の瀝青/ポリマー組成物を製造するために有用な一次混合物を得る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瀝青バインダー、又は瀝青バインダーのエマルジョン、特に以下においてポリマー/瀝青バインダー又は変性瀝青とも呼ぶ、少なくとも1種類のポリマーによって変性した瀝青の分野に関する。これらのバインダーは、路面を形成するため、又は工業用途(断熱−減衰−封止)において用いることができる。
【0002】
特に、本発明は、ポリマーで変性したバインダーを製造するために瀝青と混合することを意図する一次混合物、及び場合によって二次的にはポリマー/瀝青エマルジョンに関する。
【0003】
本発明はまた、かかる生成物の製造にも関する。
【背景技術】
【0004】
瀝青バインダーは、無水の瀝青バインダー又は瀝青エマルジョンのいずれかであってよい。後者は、無水の瀝青バインダーを、乳化剤の存在下で水相中に分散させることによって製造される。
【0005】
ポリマー/瀝青バインダーは、通常はイオウ又はその誘導体を用いて架橋させることができる。
「道路用」瀝青は、
・無水の瀝青バインダーを骨材と加熱混合し、次にこれらの混合物を、路面を形成するために道路上に敷設することによって得られる「加熱被覆材料」;
・第1に瀝青バインダーのエマルジョン及び混合骨材を道路上に高温敷設することによって得られる「無水バインダーによる表面被覆」;
・瀝青エマルジョンを骨材と低温混合し、次にこれらの混合物を、路面を形成するために道路上に敷設することによって得られる「低温被覆材料」;或いは
・第1に瀝青エマルジョン及び混合骨材を道路上に低温敷設することによって得られる「瀝青エマルジョンによる表面被覆材料」;
においてそれらの結合機能を果たす。
【0006】
これらの被覆材料又は被覆は、第1に、このマトリクス中に分散している瀝青マトリクス及び骨材を含む均一な混合物を形成しなければならない。この混合物の流動性は、道路上に適用して路面を形成するのに適していなければならない。
【0007】
これらの被覆材料又は被覆は、適用したら、期待される耐久性のある機械特性を備えた路面にするために、次に結合力を増加させなければならない。
加熱、エマルジョンの形成、及び/又は瀝青溶媒(フラックス)を用いるフラックス化(又は流動化)は、適用するために好適なコンシステンシーを得るために通常用いられている手段である。
【0008】
加熱及び揮発性有機化合物(VOC)を含む石油由来のフラックスの使用は、マイナスの環境影響を有する。
EP−900822−B1(1種類以上の、C16〜C18脂肪酸、特にヒマワリ油、亜麻仁油、及び/又は異性化ヒマワリ油のメチルモノエステルから構成される瀝青バインダーのためのフラックスを提案している)により、フラックス化することによって流動化に対する改良が行われている。
【0009】
ポリマーを用いて瀝青を変性する目的は、特に、硬化した瀝青表面の耐熱性、結合性、伸び能力、粘弾性特性、及び受動的接着強度(道路についての被覆除去に対するより良好な抵抗性)を向上させることである。これらのポリマー/瀝青は、無水の被覆材料/被覆、及び被覆材料/被覆を含むエマルジョンの両方のために用いられている。
【0010】
したがって、ポリマーによる瀝青の変性は現在では不可避であるが、製造に関する問題が伴う。これは、ポリマー/瀝青バインダーが、機械的粉砕機/分散機内でポリマーを高温の瀝青に徐々に加えることによって得られるためである。この操作の目的は瀝青中にポリマーを分散させることであるが、この操作は実施するのが困難である。これは、高性能で非常に高価な特定の粉砕機/分散機を用いることが必要である。これはまた、長時間、例えば1〜3時間の分散/粉砕も必要である。
【0011】
この操作を助けてより良好な分散液を得るために、例えば瀝青に対して3重量%〜7重量%の割合の石油、植物、又は鉱物由来のオイルのようなカウンティングオイルを用いることが公知である。
【0012】
したがって、このポリマー/瀝青の製造にはインフラが必要であり、これは経済的レベルで問題であるだけでなく、環境影響も有する。
かかるインフラの数を増加させることは可能ではないので、且つこれらのポリマー/瀝青組成物を輸送するコストを考慮して、ポリマーの濃縮液を用いる一次ポリマー/瀝青混合物が開発された。
【0013】
而して、FR−2951188−B1においては、望ましくない石油由来のオイルを含まないが、少なくとも1種類の植物及び/又は動物由来のオイル、母液の重量に対して少なくとも20重量%のポリマーを、少なくとも1種類穏架橋剤と共にか又はこれを伴わないで含むポリマー/瀝青母液が開示されている。この植物及び/又は動物由来のオイルは酸性であり、NF−EN−ISO660にしたがって測定されるその酸価は、50〜300mg−KOH/gの間、例えば140〜196mg−KOH/gの間である。これは、単独か又は混合物で、トール油又は菜種油の脂肪酸から選択される。
【0014】
FR−2951188−B1によれば、問題の母液は非常に高いポリマー濃度を有する。しかしながらこれと矛盾して、FR−2951188−B1においては、「この発明の母液は好ましくは少なくとも50重量%のポリマーを含む」ことが示されており、その次のパラグラフにおいては、このポリマーの濃度は「好ましくは、母液の質量に対して質量基準で20%〜50%、好ましくは25%〜45%、より好ましくは30%〜40%、更により好ましくは32%〜35%のポリマーであり、これはその製造及び/又は貯蔵中のゲル化現象を伴わない」ことが示されている。質量基準でそれぞれ25%及び40%のポリマーを用いるFR−2951188−B1における実施例に関しては、一方ではSMSM5bis、他方ではSMSM6bisはしたがって2番目の「優先順位」に位置する。
【0015】
したがって、非常に高い濃度のポリマーを有するポリマー/瀝青母液を得るというFR−2951188−B1の目的は、実際には達成されないことが明らかである。
WO−02/10285においては、瀝青と混合することを意図しており、ラバー(55%〜95%)の顆粒物及びトール油(45%〜5%)を含む乾燥液体濃縮液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】EP−900822−B1
【特許文献2】FR−2951188−B1
【特許文献3】WO−02/10285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術のポリマー/植物油混合物は、特にそれらを含ませるポリマー/瀝青の使用並びに物理特性及び化学特性に対する影響の点で改良することができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、従来技術のポリマー/植物油混合物を改良すること、特に次の目的:
・ポリマー/瀝青を製造するために有用な新規な一次混合物をより低コストで提供すること;
・ポリマーの高い濃度を有するポリマー/瀝青を製造するために有用な新規な一次混合物をより低コストで提供すること;
・貯蔵時に安定である(再凝集がない)ポリマー/瀝青を製造するために有用な新規な一次混合物をより低コストで提供すること;
・瀝青中に容易に、即ち例えば迅速に且つ高価で高機能の混合装置を用いないで含ませることができる、ポリマー/瀝青を製造するために有用な一次混合物をより低コストで提供すること;
・粘稠状態において良好なコンシステンシー特性(針入度、環球温度、及び低い感受性)、並びに固体/硬化状態において良好な機械特性(弾性戻り、結合力、及び引張り強さ)を備えた瀝青/ポリマー組成物を得ることを可能にする、ポリマー/瀝青を製造するために有用な新規な一次混合物をより低コストで提供すること;
・上記の目的において規定される一次混合物から得られる新規なポリマー/瀝青を容易に且つより低コストで提供すること;
・上記の目的において規定されるポリマー/瀝青から製造される新規なエマルジョンを容易に且つより低コストで提供すること;
・上記の目的において規定される瀝青バインダー又はエマルジョンから得られる新規な被覆混合物又は道路被覆を容易に且つより低コストで提供すること;
・上記の目的において規定される新規生成物を製造するための簡単で経済的な方法を提供すること;
の少なくとも1つを満足することである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この目的のために、第1の形態によれば、本発明は、
瀝青/ポリマー組成物を製造するために有用な一次混合物であって:
(a)少なくとも25重量%、好ましくは25重量%〜80重量%のポリマー;
(b)100〜3000g/モルの間の平均分子量を有する少なくとも1種類の熱可塑性粘着性付与樹脂;及び/又は
(c)1種類以上の、C16〜C18脂肪酸、特にヒマワリ油、亜麻仁油、菜種油、大豆油、及び/又は異性化しているか若しくはしていないヒマワリ油、のアルキル(モノ)エステル、好ましくはメチル(モノ)エステル;
を含み;
エステル(c)は、粘着性付与樹脂(b)がNF−EN−ISO660にしたがって測定して50mg−KOH/g未満の酸価を有する場合に必然的に存在する、
前記一次混合物を提案する。
【0020】
これらの一次混合物は高いポリマー濃度を有し、貯蔵時に安定であり、容易に取扱い及び製造可能であり、ポリマー/瀝青が瀝青を混合することによって容易に得ることを可能にするポリマー/瀝青のために必要な仕様に適合する。したがって、これらの一次混合物は、室温において劣化することなく貯蔵及び輸送することができ、及びしたがってポリマー/瀝青組成物製造場所においてその後に瀝青中に容易に希釈することができるので、特に輸送及び物流コストを低下させることができるという点で、ポリマー/瀝青を製造するために有利な一次材料である。
【0021】
場合によっては、エステル(c)は、混合物(a)〜(b)が55重量%〜95重量%のポリマー(a)、及び樹脂(b)として45重量%〜5重量%のトール油を含む場合に、一次混合物中に存在させる必要がある可能性がある。
【0022】
本一次混合物は未成形のバルク塊/ペーストであってよく、或いは本発明の有利な特徴によれば、顆粒、ブロック、又は煉瓦状の塊のような不連続の材料の形態にすることができ、この成形は好ましくは押出の後に行う。
【0023】
これらの不連続形態においては、この生成物は取扱い、貯蔵、及び輸送するのが容易である。
これらはまた、ポリマー/瀝青を製造するために一次混合物を瀝青中に分散させるのを助ける。
【0024】
第1の態様においては、本発明による一次混合物は、成分(a)及び(b)を重量%として次の割合:
(a)25〜55、好ましくは30〜50;
(b)75〜45、好ましくは70〜50;
で含む。
【0025】
第2の態様においては、本発明による一次混合物は、成分(a)及び(c)を重量%として次の割合:
(a)25〜80、好ましくは30〜70;
(c)75〜20、好ましくは70〜30;
で含む。
【0026】
第3の態様においては、本発明による一次混合物は、成分(a)、(b)、及び(c)を重量%として次の割合:
(a)25〜80、好ましくは30〜70;
(b)15〜70、好ましくは25〜55;
(c)5〜20、好ましくは5〜15;
で含む。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
瀝青/ポリマー組成物を製造するために有用な一次混合物であって:
(a)少なくとも25重量%、好ましくは25重量%〜80重量%のポリマー;
(b)100〜3000g/モルの間の平均分子量を有する少なくとも1種類の熱可塑性粘着性付与樹脂;及び/又は
(c)1種類以上の、C16〜C18脂肪酸、特にヒマワリ油、亜麻仁油、菜種油、大豆油、及び/又は異性化しているか若しくはしていないヒマワリ油、のアルキル(モノ)エステル、好ましくはメチル(モノ)エステル;
を含み;
エステル(c)は、粘着性付与樹脂(b)がNF−EN−ISO660にしたがって測定して50mg−KOH/g未満の酸価を有する場合に必然的に存在する、
前記一次混合物。
[2]
成分(a)及び(b)を、重量%として次の割合:
(a)25〜55、好ましくは30〜50;
(b)75〜45、好ましくは70〜50;
で含む、[1]に記載の一次混合物。
[3]
成分(a)及び(c)を、重量%として次の割合:
(a)25〜80、好ましくは30〜70;
(c)75〜20、好ましくは70〜30;
で含む、[1]に記載の一次混合物。
[4]
成分(a)、(b)、及び(c)を、重量%として次の割合:
(a)25〜80、好ましくは30〜70;
(b)15〜70、好ましくは25〜55;
(c)5〜20、好ましくは5〜15;
で含む、[1]に記載の一次混合物。
[5]
粘着性付与樹脂(b)が、NF−EN−ISO660にしたがって測定してmg−KOH/gで表して、増加する優先順で50;40;30;20;10;5;4;3;2;未満の酸価を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の一次混合物。
[6]
粘着性付与樹脂(b)が炭化水素樹脂及び/又はフェノールテルペン樹脂から選択される、[1]〜[5]のいずれかに記載の一次混合物。
[7]
Md法によって測定して、それを超えると、瀝青の表面上又は容器の壁上に視認できる上澄みの一次混合物の残渣がもはや存在しない時間(分)によって表して、
D≦60分;
好ましくはD≦40分;
の瀝青中の分散度Dを有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の一次混合物。
[8]
撹拌下で温度調節装置内に直接導入することができるのに十分に高い瀝青中の分散度Dを有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の一次混合物。
[9]
(a)少なくとも1種類のポリマー;
(b)少なくとも1種類の粘着性付与樹脂;及び/又は
(c)少なくとも部分的にトランスエステル化しているか又はしていない1種類以上のオイル;
を押出/混合することから実質的に構成される、瀝青/ポリマー組成物を製造するために有用な一次混合物、特に[1]〜[8]のいずれかに記載の一次混合物を得る方法。
[10]
[1]〜[8]のいずれかに記載の一次混合物から製造されるポリマー/瀝青。
[11]
少なくとも1種類の瀝青を、[1]〜[8]のいずれかに記載の少なくとも1種類の一次混合物と混合することから実質的に構成される、[10]に記載のポリマー/瀝青の製造方法。
[12]
[10]に記載のポリマー及び瀝青、或いは瀝青及び[1]〜[8]のいずれかに記載の一次混合物から製造されるエマルジョン。
[13]
[10]に記載のポリマー/瀝青、又は[12]に記載のエマルジョンから得られる路面。
【0027】
ポリマー(a)
本一次混合物のポリマー(a)は、通常のポリマー/瀝青ポリマー、即ち次のコポリマー又はホモポリマー、例えば植物、動物、及びタンパク由来のバイオポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルラバー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリクロロプレン、ポリノルボルネン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリエチレン、エチレンとビニルアセテートのコポリマー、エチレンとメチルアクリレートのコポリマー、エチレンとブチルアクリレートのコポリマー、エチレンと無水マレイン酸のコポリマー、エチレンとグリシジルメタクリレートのコポリマー、エチレンとグリシジルアクリレートのコポリマー、エチレンとプロペンのコポリマー、エチレン/プロペン/ジエンターポリマー(EPDM)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)ターポリマー、エチレン/アクリレート又はアルキルメタクリレート/グリシジルアクリレート又はメタクリレートのターポリマー、特にエチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレートターポリマー、及びエチレン/アルキルアクリレート又はメタクリレート/無水マレイン酸ターポリマー、特にエチレン/ブチルアクリレート/無水マレイン酸ターポリマーである。
【0028】
採用されるポリマー(a)は、好ましくは、ブタジエン単位の全質量に対して質量基準で5%〜50%の間、好ましくは10%〜40%の間、より好ましくは15%〜30%の間、更により好ましくは20%〜30%の間のスチレン単位の割合を有する、線状又は星形の分子構造を有するスチレンとブタジエンのコポリマーである。その平均分子量Mwは、有利には、50,000〜800,000ダルトンの間、好ましくは60,000〜700,000の間、より好ましくは80,000〜500,000の間、更により好ましくは100,000〜400,000の間、更により好ましくは110,000〜300,000の間であってよい。コポリマーの分子量は、ASTM−D3536にしたがってポリスチレン標準試料を用いてGPCクロマトグラフィーによって測定される。
【0029】
本一次混合物には、それ自体公知なようにポリマー(a)の架橋剤を含ませることができる。通常は、この架橋剤は、本発明による一次混合物中に含まれるポリマーの1つ又は複数のタイプにしたがって選択され、例えば、
・イオウ(イオウ又はα結晶化イオウの粉末);
・単独化又は混合物で、場合によっては単独か又は混合物の加硫促進剤のイオウドナーの存在下又は不存在下でのヒドロカルビルポリ硫化物;
・一般式:HS−R−SH(式中、Rは、場合によっては酸素のような1以上のヘテロ原子を含む、2〜40炭素原子の飽和又は不飽和で線状又は分岐の炭化水素基を表す)の化合物;
である。
【0030】
粘着性付与樹脂(b)
この一次混合物を完成させるために、本発明者らは、
・特に好適な粘着性付与樹脂(b)、即ちNF−EN−ISO660にしたがって測定して50mg−KOH/g未満、好ましくは増加する優先順で40;30;20;10;5;4;3;2;未満の酸価AVを有するものの第1の群;
・特に工程な粘着性付与樹脂(b)、即ち炭化水素樹脂の第2の群;
・特に好適な粘着性付与樹脂(b)、即ちフェノールテルペン樹脂の第3の群;
・特に好適な粘着性付与樹脂(b)、即ち160℃において測定して100〜5000mPa・秒の間、好ましくは300〜3000mPa・秒の間の溶融状態での粘度を有するものの第4の群;
を分けて、
・かかる樹脂(b)は上述の4つの群の少なくとも1つに属することができる;
ことの有利性を有していた。
【0031】
本発明にしたがって好ましい粘着性付与樹脂(b)は、特に、
・0.5〜1.5の間の酸価を有し、500〜1000ダルトンの間のMwを有し、「混合メチルシクロヘキサン−アニリン点(MMAP)」によって与えられるその芳香族溶解度は10〜50の間であるテルペンフェノール樹脂(Dertophene(登録商標)T);
・0.5〜1.5の間のAV、1000〜2500ダルトンの間のMwを有し、「混合メチルシクロヘキサン−アニリン点(MMAP)」によって与えられるその芳香族溶解度は80〜150の間であるC脂肪族樹脂(Piccotac(登録商標)1095N);
・0.5〜1.5の間の酸価、1000〜2500ダルトンの間のMwを有し、「混合メチルシクロヘキサン−アニリン点(MMAP)」によって与えられるその芳香族溶解度は50〜150の間である芳香族単位によって変性されているC脂肪族樹脂(Piccotac(登録商標)7590N);
・10−3〜0.1の間の酸価を有し、60℃〜90℃(79℃)の間のWCP、及び500〜2500ダルトンの間のMwを有する脂肪族樹脂(Escorez(登録商標)1310LC);
・100℃〜200℃の間のWCP、及び500〜2500ダルトンの間のMwを有する脂肪族樹脂(Escorez 1310LC);
・並びにこれらの混合物;
である。
【0032】
成分(c)
成分(c)は、実際には好ましくは、少なくとも1種類のアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノールのようなアルカノールで少なくとも部分的に(トランス)エステル化されている脂肪酸を含むオイル又は複数のオイルの混合物である。エステル(c)の脂肪酸の全部又は一部は、有利にはC16〜C18である。成分(c)の1種類又は複数のオイルは、好ましくは植物由来(ヒマワリ、大豆、亜麻仁等)である。エステル(c)の1つの例は、ヒマワリ油、大豆油、及び/又は亜麻仁油のメタノールによるトランスエステル化の生成物である。
【0033】
一次混合物の分散度D
その目的を考慮すると、本発明による一次混合物は、Md法によって測定して、それを超えると、撹拌(渦流)の停止後に瀝青の表面上容器の壁上に視認できる上澄みの(supernatant)一次混合物の残渣がもはや存在しない時間(分)によって表して、
D≦60;
好ましくはD≦40;
の瀝青中の分散度Dによって規定することができる。
【0034】
Md法は以下の実施例において規定されている。
他の形態で表現すると、本発明による一次混合物は、有利には、撹拌及び温度調節下において、分散剤/バインダーの使用に頼ることなく、及び障害を引き起こすことなく装置中に直接導入することができるのに十分に高い瀝青中の分散度Dを有する。
【0035】
ここで「障害」とは、例えば、ポリマーの粒子が表面に浮き上がること、よく分散していない一次混合物の残渣が存在すること、或いは最終混合物が不均質であること(これは、ポリマー変性瀝青の熱機械性能が低下することと同義である)を意味する。
【0036】
一次混合物を得るための方法
その他の形態においては、本発明は、瀝青/ポリマー組成物を製造するために有用な一次混合物(この一次混合物は特に上記で規定したものである)を得る方法に関する。この方法は、
(a)少なくとも1種類のポリマー;
(b)少なくとも1種類の粘着性付与樹脂;及び/又は
(c)少なくとも部分的にトランスエステル化しているか又はしていない1種類以上のオイル;
(ここで、(a)、(b)、(c)は、好ましくは上記に規定した成分である)
を押出/混合することから実質的に構成されることを特徴とする。
【0037】
本発明によれば、押出は、中でも混合又は均質化するために好ましい方法である。
押出によって一次混合物を得るために好ましい方法は、特に以下の実施例においてより詳細に記載するような二軸押出機によって実施することができる。
【0038】
本発明による一次混合物から得られるポリマー/瀝青、及びこのポリマー/瀝青を製造する方法
その更に他の形態においては、本発明は上記に規定の一次混合物から製造されるポリマー/瀝青に関する。
【0039】
その更に他の形態においては、本発明は、少なくとも1種類の瀝青を上記に規定の少なくとも1種類の一次混合物と混合することから実質的に構成されることを特徴とする、上記に規定のポリマー/瀝青を製造する方法に関する。
【0040】
用いることができるミキサーの中には、ポリマー変性瀝青などを製造する工場において用いられているもののような簡単なミキサー、或いは押出機が存在する。
瀝青は、天然瀝青、天然アスファルト、又は瀝青砂の堆積物中に含まれているもののような天然由来の瀝青から選択することができる。本発明にしたがって用いることができる瀝青はまた、直留瀝青、又は減圧下で蒸留した瀝青、或いはブローン若しくはセミブローン瀝青、プロパン又はペンタン脱アスファルト化の残渣、或いは粘度減少残渣のような原油の精製から得られる瀝青又は複数の瀝青の混合物であってもよく、これらの種々の留分は単独か又は混合物で用いることができる。用いる瀝青はまた、揮発性溶媒を加えることによってフラックス化した瀝青、石油由来のフラックス、炭素化学フラックス、及び/又は植物由来のフラックスであってもよい。また、透明で着色可能又は彩色可能な瀝青とも呼ばれる合成瀝青を用いることも可能である。瀝青は、ナフテン又はパラフィン由来の瀝青、或いはこれらの2種類の瀝青の混合物であってよい。例えば、瀝青は160/220瀝青である。
【0041】
エマルジョン
その更に他の形態においては、本発明は上記に規定のポリマー/瀝青から製造されるエマルジョンに関する。
【0042】
実施においては、エマルジョンを製造するための方法及び装置は通常的なものである。好ましい方法及び基本条件は、以下の実施例において記載する。
舗装
その更に他の形態においては、本発明は上記に規定のポリマー/瀝青又はエマルジョンから得られる舗装(例えば被覆材料又は被覆)に関する。
【0043】
本発明は以下の実施例を考慮するとより良好に理解されるであろう。
【実施例】
【0044】
I.瀝青中における一次混合物の分散度Dを測定するためのMd法
6.7グラムの一次混合物を、インペラー撹拌機による簡単な機械撹拌下において160℃〜170℃の間に維持した93.3グラムの160/220瀝青中に導入した。
【0045】
容器は2リットルの容量を有する金属容器であった。
160/220瀝青は、Port Jerome-Gravenchon(Seine-Maritime)のEssoの精油所から入手した。
【0046】
温度維持手段は、IKA-ETS-D5温度センサーを備えたIKA-MAG-HP10ホットプレートから構成されていた。
インペラー撹拌機はIKA-RW20タイプのものであった。
【0047】
簡単な撹拌は700回転/分の速度で行った。
それを超えると、瀝青の表面上又は容器の壁上に視認できる上澄みの一次混合物の残渣がもはや存在しない経過時間D(分)の測定を行った。Dを測定するための時間t0は、瀝青中の一次混合物の導入の終了時に対応する。
【0048】
II.装置及び方法
1.「一次混合物」、即ち瀝青を含まない混合物を製造するために、
・50Dの二軸押出機を用いた;
・産出量=4kg/時;
・回転速度=200〜500回転/分;
・温度プロファイル:
i.区域1(樹脂及び/又はメチルエステル植物油の導入)=40℃〜160℃;
ii.区域2(ポリマーの導入)=120℃〜160℃;
iii.区域3及び4(成分の混合/混和)=120℃〜160℃。
【0049】
2.「ポリマー/瀝青」を製造するために、上記記載のMd法を用いた(実験1〜4(表1))。
3.「ポリマー/瀝青からエマルジョン」を製造するために(実験5〜9(表2))、
・Moritz BF50粉砕機/分散機を用いた;
・製造温度は160〜180℃の間であった;
・エマルジョンを製造するために採用した圧力は約1barであった。
【0050】
III.原材料:
(a)この実験のために用いたポリマーは、30%〜33%のスチレン含量の粉末の形態のSBS-ICO(線状)であった。伸びは7%以上であり、ショアA硬度は70〜80であり、破断強度(kg/m)は200以上であり、Mwは150,000〜250,000g/モルの間であった。
【0051】
(b)粘着性付与樹脂
ESCOREZ 1102(Exxon Mobilによって製造);
ESCOREZ 1310(Exxon Mobilによって製造);
DERTOPHENE T(DRTによって製造);
PICCOTAC 1095(Eastmanによって製造);
PICCOTAC 7590(Eastmanによって製造)。
【0052】
(c)成分(c):植物油のメチルエステル、例えばOleoflux(登録商標)18
(d)ポリマー(a)によって変性した瀝青エマルジョン
原材料:
瀝青相に関しては、160/220瀝青中に一次混合物を溶解することによって得られた、4%のSBSを含む最初に製造したポリマー/瀝青バインダーを用いた。
【0053】
水相に関しては、これは、
・29.32%の水;
・0.25%のemulsamine 60(界面活性剤);
・0.21%〜33%の市販のHCl;
・0.2%のCaCl
・0.02%のCoatex(Viscodis 174)(増粘剤);
・qsp植物油のメチルエステル;
から構成されていた。
【0054】
IV.測定方法;
IV.1− 一次混合物に加える160/220瀝青
1.環球軟化温度(EN−1427);
2.FRAASS脆化点の測定(EN−12593);
3.25℃における針入度試験(EN−1426);
4.弾性戻りの測定(EN−13398);
5.ブルックフィールド粘度(EN−13702)。
【0055】
IV.2− エマルジョン
エマルジョン(瀝青相及び水相)に関して5〜9を試験した(表2)。
・含水量(XPT60−080);
・エマルジョン及び水相のpH(EN−12850);
・カチオン性エマルジョンの破壊指数(EN−13075−1);
・篩上の残渣(EN−1429);
・STV偽粘性(EN−12846−2);
・7日間貯蔵下での安定性;
・乾燥チッピングに対する接着強度(EN−13614);
・エマルジョンの中位径:Mastersizer LASER。
【0056】
水相を蒸発させた後に回収されたバインダーに関して5〜9を試験した(表2):表の第2の部分;
・25℃における針入度(EN−1426);
・TBA環球軟化温度(EN−1427);
・弾性戻り(EN−13398);
・FRAASS温度(EN−12593);
・「ペンデュラム・ラム衝撃」結合性(EN−13588)。
【0057】
V.実験及び結果:
一次混合物に関して実験1〜4を行った。表1(参照1〜4)。
エマルジョンに関して実験5〜9を行った。表2(参照5〜9)。
【0058】
下表1及び2は、実験1〜9に関する実験条件及び得られた結果を与える。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】