特許第6751030号(P6751030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751030
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】移動体通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 68/04 20090101AFI20200824BHJP
【FI】
   H04W68/04
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-7387(P2017-7387)
(22)【出願日】2017年1月19日
(65)【公開番号】特開2018-117272(P2018-117272A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】早川 愛
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓之
(72)【発明者】
【氏名】川名 昭博
【審査官】 ▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−259412(JP,A)
【文献】 特開2004−193950(JP,A)
【文献】 特開2001−119742(JP,A)
【文献】 特開2010−246014(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0128019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局毎に前記移動局を呼び出すためのページング処理の成功時の時刻情報と当該ページング処理の対象エリアを示す位置登録エリアとを含むページング履歴情報を蓄積する履歴情報格納部と、
ページング処理を実行する時刻を含む時間帯に対応した前記時刻情報を含む前記ページング履歴情報を集計し、集計した前記ページング履歴情報に含まれる前記位置登録エリアを基に、前記移動局が前記時刻に在圏する可能性の高いエリアを含む位置登録エリアを推定するエリア推定部と、
前記エリア推定部によって推定された前記位置登録エリアを優先的に対象として、前記移動局に対するページング処理を実行し、当該ページング処理が成功した場合に当該ページング処理に関する前記ページング履歴情報を前記履歴情報格納部に登録するページング処理部と、
を備える移動体通信システム。
【請求項2】
前記ページング処理部は、前記エリア推定部によって推定された前記位置登録エリアを対象にページング処理を実行し、当該ページング処理が失敗した場合には、前記移動局が直近に在圏していたことが登録されていた前記位置登録エリアを含むエリアを対象に再度ページング処理を実行する、
請求項1記載の移動体通信システム。
【請求項3】
前記エリア推定部は、集計対象の前記ページング履歴情報の件数が閾値を超えた場合に、当該ページング履歴情報を基に前記位置登録エリアを推定する、
請求項1又は2に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
前記エリア推定部は、前記ページング履歴情報の集計を、曜日毎及び時間帯毎に行う、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動体通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ページング処理を実行する移動体通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムにおいては、無通信状態が一定時間継続されていた移動局を呼び出すためにノード装置から移動局に向けてページング信号が送信される(ページング処理)。ページング信号の通信量を削減するための技術としては、下記特許文献1に記載された方法が知られている。この方法においては、移動局の所定時刻における推定位置と移動局の移動後の予測位置とを基に移動局が現在在圏する可能性が高い基地局のリストを作成し、そのリストを基にページング信号の送出を基地局に依頼する。
【0003】
また、下記特許文献2にも、ページング信号の通信量を抑制することができる通信システムが記載されている。この通信システムでは、移動局が現在位置するセルを推定し、まず、推定されたセルにおいて第1のページング信号を送信し、移動局が第1のページング信号に応答しなかった場合に、セルよりも広い位置登録エリアにおいて第2のページング信号を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2014/049911号公報
【特許文献2】特開2010−246014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の従来方法においては、ページング信号の送信の際に移動局ごとの移動状態の予測処理を行う必要があるため、ノード装置を含むコアネットワーク側の処理負荷が高くなる傾向にある。また、上記特許文献2に記載の従来方法においては、移動局が現在位置するセルの推定精度によっては十分にページング信号の通信量が低減されない傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、コアネットワーク側の処理負荷を低減しつつページング信号の通信量を効果的に抑制することが可能な移動体通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一側面にかかる移動体通信システムは、移動局毎に移動局を呼び出すためのページング処理の成功時の時刻情報と当該ページング処理の対象エリアを示す位置登録エリアとを含むページング履歴情報を蓄積する履歴情報格納部と、ページング処理を実行する時刻を含む時間帯に対応した時刻情報を含むページング履歴情報を集計し、集計したページング履歴情報に含まれる位置登録エリアを基に、移動局が時刻に在圏する可能性の高いエリアを含む位置登録エリアを推定するエリア推定部と、エリア推定部によって推定された位置登録エリアを優先的に対象として、移動局に対するページング処理を実行し、当該ページング処理が成功した場合に当該ページング処理に関するページング履歴情報を履歴情報格納部に登録するページング処理部と、を備える。
【0008】
上記一側面によれば、ページング処理を実行する時刻の時間帯に過去にページング処理が成功した位置登録エリアが集計され、集計された位置登録エリアを基に移動局が在圏する可能性の高いエリアを含む位置登録エリアが推定される。そして、推定された位置登録エリアを優先的に対象として移動局に対してページング処理が実行される。これにより、過去のページング処理の履歴を利用して効率的にページング処理を実行することができる。その結果、移動体通信システムのコアネットワークの処理負荷を高めることなく、ページング信号の通信量を効果的に削減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コアネットワーク側の処理負荷を低減しつつページング信号の通信量を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の好適な一実施形態にかかる移動体通信システム100の構成を示すブロック図である。
図2図1のMME40の機能構成を示すブロック図である。
図3図2の在圏履歴データベース70に記憶されたエリア推定部43の集計対象のページング履歴情報のデータ構成を示す図である。
図4図2のエリア推定部43によって推定された時間帯毎の推定在圏TAのデータ構成を示す図である。
図5図1の移動体通信システム100によるページング処理の手順を示すフローチャートである。
図6図1のMME40のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7図1の移動体通信システム100によるページング処理の手順の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の好適な一実施形態にかかる移動体通信システム100の構成を示すブロック図である。図1に示されているとおり、この移動体通信システム100は、複数の基地局装置20と、在圏履歴データベース(履歴情報格納部)70、MME(Mobility Management Entity)40、S−GW(Serving Gateway)60、及びP−GW(Packet data network Gate Way)50を含むコアネットワーク90とによって構成されている。図1においては、コアネットワーク90内に、在圏履歴データベース70、MME40、S−GW60、及びP−GW50が1つずつ図示されているが、実際の移動体通信システム100にはいずれか又は全てが複数備えられている。スマートフォン、タブレット端末を含むUE(User Equipment)10(移動局)は、この移動体通信システム100と通信接続することにより通信を行うことができる。
【0013】
基地局装置20は、MME40に接続された無線基地局であるとともに、無線アクセス制御機能を有した装置である。基地局装置20は、UE10から発信があった際の受付制御機能、及び他のUE10あるいはサーバ装置等からUE10に着信があった際にUE10を呼び出すページング処理の機能を基本機能として有している。複数の基地局装置20は、1つのTA(トラッキングエリア:位置登録エリア)30の範囲に収容されており、この位置登録エリアTA30は、UE10に対するページング処理の開始時の初回のページング信号の送信対象のエリアの範囲である。
【0014】
MME40は、UE10から位置登録要求があった際に、基地局装置20を介してUE10と接続されるノード装置である。ここで、MME40は、移動体通信システム100のネットワークに在圏するUE10の位置管理、認証制御、及びP−GW50とUE10との間の通信経路(ベアラー)の設定処理を行う部分である。加えて、MME40は、UE10に対する着信があった場合にUE10に対するページング処理を制御する機能も有する。この際、MME40は、コアネットワーク90内の在圏履歴データベース70にアクセスしながらページング処理を制御する。1つのMME40は、複数のTA30を含むプールエリア80内の基地局装置20と接続可能に構成される。
【0015】
S−GW60は、パケット交換機であり、P−GW50との間でUE10に対する通信サービスの提供用のデータの送受信を行う。P−GWは、外部ネットワークNWに接続されるゲートウェイ装置であり、外部ネットワークNWとの間でUE10に対する通信サービスの提供用のデータの送受信を行う。
【0016】
次に、図2を参照してMME40の機能構成について説明する。図2は、図1のMME40の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、MME40は、機能的な構成要素として、位置管理部41、ページング要求受信部42、エリア推定部43、ページング処理部44、及び位置登録エリア記憶部45を含んで構成されている。以下、各構成要素について説明する。
【0017】
位置管理部41は、UE10が直近に在圏しているTA30をUE10ごとに管理する機能と、UE10が自己の存在するTA30をコアネットワーク90側に知らせるための位置登録信号を送信する位置登録要求を制御するためのTAリストを、UE10ごとに割り当てる機能と、を有する。すなわち、位置管理部41は、位置登録要求あるいはページング動作によって取得したUE10の在圏のTA30の情報をUE10ごとに位置登録エリア記憶部45に記憶(登録)する。また、位置管理部41は、UE10から位置登録信号を受信すると、その位置登録信号に含む情報によって特定されたTA30を含み、プールエリア80内の他のTA30の情報を含むTAリストをUE10ごとに設定し、そのTAリストを、位置登録エリア記憶部45に記憶(登録)するとともにUA10に通知する。TAリストを取得したUA10は、TAリストによって特定された複数のTA30のエリア外に移動した場合にのみ、位置登録要求を送信するように動作する。
【0018】
ページング要求受信部42は、UE10に対して着信があった場合に、外部ネットワークNW又は他のUE10からページング処理の開始要求を受信する機能を有する。ページング要求受信部42は、ページング処理の開始要求があった場合は、エリア推定部43及びページング処理部44にページング処理の開始を指示する。
【0019】
エリア推定部43は、ページング処理の開始要求があった場合に、在圏履歴データベース70に格納されたページング履歴情報から集計されたTA30に関するTA集計情報を基に、UE10がページングを実行する時刻であるページング実行時刻に在圏する可能性の高いエリアを含むTA30を推定する機能を有する。図3には、在圏履歴データベース70に記憶されたエリア推定部43の集計対象のページング履歴情報のデータ構成の一例を示す。図3に示すように、ページング履歴情報は、過去にページング処理部44によって実行されて成功したページング処理に関する履歴を示す情報であり、そのページング処理の対象のUE10を識別するUE識別情報“UE001”と、ページング処理が成功した時刻を示す時刻情報“2016/12/1 08:00:00”と、ページング処理の対象TAを示すTA識別情報“TA001”とが関連付けられた情報である。このTA識別情報は、ページング処理が成功した際にUE10が在圏していたTAを示し、ページング処理の対象エリアを示す。このページング履歴情報は、UE10毎に所定期間(例えば、1ヶ月分)蓄積されて在圏履歴データベース70に記憶される。
【0020】
詳細には、エリア推定部43は、所定のタイミングで、在圏履歴データベース70に記憶されたページング履歴情報を集計し、UE識別情報毎、時刻情報の示す時刻が含まれる時間帯毎にTA識別情報の件数を集計する。そして、エリア推定部43は、UE識別情報毎及び時間帯毎に最も件数の多いUE識別情報を決定し、そのUE識別情報を、当該時間帯にUE10が在圏する可能性の高いTA(推定在圏TA)として推定する。集計処理を実行するタイミングとしては、所定時間間隔のタイミングであってもよいし、所定時刻のタイミングであってもよいし、該当するUE10に対するページング処理の開始要求があったタイミングであってもよい。ここで、エリア推定部43は、UE10毎の集計対象のページング履歴情報の件数が所定の件数(例えば、過去1ヶ月で100件以上)を超えた場合のみ、集計したUE識別情報からUE10が在圏する可能性の高いTAを推定するようにする。図4には、エリア推定部43によって推定された時間帯毎の推定在圏TAの情報の一例を示す。図4に示す例では、エリア推定部43は、ページング履歴情報を曜日及び時間帯毎に集計し、その結果、曜日情報“Mon”および時間帯情報“0”によって示される時間帯“月曜日の0時台”におけるUE識別情報“UE00X”の示すUE10の推定在圏TAとして、TA識別情報“TA00X”の示すTAを決定する。さらに、エリア推定部43は、UE10毎、曜日毎、及び時間帯毎に決定した推定在圏TAの情報を位置登録エリア記憶部45にその都度記憶する。
【0021】
ページング処理部44は、ページング要求受信部42から、ページング処理の開始の指示を受けた場合に、UE10を対象としたページング処理を実行する。このとき、ページング処理部44は、位置登録エリア記憶部45から、該当UE10に対応する推定在圏TAの情報のうちページング処理を実行する時刻を含む時間帯に対応する推定在圏TAを読み出し、この推定在圏TAの示すTA30を優先的に対象としてUE10に対するページング処理を実行する。例えば、図4に示す推定在圏TAの情報の例によれば、「木曜日の8時台」の時刻にUE識別情報“UE001”によって識別されるUE10に対してページング処理を実行する際に、TA識別情報“TA001”によって識別されるTA30が、優先的にページング処理を行う対象のエリアとされる。このページング処理は、ページング処理部44から対象とされたTA30に含まれる基地局装置20に対して、該当のUE10に対してページング信号の送信を要求することにより開始される。ページング信号を受けたUE10は、基地局装置20を経由してコアネットワーク90に対してベアラーの設定の依頼を送信し、これに対してUE10とコアネットワーク90との間でベアラーが設定される。ページング処理部44は、ベアラーの設定が完了した場合にページング処理が成功したことを検出する。なお、ページング処理部44は、単にUE10から基地局装置20がページング信号に対する返信を受けたことでページング処理の成功を検出してもよい。そして、ページング処理部44は、ページング処理の成功を検出した際には、そのページング処理の対象のUE10を識別するUE識別情報と、ページング処理を実行した時刻に関する時刻情報と、ページング処理の対象のTAを識別するTA識別情報とを含むページング履歴情報を、在圏履歴データベース70に記憶(登録)する。このTA識別情報は、ページング処理が成功した際にUE10が在圏していたTAを位置登録エリア記憶部45から読み出すことで特定される。
【0022】
一方で、ページング処理部44は、推定在圏TAの示すTA30を優先的に対象としたUE10に対するページング処理が失敗した際には、次に、位置登録エリア記憶部45に記憶されたTAリストに含まれるTA30の全てを対象に再度ページング処理を実行する。このTAリストには、UE10が直近に在圏していたTA30の他、プールエリア80内の他のTA30も含んで割り当てられている。そして、ページング処理部44は、このページング処理の成功を検出した際には、そのページング処理に関するページング履歴情報を、在圏履歴データベース70に記憶する。
【0023】
次に、上述した構成の移動体通信システム100のページング処理について説明する。図5は、移動体通信システム100によるページング処理の動作手順を示すフローチャートである。
【0024】
図5に示すように、まず、あるUE10に対する着信が検出されると(ステップS01)、MME40のエリア推定部43により、UE10が直近に在圏していたTA30の情報と該当のUE10に関するページング履歴情報とが読み出される(ステップS02)。その後、エリア推定部43により、UE10に関するページング履歴情報が所定の件数を超えているか否かが判定される(ステップS03)。判定の結果、ページング履歴情報が所定の件数を超えていると判定された場合には(ステップS03;YES)、エリア推定部43によりページング履歴情報が時間帯毎に集計され、その集計の結果を基に推定在圏TAが決定され、MME40のページング処理部44によりその推定在圏TAを対象としたページング処理が実行される(ステップS04)。一方で、ページング履歴情報が所定の件数を超えていないと判定された場合には(ステップS03;NO)、ページング処理部44によりUE10が直近に在圏していたTA30を対象にページング処理が実行される(ステップS05)。
【0025】
その後、ページング処理部44により、ページング処理が成功したか否かが検出される(ステップS06)。その結果、ページング処理の成功が検出された場合は(ステップS06;YES)、ページング処理部44により在圏履歴データベース70に成功したページング処理に関するページング履歴情報が記憶される(ステップS08)。ページング処理の成功が検出されなかった場合は(ステップS06;NO)、ページング処理部44により、位置登録エリア記憶部45からTAリストが読み出され、そのTAリストに含まれる複数のTA30を対象に再度ページング処理が実行される(ステップS07)。最後に、ページング処理部44により在圏履歴データベース70に再度の処理により成功したページング処理に関するページング履歴情報が記憶される(ステップS08)。
【0026】
つぎに、本実施形態の移動体通信システム100の作用効果について説明する。この移動体通信システム100においては、ページング処理を実行する時刻の時間帯に過去にページング処理が成功したTAが集計され、集計されたTAを基にUE10が在圏する可能性の高いエリアを含むTAが推定される。そして、推定されたTAを優先的に対象としてUE10に対してページング処理が実行される。これにより、過去のページング処理の履歴を利用して効率的にページング処理を実行することができる。その結果、移動体通信システムのコアネットワークの処理負荷を高めることなく、ページング信号の通信量を効果的に削減することができる。特に、本実施形態では、成功したページング処理の履歴を基に優先的にページング処理の対象とするTAを決定しているので、時期的なUE10のユーザの行動パターンに加えて、時期的なネットワーク内の輻輳状態を含む通信状態も加味した上で、効率的にページング処理を実行することができる。
【0027】
また、上記実施形態では、推定在圏TAを対象にしたページング処理が失敗した場合には、UE10が直近に在圏していたことが登録されていたTAを対象に再度ページング処理が実行されている。これにより、US10の在圏するTAの推定精度が低い場合でも、ページング処理をより確実に成功させることができる。
【0028】
また、推定在圏TAの決定は、集計対象のページング履歴情報の件数が閾値を超えた場合にのみ行われている。このようにすることで、UE10の在圏するTAの推定精度が向上し、その結果、より効率的にページング処理を実行することができる。
【0029】
さらに、ページング履歴情報の集計は、曜日毎及び時間帯毎に行なわれている。この場合、集計によってUE10の在圏するTAの時間的傾向が推定されやすくなり、その結果、より効率的にページング処理を実行することができる。
【0030】
また、上記実施の形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現手段は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的及び/又は論理的に結合した1つの装置により実現されてもよいし、物理的及び/又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的及び/又は間接的に(例えば、有線及び/又は無線)で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。
【0031】
例えば、本発明の一実施の形態における移動体通信システム100を構成する各ノードなどは、本実施形態の移動体通信システム100の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。図6は、本実施形態に係る移動体通信システム100を構成するMME40のハードウェア構成の一例を示す図である。上述のMME40は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0032】
なお、本明細書における説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。MME40のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0033】
MME40における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信や、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
【0034】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。例えば、位置管理部41、ページング要求受信部42、エリア推定部43、ページング処理部44などは、プロセッサ1001で実現されてもよい。
【0035】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージ1003及び/又は通信装置1004からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、MME40の位置管理部41は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001で動作する制御プログラムによって実現されてもよく、他の機能ブロックについても同様に実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0036】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本発明の一実施の形態に係るページング処理を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0037】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD−ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu−ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002及び/又はストレージ1003を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。例えば、位置登録エリア記憶部45などは、ストレージ1003で実現されてもよい。
【0038】
通信装置1004は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0039】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイスであり、出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイスである。入力装置1005及び出力装置1006は、両者が一体となったタッチパネルディスプレイで実現されてもよい。
【0040】
また、プロセッサ1001やメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0041】
また、MME40は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0042】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、当業者にとっては、本実施形態が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本実施形態は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本実施形態に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0043】
例えば、上述した構成の移動体通信システム100によるページング処理は、図7に示す手順で行われてもよい。図7は、移動体通信システム100によるページング処理の動作手順の変形例を示すフローチャートである。このページング処理は、図5に示した手順と比較して、3段階でページング処理の対象のエリアを変更している点が異なる。
【0044】
図7に示すように、まず、あるUE10に対する着信が検出されると(ステップS11)、MME40のエリア推定部43により、UE10が直近に在圏していたTA30の情報と該当のUE10に関するページング履歴情報とが読み出される(ステップS12)。その後、エリア推定部43により、UE10に関するページング履歴情報が所定の件数を超えているか否かが判定される(ステップS13)。判定の結果、ページング履歴情報が所定の件数を超えていると判定された場合には(ステップS13;YES)、エリア推定部43によりページング履歴情報が時間帯毎に集計され、その集計の結果を基に推定在圏TAが決定され、MME40のページング処理部44によりその推定在圏TAを対象としたページング処理が実行される(ステップS14)。一方で、ページング履歴情報が所定の件数を超えていないと判定された場合には(ステップS13;NO)、推定在圏TAを対象としたページング処理が実行されないでスキップされる。
【0045】
その後、ページング処理部44により、ページング処理が成功したか否かが検出される(ステップS15)。その結果、ページング処理の成功が検出された場合は(ステップS15;YES)、ページング処理部44により在圏履歴データベース70に成功したページング処理に関するページング履歴情報が記憶される(ステップS19)。一方、ページング処理の成功が検出されなかった場合(ステップS15;NO)、あるいは、推定在圏TAを対象としたページング処理が実行されないでスキップされた場合は、ページング処理部44によりUE10が直近に在圏していたTA30を対象にページング処理が実行される(ステップS16)。
【0046】
その後、ページング処理部44により、ページング処理が成功したか否かが検出される(ステップS17)。その結果、ページング処理の成功が検出された場合は(ステップS17;YES)、ページング処理部44により在圏履歴データベース70に成功したページング処理に関するページング履歴情報が記憶される(ステップS19)。ページング処理の成功が検出されなかった場合は(ステップS17;NO)、ページング処理部44により、位置登録エリア記憶部45からTAリストが読み出され、そのTAリストに含まれる複数のTA30を対象に再度ページング処理が実行される(ステップS18)。最後に、ページング処理部44により在圏履歴データベース70に再度の処理により成功したページング処理に関するページング履歴情報が記憶される(ステップS19)。
【0047】
このような変形例にかかるページング処理の手順によっても、US10の在圏するTAの推定精度が低い場合に、ページング処理をより確実に成功させることができる。
【0048】
本明細書で説明した各態様/実施形態は、LTE(Long Term Evolution)、LTE−A(LTE-Advanced)、SUPER 3G、IMT−Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W−CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi−Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB(Ultra-WideBand)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及び/又はこれらに基づいて拡張された次世代システムに適用されてもよい。
【0049】
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0050】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0051】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0052】
本明細書で説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0053】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0054】
また、ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0055】
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0056】
なお、本明細書で説明した用語及び/又は本明細書の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。
【0057】
上述したパラメータに使用する名称はいかなる点においても限定的なものではない。
【0058】
本明細書で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。
【0059】
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0060】
「含む(include)」、「含んでいる(comprising)」、およびそれらの変形が、本明細書あるいは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書あるいは特許請求の範囲において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0061】
本明細書において、文脈または技術的に明らかに1つのみしか存在しない装置である場合以外は、複数の装置をも含むものとする。
【0062】
本開示の全体において、文脈から明らかに単数を示したものではなければ、複数のものを含むものとする。
【符号の説明】
【0063】
10…UE(移動局)、20…基地局装置、30…TA(位置登録エリア)、40…MME、41…位置管理部、42…ページング要求受信部、43…エリア推定部、44…ページング処理部、45…位置登録エリア記憶部、70…在圏履歴データベース(履歴情報格納部)、90…コアネットワーク、100…移動体通信システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7