(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、直流電力を交流電力に変換するインバータを、並列に接続してモーター等の負荷4を駆動させる並列インバータ装置が知られている。このような並列インバータ装置においては、半導体素子のばらつきなどにより、ひとつの半導体素子に電流が集中し、半導体素子の温度が高温になり破損する恐れがある。該並列インバータ装置を構成する各インバータ内の素子に短絡故障が発生した場合に、電流を遮断するためのヒューズを設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、インバータが備える複数の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)をスイッチング駆動することでスイッチング動作の過渡期に生じる電流のアンバランスを、スイッチング速度を調整することによって低減することが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、特許文献2の他にもゲート駆動の速度調整方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
図5に示すように、従来の並列インバータ装置5においては、第1のインバータ10及び第2のインバータ20が、いずれもその入力端において直流電源3に接続される。また、第1のヒューズ11に、直流電源3から第1のインバータ10に入力した定格以上の電流が流れると溶断する。第2のヒューズ21についても同様である。
【0005】
さらに、第1のインバータ10のIGBT群12を構成する各IGBTが、所定のタイミングでON及びOFFを繰り返すことによって、直流電源3によって印加された直流電圧を交流電圧に変換する。平滑コンデンサ13は、IGBT群12に入力する電圧を平滑化する。
【0006】
また、配線インダクタンス15は、配線が有するインダクタンスであり、IGBT群12がスイッチングすることで電流が流れて、サージ電圧が発生する。スナバコンデンサ16は、配線インダクタンス15に起因して発生するサージ電圧を抑制する。第2のインバータ20も上記のような第1のインバータ10と同様の構成を備える。
【0007】
また、制御部44は、各IGBT駆動回路17,18,27,28を制御するためのIGBT制御信号を出力電流バランス部45に出力する。IGBT制御信号とは、第1のインバータ10及び第2のインバータ20が所望の電流を出力するための信号である。
【0008】
また、出力電流バランス部45は、電流検出器19によって検出された第1の電流の電流値と、電流検出器29によって検出された第2の電流の電流値とに基づいて、制御部44から出力されたIGBT制御信号を第1の電流及び第2の電流のバランスをとるように調整して、第1のゲートa駆動回路17、第1のゲートb駆動回路18、第2のゲートa駆動回路27、及び第2のゲートb駆動回路28にゲート信号を出力する。
【0009】
そして、出力電流バランス部45が出力するゲート信号に基づいて第1のゲートa駆動回路17、第1のゲートb駆動回路18、第2のゲートa駆動回路27、及び第2のゲートb駆動回路28が、各IGBTをONしたりOFFしたりすることによって、入力端から入力された直流電力が交流電力に変換されて、負荷4に出力される。なお、
図5には、第1のインバータの1つの相、及び第2のインバータの1つの相を流れる電流値を検出する電流検出器19のみが記載されており、他の相を流れる電流値を検出する電流検出器19は省略されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の従来技術のような並列インバータ装置5においては、第1のインバータ10及び第2のインバータ20のいずれかが備えるヒューズが溶断した場合、少なくとも溶断したヒューズを備えるインバータには不具合があったものと考えられるため、運転を停止する必要がある。しかしながら、例えば第2のインバータ20が備えるヒューズが切れた場合、第1のインバータ10と第2のインバータ20の直流電圧に電圧差が生じ、第1のインバータ10の出力側から横流抑制用インダクタンス群30を介して、第2のインバータ20の出力側に流れ込み、IGBTに逆並列に接続された負荷電流を転流させるためのダイオード(FWD:Free Wheeling Diode)を介してインバータ2の平滑コンデンサをチャージし、
図5の矢印に示すようなまわり回路を形成することによって、第2のインバータ20は運転を継続する。
【0012】
これにより、第1のインバータ10と第2のインバータ20とがそれぞれの定格電流を出力するのではなく、第1のインバータ10と第2のインバータ20のうちヒューズが溶断していないほうが1台分の定格電流以上の電流を出力することになる。したがって、IGBT群12又は22には、ヒューズ10及び20のいずれも切れずに正常な運転がされている場合に比べて大きい電流が流れ、IGBT群12又は22を構成するIGBTが破損するおそれがある。
【0013】
このようにヒューズ11又は12が溶断した場合に並列インバータ装置5を停止するために、ヒューズ11及び12の溶断を検知する必要がある。このため、ヒューズ11及び12の溶断を検知するインジケータを設けることが考えられるが、この場合、各ヒューズ11,12とIGBT群12,22との間の配線インダクタンス15,25が大きくなる。これにより、IGBT群12,22のスイッチングにより配線インダクタンス15,25で発生するサージ電圧が高くなり、これを抑制するためのスナバコンデンサ16,26が大型化することが避けられない。また、大電流を流すことのできるヒューズがないため、大容量のインバータにおいては、ヒューズを並列に接続する必要があり、この場合、インジケータに係る配線が増え、その設置に係るスペース及びコストが増加するという問題が生じる。
【0014】
また、電流検出器19によって検出された第1の電流、及び電流検出器29によって検出された第2の電流の値が異なるようになったことを検知して、ヒューズ11又は12が溶断したと判定することが考えられる。しかし、IGBTゲート駆動回路やIGBTのON電圧、スイッチング速度のばらつきにより電流がきれいに分流しないことがあり、誤検出してしまう場合がある。
【0015】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、大型化を伴わずにヒューズの溶断を検知することができる並列インバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決すべく、本発明に係る並列インバータ装置は、直流電源から第1のヒューズを介して入力された直流電力を交流電力に変換して第1の電流を出力する第1のインバータと、前記直流電源から第2のヒューズを介して入力された直流電力を交流電力に変換して第2の電流を出力する第2のインバータと、前記第1の電流の向きと大きさ、及び前記第2の電流の向きと大きさに基づいて、前記第1のヒューズ又は前記第2のヒューズが溶断していることを検出する異常検出部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る並列インバータ装置において、トルク・回転数指令値から三相電流指令値を算出する制御部をさらに備え、前記異常検出部は、前記三相電流指令値の各相の電流指令値の極性及び前記第1の電流の向きに基づいて前記第1のヒューズが溶断しているか否かを判定し、前記各相の電流指令値の極性及び前記第2の電流の向きに基づいて前記第2のヒューズが溶断しているか否かを判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る並列インバータ装置は、直流電源から第1のヒューズを介して入力された直流電圧を交流電圧に変換する複数の第1のIGBTと、前記複数の第1のIGBTにそれぞれ設けられた、第1の抵抗を有する個別スナバ回路と、を含む第1のインバータと、前記直流電源から第2のヒューズを介して入力された直流電圧を交流電圧に変換する複数の第2のIGBTと、前記複数の第2のIGBTにそれぞれ設けられた、第2の抵抗を有する個別スナバ回路とを含む第2のインバータと、前記第1の抵抗に発生した第1の電圧、及び前記第2の抵抗に発生した第2の電圧に基づいて、前記第1のヒューズ及び前記第2のヒューズのいずれが溶断しているかを特定する異常検出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大型化を伴わずにヒューズの溶断を検知することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、第1の実施形態に係る並列インバータ装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示す例では、並列インバータ装置1は、第1のインバータ10、第2のインバータ20、横流抑制用インダクタンス群30、第1の電流方向判定部41、第2の電流方向判定部42、異常検出部43、制御部44、出力電流バランス部45、及び電流指令極性判定部46を備える。第1のインバータ10及び第2のインバータ20は、いずれもその入力端において直流電源3に接続される。以降の説明において、第1のインバータ10及び第2のインバータ20のうち任意のインバータを適宜、「インバータ」という。
【0023】
第1のインバータ10は、第1のヒューズ11、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)群12、平滑コンデンサ13、配線インダクタンス15、スナバコンデンサ16、第1のゲートa駆動回路17、第1のゲートb駆動回路18、及び電流検出器19を備える。
【0024】
第1のヒューズ11は、直流電源3から第1のインバータ10に定格以上の電流が流れると溶断する。これによって、第1のヒューズ11は、直流電源3から第1のインバータ10に大電流が流れるのを阻止し、第1のインバータ10を保護する。
【0025】
IGBT群12は、IGBT12ua、12ub、12va、12vb、12wa、12wbを備える。IGBT12ua及びIGBT12ubは互いに直列に接続され、IGBT12va及びIGBT12vbは互いに直列に接続され、IGBT12wa及びIGBT12wbは互いに直列に接続される。また、直列に接続されたIGBT12va及びIGBT12vbは、入力端に接続された直流電源3に並列に接続される。IGBT12va及びIGBT12vb、IGBT12wa及びIGBT12wbについても同様である。
【0026】
IGBT12ua〜12wbは、第1のゲートa駆動回路17及び第1のゲートb駆動回路18に駆動されてON及びOFFを繰り返すことによって、直流電源3によって印加された直流電圧を交流電圧に変換する。
【0027】
平滑コンデンサ13は、直流電源3及びIGBT群12に並列に接続される。平滑コンデンサ13は、IGBT群12に入力する電圧を平滑化する。
【0028】
配線インダクタンス15は、配線が有するインダクタンスであり、IGBT群12がスイッチングすることでサージ電圧が発生する。
【0029】
スナバコンデンサ16は、配線インダクタンス15に起因して発生するサージ電圧を抑制する。
【0030】
第1のゲートa駆動回路17は、制御部44よって出力されたIGBT制御信号に基づいて、IGBT12ua、12va、及び12waがONしたりOFFしたりするよう駆動する。
【0031】
第1のゲートb駆動回路18は、制御部44によって出力されたIGBT制御信号に基づいて、IGBT12ub、12vb、及び12wbがONしたりOFFしたりするよう駆動する。
【0032】
電流検出器19は、IGBT群12によって変換された各相の交流電流の電流値を検出する。
図1においては、U相を流れる電流値を検出する電流検出器19のみが記載されており、V相及びW相を流れる電流値を検出する電流検出器19は省略されている。
【0033】
第2のインバータ20は、第2のヒューズ21、IGBT群22、平滑コンデンサ23、配線インダクタンス25、スナバコンデンサ26、第2のゲートa駆動回路27、第2のゲートb駆動回路28、及び電流検出器29を備える。第2のヒューズ21、IGBT群22、平滑コンデンサ23、配線インダクタンス25、スナバコンデンサ26、第2のゲートa駆動回路27、第2のゲートb駆動回路28、及び電流検出器29は、それぞれ第1のヒューズ11、IGBT群12、平滑コンデンサ13、配線インダクタンス15、スナバコンデンサ16、第1のゲートa駆動回路17、第1のゲートb駆動回路18、及び電流検出器19と同様であるため説明を省略する。なお、以降の説明において、第1のヒューズ11及び第2のヒューズ21のうちの任意のヒューズを適宜、「ヒューズ」という。
【0034】
横流抑制用インダクタンス群30は、IGBT群12とIGBT群22とのスイッチング速度の差によって生じる電圧差によって第1のインバータ10と、第2のインバータ20との間に流れる電流を抑制する。
【0035】
第1の電流方向判定部41は、第1のインバータ10の電流検出器19によって検出された電流値に基づいて電流の向きを判定する。本実施形態では、電流検出器19によって検出された電流値が正の値である場合、電流は第1のインバータ10の出力側から横流抑制用インダクタンス群30へ流れ、電流値が負の値である場合、電流は横流抑制用インダクタンス群30から第1のインバータ10の出力側へ流れている。以降の説明においては、第1のインバータ10の出力側から横流抑制用インダクタンス群30への向きを「正の向き」といい、横流抑制用インダクタンス群30から第1のインバータ10の出力側への向きを「負の向き」という。
【0036】
第2の電流方向判定部42は、第2のインバータ20の電流検出器29によって検出された電流値に基づいて電流の向きを判定する。本実施形態では、電流検出器29によって検出された電流値が正の値である場合、電流は第2のインバータ20の出力側から横流抑制用インダクタンス群30へ流れ、電流値が負の値である場合、電流は横流抑制用インダクタンス群30から第2のインバータ20の出力側へ流れている。以降の説明においては、第2のインバータ20の出力側から横流抑制用インダクタンス群30への向きを「正の向き」といい、横流抑制用インダクタンス群30から第2のインバータ20の出力側への向きを「負の向き」という。
【0037】
制御部44は、負荷4であるモーターのトルク又は回転数についてのトルク・回転指令値の入力を受け付け、入力されたトルク又は回転数に基づいて、IGBT群12,22を制御するためのIGBT制御信号を出力電流バランス部45に出力する。また、異常検出部43によって検出された異常検知信号の入力を受け付ける。
【0038】
また、制御部44は、入力されたトルク・回転指令値に基づいて、三相電流指令値を算出し、電流指令極性判定部46に出力する。
【0039】
出力電流バランス部45は、電流検出器19によって検出された第1の電流の電流値と、電流検出器29によって検出された第2の電流の電流値とに基づいて、第1の電流及び第2の電流のバランスがとれるように、IGBT制御信号を第1のゲートa駆動回路17、第1のゲートb駆動回路18、第2のゲートa駆動回路27、及び第2のゲートb駆動回路28に出力する。
【0040】
電流指令極性判定部46は、各相の電流指令値の極性を判定する。
【0041】
異常検出部43は、第1の電流方向判定部41によって判定された第1の電流の向き、第2の電流方向判定部42によって判定された第2の電流の向き、及び各相の電流指令値の極性に基づいて、出力バランスの判定を行うことによって、第1のインバータ10又は第2のインバータ20に異常があることを検出する。
【0042】
また、異常検出部43は、第1の電流の向きと、後述する電流指令極性判定部46によって判定された各相の電流指令値の極性とに基づいて第1のヒューズ11が溶断しているか否かを判定する。異常検出部43は、第1の電流の向きと、各相の電流指令値の極性とが同一である場合、第1のヒューズ11は溶断していないと判定し、第1の電流の向きと三相電流値の極性とが異なる場合、第1のヒューズ11は溶断していると判定し、第1のインバータ10に異常が発生していると検出する。
【0043】
同様にして、異常検出部43は、第2の電流の向きと各相の電流指令値の極性とに基づいて第2のヒューズ21が溶断しているか否かを判定する。具体的には、異常検出部43は、第2の電流の向きと各相の電流指令値の極性とが同一である場合、第2のヒューズ21は溶断していないと判定し、第2の電流の向きと各相の電流指令値の極性とが異なる場合、第2のヒューズ21は溶断していると判定し、第2のインバータ20に異常が発生していると検出する。
【0044】
例えば、
図2(1)に表されるように、各相の電流値が周期をT(sec)とする正弦波として表される場合、
図2(2)に示すように、三相電流値の極性はt=0〜(1/2)Tにおいて正でありt=(1/2)T〜Tにおいて負である。
【0045】
このような各相の電流指令値に基づく制御によって、電流検出器19によって検出された第1の電流が
図2(3)のように表される場合、第1の電流方向判定部41は、第1の電流の向きが、t=0〜(1/2)T(sec)において正であり、t=(1/2)T〜T(sec)において負であると判定する(
図2(4)参照)。したがって、第1の電流の向きは、三相電流値の極性と同一であるため、異常検出部43は、第1のインバータ10が正常である、すなわち第1のヒューズ11が溶断していないと判定する。
【0046】
また、
図2(1)に表されるような三相電流値に基づく制御によって、電流検出器29によって検出された第2の電流が
図2(5)のように表される場合、第2の電流方向判定部42は、第2の電流の向きが、t=0〜t
1(sec)(0<t
1<(1/2)T)において正であり、t=t
1〜(1/2)T(sec)において負であると判定する(
図2(6)参照)。また、第2の電流方向判定部42は、第2の電流の向きが、t=(1/2)T〜t
2(sec)((1/2)T<t
1<T)において負であり、t=t
2〜T(sec)において正であると判定する(
図2(6)参照)。したがって、t
1<t<(1/2)T及びt
2<t<Tにおける第2の電流の向きは、三相電流値の極性と異なるため、異常検出部43は、第2のヒューズ21が溶断していると判定する。
【0047】
以上のように、第1の実施形態によれば、第1の電流の向き及び第2の電流の向きに基づいて、第1のヒューズ11又は第2のヒューズ21が溶断していることを検出する。そのため、ヒューズの溶断を検知するインジケータを配置することが不要となる。したがって、インジケータの配置に係るスペースが不要となり、インバータが大型化するのを避けることができる。
【0048】
また、第1の実施形態によれば、各相の電流指令値及び第1の電流に基づいて第1のヒューズ11が溶断しているか否かを判定し、各相の電流指令値及び第2の電流に基づいて第2のヒューズ21が溶断しているか否かを判定する。このため、第1のヒューズ11及び第2のヒューズ21のいずれかが溶断している場合に、どちらのヒューズが溶断しているかを検出することができる。これにより、例えば、並列インバータ装置1の第1のインバータ10及び第2のインバータ20のうちの、ヒューズが溶断している方のインバータのみを停止させることができる。出力電力が低下しても運転を継続することが要求される負荷4においては、その運転を完全に停止することを避けることが可能となる。
【0049】
以下、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0050】
図3に示すように、第2の実施形態における並列インバータ装置2は、第1の実施形態における並列インバータ装置1と同様に、第1のインバータ10、第2のインバータ20、横流抑制用インダクタンス群30、制御部44、及び出力電流バランス部45を備える。なお、第1の実施形態における並列インバータ装置1と同様の構成ブロックについては同一の参照符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0051】
第2の実施形態の第1のインバータ10においては、IGBT12ua〜12wbそれぞれに個別スナバ回路50ua〜wbを備える。個別スナバ回路50は、放電阻止形スナバ回路50である。
【0052】
各放電阻止形スナバ回路50ua〜wbは、それぞれIGBT12ua〜12wbに接続される。便宜上、
図3においては、放電阻止形スナバ回路50va、50vb、50wa、50wb、60va、60vb、60wa、60wbは省略されている。放電阻止形スナバ回路50uaを例として説明すると、
図4(a)に示すように、放電阻止形スナバ回路50uaは、抵抗51ua,コンデンサ52ua,ダイオード53uaを有する。コンデンサ52uaとダイオード53uaは直列に接続され、IGBT12uaに並列に接続されている。また、抵抗51uaは、コンデンサ52ua及びダイオード53uaの間と、第1のヒューズ11が設けられていない方の入力端との間に接続される。
【0053】
第2のインバータ20についても、
図4(b)に示すように、第1のインバータ10と同様に、IGBT12uaに対応するIGBT22uaに抵抗61ua、コンデンサ62ua、及びダイオード63uaを有する放電阻止形スナバ回路60uaが接続される。
【0054】
また、
図3に戻って、第2の実施形態の第1のインバータ10は、第1の電圧検出器71、第2の電圧検出器72、減算部73、絶対値算出部74、比較部76、及び異常検出部77を備える。
【0055】
第1の電圧検出器71は、放電阻止形スナバ回路50が有する抵抗51の両端のサージ電圧の値(第1の電圧値)V1を測定する。
【0056】
第2の電圧検出器72は、放電阻止形スナバ回路60が有する抵抗61の両端のサージ電圧の値(第2の電圧値)V2を測定する。
【0057】
減算部73は、第1の電圧検出器71によって検出された第1の電圧値V1と、第2の電圧検出器72によって検出された第2の電圧値V2との差であるサージ電圧差V1−V2を算出する。
【0058】
絶対値算出部74は、減算部73によって算出されたサージ電圧差V1−V2の絶対値|V1−V2|を算出する。
【0059】
比較部76は、絶対値算出部74によって算出されたサージ電圧差の絶対値|V1−V2|をサージ電圧差の基準値と比較する。基準値とは、サージ電圧差の絶対値|V1−V2|がこの値より大きい場合には、第1のヒューズ11又は第2のヒューズ21が溶断しているとされる閾値である。
【0060】
比較部76は、絶対値算出部74によって算出された絶対値が基準値未満である場合、第1のヒューズ11及び第2のヒューズ21は溶断していない、すなわち、並列インバータ装置2の異常を検出しない。また、比較部76は、絶対値が基準値以上である場合、第1のヒューズ11又は第2のヒューズ21が溶断している、すなわち、並列インバータ装置2が異常であることを検出する。
【0061】
異常検出部77は、第1のインバータ10と第2のインバータ20とのいずれに異常があるのかを、減算部73によって算出されたサージ電圧差の絶対値|V1−V2|を用いて特定する。
【0062】
ここで、異常検出部77は、異常が発生しているインバータを特定する処理について詳細に説明する。
【0063】
図4は、並列インバータ装置1に設けられた放電阻止形スナバ回路50及び60を示す図である。
図4(a)の実線の矢印は第1のヒューズ11が溶断しておらず、IGBT12uaがONである場合の電流の流れを示し、
図4(a)の破線の矢印は、第1のヒューズ11が溶断しておらず、IGBT12uaがOFFになった場合に配線インダクタンス15によって流し続けられる電流の流れを示している。
図4(a)の破線の矢印に示すように、第1のヒューズ11が溶断しておらず、IGBT12uaがOFFになった場合に配線インダクタンス15に蓄えられたエネルギーにより、電流がコンデンサ52uaの方へ流れることによってコンデンサ52uaの電圧が高くなる。このため、抵抗51に発生する電圧は、IGBT12uaがONである場合の電圧に比べて高くなる。
【0064】
また、
図4(b)の実線の矢印は第2のヒューズ21が溶断し、IGBT22uaがONである場合のまわり回路による電流の流れを示し、
図4(b)の破線の矢印は、第2のヒューズ21が溶断し、IGBT22uaがOFFである場合の電流の流れを示している。
図4(b)の破線の矢印に示すように、第2のヒューズ21が溶断しているときには、
平滑コンデンサ23の電位が、溶断していないほうの第1のインバータ10に比べて下がるので、平滑コンデンサ23を充電するためにIGBT22uaのダイオード(FRD:Fast Recovery Diode)に電流が流れ、IGBT22uaがOFFになっても抵抗61に発生する電圧は高くならない。
【0065】
このような、放電阻止形スナバ回路50及び60における電流の流れの違いにより、IGBT12uaがOFFになったとき、第1のヒューズ11が溶断していない場合の放電阻止形スナバ回路50の抵抗51に発生する電圧は、第2のヒューズ21が溶断している場合の放電阻止形スナバ回路60の抵抗61に発生する電圧より高い。第1のヒューズ11が溶断しており、第2のヒューズ21が溶断していない場合についても同様にして、IGBT22uaがOFFになったとき、抵抗61に発生する電圧は抵抗51に発生する電圧より高い。
【0066】
すなわち、第1のヒューズ11及び第2のヒューズ21のいずれかが溶断している場合、溶断していないヒューズを有するインバータの放電阻止形スナバ回路50の抵抗に発生する電圧は、溶断しているヒューズを有するインバータの放電阻止形スナバ回路50の抵抗に発生する電圧より高い。
【0067】
したがって、異常検出部77は、サージ電圧差の絶対値|V1−V2|が基準値以上であり、減算部73によって算出されたサージ電圧差V1−V2が負の値である場合、第1のヒューズ11が溶断している、すなわち第1のインバータ10は異常であると特定する。また、比較部76は、サージ電圧差の絶対値|V1−V2|が基準値以上であり、減算部73によって算出されたサージ電圧差V1−V2が正の値である場合、第2のヒューズ21が溶断している、すなわち第2のインバータ20が異常であると特定する。
【0068】
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、V1−V2が正であるか負であるかによっていずれのヒューズが溶断しているかを特定することができる。
【0069】
本発明を図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロック、に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のブロックを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。