(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0011】
(射出成形機)
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図1〜
図2に示すように、射出成形機は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700とを有する。以下、射出成形機の各構成要素について説明する。
【0012】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中左方向)を後方として説明する。
【0013】
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
【0014】
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
【0015】
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
【0016】
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型11と可動金型12とで金型装置10が構成される。
【0017】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0018】
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0019】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられる。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0020】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0021】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0022】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0023】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0024】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0025】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
【0026】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0027】
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0028】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
【0029】
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(速度の切替位置、型閉完了位置、型締位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0030】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0031】
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化などにより金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0032】
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0033】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0034】
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0035】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0036】
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0038】
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0039】
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
【0040】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。
【0041】
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
【0042】
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
【0043】
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
【0044】
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
【0045】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設される。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。タイバーは、上下方向に平行とされ、下プラテンを貫通し、上プラテンとトグルサポートとを連結する。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
【0046】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0047】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中左方向)を後方として説明する。
【0048】
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
【0049】
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
【0050】
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0051】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0052】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
【0053】
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0054】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中右方向)を後方として説明する。
【0055】
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチし、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
【0056】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0057】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(
図1および
図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0059】
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
【0060】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)まで後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0062】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)まで前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0063】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0064】
尚、射出装置300は、逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0065】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0066】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0067】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
【0068】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0069】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
【0070】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0071】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。
【0072】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
【0073】
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクルの短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0074】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0075】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0076】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0077】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0078】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中右方向)を後方として説明する。
【0079】
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0080】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0081】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0082】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0083】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0084】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
【0085】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0086】
(制御装置)
制御装置700は、
図1〜
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0087】
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル」とも呼ぶ。
【0088】
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
【0089】
操作画面は、射出成形機の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
【0090】
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0091】
(型締装置の型締における負荷低減)
図3は、一実施形態による制御装置の処理を示すフローチャートである。
図3に示すステップS101以降の処理は、型閉工程の開始条件が成立したときに行われる。
【0092】
制御装置700は、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151の前進を開始させる。これに伴い、可動プラテン120の前進が開始され、型閉工程が開始される。クロスヘッド151は、設定速度で前進させられる。
【0093】
制御装置700は、クロスヘッド151の前進中、クロスヘッド151の位置が予め設定された型締位置に達したか否かをチェックする(ステップS102)。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。
【0094】
クロスヘッド151の位置が型締位置に達していない場合(ステップS102、No)、制御装置700はステップS101に戻ってステップS101以降の処理を続行する。クロスヘッド151の設定速度は、クロスヘッド151の前進中に、クロスヘッド151の位置に応じて変更されてもよい。
【0095】
クロスヘッド151の位置が型締位置に達すると(ステップS102、Yes)、制御装置700は、クロスヘッド151を型閉方向に移動させる方向とは逆方向に型締モータ160を所定量回転させる(ステップS103)。ステップS103では、型締モータ160の駆動力でクロスヘッド151を型閉方向に押しながら、型締モータ160を駆動方向とは逆方向に所定量回転させる。型締モータ160の逆回転量は、型締力の変化が型締力制御に影響が出ない程度に設定されてよい。
【0096】
クロスヘッド151の位置が型締位置または型締位置付近である場合、リンク角度θが180°または180°に近い値になるため、クロスヘッド151の移動量に比べて可動プラテン120の移動量は著しく小さい。
【0097】
そのため、型締力の変化が型締力制御に影響が出ない程度に、型締モータ160の逆回転量を設定することが可能である。型締モータ160の逆回転量は、クロスヘッド151の後退量で表されてよい。その後退量は、操作装置750において入力され、記憶媒体702に記憶され、必要に応じて読み出される。尚、後退量のデータは、書き換え可能なデータ、書き換え不能なデータのいずれでもよい。
【0098】
続いて、制御装置700は、型締モータ160を所定量逆回転させた位置でクロスヘッド151を所定時間位置保持する(ステップS104)。つまり、制御装置700は、クロスヘッド151を型締位置から僅かに後退させた位置で所定時間位置保持する。このとき、クロスヘッド151は型締モータ160の駆動力で型閉方向に押されている。
【0099】
型締モータ160の逆回転量は、クロスヘッド151が僅かに後方に変位する一方で可動プラテン120の位置の変化が位置制御に影響が出ない程度に設定されてよい。可動プラテン120の位置の変化が位置制御に影響が出ないので、型締力がほぼ低下しない。上述の如く、クロスヘッド151の位置が型締位置または型締位置付近である場合、クロスヘッド151の移動量に比べて可動プラテン120の移動量は著しく小さいため、可動プラテン120の位置の変化が位置制御に影響が出ない程度に、クロスヘッド151の後退量を設定することが可能である。
【0100】
また、クロスヘッド151が僅かに後方に変位する一方で可動プラテン120がほぼ後方に変位しない理由としては、トグル機構150の節点においてズレが生じたり、トグル機構150を構成する各種リンクに歪が生じたりすることも挙げられる。
【0101】
可動プラテン120の位置がほぼ変化しない理由として、可動金型12が型締によって固定金型11に密着させられていることも考えられる。その密着は、可動金型12の固定金型11と接触する接触面の微小な凹凸と、固定金型11の可動金型12と接触する接触面の微小な凹凸との噛み合いなどによって生じうる。
【0102】
図4は、一実施形態によるクロスヘッドを型閉方向に移動させた後、クロスヘッドを型開方向に僅かに変位させて位置保持したときの状態を示す図である。
図4に白抜きの矢印で示すようにクロスヘッド151を型閉方向とは逆方向(後方)に変位させることで、型閉方向の摩擦力FFが生じる。この摩擦力FFは、例えばトグル機構150の節点などにおいて生じる。摩擦力FFを型締力に利用することで、所定の型締力を得るための型締モータ160の負荷を低減できる。
【0103】
続いて、制御装置700は、型締工程の終了条件が成立したか否かをチェックする(ステップS105)。型締工程の終了条件は、例えばステップS104の位置保持の開始からの経過時間が所定時間に達したことである。その経過時間は、タイマーなどで計測される。
【0104】
型締工程の終了条件が成立していない場合(ステップS105、No)、制御装置700はステップS104に戻ってステップS104以降の処理を続行し、金型装置10の型締状態を保持する。型締工程中に、充填工程や保圧工程、計量工程などが行われる。
【0105】
型締工程の終了条件が成立している場合(ステップS105、Yes)、制御装置700はステップS106に進み、クロスヘッド151の後退を開始させる。これにより、可動プラテン120の後退が開始され、型開工程が開始される。クロスヘッド151は、設定速度で後退させられる。
【0106】
続いて、制御装置700は、クロスヘッド151の後退中、クロスヘッド151の位置が型開完了位置に達したか否かをチェックする(ステップS107)。尚、クロスヘッド151の後退中に、ステップS103によって生じる、トグル機構150の節点におけるズレや、トグル機構150を構成する各種リンクの歪は解消する。
【0107】
クロスヘッド151の位置が型開完了位置に達していない場合(ステップS107、No)、制御装置700はステップS106に戻ってステップS106以降の処理を続行する。クロスヘッド151の設定速度は、クロスヘッド151の後退中に、クロスヘッド151の位置に応じて変更されてもよい。
【0108】
一方、クロスヘッド151の位置が型開完了位置に達している場合(ステップS107、Yes)、制御装置700は今回の処理を終了する。
【0109】
以上説明したように、本実施形態によれば、型締モータ160の駆動力でクロスヘッド151を型閉方向に移動させた後、クロスヘッド151を型閉方向に移動させる方向とは逆方向に型締モータ160を所定量回転させ、クロスヘッド151を型閉方向とは逆方向に変位させる。これにより、型閉方向の摩擦力FFを発生させることができ、その摩擦力FFを型締力に利用することができるため、所定の型締力を得るための型締モータ160の負荷を低減できる。また、型締モータ160の負荷を低減できるため、クロスヘッド151の型開動作を素早く行うことができ、成形サイクルを短縮することもできる。成形サイクルの短縮には、型開工程の開始前にクロスヘッド151の位置を型締位置から僅かに型開完了位置の方に寄せていることも寄与する。また、型締モータ160の負荷を低減できるため、エネルギーの使用量を削減できる。
【0110】
尚、本実施形態では、クロスヘッド151が型締位置に到達したときの型締モータ160の逆回転量は、型締力の変化が型締力制御に影響が出ない程度に設定され、可動プラテン120の位置の変化が位置制御に影響が出ない程度に設定されるが、可動プラテン120が僅かに後方に変位してもよい。可動プラテン120が僅かに後退して停止した位置と同じ位置まで、仮に可動プラテン120が前進してそのまま停止した場合、摩擦力FFの働く向きは後向きになり、型閉方向とは逆向きになってしまう。これに対し、可動プラテン120が僅かに後退して停止した場合、摩擦力FFの働く向きは前向きになるので、その摩擦力FFを型締力に利用でき、型締モータ160の負荷を低減できる。
【0111】
(型締装置の圧縮成形における負荷低減)
図5は、一実施形態による型締装置の圧縮成形の動作を示す図である。
図5(a)はクロスヘッドが型開完了位置にあるときの状態を、
図5(b)はクロスヘッドが型締位置から僅かに後方に変位されて位置保持されている状態を、
図5(c)はクロスヘッドが圧縮成形位置から僅かに後方に変位されて位置保持されている状態をそれぞれ示す。
【0112】
図5に示す金型装置10Aは、固定プラテン110に取付けられる固定金型11Aと、可動プラテン120に取付けられる可動金型12Aとを含む。可動金型12Aは、金型本体部31A、枠状部32A、およびバネ部33Aを有する。枠状部32Aは、金型本体部31Aの凸部を囲み、バネ部33Aを介して金型本体部31Aと連結される。
【0113】
制御装置700は、
図5(a)に示す型開完了位置から型締位置までクロスヘッド151を前進させることにより、可動プラテン120を前進させる。これにより、可動金型12Aの枠状部32Aが固定金型11Aに押し付けられ、可動金型12Aのバネ部33Aが縮み、可動金型12Aの金型本体部31Aと固定金型11Aとの間にキャビティ空間14Aが形成される。
【0114】
制御装置700は、クロスヘッド151の位置が型締位置に達すると、クロスヘッド151を型閉方向に移動させる方向とは逆方向に型締モータ160を所定量回転させる。このとき、型締モータ160の駆動力でクロスヘッド151を型閉方向に押しながら、型締モータ160を駆動方向とは逆方向に所定量回転させてよい。型締モータ160の逆回転量は、型締力の変化が型締力制御に影響が出ない程度に設定されてよい。
【0115】
続いて、制御装置700は、型締モータ160を所定量逆回転させた位置でクロスヘッド151を所定時間位置保持する。つまり、制御装置700は、クロスヘッド151を型締位置から僅かに後退させた位置(
図5(b)参照)で所定時間位置保持する。このとき、クロスヘッド151は型締モータ160の駆動力で型閉方向に押されている。
【0116】
図5(b)に白抜きの矢印で示すようにクロスヘッド151を型締方向とは逆方向(後方)に変位させることで、型閉方向の摩擦力FFが生じる。この摩擦力FFは、例えばトグル機構150の節点などにおいて生じる。摩擦力FFを型締力に利用することで、所定の型締力を得るための型締モータ160の負荷を低減できる。
【0117】
制御装置700は、クロスヘッド151を
図5(b)に示す位置で所定時間位置保持させる間に、充填工程を開始する。クロスヘッド151が
図5(b)に示す位置で所定時間位置保持される間に、キャビティ空間14Aに成形材料が充填されてよい。
【0118】
尚、詳しくは後述するが、クロスヘッド151は
図5(b)に示す位置で所定時間保持された後、さらに圧縮成形位置まで前進させられる。そのため、クロスヘッド151を
図5(b)に示す位置で位置保持するときに、リンク角度θが180°よりも小さく、トグル倍率が低い状態となっている。このような場合に、型締モータ160の負荷を低減できる意義は大きい。
【0119】
制御装置700は、
図5(b)に示す位置から圧縮成形位置までクロスヘッド151をさらに前進させることにより、可動プラテン120をさらに前進させる。これにより、可動金型12Aのバネ部33Aがさらに縮み、キャビティ空間14Aが小さくなり、キャビティ空間14Aに充填された成形材料が圧縮される。
【0120】
制御装置700は、クロスヘッド151の位置が圧縮成形位置に達すると、クロスヘッド151を型閉方向に移動させる方向とは逆方向に型締モータ160を所定量回転させる。このとき、型締モータ160の駆動力でクロスヘッド151を型閉方向に押しながら、型締モータ160を駆動方向とは逆方向に所定量回転させてよい。型締モータ160の逆回転量は、型締力の変化が型締力制御に影響が出ない程度に設定されてよい。
【0121】
続いて、制御装置700は、型締モータ160を所定量逆回転させた位置でクロスヘッド151を所定時間位置保持する。つまり、制御装置700は、クロスヘッド151を圧縮成形位置から僅かに後退させた位置(
図5(c)参照)で所定時間位置保持する。このとき、クロスヘッド151は型締モータ160の駆動力で型閉方向に押されている。
【0122】
図5(c)に白抜きの矢印で示すようにクロスヘッド151を型閉方向とは逆方向に変位させることで、型閉方向の摩擦力FFが生じる。この摩擦力FFは、例えばトグル機構150の節点などにおいて生じる。摩擦力FFを型締力に利用することで、所定の型締力を得るための型締モータ160の負荷を低減できる。型締モータ160の負荷を低減できるため、クロスヘッド151の型開動作を素早く行うことができ、成形サイクルを短縮することもできる。成形サイクルの短縮には、型開工程の開始前にクロスヘッド151の位置を圧縮成形位置から僅かに型開完了位置の方に寄せていることも寄与する。また、型締モータ160の負荷を低減できるため、エネルギーの使用量を削減できる。
【0123】
制御装置700は、クロスヘッド151を
図5(c)に示す位置で所定時間位置保持した後、クロスヘッド151を
図5(a)に示す型開完了位置まで後退させる。クロスヘッド151が
図5(c)に示す位置で所定時間位置保持される間に、キャビティ空間14Aに充填された成形材料が固化され、成形品が得られる。
【0124】
尚、本実施形態では、クロスヘッド151を
図5(c)に示す位置で所定時間位置保持した後、クロスヘッド151を
図5(a)に示す型開完了位置まで後退させるが、その間に、クロスヘッド151を前進させたり、後退させたりしてもよい。制御装置700は、クロスヘッド151を設定位置まで前進させ、続いて当該設定位置から僅かに後方に変位させて所定時間位置保持してよい。クロスヘッド151の設定位置の数に制限はない。
【0125】
尚、本実施形態では、可動金型12Aが金型本体部31A、枠状部32A、およびバネ部33Aを有するが、固定金型11Aが金型本体部、枠状部、およびバネ部を有してもよい。また、金型本体部31Aと枠状部32Aとの間に配設される部材として、バネ部33Aに代えて、油圧シリンダが用いられてもよい。また、金型装置10Aは、インロー型などでもよい。
【0126】
(エジェクタ装置の圧縮成形における負荷低減)
図6は、一実施形態によるエジェクタ装置の圧縮成形の動作を示す図である。
図6(a)はエジェクタロッドの位置が圧縮待機位置にあるときの状態を、
図6(b)はエジェクタロッドの位置が圧縮成形位置から僅かに後方に変位されて位置保持されているときの状態をそれぞれ示す。
【0127】
図6に示す金型装置10Bは、固定プラテン110に取付けられる固定金型11Bと、可動プラテン120に取付けられる可動金型12Bとを含む。
図6に示すように型締時に固定金型11Bと可動金型12Bとの間にキャビティ空間14Bが形成される。成形材料2は、固定金型11Bに形成されるスプルー17B、スプルー17Bの終端部で分岐するランナー18B、およびランナー18Bの終端部に設けられるゲート19Bを経て、キャビティ空間14Bに至る。
【0128】
エジェクタ装置200のエジェクタロッド230は、金型装置10Bのキャビティ空間14Bに充填されている成形材料の圧縮、その圧縮によって成形された成形品(以下、「圧縮成形された成形品」とも呼ぶ。)の金型装置10Bからの突き出しの両方に用いられる。成形材料の圧縮は、成形材料が完全に固化する前に行われる。
【0129】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120を前後方向に貫通する貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12Bの内部に進退自在に配設される可動部材15Bと接触する。
【0130】
可動部材15Bは、
図6に示すように、前後方向に対し垂直な板状のエジェクタプレート21Bと、エジェクタプレート21Bから前方に延びる棒状の圧縮コアピン22Bと、エジェクタプレート21Bから前方に延びる棒状のエジェクタピン23Bとを有する。
【0131】
エジェクタプレート21Bは、エジェクタプレート21Bよりも後方に配置されるエジェクタロッド230によって前方に押される。また、エジェクタプレート21Bは、エジェクタプレート21Bよりも前方に配置されるばね16Bによって後方に押される。
【0132】
圧縮コアピン22Bは、エジェクタプレート21Bから前方に延びて、可動金型12Bを貫通する。圧縮コアピン22Bの前端面は、キャビティ空間14Bの壁面の一部となる。圧縮コアピン22Bは、エジェクタプレート21Bと共に進退し、成形材料2の圧縮、圧縮成形された成形品の脱圧、脱圧がなされた成形品の突き出しを行う。
【0133】
エジェクタピン23Bは、エジェクタプレート21Bから前方に延びて、可動金型12Bを貫通する。エジェクタピン23Bの前端部には、
図6(a)に示すようにランナー18Bを流れる成形材料2が抱き付く。抱き付いた成形材料2は、固化することでエジェクタピン23Bの前端部に密着する。エジェクタピン23Bは、ランナー18Bで固化した成形材料2の突き出しに用いられる。
【0134】
エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15Bと連結されていないが、可動部材15Bと連結されていてもよい。尚、エジェクタロッド230の前端部が可動部材15Bと連結されている場合、ばね16Bは無くてもよい。
【0135】
エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を前進させると、可動部材15Bが前進して、成形材料2の圧縮が行われる。その後、エジェクタ
モータ210を駆動してエジェクタロッド230を後退させると、ばね16Bの弾性復元力によって可動部材15Bがエジェクタロッド230に押し当てられながら後退し、成形品の脱圧が行われる。脱圧がなされた成形品は、エジェクタロッド230の前進によって可動金型12Bから突き出される。
【0136】
制御装置700は、エジェクタロッド230の前進を制御することで成形材料2の圧縮を制御し、エジェクタロッド230の後退を制御することで成形品の脱圧を制御し、エジェクタロッドの230
の前進を制御することで脱圧がなされた成形品の突き出しを制御する。以下、エジェクタロッド230の圧縮成形の動作について説明する。
【0137】
制御装置700は、充填工程の開始から保圧工程の完了までの間に、エジェクタロッド230を
図6(a)に示す圧縮待機位置から圧縮成形位置まで前進させる。これにより、可動部材15Bが前進させられ、キャビティ空間14Bに充填されている成形材料2が圧縮される。
【0138】
尚、エジェクタロッド230は、圧縮待機位置にあるときに、
図6(a)では可動部材15Bに接触していないが、可動部材15Bに接触していてもよい。後者の場合、エジェクタロッド230は、可動部材15Bと連結されてもよい。
【0139】
制御装置700は、エジェクタロッド230の位置が圧縮成形位置に達すると、エジェクタロッド230を前進させる方向とは逆方向にエジェクタモータ210を所定量回転させる。このとき、エジェクタモータ210の駆動力でエジェクタロッド230を圧縮方向(前方)に押しながら、エジェクタモータ210を駆動方向とは逆方向に所定量回転させてよい。エジェクタモータ210の逆回転量は、成形材料2を圧縮する圧縮力の変化が圧縮力制御に影響が出ない程度に設定されてよい。
【0140】
続いて、制御装置700は、エジェクタモータ210を所定量逆回転させた位置でエジェクタロッド230を所定時間位置保持する。つまり、制御装置700は、エジェクタロッド230を圧縮成形位置から僅かに後退させた位置で所定時間位置保持する。このとき、エジェクタロッド230はエジェクタモータ210の駆動力で圧縮方向に押されている。
【0141】
図6(b)に白抜きの矢印で示すようにエジェクタロッド230を圧縮方向とは逆方向(後方)に変位させることで、圧縮方向の摩擦力FFが生じる。この摩擦力FFは、例えば可動部材15Bなどにおいて生じる。摩擦力FFを圧縮力に利用することで、所定の圧縮力を得るためのエジェクタロッド230の負荷を低減できる。
【0142】
制御装置700は、エジェクタロッド230を
図6(b)に示す位置で所定時間位置保持した後、エジェクタロッド230を
図6(a)に示す圧縮待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230が
図6(a)に示す圧縮待機位置で所定時間位置保持される間に、キャビティ空間14Bに充填された成形材料が固化され、成形品が得られる。
【0143】
尚、本実施形態では、エジェクタロッド230を
図6(b)に示す位置で所定時間位置保持した後、エジェクタロッド230を
図6(a)に示す圧縮待機位置まで後退させるが、その間に、エジェクタロッド230を前進させたり、後退させたりしてもよい。制御装置700は、エジェクタロッド230を設定位置まで前進させ、続いて当該設定位置から僅かに後方に変位させて所定時間位置保持してよい。エジェクタロッド230の設定位置の数に制限はない。
【0144】
(変形および改良)
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0145】
例えば、制御装置700は、突き出し工程において、エジェクタロッド230の位置が突き出し位置に達すると、エジェクタロッド230を前進させる方向とは逆方向にエジェクタモータ210を所定量回転させる。このとき、エジェクタモータ210の駆動力でエジェクタロッド230を突き出し方向(前方)に押しながら、エジェクタモータ210を駆動方向とは逆方向に所定量回転させてよい。エジェクタモータ210の逆回転量は、突き出し力の変化が突き出し力制御に影響が出ない程度に設定されてよい。続いて、制御装置700は、エジェクタモータ210を所定量逆回転させた位置でエジェクタロッド230を所定時間位置保持する。つまり、制御装置700は、エジェクタロッド230を突き出し位置から僅かに後退させた位置で所定時間位置保持する。このとき、エジェクタロッド230は、エジェクタモータ210の駆動力で突き出し方向に押されている。このように、エジェクタロッド230を突き出し方向とは逆方向(後方)に変位させることで、突き出し方向の摩擦力が生じる。この摩擦力は、例えば可動部材15と可動金型12との間などにおいて生じる。摩擦力を突き出し力に利用することで、所定の突き出し力を得るためのエジェクタモータ210の負荷を低減できる。エジェクタロッド230が突き出し位置から僅かに後退させた位置で所定時間位置保持される間に、取出機が射出成形機で成形された成形品を射出成形機の外部に取り出す。
【0146】
また、制御装置700は、保圧工程において、保持圧力が設定圧力に達すると、スクリュ330を前進させる方向とは逆方向に射出モータ350を所定量回転させる。このとき、射出モータ350の駆動力でスクリュ330を射出方向(前方)に押しながら、射出モータ350を駆動方向とは逆方向に所定量回転させてよい。射出モータ350の逆回転量は、保持圧力の変化が保持圧力制御に影響が出ない程度に設定されてよい。続いて、制御装置700は、射出モータ350を所定量逆回転させた位置でスクリュ330を所定時間位置保持する。つまり、制御装置700は、保持圧が設定圧力に達した位置から僅かに後退させた位置でスクリュ330を所定時間位置保持する。このとき、スクリュ330は、射出モータ350の駆動力で射出方向に押されている。このように、スクリュ330を射出方向とは逆方向に変位させることで、射出方向の摩擦力が生じる。この摩擦力は、例えばスクリュ330とシリンダ310との間などにおいて生じる。摩擦力を保持圧力に利用することで、所定の保持圧力を得るための射出モータ350の負荷を低減できる。保持圧力の設定圧力は保圧工程の開始からの経過時間に応じて変更されてもよく、その度に射出モータ350の駆動力でスクリュ330を射出方向(前方)に押しながら、射出モータ350を所定量逆回転させてもよい。