特許第6751070号(P6751070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751070
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ガス供給装置及びガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 7/00 20060101AFI20200824BHJP
【FI】
   F17C7/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-226785(P2017-226785)
(22)【出願日】2017年11月27日
(65)【公開番号】特開2019-95029(P2019-95029A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 大介
(72)【発明者】
【氏名】今井 建一
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5111962(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを供給すべき設備に配管を介して並列的に接続され、同時にガスを供給可能な2以上のガス供給源と、
2以上の前記ガス供給源の各々の、前記設備に対するガス供給圧力を制御する制御部と、を備えるガス供給装置であって、
前記制御部は、初期的に、2以上の前記ガス供給源の全てに対して、前記ガス供給圧力として、第1の設定供給圧力を設定し、
2以上の前記ガス供給源のうちのガス消費率が最小であるガス供給源と比較して、ガス消費量の差が第1の所定値に到達したガス供給源に対して、前記ガス供給圧力として、前記第1の設定供給圧力よりも低い第2の設定供給圧力を設定し、
その後、前記ガス消費量の差が第2の所定値に到達した時点で、前記ガス供給圧力を、前記第1の設定供給圧力に戻すことにより、
2以上の前記ガス供給源の各々のガス消費量の差が、所定範囲内に収まるように各ガス供給圧力を制御して、2以上の前記ガス供給源の各々のガス消費率が、実質的に同一とする、ガス供給装置。
【請求項2】
ガスを供給すべき設備に配管を介して並列的に接続され、同時にガスを供給可能な2以上のガス供給源と、2以上の前記ガス供給源の各々の、前記設備に対するガス供給圧力を制御する制御部と、を備えたガス供給装置におけるガス供給方法であって、
前記制御部は、初期的に、2以上の前記ガス供給源の全てに対して、前記ガス供給圧力として、第1の設定供給圧力を設定し、
2以上の前記ガス供給源のうちのガス消費率が最小であるガス供給源と比較して、ガス消費量の差が第1の所定値に到達したガス供給源に対して、前記ガス供給圧力として、前記第1の設定供給圧力よりも低い第2の設定供給圧力を設定し、
その後、前記ガス消費量の差が第2の所定値に到達した時点で、前記ガス供給圧力を、前記第1の設定供給圧力に戻すことにより、
2以上の前記ガス供給源の各々のガス消費量の差が、所定範囲内に収まるように各ガス供給圧力を制御して、2以上の前記ガス供給源の各々のガス消費率が、実質的に同一とする、ガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給装置及びガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顧客(消費設備)にガスを供給するシステムにおいては、複数本のガス容器を1つ(1箇所)の供給源として接続するのではなく、それらのガス容器を複数のガス供給源(シリンダーキャビネット等)(複数箇所)として並列的に消費設備に接続することにより、供給可能量を増量させると共に、並列個数に応じて制御系や配管系が複数になるため、一系統の制御系や配管系に不具合が生じて供給不能となっても他の系統が補うことにより、全体として故障リスクに対する耐性を持たせるようにしている。これは、液化ガス及び圧縮ガスのいずれの供給装置でも採用されている。
【0003】
図6(a)は、ガス供給源が2系統ある場合の例を示している。具体的には、消費設備100に対して、ガス供給源101a及びガス供給源101bの2つが並列的に接続されている。ここで、ガス供給源101aは、ガス容器1011aと、減圧弁1012aとで構成され、ガス供給源101bは、ガス容器1011bと、減圧弁1012bとで構成されている。なお、この例においては、消費設備が一の場合を示しているが、複数のガス供給源から複数の消費設備にガスを供給する場合(多対多)もある。
【0004】
しかしながら、上述した従来技術においては、各ガス供給源から均等にガスを供給することを期して各供給圧力を各減圧弁にて初期的に同一に設定しても、各ガス供給源から消費設備までの距離の違い等により、供給圧力を設定した時点からガス消費に伴ってそれぞれ刻々と微小でも変化してしまう。従って、次第に各ガス供給源で供給圧力が異なってくることとなり、このような状況に陥ると、供給圧力の低いガス供給源よりも、相対的に供給圧力の高いガス供給源からのガス供給量が多くなり、いわゆる「片流れ」の状態が生じてしまう(図6(b))。換言すれば、特定のガス供給源に負荷が偏る可能性がある。
【0005】
かかる場合、各ガス供給源で、容器交換の周期が異なってくることとなり、交換保守の作業が煩雑になる。一方、ガス供給停止のリスクを回避するため、各ガス供給源で容器交換の時期をずらすべく初期的に各ガス供給源のガス量を異なるように設定しても、各周期的に偶々同時にガスがなくなるような事態も発生してしまう可能性があり、その場合には、ガスの供給が停止してしまう時間が生じる。
【0006】
かかる状況に対処するためには、オペレータが各ガス供給源のガス残量やガス消費の推移を把握し、減圧弁を逐次調整する必要があり、設備管理上、負担となるケースが多い。
【0007】
ここで、上述の課題を一部解決可能な技術として、特許文献1に開示された技術がある。当該文献に開示された技術においては、ガスの残量が最小のガス容器に係るガス供給弁を閉じたり開いたりして、複数のガス容器について、残量差が所定範囲内に常にあるように制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5111962号公報
【特許文献2】特許第5722186号公報
【特許文献3】特許第5792608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる特許文献1の技術によれば、各ガス容器について交換周期は同一になり、かつ残量差を所定範囲内に制御しているので、当該文献の技術の発案の起因となった問題、すなわち、交換時に各ガス容器間で残量がまちまちでガスが無駄になってしまう(段落[0005]の前半)という問題は解決できる。
【0010】
しかしながら、特許文献1においては、ガスの残量が最小のガス容器からのガス供給を間欠的ではあるものの「停止」させているので、残りのガス容器からの供給が故障により途絶える事態を想定すれば、ガス供給の停止のリスクは増大してしまう。
【0011】
しかも、特許文献1においては、ガス容器交換の際には、あくまでも全交換が前提であり(段落[0003]の後半と[0005])、そのために「残量差」を所定範囲内に制御している。従って、特許文献1においては、交換保守の際には必然的にガスを供給できない時間を作ってしまうという課題がある。
【0012】
なお、特許文献2は、以下のような技術内容が開示されている。すなわち、液化アンモニアのような常温付近での蒸気圧が低い液化ガスの場合、ガス残量がガス容器容積の30%以下になると次第に蒸発量が低下し、ガス使用先に求められている流量でガスを供給することが困難となってため、ガス残量が容器容積の30%程度になったときに、ガス供給を行うガス容器を切り替えて液化ガス残量が少なくなった液化ガス容器を交換しているが、かかる課題を解決するために、古いガス容器から新しいガス容器に切り替える際に、両者から重複して供給する時間を設けて古いガス容器のガスをすべて使い切るようにして、ガス利用効率を高める工夫をしている。また、特許文献3はその改良技術である。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、保守要員の作業の煩雑さを削減できると共に、ガス供給が全体として停止してしまうというリスクを低減することができるガス供給装置及びガス供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] ガスを供給すべき設備に配管を介して並列的に接続され、同時にガスを供給可能な2以上のガス供給源と、
2以上の前記ガス供給源の各々の、前記設備に対するガス供給圧力を制御する制御部と、を備えるガス供給装置であって、
前記制御部は、2以上の前記ガス供給源の各々のガス消費率が、実質的に同一になるように各ガス供給圧力を制御する、ガス供給装置。
[2] 前記制御部は、2以上の前記ガス供給源の各々のガス消費量の差が、所定範囲内に収まるように各ガス供給圧力を制御する、請求項1に記載のガス供給装置。
[3] 前記制御部は、
初期的に、2以上の前記ガス供給源の全てに対して、前記ガス供給圧力として、第1の設定供給圧力を設定し、
2以上の前記ガス供給源のうちのガス消費率が最小であるガス供給源と比較して、ガス消費量の差が第1の所定値に到達したガス供給源に対して、前記ガス供給圧力として、前記第1の設定供給圧力よりも低い第2の設定供給圧力を設定し、
その後、前記ガス消費量の差が第2の所定値に到達した時点で、前記ガス供給圧力を、前記第1の設定供給圧力に戻す、請求項2に記載のガス供給装置。
[4] ガスを供給すべき設備に配管を介して並列的に接続され、同時にガスを供給可能な2以上のガス供給源と、2以上の前記ガス供給源の各々の、前記設備に対するガス供給圧力を制御する制御部と、を備えたガス供給装置におけるガス供給方法であって、
前記制御部は、2以上の前記ガス供給源の各々のガス消費率が、実質的に同一になるように各ガス供給圧力を制御する、ガス供給方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス供給装置及びガス供給方法によれば、交換保守要員の保守計画や保守作業の煩雑さを解消できると共に、消費設備へのガス供給が停止してしまう事態を極力回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、供給するガスが液化ガスに基づく場合の実施形態を説明するための図であり、(a)は、当該ガス供給装置の構成図であり、(b)は、その制御部の動作処理を示すフローチャートである。
図2図2は、供給するガスが圧縮ガスに基づく場合の実施形態を説明するための図であり、(a)は、当該ガス供給装置の構成図であり、(b)は、その制御部の動作処理を示すフローチャートである。
図3図3は、詳細な実施形態に係るガス供給装置の構成図である。
図4図4は、残ガス圧力P等の時間的推移を示すグラフである。
図5図5は、時間的な流れに沿った具体的な数値等を示す表である。
図6図6は、従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した一実施形態であるガス供給装置の構成について、ガス供給装置を用いたガス供給方法と併せて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
図1及び図2は、本発明のガス供給装置及びガス供給方法における一実施形態を説明するための図である。
まず、図1は、供給するガスが液化ガスである場合の実施形態を説明するための図であり、図1(a)は、当該ガス供給装置の構成図であり、図1(b)は、その制御部の動作処理を示すフローチャートである。
【0019】
図1(a)に示すように、ガス供給装置1Aは、消費設備100に並列的に配管接続された液化ガス供給源11a及び液化ガス供給源11bと、制御部21Aとを備えている。ここで、液化ガス供給源11aは、液化ガスが充填されているガス容器111aと、そのガス容器111aから消費設備100へのガス供給量を制御するための減圧弁112aと、ガス容器111aの重量Waを測定することにより、ガス容器111a内に残っている液化ガスの残量を実質的に測定する重量検出器113aと、を有している。同様に、液化ガス供給源11bは、液化ガスが充填されているガス容器111bと、ガス容器111bから消費設備100へのガス供給量を制御するための減圧弁112bと、ガス容器111bの重量Wbを測定することにより、ガス容器111b内に残っている液化ガスの残量を実質的に測定する重量検出器113bと、を有している。また、制御部21Aは、重量検出器113a及び重量検出器113bが測定したそれぞれの重量Wa及びWbに基づき、減圧弁112a及び減圧弁112bのそれぞれの開閉度を調整する。
【0020】
ここで、初期的にガス容器111a及びガス容器111bにどの程度の液化ガスが充填されているかは問題にはならない。むしろ、同時に交換することを避けるためには、残量には差があった方が好ましい。本発明では、消費量の差に注視しており、消費率が実質的(大局的)に同一になるように制御している。
【0021】
なお、液化ガス供給源11a及び液化ガス供給源11bに示すような一の供給源の概念としては、ガス容器、シリンダーキャビネット、タンク等の概念に限定されない。それら単体、それらの複数本の組み合わせ等、一の減圧弁で制御されている全てのものが考えられる。その意味において、液化ガス供給源11a及び液化ガス供給源11bの構成は一例であり、また模式図と捉えることもできる。また、液化ガス供給源11a及び液化ガス供給源11bの設置場所は、本発明にあっては任意であり、物理的に近くの場合もあるし、離れている場合もあるが、火災等の外部要因等による損失等を考慮して離して設置する場合もあるだけである。
【0022】
次に、図1(b)のフローチャートを参照して、制御部21Aの制御手順を説明する。
制御部21Aは、初期的に、ガスの供給圧力がともに第1設定供給圧力SP1(減圧弁112a及び減圧弁112bのそれぞれに付帯する、図示しない圧力指示調節計で監視)になるように減圧弁112a及び減圧弁112bの開度を調整する(ステップS11)。
【0023】
この時点から「監視期間」が開始し、制御部21Aは、この時点からの液化ガス供給源11a及び液化ガス供給源11bからのガス消費量に対応するガス重量の減少量ΔWa及びΔWbの監視を始める。そして、制御部21Aは、常に、減少量(消費量)の差である「|ΔWa−ΔWb|」が、制御開始設定値たる第1閾値に到達したか否かをチェックしている(ステップS12)。
【0024】
そこで、第1閾値(第1の所定値)に到達していない場合(ステップS12において否定判定)には監視を継続し、一方、第1閾値への到達を判定したら(ステップS12において肯定判定)、監視期間を終了し、ガスの減りの速い方の減圧弁に対して、第1設定供給圧力SP1よりも小さい第2設定供給圧力SP2に対応した開度調節を行う(ステップS13)。
【0025】
この時点から「制御期間」が開始する。なお、このように一方の液化ガス供給源の供給圧力を減ずると、減じた方の液化ガス供給源からのガス消費量は減ずる一方で、供給圧力を変えなかった方の液化ガス供給源は、その圧力差により優先的にガスが供給されることから、そのガス供給量は増加する。
【0026】
制御部21Aは、制御期間も引き続き、監視期間開始時からの液化ガス供給源11a及び液化ガス供給源11bからのガス消費量に対応するガス重量の減少量ΔWa及びΔWbの監視を継続し、この制御期間においては、減少量(消費量)の差である「|ΔWa−ΔWb|」が、第1閾値よりも小さい、制御解除設定値たる第2閾値(第2の所定値)に到達したか否かをチェックしている(ステップS14)。
【0027】
そこで、第2閾値に到達していない場合(ステップS14において否定判定)には制御を継続し、一方、第2閾値への到達を判定したら(ステップS14において肯定判定)、制御期間を終了し、ステップS11に戻り、第2設定供給圧力SP2に対応した開度調節を行った減圧弁に対して、第1設定供給圧力SP1に対応した開度復帰を行う。
【0028】
この時点から監視期間が再開し、制御部21Aは、改めて、液化ガス供給源11a及び液化ガス供給源11bからのガス消費量に対応するガス重量ΔWa及びΔWbの監視を始める。
【0029】
以上の制御により、液化ガス供給源11aのガス消費率と液化ガス供給源11bのガス消費率を実質的(大局的)に同一にすることができるので、各ガス供給源におけるガス配管の交換周期を同一にすることができ、交換保守要員は計画的に交換保守を実行できる。加えて、同時にガスがなくなることによるガス供給停止のリスクもなくなり、それは初期的にガス充填量が異なっているほど効果的である。
【0030】
次に、図2は、供給するガスが圧縮ガスである場合の実施形態を説明するための図であり、(a)は、当該ガス供給装置の構成図であり、(b)は、その制御部の動作処理を示すフローチャートである。
【0031】
図2(a)において、ガス供給装置1Bは、消費設備100に並列的に配管接続された圧縮ガス供給源12a及びガス容器121bと、制御部21Bとを備えている。ここで、圧縮ガス供給源12aは、圧縮ガスが充填されているガス容器121aと、そのガス容器121aから消費設備100へのガス供給量を制御するための減圧弁122aと、ガス容器121aの残ガス圧力Paを測定する圧力検出器123aと、を有している。同様に、圧縮ガス供給源12bは、圧縮ガスが充填されているガス容器121bと、ガス容器121bから消費設備100へのガス供給量を制御するための減圧弁122bと、ガス容器121bの残ガス圧力Pbを測定する圧力検出器123bと、を有している。また、制御部21Bは、圧力検出器123a及び圧力検出器123bが測定したそれぞれの残ガス圧力Pa及びPbに基づき、減圧弁122a及び減圧弁122bのそれぞれの開閉度を調整する。
【0032】
ここで、初期的にガス容器121a及びガス容器121bにどの程度の圧縮ガスが充填されているかは問題にはならない。むしろ、同時に交換することを避けるためには、残量には差があった方が好ましい。本発明では、消費量の差に注視しており、消費率を実質的(大局的)に同一になるように制御している。
【0033】
次に、図2(b)のフローチャートを参照して、制御部21Bの制御手順を説明する。
制御部21Bは、初期的に、ガスの供給圧力がともに第1設定供給圧力SP1(減圧弁122a及び減圧弁122bのそれぞれに付帯する、図示しない圧力指示調節計で監視)になるように減圧弁122a及び減圧弁122bの開度を調整する(ステップS21)。
【0034】
この時点から「監視期間」が開始し、制御部21Bは、この時点からの圧縮ガス供給源12a及び圧縮ガス供給源12bからのガス消費量に対応する残ガス圧力の減少量ΔPa及びΔPbの監視を始める。そして、制御部21Bは、常に、減少量(消費量)の差である「|ΔPa−ΔPb|」が、制御開始設定値たる第1閾値(第1の所定値)に到達したか否かをチェックしている(ステップS22)。
【0035】
そこで、第1閾値(第1の所定値)に到達していない場合(ステップS22において否定判定)には監視を継続し、一方、第1閾値への到達を判定したら(ステップS22において肯定判定)、監視期間を終了し、ガスの減りの速い方の減圧弁に対して、第1設定供給圧力SP1よりも小さい第2設定供給圧力SP2に対応した開度調節を行う(ステップS23)。
【0036】
この時点から「制御期間」が開始する。なお、このように一方の圧縮ガス供給源の供給圧力を減ずると、減じた方の圧縮ガス供給源からのガス消費量は減ずる一方で、供給圧力を変えなかった方の圧縮ガス供給源は、その圧力差により優先的にガスが供給されることから、そのガス供給量は増加する。
【0037】
制御部21Bは、制御期間も引き続き、監視期間開始時からの圧縮ガス供給源12a及び圧縮ガス供給源12bからのガス消費量に対応する残ガス圧力の減少量ΔPa及びΔPbの監視を継続し、この制御期間においては、減少量(消費量)の差である「|ΔPa−ΔPb|」が、第1閾値よりも小さい、制御解除設定値たる第2閾値(第2の所定値)に到達したか否かをチェックしている(ステップS24)。
【0038】
そこで、第2閾値に到達していない場合(ステップS24において否定判定)には制御を継続し、一方、第2閾値への到達を判定したら(ステップS24において肯定判定)、制御期間を終了し、ステップS21に戻り、第2設定供給圧力SP2に対応した開度調節を行った減圧弁に対して、第1設定供給圧力SP1に対応した開度復帰を行う。
【0039】
この時点から監視期間が再開し、制御部21Bは、改めて、圧縮ガス供給源12a及び圧縮ガス供給源12bからのガス消費量に対応する残ガス圧力の減少量ΔPa及びΔPbの監視を始める。
【0040】
以上の制御により、図2に示した圧縮ガスの場合でも、図1で説明した液化ガスの場合の効果と同様の効果が得られる。
【0041】
次に、更なる具体的な実施形態について説明する。図3は、その実施形態に係るガス供給装置の構成図であり、図4は、残ガス圧力P等の時間的推移を示すグラフであり、図5は、時間的な流れに沿った具体的な数値等を示す表である。
【0042】
図3に示すように、本実施形態におけるガス供給装置は、2つの消費設備100a、及び消費設備100bに対して、2つの圧縮ガス供給源12a及び圧縮ガス供給源12bが並列的に接続されている。なお、圧縮ガス供給源12a及び圧縮ガス供給源12bのそれぞれの構成は、図2(a)に示したものと同一であり、また、制御部21Bは省略している。
【0043】
本実施形態においては、第1設定供給圧力SP1及び第2設定供給圧力SP2を、それぞれ0.4及び0.38とし、第1閾値(制御開始設定値)及び第2閾値(制御解除設定値)を、それぞれ0.5及び0.2としている。また、図4及び図5を参照して、初期的に、圧縮ガス供給源12aの圧力検出器123aと、圧縮ガス供給源12bの圧力検出器123bで測定される残ガス圧力Pa及びPbは、それぞれ、5.0及び8.0としている。これらの値は、前述のようにある程度離れていた方がむしろ好ましい。
【0044】
先ず、制御部21Bは、圧縮ガス供給源12aの減圧弁122aと、圧縮ガス供給源12bの減圧弁122bの両者に、第1設定供給圧力SP1として決定した0.4に対応する開度に設定して、ガスの供給を開始する。これにより監視期間m1が開始する。なお、本実施形態においては、同一の設定供給圧力であっても、圧縮ガス供給源12aのガス消費率が、圧縮ガス供給源12bのガス消費率よりも相対的に高いという前提にしている。
【0045】
監視期間m1が継続し、圧縮ガス供給源12aについて圧力検出器123aで測定された残ガス圧力Paが5.0から4.0まで下がり、圧縮ガス供給源12bについて圧力検出器123bで測定された残ガス圧力Pbが8.0から7.5まで下がると、消費量の差に相当する「|ΔPa−ΔPb|」が、(5.0−4.0)−(8.0−7.5)=0.5=第1閾値となり、第1閾値に到達するので、制御部21Bは、圧縮ガス供給源12aの減圧弁122aの開度を、第2設定供給圧力SP2として決定した0.38に対応した開度に変更する。この時点で、監視期間m1が終了し、制御期間c1が開始する。
【0046】
制御期間c1が継続し、残ガス圧力Paが4.0から3.9まで下がり、残ガス圧力Pbが7.5から7.1まで下がると、消費量の差に相当する「|ΔPa−ΔPb|」が、(5.0−3.9)−(8.0−7.1)=0.2=第2閾値となり、第2閾値に到達するので、制御部21Bは、圧縮ガス供給源12aの減圧弁122aの開度を、第1設定供給圧力SP1として決定した0.4に対応した開度に戻す。この時点で、制御期間c1が終了し、監視期間m2が開始する(監視期間が再開する)。
【0047】
監視期間m2が継続し、残ガス圧力Paが3.9から2.9まで下がり、残ガス圧力Pbが7.1から6.6まで下がると、消費量の差に相当する「|ΔPa−ΔPb|」が、(3.9−2.9)−(7.1−6.6)=0.5=第1閾値となり、第1閾値に戻るので、制御部21Bは、圧縮ガス供給源12aの減圧弁122aの開度を、第2設定供給圧力SP2として決定した0.38に対応した開度に再度変更する。この時点で、監視期間m2が終了し、制御期間c2が開始する。
【0048】
制御期間c2が継続し、残ガス圧力Paが2.9から2.8まで下がり、残ガス圧力Pbが6.6から6.2まで下がると、消費量の差に相当する「|ΔPa−ΔPb|」が、(3.9−2.8)−(7.1−6.2)=0.2=第2閾値となり、第2閾値に再到達するので、制御部21Bは、圧縮ガス供給源12aの減圧弁122aの開度を、第1設定供給圧力SP1として決定した0.4に対応した開度に戻す。この時点で、制御期間c2が終了し、次の監視期間が開始する。
以下、同様に、監視期間と制御期間を繰り返す。
【0049】
以上のように、この実施形態においても。図4に示された、圧縮ガス供給源12a及び圧縮ガス供給源12bのそれぞれの残ガス圧力の推移から分かるように、消費量の差、言い換えれば消費率を実質的(大局的)に同一に制御している。各期間という微視的視点では、消費量の差を一定範囲内に収めている。
【0050】
なお、以上の実施形態においては、ガス供給源が2つの場合のガス供給装置を説明したが、ガス供給源が3つ以上の場合にも、同様に適用することができる。すなわち、最もガス消費率が低いガス供給源を基準として、他のガス供給源の消費率は、そのガス消費率が最も低いガス供給源の消費率に追従するようにそれぞれ制御を行う。その結果、当該他のガス供給源のそれぞれの監視期間及び制御期間の周期は、それぞれの消費率に応じて異なってくることになる。
【0051】
以上のように、上述の実施の形態によれば、液化ガス及び圧縮ガスのいずれの場合でも、複数のガス供給源11a、11b(12a、12b)のガス消費率を実質的(大局的)に同一にすることにより、各ガス供給源の交換周期を同一とすることができるので、保守要員の保守計画やその作業を容易にし、かつ、各ガス供給源を同時に交換しなければならないことは起こらないのでので、消費設備に対してガス供給停止となる事態を避けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のガス供給装置及びガス供給方法は、例えば、物理的に異なるサイトに複数のガス供給源を設置して、並列的に消費設備にガスを供給するような態様の場合に採用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1A、1B…ガス供給装置、11a、11b…液化ガス供給源、12a、12b…圧縮ガス供給源、111a、111b、121a、121b…ガス容器、112a、112b、122a、122b…減圧弁、113a、113b…重量検出器、123a、123b…圧力検出器、21A、21B…制御部、100…消費設備、101…ガス供給源、1011…ガス容器、1012…減圧弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6