特許第6751089号(P6751089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751089
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】システム及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0488 20060101AFI20200824BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   A61B5/04 330
   A61B5/05 N
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-528176(P2017-528176)
(86)(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公表番号】特表2018-500073(P2018-500073A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】US2015062754
(87)【国際公開番号】WO2016086176
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年11月21日
(31)【優先権主張番号】62/085,193
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514280846
【氏名又は名称】セーフオプ サージカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スノウ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン リチャード
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0107524(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0204155(US,A1)
【文献】 特表2008−519609(JP,A)
【文献】 特表平06−500932(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0018610(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0096846(KR,A)
【文献】 特開2002−159497(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0081963(US,A1)
【文献】 米国特許第4291705(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0488
A61B 5/05
A61N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
少なくとも1つの刺激電極と、
少なくとも1つの記録電極と、
前記刺激電極を通して神経に刺激を与えるためのパルス生成器と、
命令が記憶されたプロセッサを備える演算装置と、を備え、
前記演算装置によって実行すると、前記演算装置が、
刺激プロトコルによる前記刺激電極を介して前記神経に刺激を与え、前記刺激プロトコルが、刺激シーケンス中のパルスの周波数、前記刺激シーケンスの周波数、前記刺激シーケンス中のパルス数、または上記のすべてにおいて変化する複数の刺激シーケンスを提供し、
前記記録電極によって筋肉の電気反応を測定し、
刺激シーケンス中の前記筋肉の電気反応の振幅に基づいて神経筋遮断の程度を推定し、
前記刺激プロトコルを所定の間隔で調整する必要があるかどうかを判断し、電気反応の振幅が閾値より上か下かによって、前記刺激プロトコルの1つ以上の刺激周波数を調整する必要があるかどうかを前記演算装置が判断し、
前記刺激プロトコルを調整する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
神経筋遮断の程度を推定することは、刺激シーケンス中の最初のパルスからの筋肉の電気反応と前記刺激シーケンス中の最後のパルスからの前記筋肉の電気反応との間の比を判定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
刺激シーケンス中のパルス数は、4と20パルスの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
パルスの数は、前記刺激プロトコルにおける後続の刺激シーケンスそれぞれとともに増える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
刺激シーケンス中のパルス周波数は、2Hzと10Hzの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
パルスの周波数は、前記刺激プロトコルにおける後続の刺激シーケンスそれぞれとともに増える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記刺激プロトコルは、第1の周波数の4パルスの第1の刺激シーケンスと、前記第1の周波数より高い第2の周波数の4パルスの第2の刺激シーケンスと、前記第2の周波数より高い第3の周波数の4パルスの第3の刺激シーケンスとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記刺激プロトコルはさらに、4パルスを超える第4の刺激シーケンスを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサはさらに、前記演算装置によって実行されると、ユーザ入力なしに前記演算装置を自動的に機能させる命令を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記演算装置は、前記刺激プロトコルを調整する必要があるかどうかを自動的に判断して、前記刺激プロトコルを調整する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記神経は末梢神経である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記末梢神経は、尺骨神経、正中神経、腓骨神経、及び脛骨神経から構成される群の前記神経の中の少なくとも1つである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記刺激電極は、患者の手首または足首の上に配置されるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
さらに、患者に関する情報を表示する表示部を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記情報は、神経筋遮断の程度に関する情報である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
さらに、電気反応信号を混乱させる因子を減少させるための信号増幅器を備え、前記信号増幅器は>96デシベルのCMRR、刺激アーチファクトのフィルタリング、及び電気焼灼信号の検出の1つ以上を含む、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
神経筋遮断の程度を推定するためのデバイスであって、神経への電気刺激の第1のセットを提供し、前記刺激に対する筋肉反応の振幅を測定し、前記筋肉反応の振幅が閾値より上か下かによって、前記筋肉反応に基づいて刺激プロトコルの1つ以上の刺激周波数を調整する必要があるかを判断し、第2の刺激のセットのパルスの周波数、前記第2の刺激のセットの中のパルス数、またはその両方を変化させることによって自動的に前記刺激を調整するように構成されるデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年11月26日に提出の米国仮特許出願第62/085,193号の利益を主張するものであり、この参照により全文が開示に含まれるものとする。本技術の実施形態は、概ね臨床神経生理学の分野に関する。さらに具体的には、神経筋接合部と、麻酔中の薬理学的遮断レベルの評価のためのデバイス及び方法に関する。このようなデバイスは、手術中及び手術後の両方で、筋弛緩の程度を判断して、適切な外科的介入と麻酔からの適切な回復を確実にするために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
手術中や他の時間の神経筋遮断の深さの定量的測定が、特に手術後の患者の残留麻痺を防ぐために重要であることが広く認識されている。現在の技術では、麻酔科医は、機械筋運動記録法、加速度筋運動記録法、音筋運動記録法及び/または電記録様式のいずれかを採用するデバイスを使用する必要がある。
【0003】
これらのデバイスを使用する神経筋遮断の全ての測定は、モータ繊維を含有する神経を刺激し、対応する神経支配筋からの活動を記録し、応答を定量化することによって行われる。通常、統合複合活動電位、または尺骨神経の刺激に反応して筋肉が生成する緊張のいずれかが記録される。ヴィビーモジェンセンが開発した後者の変形は、両者が直接比例することから、張力自体の代わりに張力発生率の加速度を記録することである。
【0004】
一般的には、二つの戦略、即ち、1回または複数回の刺激を介した最大の収縮判定を行って経時的に追従できる最大筋肉反応を得ることと、反復刺激または筋強縮を誘起する高周波促進性刺激後(筋強縮後の技術)に対する筋肉反応の疲労度またはフェード判定のうちの一方が経時的筋肉遮断または弛緩時間の相対的な程度を判断するために使用される。すべての神経筋遮断化合物は、弛緩を作り出す必要があるが、すべてがフェードを作り出すものではない。全てではないがほとんどの商業的に入手可能な薬剤がフェードを作り出す。
【0005】
神経筋遮断を決定するための一般的な技術は、筋強縮を誘発するため、そして筋肉反応を記録するために、標準化された刺激周波数を使用する。神経筋遮断の程度を測定する1つの一般的な方法は、トレイン・オブ・フォー(TOF)法であって、4連の刺激を2Hzで送達して、刺激に対する反応があるかないか、および、振幅での筋肉の反応比、つまり第1の反応と比較した第4の反応の振幅−あるいは曲線下面積−での筋肉反応比の両方を測定することを特徴としている。強縮刺激の適用を含む他の技術は、ほとんどの麻酔科医が十分に理解しておらず、よって、適用されなかったり、または適用方法が不適切だったりする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、本明細書に開示された実施形態は、刺激周波数、または測定の再現性及び忠実性を改善するために提供される遮断の程度にしたがって送達される刺激の数のいずれかを自動的に調整することによって、間歇的または連続的に神経筋遮断のレベルを術中を通して監視するための所定の刺激プロトコルに従った自動デバイス及びシステムを提供する。デバイスは、期待される生理学的な強度をより正確に反映する新規な技術も使用する。
【0007】
出願人は、神経筋遮断剤を受容する患者の筋肉や神経筋接合部の強さと疲労度の測定を改善するとともに明確かつ理解しやすい方法でデータを表示する必要性を認識した。ここで説明する実施形態は、自動的に神経筋遮断のレベルに調整するとともに強さと疲労度の測定の再現性及び明確性を改善する、適用が単純で容易なデバイスと方法の必要性を出願人が発見したことに少なくとも部分的に基づくものである。本明細書に開示されるような実施形態は、TOFのような現在の技術が正確性に欠け、エラーを起こしやすい境界範囲において特に有用である。
【0008】
遮断の程度を測定するために通常使用される定量的測定は、麻酔科医による遮断の程度の定性的な評価よりも優れていることが判っている。しかしながら、既存のデバイス及び技術による定量的測定は、神経筋遮断の適切な拮抗を判定するのに不十分であったり、あるいは使用者にとって臨床的に有用となるには不明確であったりする。よって、本技術の実施形態は、高い解像度と再現性により、患者が確実に呼吸できるようにするとともに患者の安全を確実にする神経筋接合部遮断の適切な拮抗を定量的に測定するためのシステムと方法を提供する。また、現在の推奨事項によれば、第4から第1の反応において、わずか10%程度の減少がトレイン・オブ・フォー(TOF)測定(リアン 2014年)では安全であると示唆しているが、正常な筋肉であっても、反応は、5〜8%(例えば、木村 2013年参照)から低周波数の刺激まで変動しうる。さらに、測定された反応における動きアーチファクト、電気メスの介入、低品質のアンプや、適切なフィルタリングの欠如などがさらなる変動を引き起こす可能性がある。気管内チューブを除去した後の患者を暖めることにより、神経筋接合部の効率を下げ、患者を安全な状態から潜在的に危険な状態にしてしまう可能性もある。これらの要素は、すべて安全裕度の判定を困難にする。
【0009】
ここに記載の実施形態は、概ね、患者における、特に安全性におけるぎりぎりの境界での遮断の範囲において神経筋遮断の程度を測定するためのデバイス及び方法に関する。様々な実施形態は、目標の生体信号を維持しながら、電気外科用機器の介入が低減または排除されるように記録された信号を取得し、処理するデバイス、システム、及び方法に関する。
【0010】
1つの態様によると、自動的に刺激を与え、筋肉反応を可変周波数及び回数で測定できる、神経筋遮断の程度をより正確に推定するためのデバイスをここに開示する。別の態様では、自動的に刺激を与え、筋肉反応を可変周波数及び回数で測定できる、神経筋遮断の程度をより正確に推定するための方法をここに開示する。
【0011】
別の態様では、少なくとも1つの刺激電極と、少なくとも1つの記録電極と、刺激電極を介して神経に刺激を与えるためのパルス生成器と、命令が内蔵されているプロセッサを含む演算装置とを備えるデバイスをここに開示する。演算装置によって実行する場合、命令によって演算装置が、神経に刺激電極を介して刺激プロトコルによって異なる周波数と回数で刺激を与え、筋肉の電気反応を測定し、筋肉の電気反応の変化に基づいて神経筋遮断の程度を推定する。
【0012】
別の態様では、神経に刺激電極を介して刺激プロトコルによって異なる周波数と回数で刺激を与え、筋肉の電気反応を測定し、筋肉の電気反応の変化に基づいて神経筋遮断の程度を推定する方法をここに開示する。いくつかの態様では、前記推定は標準のトレイン・オブ・フォー分析よりも正確である。いくつかの態様では、前記方法はさらに、測定の再現性及び忠実性を改善するために提示する遮断の程度により、自動的に刺激プロトコルを調整することを含む。
【0013】
別の態様では、少なくとも1つの刺激電極と、少なくとも1つの記録電極と、刺激電極を介して神経に刺激を与えるためのパルス生成器と、命令が内蔵されているプロセッサを含む演算装置とを備えるシステムをここに開示する。前記演算装置によって実行する場合、前記命令により、演算装置は刺激プロトコルによる刺激電極を介して前記神経に刺激を与え、前記刺激プロトコルは、前記刺激シーケンス中のパルスの周波数、前記刺激シーケンスの周波数、前記刺激シーケンス中のパルス数、または上記のすべてにおいて変化し、前記記録電極によって筋肉の電気反応を測定し、刺激シーケンス中の筋肉の電気反応の変化に基づいて神経筋遮断の程度を推定する複数の刺激シーケンスを提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、神経筋遮断の程度を推定することは、刺激シーケンス中の最初のパルスからの筋肉の電気反応と刺激シーケンス中の最後のパルスからの筋肉の電気反応との間の比を決定することを含む。いくつかの実施形態では、刺激シーケンス中のパルス数は、4と20パルスの間である。いくつかの実施形態では、パルスの数は、刺激プロトコルにおける後続の刺激シーケンスそれぞれとともに増える。いくつかの実施形態では、刺激シーケンス中のパルス周波数は、2Hzと10Hzの間である。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、刺激プロトコルにおける後続の刺激シーケンスそれぞれとともに増える。
【0015】
いくつかの実施形態では、刺激プロトコルは、第1の周波数の4パルスの第1の刺激シーケンスと、前記第1の周波数より高い第2の周波数の4パルスの第2の刺激シーケンスと、前記第2の周波数より高い第3の周波数の4パルスの第3の刺激シーケンスとを含む。いくつかの実施形態では、刺激プロトコルはさらに、4パルスを超える第4の刺激シーケンスを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記プロセッサはさらに、演算装置によって実行する際、前記演算装置をユーザ入力なしに自動的に機能させる命令を含む。いくつかの実施形態では、前記演算装置は、刺激プロトコルを調整する必要があるかどうかを自動的に判断して、前記刺激プロトコルを調整する。いくつかの実施形態では、前記演算装置は、電気反応の読み取り値が閾値より上か下かによって、患者の他の物理的パラメータに応答して、及び/または手順のタイミングと協調して前記刺激プロトコルを所定の間隔で調整する必要があるかどうかを判断する。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記神経は末梢神経である。いくつかの実施形態では、前記末梢神経は、尺骨神経、正中神経、腓骨神経及び脛骨神経から構成される群の神経の中の少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、刺激電極は、患者の手首または足首の上に配置されるように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記システムは、さらに、患者に関する情報を表示する表示部を備える。いくつかの実施形態では、前記情報は、前記神経筋遮断の程度に関する情報である。いくつかの実施形態では、前記システムは、さらに電気反応信号を混乱させる因子を減少させるための信号増幅器を備え、前記信号増幅器は、>96デシベルのCMRR、刺激アーチファクトのフィルタリング、及び電気焼灼信号の検出の1つ以上を含む。
【0019】
別の態様では、神経筋遮断の程度を推定する方法であって、パルス生成器を使って、刺激プロトコルによる刺激電極を介して神経に刺激を与えることを含み、前記刺激プロトコルは、前記刺激シーケンス中のパルスの周波数、前記刺激シーケンスの周波数、前記刺激シーケンス中のパルス数、または上記のすべてにおいて変化し、筋肉の電気反応を測定し、刺激シーケンス中の筋肉の電気反応の変化に基づいて神経筋遮断の程度を推定することを含む方法をここに開示する。
【0020】
いくつかの実施形態において、神経筋遮断の程度を推定することは、刺激シーケンス中の最初のパルスからの筋肉の電気反応と刺激シーケンス中の最後のパルスからの筋肉の電気反応との間の比を決定することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記神経は末梢神経である。いくつかの実施形態では、前記末梢神経は、尺骨神経、正中神経、腓骨神経、及び脛骨神経から構成される群の神経の中の少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、前記刺激電極は、患者の手首または足首の上に配置される。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記刺激プロトコルは、第1の周波数の4パルスの第1の刺激シーケンスと、前記第1の周波数より高い第2の周波数の4パルスの第2の刺激シーケンスと、前記第2の周波数より高い第3の周波数の4パルスの第3の刺激シーケンスとを含む。いくつかの実施形態では、刺激プロトコルはさらに、4パルスを超える第4の刺激シーケンスを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、神経筋遮断の程度に関する情報が表示部上に表示される。いくつかの実施形態では、前記方法はさらに、神経筋遮断の程度の推定に基づいて、刺激プロトコルを調整する必要があるかどうかを判断し、前記刺激プロトコルを調整することを含む。いくつかの実施形態では、前記演算装置は、電気反応の読み取り値が閾値より上か下かによって、患者の他の物理的パラメータに応答して、及び/または手順のタイミングと協調して前記刺激プロトコルを所定の間隔で調整する必要があるかどうかを判断する。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記方法は、さらに電気反応信号を混乱させる因子を減少させるための信号増幅器を備えることを含み、前記信号増幅器は、>96デシベルのCMRR、刺激アーチファクトのフィルタリング、及び電気焼灼信号の検出の1つ以上を含む。
【0025】
別の態様において、神経筋遮断の程度を推定するためのデバイスであって、神経への電気刺激の第1のセットを提供し、前記刺激に対する筋肉反応を測定し、第2の刺激のセットのパルスの周波数、前記第2の刺激のセットの中のパルス数、またはその両方を変化させることによって、自動的に前記刺激を調整するデバイスがここに開示される。
【0026】
別の態様において、神経筋遮断の程度を推定するためのコンピュータ化された方法であって、神経への電気刺激の第1のセットを提供し、前記刺激に対する筋肉反応を測定し、第2の刺激のセットのパルスの周波数、前記第2の刺激のセットの中のパルス数、またはその両方を変化させることによって、自動的に前記刺激を調整する方法がここに開示される。
【0027】
本技術の上記の特徴並びに他の特徴、態様及び利点を本発明の様々な実施形態に基づいて、添付の画像を参照しながら説明する。しかしながら、図示の実施形態は、例示に過ぎず、本発明を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】筋肉と神経筋接合部の強さと疲労度を監視し、測定するためのシステムの一実施形態を示す機能ブロック図である。
図2】ここに説明するシステム及び構成要素の実施形態とともに、それらに関連付けて、及び/またはそれらの代わりに使用可能なコンピュータシステムの一実施形態を示す機能ブロック図である。
図3】周波数と量を変化させて、一連の第1の刺激と一連の最後の刺激の間の振幅比を示す一連のグラフである。
図4】周波数を変化させて、一連の第1の刺激と一連の最後の刺激の間の振幅比を示す一連のグラフである。
図5A】刺激アーチファクトをクリアしていない場合(5A)と、刺激アーチファクトが、適応フィルタによって除去された場合(5B)における、筋肉反応の開始を判定するための比較図である。
図5B】刺激アーチファクトをクリアしていない場合(5A)と、刺激アーチファクトが、適応フィルタによって除去された場合(5B)における、筋肉反応の開始を判定するための比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
下記の詳細な説明において、本開示の一部を形成する添付の図面を参照する。図面及び説明に記載された実施形態は例示であり、限定することを意図したものではない。ここで使用する、「例示的な」という用語は、「例または例示として機能する」を意味し、必ずしも他の実施形態よりも好ましい、または有利であると解釈されるべきものではない。他の実施形態も、ここで示す主題の精神と範囲から逸脱することなく利用でき、また、他の変更を加えることもできる。ここで説明し、図示するように、本開示の態様は、異なる構成で配置、組み合わせ、及び設計が可能であり、それらのすべては、明示的に予定されていることであり、本開示の一部を形成するものである。
【0030】
(定義)
特に定義しない限り、ここで使用される各技術的または科学的用語は、一般に本開示が属する技術分野の当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。特に明記しない限り、以下の特許請求の範囲及びここに提供する開示によれば、以下の用語は、以下の意味で定義されるものとする。
【0031】
数値の指定または範囲(例えば、圧力または寸法)の前に使用される「約」、または「およそ」は、(+)または(−)5%、1%または0.1%と変化し得る近似値を示している。
【0032】
明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、単数形の表記は、文脈が明確に指示しない限り単数及び複数両方を含む。例えば、用語「誘発電位」は複数の誘発電位を含む、もしくは含むように意図したものでもよい。時には、特許請求の範囲及び開示は、「複数の」、「1つ以上」、または「少なくとも1つ」のような用語を含んでいる場合もあるが、このような用語がない場合にも、特定の実施形態について複数であることを意図していないと考えてはならない。
【0033】
ここ中の任意の複数及び/または単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/または用途に適切である場合には、複数から単数へ、及び/または単数から複数へと変換することができる。様々な単数形/複数形の置換は明示明確化のためにここに記載されている場合もある。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「備えている」または「備える」は、デバイス、システム、及び方法が列挙された要素を含む、そしてその他の要素を追加で含むことを意味するよう、意図したものである。「本質的に〜から構成される」とは、デバイス、システム、及び方法が、列挙された要素を含み、記載された目的のための組み合わせに必須の重要な他の要素を除外することを意味する。よって、本質的にここで定義される要素からなるデバイスまたは方法は、特許請求された発明の基本的かつ新規な特性(単数または複数)に実質的な影響を与えない他の材料または工程を除外しない。「から構成される」とは、デバイス、システム、及び方法が、列挙された要素を含み、とるに足らない他の要素、または工程を除外することを意味する。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内に含まれるものとする。
【0035】
(システムの概要)
図1は、本開示の一実施形態に従って、神経を刺激し、神経筋遮断剤を受けている患者の筋肉及び神経筋接合部の強度や疲労度を測定するためのシステムのブロック図を示す。図示の実施形態では、患者101に結合できるシステム100は、1つ以上の記録電極102、1つ以上の刺激電極103、麻痺評価デバイス104、及び表示部106を、非限定的に含む。
【0036】
システム100のいくつかの実施形態では、刺激電極103は、患者101の腕または脚にまたはその近くの、例えば、尺骨神経、正中神経、腓骨神経、及び/または、脛骨神経などのような末梢神経構造上に配置されるように構成される。いくつかの実施形態では、刺激電極103は、電極が尺骨神経と脛骨神経上または近傍に位置するように、患者の手首と足首上の皮膚上に載置するように意図したものである。このような構成により、末梢神経の完全な患者の監視が可能となる(すなわち、すべての手足の神経の監視)。他の実施形態では、システム100は、上肢の監視のために使用することができ、そのような実施形態では、刺激電極103は、例えば、尺骨神経のみの上または近傍に、患者の手首の皮膚上に配置するように構成してもよい。いくつかの実施形態における記録電極102は、刺激電極103からの刺激に呼応する筋肉及び神経筋接合部の反応を測定することができる手首や足首、または他の場所の上に配置するように構成される。
【0037】
様々な実施形態では、麻痺評価デバイス104は、記録電極102と刺激電極103に、複数のケーブルを介して電子接続されるか、あるいは電極が無線で接続される。様々な実施形態の麻痺評価デバイス104は、例えば、図2を参照して以下にさらに詳細に記載する演算装置200などの演算装置の一部を形成する、これに接続される、及び/または、そのような演算装置を含む。麻痺評価デバイス104は、パルス生成器を含むまたはそれに接続されて、刺激電極103を介して刺激を与える。様々な実施形態では、麻痺評価デバイス104はまた、電気的、電子的、及び/または機械的にリンク150を介して表示部160に接続される。いくつかの実施形態では、リンク150は内部配線または外部ケーブルである。いくつかの実施形態では、リンク150は、無線通信リンクである。例えば、いくつかの実施形態では、麻痺評価デバイス104は表示部160にBluetooth(登録商標)または他の無線周波数信号を介して、あるいは、近距離通信またはセルラー信号を介して無線で接続される。
【0038】
表示部106は、例えば、患者の経歴情報、電極の推奨位置、刺激パラメータ、刺激され記録された領域、ベースラインと電流信号のトレース、信号の過去の傾向、関連する信号の変化、信号変化の位置、記録された信号の質、電極の位置、信号の著しい変化に対する警告、及び有害な信号変化を軽減するために提案できる動作などの様々な情報をグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)上に非限定的に表示することができる。さらに、表示部106は、例えば、タッチスクリーン、ボタン、及び/または制御入力などを含む入力ユーザ・インターフェースを含んでいてもよい。いくつかの実施形態によれば、入力ユーザ・インターフェースにより、オペレータは、初期の監視レイアウトを設定し、監視中に表示部106と相互作用してさらに情報を追加する、異なる形式の情報を見る、もしくは警告に応答することができる。いくつかの実施形態では、信号変化が麻酔薬の投与量の変化、または、位置決めの影響もしくは神経筋遮断に関連しない他の事象に関連するまたは起因している場合では、表示部106により、麻酔科医または他の医療従事者などによる信号の変化のオーバーライドが可能となる。
【0039】
システム100の種々の実施形態は、システム100の自動化を容易にするソフトウェアも含む。このようなソフトウェアは、メモリ内に記憶され、システム100内のプロセッサによって実行されてもよい。種々の実施形態では、メモリ及びプロセッサは、コンピュータの構成要素であり、少なくともいくつかのこのような実施形態では、麻痺評価デバイス104は、前記コンピュータの一部を形成する、有線または無線で接続される、及び/または前記コンピュータを含む。さらに、いくつかの実施形態では、システム100は、1つ以上のユーザ・インターフェースを有し、ユーザからの入力を受け取り、ユーザに出力する。このようなユーザ・インターフェースは、コンピュータの一部を形成してもよく、またはコンピュータと電気的にまたは無線通信してもよい。いくつかの実施形態のユーザ・インターフェースは、さらに、システム100の自動化を容易にする。
【0040】
演算装置200は、プロセッサとメモリを含み、プログラム命令を記憶する。この命令により、プロセッサが実行するときには、デバイスは
(1)(電流または電圧の形態の)刺激を刺激電極に送り、
(2)記録電極で拾った検出信号を記録する。図2は、ここで説明するシステムのいずれかの一部を形成しうるコンピュータシステムの実施形態の一例のブロック図である。特に、図2は、例えば、米国ワシントン州レドモンドのMICROSOFT(登録商標)社WINDOWS(登録商標)NT/98/2000/XP/CE/7/VISTA/RT/8等、米国カリフォルニア州サンタクララのSUN(登録商標)のMicrosystems社のSOLARIS(登録商標)、米国ニューヨーク州アーモンクのIBM(登録商標)社のOS/2、米国カリフォルニア州クパチーノのAPPLE(登録商標)社のiOS版またはMac/OS、あるいは、例えば、LINUX(登録商標)、HPUX(登録商標)、IBM AIX(登録商標)、及びSCO/UNIX(登録商標)を含むUNIX(登録商標)の各バージョン(米国カリフォルニア州サンフランシスコのオープングループの登録商標)、または米国カリフォルニア州マウンテンビューのGoogle(登録商標)社からAndroid(登録商標)のようなオペレーティングシステムを実行することができる例示的なコンピュータ200を示す。このようなオペレーティングシステムは、例示に過ぎず、ここで説明するシステムの実施形態は、いかなる適したオペレーティングシステムで実行するいかなる適したコンピュータシステムにおいても実行できる。
【0041】
他の可能なシステム100の構成要素、例えば、演算装置、通信デバイス、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップコンピュータ、タブレット、モバイルデバイス、クライアントワークステーション、シンクライアント、シッククライアント、プロキシサーバ、ネットワーク通信サーバ、リモートアクセスデバイス、クライアントコンピュータ、サーバコンピュータ、ルータ、Webサーバ、データ、メディア、オーディオ、ビデオ、電話やストリーミング技術サーバなど、を図2に示すようなコンピュータを使って実行することもできる。
【0042】
コンピュータシステム200は、プロセッサ(単数または複数)204などの1つ以上のプロセッサを含んでいてもよい。プロセッサ(単数または複数)204は、通信インフラ206(例えば、通信バス、クロスオーバーバー、またはネットワーク等)に接続することができる。様々なソフトウェアの実施形態は、この例示的なコンピュータシステムに関連して説明できる。この説明を読めば、関連技術の当業者には他のコンピュータシステム及び/またはアーキテクチャを使用して記載された方法をどのようにして実行すればよいかが明らかになるであろう。
【0043】
コンピュータシステム200は、表示部230に表示するため、通信インフラ206から、グラフィックス、テキスト、及び他のデータ等を転送するディスプレイインターフェース202を含むことができる。
【0044】
コンピュータシステム200は、また、メインメモリ208、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び二次メモリ210等を非限定的に含むことができる。二次メモリ210は、例えば、ハードディスクドライブ212、及び/または、フロッピーディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ、磁気−光学ディスクドライブ、コンパクトディスクドライブCD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ライトワンス(WORM)デバイス、フラッシュメモリデバイス等で代表されるリムーバブルストレージドライブ214を(非限定的に)含むことができる。リムーバブルストレージドライブ214は、周知の方法でリムーバブル記憶装置218から読み出し及び/またはそこに書き込みが可能である。リムーバブル記憶装置218は、例えば、フロッピーディスク、磁気テープ、光ディスク、磁気−光ディスク、コンパクトディスク、フラッシュメモリデバイスなどを表し、リムーバブルストレージドライブ214から読み出し及びそこに書き込みが可能である。これからわかるように、リムーバブル記憶装置218は、内部にコンピュータソフトウェア及び/またはデータを記憶したコンピュータ利用可能記憶媒体を含んでいてもよい。
【0045】
別の例示的な実施形態では、二次メモリ210は、コンピュータシステム200にロードされるコンピュータプログラムまたは他の命令を可能にする他の同様のデバイスを含んでいてもよい。このようなデバイスは、例えば、リムーバブル記憶装置222及びインターフェース220を含むことができる。その例として、プログラムカートリッジ及びカートリッジインターフェース(例えば、非限定的にいくつかのビデオゲームデバイスに見られるものなど)、リムーバブルメモリチップ(例えば、非限定的に消去可能なプログラマブル読出し専用メモリ(EPROM)、またはプログラマブル読出し専用メモリ(PROM)及びそれに関連するソケット、そして他のリムーバブル記憶装置222と、ソフトウェアとデータをリムーバブル記憶装置222からコンピュータシステム200に転送可能なインターフェース220とを含んでいてもよい。
【0046】
コンピュータ200はまた、例えば、マウスあるいはデジタイザ、タッチスクリーン、マイク、キーボード、及び/または他のデータ入力デバイスなどの他のポインティングデバイスなどの入力デバイス216を含むことができる。コンピュータ200は、例えば、ディスプレイ230、及び/またはディスプレイインターフェース202などの出力デバイス240をも含むことができる。コンピュータ200は、通信インターフェース224、ケーブル228、及び/または通信経路226などの入力/出力(I/O)デバイスを含むことができる。これらのデバイスは、ネットワーク・インターフェース・カードやモデムを非限定的に含むことができる。通信インターフェース224は、ソフトウェア及びデータをコンピュータシステム200と外部デバイスとの間で転送できるようにしてもよい。通信インターフェース224の例としては、例えば、モデム、ネットワークインターフェース(例えば、イーサネット(登録商標)カードなど)、通信ポート、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(PCMCIA)スロット及びカード等が挙げられる。通信インターフェース224を介して転送されるソフトウェア及びデータは、通信インターフェース224によって受信可能な、電子、電磁、光学、または他の信号でもよい信号228の形であってもよい。これらの信号228は、例えば、チャネルなどの通信経路226を介して通信インターフェース224に提供されてもよい。このチャネル226は、信号228例えば、伝搬信号を搬送してもよいし、例えば、ワイヤまたはケーブル、光ファイバ、電話線、セルラーリンク、無線周波数(RF)リンク及び他の通信チャネル等を使用して実行することもできる。
【0047】
ここに記載の様々な実施形態では、有線ネットワークは、音声とデータの通信デバイスを結合するための多種多様の周知の手段のいずれかを含んでいてもよい。ここに記載の様々な実施形態において、無線ネットワークの種類としては、例えば、符号分割多重アクセス(CDMA)、スペクトラム拡散無線、直交周波数分割多重(OFDM)、1G、2G、3G、または4G無線、ブルートゥース、赤外線データ協会(IrDA)、共有無線アクセスプロトコル(SWAP)、「ワイヤレスフィデリティ」(Wi−Fi)、WIMAX、及び他のIEEE標準802.11準拠のワイヤレスローカルエリアネットワーク(LAN)、802.16準拠のワイドエリアネットワーク(WAN)、及び超広帯域(UWB)ネットワーク、等を非限定的に含んでいてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態は、WLANを含んでいても、もしくはWLANへの参照を行ってもよい。例として、WLANは、ホーム無線周波数(HomeRF)によって開発された共有無線アクセスプロトコル(SWAP)、及び無線イーサネット、互換性アライアンス(WECA)が提唱するIEEE802.11の派生であるワイヤレスフィデリティ(Wi−Fi)を含んでいてもよい。IEEE802.11無線LAN規格は、様々な無線LANの規格の1つ以上に準拠する様々な技術を参照する。IEEE802.11準拠の無線LANは、例えば、非限定的にIEEE基準802.11a、b、d、g、及びn(IEEE802.11g−2003などを非限定的に含む)のような例えば、IEEE802.11a、b、d、g、またはnを含む各種IEEE802.11無線LAN規格の1つ以上のいずれかに遵守するものでよい。
【0049】
ここに記載のいくつかの実施形態は、ここに記載の動作を実行するための装置及び/またはデバイスに向けられたものである。このような装置は、特に所望の目的のために構築してもよく、あるいは、特殊目的を実行するためにデバイスに記憶されたプログラムにより選択的に活性化または再構成される汎用デバイスを含んでもよい。
【0050】
ここに記載の他の実施形態は、ここに記載の動作を実行する演算プラットフォームによって読み出されて実行され得る機械可読媒体上に記憶された命令に向けられている。機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)によって読取り可能な形式で情報を記憶または送信する任意の機構を含んでいてもよい。例えば、例示的な機械可読記憶媒体には、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、光磁気記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音、または他の形態の伝播信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)を記憶可能な他の例示の記憶デバイス、その他を含んでいてもよい。コンピュータプログラム(コンピュータ制御論理とも呼ばれる)は、オブジェクト指向コンピュータプログラムを含んでいてもよく、また、コンピュータプログラム製品と呼ばれ、メインメモリ208及び/または二次メモリ210及び/またはリムーバブル記憶装置214に記憶されてもよい。そのようなコンピュータプログラムは、実行されると、ここに説明した本発明の特徴をコンピュータシステム200で実行することができる。特に、このコンピュータプログラムは、実行されると、プロセッサ(単数または複数)204が、例示の実施形態によるEPDDの動作を制御及び/または管理する方法を提供することができるようになる。これにより、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム200のコントローラを表してもよい。
【0051】
別の例示の実施形態は、内部に記憶された制御論理(コンピュータソフトウェア)を有するコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品を対象とする。制御論理は、プロセッサ204によって実行されると、プロセッサ204が、ここに記載の機能を実行できるようになる。他の実施形態では、ここで説明する様々な機能は、まず、非限定的ではあるが、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、または1つ以上のステートマシンなどのハードウェアコンポーネントを使用するハードウェアで実施可能である。ここに記載の機能を実行するようにハードウェアステートマシンを実施することは、関連技術の当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態では、記載した機能は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア等の1つまたはそれらの任意の組み合わせを使用して実施することができる。
【0052】
ここで使用する、用語「コンピュータプログラム媒体」及び「コンピュータ可読媒体」は、一般に、例えば、リムーバブルストレージドライブ214、ハードディスクドライブ及び/または他の記憶デバイス212にインストールされたハードディスク、及び信号228などの媒体を非限定的に参照する。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム200にソフトウェアを提供することができる。アルゴリズムは、ここでは一般に、所望の結果を導く行為または動作の首尾一貫したシーケンスであると考えられる。これらには、物理量の物理的操作が含まれる。必ずしもそうではないが、通常、これらの量は、記憶、転送、結合、比較、その他の操作が可能な電気または磁気信号の形態をとる。これは、ビット、値、要素、記号、文字、用語、数字等としてこれらの信号を参照するために、主に共通使用という理由で、時には便利であることが証明されている。しかし、これら及び類似の用語の全ては適切な物理量に関連付けられるべきであり、単にこれらの量に適用される便利なラベルにすぎないということは理解されるべきである。
【0053】
特に記載がない限り、以下の議論から明らかなように、明細書の議論全体を通して「処理」、「演算」、「計算」、「判定」などの用語を使用する場合は、電子のような物理的な量として表されるコンピュータシステムのレジスタ及び/またはメモリ内のデータを演算システムのメモリ、レジスタ、または他のそのような情報ストレージ、伝送または表示デバイス内の物理量として同様に表される他のデータに操作及び/または変換するコンピュータまたは演算システム、または同様の電子演算装置のアクション及び/または処理を参照するものであることは理解できよう。
【0054】
同様に、用語「プロセッサ」は、レジスタ及び/またはメモリから電子データを処理して、その電子データをレジスタ及び/またはメモリに保存できる他の電子データに変換する、任意のデバイス/ハードウェア、またはデバイスの一部を意味する。「演算プラットフォーム」は、1つ以上のプロセッサを備えていてもよい。
【0055】
例示の実施形態によれば、ここに記載された例示的な方法は、プログラムロジックを処理するように構成された例示の1台以上のコンピュータプロセッサ(単数または複数)によって実行されるものでもよく、このようなプログラムロジックは例示の1台以上のプロセッサ(単数または複数)で実行されるときに、例示の方法で述べるような例示の工程を実行することができる例示のコンピュータアクセス可能記憶媒体で具現化できる。
【0056】
いくつかの実施形態では、神経筋遮断、麻痺、または神経筋接合部の状態を評価するためのシステム及び方法は「自動的に位置決め効果を検出するシステム、方法、装置、デバイス及びコンピュータプログラム製品」と称する米国特許第8,731,654号に記載のシステム、デバイス及び方法と、組み合わせることができ、ここに全体を参照することによって援用する。いくつかの実施形態では、‘654特許のデバイス及び方法との組み合わせは、多機能システムの利点を提供することができる。いくつかのケースでは、‘654特許のデバイス及び方法は、1つ以上の追加の電極、例えば、患者の手首、腕や手の上に刺激電極を追加することで、補充され得る。このシステム、方法及びデバイスは、さらに、ここに記載の他の実施形態に従って任意に変更することができる。
【0057】
(方法と機能)
ここに記載の実施形態は、概ね、患者における、手術前または外科手術中の神経筋遮断剤の投与によって一般的に引き起こされる神経筋遮断の程度を特に安全性におけるぎりぎりの境界での遮断の範囲において測定するための改善されたデバイス及び方法に関する。様々な実施形態は、目標の生体信号を維持しながら、電気外科用デバイスの介入が低減または排除されるように記録された信号を取得し、処理するデバイス、システム、及び方法に関する。
【0058】
種々の実施形態のシステム100は、刺激を自動化し、神経筋遮断の測定の再現性及び忠実性を改善することを目的とする1つまたは複数の特徴を含んでいてもよい。種々の例示的な特徴を以下に説明する。
【0059】
例示の実施形態によると、麻痺評価デバイス104は、連続的または断続的に、ユーザの指示により、または自動化システムによって自動的に、手術中または手術を通して神経筋遮断のレベルを監視し、刺激プロトコルを調整する。調整は、1つ以上の刺激周波数の調整、送達刺激の数、または与える刺激の他の調整を含んでいてもよい。刺激プロトコルは、提示する遮断の程度により、調整され、測定の再現性及び忠実性を改善することができる。
【0060】
例示の実施形態によれば、麻痺評価デバイスは、患者の四肢の一部またはすべてに配置した刺激電極103に電気信号を送ることによって、患者の末梢神経に電気刺激を印加する。センサを含む記録電極102は、神経の電気刺激によって誘発される神経及び筋肉の固有の電気的活動を検知する。測定された振幅、または他の様々な電気的活動の特徴は、筋肉反応の強度に直接対応し、神経筋遮断の量を示すために使用することができる。これにより、遮断剤が術中に患者に与える影響を判定することができる。筋肉の電気的活動の変化は、遮断剤の追加または遮断逆転剤の投与によって引き起こされる変化に直接的に相関させることができる。
【0061】
神経筋遮断は、一般的に、特定の周波数で、そして、特定の期間に与えられた1つ以上の標準刺激セットを使用して測定する。しかしながら、デバイスの様々な実施形態は、代わりに、周波数またはトレインの長さを変化させて与えた刺激を使用して、より明らかまたは、よりよく定義された結果を得ることができる。例えば、トレイン・オブ・フォー刺激(TOF)を与えたとき、第1に対する第4の筋肉反応の結果の比は、1より小さいが0.6より大きいなど、不明範囲に入る可能性がある。典型的なデバイスの様々な実施形態において、これにより、4つの一連の刺激が、3Hz、4Hzなどといった漸進的に周波数を上げながら再度与えられて、神経筋接合部に追加のストレスを加え、その不具合や完全性をより明確にする。図3に示すように、第1の刺激の、最後の刺激に対する振幅比は、2Hzでの4連の刺激に対して0.85であり、これは、刺激に対する普通の反応と考えられる許容範囲内である。しかし、さらに高い刺激周波数と、より多くの刺激回数で神経筋接合部にストレスを与えることにより、第1の刺激の最後の刺激に対する比は、0.55の比まで下がり、これは、その接合部が、まだ安全な伝達レベルで動作していないことを示す。また別の例では、図4に示すように、第1の刺激の、最後の刺激に対する振幅比は、2Hzでの4連刺激に対して0.85であり、これは、刺激に対する普通の反応と考えられる許容範囲内である。さらに高い刺激周波数で神経筋接合部にストレスを与えることにより、第1の刺激の最後の刺激に対する比は、0.90の比まで上がり、これは、その接合部が、まだ安全な伝達レベルで動作しており、それ以上のテストは必要ないことを示す。
【0062】
本技術のいくつかの実施形態では、追加または代替で、例えば、8連刺激または12連刺激までなどのような長い連続刺激にて刺激を与えて、追加のストレスを神経筋接合部に与え、その結果の正確性を確認し、その不具合または完全性をより明確にする。
【0063】
さらに、いくつかの実施形態では、デバイス、システム、及び方法は、さらに、または代替として、与えるにしたがって刺激間隔が連続する刺激の間で短くなるように、漸進的に迅速な刺激を与えて、神経筋接合部に追加のストレスを与え、その不具合または完全性をより明確にすることができる。
【0064】
さらに別の実施形態は、刺激付与器具が神経を消極すると同時に反復的な刺激を与えて、体性感覚誘発電位(SSEP)を含む近位に記録された波形を検出し、各SSEP平均の開始時に神経筋遮断の記録を更新することに関する。
【0065】
本技術の他の実施形態では、解釈から交絡因子を除去することができる、1つ以上の>96デシベルのCMRRの増幅器、刺激アーチファクトのフィルタリング、及び電気焼灼検出を利用する。
【0066】
ほとんどのデバイスは、個々のタイプのテストを開始するユーザに依存しているが、ここで開示されたデバイス、システム、及び方法の種々の実施形態は、いつ、遮断の程度の付加的解像度が必要か、そして、異なる周波数や刺激の回数で追加の刺激をいつ必要かあるいは必要かどうかを決定するための自動化されたアルゴリズムを使用する。例えば、このアルゴリズムは、所望の閾値より低いまたは高い読取値を読み取ったら、他の物理的パラメータに呼応して、処置の段階またはタイミングに合わせてなど、所定の間隔でテストするように設定できる。
【0067】
神経筋遮断を測定するために使用するいくつかのデバイスは、処理デバイスへの直接配線による。本デバイス、システム、及び方法のいくつかの実施形態では、伝達は無線信号を介して行ってもよい。
【0068】
いくつかのデバイスは、筋肉からの最大単一反応によって神経筋遮断を測定する。ここで開示するいくつかの実施形態では、デバイス、システム、及び方法は、例えば、20Hzなどのような高速の刺激で段階的で漸進的な刺激レベルを使用する。特定の実施形態では、デバイス及び方法は、最初のいくつかのモータユニットからの反応を誘発する、例えば、10mAのような最小刺激レベルから、全てのモータユニットから最大の反応を誘発する、40mAのような最大刺激レベルまでを送達する。このような段階的刺激プロトコルを使用することにより、筋肉を収縮する際に人とって自然な生理学的反応に密に従うことができ、神経筋接合部の機能の測定の忠実性をより高めることができる。
【0069】
いくつかの現在使用しているデバイスも、刺激アーチファクトが汚染していることから増幅器がベースラインを回復できないために、誘発された筋肉反応の開始を正確に測定するには問題がある。いくつかの実施形態では、本デバイス、システム、及び方法は、ベースラインをゼロ設定する適応フィルタアルゴリズムを組み込むことによって筋肉の電位の測定の正確性を改善することができる。図5Aは、筋肉反応の開始前にベースラインまで復帰しなかった刺激アーチファクトを表す。これは、刺激アーチファクトを除去する適応フィルタを使用して、筋肉反応の開始を正確に測定できるようにした状態を表す図5Bでは改善されている。デバイスが、筋肉反応を正確に定量化するため、開始電位を識別できることは重要である。
【0070】
以下の各参照文献は、ここで説明するシステム、方法、デバイス、及び構成要素への統合、代替及び/または組み合わせが可能な、ここで説明する方法、デバイス、システム、及び構成要素すべてに関し、その参照により、その全文がこの開示に含まれるものとする。
PCT/US2013/064518「神経筋監視表示システム」2012年10月12日、2014年4月17日ハンプトン他。この出願は、患者における神経筋遮断の程度を表示するためのシステムを記載している。
PCT/CA2004/002047「音筋運動記録法を使用した神経筋遮断の監視」2003年11月26日、2005年6月9日ボウ・フォン・チャン他。
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US3565080「神経筋遮断監視装置」1967年7月19日、1971年2月23日バローズウェルカム社。
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リエン、C.A.&Kopman、A.F.(2014)、「神経筋遮断の監視深度のための現在の推奨」CURR OPIN Anaesthesiol 27(6)、616−−622。
アリ、H.H.「神経筋機能の監視」麻酔におけるセミナー、1984 284〜292。
【0071】
前述の説明は、ここに開示されたシステム、デバイス、及び方法の特定の実施形態を詳述するものである。しかしながら、上記の内容が本文でいかに詳細に説明があろうとも、デバイス及び方法は、多くの方法で実施できることは理解されるであろう。また、上述のように、技術のある特徴または態様を説明する特定の用語を使用する場合には、その用語は、その用語が関連する技術の特性や態様に対する特定の特徴を含むことがないように、ここで再定義されることに留意すべきである。よって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれと等価物によって構成されるものである。
【0072】
様々な修正及び変更が記載された技術の範囲から逸脱することなく行いうることは、当業者によって理解されよう。このような修正及び変更は添付の特許請求の範囲によって定義されるように、実施形態の範囲内に含むことを意図するものである。また、一実施形態に含まれる部分は、他の実施形態と交換可能であり、図示の実施形態の1つ以上の部分は、任意の組み合わせで他の図示の実施形態に含めることができることも、当業者によって理解されよう。例えば、本明細書に記載及び/または図面に示された種々の構成要素のいずれも、他の実施形態からの統合、代替、または除外が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B