特許第6751128号(P6751128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751128
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】研究情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 15/00 20180101AFI20200824BHJP
   G16H 10/60 20180101ALI20200824BHJP
【FI】
   G16H15/00
   G16H10/60
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-210767(P2018-210767)
(22)【出願日】2018年11月8日
(62)【分割の表示】特願2016-100537(P2016-100537)の分割
【原出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2019-50017(P2019-50017A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-103602(P2015-103602)
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507306322
【氏名又は名称】木村 通男
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(72)【発明者】
【氏名】木村 通男
【審査官】 田中 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−141506(JP,A)
【文献】 特開2001−142978(JP,A)
【文献】 特開2002−323489(JP,A)
【文献】 特開2005−258853(JP,A)
【文献】 特開2000−348123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00−80/00
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研究に関する情報を管理する研究情報管理システムであって、
前記研究に関して行われる試験に関する情報または前記研究に関する記録を、入力データとして受け付け
試験に使用する検体または試験動物を特定する識別子、試験に使用する検査機器を特定する識別子、試験を行う研究者または研究補助者を特定する識別子、の少なくとも一つの識別子を読み取る読み取り手段を備え、
前記識別子を前記入力データと関連づけてデータベースへ記憶
検体または試験動物へ何らかの処理を行う都度、検査機器を使用する都度、試験を行う都度または研究に関する記録を行う都度、前記読み取り手段によって該当する識別子を取得し、必要な識別子の読み取りが実施されない場合は、前記研究情報管理システムに接続されている機器に対するその後の操作を不可能とする、研究情報管理システム。
【請求項2】
前記入力データが、前記データベースにおいて、所定の分類構造にしたがって分類されて記憶される、請求項1に記載の研究情報管理システム。
【請求項3】
認証機関から前記入力データのタイムスタンプを取得する手段をさらに備え、
前記データベースが、前記タイムスタンプを入力データと関連付けて記録する領域を備え、
試験を行う都度または研究に関する記録を行う都度、前記タイムスタンプを取得する、請求項1または2に記載の研究情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研究データなどを管理するシステムに関し、特に、臨床研究や医学研究に関する情報を管理する研究情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの病院・医院で、カルテ情報をコンピュータ管理する電子カルテシステムが広く利用されている(たとえば下記の特許文献1参照)。電子カルテシステムは、診療に関する情報を扱うが故に、医療固有の要求事項として、「真正性」、「見読性」、および「保存性」の三原則(いわゆる「電子保存の三原則」)を満たすことが要求されている。この三原則が担保されていることにより、電子カルテシステムによれば、高い信頼性を持って診療情報を管理できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−242395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、治験や臨床試験を含む臨床研究の分野においては、研究データの電子媒体による保存については、あまりシステム化が進んでおらず、研究データの不整合や散逸が危惧されている。
【0005】
また、医学研究においても、同様に、研究記録はもっぱら紙媒体(ラボノート)に記録されることが多く、検査機器から得られた実験データの真正性を担保する仕組みも十分には整っていない。近年、実験データの改竄が疑われる事例がいくつか顕在化し、社会的に大きな問題となった。
【0006】
本発明は、上記したような問題を鑑み、臨床研究や医学研究においても、研究成果物を高い信頼性を持って管理することができる研究情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の構成は、
医学系の研究に関する情報を管理する研究情報管理システムであって、
被験者または患者の同意が必要とされる試験の前に、少なくとも被験者または患者と試験名とを特定する情報を含む光学読み取り可能なコードを生成し、前記コードを含み当該被験者または患者から記入を受けるべき書面を印刷出力する手段と、
被験者または患者が記入を済ませた前記書面を画像化し、前記コードから読み取られた前記情報をタグ情報として、画像化された前記書面と共に記憶する手段とを備えた、研究情報管理システムである。
【0008】
本発明の第2の構成は、前記第1の構成において、
前記コードが、1次元バーコードまたは2次元バーコードである。
【0009】
本発明の第3の構成は、前記第1または第2の構成において、
カルテデータファイルを含む被験者または患者の情報を、被験者または患者のそれぞれに割り当てられた識別子に対応付けて管理する電子カルテデータベースと、
前記電子カルテデータベースに接続された研究者用端末とをさらに備え、
前記被験者または患者を特定する情報は、前記書面を印刷出力する指示が前記研究者用端末にて入力された際に、当該研究者用端末で開かれているカルテデータファイルに対応する被験者または患者の識別子を含む。
【0010】
本発明の第4の構成は、
データ入力画面レイアウトのテンプレートを記述する構造化文書を記憶したテンプレート記憶部と、
選択されたテンプレートに対応する構造化文書を解析してデータ入力画面を表示する表示処理部と、
前記データ入力画面に対してデータの入力があったとき、入力データとこれに対応するタグ名とを関連付けて少なくとも一時的に記憶する入力データ記憶部と、
前記データ入力画面に対するデータの入力が完了すると、当該データ入力画面のテンプレートに対応する構造化文書と、前記入力データ記憶部に記憶された前記入力データおよびタグ名とを参照し、入力データを含むデータ入力画面のレイアウトを記述するデータ入り構造化文書を生成する構造化文書生成部と、
前記データ入り構造化文書から、検索項目として少なくともタグ名を抽出する項目抽出部と、
前記項目抽出部によって前記データ入り構造化文書から抽出された検索項目と、当該データ入り構造化文書の少なくとも一部とを関連付けて記憶するデータベースとをさらに備え、
前記試験に関するデータを、前記入力データとして入力させる。
【0011】
本発明の第5の構成は、前記第4の構成において、
前記入力データが、前記データベースにおいて、所定の分類構造にしたがって分類されて記憶される。
【0012】
本発明の第6の構成は、
医学系の研究に関する情報を管理する研究情報管理システムであって、
実験に使用する検体または実験動物を特定する識別子を読み取る手段と、
前記識別子を実験データと関連付けて記録するデータベースとを備え、
検体または実験動物へ何らかの処理を行う都度、前記識別子を取得する。
【0013】
本発明の第7の構成は、
医学系の研究に関する情報を管理する研究情報管理システムであって、
実験に使用する検査機器を特定する識別子を読み取る手段と、
前記識別子を実験データと関連付けて記録するデータベースとを備え、
検査機器を使用する都度、前記識別子を取得する。
【0014】
本発明の第8の構成は、
医学系の研究に関する情報を管理する研究情報管理システムであって、
実験を行う研究者または研究補助者を特定する識別子を読み取る手段と、
前記識別子を実験データと関連付けて記録するデータベースとを備え、
実験を行う都度または研究に関する記録を行う都度、前記識別子を取得する。
【0015】
本発明の第9の構成は、
医学系の研究に関する情報を管理する研究情報管理システムであって、
認証機関から実験データのタイムスタンプを取得する手段と、
前記タイムスタンプを実験データと関連付けて記録するデータベースとを備え、
実験を行う都度または研究に関する記録を行う都度、前記タイムスタンプを取得する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、臨床研究や医学研究においても、研究の成果物であるデータを高い信頼性を持って管理することができる研究情報管理システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る研究情報管理システムの全体構成を示す図。
図2】第1の実施形態に係る研究情報管理システムで出力される同意書フォームの一例を示す図。
図3】同意書の取得から保存までの処理手順を説明するフローチャート。
図4】スタンプ機能を実現するための、研究者用端末10およびサーバ20の機能的な概略構成図。
図5】スタンプ機能により表示されるデータ入力画面の一例を示す図。
図6】臨床試験データの入力・出力の一例を示す図。
図7】臨床試験データの入力・出力の一例を示す図。
図8】臨床試験データの入力・出力の一例を示す図。
図9】臨床試験データの入力・出力の一例を示す図。
図10】臨床試験データの入力・出力の一例を示す図。
図11】臨床試験データの入力・出力の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
第1の実施形態にかかる研究情報管理システムは、臨床研究に関するデータを管理するコンピュータシステムである。なお、臨床研究には、臨床試験や治験などの様々な内容の試験・研究が含まれ、本実施形態にかかる研究情報管理システムが管理対象とする試験・研究の内容は、特に限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る研究情報管理システム1は、病院・診療所や研究機関のLAN(Local Area Network:ローカルエリアネットワーク)40を介して、研究者用端末10、サーバ20、およびスキャナ30が相互に接続された構成である。なお、サーバ20としては、臨床研究が行われる病院・診療所の電子カルテシステムサーバを利用することができる。なお、図1では、ハブやルータ等のネットワーク接続機器等の図示は省略されている。また、図1では、研究者用端末10を1台のみ図示しているが、本発明の研究情報管理システムに接続される研究者用端末10およびスキャナ30の台数は任意である。
【0021】
研究者用端末10は、研究者としての医師または補助者が操作するものであり、研究室または診療室等に設置され、図1に示すように、ディスプレイ11と、本体12と、バーコードスキャナ13とを備えている。なお、図1では図示を省略しているが、研究者用端末10は、キーボードやマウス等の入力デバイスやプリンタ等の任意の周辺機器を備えていても良い。また、図1では、研究者用端末の例としてデスクトップ型のパーソナルコンピュータを例示したが、研究者用端末のハードウェア構成はこれに限定されず、任意である。また、スキャナ30が研究者用端末10に接続された構成としても良い。
【0022】
治験等を含む臨床研究の場合、どの被験者(患者)に対して、いつ、どこで、どのような内容の試験を行ったか、といった試験記録を漏れなく正確に残しておくことが重要である。これに加えて、例えば、薬の投与、手術、医療機器等による侵襲を伴う治療、人体からの試料の取得など、特に、人体に影響をおよぼす可能性のある試験の各ステップにおいては、あらかじめ被験者から同意書を取り、所定の保管期間が経過するまでその同意書を保管しておくことも、極めて重要である。
【0023】
そこで最初に、この実施形態にかかる研究情報管理システム1において、被験者の同意書を管理する仕組みについて説明する。前提として、ある医療機関において患者が治験に参加しているものとする。この患者は、当該医療機関の入院患者または外来患者であり、この患者に関する基本データ(氏名、性別、年齢、住所、健康保険情報、当該医療機関における患者ID等)は、サーバ20(電子カルテシステムサーバ)に既に登録されているものとする。なお、サーバ20は、被験者の基本データや治験データを記録しておく記録媒体を内蔵していても良いし、これらのデータを外部サーバ(データベースサーバ)に記録する構成としても良い。
【0024】
また、サーバ20には、治験に含まれる様々な試験内容のデータが予め登録されている。試験内容のデータは任意のフォーマットで良いが、治験実施計画書やGCPの規則に準じて作成されており、たとえば、試験ID、試験名、試験実施地域、対象疾患、試験の種類等の様々な項目を含む。また、治験実施計画(どのような試験をどのような順序で実施するかを示すフロー)も登録されている。さらに、試験ごとに必要な同意書のフォーマットもサーバ20に記録されている。この同意書のフォーマットは、試験IDや試験名等の、これから実施しようとする試験の内容を特定する情報と、患者氏名や患者ID等の、被験者を特定する情報とが含まれている。
【0025】
そして、同意書が必要な試験を行う前には、医師は、研究者用端末10を操作して当該試験の同意書を印刷出力し、被験者に署名を求めなければならない。なお、この同意書は、サーバ20に登録されている治験実施計画のフローにしたがって、1つの試験が終了して次の試験へ進む際に、次の試験の実施に同意書が必要な場合、研究者用端末10のディスプレイに「同意書出力」といったボタンを表示させ、医師がこれを押すことによりプリンタから印刷出力するようにしても良い。
【0026】
ここで、同意書には、図2に示すように、所定の位置(図2の例では用紙の左上部分)にバーコードが印刷される。すなわち、医師が、研究者用端末10から、ある試験の同意書を印刷出力する操作を行ったときに、研究者用端末10は、その試験について、被験者、医師、および試験内容等を一意に特定するバーコードを生成し、同意書へ印刷する。つまり、このバーコードには、被験者ID、医師ID、試験ID等の情報が含まれる。これらの情報以外に、バーコードに含まれる情報は任意であるが、例えば、当該書類が「同意書」であることを示す文書種類ID、同意書の取得日付、試験の実施場所、担当部署、文書の保管場所を示すID、保管期限、同意書の出力操作を行った研究者用端末10のID等の様々な情報が考えられる。なお、図2の例では、二次元バーコード(QRコード(登録商標))を例示しているが、一次元バーコードでも良いし、この他に任意のコードを利用することができる。
【0027】
なお、前記の被験者IDとしては、研究者用端末10において医師が同意書出力のボタンを押したときに、当該端末上で開かれている電子カルテの患者のIDが取得されて用いられる。
【0028】
このように、同意書を取得する際には、医師がその場で研究者用端末10を操作して同意書のフォームを印刷出力し、しかも、この同意書には、どの試験についてのどの被験者についての同意書なのか等が一意に特定できる情報を含むバーコードが印刷されている点が、本システムの一つの特徴である。この同意書は、被験者が署名をした後に、スキャナで読み取って画像としてサーバ20に保存される。その際に、バーコードに含まれる情報は、当該画像ファイルのタグ情報としてサーバ20に保存される。これにより、サーバ20に保存された同意書の画像が、どの試験についてのどの被験者から取得した同意書なのかを一意に特定することが可能となる。この結果、同意書が散逸することなく、同意書を正しく管理することができる。
【0029】
また、同意書の画像ファイルをタグ情報(バーコード情報)と共にサーバ20で保存することにより、タグ情報に含まれている情報をキーワードとして用いて、研究者用端末10からの検索が容易となる。たとえば、特定の被験者についての同意書の一覧リストや、特定の試験IDに関連する同意書の一覧リスト等を、研究者用端末10に表示させることができる。
【0030】
図3は、上述した同意書の取得から保存までの処理手順を説明するフローチャートである。図3に示すように、本実施形態の研究情報管理システム1においては、治験実施計画のフローにおいて、次に実施する試験が、同意書が必要とされる試験であると判断される場合(ステップS1においてYES)、必要な情報を含むバーコードを生成し(ステップS2)、生成したバーコードを含む同意書フォームを印刷出力する(ステップS3)。そして、署名された同意書の画像をスキャナで取り込み(ステップS4)、バーコードから読み取られた情報をタグ情報として、当該同意書の画像ファイルをサーバ20へ記録する(ステップS5)。
【0031】
なお、臨床試験で用いられる同意書には、単に被験者からの署名を取得するための同意書の他に、説明書付きの同意書もある。説明書付きの同意書の場合は、医師が同じ内容の書面を2通(正本と副本)用意し、説明書にしたがって試験内容についての説明を医師から被験者に行った後、双方が署名して1通ずつ保管することになっている。この場合は、同じバーコード付きの同意書を2通印刷出力して、双方が署名した後に、2通をスキャンして保存するようにすれば良い。あるいは、バーコード情報に、正本と副本との区別が可能な識別子を含めても良い。
【0032】
さらに、外部認証サーバによるユーザ認証サービス等を利用して、どの医師がいつ出力した同意書なのかを表す情報(当該医師のログインIDおよびログイン日時等)であって、かつ、第三者による認証付きの情報を、バーコード情報に埋め込んでも良い。これによれば、しかるべきタイミングで同意書を取得していなかった場合、後から同意書を追加することは不可能となるので、不正を防止できる。なお、ユーザ認証サービスを提供する認証サーバは、第三者機関による外部認証サーバに限らず、同じ施設内(例えば研究所内)に設けられた認証サーバであっても良い。
【0033】
なお、保存すべき書類が複数ページにわたる場合、全てのページにバーコードを印刷することが好ましい。この場合に、バーコード情報として当該書類のページ情報(書類の総ページ数および各ページの通し番号)も持たせることが望ましい。このページ情報も、当該書類をスキャンした画像ファイルを保存する際に、そのタグ情報の一部として関連づけて保存される。これにより、複数ページにわたる書類のデータが散逸することを防止できるだけでなく、ページが順不同な状態でスキャンをしても、各ページの順序を正しく認識でき、ページの通し番号にしたがって各ページの画像を並べ替えることも可能となる、という利点がある。
【0034】
次に、本実施形態の研究情報管理システム1において、試験結果をサーバ20へ記録する仕組みについて説明する。本実施形態において前述したとおり、治験等を含む臨床研究の場合、どの被験者に対して、いつ、どこで、どのような内容の試験を行ったか、といった試験データを漏れなく正確に残しておかなければならない。
【0035】
そこで、研究情報管理システム1は、電子カルテシステムの「スタンプ」機能を利用して、試験データ(ケースカード)を管理する。ここで、電子カルテシステムの「スタンプ」とは、その詳細は本願の出願人らによる先の特許(特許第5204534号公報、特願2008−99577号)に開示されている。すなわち、データ入力画面レイアウトのテンプレートをXML等の構造化文書(構造化記述言語)で記述し、このデータ入力画面に対してデータの入力があったとき、入力データを含むデータ入力画面のレイアウトを記述するデータ入り構造化文書を生成し、生成されたデータ入り構造化文書から検索項目として少なくともタグ名を抽出し、抽出された検索項目と、当該データ入り構造化文書の少なくとも一部とを関連付けてデータベースへ記憶させるものである。
【0036】
このデータ入力画面のテンプレートを端末の画面に表示させて必要なデータを入力させる機能を、紙カルテに、カルテスタンプ(ゴム印)を押してその上にデータを記入する行為になぞらえて、ここでは、電子カルテシステムの「スタンプ」機能と呼ぶ。
【0037】
このスタンプ機能を実現するための、研究者用端末10およびサーバ20の機能的な概略構成を図4に示す。図4に示すように、研究者用端末10は、通信処理部110、テンプレート記憶部111、表示処理部112、入力データ受付部113、入力データ記憶部114、および、XMLファイル生成部(構造化文書生成部)115を備えている。なお、図4の例では、テンプレート記憶部111と入力データ記憶部114は、研究者用端末10の内部に(例えば内蔵ハードディスク上に)設けられているが、これらが研究者用端末10の外部に(例えば研究者用端末10からアクセス可能なディスク装置やファイルサーバ上などに)構築されていても良い。また、図2の例では、テンプレート記憶部111が研究者用端末10に設けられた例を示しているが、テンプレート記憶部をサーバ20に配置し、データ入力者がテンプレート(スタンプ)を選択したときに、選択されたテンプレートに対応するXMLをサーバ20から研究者用端末10へ送信するようにしても良い。
【0038】
研究者用端末10において、通信処理部110、表示処理部112、入力データ受付部113、およびXMLファイル生成部115のそれぞれは、研究者用端末10のプロセッサが所定のプログラムを実行することによって実現される機能的手段であり、必ずしもこれらが別個独立したハードウェアとして実装されていることを要しない。
【0039】
通信処理部110は、LAN40を介して、サーバ20や、必要に応じて他のユーザ端末と通信を行う。
【0040】
テンプレート記憶部111は、研究者用端末10において利用されるデータ入力画面のテンプレート(スタンプ)として、XMLで記述された文書定義を記憶している。それぞれのテンプレートを最初に作成する際に、スタンプの検査項目等は、電子カルテシステムの検査結果データベース等から取得することができる。
【0041】
ここではまず、電子カルテシステムにおいて、スタンプを利用して入力されたデータを保存する仕組みについて説明する。例えば、図5に示すデータ入力画面では、画面左側の文書選択欄31において、データ入力用の様々なテンプレート(スタンプ)を選択できるようになっている。図5の例は、「治験」に関するデータ入力画面の一つとして「人口統計学的データ」が選択され、メイン画面32にそのデータ入力画面が表示されている様子を示す。つまり、表示処理部112は、文書選択欄31において医師が選択したテンプレートを定義するXMLを、テンプレート記憶部111から抽出し、抽出されたテンプレートのXMLを解析することにより、データ入力画面を研究者用端末10に表示する。図5に示す「人口統計学的データ」のテンプレートを定義するXMLは、特許第5204534号公報の図4(a)〜図4(h)に示すとおりである。なお、特許第5204534号公報の図4(a)〜(h)において、データ入力画面の入力欄に対応するタグのXML記述が含まれている箇所を枠で囲んで示している。
【0042】
入力データ受付部113は、研究者用端末10に表示されたデータ入力画面に対する入力データを検出し、検出した入力データを、そのデータの入力対象となったタグ名と共に、入力データ記憶部114へ少なくとも一時的に記憶する。XMLファイル生成部115は、データ入力画面に対するデータの入力が完了すると、テンプレート記憶部111と入力データ記憶部114とを参照し、入力データを含むデータ入力画面のレイアウトを記述したデータ入りXMLファイルを生成する。生成されたデータ入りXMLファイルは、LAN40を介して、研究者用端末10からサーバ20へ送られる。
【0043】
たとえば、ここで、ある被験者の電子カルテにおいて開かれた、図5に示した「人口統計学的データ」のデータ入力画面に対して、図7に示すようなデータ入力がなされたものとする。この場合、観察日として入力された日付のデータは、XML中に定義された「観察日.年」というタグ(コントロール)に対して入力された文字列データと、「観察日.月」というタグに対して入力された文字列データと、「観察日.日」というタグに対して入力された文字列データとを含む。入力データ受付部113は、これらの文字列データを入力データとして取得し、「観察日.年」、「観察日.月」、「観察日.日」というタグとそれぞれ関連付けて、入力データ記憶部114へ記憶させる。データ入力画面に入力された他のデータ、すなわち、生年月日、性別、身長、体重、人種、イニシャルについても、入力データ受付部113によって同様の処理がなされ、入力データが、タグ名と関連づけられて、入力データ記憶部114へ少なくとも一時的に記憶される。このとき、被験者や担当医師等を特定する情報も、入力データに関連づけられて記憶される。
【0044】
このようにして、データ入力画面に対するデータの入力が完了すると、XMLファイル生成部115が、そのデータ入力画面のテンプレートのXMLと、入力データ記憶部114に記憶された入力データおよびタグ名とを参照し、入力データを含むデータ入力画面のレイアウトを記述するXMLファイルを生成する。生成されたXMLファイルは、研究者用端末10の通信処理部110により、サーバ20へ送信される。
【0045】
一方、サーバ20は、図4に示すように、通信処理部120、項目抽出部121、XMLデータベース122、検索条件設定部123、検索実行部124、および、表示処理部125を備えている。なお、図4の例では、XMLデータベース122は、サーバ20の内部に(例えば内蔵ハードディスク上に)構築されているが、XMLデータベース122がサーバ20の外部に(例えばサーバ20からアクセス可能なディスク装置やファイルサーバ上などに)構築されていても良い。通信処理部120、項目抽出部121、検索条件設定部123、検索実行部124、および表示処理部125は、それぞれ、サーバ20のプロセッサが所定のプログラムを実行することによって実現される機能的手段であり、必ずしもこれらが別個独立したハードウェアとして実装されていることを要しない。
【0046】
通信処理部120は、LAN40を介して、研究者用端末10との間で通信を行う。
【0047】
項目抽出部121は、研究者用端末10から送られたデータ入りXMLファイルから、データ入力画面の入力欄に対応するタグ名を抽出する。XMLデータベース122は、ユーザ端末から送られたデータ入りXMLファイルを、当該XMLファイルから項目抽出部121によって抽出されたタグ名と関連付けて記憶したものである。
【0048】
検索条件設定部123は、XMLデータベース122から検索項目を取得して表示し、検索実行者に必要に応じて検索項目を選択させると共に、検索項目に関する検索条件を受け付ける。検索実行部124は、検索実行者から受け付けた検索条件に基づいてXMLデータベース122を検索する。検索結果は、表示処理部125により、適宜の形式で、または、当該入力データを含むデータ入力画面の形式で、検索実行者へ提示される。なお、検索条件の入力と検索結果の表示は、サーバ20が備える入力装置および表示装置を利用して行えるようにしても良いが、研究者用端末10のいずれかが備える入力装置および表示装置を利用して行えるようにしても良い。あるいは、研究者用端末10およびサーバ20以外の端末であって、LAN40を介してサーバ20にアクセス可能な端末を利用して検索が行えるようにしても良い。
【0049】
このように構成されたサーバ20では、研究者用端末10からXMLファイルが送信されると、通信処理部120がこれを受信する。受信されたXMLファイルは、XMLデータベース122へ格納される。この際に、項目抽出部121が、XMLファイルから入力データ項目に対応するタグ名を抽出し、抽出されたタグ名をXMLファイルに関連付けてXMLデータベース122へ記憶させる。項目抽出部12によって抽出されたタグ名は、後の検索処理において、検索実行者に検索項目を選択させるための選択肢として用いられる。なお、受信したXMLファイルをXMLデータベース122へ格納する際に、記憶容量を節約するために、例えば、XMLファイル中の入力データに関係ない記述部分等を取り除き、有意な入力データに関する記述を含む部分のみをXMLデータベース122へ記憶させるようにしても良い。
【0050】
以上の手順により、研究者用端末10から入力された試験データを、XMLファイルとして、サーバ20のXMLデータベース122へ収集することができる。なお、上記の説明では、XMLファイルから入力データ項目に対応するタグ名を抽出する処理を、サーバ20に設けられた項目抽出部121において行うものとしたが、タグ名の抽出処理を研究者用端末10側で行い、抽出したタグ名をXMLファイルと共にサーバ20へ送ってXMLデータベース122へ記憶させる構成としても良い。
【0051】
ここで、図6図11に、臨床試験データの入力・出力の一例を示す。図6は、ある被験者の電子カルテを開いた状態の、研究者用端末10の画面の表示例である。医師が、画面の左欄の「スタンプ群」から、所望のテンプレート(スタンプ)を選択してクリックすると、当該患者の試験データとしてXMLデータベース122に記憶されているXMLファイルが読みだされ、読み出されたXMLファイルに基づいて、図7に示すように、当該テンプレート(スタンプ)の入力ウィンドウが開く。図7の例では、「(記事)透析予防スタンプ」のウィンドウが開いた状態が示されている。医師は、このウィンドウ上で、試験データを入力することができる。
【0052】
このとき、図7に示すように、「(記事)透析予防スタンプ」のウィンドウが開いた際に、当該患者について過去に行った試験や検査のデータは、当該検査の日付と共に、スタンプ上に既に表示された状態になっている。これは、XMLデータベース122に記憶されているXMLファイルに、入力項目に関するタグ名と共に入力データも記録されているからである。例えば、図7に示した表示画面の例では、このスタンプを呼び出している日付は、画面に表示されているとおり2013年5月29日であるが、過去(2013年5月23日)に行われた検査の結果として、HbA1c、クレアチニン、および尿蛋白の数値が、それぞれ表示されている。したがって、医師は、既に検査済みのデータをスタンプ上に再度入力する必要はなく、新たに検査した項目についてのみ、データ入力を行えばよい。例えば、図7の例では、血圧についてのみ検査を行って、その検査結果を入力すればよい。
【0053】
なお、既に入力済みの項目であっても、検査をやり直した場合には、画面上で当該項目について数値を入力すれば、その入力数値と検査日とが上書き更新される。なお、履歴を正確に残すためには、過去の数値の編集はできず、数値を書き換えた場合は「検査日」の日付も自動的に書き換わるようになっていることが望ましい。また、数値が書き換えられた場合であっても、過去の数値が、その検査を行った過去の日付と共に履歴として記憶されるようにしても良い。
【0054】
なお、過去に行われた検査の結果(スタンプ)を画面上に呼び出す際には、直近の検査日付のものが自動的に呼び出されるようにしても良い。また、直近の検査日付よりも前の日付のスタンプを呼び出したい場合は、当該患者について検査を行った日付のリストを表示して、そのリストから選択できるようにしても良い。
【0055】
そして、医師が必要な試験データを入力してから、ウィンドウ右下の「確定」ボタンをクリックすると、上述したスタンプ機能の仕組みにより、このスタンプに入力されたデータが、入力項目のタグ名と関連付けた状態で保存される。そして、そのデータは、図9に示すように、当該被験者の電子カルテのSOAP記事のS欄にも、スタンプ名と共に表示される。また、医師は、他の欄にも適宜入力をすることができる。図9の例では、A欄に、診断内容がテキスト入力されている。この状態でさらに「確定」ボタンを押した後、図10に示すように、当日の全記録を表示することもできる。図10に示す例では、メインウィンドウの左側にスタンプで入力した試験データと、診断記事とが表示され、右側には、試験結果を見て医師が当日に出した処方指示の内容が表示されている。
【0056】
また、スタンプで入力した試験データは、研究者用端末10またはサーバ20において、時系列に集計したり表やグラフに加工したりすることも可能である。たとえば、図11に示すように、「(記事)透析予防スタンプ」で当該被験者についてこれまでに入力されたデータを、表ソフトに自動的に集計して、項目毎に分かりやすく表示したものである。図8図11とを比較すれば分かるように、図8のスタンプで入力されたデータが、項目毎に整理されている。もちろん、これらのデータをグラフ化することも容易である。
【0057】
すなわち、スタンプで入力された試験データは、スタンプ画像として研究者用端末10に表示されたり印刷されたりする他、構造化文書またはCSVデータとしても、出力して利用することができる。
【0058】
また、スタンプで入力されたデータをサーバ20において、研究用あるいは医療用の分類構造にしたがってさらに分類し、分類された各項目または複数項目のまとまりで、記録したり出力したりするようにしても良い。すなわち、被験者(患者)のデータには、名前や性別等の被験者の基本情報と、現所見データとが含まれるが、現所見データは、診療科目(例えば、神経科、消化器科、循環器科、等)の項目があり、さらにそれぞれの項目についてより細かい分類として、例えば消化器科であれば、食道、胃、等といった細分項目のデータが含まれる。それらの細分項目のデータも、さらに細かい分類のデータによって構成される。一般的には、このようなデータは、1つまたは複数の木構造またはネット構造のデータとして構成されている。そして、スタンプで入力された試験データを、サーバ20において、このような木構造またはネット構造のデータに対応付けて、記録および出力をすることが好ましい。
【0059】
また、XMLファイルの他に、試験データが入力された状態のスタンプの画像を、画像データとして、サーバ20または外部のサーバに保存するようにしても良い。さらに、入力されたデータのみを抽出し、テキストデータとして、サーバ20または外部のサーバに保存するようにしても良い。このような画像データまたはテキストデータは、タグ情報を持っていないので、項目名による検索等はできないが、少なくとも、試験データの保存義務は果たすことができる。
【0060】
以上のとおり、研究情報管理システム1では、臨床試験のデータや医師の所見等の様々なデータを、XMLで記述されたケースカードのテンプレート(データ入力画面)へ入力させ、データが入力された項目のタグ名を抽出し、入力データを含むXMLファイルと共にサーバ20に蓄積する。これにより、試験データや臨床データ(所見を含む)等を電子カルテシステムのデータとして保存することができるので、真正性、見読性、および保存性の三原則を満たした状態で、試験データを管理することが可能となる。また、臨床試験の被験者は、治療中の患者でもあるので、従来は、臨床試験のケースカードに記入した内容(試験データ)と同じことを、電子カルテシステムにも治療記録として入力しなければならないという煩わしさがあった。これに対して、研究情報管理システム1によれば、臨床試験のケースカードを電子カルテシステムのスタンプ機能を利用して作成・管理するので、データの重複入力の手間を必要とせずに、電子カルテシステムに試験データや臨床データを保存することができるという利点がある。また、試験データの検索、集計、加工も容易である。
【0061】
なお、上記の説明においては、試験データのケースカードを電子カルテシステム上で作成する仕組みを例示した。しかし、試験データのケースカードの作成は電子カルテシステム外で行い、最終的に作成されたデータのみを電子カルテシステムのサーバ20に保存するようにしても良い。あるいは、最終的に作成されたデータも外部サーバに保存して、電子カルテシステムからリンクを張るなどして、当該データにすぐにアクセスできるようにしても良い。このように構成すれば、既存の電子カルテシステムに大きな変更を加えずに済む。
【0062】
以上のとおり、第1実施形態にかかる研究情報管理システム1によれば、臨床試験のデータ(ケースカード)を、電子カルテシステムのスタンプ機能を利用して作成し、電子カルテシステムの基準にしたがって管理することができる。よって、臨床試験のデータを、漏れなく、かつ、後の検索・加工が容易な状態で管理できる。さらに、試験データを、被験者毎に、かつ、項目毎に電子カルテシステムで正しく管理しているので、このデータに基づいてCRF(症例報告書)等を作成して出力することもできる。
【0063】
また、本実施形態の研究情報管理システム1において、スタンプを利用して、検査スケジュールの自動管理をするようにしても良い。例えば、ある被験者にある薬を処方した後、所定の期間以降に当該被験者(患者)が再来院した際に、前回の処方記録や検査依頼記録等に基づいて、今回の検査時に記入すべきテンプレート(スタンプ)を自動的に抽出し、当該スタンプを研究者用端末10に表示したり、当該テンプレートを記入すべきことを知らせるメッセージを表示したりすることが好ましい。
【0064】
また、第1実施形態にかかる研究情報管理システム1は、試験の各ステップにおいて、同意書が必要とされる場合には、被験者の同意書フォームをバーコード付きで出力し、署名済みの同意書を画像ファイルとしてバーコード情報と共に保存している。したがって、臨床試験において同意書が散逸したりせず、適正な管理ができるという利点もある。
【0065】
なお、本実施形態は、臨床研究に関するデータを管理する研究情報管理システム1として説明をしたが、システムの用途は研究目的に限定されず、診察や治療目的においてもこのようなシステムを利用することができる。
【0066】
[第2実施形態]
第2の実施形態にかかる研究情報管理システムは、基本的なシステム構成は第1の実施形態にかかる研究情報管理システム1と同様であるが、特に、医学研究に関するデータを管理するコンピュータシステムである。なお、この実施形態においては医学研究に関するデータを管理対象とする例を説明するが、医学研究に限らず、様々な分野の研究データの管理にも本発明を適用することは可能である。
【0067】
医学研究に際しては、他の学術分野の研究と同様に、研究者は、いつ、どこで、どのような実験を、どのように実施し、どのような結果が得られたか、等を明らかにした実験記録を、真実に基づいて詳細かつ正確に残すことが求められている。近年、実験データの改竄が疑われる事例がいくつか顕在化したことからも、実験記録の真正性が厳しく問われるようになっている。
【0068】
しかしながら、従来、実験記録はもっぱら「ラボノート」に手書きで残されるのが主流であり、たとえば、記載事項を後から修正したり、書かれていなかった事項を追記したりしても、それを見つけるのは難しい、という問題がある。
【0069】
本実施形態にかかる研究情報管理システム1は、そのような問題を鑑み、実験内容を真実に基づいて正確に記録し、また、実験データの改竄を不可能とする、ことを目的とするものである。
【0070】
この目的を達成するために、本実施形態にかかる研究情報管理システム1は、(1)実験に使用した検体や実験動物を特定し、実験データと関連付けて記録する機能、(2)実験に使用した検査機器を特定する機能、(3)実験を実行した研究者を特定する機能、および、(4)改竄されたらそれが分かるように実験データを保存する機能、を提供する。なお、これらの機能を全て備えていることが好ましいが、これらの機能の全てを備えることは必須ではない。
【0071】
最初に、上記(1)の、実験に使用した検体や実験動物を特定し、実験データと関連付けて記録する機能について説明する。
【0072】
この機能を達成するために、研究情報管理システム1は、検体や実験動物のそれぞれに、個体識別IDを含むバーコードを付して、研究者または研究補助者が検体や実験動物を用いて実験をしたり、検体や実験動物に実験以外の何らかの処理(実験準備等)をしたりする都度、バーコードスキャナ13で、検体や実験動物に付されたバーコードと、望ましくは研究者または研究補助者に付与されているバーコード(名札等に付与されている)とをそれぞれ読み取り、その記録をサーバ20に残す。このとき、その検体または実験動物に対して何を行ったかの記録を、研究者用端末10等から入力して、上記のIDと関連付けてサーバ20に記憶することが好ましい。
【0073】
検体については検体容器に、実験動物についてはケージや首輪・耳札等に、バーコードを印刷したシールやタグを付ければよい。バーコードの代わりにRFIDを使用することも可能である。または、実験動物の体内に埋め込むマイクロチップを利用してもよい。
【0074】
このように、検体や実験動物に個体識別IDを付与することにより、検体や実験動物に対して研究者や研究補助者がアクセスする都度、誰がいつ、その検体や実験動物にアクセスしたかの記録が残されるので、検体や実験動物の取り違えやすり替え等があった場合、その事実を検知しやすくなる。
【0075】
さらに、検体や実験動物に関するデータを保存する際に、外部認証サーバのユーザ認証サービスなどを用いて、検体や実験動物にアクセスした人物についての第三者認証を取得すると共に、アクセス時刻の情報も取得して、データと関連付けて記録することが、より望ましい。なお、ユーザ認証サービスを提供する認証サーバは、第三者機関による外部認証サーバに限らず、同じ施設内(例えば研究所内)に設けられた認証サーバであっても良い。
【0076】
また、バーコード以外に、実験動物の個体を識別する方法として、人間の顔認証技術を応用することも考えられる。たとえばマウスやラットであっても個体によって目や鼻の大きさや形状等が微妙に異なるので、顔画像に基づいた個体識別が、ある程度は可能であると考えられる。そこで、研究室に実験動物が入荷したときに、デジタルカメラで顔の画像を取得して記録しておき、研究者等が実験動物にアクセスする都度、デジタルカメラで顔の撮影を行い、記録されている顔画像と比較(人間の顔認証技術を応用)して、実験動物の取り違えやすり替えが無いかを確認すれば良い。この他に、動物の種類によっては、歯形や鼻紋等を個体識別に用いることも可能であろう。
【0077】
以上のとおり、上記(1)の、実験に使用した検体や実験動物を特定し、実験データと関連付けて記録する機能を備えたことにより、実験データを得た際にどの検体または実験動物を使用したかを、正確にデータとして残すことができる。これにより、後で実験データの真正性が問われることがあっても、このデータを証拠として使用することが可能となる。また、第三者認証を併せて利用することにより、どの研究者がその検体や実験動物にアクセスしたかについて、より確実な証拠を残すこともできる。
【0078】
次に、上記(2)の、実験に使用した検査機器を特定する機能について説明する。なお、「検査機器」には、特定の医学用途に使用される医療機器の他に、任意の機器を含む。たとえば、一般的なデジタルカメラも検査機器に含まれる。
【0079】
研究室で使用する検査機器の全てについて、機器を一意に識別する検査機器IDを付与し、そのIDを含むバーコードを検査機器に貼り付けておく。そして、検査機器を使用する都度、バーコードスキャナ13で、検査機器に付されたバーコードと、研究者または研究補助者を特定するバーコード(名札等に付与されている)とをそれぞれ読み取る。そして、読み取られたバーコードの情報を、当該検査機器から出力されるデータと関連付けて、サーバ20に記憶する。また、この場合においても、外部認証サーバのユーザ認証サービスなどを用いて、検査機器を使用した人物についての第三者認証を取得すると共に、アクセス時刻の情報も取得して、検査機器からの出力データと関連付けて記録することが、より望ましい。なお、ユーザ認証サービスを提供する認証サーバは、第三者機関による外部認証サーバに限らず、同じ施設内(例えば研究所内)に設けられた認証サーバであっても良い。
【0080】
あるいは、検査機器IDのバーコードを読み取る方法以外には、次のような方法も考えられる。検査機器がLAN40に接続可能な機器である場合は、当該検査機器のネットワーク上のアドレスを、検査機器IDとして取得し、これを出力データと関連付けて記録することも好ましい。さらに、検査機器がネットワーク上でノード認証されている場合は、その認証情報を取得して検査機器IDとして用いることも望ましい。
【0081】
また、検査機器からの出力データをそのまま記録することに限らず、検査機器からの出力に何らかのデータ処理を行って得られたデータを、検査機器IDと関連付けて記録しても良い。
【0082】
以上のとおり、上記(2)の、実験に使用した検査機器を特定し、検査機器からの出力データと関連付けて記録する機能を備えたことにより、検査データをどの検査機器から得たかを、正確にデータとして残すことができる。これにより、後で実験データの真正性が問われることがあっても、このデータを証拠として使用することが可能となる。また、第三者認証を併せて利用することにより、どの研究者がその検体や実験動物にアクセスしたかについて、より確実な証拠を残すこともできる。
【0083】
次に、上記(3)の、実験を実行した研究者を特定する機能について説明する。これについては、上述したとおり、実験に関わる何らかの処理を行ったり研究に関する記録を行ったりする都度、研究者または研究補助者が、名札等に付与されているバーコードをバーコードスキャナ13で読み取らせて、何をしたかを表す情報と共に、サーバ20に記録するものである。なお、もちろん、個人を特定する手段としては、バーコードに限らず、たとえば生体認証を利用することも可能であり、より真正性が高い実験記録を残すことができる。上記の「何をしたかを表す情報」とは、実験データであっても良いし、当該人物が、何を行ったかをテキスト入力するようにしても良い。また、上記と同様に、第三者認証を併せて利用することにより、誰がいつ何をしたかについて、より確実な証拠を残すこともできる。
【0084】
また、シングルサインオンを採用している研究情報管理システムの場合は、当該システムに一旦ログイン認証されると、このシステム上のリソースを再度ログインすることなく利用することが可能である。この場合は、最初にログインしたときのログイン情報が、研究者を特定する情報として保存される。したがって、シングルサインオンを採用しているシステムの場合は、研究者は、都度ログインをしたり研究者IDのバーコードを読み取らせたりすることなく、研究作業を進めることができる。
【0085】
以上のとおり、上記(3)の、実験や実験準備を行った人物を特定し、その都度記録する機能を備えたことにより、誰がいつ何をしたかについて、信頼性の高い情報を残すことができる。
【0086】
次に、上記(4)の、実験データが改竄されたらそれが分かるように、実験データを保存する機能について説明する。
【0087】
本実施形態にかかる研究情報管理システム1では、実験データが得られた都度、そのデータに対してタイムスタンプを付与する。このタイムスタンプは、外部の認定された第三者認証機関から取得することが好ましい。タイムスタンプを付与することにより、実験データが得られた時刻の証明と共に、ハッシュ値を用いることにより、実験データがその後に改竄されていないことの証明も得られる。なお、実験データのみならず、上記(1)〜(3)の機能により得られた情報も含めてタイムスタンプを付与することにより、証拠性をより向上させることができる。
【0088】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した電子カルテシステムのスタンプ機能を利用して、研究者に実験データを入力させることが好ましい。入力項目とデータとを関連付けて管理することができ、後のデータ検索や加工や容易になるからである。つまり、電子カルテシステムのスタンプ機能を利用してラボノートを記録することにより、真正性、見読性、保存性の三原則が担保されるので、実験データの証拠性も担保される。なお、電子カルテシステムのスタンプ機能による入力を用いる他に、手書きのノートや板書等をスキャンした画像を、実験記録として使用することももちろん可能である。このような画像や、検査機器からの出力画像についても、タイムスタンプを付与することにより、画像の改竄等が疑われる場合にもその事実を検証することが容易になる。
【0089】
また、本実施形態にかかる研究情報管理システム1においては、必要なIDの読み取りが実施されない場合は、その後の操作ができない仕組みを導入することが望ましい。たとえば、(1)の検体や実験動物のIDを利用する場合には、検体や実験動物のID読み取りがなされていなければ、その検体や実験動物を利用した検査ができないよう、検査機器に動作制限をかける、等である。あるいは、(2)の実験に使用した検査機器のIDを利用する場合には、検査機器のID読み取りがなされるまでは、当該検査機器に動作制限をかけるようにしても良い。
【0090】
以上のとおり、本実施形態にかかる研究情報管理システム1によれば、医学研究における実験記録や実験データの証拠性を向上することができる。
【0091】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明の実施態様は上記した具体例に限定されるものではなく、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 研究情報管理システム
10 研究者用端末
11 ディスプレイ
12 本体
13 バーコードリーダ
20 サーバ
30 スキャナ
40 LAN
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11