(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1、2に開示されている構成において、前記アウタコアまたは前記インナコアに大きな変位が入力されると、前記アウタコアと前記インナコアとを接続する板ばねが厚み方向に大きく変形する。板ばねが厚み方向に大きく変形した場合、該板ばねが前記インナコアと接触する可能性がある。そうすると、板ばねとインナコアとの接触によって金属音が生じる可能性がある。
【0007】
これに対し、板ばねとインナコアとの接触を防止するためには、板ばねとインナコアとの間に両者の接触を規制する規制部材を設けることが考えられる。しかしながら、規制部材を設けると、その分、部品点数が増えて組み立て作業が煩雑になるため、製造コストが増大する。
【0008】
本発明の目的は、リニアアクチュエータにおいて、インナコア及びアウタコアに接続される板ばねと前記インナコアとの接触を抑制可能な構成を、組み立て容易な構成によって実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るリニアアクチュエータは、固定子と、可動子と、前記可動子が前記固定子に対して往復移動可能なように前記可動子と前記固定子とを接続する板ばねとを備える。前記固定子は、一方向に延びる貫通孔を有するインナコアと、前記インナコアにおける前記一方向と直交する方向の両端部のうち少なくとも一方に配置された永久磁石と、前記インナコアに対して前記直交する方向の所定位置に巻回されたコイルと、前記インナコアの前記貫通孔を挿通するシャフトと、前記インナコアにおける前記貫通孔の開口部に配置されるとともに、前記シャフトが貫通するスペーサとを有する。前記可動子は、前記永久磁石を覆うように前記固定子の外方に配置されたアウタコアを有する。前記板ばねは、外周部分が前記アウタコアに接続されるとともに、中央部分が前記シャフトによって貫通されることにより前記スペーサを介して前記インナコアと接続されている。前記スペーサは、前記シャフトが挿通する挿通穴を有する貫通部と、前記板ばねの前記インナコア側への所定量以上の変形を規制する規制部とを有する(第1の構成)。
【0010】
以上の構成では、固定子のインナコアと、固定子及び可動子に接続される板ばねとの間に配置されるスペーサは、シャフトが貫通する貫通部に加えて、前記板ばねの前記インナコア側への所定量以上の変位を規制する規制部も有する。
【0011】
これにより、前記板ばねが前記インナコアに接触しないように、前記規制部によって、前記板ばねの前記インナコア側への所定量以上の変位を規制することができる。しかも、前記規制部は、前記スペーサに設けられているため、前記板ばねの前記インナコア側への変位を規制する別の部材を設ける必要がなくなる。よって、リニアアクチュエータを組み立てる際に部品数が増えることを防止でき、製造コストの増大を抑制することができる。
【0012】
したがって、上述の構成により、インナコア及びアウタコアに接続される板ばねと前記インナコアとの接触を抑制可能な構成を、組み立てが容易な構成によって実現することができる。
【0013】
前記第1の構成において、前記インナコアにおける前記開口部には、前記スペーサを収納可能な凹部が形成されている(第2の構成)。これにより、インナコアの貫通孔の開口部にスペーサを配置した場合に、前記インナコアに対して前記スペーサがリニアアクチュエータの一方向に大きく突出することを抑制できる。よって、前記リニアアクチュエータを前記一方向にコンパクトな構成にすることができる。しかも、前記インナコアに対して前記スペーサを容易に位置決めできるため、リニアアクチュエータの組み立て作業性の向上を図れる。
【0014】
前記第1または第2の構成において、前記インナコアを覆うとともに、前記コイルが巻きつけられるボビンをさらに備える。前記ボビンには、前記シャフトが挿通するとともに前記スペーサを露出させるボビン開口部が形成されている。前記スペーサの前記貫通部には、前記一方向から見て、前記規制部とは異なる位置で外方に向かって延びる突出部が設けられている。前記ボビン開口部の前記インナコア側には、前記スペーサの前記突出部を収納可能な収納凹部が形成されている(第3の構成)。
【0015】
これにより、インナコアを覆うとともにコイルが巻きつけられるボビン開口部のインナコア側に形成された収納凹部内に、スペーサの突出部を収納した状態で、前記ボビンと前記インナコアとの間に前記突出部を挟みこむことができる。よって、前記スペーサを、前記ボビンと前記インナコアとの間に保持することができる。
【0016】
しかも、前記ボビン開口部にスペーサの突出部を収納する収納凹部を設けることにより、前記スペーサを前記ボビンに対して容易に位置決めすることができる。これにより、リニアアクチュエータの組み立て作業性を向上することができる。
【0017】
また、前記スペーサは、前記ボビン開口部から露出しているため、前記スペーサの規制部に対する板ばねの接触が可能になる。これにより、前記規制部の機能が損なわれることを防止できる。
【0018】
前記第3の構成において、前記突出部は、前記貫通部を前記一方向から見て、前記貫通部を挟むように一対設けられている。前記収納凹部は、前記一対の突出部を収納可能なように、前記ボビン開口部の前記インナコア側を前記一方向から見て、前記ボビン開口部における前記インナコア側の対向する位置に、一対設けられている(第4の構成)。
【0019】
これにより、スペーサの貫通部に設けられた一対の突出部を、ボビン開口部におけるインナコア側に設けられた収納凹部内に収納することができる。よって、前記ボビンと前記インナコアとの間に前記スペーサをより確実に保持することができる。また、前記ボビンに対して前記スペーサをより精度良く配置できるため、リニアアクチュエータの組み立て作業性をより向上することができる。
【0020】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記板ばねは、前記外周部分と前記中央部分とが厚み方向に相対変位可能なように、前記外周部分の一部に対して前記中央部分を接続する接続部を有する。前記規制部は、前記外周部分における前記所定量以上の変位を規制する(第5の構成)。
【0021】
これにより、板ばねの接続部の弾性変形によって外周部分が中央部分に対して相対変位する際に、前記外周部分の変位を、規制部によって規制することができる。よって、前記板ばねがインナコア側に変形した際に、該インナコアの貫通孔の周辺部分に前記板ばねが接触することをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態に係るリニアアクチュエータによれば、固定子のインナコアにおける貫通孔の開口部と板ばねとの間に配置されたスペーサは、シャフトが挿通する貫通部と、前記板ばねの前記インナコア側の変位を規制する規制部とを有する。
【0023】
これにより、前記インナコアまたはアウタコアに対して大きな力が入力されて前記板ばねが前記インナコア側に変形を生じた場合でも、前記規制部によって、前記板ばねが前記インナコアに接触することを防止できる。しかも、前記規制部は、前記スペーサに設けられているため、リニアアクチュエータの組立作業が容易になる。
【0024】
したがって、前記インナコア及び前記アウタコアに接続された前記板ばねと前記インナコアとの接触を抑制可能な構成を、組み立て容易な構成によって実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0027】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るリニアアクチュエータ1の概略構成を示す斜視図である。リニアアクチュエータ1は、固定子2と可動子3とを備え、固定子2に対して可動子3を往復移動させる装置である。このリニアアクチュエータ1は、例えば振動を低減する装置として、車両などに用いられる。
【0028】
リニアアクチュエータ1は、全体として直方体状に形成されている。具体的には、リニアアクチュエータ1は、固定子2と、可動子3と、板ばね4,5と、シャフト6と、ナット7と、ボルト8とを備える。固定子2は、角筒状に形成された可動子3の内方に配置されている。固定子2と可動子3とは、可動子3が固定子2に対して一方向(可動子3の筒軸方向)に往復移動可能なように、板ばね4,5によって接続されている。
【0029】
以下で、
図2から
図7を用いて、リニアアクチュエータ1の構成を詳細に説明する。
【0030】
図2に示すように、固定子2は、全体として直方体状に形成されている。固定子2は、
図3に示すように、インナコア10と、ボビン20,30と、永久磁石41,42と、コイル51,52と、スペーサ100,200とを備える。
【0031】
インナコア10は、複数の電磁鋼板を積層した状態で一体化する(かしめる)ことにより、柱状に構成されている。インナコア10には、一方向(積層方向、
図3における紙面方向)から見て、長手方向の中央部分に、幅方向(積層方向及び長手方向に対して直交する方向、
図3における左右方向)の寸法が他の部分よりも大きい中央部11が形成されているとともに、前記長手方向の両端部に幅方向両側に突出したフランジ部12,13が形成されている。
【0032】
これにより、インナコア10には、中央部11とフランジ部12との間に、前記一方向に延びる溝部14a,14bが形成されている。また、インナコア10には、中央部11とフランジ部13との間に、前記一方向に延びる溝部15a,15bが形成されている。なお、溝部14a,15aは、インナコア10の幅方向の一方側に形成されていて、溝部14b,15bは、インナコア10の幅方向の他方側に形成されている。
【0033】
インナコア10の中央部11には、前記一方向に延びる貫通孔11aが形成されている。
図4に示すように、貫通孔11a内には、シャフト6が所定位置まで挿入された状態で固定される。これにより、インナコア10をシャフト6が貫通した状態で、インナコア10とシャフト6とが一体化される。
【0034】
インナコア10の中央部11における前記一方向の両端部には、
図3に示すように、スペーサ100,200をそれぞれ収納するための凹部11b,11cが形成されている。凹部11b,11cは、同じ構成を有するため、以下では、凹部11bについてのみ説明する。
【0035】
凹部11bは、貫通孔11aの開口部に形成された第1凹部11dと、第1凹部11dに対して前記幅方向の両側に形成され、第1凹部11dよりも大きい深さ(前記一方向の寸法)を有する第2凹部11e,11fとを含む。
【0036】
第1凹部11d内には、スペーサ100の後述する貫通部110が位置付けられる。第2凹部11e,11f内には、それぞれ、スペーサ100の後述する規制部120,130が位置付けられる。
【0037】
また、凹部11cは、スペーサ100の貫通部110から外方に向かって延びる後述の突出部112,113をそれぞれ収納可能なように、第1凹部11dに対して前記幅方向の中央部分で且つ前記長手方向の両端に、第1凹部11dと繋がった第3凹部11g,11hを有する。
【0038】
このように、インナコア10の中央部11における前記一方向の両端部に、スペーサ100,200をそれぞれ収納するための凹部11b,11cを設けることにより、インナコア10に対してスペーサ100,200を前記一方向にコンパクトに配置できる。これにより、リニアアクチュエータ1を前記一方向にコンパクトな構成することができる。しかも、スペーサ100,200をインナコア10に対して容易に位置決めできるため、固定子2の組み立て作業性の向上を図れる。
【0039】
図4に示すように、インナコア10のフランジ部12,13における前記長手方向の端部には、それぞれ、永久磁石41,42が配置されている。
【0040】
永久磁石41,42は、それぞれ、異なる極性を有する磁極が前記一方向に交互に並ぶように構成されている。また、永久磁石41,42は、前記一方向において、インナコア10を挟んで対向する部分が異なる極性を有する磁極になるように配置されている。
【0041】
ボビン20,30は、それぞれ、樹脂製の部材であり、
図3及び
図6に示すように、インナコア10における前記一方向の半分を覆うように形成されている。ボビン20,30は、それぞれインナコア10を前記一方向で挟み込むように配置されることにより、インナコア10を覆っている。
【0042】
具体的には、
図3に示すように、ボビン20は、中央カバー部21と、溝カバー部22,23と、フランジカバー部24,25とを有する。ボビン30は、中央カバー部31と、溝カバー部32,33と、フランジカバー部34,35とを有する。ボビン20,30は、それぞれ一体形成されている。
【0043】
中央カバー部21,31は、インナコア10に対して、中央部11を前記一方向から挟み込むように配置される。溝カバー部22,32は、インナコア10に対して、溝部14a,14bを前記一方向から覆うように配置される。溝カバー部23,33は、インナコア10に対して、溝部15a,15bを前記一方向から覆うように配置される。フランジカバー部24,34は、インナコア10に対して、フランジ部12を前記一方向から挟み込むように配置される。フランジカバー部25,35は、インナコア10に対して、フランジ部13を前記一方向から挟み込むように配置される。
【0044】
なお、フランジカバー部24,34は、インナコア10のフランジ部12における前記長手方向の一方の端部を露出させるように構成されている。フランジカバー部25,35は、インナコア10のフランジ部13における前記長手方向の他方の端部を露出させるように構成されている。
【0045】
これにより、インナコア10は、ボビン20,30によって覆われた状態で、フランジ部12,13における前記長手方向の端部が露出している。よって、
図4に示すように、インナコア10のフランジ部12,13における前記長手方向の端部に配置された永久磁石41,42は、ボビン20,30に覆われることなく露出する。
【0046】
ボビン20,30の中央カバー部21,31には、
図3に示すように、開口部21a,31a(ボビン開口部)が形成されている。開口部21a,31aは、インナコア10の貫通孔11aを挿通するシャフト6が挿通可能に形成されているとともに、インナコア10の凹部11b,11c内にそれぞれ配置されたスペーサ100,200が露出するように形成されている(
図2及び
図10参照)。
【0047】
図5に示すように、開口部21aのインナコア10側には、それぞれ、開口部21aにおける前記長手方向の対向する位置に、スペーサ100の後述する突出部112,113が位置付けられる一対の凹部21b,21c(収納凹部)が形成されている。凹部21b,21c内にスペーサ100の突出部112,113を配置した状態で、ボビン20をインナコア10に対して組付けることにより、突出部112,113をボビン20とインナコア10との間にそれぞれ挟みこむことができる。これにより、スペーサ100をボビン20とインナコア10との間で保持することができる。
【0048】
同様に、開口部31aのインナコア10側にも、それぞれ、開口部31aにおける前記長手方向の対向する位置に、スペーサ200の後述する突出部212,213が位置付けられる一対の凹部31b,31c(収納凹部)が形成されている。凹部31b内にスペーサ200の突出部212,213を配置した状態で、ボビン30をインナコア10に対して組付けることにより、突出部212,213をボビン30とインナコア10との間にそれぞれ挟みこむことができる。これにより、スペーサ200をボビン30とインナコア10との間で保持することができる。
【0049】
図4に示すように、ボビン20,30における溝カバー部22,32及び溝カバー部23,33には、それぞれ、コイル51,52が巻回されている。すなわち、コイル51,52は、それぞれ、インナコア10に対して前記長手方向(前記一方向と直交する方向)の所定位置(インナコア10の溝部14a,14b及び溝部15a,15bの形成位置)に巻回されている。
【0050】
スペーサ100,200は、それぞれ、インナコア10の貫通孔11aの開口部に形成された凹部11b,11c内に配置されている(
図5)。スペーサ100,200は、後述するように、インナコア10と板ばね4,5との間に配置されることにより、インナコア10に対して板ばね4,5が接触することを防止する。スペーサ100,200の詳しい構成については後述する。
【0051】
可動子3は、
図2及び
図4に示すように、中央部分に穴部を有する鋼板が厚み方向に複数、積層されたアウタコア60と、アウタコア60に対して積層方向の両側に配置されるフレーム65,66とを有する。
【0052】
アウタコア60は、固定子2を長手方向に囲むように角筒状に形成されている。すなわち、アウタコア60は、筒軸方向(積層方向)が固定子2の前記一方向(インナコア10の積層方向)と一致するように、固定子2に対して配置されている。
【0053】
アウタコア60の前記筒軸方向の中央部分には、アウタコア60内に固定子3が配置された状態で固定子3の永久磁石41,42に対応する位置に、磁極部61,62が設けられている。すなわち、アウタコア60は、固定子3の永久磁石41,42を覆うとともに、磁極部61,62が永久磁石41,42に対向するように配置されている。磁極部61,62は、それぞれ、アウタコア60内に固定子3が配置された状態で、永久磁石41,42との距離が、他の部分に比べて近くなるように、アウタコア60の内面から内方に向かって突出している。
【0054】
フレーム65,66は、それぞれ、板ばね4,5を介してアウタコア60における前記筒軸方向の両端部に接続されている。具体的には、フレーム65は、アウタコア60に対し、板ばね4を介して前記筒軸方向の一方側に接続されている。フレーム66は、アウタコア60に対し、板ばね5を介して前記筒軸方向の他方側に接続されている。
【0055】
フレーム65,66は、板状部材によって構成されていて、平面視で長方形状の外形を有する。フレーム65は、
図2に示すように、外枠部65aと、シャフト6が挿通する中央部65bと、外枠部65aと中央部65bとを接続する接続部65c,65dとを有する。フレーム66は、外枠部66aと、シャフト6が挿通する中央部66bと、外枠部66aと中央部66bとを接続する接続部66c,66dとを有する。
【0056】
外枠部65a,66aは、それぞれ、フレーム65,66の外周側部分を構成しており、四隅部分で、板ばね4,5を介してアウタコア60の外周側にボルト8によって固定されている。すなわち、板ばね4,5は、フレーム65,66の外枠部65a,66aとアウタコア60との間に挟みこまれている。
【0057】
中央部65b,65cは、それぞれ、フレーム65,66の平面視で中央部分に位置する。中央部65b,65cには、それぞれ、シャフト7が挿通するための貫通穴65e,66eが設けられている。
【0058】
接続部65c,65dは、フレーム65の長手方向の中央部分で、外枠部65aの対向する位置からそれぞれ中央部65bまでフレーム65の短手方向に延びている。接続部66c,66dは、フレーム66の長手方向の中央部分で、外枠部66aの対向する位置からそれぞれ中央部66bまでフレーム66の短手方向に延びている。
【0059】
これにより、フレーム65には、外枠部65aと中央部65b及び接続部65c,65dとに囲まれた穴部65f,65gが形成される。また、フレーム66には、外枠部66aと中央部66b及び接続部66c,66dとに囲まれた穴部66f,66gが形成される。
【0060】
リニアアクチュエータ1において、
図1に示すように、フレーム65の穴部65f内には、ボビン20のフランジ部24の一部及びコイル51の一部が配置される。フレーム65の穴部65g内には、ボビン20のフランジ部25の一部及びコイル52の一部が配置される。特に図示しないが、同様に、フレーム66の穴部66f内には、ボビン20のフランジ部34の一部及びコイル51の一部が配置される。フレーム66の穴部66g内には、ボビン30のフランジ部35の一部及びコイル52の一部が配置される。
【0061】
この構成により、リニアアクチュエータ1において、可動子2が固定子3に対して往復移動した際に、可動子2のコイル51,52が固定子3のフレーム65,66と干渉することを防止できる。しかも、リニアアクチュエータ1をコンパクトな構成にすることができる。
【0062】
図4及び
図6に示すように、板ばね4,5は、それぞれ、外周側がアウタコア60とフレーム65,66との間に挟みこまれるように配置されている。板ばね4,5は、アウタコア60の両端の開口部を覆うように、アウタコア60に対して積層方向に配置されている。なお、板ばね4,5は、1枚の板状部材によって構成してもよいし、複数枚の板状部材を厚み方向に重ねることによって構成してもよい(本実施形態の各図では、2枚の板状部材によって板ばね4,5をそれぞれ構成した場合を示している)。
【0063】
詳しくは、
図2に示すように、板ばね4,5は、それぞれ、外枠部4a,5a(外周部分)と、その内側に位置する可撓部4b,5b(接続部)と、固定部4c,5c(中央部分)とを有する。外枠部4a,5aは、それぞれ、平面視で板ばね4,5の外周側に枠状に形成されている。
【0064】
外枠部4a,5aは、それぞれ、アウタコア60とフレーム65,66との間に挟みこまれた状態で、フレーム65,66とともにアウタコア60に固定されている(
図4及び
図6参照)。
【0065】
図2に示すように、可撓部4b,5bは、それぞれ、平面視で外枠部4a,5aの内側に位置し、外枠部4a,5aに沿うように形成されている。具体的には、可撓部4b,5bは、それぞれ、平面視で板ばね4,5の中央部分に位置する固定部4c,5cと、外枠部4a,5aの長手方向の端部とをそれぞれ接続するとともに、外枠部4a,5aの内側に沿うように、「8の字」状に形成されている。このような構成において、可撓部4b,5bが厚み方向に変形することにより、固定部4c,5cに対して外枠部4a,5aが相対変位することができる。
【0066】
上述のような可撓部4b,5bの構成により、可撓部4b,5bの内側には、可動子3のフレーム65,66の穴部65f,65g,66f,66gに対応して、穴部4d,4e,5d,5eが形成されている。これらの穴部4d,4e,5d,5eが形成されていることにより、板ばね4,5と、固定子2のボビン20,30及びコイル51,52との干渉を防止することができる。
図7に、板ばね5と固定子2との位置関係の一例を示す。
【0067】
図2に示すように、固定部4c,5cには、それぞれ、シャフト6が挿通する貫通穴4f,5fが形成されている。固定部4c,5cは、後述するように、シャフト6のネジ部がナット7と締結されることにより、それぞれ、固定子2のスペーサ100とフレーム65,66の中央部65b,66bとの間に挟みこまれる。これにより、固定部4c,5cは、固定子2に対して固定される。
【0068】
なお、外枠部4a,5aは、それぞれ、長手方向の中央部分において内側の対向する位置から固定部4c,5cに向かって、一部が延出している。
【0069】
シャフト6は、軸線方向に延びる軸部6aと、その一方側の端部に設けられた頭部6bとを有する。軸部6aの他方側には、ネジ部6cが設けられている。
図4に示すように、シャフト6は、軸部6aがフレーム66、板ばね5、スペーサ100、インナコア10、スペーサ200、板ばね4及びフレーム65を順に貫通した状態で、ネジ部6cがフレーム65から突出するように構成されている。シャフト6のネジ部6cにナット7が締結されることにより、スペーサ100、インナコア10、スペーサ200、板ばね4及びフレーム65が一体化される。
【0070】
(スペーサ)
次に、固定子2のスペーサ100,200の構成を、
図4、
図8から
図11を用いて詳細に説明する。
【0071】
スペーサ100,200は、固定子2のインナコア10と板ばね4,5との間にそれぞれ配置されている(
図4参照)。なお、スペーサ100,200の構成は同一であるため、以下では、スペーサ100についてのみ説明し、スペーサ200についての説明は省略する。
【0072】
図8に示すように、スペーサ100は、シャフト6が挿通する挿通穴111を有する環状の貫通部110と、貫通部110における径方向の対向する位置から径方向外方に向かって延びる規制部120,130とを有する。すなわち、規制部120,130は、貫通部110を径方向に挟むように設けられている。
【0073】
貫通部110は、厚みが、インナコア10に設けられた第1凹部11dの深さ(一方向、すなわちインナコア10の積層方向の寸法)よりも大きい(
図4参照)。そのため、第1凹部11d内に貫通部110を配置した状態で、貫通部110の厚み方向の一部がインナコア10に対して厚み方向(前記一方向、インナコア10の積層方向)に突出する。
【0074】
これにより、貫通部110は、板ばね4とインナコア10との間にスペーサ100を配置した状態で、板ばね4の固定部4cと接触する。この状態で、既述のようにシャフト6及びナット7を締結させることにより、板ばね4は、固定部4cが貫通部110を介してインナコア10と一体化される。
【0075】
貫通部110の厚みを上述のような構成にすることで、板ばね4の可撓部4bは、インナコア10から離間する。すなわち、貫通部110は、インナコア10と板ばね4の可撓部4bとの間に隙間を形成するスペーサとして機能する。
【0076】
図8に示すように、貫通部110には、規制部120,130の延伸方向に対して直交する方向において対向する位置から、径方向外方に向かって延びる突出部112,113が設けられている。
図5に示すように、突出部112,113は、スペーサ100をインナコア10の凹部11b内に配置した状態で、第3凹部11g,11h内に配置される。また、突出部112,113は、インナコア10に対してボビン20を取り付けた状態で、ボビン20の凹部21b,21c内に配置される。これにより、インナコア10とボビン20との間に突出部112,113を保持することができる。
【0077】
図8に示すように、規制部120,130は、貫通部110から径方向外方に向かって延びる板状のベース部121,131(ベース部)と、ベース部121,131の延伸方向の先端側にそれぞれ形成された弾性接触部122,132とを有する。
【0078】
ベース部121,131は、金属材料等によって、貫通部110と一体成形されている。具体的には、ベース部121,131は、厚み方向が、貫通部110の挿通穴111が延びる一方向と一致するように、貫通部110の外周側に一体に設けられている。なお、ベース部121,131は、弾性接触部122,132を表面に形成できるとともに板ばね4の所定量以上の変位を規制部120,130によって規制した際に変形を生じないような剛性を有する構成であれば、板状以外の形状であってもよい。
【0079】
弾性接触部122,132は、例えばゴムや樹脂材料などによって構成されていて、ベース部121,131の延伸方向の先端側を該延伸方向と直交する方向に囲むように形成されている。弾性接触部122,132は、板ばね4が変形して規制部120,130に接触する際に、板ばね4に弾性接触する。これにより、板ばね4が規制部120,130に接触する際に異音等が生じることを防止できる。
【0080】
なお、弾性接触部122,132は、ベース部121,131の延伸方向の先端には形成されていない。そのため、ベース部121,131の延伸方向の先端が弾性接触部122,132から露出している。これにより、リニアアクチュエータ1を組み立てるためにロボット等によってスペーサ100を把持する場合に、弾性接触部122,132から露出したベース部121,131の延伸方向の両端を把持することができる。よって、スペーサ100をロボット等によって精度良く把持することができる。
【0081】
また、
図9に示すように、ベース部121,131には、それぞれ、延伸方向の先端側で且つ弾性接触部122,132が形成される部分に、貫通穴121a,131aが形成されている。これにより、ベース部121,131の延伸方向の先端側に弾性接触部122,132を形成する際に、弾性接触部122,132を構成するゴムや樹脂材料などが貫通穴121a,131a内に入り込む。よって、弾性接触部122,132のうちベース部121,131の厚み方向の一方側(板ばね4側)に設けられた部分と他方側(インナコア10側)に設けられた部分とが、貫通穴121a、131a内に位置する部分によって接続される。したがって、弾性接触部122,132をベース部121,131に対してより確実に取り付けることができる。
【0082】
しかも、弾性接触部122,132を上述のように構成することにより、弾性接触部122,132をベース部121,131に接着固定する必要がない。これにより、弾性接触部122,132をベース部121,131に容易に設けることができるとともに、弾性接触部122,132がベース部121,131から剥離することを防止できる。
【0083】
なお、本実施形態では、ベース部121,131に貫通穴121a、131aを設け、ベース部121,131の厚み方向の両側に弾性接触部122,132を形成することにより、ベース部121,131と弾性接触部122,132とを一体化しているが、この限りではなく、弾性接触部をベース部に対して接着固定してもよい。
【0084】
次に、上述のような構成を有するスペーサ100,200をインナコア10に対して組付けた状態において、スペーサ100,200と板ばね4,5との位置関係について説明する。
図10に、例えばスペーサ200をインナコア10に対して組付けた状態におけるスペーサ200と板ばね5との位置関係を示す。
図10は、リニアアクチュエータ1からフレーム66を取り外した状態を、板ばね5側から見た場合の図である。なお、スペーサ100をインナコア10に対して組付けた状態におけるスペーサ100と板ばね5との位置関係も同様なので、説明を省略する。
【0085】
ここで、
図10において、符号210は貫通部、符号211は挿通穴、符号212,213は突出部、符号220,230は規制部、符号221,231はベース部、符号222,232は弾性接触部である。また、
図10では、説明のために、板ばね5は破線で示す。
【0086】
図10に示すように、スペーサ200の規制部220,230は、板ばね5の可撓部5b(接続部)における固定部5c側(中央部分側)と、板ばね5の外枠部5aのうち、長手方向の中央部分において内側の対向する位置から固定部5cに向かって延出している部分とに跨って位置付けられる。これにより、板ばね5の外枠部5aが固定部5cに対して大きく変形した場合に、外枠部5aのうち固定部5cに向かって延出している部分が、規制部220,230に接触することにより、所定量以上の変位が規制される。
【0087】
図11に、固定子2の一方向(インナコア10の積層方向)におけるスペーサ200と板ばね5との位置関係を拡大して示す。
図11に示すように、スペーサ200の規制部230と板ばね5との間には、前記一方向に隙間Pが形成されている。これにより、板ばね5は、図中に白抜き矢印で示すインナコア10側への変形が隙間Pの範囲内(所定量)であれば、規制部230によって変形を規制されない。
【0088】
一方、板ばね5が、隙間Pよりも大きい変形(所定量以上の変位)を生じた場合には、板ばね5の外枠部5aのうち固定部5cに向かって延出している部分が規制部230に当たって、それ以上の変形が規制される。よって、板ばね5がインナコア10側に変形した際に、インナコア10の貫通孔11aの周辺部分に板ばね5が接触することをより確実に防止できる。
【0089】
以上のように、スペーサ100,200に、規制部120,130,220,230を設けることにより、板ばね4,5が大きく変形してインナコア10と接触することを防止できる。
【0090】
また、規制部120,130,220,230は、スペーサ100,200の貫通部110,210を径方向に挟むように設けられている。これにより、貫通部110,210の周囲で、板ばね4,5のインナコア10側への所定量以上の変位をより確実に規制することができる。
【0091】
しかも、上述の構成により、スペーサ100,200という一つの部材によって、インナコア10と板ばね4,5の可撓部4b,5bとの隙間を形成するスペーサとして機能するとともに、板ばね4,5の所定量以上の変形を規制する規制部材としても機能する。よって、部品点数の増加を抑制しつつ、板ばね4,5がインナコア10に接触するような板ばね4,5の変位を規制することができる。
【0092】
以下で、リニアアクチュエータ1のうち、固定子2の組み立て方法の概略を、
図12を用いて説明する。
【0093】
図12に示すように、ボビン30を長手方向が横方向になるように配置した状態で、スペーサ200を、突出部212,213がそれぞれボビン30の凹部31b内に位置付けられるように、ボビン30に対して組付ける。このとき、スペーサ200は、突出部212,213がそれぞれボビン30の凹部31b,31cによって支持されるとともに、貫通部210及び規制部220,230は、ボビン30の開口部31a内に位置付けられる。
【0094】
次に、ボビン30に対して、インナコア10を長手方向が横方向になるように組付ける。このとき、インナコア10に形成された凹部11c内にスペーサ200が位置付けられる。そして、インナコア10の凹部11b内にスペーサ100を配置し、その上から、ボビン20を被せる。これにより、固定子2のアッセンブリが完了する。
【0095】
上述の固定子2の組み立ては、例えばロボットによって行われる。上述の組み立て方法は、各部品を一方向に積み上げていくため、作業途中で部品の姿勢等を変える必要がない。よって、ロボットによる組み立て作業に好適である。なお、上述の固定子2の組み立ては、作業者が手作業で行ってもよい。
【0096】
既述のように、スペーサ100,200は、貫通部110,210と規制部120,130,220,230とが一体に形成されているため、板ばね4,5のインナコア10側への所定量以上の変位を規制する機構を、部品点数を増やすことなく実現することができる。これにより、リニアアクチュエータ1の固定子2の組立作業性を悪化させることなく、板ばね4,5の変位規制機構をリニアアクチュエータ1に付加することができる。
【0097】
しかも、ボビン30に凹部31bを設けて、該凹部31b内にスペーサ200の突出部212,213を配置することで、ボビン30に対してスペーサ200の位置決めを行うことができるため、ロボット等による組立作業を容易に且つ効率良く行うことができる。
【0098】
また、インナコア10の一方向(積層方向)の両端部に、スペーサ100,200をそれぞれ配置するための凹部11b,11cを設けることにより、固定子2を前記一方向にコンパクトな構成にすることができる。これにより、前記一方向にコンパクトなリニアアクチュエータ1が得られる。
【0099】
また、規制部120,130,220,230は、前記一方向から見て貫通部110,210を挟むように複数設けられている。これにより、板ばね4,5のインナコア10側への所定量以上の変位を、貫通部110,210の周りに設けられた複数の規制部120,130,220,230によって、より確実に規制することができる。
【0100】
また、規制部120,130,220,230は、貫通部110,210と一体形成されたベース部121,131,221,231と、ベース部121,131,221,231の少なくとも板ばね4,5側に設けられた弾性接触部122,132,222,232とを有する。これにより、規制部120,130,220,230のベース部121,131,221,231と貫通部110,210とを一体で形成することができるため、部品数が増えることなく、リニアアクチュエータ1に板ばね4,5の変形抑制機構を追加することができる。
【0101】
さらに、弾性接触部122,132,222,232は、ベース部121,131,221,231のインナコア10側にも設けられていて、インナコア10側に設けられた部分とベース部121,131,221,231の板ばね4,5側に設けられた部分とが繋がっている。これにより、スペーサ100,200のベース部121,131,221,231に対して弾性接触部122,132,222,232がより確実に取り付けられる。よって、弾性接触部122,132,222,232がベース部121,131,221,231からより外れにくくなる。したがって、スペーサ100,200の規制部120,130,220,230の機能をより確実に得ることができる。
【0102】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0103】
前記実施形態では、インナコア10の一方向(積層方向)の両側に、規制部120,130,220,230を有するスペーサ100,200が配置されている。しかしながら、規制部を有するスペーサは、インコア10の前記一方向の片側のみに配置されていてもよい。
【0104】
前記実施形態では、インナコア10の中央部11における前記一方向の両端部に、スペーサ100,200を配置するための凹部11b,11cが設けられている。しかしながら、スペーサを配置するための凹部をインナコア10の中央部11における前記一方向の一方の端部のみに設けてもよいし、前記凹部を設けなくてもよい。
【0105】
前記実施形態では、スペーサ100,200は、貫通部110,210を径方向に挟むように貫通部110,210から径方向外方に向かって延びる一対の規制部120,130,220,230を有する。しかしながら、スペーサ100,200は、規制部を1つまたは3つ以上有していてもよい。また、規制部120,130,220,230の配置も本実施形態の構成に限らず、貫通部110,210に対して規制部が一体に設けられていれば、どのような配置であってもよい。
【0106】
前記実施形態では、スペーサ100,200の規制部120,130,220,230は、ベース部121,131,221,231の厚み方向の両側に設けられた弾性接触部122,132,222,232を有する。しかしながら、ベース部121,131,221,231のインナコア10側の面のみに、弾性接触部を設けてもよい。
【0107】
前記実施形態では、スペーサ100,200の貫通部110,210には、径方向外方に向かって延びる一対の突出部112,113が設けられている。しかしながら、貫通部110,210に突出部を1つまたは3つ以上設けてもよい。また、突出部112,113も本実施形態の構成に限らず、貫通部110,210から径方向外方に向かって延びていれば、どのような配置であってもよい。