(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであって、その解決すべき課題は、熱可塑性樹脂の塗膜により形成されたシール層を有する密封容器用シート材において、そのヒートシール強度を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明者らが鋭意検討を行なった結果、密封容器用シート材のシール層において、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜中に該熱可塑性樹脂よりも融点の高い微粒子を添加し、該微粒子の平均粒子径とシール層の厚さを所定の割合とすることによって、ヒートシールの際の加圧による熱可塑性樹脂の外部方向への流動が妨げられ、溶着部分のシール層の厚みを確保することができるため、ヒートシール強度の改善されたシート材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかる密封容器用シート材は、基材層と、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により形成されたシール層とを有する積層体からなり、前記シール層が前記熱可塑性樹脂よりも融点の高い微粒子を含有しており、且つ前記微粒子の平均粒子径/前記シール層の厚さが0.5〜3.0であることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記密封容器用シート材において、前記微粒子の平均粒子径/前記シール層の厚さが0.5〜1.0であることが望ましい。
また、前記密封容器用シート材において、前記微粒子の平均粒子径が0.5〜10μmであり、前記シール層の厚さが1〜20μmであることが望ましい。
また、前記密封容器用シート材において、前記微粒子の添加量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して5〜15質量部であることが好ましい。
【0009】
また、前記密封容器用シート材において、前記微粒子としてフッ素樹脂微粒子を用いることによって、特にレトルト(加圧加熱)処理を必要とする容器に好適に使用することができる。
また、前記密封容器用シート材は、さらに電磁波の照射を受けて発熱する発熱体層を有する積層体とすることで、特に電子レンジ容器用の蓋材として好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、密封容器用シート材のシール層において、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜中に該熱可塑性樹脂よりも融点の高い微粒子を添加し、該微粒子の平均粒子径とシール層の厚さを所定の割合とすることによって、ヒートシールの際の加圧による熱可塑性樹脂の外側方向への流動が妨げられ、ヒートシール後の溶着部分のシール層の厚みを確保することができるため、ヒートシール強度が十分に改善されたシート材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1に、本発明の一実施形態にかかる密封容器用シート材の断面図を示す。
本発明の密封容器用シート材10は、基材層12の一方の表面上に、シール層14が積層された多層シートにより形成されている。また、シール層14は、微粒子14bが分散された熱可塑性樹脂14aの塗膜からなっている。
【0013】
なお、この密封容器用シート材10は、例えば、別個のカップ容器の開口部端面へとシール層14を熱溶着して密封する蓋材としたり、あるいはシート材10を折り畳んで、又は2枚のシート材10を向い合わせて、シール層14同士を熱溶着し、端部を貼り合せて密封する袋状容器の胴材として用いることができる。
【0014】
図2に、従来の密封容器用シート材50とこれをヒートシールして密封した容器の断面図を示す((a)ヒートシール前のシート材,(b)ヒートシール後の密封容器)。
図2(a)に示すように、従来の密封容器用シート材50は、基材層52の一方の表面上に、熱可塑性樹脂からなるシール層54が積層された多層シートからなっている。
そして、シート材50によってカップ容器を密封する場合、
図2(b)に示すように、シート材50は、シール層54を下にして容器30の開口部端面となるフランジ部に当てられ、シート材50と当接する上金型及び容器と当接する下金型を有するヒートシール金型によって、上金型でシート材50を加熱しながら上下方向から加圧されることで、シール層54が容器30のフランジ部に溶着される。この際、シール層54の熱可塑性樹脂は溶融あるいは軟化されるものの、上下方向から加圧されており、熱可塑性樹脂が加圧されていない方向へと逃げるように流動してしまうため、溶着部分の実質的なシール層の厚みdが当初と比べて薄くなってしまうことになる。この結果、従来の密封容器用シート材においては、シール層を厚くしても期待し得る程度のシール強度が得られないおそれがあり、また、局所的にシール層の厚みdが薄くなって弱化部分が生じてしまうといった問題があった。
【0015】
図3に、本発明の密封容器用シート材10とこれをヒートシールして密封した容器の断面図を示す((a)ヒートシール前のシート材,(b)ヒートシール後の密封容器)。
なお、本発明の密封容器用シート材10の構成は、先に説明したとおりである。
図3(b)に示すように、本発明の密封容器用シート材10において、シール層14は、微粒子14bが分散した熱可塑性樹脂14aの塗膜からなっており、これをヒートシールする際、熱可塑性樹脂14aが溶融あるいは軟化する程度に加熱されていても、微粒子14bは固体状態を保っている。このため、熱可塑性樹脂14aが溶融あるいは軟化した状態でシール層14が容器30の開口部端面となるフランジ部に当てられ、ヒートシール金型によって上下方向から加圧された際、微粒子14bは固体状態であり、あたかもスペーサー様の機能を果たすため、溶着部分の実質的なシール層の厚みdは微粒子14bの粒子径よりも薄くなることができず、熱可塑性樹脂はそれ以上外側方向へと流動することがない。したがって、本発明の密封容器用シート材10は、微粒子14bによって溶着部分のシール層の厚みdを十分に確保することができるため、従来品と比較してシール強度が改善されており、また、シート材10全体でみても、局所的な弱化部分等のない均一なシール強度が得られる。
【0016】
つづいて、本発明の密封容器用シート材10の構成について説明する。
基材層12は、公知の樹脂フィルムより形成されている。樹脂素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ナイロン6等のポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの単層フィルムあるいはこれらを適宜積層した多層フィルムとして用いることができる。なお、これら熱可塑性樹脂のうち、特にポリエチレンテレフタレート樹脂を基材層12に使用することが好ましい。基材層12の厚さは、密封容器の用途に応じて適宜設定する必要があるが、通常の場合、10〜100μm程度である。
【0017】
シール層14は、微粒子14bが分散した熱可塑性樹脂14aを主体とする塗膜により形成されている。なお、このような塗膜は、例えば、熱可塑性樹脂14aの粒子と微粒子14bとをともに溶媒に分散させた塗料を、公知の手段を用いて基材層12の表面上に塗布し、塗料を加熱して焼き付けることによって、塗料中の熱可塑性樹脂14a粒子のみを溶融し、その後冷却することで、溶融せずに残存した微粒子14bが分散した熱可塑性樹脂14aの塗膜を形成することができる。熱可塑性樹脂14aとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、MXD6ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。なお、これら熱可塑性樹脂のうち、特にポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂を用いることが好ましい。また、熱可塑性樹脂14a粒子を分散する溶媒としては、例えば、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アジピン酸ジメチル等の二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、水、あるいはこれらの溶媒混合物等、公知の揮発性溶媒を使用することができる。熱可塑性樹脂粒子の溶媒への配合量は、溶媒100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、配合量が1質量部未満であると、塗膜を形成する際の生産性が悪くなり、他方30質量部を超えると、熱可塑性樹脂粒子同士が凝集して塗装性が悪くなるおそれがある。また、熱可塑性樹脂の融点は、特に限定されるものではないが、130〜250℃の範囲とすることが望ましい。シール層の形成に用いられる熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径は、10nm〜100μmであることが好ましい。熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径が10nm未満では塗料の粘度が高くなりすぎて塗装性が悪くなるおそれがあり、他方100μmを超えると、均一な塗膜化が阻害される場合があり、その結果、密封性が損なわれたり、容器内厚上昇時の破裂強度が低下したりするおそれがある。
【0018】
微粒子14bとしては、熱可塑性樹脂14aよりも融点の高い微粒子を使用する必要がある。これは、塗料を焼き付けて塗膜を形成する際に、熱可塑性樹脂14aのみを溶融し、微粒子14bを溶融せずに分散した状態で残存させるためである。このため、シート材をヒートシールして容器あるいはシート材同士を密封した後も、シール層14内に微粒子14bが固体状態で残存している。微粒子14bは、その平均粒子径が0.5〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜5μmである。平均粒子径が小さすぎると、ヒートシールの際の加圧によって溶着部分の実質的なシール層の厚さが薄くなってしまい、シール強度の改善効果が十分に得られない場合がある。反対に平均粒子径が大きすぎると、熱可塑性樹脂14aと溶着対象となる容器あるいは他のシート材表面と接触面積が小さくなって、シール強度が弱化してしまう場合がある。先に述べたように、微粒子の融点は熱可塑性樹脂の融点よりも高い必要があるが、特に300℃以上であることが望ましく、無機化合物のように1000℃以上の非常に高い融点を持つものであってもよい。シート材10をヒートシールする際の加熱温度は、微粒子14bが溶融してしまわないように、必要に応じて調整される。また、微粒子の素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、マイカ等の無機化合物微粒子、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂等の有機化合物微粒子が挙げられる。
【0019】
微粒子14bの添加量は、熱可塑性樹脂14aを100質量部として、5〜15質量部であることが好ましい。微粒子14bの添加量が少なすぎると、微粒子の添加による効果が得られず、ヒートシールの際の加圧によって溶着部分のシール層厚さが薄くなってしまい、十分なシール強度が得られない場合がある。一方で、微粒子14bが多すぎると、接着性に寄与する熱可塑性樹脂の相対量が減少するほか、シール層14の表面上に微粒子14bによる表面凹凸が発生しやすくなり、熱可塑性樹脂14aと容器あるいは他のシート材表面との接触面積が小さくなって、シール強度が低下してしまう場合がある。
【0020】
なお、微粒子14bとしては、特にフッ素樹脂微粒子を用いることが望ましい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の塗膜に任意の微粒子を分散させることでヒートシール強度が改善されたシート材が得られるものの、微粒子としてフッ素樹脂微粒子を用いることによって、さらに密封後の容器をレトルト処理(加圧加熱処理)する場合であっても、レトルト処理によるシール強度の低下を抑えることができる。密封後の容器をレトルト処理すると、通常、内容物から水蒸気が発生し、シート材10の内面のシール層14はこの水蒸気に曝されることになる。ここで、例えば、シリカあるいはその他の微粒子の場合、水蒸気を吸湿して膨張する等、変形を生じ、シール層14が剥離してシール強度が著しく低下してしまうことがある。これに対して、フッ素樹脂微粒子は変形を生じ難く、例えば、水蒸気に曝されても膨張を起こさないため、レトルト処理後であっても優れたシール強度を維持することができる。
【0021】
シール層14の厚さは、特に限定されるものではないが、1〜20μmの範囲に設定することが好ましく、さらに好ましくは5〜15μmである。シール層14が薄すぎると、ヒートシール後のシール強度が十分に得られない場合があり、反対に厚くしすぎると生産性が低下したり、また、後述する電子レンジ用容器の蓋材に用いた場合に、加熱後のシール層の樹脂軟化による易開封性を十分に発現することができず、開封し難くなるおそれがある。
【0022】
本発明の密封容器用シート材10において、微粒子14bの平均粒子径とシール層14の厚さの比(微粒子粒径/層厚)は、0.5〜3.0である。微粒子粒径/層厚が0.5未満であると、ヒートシール後の溶着部分の実質的なシール層の厚さが薄くなってしまい、十分なシール強度が得られない。一方、微粒子粒径/層厚が3.0を超えると、シール強度が著しく低下してしまう。また、より好ましい微粒子粒径/層厚の範囲は0.5〜1.0である。微粒子粒径/層厚が1.0を超えると、微粒子14bがシール層14の表面上に飛び出して表面凹凸が発生し、加熱あるいは軟化した熱可塑性樹脂14aが溶着対象である容器あるいは他のシート材表面と接触し難くなって、シール強度が弱化する傾向にある。このため、微粒子粒径/層厚を1.0以下とし、また、シール層14の表面を実質的に凹凸の無い表面とすることが望ましい。
【0023】
なお、基材層12及びシール層14には、必要に応じて、一般に使用されるその他の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機系微粒子、有機系微粒子、着色剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0024】
本発明の密封容器用シート材には、基材層12の上に、さらに印刷用基材層及び印刷層を積層してもよい。また、さらに発熱体用基材層及び発熱体層を設けて、電子レンジ用容器の蓋材に適した密封容器用シート材とすることもできる。
【0025】
また、本発明の密封容器用シート材10を、熱可塑性樹脂からなる容器へとヒートシールする場合、該容器を構成する熱可塑性樹脂として、シート材10の基材層12を構成する熱可塑性樹脂よりも軟質な樹脂を用いることが望ましい。ここで、軟質とは樹脂の引張弾性率の測定値(JIS−K7161に準拠)に基づき、引張弾性率の小さいものをより軟質とする。容器を構成する熱可塑性樹脂を、基材層を構成する熱可塑性樹脂よりも軟質なものとすることで、ヒートシール工程においてシート材と容器とを両側から加圧した際、シール層14内の微粒子14bが、基材側の熱可塑性樹脂よりも軟質な容器側の熱可塑性樹脂へと部分的に食い込むこととなり、容器とシート材との間のシール強度をより向上することができる。例えば、基材層12の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート(引張弾性率:3700〜5000MPa)、容器を構成する熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(引張弾性率:1000〜2000MPa)の組み合わせとすることで、以上のようなシール強度の向上効果が期待できる。
【0026】
図4に、本発明の一実施形態にかかる電子レンジ用容器の蓋材110の断面図を示す。
本発明の一実施形態にかかる電子レンジ用容器の蓋材110は、外側(図中上方)から、印刷用基材層116、印刷層118、接着層120、発熱体用基材層122、発熱体層124、接着層126、シール用基材層112、シール層114からなる多層シートにより形成されている。また、シール層114は、微粒子114bが分散された熱可塑性樹脂114aの塗膜からなっている。そして、蓋材110のシール層114には、電子レンジ用容器130の開口部端面がヒートシールされ、該容器130が密封されている。
【0027】
ここで、シール用基材層112、シール層114は、先に説明した基材層12、シール層14と同一である。また、印刷用基材層116、発熱体用基材層122についても、上記基材層12と同一のものを使用できるが、特に印刷用基材層116については、外部から印刷層118を視認できるように透明な樹脂フィルムにより形成されている必要がある。また、各基材層116,122の厚さも、特に限定されるものではないが、通常、10〜100μm程度である。
【0028】
印刷層118は、公知の印刷インキを用いて印刷用基材層116の表面上に印刷することにより形成されている。印刷インキの種類は特に限定されるものではなく、印刷用基材層116の素材の種類や印刷内容等に応じて適宜選択することができる。また、印刷用基材層116の全面に印刷されていなくてもよく、部分的であってよい。
【0029】
接着層120、126は、公知の接着剤を用いて各層を接着することによって形成される。すなわち、印刷層118あるいは発熱体用基材層122のいずれかに接着剤を塗布し、両者を貼り合せて乾燥することで、接着層120を介して、印刷層118と発熱体用基材層122とが接着される。また、発熱体層124あるいはシール用基材層112のいずれかに接着剤を塗布し、両者を貼り合せて乾燥することで、接着層126を介して、発熱体層124とシール用基材層112とが接着される。接着剤の種類も特に限定されるものではなく、各層に用いられる素材の種類等に応じて適宜選択すればよい。
【0030】
発熱体層124は、電磁波の照射を受けて発熱する導電性物質の蒸着膜、導電性インク、金属箔等により薄膜状に形成されている。導電性物質としては、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅等の金属や、これら金属の酸化物の1種又は複数の混合物を使用することができる。特に、材料コストや生産性を鑑みると、アルミニウム単独、又はアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物による蒸着膜を使用することが好ましく、この混合物を使用する場合、アルミニウムと酸化アルミニウムとの質量比が4:1〜1:9であることがより好ましい。また、これらを使用することで、蒸着膜の表面に塗膜を形成する際、蒸着膜が損傷し難くなる。なお、例えば、電子レンジにより加熱した際の蒸着膜の発熱温度が160〜300℃程度のものを好適に使用することができる。蒸着膜の厚さとしては、30〜100nmが好ましく、この範囲に設定することで、電子レンジで必要以上に長時間加熱された場合に、蒸着膜にひび割れを生じさせて加熱を停止又は抑制することができる。また、蒸着膜の厚さが30nm未満では、蒸着膜の表面に塗膜を形成する際に損傷し易くなり、十分な発熱効果が得られないおそれがあり、他方100nmを超えると、蒸着膜が加熱によるひび割れを生じやすくなる。なお、発熱体層124は、発熱体用基材層122の全面に形成されていなくてもよく、部分的に形成されていてもよい。
【0031】
本発明の蓋材110は、例えば、外側(図中上方)から、各層を順に積層して作成することができる。すなわち、印刷用基材層116の一方の表面へと任意のインキによる印刷を施して印刷層118を形成する。つづいて印刷層に接着剤を塗布して接着層120を形成し、発熱体用基材層122を重ね合わせて接着する。発熱体用基材層122に発熱体となる金属酸化物等を蒸着して発熱体層124を形成するか、あるいは予め金属酸化物等が蒸着された樹脂シートの基材層側を印刷層118へと接着して発熱体用基材層122及び発熱体層124を同時に積層してもよい。発熱体層124には、接着層126を介してシール用基材層112が接着され、該シール用基材層112の表面には、先に説明したように、熱可塑性樹脂114aの粒子と微粒子114bを分散した溶媒を塗布し、焼き付けることによって、微粒子114bが分散した熱可塑性樹脂114aからなる塗膜として、シール層114を形成することができる。
【0032】
本発明の一実施例にかかる蓋材110は、任意の形状をした電子レンジ用容器130の開口部端面にヒートシールされ、これによって容器130が密封されている。電子レンジ用容器130の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂材料を射出成型や圧空成形により成形した容器を好適に使用することができる。また、容器130を構成する熱可塑性樹脂として、蓋材110のシール用基材層112を構成する熱可塑性樹脂よりも軟質な樹脂を用いることが望ましく、先に説明したように、このようにすることでシール強度の向上効果が期待できる。容器130の形状も特に限定されないが、カップ状の容器の開口部端面において外側方向に延在するフランジ部が設けられた容器であると、このフランジ部に対して蓋材110をヒートシールし易い。
【0033】
また、以上のように本発明の蓋材110によって密封された電子レンジ用容器130を電子レンジで加熱すると、発熱体層124が電磁波を吸収して発熱し、その熱によってシール層114を構成する熱可塑性樹脂が溶融あるいは軟化し、シール層112と容器の開口部端面との接着性が低下して、容易に開封することができるようになる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により、本発明についてさらに具体的に説明を行なうが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
厚さ12μmの透明蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの表面に、熱可塑性樹脂(オレフィン樹脂)粒子を含む塗料(Eipoc−1808:櫻宮化学社製)に平均粒子径3μmのポリテトラフルオロエチレン微粒子を添加したもの(オレフィン樹脂100質量部に対してポリテトラフルオロエチレン微粒子10質量部)を適当量塗布し、180℃で焼き付けて、膜厚3.5μmのシール層が積層されたシート材を得た。
【0035】
<比較例1>
ポリテトラフルオロエチレン微粒子を用いなかったほかは、上記実施例1と同様にして、積層シート材を得た。
【0036】
上記実施例及び比較例のシート材を用い、シール層側を接着面として、ポリプロピレン樹脂製射出成型カップ容器(大和製罐社製)のフランジ部へと160℃−1.4秒の条件でヒートシールし、カップ容器を密封した。
以上で得られた密封容器について、下記条件により、密封容器の破裂強度を測定した。
【0037】
[破裂強度]
破裂強度試験機(FTK−100J:サン科学社製)を用い、カップ容器側にゴムシートをセットし、そこに空気針を突き刺して密封容器内部に空気を送入した。密封容器が破裂するまで空気の送入を続け、容器が破裂したときの最大圧力を測定した。測定は5回繰り返し行ない、平均値を求めた。
【0038】
実施例1及び比較例1のシート材を用いた密封容器の破裂強度の測定結果を下記表1に示す。
【表1】
【0039】
上記表1に示すように、オレフィン樹脂を主体とするシール層中に平均粒子径3μmのポリテトラフルオロエチレン微粒子を添加した実施例1のシート材を用いて容器を密封することで、優れたヒートシール強度が得られた。これに対して、微粒子を添加しないほかは実施例1と同一とした比較例1のシート材を用いた場合、実施例1と比較してヒートシール強度に劣っており、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を添加することによりヒートシール強度が改善されていることが明らかとなった。
【0040】
つづいて、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均粒子径とシール層厚さとの比をさまざまに変化させた各種シート材を作成し、これを用いた密封容器についてシール強度を測定した。
<実施例2〜6>
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの一方の面に接着剤を塗布し、発熱体層となるアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物による厚さ50nmの蒸着膜を有するアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(VM−PET 1015HT:東レフィルム加工社製)を積層した。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの発熱体層とは反対側の面に、さらに厚さ12μmの透明蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを積層した。つづいて、熱可塑性樹脂(オレフィン樹脂)粒子を含む塗料(Eipoc−1808:櫻宮化学社製)に平均粒子径3μmのポリテトラフルオロエチレン微粒子を添加したもの(オレフィン樹脂100質量部に対してポリテトラフルオロエチレン微粒子10質量部)を準備し、この塗料を、発熱体層側にバーコーターを用いて適当量塗布し、180℃で焼き付けた。塗料の塗布量によりシール層厚さを1〜5μmの範囲で各種変化させ、5種類の積層シート材を得た。
【0041】
上記実施例の各種シート材を用い、シール層側を接着面として、ポリプロピレン樹脂製射出成型カップ容器(大和製罐社製)のフランジ部(外径70.5mm、内径62mm)へと、半自動シーラー(SNWE−1:シンワ機械社製)を用いて、(1)160℃−1.4秒×2回、(2)175℃−1.4秒×2回のそれぞれの条件にてヒートシールし、カップ容器を密封した。
以上で得られた密封容器について、下記条件により、蓋材と容器との間のシール強度を測定した。
【0042】
[シール強度]
シール後の蓋材及び容器を中央から外周方向に15mm巾の短冊状に切断し、試験片を作成した。引張試験機を用い、試験片の容器側を固定し、蓋材側の端部を把持して速度100mm/minで真上に引き上げ、シール部が破断したときの最大荷重(N/15mm)を測定した。
【0043】
実施例2〜6のシート材を用いた密封容器のシール強度の測定結果を下記表2及び
図5に示す。
【表2】
【0044】
上記表2及び
図5に示すように、微粒子の平均粒子径とシール層厚さの比(微粒子粒径/層厚)を0.6〜3.0の範囲とした実施例2〜6のシート材では、160℃,175℃のいずれのシール温度条件においても、比較的良好なシール強度が得られた。ただし、微粒子粒径/層厚の比が1.0を超えると、シール強度が低下する傾向が見られた。これは、微粒子がシール層表面から飛び出して表面凹凸を形成し、シール層の熱可塑性樹脂と容器との接触面積が減少したためと考えられる。この結果から、本発明のシート材においては、微粒子平均粒子径/シール層厚さを1.0以下とすることが特に好ましい。