特許第6751307号(P6751307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751307
(24)【登録日】2020年8月18日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20200824BHJP
   B60Q 1/12 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B60Q1/14 D
   B60Q1/12 100
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-99024(P2016-99024)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-206094(P2017-206094A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅典
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−034785(JP,A)
【文献】 特開2011−031641(JP,A)
【文献】 特開2011−086580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
B60Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、明暗境界線を含む所定配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
前記車両に設けられたセンサと、
前記センサの検出結果に連動して、前記明暗境界線の明瞭度を変化させる明瞭度制御部と、を備え
前記センサは、前記車両の車速を検出する車速センサであり、
前記明瞭度制御部は、前記車速センサの検出結果である車速が速くなるのに連動して、前記明暗境界線の明瞭度を高くする車両用灯具。
【請求項2】
車両に搭載され、明暗境界線を含む所定配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
前記車両に設けられたセンサと、
前記センサの検出結果に連動して、前記明暗境界線の明瞭度を変化させる明瞭度制御部と、を備え、
前記センサは、前記車両の舵角を検出する舵角センサであり、
前記明瞭度制御部は、前記舵角センサの検出結果である舵角が大きくなるのに連動して、前記明暗境界線の明瞭度を高くする車両用灯具。
【請求項3】
前記明瞭度制御部は、前記舵角センサの検出結果である舵角がしきい値を超えた場合、前記舵角センサの検出結果である舵角が大きくなるのに連動して、前記明暗境界線の明瞭度を高くする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項4】
車両に搭載され、明暗境界線を含む所定配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
前記車両に設けられたセンサと、
前記センサの検出結果に連動して、前記明暗境界線の明瞭度を変化させる明瞭度制御部と、を備え、
前記センサは、前記車両の走行環境を検出するナビゲーション装置であり、
前記車両の走行環境は、前記車両の走行予定道路の曲率であり、
前記明瞭度制御部は、前記ナビゲーション装置の検出結果である前記車両の走行予定道路の曲率が大きくなるのに連動して、前記明暗境界線の明瞭度を高くする車両用灯具
【請求項5】
前記車両前方のマスク対象物を認識するマスク対象物認識部をさらに備え、
前記所定配光パターンは、前記マスク対象物認識部によって認識されたマスク対象物を照射しない非照射領域と照射領域とを含むハイビーム用配光パターンであり、
前記ハイビーム用配光パターンは、前記非照射領域と前記照射領域との間で縦方向に延びる前記明暗境界線を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記ハイビーム用配光パターンは、前記非照射領域と前記照射領域との間で縦方向に延びる2本の前記明暗境界線を含み、
前記明瞭度制御部は、前記センサの検出結果に連動して、前記2本の明暗境界線のうち少なくとも一方の明暗境界線の明瞭度を変化させる請求項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記明瞭度制御部は、前記マスク対象物認識部によって前記マスク対象物である対向車が認識された場合、前記センサの検出結果に連動して、前記2本の明暗境界線のうち少なくとも自車線側の明暗境界線の明瞭度を変化させる請求項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に、車両の走行状態や走行環境に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非照射領域(遮光領域)と照射領域との間の明暗境界線(境界)が明瞭となり、視覚的な違和感が生じるのを防止する観点から、非照射領域と照射領域との間に光度(明るさ)が段階的に変化した明暗境界線(境界領域)を設けることが可能な車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−34785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具においては、当該車両用灯具が搭載された車両の走行状態や走行環境にかかわらず、明暗境界線の明瞭度が一定であるため、車両の走行状態や走行環境によっては、夜間走行時の安全性を損なう可能性があるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車両の走行状態や走行環境に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一つの側面は、車両に搭載され、明暗境界線を含む所定配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、前記車両に設けられたセンサと、前記センサの検出結果に連動して、前記明暗境界線の明瞭度を変化させる明瞭度制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この側面によれば、車両の走行状態や走行環境に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる車両用灯具を提供することができる。その結果、夜間走行時の安全性を向上させることができる。
【0008】
これは、明瞭度制御部の作用により、センサの検出結果に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができることによるものである。
【0009】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記車両前方のマスク対象物を認識するマスク対象物認識部をさらに備え、前記所定配光パターンは、前記マスク対象物認識部によって認識されたマスク対象物を照射しない非照射領域と照射領域とを含むハイビーム用配光パターンであり、前記ハイビーム用配光パターンは、前記非照射領域と前記照射領域との間で縦方向に延びる前記明暗境界線を含むことを特徴とする。
【0010】
この態様によれば、車両の走行状態や走行環境に連動して、ハイビーム用配光パターンに含まれる明暗境界線の明瞭度を変化させることができる車両用灯具を提供することができる。その結果、夜間走行時の安全性を向上させることができる。
【0011】
これは、明瞭度制御部の作用により、センサの検出結果に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができることによるものである。
【0012】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記ハイビーム用配光パターンは、前記非照射領域と前記照射領域との間で縦方向に延びる2本の前記明暗境界線を含み、前記明瞭度制御部は、前記センサの検出結果に連動して、前記2本の明暗境界線のうち少なくとも一方の明暗境界線の明瞭度を変化させることを特徴とする。
【0013】
この態様によれば、車両の走行状態や走行環境に連動して、ハイビーム用配光パターンに含まれる2本の明暗境界線のうち少なくとも一方の明暗境界線の明瞭度を変化させることができる。
【0014】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記明瞭度制御部は、前記マスク対象物認識部によって前記マスク対象物である対向車が認識された場合、前記センサの検出結果に連動して、前記2本の明暗境界線のうち少なくとも自車線側の明暗境界線の明瞭度を変化させることを特徴とする。
【0015】
この態様によれば、車両の走行状態や走行環境に連動して、ハイビーム用配光パターンに含まれる2本の明暗境界線のうち少なくとも自車線側の明暗境界線の明瞭度を変化させることができる。
【0016】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記センサは、前記車両の車速を検出する車速センサであり、前記明瞭度制御部は、前記車速センサの検出結果である車速が速くなるのに連動して、前記明暗境界線の明瞭度を高くすることを特徴とする。
【0017】
この態様によれば、車両の走行状態(車速)に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる。
【0018】
また、この態様によれば、次の効果を奏する。
【0019】
第1に、車速センサの検出結果である車速が速くなるのに連動して、明暗境界線の明瞭度を高くすることができる。これにより、視認範囲を広くすることができる。また、遠方視認性を向上させることもできる。その結果、夜間走行時の安全性が向上する。
【0020】
第2に、車速センサの検出結果である車速が遅くなるのに連動して、明暗境界線の明瞭度を低くすることができる。これにより、明暗境界線をぼけて見せることができる。その結果、チラつきや視界の違和感を抑制することができ、運転者の疲労度を抑制することができる。その結果、夜間走行時の安全性が向上する。
【0021】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記センサは、前記車両の舵角を検出する舵角センサであり、前記明瞭度制御部は、前記舵角センサの検出結果である舵角が大きくなるのに連動して、前記明暗境界線の明瞭度を高くすることを特徴とする。
【0022】
この態様によれば、車両の走行状態(舵角)に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる。
【0023】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記明瞭度制御部は、前記舵角センサの検出結果である舵角がしきい値を超えた場合、前記舵角センサの検出結果である舵角が大きくなるのに連動して、前記明暗境界線の明瞭度を高くすることを特徴とする。
【0024】
この態様によれば、舵角がしきい値を超えない場合(例えば、直線道路を走行中の場合)、舵角センサの検出結果である舵角に連動して、明暗境界線の明瞭度が変化するのを防止することができる。
【0025】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記センサは、前記車両の走行環境を検出するナビゲーション装置であり、前記明瞭度制御部は、前記ナビゲーション装置の検出結果である前記車両の走行環境に連動して、前記明暗境界線の明瞭度を変化させることを特徴とする。
【0026】
この態様によれば、ナビゲーション装置の検出結果である車両の走行環境に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる。
【0027】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記車両の走行環境は、前記車両の走行予定道路の曲率であり、前記明瞭度制御部は、前記ナビゲーション装置の検出結果である前記車両の走行予定道路の曲率が大きくなるのに連動して、前記明暗境界線の明瞭度を高くすることを特徴とする。
【0028】
この態様によれば、ナビゲーション装置の検出結果である車両の走行環境(走行予定道路の曲率)に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる。
【0029】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記センサは、前記車両の車速を検出する車速センサ、前記車両の舵角を検出する舵角センサ、前記車両の走行環境を検出するナビゲーション装置のうち少なくとも一つであることを特徴とする。
【0030】
この態様によれば、車速センサ、舵角センサ、ナビゲーション装置のうち少なくとも一つのセンサの検出結果に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる。
【0031】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記センサは、前記車両の走行状態又は走行環境を検出するセンサであり、前記明瞭度制御部は、前記センサの検出結果である前記車両の走行状態又は走行環境に連動して、前記明暗境界線の明瞭度を変化させることを特徴とする。
【0032】
この態様によれば、センサの検出結果である車両の走行状態や走行環境に連動して、明暗境界線の明瞭度を変化させることができる。
【0033】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記明瞭度は、G値であることを特徴とする。
【0034】
この態様によれば、車両の走行状態や走行環境に連動して、明暗境界線の明瞭度(G値)を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第1実施形態である車両用灯具10の概略構成図である。
図2】ヘッドランプ14の概略構成図である。
図3】レーザー光源22からのレーザー光が光偏向器24(ミラー部24a)によって走査されて、蛍光体プレート26にハイビーム用配光画像pHiが形成されている様子を表す斜視図である。
図4】(a)G値が相対的に低い明暗境界線CL1の例、(b)図4(a)中のA1−A1断面の光度分布、(c)図4(a)に示すハイビーム用配光画像pHiを構成する複数ピクセルの一例、(d)G値が相対的に高い明暗境界線CL1の例、(e)図4(d)中のA2−A2断面の光度分布、(f)図4(d)に示すハイビーム用配光画像pHiを構成する複数ピクセルの一例である。
図5】解像度の違いによる明暗境界線の見え方の違い(シミュレーション結果)を説明するための図である。
図6】車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる処理の一例を示すフローチャートである。
図7】車速とG値との対応関係の例である。
図8】車速とG値との対応関係の他の例である。
図9】(a)G値が相対的に低い明暗境界線CL1の例、(b)図9(a)中のA3−A3断面の光度分布、(c)G値が相対的に高い明暗境界線CL1の例、(d)図9(c)中のA4−A4断面の光度分布である。
図10】第2実施形態である車両用灯具10Aの概略構成図である。
図11】(a)G値が相対的に高い明暗境界線CL1の例、(b)図11(a)中のA5−A5断面の光度分布である。
図12】舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる処理の一例を示すフローチャートである。
図13】第3実施形態である車両用灯具10Bの概略構成図である。
図14】ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる処理の一例を示すフローチャートである。
図15】DMD46を備えたヘッドランプ14Aの一例である。
図16】LCD58を備えたヘッドランプ14Bの一例である。
図17】明暗境界線の他の例である。
図18】所定配光パターンの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の第1実施形態である車両用灯具10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0037】
図1は、第1実施形態である車両用灯具10の概略構成図である。
【0038】
図1に示すように、本実施形態の車両用灯具10は、車両V0に搭載され、明暗境界線CL1、CL2を含むハイビーム用配光パターンPHi図4(a)参照)を形成するように構成された車両用灯具である。ハイビーム用配光パターンが本発明の所定配光パターンに相当する。
【0039】
車両用灯具10は、前方検出装置12、ヘッドランプ14、ヘッドランプ制御部16、マスク対象物認識部18、明瞭度制御部16a、車速センサ20等を備えている。また、図2に示すように、車両用灯具10は、光偏向器駆動部&同期信号制御部32、電流強化レーザー駆動部34、記憶装置36等を備えている。
【0040】
前方検出装置12、ヘッドランプ14、マスク対象物認識部18、車速センサ20、光偏向器駆動部&同期信号制御部32、電流強化レーザー駆動部34、及び記憶装置36は、ヘッドランプ制御部16に接続されている。ヘッドランプ制御部16は、前方検出装置12によって撮像された画像等に基づいてヘッドランプ14を制御する。
【0041】
前方検出装置12は、例えば、車両V0前方を撮像するカメラ(CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む)で、車両V0の所定箇所(例えば、車室内)に設けられている。前方検出装置12によって撮像された画像(画像データ)は、ヘッドランプ制御部16に入力される。
【0042】
ヘッドランプ制御部16は、映像エンジンCPU等のCPUを備えている。
【0043】
マスク対象物認識部18は、前方検出装置12によって撮像された画像(画像データ)に基づき、当該画像に含まれる車両V0前方のマスク対象物を認識するマスク対象物認識処理を実行する。マスク対象物認識部18は、例えば、ヘッドランプ制御部16が記憶装置36に記憶された所定プログラムを実行することによって実現される。マスク対象物認識部18によって認識されるマスク対象物は、例えば、対向車、先行車である。
【0044】
明瞭度制御部16aは、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線の明瞭度(以下、G値という)を変化させる明瞭度変化処理を実行する。明瞭度制御部16aによってG値が変化される明暗境界線は、明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線である。
【0045】
具体的には、明瞭度制御部16aは、車速センサ20の検出結果である車速が速くなるのに連動して、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)のG値を高くする。また、明瞭度制御部16aは、車速センサ20の検出結果である車速が遅くなるのに連動して、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)のG値を低くする。明瞭度制御部16aは、例えば、ヘッドランプ制御部16が記憶装置36に記憶された所定プログラムを実行することによって実現される。なお、G値、及び明瞭度制御部16aの動作については、後に詳述する。
【0046】
車速センサ20は、車両V0の車速を検出するセンサで、車両V0の所定箇所に設けられている。車速センサ20が本発明の車両に設けられたセンサに相当する。
【0047】
ヘッドランプ14は、配光可変型のヘッドランプ(ADB:Adaptive Driving Beam)で、車両V0の前端部に設けられている。
【0048】
図2は、ヘッドランプ14の概略構成図である。
【0049】
図2に示すように、ヘッドランプ14は、主に、レーザー光源22、光偏向器24、蛍光体プレート26、投影レンズ28を備えている。
【0050】
レーザー光源22は、例えば、青色域のレーザー光を放出するレーザーダイオード(LD)である。レーザー光源22は、電流強化レーザー駆動部34に接続されており、電流強化レーザー駆動部34から印加される駆動電流によって制御される。電流強化レーザー駆動部34は、ヘッドランプ制御部16からの制御に従って、所望の光分布のハイビーム用配光画像が形成されるように調整された駆動電流を、レーザー光源22に印加する。レーザー光源22からのレーザー光は、集光レンズ(図示せず)で集光されて光偏向器24(ミラー部24a)に入射する。
【0051】
蛍光体プレート26は、光偏向器24によって走査されるレーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光(例えば、黄色域の光)に変換する外形が矩形形状の板状(又は層状)の波長変換部材である。
【0052】
光偏向器24は、駆動方式が圧電方式、1軸共振・1軸非共振タイプの光偏向器(例えば、MEMSスキャナ)で、第1軸(共振駆動軸)及びこれに直交する第2軸(非共振駆動軸)を中心に揺動可能に支持されたミラー部24a(例えば、MEMSミラー)、ミラー部24aを第1軸を中心に往復揺動させる第1アクチュエーター(圧電アクチュエーター。図示せず)、ミラー部24aを第2軸を中心に往復揺動させる第2アクチュエーター(圧電アクチュエーター。図示せず)等を含む。
【0053】
光偏向器24(各アクチュエーター)は、偏向装置駆動部&同期信号制御部32に接続されており、偏向装置駆動部&同期信号制御部32から印加される駆動電圧によって制御される。偏向装置駆動部&同期信号制御部32は、ヘッドランプ制御部16からの制御に従って、所望のサイズのハイビーム用配光画像が形成されるように調整された駆動電圧(共振駆動用の駆動電圧及び非共振駆動用の駆動電圧)を、光偏向器24(各アクチュエーター)に印加する。
【0054】
これによって、ミラー部24aは、各軸を中心に往復揺動し、これに同期して変調されるレーザー光源22からのレーザー光を例えば、図3に示すように、水平方向及び鉛直方向に走査することで、蛍光体プレート26の全域又は一部領域に所望の光分布及び所望のサイズの白色(正確には、擬似白色)のハイビーム用配光画像pHiを形成する。このハイビーム用配光画像pHiが投影レンズ28によって車両前方に投影(反転投影)されることで、図4(a)、図4(d)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHiが形成される。
【0055】
ハイビーム用配光画像pHiは、縦横方向に格子状に配置された複数ピクセル(例えば、縦640×横360ピクセル)によって構成される(図4(c)及び図4(f)参照)。図4(c)中の各々の矩形は、図4(a)に示すハイビーム用配光画像pHiを構成する複数ピクセルの一例である。図4(f)中の各々の矩形は、図4(d)に示すハイビーム用配光画像pHiを構成する複数ピクセルの一例である。なお、図4(c)、図4(f)では、説明の便宜上、一部のピクセル群のみを示してある。
【0056】
各々のピクセルの明るさ(例えば、輝度)は、所望の光分布のハイビーム用配光画像が形成されるように調整された駆動電流がレーザー光源22に印加されることで個別に制御される。各々のピクセルサイズは、0.2°×0.2°以下が望ましい。このようにすれば、より高解像度のハイビーム用配光画像(及びハイビーム用配光パターン)を形成できる。
【0057】
図5は、解像度の違いによる明暗境界線の見え方の違い(シミュレーション結果)を説明するための図である。具体的には、図5(a)は0.6°の範囲(図5(a)中符号L3が示す範囲参照)を0.20°×0.20°のピクセルで構成して光度変化させた場合の明暗境界線の見え方を表し、図5(b)は0.6°の範囲を0.10°×0.10°のピクセルで構成して光度変化させた場合の明暗境界線の見え方を表し、図5(c)は0.6°の範囲を0.05°×0.05°のピクセルで構成して光度変化させた場合の明暗境界線の見え方を表し、図5(d)は0.6°の範囲を0.015°×0.015°のピクセルで構成して光度変化させた場合の明暗境界線の見え方を表している。なお、図5の出典は、Proceedings of the 11th International Symposiium on Automotive Lighting "BMBF-Project VOLIFA 2020 - High resolution light distribution by using a LCD" Representative for the VoLiFa 2020 research cooperation Henrik Hesse, Hella KGaA Hueck & Co., Germanyである。
【0058】
図5(a)〜図5(d)を参照すると、各々のピクセルサイズを、0.2°×0.2°以下とすることで、より高解像度のハイビーム用配光画像(及びハイビーム用配光パターン)を形成できることが分かる。
【0059】
各々のピクセルから出て投影レンズ28を透過した光(白色光。正確には擬似白色光)は、車両前後方向に延びる光軸AX(図1参照)に対して各々のピクセル位置に応じた角度方向(角度範囲)に照射される。
【0060】
例えば、蛍光体プレート26の基準位置(例えば、蛍光体プレート26の中心位置)から出て投影レンズ28を透過した光は、光軸AXに対して平行の方向に照射されて水平線Hと鉛直線Vとの交点に向かう。また例えば、各々のピクセルサイズが0.2°×0.2°の場合、基準位置に対して下に隣接するピクセルから出て投影レンズ28を透過した光は、光軸AXに対して上0°〜0.2°の角度範囲に照射される。また例えば、基準位置に対して右(車両前方に向かって右)に隣接するピクセルから出て投影レンズ28を透過した光は、光軸AXに対して左0°〜0.2°の角度範囲に照射される。他のピクセルから出て投影レンズ28を透過した光についても同様で、各々のピクセル位置に応じた角度方向に照射される。
【0061】
図4(a)に示すように、マスク対象物認識部18によって車両V0前方のマスク対象物である対向車V1が認識された場合、当該マスク対象物である対向車V1を照射しない非照射領域aを含むハイビーム用配光画像pHiが蛍光体プレート26に形成される(図4(c)参照)。この非照射領域aを含むハイビーム用配光画像pHiが投影レンズ28によって車両前方に投影(反転投影)されることで、図4(a)に示すように、マスク対象物である対向車V1を照射しない非照射領域Aと照射領域B、Cとを含むハイビーム用配光パターンPHiが形成される。
【0062】
非照射領域a(及び非照射領域A)のサイズは、マスク対象物が認識されるまでの遅れ時間や、前方検出装置12とヘッドランプ14の許容光軸ズレ等があってもマスク対象物が照射されないように、マスクマージンL1(図4(a)参照)を考慮して定められる。
【0063】
非照射領域aは、マスク対象物を照射しない非照射領域aを含むハイビーム用配光画像pHiが形成されるように調整された駆動電流がレーザー光源22に印加されることで形成される。
【0064】
具体的には、非照射領域aは、光偏向器24によって走査されるレーザー光源22からのレーザー光がマスク対象物(非照射領域a)を照射するタイミングで発光強度が相対的に弱くなり(すなわち、レーザー光源22が消灯又は減光し)、かつ、光偏向器24によって走査されるレーザー光源22からのレーザー光がマスク対象物(非照射領域a)以外を照射するタイミングで発光強度が相対的に強くなるように調整された駆動電流がレーザー光源22に印加されることで形成される。
【0065】
図4(a)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHiは、非照射領域Aと照射領域B、Cとの間で縦方向(鉛直方向)に延びる2本の明暗境界線CL1、CL2を含む。
【0066】
明暗境界線CL1、CL2のG値は、次の式で算出される。なお、G値は、明暗境界線(光度変化)の傾きを表す指数である。
【0067】
【数1】
但し、Eβは、角度位置β(例えば、図4(b)参照)における光度値である。
【0068】
自動車ライティングにおいては、1本の明暗境界線の中で上記式により算出された値の最大値がその明暗境界線のG値とされる。方向によって値が負になるが、通常絶対値にて扱われる。なお、明暗境界線が明確に認識されるのはG=0.25程度であり、G=0.15では境界線が不明瞭になる。G値が大きい程明瞭度が高い。
【0069】
図4(a)はG値が相対的に低い明暗境界線CL1の例で、図4(d)はG値が相対的に高い明暗境界線CL1の例である。図4(b)は図4(a)中のA1−A1断面の光度分布を表し、図4(e)は図4(d)中のA2−A2断面の光度分布を表している。
【0070】
G値が相対的に低い明暗境界線CL1(図4(a)参照)は、G値が相対的に高い明暗境界線CL1(図4(d)参照)と比べ、第1に、明暗境界線CL1の光度変化(勾配)が緩やかである(図4(b)参照)、その結果、明暗境界線CL1がぼけて見える(明瞭に見えない)、第2に、明暗境界線CL1の光度が緩やかに変化している範囲が相対的に暗くなる(例えば、図4(b)中符号L2が示す範囲参照)、その結果、視認範囲が狭くなる等の特徴がある。
【0071】
逆に、G値が相対的に高い明暗境界線CL1(図4(d)参照)は、G値が相対的に低い明暗境界線(図4(a)参照)と比べ、第1に、明暗境界線CL1の光度変化(勾配)が急峻である(図4(e)参照)、その結果、明暗境界線CL1が明瞭(鮮明)に見える、第2に、非照射領域Aと照射領域B、Cとの境界ぎりぎりまで相対的に明るくなる(図4(e)参照)、その結果、視認範囲が広がる、遠方視認性(遠方の視認距離)が向上する等の特徴がある。
【0072】
以上を踏まえると、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させるのが望ましい。例えば、車速センサ20の検出結果である車速が速くなるのに連動して、明暗境界線のG値を高くするのが望ましい。また、車速センサ20の検出結果である車速が遅くなるのに連動して、明暗境界線のG値を低くするのが望ましい。その理由は、次のとおりである。
【0073】
すなわち、明暗境界線は、車両V0に対して他車(例えば、対向車V1)が相対的に移動するのに連動して移動する。その際、明暗境界線が明瞭に見えると、明暗境界線の移動がチラつきや視界の違和感として認識され、車両V0の運転者にとって煩わしさや長時間運転した際の疲労となり、夜間走行時の安全性を損なう可能性がある。
【0074】
以上を考慮すると、チラつきや視界の違和感を抑制する観点からは、G値は、相対的に低い方が望ましい。
【0075】
しかしながら、G値が相対的に低いと、車速が相対的に速い場合、チラつきや視界の違和感を抑制できるものの、明暗境界線の光度が緩やかに変化している範囲が相対的に暗くなる(例えば、図4(b)中符号L2が示す範囲参照)。その結果、視認範囲が狭くなるため、路面状況等によって本来見えているべき部位が見えない状況を生じ、夜間走行時の安全性を損なう可能性がある。
【0076】
そこで、車速センサ20の検出結果である車速が速くなるのに連動して、明暗境界線のG値を高くすることで、視認範囲を広くするのが望ましい。このように視認範囲を広くすることで、遠方視認性(遠方の視認距離)も向上する。特に、明暗境界線CL2と比べ、自車線側に位置している明暗境界線CL1のG値を相対的に高くすることで、消失点VP(水平線Hと鉛直線Vとの交点)近くまで相対的に明るくすることができる(図4(d)、図4(e)参照)。
【0077】
その結果、遠方視認性が大きく向上する。このことは、車速が速いほど制動距離が長くなることを考慮すると、路面状況や歩行者や自転車等の早期把握が可能となる点で、有利となる。なお、車速が速いほど車体は安定するため、明暗境界線のG値を高くしても、低速走行時ほど明暗境界線は移動せず、チラつきや視界の違和感は、ほとんど発生しない。
【0078】
一方、車速が遅いほど制動距離が短くなることを考慮すると、低速走行時には、高速走行時ほどの視認範囲、及び遠方視認性は求められない。そこで、車速センサ20の検出結果である車速が遅くなるのに連動して、明暗境界線のG値を低くすることで(すなわち、明暗境界線をぼけて見せることで)、チラつきや視界の違和感を抑制するのが望ましい。
【0079】
なお、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)の光度変化(勾配)が急峻となるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、当該明暗境界線のG値を高くすることができる。同様に、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)の光度変化(勾配)が緩やかとなるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、当該明暗境界線のG値を低くすることができる。
【0080】
次に、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線のG値を変化させる処理の一例について説明する。以下、マスク対象物が対向車V1、G値を変化させる明暗境界線が明暗境界線CL1である例について説明する。
【0081】
図6は、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる処理の一例を示すフローチャートである。
【0082】
以下の処理は、主に、ヘッドランプ制御部16が記憶装置36から読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0083】
以下の処理は、車両V0が直線道路を走行している場合に実行される。なお、車両V0が直線道路を走行しているか否かは、車両V0に設けられた後述の舵角センサ62によって検出される舵角、又は車両V0に設けられた後述のナビゲーション装置64によって検出(取得)される道路情報(及び車両V0に設けられたGPS(図示せず)によって取得される車両V0の現在位置情報)等に基づき判定できる。
【0084】
まず、ヘッドランプスイッチ(図示せず)がオンされると(ステップS10:Yes)、車速センサ20によって車速が検出される(ステップS12)。
【0085】
ここでは、車速S1(図7参照)が検出されたものとする。
【0086】
次に、マスク対象物認識部18が、前方検出装置12によって撮像された画像(画像データ)に基づき、当該画像に含まれる車両V0前方のマスク対象物を認識するマスク対象物認識処理を実行する(ステップS14)。
【0087】
次に、マスク対象物が認識されたか否かが判定される(ステップS16)。ここでは、マスク対象物として対向車V1が認識されたと判定されたものとする(ステップS16:Yes)。
【0088】
次に、明瞭度制御部16aが、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる明瞭度変化処理を実行する。
【0089】
具体的には、まず、車速センサ20の検出結果である車速S1に対応するG値が取得される(ステップS18)。車速に対応するG値は、例えば、図7に示すように、車速とG値との対応関係が記憶装置36に記憶されている場合、当該記憶装置36から車速センサ20によって検出された車速に対応するG値を読み出すことで取得される。なお、記憶装置36に記憶される車速とG値との関係は、例えば、図7中符号D1で示すように、車速が速いほどG値が直線状に連続的に高くなる関係である。もちろん、これに限らず、記憶装置36に記憶される車速とG値との関係は、図8中符号D2で示すように、車速が速いほどG値が曲線状(例えば、二次曲線状)に連続的に高くなる関係であってもよいし、図8中符号D3で示すように、車速が速いほどG値が階段状に高くなる関係であってもよいし、その他の関係であってもよい。
【0090】
ここでは、車速S1に対応するG値として、G1(図7参照)が取得されたものとする。
【0091】
次に、マスク対象物である対向車V1を照射しない非照射領域aを含み、かつ、明暗境界線CL1のG値がステップS18で取得されたG値(ここでは、G1)となるハイビーム用配光画像pHiが形成されるように調整された駆動電流がレーザー光源22に印加される(ステップS20)。
【0092】
そして、光偏向器24のミラー部24aが、各軸を中心に揺動し、これに同期して変調されるレーザー光源22からのレーザー光を例えば、図3に示すように、水平方向及び鉛直方向に走査することで、蛍光体プレート26の全域又は一部領域にステップS14で認識されたマスク対象物である対向車V1を照射しない非照射領域aを含む白色のハイビーム用配光画像pHiを形成する(ステップS22)。
【0093】
このハイビーム用配光画像pHiが投影レンズ28によって車両前方に投影(反転投影)される(ステップS24)ことで、図4(a)に示すように、ステップS14で認識されたマスク対象物である対向車V1を照射しない非照射領域A及び照射領域B、Cを含むハイビーム用配光パターンPHiが形成される。この場合、ハイビーム用配光パターンPHiは、G値がG1の明暗境界線CL1を含む。
【0094】
以後、ヘッドランプスイッチ(図示せず)がオンされている(ステップS10:Yes)間、ステップS12〜S28の処理が繰り返し実行される。
【0095】
すなわち、ヘッドランプスイッチ(図示せず)がオンされている場合(ステップS10:Yes)、車速センサ20によって車速が検出される(ステップS12)。
【0096】
ここでは、車速S2(S2>S1。図7参照)が検出されたものとする。
【0097】
次に、マスク対象物認識部18が、前方検出装置12によって撮像された画像(画像データ)に基づき、当該画像に含まれる車両V0前方のマスク対象物を認識するマスク対象物認識処理を実行する(ステップS14)。
【0098】
次に、マスク対象物が認識されたか否かが判定される(ステップS16)。ここでは、引き続き、マスク対象物として対向車V1が認識されたと判定されたものとする(ステップS16:Yes)。
【0099】
次に、明瞭度制御部16aが、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる明瞭度変化処理を実行する。
【0100】
具体的には、まず、車速センサ20の検出結果である車速S2に対応するG値が取得される(ステップS18)。
【0101】
ここでは、車速S2に対応するG値として、G2(G2>G1。図7参照)が取得されたものとする。
【0102】
次に、マスク対象物である対向車V1を照射しない非照射領域aを含み、かつ、明暗境界線CL1のG値がステップS18で取得されたG値(ここでは、G2)となるハイビーム用配光画像pHiが形成されるように調整された駆動電流がレーザー光源22に印加される(ステップS20)。
【0103】
そして、光偏向器24のミラー部24aが、各軸を中心に揺動し、これに同期して変調されるレーザー光源22からのレーザー光を例えば、図3に示すように、水平方向及び鉛直方向に走査することで、蛍光体プレート26の全域又は一部領域にステップS14で認識されたマスク対象物である対向車V1を照射しない非照射領域aを含む白色のハイビーム用配光画像pHiを形成する(ステップS22)。
【0104】
このハイビーム用配光画像pHiが投影レンズ28によって車両前方に投影(反転投影)される(ステップS24)ことで、図4(d)に示すように、ステップS14で認識されたマスク対象物である対向車V1を照射しない非照射領域A及び照射領域B、Cを含むハイビーム用配光パターンPHiが形成される。このハイビーム用配光パターンPHiは、G値がG2の明暗境界線CL1を含む。
【0105】
以上のようにして、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させることができる。例えば、車速センサ20の検出結果である車速が速くなるのに連動して、明暗境界線CL1のG値を高くすることができる。また、車速センサ20の検出結果である車速が遅くなるのに連動して、明暗境界線CL1のG値を低くすることができる。
【0106】
なお、ステップS16においてマスク対象物が認識されないと判定された場合(ステップS16:No)、非照射領域aを含まないハイビーム用配光画像pHiが形成されるように調整された駆動電流がレーザー光源22に印加される(ステップS26)。
【0107】
そして、光偏向器24のミラー部24aが、各軸を中心に揺動し、これに同期して変調されるレーザー光源22からのレーザー光を例えば、図3に示すように、水平方向及び鉛直方向に走査することで、非照射領域aを含まない、すなわち、全領域が照射領域の白色のハイビーム用配光画像pHiを形成する(ステップS28)。
【0108】
このハイビーム用配光画像pHiが投影レンズ28によって車両前方に投影(反転投影)される(ステップS24)ことで、非照射領域Aを含まない、すなわち、全領域が照射領域のハイビーム用配光パターンPHiが形成される。
【0109】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両V0の走行状態(車速)に連動して、ハイビーム用配光パターンPHiに含まれる明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることができる車両用灯具10を提供することができる。その結果、夜間走行時の安全性を向上させることができる。
【0110】
これは、明瞭度制御部16aの作用により、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることができることによるものである。
【0111】
また、本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0112】
第1に、車速センサ20の検出結果である車速が速くなるのに連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を高くすることができる。これにより、視認範囲を広くすることができる。また、遠方視認性を向上させることもできる。その結果、夜間走行時の安全性が向上する。
【0113】
第2に、車速センサ20の検出結果である車速が遅くなるのに連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を低くすることができる。これにより、明暗境界線をぼけて見せることができる。その結果、チラつきや視界の違和感を抑制することができ、車両V0の運転者の疲労度を抑制することができる。その結果、夜間走行時の安全性が向上する。
【0114】
また、本実施形態によれば、車両V0が先行車V2を追従走行しているとき(図9(a)参照)や対向車V1とすれ違うとき(図4(a)参照)等、周囲の明るさ感を保ちつつ、G値が低くぼけて見える(明瞭に見えない)明暗境界線(例えば、図4(a)に示す明暗境界線CL1)により、非照射領域A(マスク範囲)の移動が極力気にならず車両V0の運転者にとってストレスが少ない視界を提供することができる。
【0115】
次に、変形例について説明する。
【0116】
上記第1実施形態では、G値を変化させる明暗境界線が明暗境界線CL1である例について説明したが、これに限らず、G値を変化させる明暗境界線は、明暗境界線CL2であってもよいし、明暗境界線CL1、CL2であってもよいのは無論である。また、マスク対象物が対向車V1である例について説明したが、これに限らず、マスク対象物は先行車V2(図9(a)参照)であってもよいのは無論である。
【0117】
また、上記第1実施形態では、車速とG値との対応関係を記憶装置36に記憶しておき、当該記憶装置36から車速センサ20によって検出された車速に対応するG値を読み出すことで取得し、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)のG値がこの取得されたG値となるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線のG値を変化させるように説明したが、これに限らない。
【0118】
例えば、少なくとも1つのしきい値を記憶装置36等に記憶しておき、車速センサ20によって検出された車速が当該しきい値を超えた場合、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)の光度変化(勾配)が当該しきい値を超える前より急峻となるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線のG値を変化させるようにしてもよい。
【0119】
また例えば、少なくとも1つのしきい値を記憶装置36等に記憶しておき、車速センサ20によって検出された車速が当該しきい値を下回った場合、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)の光度変化(勾配)が当該しきい値を下回る前より緩やかとなるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線のG値を変化させるようにしてもよい。
【0120】
次に、本発明の第2実施形態である車両用灯具10Aについて添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0121】
図10は、第2実施形態である車両用灯具10Aの概略構成図である。
【0122】
図10に示すように、本実施形態の車両用灯具10Aは、上記第1実施形態の車両用灯具10と比べ、車両V0のステアリング舵角を検出する舵角センサ62が追加されている点が相違する。
【0123】
また、上記第1実施形態では、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させる明瞭度変化処理を実行する明瞭度制御部16aを備えていたのに対して、本実施形態では、舵角センサ62の検出結果である舵角(ステアリング舵角)に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させる明瞭度変化処理を実行する明瞭度制御部16Aaを備えている点が相違する。それ以外、上記第1実施形態と同様の構成である。
【0124】
図11に示すように、曲線道路(カーブ)付近で対向車V1等のマスク対象物が認識された場合、進行方向側は明確に見えている必要があるため、明暗境界線(少なくとも、明暗境界線CL1)の光度分布(勾配)を急峻にして視認範囲を広くする方がより、進行方向側の路面状況を把握しやすくなるため望ましい。
【0125】
また、曲線道路(カーブ)内で対向車V1等のマスク対象物が認識され当該マスク対象物を遮光する場合、曲線道路(カーブ)内の進行方向側は明確に見えている必要があるため、明暗境界線(少なくとも、明暗境界線CL1)が明瞭に見えることが望ましい。
【0126】
以上を踏まえると、舵角センサ62の検出結果である舵角(ステアリング舵角)に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させるのが望ましい。例えば、舵角センサ62の検出結果である舵角が大きくなるのに連動して、明暗境界線のG値を高くするのが望ましい。また、舵角センサ62の検出結果である舵角が小さくなるのに連動して、明暗境界線のG値を低くするのが望ましい。
【0127】
次に、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる処理の一例について説明する。以下、マスク対象物が対向車V1、G値を変化させる明暗境界線が明暗境界線CL1である例について説明する。
【0128】
図12は、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる処理の一例を示すフローチャートである。
【0129】
図12は、図6に示すフローチャート中の「車速を検出」するステップS12を「舵角を検出」するステップS12Aに置き換え、かつ、「車速に対応するG値を取得」するステップS18を「舵角に対応するG値を取得」するステップS18Aに置き換えたものに相当する。それ以外、図6に示すフローチャートと同様である。
【0130】
なお、舵角に対応するG値は、例えば、図7に示すのと同様に、舵角とG値との対応関係が記憶装置36に記憶されている場合、当該記憶装置36から舵角センサ62によって検出された舵角に対応するG値を読み出すことで取得される。
【0131】
なお、明瞭度制御部16Aaは、舵角センサ62の検出結果である舵角がしきい値を超えた場合、舵角センサ62の検出結果である舵角が大きくなるのに連動して、明暗境界線の明瞭度を高くするのが望ましい。
【0132】
このようにすれば、舵角がしきい値を超えない場合(例えば、直線道路を走行中の場合)、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線のG値が変化するのを防止することができる。
【0133】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両V0の走行状態(舵角)に連動して、ハイビーム用配光パターンPHiに含まれる明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることができる車両用灯具10Aを提供することができる。その結果、夜間走行時の安全性を向上させることができる。
【0134】
これは、明瞭度制御部16Aaの作用により、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることができることによるものである。
【0135】
また、本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0136】
第1に、舵角センサ62の検出結果である舵角が大きくなるのに連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を高くすることができる。これにより、視認範囲を広くすることができる。また、遠方視認性を向上させることもできる。その結果、夜間走行時の安全性が向上する。
【0137】
第2に、舵角センサ62の検出結果である舵角が小さくなるのに連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を低くすることができる。これにより、明暗境界線をぼけて見せることができる。その結果、チラつきや視界の違和感を抑制することができ、車両V0の運転者の疲労度を抑制することができる。その結果、夜間走行時の安全性が向上する。
【0138】
また、本実施形態によれば、直線道路を走行時には、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させ、曲線道路(カーブ)を走行時には、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることができる。なお、曲線道路(カーブ)を走行時には、舵角センサ62の検出結果である舵角、及び車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させてもよい。なお、車両V0が直線道路を走行しているか曲線道路(カーブ)を走行しているかは、車両V0に設けられた舵角センサ62によって検出される舵角、又は車両V0に設けられた後述のナビゲーション装置64によって検出(取得)される道路情報(及び車両V0に設けられたGPS(図示せず)によって取得される車両V0の現在位置情報)等に基づき判定できる。
【0139】
次に、変形例について説明する。
【0140】
上記第2実施形態では、G値を変化させる明暗境界線が明暗境界線CL1である例について説明したが、これに限らず、G値を変化させる明暗境界線は、明暗境界線CL2であってもよいし、明暗境界線CL1、CL2であってもよいのは無論である。また、マスク対象物が対向車V1である例について説明したが、これに限らず、マスク対象物は先行車であってもよいのは無論である。
【0141】
また、上記第2実施形態では、舵角とG値との対応関係を記憶装置36に記憶しておき、当該記憶装置36から舵角センサ62によって検出された舵角に対応するG値を読み出すことで取得し、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)のG値がこの取得されたG値となるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線のG値を変化させるように説明したが、これに限らない。
【0142】
例えば、少なくとも1つのしきい値を記憶装置36等に記憶しておき、舵角センサ62によって検出された舵角が当該しきい値を超えた場合、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)の光度変化(勾配)が当該しきい値を超える前より急峻となるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線のG値を変化させるようにしてもよい。
【0143】
また例えば、少なくとも1つのしきい値を記憶装置36等に記憶しておき、舵角センサ62によって検出された舵角が当該しきい値を下回った場合、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)の光度変化(勾配)が当該しきい値を下回る前より緩やかとなるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線のG値を変化させるようにしてもよい。
【0144】
次に、本発明の第3実施形態である車両用灯具10Bについて添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0145】
図13は、第3実施形態である車両用灯具10Bの概略構成図である。
【0146】
図13に示すように、本実施形態の車両用灯具10Bは、上記第2実施形態の車両用灯具10Aと比べ、車両V0の走行環境を検出可能なナビゲーション装置64が追加されている点が相違する。
【0147】
また、上記第2実施形態では、舵角センサ62の検出結果である舵角に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させる明瞭度変化処理を実行する明瞭度制御部16Aaを備えていたのに対して、本実施形態では、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行環境に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させる明瞭度変化処理を実行する明瞭度制御部16Baを備えている点が相違する。それ以外、上記第2実施形態と同様の構成である。
【0148】
次に、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行環境に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる処理の一例について説明する。以下、ナビゲーション装置64によって検出される車両V0の走行環境が車両V0の走行予定道路の曲率、マスク対象物が対向車V1、G値を変化させる明暗境界線が明暗境界線CL1である例について説明する。
【0149】
図14は、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率に連動して、明暗境界線CL1のG値を変化させる処理の一例を示すフローチャートである。
【0150】
図14は、図12に示すフローチャート中の「舵角を検出」するステップS12Aを「走行予定道路の曲率を検出」するステップS12Bに置き換え、かつ、「舵角に対応するG値を取得」するステップS18Aを「走行予定道路の曲率に対応するG値を取得」するステップS18Bに置き換えたものに相当する。それ以外、図12に示すフローチャートと同様である。
【0151】
なお、車両V0の走行予定道路の曲率に対応するG値は、例えば、図7に示すのと同様に、曲率とG値との対応関係が記憶装置36に記憶されている場合、当該記憶装置36からナビゲーション装置64によって検出された車両V0の走行予定道路の曲率に対応するG値を読み出すことで取得される。
【0152】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両V0の走行環境(車両V0の走行予定道路の曲率)に連動して、ハイビーム用配光パターンPHiに含まれる明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることができる車両用灯具10Bを提供することができる。その結果、夜間走行時の安全性を向上させることができる。
【0153】
これは、明瞭度制御部16Baの作用により、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行環境(車両V0の走行予定道路の曲率)に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることができることによるものである。
【0154】
また、本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0155】
第1に、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率が大きくなるのに連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を高くすることができる。これにより、視認範囲を広くすることができる。また、遠方視認性を向上させることもできる。その結果、夜間走行時の安全性が向上する。
【0156】
第2に、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率が小さくなるのに連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を低くすることができる。これにより、明暗境界線をぼけて見せることができる。その結果、チラつきや視界の違和感を抑制することができ、車両V0の運転者の疲労度を抑制することができる。その結果、夜間走行時の安全性が向上する。
【0157】
また、本実施形態によれば、直線道路を走行時には、車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させ、曲線道路(カーブ)を走行時には、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率(さらには、舵角センサ62の検出結果である舵角)に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることができる。なお、曲線道路(カーブ)を走行時には、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率(さらには、舵角センサ62の検出結果である舵角)、及び車速センサ20の検出結果である車速に連動して、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させてもよい。
【0158】
次に、変形例について説明する。
【0159】
上記第3実施形態では、G値を変化させる明暗境界線が明暗境界線CL1である例について説明したが、これに限らず、G値を変化させる明暗境界線は、明暗境界線CL2であってもよいし、明暗境界線CL1、CL2であってもよいのは無論である。また、マスク対象物が対向車V1である例について説明したが、これに限らず、マスク対象物は先行車であってもよいのは無論である。
【0160】
また、上記第3本実施形態では、曲率とG値との対応関係を記憶装置36に記憶しておき、当該記憶装置36からナビゲーション装置64によって検出された車両V0の走行予定道路の曲率に対応するG値を読み出すことで取得し、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)のG値がこの取得されたG値となるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率に連動して、明暗境界線のG値を変化させるように説明したが、これに限らない。
【0161】
例えば、少なくとも1つのしきい値を記憶装置36等に記憶しておき、ナビゲーション装置64によって検出された車両V0の走行予定道路の曲率が当該しきい値を超えた場合、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)の光度変化(勾配)が当該しきい値を超える前より急峻となるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率に連動して、明暗境界線のG値を変化させるようにしてもよい。
【0162】
また例えば、少なくとも1つのしきい値を記憶装置36等に記憶しておき、ナビゲーション装置64によって検出された車両V0の走行予定道路の曲率が当該しきい値を下回った場合、明暗境界線(例えば、明暗境界線CL1)の光度変化(勾配)が当該しきい値を下回る前より緩やかとなるように調整された駆動電流をレーザー光源22に印加することで、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行予定道路の曲率に連動して、明暗境界線のG値を変化させるようにしてもよい。
【0163】
また、上記第3実施形態では、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行環境が車両V0の走行予定道路の曲率である例について説明したが、これに限らない。例えば、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行環境は、車両V0の走行予定道路又は走行中の道路の路面状況であってもよい。
【0164】
例えば、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行環境(車両V0の走行予定道路又は走行中の道路の路面状況)が舗装道路の場合、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を相対的に高くする。一方、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行環境(車両V0の走行予定道路又は走行中の道路の路面状況)が未舗装道路の場合、明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を相対的に低くする。
【0165】
このように、ナビゲーション装置64の検出結果である車両V0の走行環境(車両V0の走行予定道路又は走行中の道路の路面状況)に連動して、ハイビーム用配光パターンPHiに含まれる明暗境界線(明暗境界線CL1、CL2のうち少なくとも一方の明暗境界線)のG値を変化させることで、未舗装道路を走行する際、マスク対象物に幻惑光が照射されるのを抑制できる。
【0166】
次に、上記各実施形態共通の変形例について説明する。
【0167】
上記各実施形態では、前方検出装置12として、カメラを用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、前方検出装置12として、レーダー装置(例えば、ミリ波レーダー、赤外線レーザーレーダー)を用いてもよい。これらは、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0168】
また、上記各実施形態では、車両V0に設けられたセンサとして、車速センサ20、舵角センサ62、ナビゲーション装置64を用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、車両V0に設けられたセンサとして、車両V0前方の歩行者や自転車等を検出するセンサ、例えば、前方検出装置12を用いてもよい。これらは、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。なお、車速センサ20や舵角センサ62が本発明の車両の走行状態を検出するセンサに相当する。また、ナビゲーション装置64や車両V0前方の歩行者や自転車等を検出するセンサが本発明の車両の走行環境を検出するセンサに相当する。
【0169】
車両V0に設けられたセンサとして、車両V0前方の歩行者や自転車等を検出するセンサを用いる場合、例えば、当該センサによって検出された歩行者W(図9(d)参照)の方向に位置する明暗境界線(この場合、明暗境界線CL1)のG値を高くし、視認範囲を広くすることで、車両V0前方の歩行者W等の気づきをサポートすることができる。
【0170】
また、上記各実施形態では、レーザー光源22として、青色域のレーザー光を放出するレーザーダイオードを用い、かつ、蛍光体プレート26として、レーザー光源22からのレーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光(例えば、黄色域の光)に変換する波長変換部材を用いる例について説明したが、これに限らない。
【0171】
例えば、レーザー光源22として、近紫外域のレーザー光を放出するレーザーダイオードを用い、かつ、蛍光体プレート26として、レーザー光源22からのレーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光(例えば、赤、緑、青の三色の光)に変換する波長変換部材を用いてもよい。この場合、レーザー光源22からの近紫外域のレーザー光が光偏向器24によって走査されることで、蛍光体プレート26に白色のハイビーム用配光画像pHiが形成される。このハイビーム用配光画像pHiが投影レンズ28によって車両前方に投影(反転投影)されることで、ハイビーム用配光パターンPHiが形成される。
【0172】
また例えば、レーザー光源22に代えて白色光源(例えば、白色レーザー光源)を用い、かつ、蛍光体プレート26に代えて拡散板(図示せず)を用いてもよい。この場合、白色光源からの白色光が光偏向器24によって走査されることで、拡散板に白色のハイビーム用配光画像pHiが形成される。このハイビーム用配光画像pHiが投影レンズ28によって車両前方に投影(反転投影)されることで、ハイビーム用配光パターンPHiが形成される。
【0173】
また、上記各実施形態では、光偏向器24として、駆動方式が圧電方式の光偏向器を用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、光偏向器24として、駆動方式が静電方式、電磁方式、その他の方式の光偏向器を用いてもよい。
【0174】
また、上記各実施形態では、光偏向器24として、1軸共振・1軸非共振タイプの光偏向器を用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、光偏向器24として、2軸非共振タイプ、2軸共振タイプの光偏向器を用いてもよい。
【0175】
また、上記各実施形態では、ヘッドランプ14として、光偏向器24を備えたヘッドランプを用いる例について説明したが、これに限らない。
【0176】
例えば、ヘッドランプ14として、DMD46(DMD:Digital Mirror Device)を備えたヘッドランプ14Aを用いてもよい。
【0177】
図15は、DMD46を備えたヘッドランプ14Aの一例である。
【0178】
図15に示すように、本変形例のDMD46を備えたヘッドランプ14Aは、光源42(白色LEDや白色LD等の白色光源)、集光レンズ44、DMD46、投影レンズ48、不用光吸収体50等を備えている。
【0179】
DMD46は、アレイ状に配列された複数のマイクロミラー(図示せず)を備えている。集光レンズ44で集光された光源42からの光は、複数のマイクロミラーに入射する。複数のマイクロミラーのうちオン位置のマイクロミラーで反射された光は、投影レンズ48に入射し、当該投影レンズを透過して車両V0前方に照射される。一方、複数のマイクロミラーのうちオフ位置のマイクロミラーで反射された光は、不用光吸収体50に入射し、当該不用光吸収体50に吸収される。各々の画素(ピクセル)の明るさは、各々のマイクロミラーのオンオフする周期を個別に制御することで、個別に制御される。各々の画素(ピクセルサイズ)は、0.2°×0.2°以下が望ましい。このようにすれば、より高解像度のハイビーム用配光画像(及びハイビーム用配光パターン)を形成できる。DMDを備えたヘッドランプについては、特開2016−34785号公報や特開2004−210125号公報等に詳細に記載されているため、これ以上の説明は省略する。
【0180】
上記構成のヘッドランプ14A(DMD46)によれば、各々のマイクロミラーを個別にオンオフすることで、ヘッドランプ14(光偏向器24)と同様、マスク対象物を照射しない非照射領域を含む白色のハイビーム用配光画像を形成することができる。そして、このハイビーム用配光画像を投影レンズ48によって車両前方に投影(反転投影)することで、図4(a)や図4(d)に示すのと同様のハイビーム用配光パターンを形成することができる。
【0181】
その際、各センサ(例えば、車速センサ20、舵角センサ62、ナビゲーション装置64)の検出結果に連動して、各々のマイクロミラーのオンオフする周期を個別に調整することで、ヘッドランプ14(光偏向器24)と同様、明暗境界線のG値を変化させることができる。
【0182】
本変形例のDMD46を備えたヘッドランプ14Aを用いても、上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0183】
また例えば、ヘッドランプ14として、LCD58(LCD:liquid crystal display)を備えたヘッドランプ14Bを用いてもよい。
【0184】
図16は、LCD58を備えたヘッドランプ14Bの一例である。
【0185】
図16に示すように、本変形例のLCD58を備えたヘッドランプ14Bは、光源52(白色LEDや白色LD等の白色光源)、集光光学系54、偏光軸が互いに直交する2枚の偏光板56a、56b、2枚の偏光板56a、56bの間に配置されたLCD58(LCD素子)、投影レンズ60等を備えている。
【0186】
集光光学系54で整えられた光源52からの光は、各々の画素(図示せず)の偏光方向が個別に制御されたLCD58に入射する。各々の画素を透過する光の透過量は、偏光板56a、56bの偏光方向とLCD58の各々の画素で偏光された光の偏光方向との関係により決まる。各々の画素(ピクセル)の明るさは、各々の画素の偏光方向を個別に制御することで、個別に制御される。各々の画素(ピクセルサイズ)は、0.2°×0.2°以下が望ましい。このようにすれば、より高解像度のハイビーム用配光画像(及びハイビーム用配光パターン)を形成できる。LCDを備えたヘッドランプについては、特開平1−244934号公報、特開2005−183327号公報等に詳細に記載されているため、これ以上の説明は省略する。
【0187】
上記構成のヘッドランプ14B(LCD58)によれば、各々の画素の偏光方向を個別に制御することで、ヘッドランプ14(光偏向器24)と同様の、マスク対象物を照射しない非照射領域を含む白色のハイビーム用配光画像を形成することができる。そして、このハイビーム用配光パターンを投影レンズ60によって車両前方に投影(反転投影)することで、図4(a)や図4(d)に示すのと同様のハイビーム用配光パターンを形成することができる。
【0188】
その際、各センサ(例えば、車速センサ20、舵角センサ62、ナビゲーション装置64)の検出結果に連動して、各々の画素の偏光方向を個別に制御することで、ヘッドランプ14(光偏向器24)と同様、明暗境界線のG値を変化させることができる。
【0189】
本変形例のLCD58を備えたヘッドランプ14Bを用いても、上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0190】
また、上記各実施形態では、所定配光パターンとして、縦方向(鉛直方向)に延びる2本の明暗境界線CL1、CL2を含むハイビーム用配光パターンPHiを用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、図17に示すように、所定配光パターンとして、縦方向(鉛直方向)に延びる2本の明暗境界線CL1、CL2、及び横方向(水平方向)に延びる2本の明暗境界線CL3、CL4を含むハイビーム用配光パターンPHiを用いてもよい。この場合、各センサ(例えば、車速センサ20、舵角センサ62、ナビゲーション装置64)の検出結果に連動して、明暗境界線CL3、CL4のうち少なくとも一方の明暗境界線のG値を変化させてもよい。
【0191】
また例えば、所定配光パターンとして、図18に示すように、上端縁に明暗境界線CL5(自車線側明暗境界線CL6、対向車線側明暗境界線CL7、及び斜め明暗境界線CL8)を含むロービーム用配光パターンPLoを用いてもよい。この場合、各センサ(特に、車速センサ20)の検出結果に連動して、ロービーム用配光パターンPLoの明暗境界線CL5のG値を変化させてもよい。
【0192】
例えば、車速センサ20の検出結果である車速が速くなるのに連動して、明暗境界線CL5のG値を高くしてもよい。また、車速センサ20の検出結果である車速が遅くなるのに連動して、明暗境界線CL5のG値を低くしてもよい。その際、明暗境界線CL5全体のG値を変化させてもよいし、一部のG値を変化させてもよい。一部とは、例えば、自車線側明暗境界線CL6、対向車線側明暗境界線CL7、斜め明暗境界線CL8のうち少なくとも1つ、あるいは、明暗境界線CL5の水平方向の中央部である。
【0193】
また、マスク対象物認識部18によって車両V0前方の対向車が認識された場合、対向車線側明暗境界線CL7のG値を高くしてもよい。同様に、マスク対象物認識部18によって車両V0前方の先行車が認識された場合、自車線側明暗境界線CL6のG値を高くしてもよい。このように、明暗境界線CL5のうちマスク対象物が存在する側の部分のG値を部分的に高くすることで、マスク対象物に幻惑光が照射されるのを抑制できる。
【0194】
なお、車両V0が停車した場合、すなわち、車速センサ20の検出結果である車速が0になった場合、明暗境界線CL5(全体又は一部)のG値を高くしてもよい。このようにすれば、マスク対象物に幻惑光が照射されるのを抑制できる。
【0195】
本変形例によっても、上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0196】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0197】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0198】
10、10A、10B…車両用灯具、12…前方検出装置、14、14A、14B…ヘッドランプ、16…ヘッドランプ制御部、16a、16Aa、16Ba…明瞭度制御部、18…マスク対象物認識部、20…車速センサ、22…レーザー光源、24…光偏向器、24a…ミラー部、26…蛍光体プレート、28…投影レンズ、32…同期信号制御部、34…電流強化レーザー駆動部、36…記憶装置、42…光源、44…集光レンズ、48…投影レンズ、50…不用光吸収体、52…光源、54…集光光学系、56a、56b…偏光板、58…LCD、60…投影レンズ、62…舵角センサ、64…ナビゲーション装置、A…非照射領域、AX…光軸、B…照射領域、CL1〜CL8…明暗境界線、PHi…ハイビーム用配光パターン、PLo…ロービーム用配光パターン、V0…車両、V1…対向車、V2…先行車、VP…消失点、a…非照射領域、pHi…ハイビーム用配光画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18