特許第6751318号(P6751318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6751318-水平対向エンジン 図000002
  • 特許6751318-水平対向エンジン 図000003
  • 特許6751318-水平対向エンジン 図000004
  • 特許6751318-水平対向エンジン 図000005
  • 特許6751318-水平対向エンジン 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751318
(24)【登録日】2020年8月18日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】水平対向エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/24 20060101AFI20200824BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20200824BHJP
   F02F 1/00 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   F02B75/24
   F02B75/32 B
   F02F1/00 Q
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-153698(P2016-153698)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-21523(P2018-21523A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五代 聡也
(72)【発明者】
【氏名】新井 孝英
(72)【発明者】
【氏名】田中 辰弥
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】長島 仁宏
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−101239(JP,U)
【文献】 特開平03−185221(JP,A)
【文献】 特開昭57−026226(JP,A)
【文献】 特開平02−196154(JP,A)
【文献】 実開平03−008638(JP,U)
【文献】 実開昭58−009953(JP,U)
【文献】 国際公開第2002/016747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/24
F02B 75/32
F02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1気筒列および第2気筒列が、クランクシャフトを境に略平行に対向する水平対向エンジンであって、
前記第1気筒列のシリンダの軸線が前記クランクシャフトの回転軸に対してオフセットするように該第1気筒列のシリンダが形成された第1シリンダブロックと、
前記第2気筒列のシリンダの軸線が前記クランクシャフトの回転軸に対して、前記第1気筒列のシリンダとは反対側にオフセットするように該第2気筒列のシリンダが形成された第2シリンダブロックと、
を備え、
前記第1シリンダブロックおよび前記第2シリンダブロックは、互いが連結された際に、前記クランクシャフトを回転自在に保持するためのシャフト収容空間が形成され、
前記第1シリンダブロックは、
前記シャフト収容空間が形成される面に、前記第1気筒列のシリンダのオフセット側に第1ネジ溝が形成されているとともに、該シャフト収容空間を挟んだ反対側に第1貫通孔が形成されており、
前記第2シリンダブロックは、
前記シャフト収容空間が形成される面に、前記第2気筒列のシリンダのオフセット側であって、前記第1貫通孔と対向する位置に第2ネジ溝が形成されているとともに、該シャフト収容空間を挟んだ反対側であって、前記第1ネジ溝と対向する位置に第2貫通孔が形成されており、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔には、前記第1シリンダブロックおよび前記第2シリンダブロックよりも剛性が高い補強部材が設けられ
前記補強部材は、
前記シャフト収容空間が形成される面まで到達しないように前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に設けられることを特徴とする水平対向エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の気筒列がクランクシャフトを境にして水平方向に対向するように配置された水平対向エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダの中心軸線が、クランクシャフトの回転軸線を通りシリンダの中心軸線と平行な線に対してオフセットされているエンジンが提案されている(例えば、特許文献1)。このように、シリンダの中心軸線をオフセットさせることにより、シリンダに作用する、ピストンのスラスト方向の力を低減することができる。
【0003】
一方で、気筒列がそれぞれ形成された2つのシリンダブロックを水平に締結し、2つのシリンダブロックの間でクランクシャフトを回転自在に保持する水平対向エンジンも提案されている(例えば、特許文献2)。このような水平対向エンジンでは、例えば、一方のシリンダブロックに貫通孔が形成され、他方のシリンダブロックにおける貫通孔に対向する位置にネジ溝が形成され、貫通孔からボルトを挿通してネジ溝に螺合させることで、2つのシリンダブロックを締結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−055242号公報
【特許文献2】特開2015−140696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような水平対向エンジンでは、ボルトをネジ溝に螺合する際に、貫通孔にボルトの締結軸力が加わりシリンダブロックが変形することで、シャフト収容空間も変形する。特に、一方のシリンダブロックにシャフト収容空間を挟んで貫通孔およびネジ溝が形成され、他方のシリンダブロックにおける、一方のシリンダブロックの貫通孔およびネジ溝に対向する位置にネジ溝および貫通孔が形成されている場合には、ボルトが螺合するとシャフト収容空間の変形が大きくなってしまうといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、シャフト収容空間の変形を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の水平対向エンジンは、第1気筒列および第2気筒列が、クランクシャフトを境に略平行に対向する水平対向エンジンであって、前記第1気筒列のシリンダの軸線が前記クランクシャフトの回転軸に対してオフセットするように該第1気筒列のシリンダが形成された第1シリンダブロックと、前記第2気筒列のシリンダの軸線が前記クランクシャフトの回転軸に対して、前記第1気筒列のシリンダとは反対側にオフセットするように該第2気筒列のシリンダが形成された第2シリンダブロックと、を備え、前記第1シリンダブロックおよび前記第2シリンダブロックは、互いが連結された際に、前記クランクシャフトを回転自在に保持するためのシャフト収容空間が形成され、前記第1シリンダブロックは、前記シャフト収容空間が形成される面に、前記第1気筒列のシリンダのオフセット側に第1ネジ溝が形成されているとともに、該シャフト収容空間を挟んだ反対側に第1貫通孔が形成されており、前記第2シリンダブロックは、前記シャフト収容空間が形成される面に、前記第2気筒列のシリンダのオフセット側であって、前記第1貫通孔と対向する位置に第2ネジ溝が形成されているとともに、該シャフト収容空間を挟んだ反対側であって、前記第1ネジ溝と対向する位置に第2貫通孔が形成されており、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔には、前記第1シリンダブロックおよび前記第2シリンダブロックよりも剛性が高い補強部材が設けられ、前記補強部材は、前記シャフト収容空間が形成される面まで到達しないように前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シャフト収容空間の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】水平対向エンジンの概要を説明する図である。
図2】第1シリンダブロックおよび第2シリンダブロックの構造を示す水平断面図である。
図3】第1シリンダブロックおよび第2シリンダブロックの構造を示す鉛直断面図である。
図4】シリンダブロックにおけるボルトの締結軸力による変形の解析結果を示す図である。
図5】他の実施形態におけるシリンダブロックの構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、水平対向エンジン1の概要を説明する図である。なお、以下では、車両の進行方向を前方向、車両の後退方向を後方向、車両の進行方向に対して右側を右方向、車両の進行方向に対して左側を左方向、鉛直上方向を上方向、鉛直下方向を下方向として説明し、図中においても同様に図示する。
【0013】
図1に示すように、水平対向エンジン1は、クランクシャフト2を境にして、第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cが右方向側に位置するとともに、第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dが左方向側に位置し、第1シリンダ3a〜第4シリンダ3dの軸線が水平となるように車体に載置されたエンジンである。つまり、水平対向エンジン1では、第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cにより構成される第1気筒列4aと、第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dにより構成される第2気筒列4bとが、クランクシャフト2を境にして水平(平行)に対向している。なお、水平(平行)とは、必ずしも、水平(平行)のみに限定されるものではなく、略水平(略平行)であってもよい。
【0014】
また、水平対向エンジン1では、第1気筒列4aを構成する第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cと、第2気筒列4bを構成する第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dとが前後方向にオフセットして配置されている。具体的には、水平対向エンジン1では、前方向から後方向に向かって第2シリンダ3b、第1シリンダ3a、第4シリンダ3d、第3シリンダ3cが順に配置されている。なお、水平対向エンジン1は、第1シリンダ3a〜第4シリンダ3d内にそれぞれピストンが摺動可能に収容され、ピストンが第1シリンダ3a〜第4シリンダ3d内で摺動することにより、コンロッドを介してピストンに接続されたクランクシャフト2が回転する。
【0015】
図2は、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bの構造を示す水平断面図である。図3は、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bの構造を示す鉛直断面図である。なお、図2は、第1シリンダブロック10aについては第1シリンダ3aの軸線Laおよび第3シリンダ3cの軸線Lcを通る水平断面図であり、第2シリンダブロック10bについては第2シリンダ3bの軸線Lbおよび第4シリンダ3dの軸線Ldを通る水平断面図である。また、図3は、第3シャフト支持部14aおよび第3シャフト支持部14bの中央を通る鉛直断面図である。
【0016】
図2に示すように、水平対向エンジン1には、アルミ製でなる2つのシリンダブロック10(第1シリンダブロック10a、第2シリンダブロック10b)が設けられる。第1シリンダブロック10aには、第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cが前後方向に並ぶようにして形成されており、第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cによって第1気筒列4aが構成される。
【0017】
また、第2シリンダブロック10bには、第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dが前後方向に並ぶようにして形成されており、第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dによって第2気筒列4bが構成される。
【0018】
そして、水平対向エンジン1では、上記したように、第1シリンダブロック10aに形成された第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cと、第2シリンダブロック10bに形成された第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dとが、前後方向にオフセットしている。具体的に、第1シリンダ3aは、前後方向において、第2シリンダ3bの軸線Lbと第4シリンダ3dの軸線Ldとの中央に軸線Laが位置するように第1シリンダブロック10aに形成される。第3シリンダ3cは、第4シリンダ3dの後方側であって、第2シリンダ3bの軸線Lbと第4シリンダ3dの軸線Ldとの間隔と同一の間隔だけ第1シリンダ3aの軸線Laから離隔した位置に軸線Lcが位置するように第1シリンダブロック10aに形成される。
【0019】
また、図3に示すように、水平対向エンジン1では、上記したように、第1シリンダブロック10aに形成された第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cと、第2シリンダブロック10bに形成された第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dとが、上下方向にオフセットしている。具体的には、第1シリンダブロック10aには、第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cが、クランクシャフト2の回転軸Lsを通り回転軸Lsと水平な水平線HLに対して、鉛直上方にオフセットして形成されている。なお、図3においては、第1シリンダ3aのみが記載されているが、第3シリンダ3cについても、第1シリンダ3aと同様に、水平線HLに対して、鉛直上方にオフセットして形成されている。
【0020】
また、第2シリンダブロック10bには、第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dが、水平線HLに対して、第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cとは反対側の鉛直下方にオフセットして形成されている。なお、図3においては、第4シリンダ3dのみが記載されているが、第2シリンダ3bについても、第4シリンダ3dと同様に、水平線HLに対して、鉛直下方にオフセットして形成されている。
【0021】
つまり、相対的に鉛直上方に位置する第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cは、相対的に鉛直下方に位置する第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dよりも、後方側に配置(オフセット)されている。例えば、第1シリンダブロック10aにおいて最も後方側に配置される第3シリンダ3cが、第2シリンダブロック10bにおいて最も後方側に配置される第4シリンダ3dよりも後方側に配置されている。これにより、水平対向エンジン1では、第1シリンダ3a〜第4シリンダ3d内で摺動するピストンのスラスト方向の摩擦を低減することが可能となり、燃費を向上することができる。
【0022】
また、第1シリンダブロック10aには、第1シリンダ3aおよび第3シリンダ3cの周囲を覆うように、冷却水を流通させるための第1ウォータージャケット17aが形成されている。同様に、第2シリンダブロック10bには、第2シリンダ3bおよび第4シリンダ3dの周囲を覆うように、冷却水を流通させるための第2ウォータージャケット17bが形成されている。
【0023】
また、図2および図3に示すように、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bには、互いが連結された状態において、左右方向の中央にクランクシャフト2が回転自在に保持されるためのシャフト収容空間11が形成される。
【0024】
第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bには、軸受を介して、クランクシャフト2のクランクジャーナルを支持する第1シャフト支持部12a、12bが互いに対向するようにそれぞれ形成されている。そして、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bが連結された際に、第1シャフト支持部12a、12bによって円形状のシャフト収容空間11が形成されることになる。
【0025】
また、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bには、第1シャフト支持部12a、12bよりも後方側に、第2シャフト支持部13a、13b、第3シャフト支持部14a、14b、第4シャフト支持部15a、15b、第5シャフト支持部16a、16bが順にそれぞれ形成されている。そして、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bが連結された際に、第2シャフト支持部13a、13b、第3シャフト支持部14a、14b、第4シャフト支持部15a、15b、第5シャフト支持部16a、16bによってそれぞれ円形状のシャフト収容空間11が形成されることになる。
【0026】
第3シャフト支持部14aには、第1シリンダ3aがオフセットされた側、つまり、第3シャフト支持部14bと対向する面の上端部に、第1下穴18aが形成されているとともに、第1下穴18aよりも深い位置に第1ネジ溝19aが形成されている。また、第3シャフト支持部14aには、第1下穴18aおよび第1ネジ溝19aとはシャフト収容空間11を挟んで反対側、つまり、第3シャフト支持部14bと対向する面の下端部に第1貫通孔20aが形成されている。
【0027】
第3シャフト支持部14bには、第3シャフト支持部14aと対向する面の上端部であって第1下穴18aおよび第1ネジ溝19aと対向する位置に第2貫通孔20bが形成されている。また、第3シャフト支持部14bには、第3シャフト支持部14aと対向する面の下端部であって第1貫通孔20aと対向する位置に、第2下穴18bが形成されているとともに、第2下穴18bよりも深い位置に第2ネジ溝19bが形成されている。
【0028】
なお、第1シリンダ3aの下方に形成された第1貫通孔20aは、第1ウォータージャケット17aと連通している。また、第4シリンダ3dの上方に形成された第2貫通孔20bは、第2ウォータージャケット17bと連通している。また、第1下穴18aは、第2貫通孔20bと比べて十分に短く、第2下穴18bは、第1貫通孔20aと比べて十分に短い。
【0029】
第1貫通孔20aには、第1ウォータージャケット17a側に、円筒形状でなる例えば鉄製の補強部材21aが鋳込みによって挿入されている。補強部材21aは、第3シャフト支持部14bと対向する面まで到達しないように第1貫通孔20aに設けられている。これにより、ボルトによる締結時に、補強部材21aが第1貫通孔20aから脱落してしまうことを防止することができる。
【0030】
同様に、第2貫通孔20bには、第2ウォータージャケット17b側に、円筒形状でなる例えば鉄製の補強部材21bが鋳込みによって挿入されている。補強部材21bは、第3シャフト支持部14aと対向する面まで到達しないように第2貫通孔20bに設けられている。これにより、ボルトによる締結時に、補強部材21bが第2貫通孔20bから脱落してしまうことを防止することができる。
【0031】
なお、第2シャフト支持部13aおよび第4シャフト支持部15aにも、第3シャフト支持部14aと同様に、上端部に第1下穴18aおよび第1ネジ溝19aが形成されているとともに、下端部に補強部材21aが挿入された第1貫通孔20aが形成されている。また、第2シャフト支持部13bおよび第4シャフト支持部15bにも、第3シャフト支持部14bと同様に、上端部に補強部材21bが挿入された第2貫通孔20bが形成されているとともに、下端部に第2下穴18bおよび第2ネジ溝19bが形成されている。一方、第1シャフト支持部12aには、上端部および下端部に補強部材21aが挿入された第1貫通孔20aが形成されており、第1シャフト支持部12bには、上端部および下端部に第2下穴18bおよび第2ネジ溝19bが形成されている。また、第5シャフト支持部16aには、上端部および下端部に第1下穴18aおよび第1ネジ溝19aが形成されており、第5シャフト支持部16bには、上端部および下端部に補強部材21bが挿入された第2貫通孔20bが形成されている。
【0032】
第1シリンダブロック10aと第2シリンダブロック10bとが締結される際、例えば、第3シャフト支持部14aおよび第3シャフト支持部14bでは、第1シリンダブロック10aの第1貫通孔20a(補強部材21a)からボルトが挿通され第2ネジ溝19bに螺合される。また、第2シリンダブロック10bの第2貫通孔20b(補強部材21b)からボルトが挿通され第1ネジ溝19aに螺合される。
【0033】
ここで、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bは、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bをそれぞれ左右方向に貫通させることで形成されている。そのため、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bには、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bをそれぞれ形成させるための厚み(上下方向の厚み)が必要となる。
【0034】
一方、第1ネジ溝19aおよび第2ネジ溝19bは、左右方向において、第1シリンダ3a〜第4シリンダ3dに干渉しない深さまでそれぞれ形成されていれば十分である。そのため、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bに、第1ネジ溝19aおよび第2ネジ溝19bをそれぞれ形成させるための厚みを必要としない。
【0035】
そこで、第1貫通孔20aは、鉛直上方にオフセットしている第1シリンダ3aの下方に形成されているとともに、第2貫通孔20bは、鉛直下方にオフセットしている第4シリンダ3dの上方に形成されている。これにより、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bを形成させるために無駄な厚みを第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bにそれぞれ持たせる必要がないため、水平対向エンジン1全体として小型化することができる。
【0036】
ところで、第1ネジ溝19aおよび第2ネジ溝19bに螺合されるボルトの頭部は、補強部材21の第1ウォータージャケット17aおよび第2ウォータージャケット17b側の端面に当接する。そして、ボルトが第1ネジ溝19aおよび第2ネジ溝19bに締め付けられる際、シャフト収容空間11よりも上方側では、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bにおける第1ネジ溝19aと補強部材21bの端面との間にボルトの締結軸力が加えられる。同様に、シャフト収容空間11よりも下方側では、第1シリンダブロック10aおよび第2シリンダブロック10bにおける第2ネジ溝19bと補強部材21aの端面との間にボルトの締結軸力が加えられる。
【0037】
つまり、シャフト収容空間11よりも上方側においては、第1シリンダブロック10aにおける第1下穴18aの周辺部位と、第2シリンダブロック10bにおける第2貫通孔20bの周辺部位とにボルトの締結軸力が加えられる。また、シャフト収容空間11よりも下方側においては、第1シリンダブロック10aにおける第1貫通孔20aの周辺部位と、第2シリンダブロック10bにおける第2下穴18bの周辺部位とにボルトの締結軸力が加えられる。
【0038】
そして、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bが第1下穴18aおよび第2下穴18bよりも長いため、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bの周辺部位は、ボルトの締結軸力によって変形しやすい。第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bの周辺部位が、第1下穴18aおよび第2下穴18bの周辺部位と比較して大きく変形すると、シャフト収容空間11の真円度が低くなってしまう。そこで、本実施形態の水平対向エンジン1では、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bに、剛性が高い補強部材21a、21bを挿入しておくことで、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bの周辺部位の変形度合いを抑制することができ、シャフト収容空間11の真円度の低下も抑制できる。
【0039】
図4(a)は、比較例のシリンダブロック100におけるボルトの締結軸力による変形の解析結果を示す図であり、図4(b)は、本実施形態のシリンダブロック10におけるボルトの締結軸力による変形の解析結果を示す図である。比較例としてのシリンダブロック100は、本実施形態のシリンダブロック10と比較して、第1貫通孔101a、第2貫通孔101bに補強部材21a、21bが設けられていない。
【0040】
そして、図4(a)に示すように、シリンダブロック100では、ボルトの締結軸力が加えられると、シャフト収容空間11が潰れるように変形する。特に、第1貫通孔101aおよび第2貫通孔101bの周辺部分では、第1下穴18aおよび第2下穴18bの周辺部分に比べて変形量が大きく、シャフト収容空間11の真円度が大きく低下している。
【0041】
一方、本実施形態のシリンダブロック10では、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20b内に剛性が高い補強部材21a、21bが挿入されていることにより、比較例のシリンダブロック100と比較して、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bの周辺部分でのシャフト収容空間11の変形量が小さい。したがって、シャフト収容空間11の真円度の低下を、比較例のシリンダブロック100よりも抑制することができる。
【0042】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0043】
例えば、上記した実施形態では、第1貫通孔20aおよび第2貫通孔20bに補強部材21a、21bを挿入することでシャフト収容空間11の真円度の低下を抑制するようにした。しかしながら、シャフト収容空間11の真円度の低下を抑制する構成はこれに限らない。
【0044】
図5は、他の実施形態におけるシリンダブロック200の構成を説明する図である。図5に示すように、第1シリンダブロック200aは、第1シリンダブロック10aと比べて、シャフト収容空間11よりも上方側が左右方向に長く形成されるとともに、シャフト収容空間11よりも下方側が左右方向に短く形成される。また、第2シリンダブロック200bは、第2シリンダブロック10bと比べて、シャフト収容空間11よりも上方側が左右方向に短く形成されるとともに、シャフト収容空間11よりも下方側が左右方向に長く形成される。
【0045】
そして、第1シリンダブロック200aに形成された第1貫通孔220a、および、第2シリンダブロック200bに形成された第2下穴218bの長さを同一にする。また、第1シリンダブロック200aに形成された第1下穴218a、および、第2シリンダブロック200bに形成された第2貫通孔220bの長さを同一にする。
【0046】
このような構成でなるシリンダブロック200では、第1貫通孔220aの周辺部位と、第2下穴218bの周辺部位との変形量を同等にすることができる。また、第1下穴218aの周辺部位と、第2貫通孔220bの周辺部位との変形量も同等にすることができる。これにより、シリンダブロック200では、シャフト収容空間11の真円度の低下を、比較例としてのシリンダブロック100よりも抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば複数の気筒列がクランクシャフトを境にして水平方向に対向するように配置された水平対向エンジンに利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 水平対向エンジン
2 クランクシャフト
3a 第1シリンダ
3b 第2シリンダ
3c 第3シリンダ
3d 第4シリンダ
4a 第1気筒列
4b 第2気筒列
10a 第1シリンダブロック
10b 第2シリンダブロック
19a 第1ネジ溝
19b 第2ネジ溝
20a 第1貫通孔
20b 第2貫通孔
21a、21b 補強部材
図1
図2
図3
図4
図5