【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)幾つかの実施形態に係る構造物支持装置は、
構造物と固定用基礎との間に介装され、前記構造物を前記固定用基礎に支持させる構造物支持装置であって、
前記構造物と荷重入力点を介して回動可能に接続され、荷重入力方向と交差する方向に配置される第1リンクと、
前記第1リンクと並列に配置され、前記固定用基礎と荷重出力点を介して回動可能に接続される第2リンクと、
互いに対向配置される前記第1リンクの第1端及び前記第2リンクの第1端に回動可能に接続され、荷重作用方向が前記荷重入力方向に沿うように配置される防振器と、
前記防振器と異なる位置で前記荷重入力方向に沿う方向で前記第1リンク及び前記第2リンクに回動可能に接続される第3リンクと、
を備える。
【0008】
上記(1)の構成において、本明細書で言う「防振器」は、例えば、シリンダとピストンとを含んで構成される油圧式ダンパ装置である。あるいは油圧式に限定されず、メカニカルスナバと呼ばれる機械式の荷重伝達装置であってもよい。この防振器は、熱膨張のように、勾配の小さい変化、即ち、単位時間当たりの変位が小さい変位を拘束せず、地震荷重のような勾配の大きな荷重による変位、即ち、単位時間当たりの変位が大きい変位を拘束する。
【0009】
上記防振器は上記荷重入力方向に沿って配置されるため、荷重入力方向と交差する方向(例えば、荷重入力方向が水平方向に沿う場合、鉛直方向)に省スペース化できる。また、防振器は、上記第1リンク及び第2リンクによって両側から支持されかつ垂下されるため、防振器を固定するための固定部を増設する必要がない。従って、支持装置の据付け工事を簡素化かつ低コスト化できる。
また、荷重入力点と第1リンク及び第3リンクの接続点との間隔、又は荷重出力点と第2リンク及び第3リンクの接続点との間隔をaとし、第3リンクの接続点と防振器との間隔をbとしたとき、a<bとすることで、(防振器に入力する荷重)<(支持装置に入力する荷重)とすることができる。
これによって、防振器の剛性及び容量(許容荷重)を低減できるため、防振器の大径化を抑制でき、支持装置の設置スペースを低減できる。
【0010】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記荷重入力点が前記第1リンクの第2端に位置し、
前記荷重出力点が前記第2リンクの第2端に位置し、
前記第3リンクは、前記第1リンクの前記第1端と前記第2端との間及び前記第2リンクの前記第1端及び前記第2端の間で前記第1リンクと前記第2リンクとに回動可能に架設される。
上記(2)の構成によれば、第3リンクの一方の側に荷重入力点及び荷重出力点を配置し、第3リンクの他方の側に防振器を配置できるため、荷重入力点、荷重出力点及び防振器の配置の自由度を広げることができ、従って、a<bの範囲を広げることができる。
【0011】
(3)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記第3リンクが前記第1リンクの前記第2端と前記第2リンクの前記第2端とに接続され、
前記荷重入力点が前記第1リンクの前記第1端と前記第2端との間に位置し、
前記荷重出力点が前記第2リンクの前記第1端と前記第2端との間に位置する。
上記(3)の構成によれば、第3リンクの一方の側に荷重入力点、荷重出力点及び防振器を配置できるため、荷重入力方向と交差する方向の配置スペースをさらに省スペース化できる。例えば、荷重入力方向と交差する方向が鉛直方向である場合、鉛直方向の配置スペースを短縮できる。
【0012】
(4)一実施形態では、前記(1)〜(3)の何れかの構成において、
前記荷重入力方向は水平方向に沿う方向であり、
前記第1リンク及び前記第2リンクは上下方向に沿って配置され、
前記防振器は前記第1リンク及び第2リンクによって軸方向両端から支持され垂下される。
上記(4)の構成によれば、鉛直方向のスペースを省スペース化できると共に、防振器は第1リンク及び第2リンクによって軸方向両端から支持されるので、防振器を支持するために新たな固定部を必要としない。従って、支持装置の据付け工程を簡素化できる。
【0013】
(5)一実施形態では、前記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記構造物が原子力発電プラントの蒸気発生器、一次冷却材ポンプ又は加圧器である。
原子力発電プラントの蒸気発生器、一次冷却材ポンプ及び加圧器は格納容器内部の狭い空間に配置される。そのため、支持装置の設置スペースは限定される。これに対し、これら構造物の支持装置として設置スペースを縮小できる上記実施形態に係る支持装置を適用することで、設置スペースの確保が容易になる。
【0014】
(6)幾つかの実施形態に係る構造物支持装置の交換方法は、
構造物と固定用基礎との間に介装され、前記構造物を前記固定用基礎に支持させる既存の構造物支持装置を請求項1に記載の構造物支持装置に交換する方法であって、
前記既存の構造物支持装置を前記構造物及び前記固定用基礎から取外し除去する除去工程と、
前記構造物に前記荷重入力点を介して前記第1リンクを回動可能に接続する第1取付け工程と、
前記固定用基礎に前記荷重出力点を介して前記第2リンクを回動可能に接続する第2取付け工程と、
を備える。
【0015】
上記(6)の方法によれば、既存の支持装置を上記実施形態に係る支持装置に交換する場合に、第1リンクを構造物に接続し、第2リンクを固定用基礎に接続するだけで交換工事を完了できる。防振器は第1リンク及び第2リンクによってケーシングの両側から支持すればよいので、新たな固定部を増設する必要がない。従って、交換時の改造工程を簡素化かつ低コスト化できる。
また、第1リンク及び第2リンクを除き、第3リンク及び防振器は荷重入力方向に沿って配置されるので、荷重入力方向と交差する方向の設置スペースを低減できる。従って、既存の設置スペースで十分な設置スペースを確保できる。例えば、荷重入力方向と交差する方向が鉛直方向である場合、鉛直方向の配置スペースを縮小できる。
【0016】
(7)一実施形態では、前記(6)の方法において、
前記第1取付け工程において、
前記既存の構造物支持装置の取付けに用いた前記構造物に存在する固定部に、前記第1リンクを前記荷重入力点を介して回動可能に接続し、
前記第2取付け工程において、
前記既存の構造物支持装置の取付けに用いた前記固定用基礎に存在する固定部に、前記第2リンクを前記荷重出力点を介して回動可能に接続する。
【0017】
上記(7)の方法によれば、上記実施形態に係る支持装置は、構造物及び固定用基礎に夫々1個ずつの既存の固定部があれば、それ以上の固定部を必要としない。そのため、第1リンクを構造物に設けられた既存の固定部に接続し、第2リンクを固定用基礎に設けられた既存の固定部に接続するだけで交換工事は完了できる。また、防振器は第1リンク及び第2リンクによってケーシングの両側から支持されるので、新たな固定部を増設する必要がない。従って、交換時の改造工事を簡素化かつ低コスト化でき、かつ交換工事の時間を短縮できる。
【0018】
(8)一実施形態では、前記(6)又は(7)の方法において、
前記荷重入力点と前記第1リンク及び前記第3リンクの接続点との間隔、又は前記荷重出力点と前記第2リンク及び前記第3リンクの接続点との間隔をaとし、前記第3リンクの接続点と前記防振器との間隔をbとしたとき、
前記防振器の定格容量からb/aを決定する前工程をさらに備える。
上記(8)の方法によれば、構造物支持装置に入力される荷重と防振器の定格容量とから、b/aを決定することで、防振器の剛性及び定格容量に制限されることなく、それ以上の荷重に対応できる。従って、防振器の剛性及び定格容量を低減できるため、防振器の大径化を抑制でき、支持装置の配置スペースを省スペース化できる。