特許第6751323号(P6751323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6751323構造物支持装置及び構造物支持装置の取替え方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751323
(24)【登録日】2020年8月18日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】構造物支持装置及び構造物支持装置の取替え方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/12 20060101AFI20200824BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20200824BHJP
   G21D 1/04 20060101ALI20200824BHJP
   G21C 13/024 20060101ALI20200824BHJP
   G21C 13/02 20060101ALI20200824BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B65D90/12 D
   G21D1/00 S
   G21D1/00 F
   G21D1/04
   G21C13/024 200
   G21C13/02 200
   F16F15/023 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-179090(P2016-179090)
(22)【出願日】2016年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-43760(P2018-43760A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】篠原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】布山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松岡 真二
(72)【発明者】
【氏名】河野 純也
【審査官】 蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−53207(JP,A)
【文献】 特開2011−246152(JP,A)
【文献】 特開平9−72125(JP,A)
【文献】 特開平11−62306(JP,A)
【文献】 特開2010−215251(JP,A)
【文献】 特開2002−181125(JP,A)
【文献】 米国特許第6085472(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/12
F16F 15/023
G21C 13/02
G21C 13/024
G21D 1/00
G21D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物と固定用基礎との間に介装され、前記構造物を前記固定用基礎に支持させる構造物支持装置であって、
前記構造物に荷重入力点を介して回動可能に接続され、荷重入力方向と交差する方向に配置される第1リンクと、
前記第1リンクと並列に配置され、前記固定用基礎と荷重出力点を介して回動可能に接続される第2リンクと、
互いに対向配置される前記第1リンクの第1端及び前記第2リンクの第1端に回動可能に接続され、荷重作用方向が前記荷重入力方向に沿うように配置される防振器と、
前記防振器と異なる位置で前記荷重入力方向に沿う方向で前記第1リンク及び前記第2リンクに回動可能に接続される第3リンクと、
を備えることを特徴とする構造物支持装置。
【請求項2】
前記荷重入力点が前記第1リンクの第2端に位置し、
前記荷重出力点が前記第2リンクの第2端に位置し、
前記第3リンクは、前記第1リンクの前記第1端と前記第2端との間及び前記第2リンクの前記第1端及び前記第2端の間で前記第1リンクと前記第2リンクとに回動可能に架設されることを特徴とする請求項1に記載の構造物支持装置。
【請求項3】
前記第3リンクが前記第1リンクの第2端と前記第2リンクの第2端とに接続され、
前記荷重入力点が前記第1リンクの前記第1端と前記第2端との間に位置し、
前記荷重出力点が前記第2リンクの前記第1端と前記第2端との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の構造物支持装置。
【請求項4】
前記荷重入力方向は水平方向に沿う方向であり、
前記第1リンク及び前記第2リンクは上下方向に沿って配置され、
前記防振器は前記第1リンク及び第2リンクによって軸方向両端から支持され垂下されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の構造物支持装置。
【請求項5】
前記構造物が原子力発電プラントの蒸気発生器、一次冷却材ポンプ又は加圧器であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の構造物支持装置。
【請求項6】
構造物と固定用基礎との間に介装され、前記構造物を前記固定用基礎に支持させる既存の構造物支持装置を請求項1に記載の構造物支持装置に交換する方法であって、
前記既存の構造物支持装置を前記構造物及び前記固定用基礎から取外し除去する除去工程と、
前記構造物に前記荷重入力点を介して前記第1リンクを回動可能に接続する第1取付け工程と、
前記固定用基礎に前記荷重出力点を介して前記第2リンクを回動可能に接続する第2取付け工程と、
を備えることを特徴とする構造物支持装置の交換方法。
【請求項7】
前記第1取付け工程において、
前記既存の構造物支持装置の取付けに用いた前記構造物に存在する固定部に、前記第1リンクを前記荷重入力点を介して回動可能に接続し、
前記第2取付け工程において、
前記既存の構造物支持装置の取付けに用いた前記固定用基礎に存在する固定部に、前記第2リンクを前記荷重出力点を介して回動可能に接続することを特徴とする請求項6に記載の構造物支持装置の交換方法。
【請求項8】
前記荷重入力点と前記第1リンク及び前記第3リンクの接続点との間隔、又は前記荷重出力点と前記第2リンク及び前記第3リンクの接続点との間隔をaとし、前記第3リンクの接続点と前記防振器との間隔をbとしたとき、
前記防振器の定格容量からb/aを決定する前工程をさらに備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の構造物支持装置の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物支持装置及び構造物支持装置の取替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントなどでは、地震などの振動から構造物を守るため、防振器(スナバ)が使用される。大きな地震動に対処するため、防振器は振動吸収能(容量)が大きくかつ高剛性の防振器の開発が望まれる。しかし、防振器を大容量化及び高剛性化すると、防振器の外径が大きくなり、プラントの設置スペースや試験設備に収容できなくなるおそれがある。試験設備に収容できないと、剛性や定格容量の検証ができなくなる。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、構造物に対して固定用基礎を対向配置し、構造物と固定用基礎との間に防振装置を設けた例が開示されている。これらの防振装置は防振器とリンク機構とを併用することで、防振器の小型化及び大容量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−53207号公報
【特許文献2】特開2011−246152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示された防振装置は、荷重作用方向が上下方向となるように配置された防振器を備えるため、上下方向の配置スペースが拡大すると共に、固定用基礎側に防振器を支持するための新たな固定部を増設する必要があり、据付け構造が複雑化するという問題がある。
【0006】
上記課題に鑑み、幾つかの実施形態は、防振装置の設置スペースを縮小でき、かつ構造物又は固定用基礎に新たなに固定部の増設を不要として、据え付けを簡素化かつ低コスト化可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)幾つかの実施形態に係る構造物支持装置は、
構造物と固定用基礎との間に介装され、前記構造物を前記固定用基礎に支持させる構造物支持装置であって、
前記構造物と荷重入力点を介して回動可能に接続され、荷重入力方向と交差する方向に配置される第1リンクと、
前記第1リンクと並列に配置され、前記固定用基礎と荷重出力点を介して回動可能に接続される第2リンクと、
互いに対向配置される前記第1リンクの第1端及び前記第2リンクの第1端に回動可能に接続され、荷重作用方向が前記荷重入力方向に沿うように配置される防振器と、
前記防振器と異なる位置で前記荷重入力方向に沿う方向で前記第1リンク及び前記第2リンクに回動可能に接続される第3リンクと、
を備える。
【0008】
上記(1)の構成において、本明細書で言う「防振器」は、例えば、シリンダとピストンとを含んで構成される油圧式ダンパ装置である。あるいは油圧式に限定されず、メカニカルスナバと呼ばれる機械式の荷重伝達装置であってもよい。この防振器は、熱膨張のように、勾配の小さい変化、即ち、単位時間当たりの変位が小さい変位を拘束せず、地震荷重のような勾配の大きな荷重による変位、即ち、単位時間当たりの変位が大きい変位を拘束する。
【0009】
上記防振器は上記荷重入力方向に沿って配置されるため、荷重入力方向と交差する方向(例えば、荷重入力方向が水平方向に沿う場合、鉛直方向)に省スペース化できる。また、防振器は、上記第1リンク及び第2リンクによって両側から支持されかつ垂下されるため、防振器を固定するための固定部を増設する必要がない。従って、支持装置の据付け工事を簡素化かつ低コスト化できる。
また、荷重入力点と第1リンク及び第3リンクの接続点との間隔、又は荷重出力点と第2リンク及び第3リンクの接続点との間隔をaとし、第3リンクの接続点と防振器との間隔をbとしたとき、a<bとすることで、(防振器に入力する荷重)<(支持装置に入力する荷重)とすることができる。
これによって、防振器の剛性及び容量(許容荷重)を低減できるため、防振器の大径化を抑制でき、支持装置の設置スペースを低減できる。
【0010】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記荷重入力点が前記第1リンクの第2端に位置し、
前記荷重出力点が前記第2リンクの第2端に位置し、
前記第3リンクは、前記第1リンクの前記第1端と前記第2端との間及び前記第2リンクの前記第1端及び前記第2端の間で前記第1リンクと前記第2リンクとに回動可能に架設される。
上記(2)の構成によれば、第3リンクの一方の側に荷重入力点及び荷重出力点を配置し、第3リンクの他方の側に防振器を配置できるため、荷重入力点、荷重出力点及び防振器の配置の自由度を広げることができ、従って、a<bの範囲を広げることができる。
【0011】
(3)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記第3リンクが前記第1リンクの前記第2端と前記第2リンクの前記第2端とに接続され、
前記荷重入力点が前記第1リンクの前記第1端と前記第2端との間に位置し、
前記荷重出力点が前記第2リンクの前記第1端と前記第2端との間に位置する。
上記(3)の構成によれば、第3リンクの一方の側に荷重入力点、荷重出力点及び防振器を配置できるため、荷重入力方向と交差する方向の配置スペースをさらに省スペース化できる。例えば、荷重入力方向と交差する方向が鉛直方向である場合、鉛直方向の配置スペースを短縮できる。
【0012】
(4)一実施形態では、前記(1)〜(3)の何れかの構成において、
前記荷重入力方向は水平方向に沿う方向であり、
前記第1リンク及び前記第2リンクは上下方向に沿って配置され、
前記防振器は前記第1リンク及び第2リンクによって軸方向両端から支持され垂下される。
上記(4)の構成によれば、鉛直方向のスペースを省スペース化できると共に、防振器は第1リンク及び第2リンクによって軸方向両端から支持されるので、防振器を支持するために新たな固定部を必要としない。従って、支持装置の据付け工程を簡素化できる。
【0013】
(5)一実施形態では、前記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記構造物が原子力発電プラントの蒸気発生器、一次冷却材ポンプ又は加圧器である。
原子力発電プラントの蒸気発生器、一次冷却材ポンプ及び加圧器は格納容器内部の狭い空間に配置される。そのため、支持装置の設置スペースは限定される。これに対し、これら構造物の支持装置として設置スペースを縮小できる上記実施形態に係る支持装置を適用することで、設置スペースの確保が容易になる。
【0014】
(6)幾つかの実施形態に係る構造物支持装置の交換方法は、
構造物と固定用基礎との間に介装され、前記構造物を前記固定用基礎に支持させる既存の構造物支持装置を請求項1に記載の構造物支持装置に交換する方法であって、
前記既存の構造物支持装置を前記構造物及び前記固定用基礎から取外し除去する除去工程と、
前記構造物に前記荷重入力点を介して前記第1リンクを回動可能に接続する第1取付け工程と、
前記固定用基礎に前記荷重出力点を介して前記第2リンクを回動可能に接続する第2取付け工程と、
を備える。
【0015】
上記(6)の方法によれば、既存の支持装置を上記実施形態に係る支持装置に交換する場合に、第1リンクを構造物に接続し、第2リンクを固定用基礎に接続するだけで交換工事を完了できる。防振器は第1リンク及び第2リンクによってケーシングの両側から支持すればよいので、新たな固定部を増設する必要がない。従って、交換時の改造工程を簡素化かつ低コスト化できる。
また、第1リンク及び第2リンクを除き、第3リンク及び防振器は荷重入力方向に沿って配置されるので、荷重入力方向と交差する方向の設置スペースを低減できる。従って、既存の設置スペースで十分な設置スペースを確保できる。例えば、荷重入力方向と交差する方向が鉛直方向である場合、鉛直方向の配置スペースを縮小できる。
【0016】
(7)一実施形態では、前記(6)の方法において、
前記第1取付け工程において、
前記既存の構造物支持装置の取付けに用いた前記構造物に存在する固定部に、前記第1リンクを前記荷重入力点を介して回動可能に接続し、
前記第2取付け工程において、
前記既存の構造物支持装置の取付けに用いた前記固定用基礎に存在する固定部に、前記第2リンクを前記荷重出力点を介して回動可能に接続する。
【0017】
上記(7)の方法によれば、上記実施形態に係る支持装置は、構造物及び固定用基礎に夫々1個ずつの既存の固定部があれば、それ以上の固定部を必要としない。そのため、第1リンクを構造物に設けられた既存の固定部に接続し、第2リンクを固定用基礎に設けられた既存の固定部に接続するだけで交換工事は完了できる。また、防振器は第1リンク及び第2リンクによってケーシングの両側から支持されるので、新たな固定部を増設する必要がない。従って、交換時の改造工事を簡素化かつ低コスト化でき、かつ交換工事の時間を短縮できる。
【0018】
(8)一実施形態では、前記(6)又は(7)の方法において、
前記荷重入力点と前記第1リンク及び前記第3リンクの接続点との間隔、又は前記荷重出力点と前記第2リンク及び前記第3リンクの接続点との間隔をaとし、前記第3リンクの接続点と前記防振器との間隔をbとしたとき、
前記防振器の定格容量からb/aを決定する前工程をさらに備える。
上記(8)の方法によれば、構造物支持装置に入力される荷重と防振器の定格容量とから、b/aを決定することで、防振器の剛性及び定格容量に制限されることなく、それ以上の荷重に対応できる。従って、防振器の剛性及び定格容量を低減できるため、防振器の大径化を抑制でき、支持装置の配置スペースを省スペース化できる。
【発明の効果】
【0019】
いくつかの実施形態によれば、構造物周囲に設けられる支持装置の配置スペースを低減できると共に、固定用基礎側に固定部の増設を要しないため、既存の支持装置との交換工事も容易かつ低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る構造物に取り付けられた支持装置の正面図である。
図2】一実施形態に係る構造物支持装置の概略図である。
図3】一実施形態に係る構造物支持装置の概略図である。
図4】一実施形態に係る構造物支持装置の交換方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
幾つかの実施形態に係る構造物支持装置10(10A、10B)は、図1に示すように、構造物1と固定用基礎3との間に介装され、構造物1を固定用基礎3に支持させるものである。固定用基礎3は、構造物1の周囲に構造物1に対向配置される。地震発生時において、構造物1の揺動によって支持装置10に加わる荷重は支持装置10を介して固定用基礎3に付加され、固定用基礎3からの反力によって支持される。
図1に示す実施形態では、構造物1は原子力発電プラントの格納容器の内部に設けられる蒸気発生器である。この蒸気発生器の下部は回動脚5によって支持されている。回動脚5は、一方の端部が回動できるように固定用基礎の底面に連結され、他方の端部が回動できるように、蒸気発生器に連結される。
【0023】
支持装置10(10A、10B)は、図2(A)及び図3(A)に示すように、第1リンク12、第2リンク14及び第3リンク16を備える。
第1リンク12は、構造物1と荷重入力点Piを介して回動可能に接続される。矢印A及びBは荷重入力点Piにおける荷重入力方向を示し、第1リンク12は荷重入力方向と交差する方向に配置される。第2リンク14は第1リンク12と並列に固定用基礎3側に配置され、固定用基礎3に対して荷重出力点Poを介して回動可能に接続される。
図2(A)及び図3(A)において、荷重入力点Piに構造物1から矢印A方向の荷重が入力されたとき、荷重出力点Poでは、矢印B方向の荷重が固定用基礎3に対して作用する。荷重入力点Piに構造物1から矢印B方向の荷重が入力されたとき、荷重出力点Poでは、矢印A方向の荷重が固定用基礎3に対して作用する。
【0024】
支持装置10において、防振器18が互いに対向配置される第1リンク12の第1端12a及び第2リンク14の第1端14aに回動可能に接続される。防振器18は、防振器18に作用する荷重が荷重入力方向(矢印A又はB方向)に沿うように配置される。
防振器18は、前述のように、例えば、シリンダとピストンとを含んで構成される油圧式ダンパ装置である。あるいは油圧式に限定されず、メカニカルスナバと呼ばれる機械式の荷重伝達装置であってもよい。防振器18は、熱膨張のように、勾配の小さい変化、即ち、単位時間当たりの変位が小さい変位を拘束せず、地震荷重のような勾配の大きな荷重による変位、即ち、単位時間当たりの変位が大きい変位を拘束する。
【0025】
支持装置10はさらに第3リンク16を備える。第3リンク16は、防振器18と異なる位置で荷重入力方向に沿って配置され、第1リンク12及び第2リンク14に回動可能に接続される。
【0026】
上記構成において、防振器18は荷重入力方向に沿って配置されるため、支持装置10は荷重入力方向と交差する方向に省スペース化できる。また防振器18は、第1リンク12及び第2リンク14によって両側から支持されかつ垂下されるため、防振器18を固定するための固定部を増設する必要がない。従って、支持装置10の据付け工事を簡素化かつ低コスト化できる。
【0027】
一実施形態では、図2に示すように、荷重入力点Piが第1リンク12の第2端12bに位置し、荷重出力点Poが第2リンク14の第2端14bに位置する。また、第3リンク16は、第1リンク12の第1端12aと第2端12bとの間で第1リンク12に回動可能に接続されると共に、第2リンク14の第1端14a及び第2端14bの間で第2リンク14に回動可能に接続される。
上記構成によれば、第3リンク16の一方の側に荷重入力点Pi及び荷重出力点Poを配置し、第3リンク16の他方の側に防振器18を配置できるため、荷重入力点Pi、荷重出力点Po及び防振器18の配置の自由度を広げることができる。
【0028】
一実施形態では、図3に示すように、第3リンク16が第1リンク12の第2端12bと第2リンク14の第2端14bとに接続される。また、荷重入力点Piが第1リンク12の第1端12aと第2端12bとの間に位置し、荷重出力点Poが第2リンク14の第1端14aと第2端14bとの間に位置する。
上記構成によれば、第3リンク16の一方の側に荷重入力点Pi、荷重出力点Po及び防振器18を配置するため、荷重入力方向と交差する方向の配置スペースをさらに省スペース化できる。
【0029】
図2及び図3に示すように、荷重入力点Piと第1リンク12及び第3リンク16の接続点との間隔、又は荷重出力点Poと第2リンク14及び第3リンク16の接続点との間隔をaとし、第3リンク16の接続点と防振器18との間隔をbとする。
防振器18を含む支持装置10の全体システムの反力をPa、剛性をka、変位をδaとすると、(1)式が成り立つ。
Pa=ka・δa (1)
同様に防振器18の反力をPb、剛性をkb、変位をδbとすると、次式が成り立つ。
Pb=kb・δb
従って、kb=Pb/δb (2)
回転モーメントのつり合いから、次式が成り立つ。
Pa・a=Pb・b
従って、Pa=(b/a)・Pb (3)
【0030】
一方、変位の幾何学的制約から、次式が成り立つ。
δa=(a/b)・δb (4)
(3)式と(4)式を(1)式に代入し、(2)式を考慮すると、次式が成り立つ。
(b/a)・Pb=ka・(a/b)・δb
従って、ka=(b/a)・(Pb/δb)=(b/a)・kb (5)
(5)式から、支持装置10の全体システムの剛性は、防振器18の剛性kbを(b/a)に乗じた値となる。
従って、a<bとすることで、(防振器18に入力する荷重)<(支持装置10に入力すると予想される荷重)とすることができる。これによって、防振器18の剛性及び容量(許容荷重)を低減できるため、防振器18の大径化を抑制でき、支持装置10の設置スペースを低減できる。
例えば、支持装置全体として防振器18の2倍の剛性が必要であれば、b/a=√2の比率とすればよい。
【0031】
また、図2に示す実施形態では、第3リンク16の一方の側に荷重入力点Pi及び荷重出力点Poを配置し、第3リンク16の他方の側に防振器18を配置できるため、b/aの値の範囲を広げることができる。
【0032】
一実施形態では、図1に示すように、荷重入力方向は水平方向に沿う方向であり、第1リンク12及び第2リンク14は上下方向に沿って配置される。また、防振器18は第1リンク12及び第2リンク14によって軸方向両端から支持され垂下される。
上記構成によれば、支持装置10の鉛直方向の設置スペースを省スペース化できる。また、防振器18は第1リンク12及び第2リンク14によって軸方向両端から支持されるので、防振器18を支持するために、構造物1や固定用基礎3に新たな固定部を必要としない。従って、支持装置10の据付工事を簡素化できる。
【0033】
一実施形態では、図1に示すように、構造物1が原子力発電プラントの蒸気発生器、一次冷却材ポンプ又は加圧器である。
原子力発電プラントの蒸気発生器、一次冷却材ポンプ及び加圧器は格納容器内部の狭い空間に配置される。そのため、支持装置10の設置スペースは限定される。これに対し、これら構造物に上記実施形態に係る支持装置10を適用することで、支持装置の設置スペースの確保が容易になる。
【0034】
少なくとも一実施形態に係る構造物支持装置の交換方法は、図4に示すように、構造物1と固定用基礎3との間に介装され、構造物1を固定用基礎3に支持させる既存の構造物支持装置を支持装置10に交換する方法である。
上記交換方法は、まず除去工程S12において、既存の構造物支持装置を構造物1及び固定用基礎3から取外し除去する。次に、第1取付け工程S14において、構造物1に荷重入力点Piを介して第1リンク12を回動可能に接続する。さらに、第2取付け工程S16において、固定用基礎3に荷重出力点Poを介して第2リンク14を回動可能に接続する。
【0035】
上記方法によれば、既存の支持装置を上記実施形態に係る支持装置10に交換する場合に、第1リンク12を構造物1に接続し、第2リンク14を固定用基礎3に接続すればよい。支持装置10では、防振器18は第1リンク12及び第2リンク14によってケーシングの両側から支持すればよいので、構造物1や固定用基礎3に新たな固定部を増設する必要がない。従って、交換時の改造工程を簡素化かつ低コスト化できる。
また、第1リンク12及び第2リンク14を除き、第3リンク16及び防振器18は荷重入力方向(図2(A)及び図3(A)中の矢印A又はB方向)に沿って配置されるので、荷重入力方向と交差する方向の設置スペースを低減できる。従って、既存の設置スペースで十分な設置スペースを確保できる。
【0036】
図1に示す実施形態では、第3リンク16及び防振器18は、水平方向に沿って配置されるので、支持装置10は鉛直方向の設置スペースを省スペース化でき、従って、既存の設置スペースで十分な設置スペースを確保できる。
【0037】
一実施形態では、第1取付け工程S14において、既存の構造物支持装置の取付けに用いた構造物1に存在する固定部に、第1リンク12を荷重入力点Piを介して回動可能に接続する。また、第2取付け工程S16において、既存の構造物支持装置の取付けに用いた固定用基礎3に存在する固定部に、第2リンク14を荷重出力点Poを介して回動可能に接続する。
これによって、第1リンク12を構造物1に設けられた既存の固定部に接続し、第2リンク14を固定用基礎3に設けられた既存の固定部に接続すればよい。
防振器18は第1リンク12及び第2リンク14によってケーシングの両側から支持されるので、新たな固定部を増設する必要がない。従って、交換時の改造工事を簡素化かつ低コスト化でき、かつ交換工事の時間を短縮できる。
【0038】
一実施形態では、図4に示すように、荷重入力点Piと第1リンク12及び第3リンク16の接続点との間隔、又は荷重出力点Poと第2リンク14及び前記第3リンク16の接続点との間隔をaとし、第3リンク16の接続点と防振器18との間隔をbとしたとき、前工程S10において、防振器18の定格容量からb/aを決定する前工程をさらに備える。
上記方法によれば、支持装置10に入力される予想荷重と防振器18の定格容量とから、b/aの値を決定することで、防振器18の剛性及び定格容量に制限されることなく、支持装置の設計自由度を広げることができる。また、b/aの値を大きく取ることで、防振器18の剛性及び定格容量を低減できるため、防振器18の大径化を抑制でき、支持装置10の配置スペースを省スペース化できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
幾つかの実施形態によれば、構造物支持装置として、設置スペースを縮小でき、かつ構造物又は固定用基礎に新たなに固定部の増設を不要にし、据え付けを簡素化かつ低コスト化できる。
【符号の説明】
【0040】
1 構造物
3 固定用基礎
5 回転脚
10(10A、10B) 支持装置
12 第1リンク
12a 第1端
12b 第2端
14 第2リンク
14a 第1端
14b 第2端
16 第3リンク
18 防振器
A、B 荷重入力方向
Pi 荷重入力点
Po 荷重出力点
Pa、Pb 反力
δa、δb 変位
図1
図2
図3
図4